JP4424702B2 - コンポスト臭気の脱臭方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、コンポスト臭気の脱臭方法に係り、特に、下水、し尿、産業排水等の排水処理に伴って発生する汚泥や生ごみ等の有機性廃棄物をコンポストにする際に発生する臭気の脱臭方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
下水、し尿、産業排水等の排水処理に伴って発生する有機性汚泥や、生ごみ等の有機性廃棄物の処理処分方法として、コンポストが普及している。従来、このような汚泥や廃棄物は、乾燥焼却という処分形態を取ってきたが、地球温暖化の防止や燃料費の抑制、あるいは最終処分地の確保が困難等の社会的事情によって、古くから行われてきたコンポストによる処理処分方法が、近年、注目されてきている。
コンポスト製造プロセスは、異物除去のための選別や水分調整等の前処理工程、発酵工程、完熟工程及び精製工程からなる。
【0003】
汚泥や廃棄物をコンポストにすると、その堆肥は農地還元でき、有効に再利用されるが、コンポスト製造施設で発生する臭気の脱臭が必要である。コンポスト臭気は、主に前処理工程と発酵工程から発生し、その臭気成分は、アンモニア、アミン類(トリメチルアミン)、アルデヒド類、揮発性脂肪酸(酢酸等)、アルコール類(プロピルアルコール、ブチルアルコール)、硫化水素、メチルメルカプタン等であり、特に、アンモニア濃度は、数千ppmと非常に高濃度になることがある。
従来より、このようなコンポスト臭気は、酸、アルカリによる薬液洗浄法や、薬液洗浄法と活性炭吸着法を組み合わせた方法で脱臭されてきた。また、近年、臭気成分を分解する微生物を利用して脱臭する生物学的脱臭方法が採用されつつある。
【0004】
しかしながら、多種類の臭気を含むコンポスト臭気を、酸洗浄塔とアルカリ洗浄塔、又は酸化剤を併用したアルカリ洗浄塔による薬液洗浄法で脱臭しようとした場合、高濃度のアンモニアを酸洗浄塔で効果的に除去できないばかりか、アルデヒド類は全く除去できないという重大な欠点がある。この薬液洗浄法の仕上げ処理として、活性炭吸着法を採用し、アルデヒド類を選択的に吸着する活性炭を用いても、アルデヒド類を十分に脱臭することが困難であると共に、元々アルデヒド類の吸着量が少ないために、活性炭の破過が早まり、活性炭使用量が増大するという問題がある。
アルデヒド類を薬液洗浄法で脱臭しようとした場合、空気によって酸化されやすい亜硫酸ソーダが使われるために、薬剤の消費量が多く、運転操作が煩雑である。更にアルデヒド類の中でもアセトアルデヒドしか脱臭できず、その効果は低い。
【0005】
生物学的脱臭法はそれだけで、アンモニア、アルデヒド類やその他のコンポスト臭気を完全に除去できる脱臭方法である。
しかしながら、生物脱臭装置に流入するガス中のアンモニア濃度の変動が激しい場合には、アンモニアの除去が不充分となる。アンモニアの除去が十分に行われない場合や、アンモニアがガス中から除去されても、生物脱臭装置内の循環液や、充填層中の水分のpHが高い場合には、アルデヒド類や硫化水素等の硫黄化合物の脱臭性能が著しく低下する。このように、ガス中のアンモニア濃度によって、あるいはアンモニア濃度の変動によって、生物脱臭装置の脱臭性能が大きく変化するという重大な問題がある。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記従来技術の問題点を解決し、コンポスト発酵工程でアンモニアを除去し、次工程の生物脱臭でのアンモニア負荷量を下げることによって、生物脱臭を適正に行い、コンポスト臭気の効果的な脱臭方法を提供することを課題とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するために、本発明では、有機性廃棄物をコンポスト化する際に発生する臭気の脱臭方法が、該有機性廃棄物に、リン酸、リン酸ナトリウム、リン酸カリウム、ピロリン酸及びその塩又はメタリン酸及びその塩から選ばれるリン化合物と、水酸化マグネシウム、塩化マグネシウム、硫酸マグネシウム又は硝酸マグネシウムから選ばれるマグネシウム化合物とを添加して発酵させ、発酵時に発生するアンモニアをリン酸マグネシウム化合物として固定化する工程と、発生する臭気を生物学的に脱臭する工程とから構成されることを特徴とするコンポスト臭気の脱臭方法としたものである。
また、本発明では、有機性廃棄物をコンポスト化する際に発生する臭気の脱臭方法が、該有機性廃棄物に、リン酸、リン酸ナトリウム、リン酸カリウム、ピロリン酸及びその塩又はメタリン酸及びその塩から選ばれるリン化合物と、水酸化マグネシウム、塩化マグネシウム、硫酸マグネシウム又は硝酸マグネシウムから選ばれるマグネシウム化合物とを添加して発酵させ、発酵時に発生するアンモニアをリン酸マグネシウム化合物として固定化する工程と、発生する臭気を冷却して得られる凝縮液を該コンポストに戻して該凝縮水中のアンモニアをリン酸マグネシウム化合物として固定化する工程と、該凝縮液を分離した臭気を生物学的に脱臭する工程とから構成されることを特徴とするコンポスト臭気の脱臭方法としたものである。
前記コンポスト臭気の脱臭方法において、有機性廃棄物は、脱水された下水汚泥が使用でき、前記リン化合物は、リン酸ナトリウムを、前記マグネシウム化合物は、塩化マグネシウムを使用するのがよく、また、前記発酵はpH8以上で行うのがよい。
【0008】
【発明の実施の形態】
本発明では、コンポスト発酵工程に、リン化合物とマグネシウム化合物からなる消臭剤を添加するなどして、これらの化合物を共存させ、発酵時発生するアンモニアをリン酸マグネシウム化合物として固定して除去することにより、第2工程の生物脱臭へのアンモニアの負荷量を減らすと共に、アルデヒド類やアンモニア以外の臭気成分の除去効果を高めることができる。
また、第1工程以降の、発酵工程で発生するコンポスト臭気を冷却して凝縮液を得、このアンモニアを含む凝縮液を第1工程に戻し、凝縮液中のアンモニアをリン酸マグネシウム化合物として固定することにより、凝縮液からの臭気抑制と第2工程の生物脱臭装置へのアンモニア負荷を低減させて、生物脱臭法による脱臭効果を高めることができる。
【0009】
以下に、本発明を詳細に説明する。
本発明のコンポスト原料として用いる有機性廃棄物とは、前述した下水、し尿、産業排水等の排水処理に伴って発生する汚泥、それら汚泥を脱水した脱水ケーキ及び各種有機性の産業廃棄物である。
本発明における第1工程に添加するリン化合物とマグネシウム化合物は、汚泥や産業廃棄物等の有機性廃棄物のコンポスト原料から発生するアンモニアを除去するもので、優れたアンモニア除去効果を有するものである。
本発明において、第1工程でアンモニアを除去する目的は、第2工程の生物脱臭法により効果的な脱臭を行うためのものである。
【0010】
つまり、コンポスト臭気のアンモニアは水溶性であり、容易にガス中から除去できる。生物脱臭装置の循環液や充填層内の水分に溶解したアンモニアは、循環液や充填層内の水分のpHを高める。アンモニア除去が正常の場合は、溶解したアンモニアは循環液や充填材表面に生息する硝化菌の作用によって、亜硝酸イオンや硝酸イオンに酸化され、液中からアンモニアが除去されることによって、新たなアンモニアがガス中から吸収によって除去できる。更に、アンモニアが硝化菌によって酸化されると、その生成物は硝酸のように酸性であり、この酸性がより一層アンモニアの吸収除去を促進させる。
しかしながら、ガス中のアンモニア濃度の変動や、高濃度のアンモニアの流入が継続した場合には、生物脱臭装置において、液へのアンモニアの吸収、硝化菌によるアンモニアの酸化分解、ガスからのアンモニアの吸収という安定した脱臭が行われなくなる。
【0011】
即ち、ガス中のアンモニア濃度が変動した場合、アンモニアの吸収、硝化菌の増殖が追いつけずに、硝化菌によるアンモニアの酸化分解量が不足することによるアンモニアの残留、液のpHの上昇、充填層のpHの上昇、硝化菌活性の低下、ガスからのアンモニアの吸収の悪化により、ガスにアンモニアがリークすることになる。
また、高濃度のアンモニアが、生物脱臭装置に流入すると、液へ多量のアンモニアが吸収、液のpHの上昇、硝化菌活性の低下、硝化菌によるアンモニアの酸化分解不足により、ガスにアンモニアがリークすることになる。
【0012】
生物脱臭装置の循環液や充填層内の水分に吸収溶解したアンモニアの硝化菌による酸化分解が不充分であると、アンモニア以外の臭気成分の分解に有効な微生物の活性も低下し、アンモニア以外の臭気成分の脱臭性能も低下する。
一般には、アンモニアや硫化水素等の臭気成分を生物脱臭するには、生物脱臭装置の循環液や充填層内の水分のpHを中性又は弱酸性に維持する。アンモニアによって生物脱臭装置の循環液や充填層内の水分がアルカリ性になると、硝化菌や有機物を酸化分解する微生物の活性は著しく低下し、アンモニア以外の臭気成分の脱臭性能も低下する。
【0013】
リン化合物とマグネシウム化合物の添加量は、コンポスト原料の性状により異なるので、特に限定されないが、多くは原料から発生するアンモニアに対して、リン化合物とマグネシウム化合物の添加量は、アンモニア1モルに対してリン化合物及びマグネシウム化合物が、それぞれ0.5から100モルである。
本発明において、リン化合物とマグネシウム化合物を作用させることは、本発明の必須条件であるが、既に相当量の可溶性のリン化合物あるいはマグネシウム化合物が溶解している場合には、どちらか一方もしくは両者のコンポスト化原料やコンポスト中への添加量を減らすことができる。
本発明で用いるリン化合物は、リン酸、リン酸ナトリウム、リン酸カリウム、ピロリン酸及びその塩、メタリン酸及びその塩等である。
また、マグネシウム化合物は、水酸化マグネシウム、塩化マグネシウム、硫酸マグネシウム、硝酸マグネシウム等である。
【0014】
本発明における消臭剤の添加位置は、コンポスト発酵工程の発酵槽である。発酵槽に一次発酵と二次発酵の二つの工程がある場合には、本発明の消臭剤は臭気の発生が多い一次発酵槽に添加する。
リン化合物とマグネシウム化合物からなる消臭剤は、リン化合物とマグネシウム化合物を混合して、1液の消臭剤として使用してもよい。
また、リン化合物やマグネシウム化合物の水溶液を別々にしたものを、それぞれ消臭剤としてコンポスト発酵槽に添加しても良い。この場合の添加順序は、いずれを先に添加しても良い。
本発明の消臭剤をアンモニアに対して、過剰にリン化合物やマグネシウム化合物を添加しても消臭効果に何ら影響を与えるものではない。
一般に、コンポストの発酵が盛んな時には、コンポストのpHが8以上になる。pHが8以上になると、アンモニアの発生が増大する(臭気の研究:Vol 27、No1,平成8年)。
【0015】
一方、リン化合物とマグネシウム化合物により、アンモニアをリン酸マグネシウム化合物として固定するにも、そのpHは8以上が良い。このように、本発明は、アンモニアが発生する条件の時に、リン化合物とマグネシウム化合物を添加することにより、効率的にアンモニアを除去するものである。
本発明の第2工程における生物脱臭法としては、曝気槽等の生物反応槽に臭気を吹き込む活性汚泥脱臭法や、土壌脱臭法や充填塔式生物脱臭方法が挙げられる。
特に、充填塔式生物脱臭法は、硫化水素等の悪臭成分を含む悪臭ガスを、微生物を付着させた充填層に接触させて、生物学的に脱臭する方法であり、多量のガスをコンパクトな装置で効率良く脱臭できる方法で、広く普及している。
本発明の第2工程における生物脱臭法としては、この充填塔式生物脱臭法が良い。
【0016】
本発明の第2工程で生物脱臭できる悪臭ガスは、硫化水素とアンモニア、フェノール、揮発性脂肪酸(有機酸)、アミン類、アルコール類、アルデヒド類、硫化メチルや二硫化メチル等の有機硫黄化合物等の少なくとも1種類以上を含むガスである。
第2工程に流入するガスは、コンポスト発酵工程からのものや、第1工程を含むコンポスト製造施設全体から発生する臭気である。
コンポスト臭気の主成分は、アンモニアとアルデヒド類である。
前記の前処理工程、発酵工程、完熟工程及び精製工程からなるコンポスト製造施設全体が建屋にある場合、特に臭気の発生が予想される前処理工程、発酵工程の臭気を捕集したものと、コンポスト製造施設全体の排気を合わせて生物脱臭する。
もちろん前処理工程、発酵工程の臭気だけを、捕集ファンで捕集したものを生物脱臭することも可能である。
【0017】
本発明の第2工程の充填塔式生物脱臭に用いる充填材は、ポリプロピレンなどの合成樹脂を成形した市販の充填材でも良いし、脱臭効率が高いスポンジ充填材でも良い。このスポンジ充填材の形状は、セル数(25mm直線上のセル、気泡の数)5〜30で、その内部に連通空間を有するものが良い。
充填層を湿潤状態に維持するために、充填層上部に散水するが、その散水に用いる液は、充填層を通過した液を再び、散水に循環使用しても良い。また、工業用水、生物処理水等を直接、充填層上部から散水することもできる。
散水は、連続的でも間欠的でも良い。散水量は、単位処理ガス量あたり、1〜5リットル/m3ガス、通常3リットル/m3ガスである。
この第2工程に流入する臭気の主成分が、アミン類、アルデヒド類、アルコール類又は揮発性脂肪酸である場合には、第2工程でのBOD酸化菌の増殖が著しいので、外部から栄養塩の供給が必要である。栄養塩としては、窒素とりんであり、窒素は臭気のアンモニアが利用できる。りんは、りん酸塩として補給する必要がある。
【0018】
第2工程に流入する臭気の主成分が、硫化水素等の硫黄化合物である場合には、上記の場合に比べて、菌体の増殖に必要な栄養塩の要求量が極端に少ないので、補給水としてこれらの窒素やりんが含まれる生物処理水が使用できれば、新たに栄養塩を添加する必要はない。
第2工程に流入する臭気の主成分が、アミン類、アルデヒド類、アルコール類又は揮発性脂肪酸である場合でも、硫化水素等の硫黄化合物である場合でも、中和のためのアルカリ剤は必要ない。しかしながら、アミン類、アルデヒド類、アルコール類、揮発性脂肪酸及び硫化水素等の硫黄化合物がともに含まれる臭気は、硫化水素等が除去されている時に、硫酸が生成して、pHを下げるので、補給水のアルカリ度が不足する場合のみに、中和のためのアルカリ剤は必要である。
【0019】
また、本発明は、コンポスト発酵工程以降のコンポスト臭気を強制的に冷却して、得られる凝縮液を、第1工程に移送する工程を設け、凝縮液に含まれる高濃度のアンモニアを、第1工程のコンポスト発酵工程内で、リン酸マグネシウム化合物として固定することにより、凝縮液からの臭気抑制と第2工程の生物脱臭装置へのアンモニア負荷を低減させて、生物脱臭法の脱臭効果を高めるものである。コンポスト発酵工程でも、リン化合物とマグネシウム化合物によるアンモニアの固定が行われる1次発酵工程へ、凝縮液を添加するのが良い。
発酵工程、特に一次発酵から発生する臭気は、発酵熱のために温度が50〜70℃と高く、飽和水蒸気を含む。発酵工程から排気されるコンポスト臭気を強制的に冷却すると、コンポスト臭気から凝縮液が生成する。あるいは、排気ダクト内でも温度の低下によって、自然に凝縮液が生成する。コンポスト臭気の強制的な冷却方法としては、エアフィンクーラー内部に冷却塔等で冷却された冷却水を通し、冷却水によって冷却されたエアフィンとコンポスト臭気を接触させる方法が挙げられる。
【0020】
この凝縮液には、高濃度のアンモニアが含まれるために、何らかの処理が必要である。この凝縮液を、本発明の第2工程である生物脱臭装置へ送り、そこで生物処理しようとすると、凝縮液に含まれるアンモニアが、前述したように生物脱臭における阻害物質となる。
そこで、第2工程の生物脱臭装置へのアンモニア負荷を低減させて、生物脱臭法による脱臭効果を高めるために、コンポスト臭気の排気に伴って発生する凝縮液を第1工程に返送する工程を設け、第1工程でリン化合物とマグネシウム化合物からなる消臭剤によって、コンポストから発生するアンモニアと共に、リン酸マグネシウム化合物としてコンポスト中に固定することができる。
【0021】
【実施例】
以下に、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものでない。
実施例1
本発明の第1工程として、下水の混合生汚泥の脱水ケーキを用い、コンポスト発酵工程で発生する臭気中のアンモニア濃度を測定することで、本発明の消臭剤の効果を確認する。更に、第2工程として、前述のコンポスト臭気の組成や濃度を基に、模擬コンポスト臭気(以下、模擬ガス)を調製して生物脱臭をする。
(1) コンポスト原料
コンポスト原料は、混合生汚泥の脱水ケーキを天日乾燥して、その含水率を約65%に調製し、10mm以下に破砕したものを試験に供した。
【0022】
(2) 第1工程の試験方法と結果
保温材が施された発酵槽(内径;250mm、高さ;350mm、容量;10リットル)に先のコンポスト原料 5kg及び所定量のリン酸ナトリウム(Na3PO412H2O)と塩化マグネシウム(MgCl26H2O)を添加し、発酵槽の底部から空気を約1リットル/分で連続的に供給した。
試験開始2日後には、槽内温度が65℃となり、約10日間この温度が維持できた。
コンポスト臭気中のアンモニア、アセトアルデヒド及び硫化水素濃度を検知管で測定した。
表1にコンポスト臭気の臭気成分濃度を示す。
リン酸ナトリウムと塩化マグネシウムの添加によって、コンポスト臭気のアンモニア濃度が低減できた。
【0023】
【表1】
【0024】
(3) 第2工程の試験方法と結果
ここでは、Na3PO412H2O 30g/kgとMgCl26H2O 15g/kgを添加した時に発生するコンポスト臭気を対象に、第2工程で生物脱臭試験をする。
生物脱臭試験に供するガスは、第1工程におけるコンポスト原料の滞留日数を10日間として、コンポスト臭気が連続的に発生するものとし、市販の標準ガスと空気で模擬ガスを調製した。
その模擬ガスの組成は、アンモニア:10ppm、硫化水素:1ppm、アセトアルデヒド:3ppmである。
【0025】
試験条件は次の通りである。
空塔速度 ;300h-1
散水量(単位処理ガス量あたりの散水量);3リットル/m3
散水方式 ;連続散水
ガス温度 ;20〜25℃
充填材 ;セル数13のスポンジ充填材
充填層断面積 :0.2m2
充填層高 ;1m
循環液汚泥濃度;数十mg/l
初期汚泥濃度 ;約2000mg/l
種汚泥 ;下水処理場の余剰汚泥
循環液のpH ;6〜7
補給水 :生物処理水
【0026】
循環液の汚泥濃度を約2000mg/lに調整後、模擬ガスを充填層下部から連続的に通気し、循環液を充填層上部から連続的に散水した。
アンモニアとアセトアルデヒドは、試験開始直後から除去できた。約1週間後には、硫化水素除去率が90%となり、馴致が完了した。
試験開始2ヶ月後の処理ガス(第2工程出口ガス)の各臭気成分濃度は、次の通りであった。
アンモニア:1ppm以下、硫化水素:0.1ppm、アセトアルデヒド:0.1ppm
【0027】
比較例1
実施例1の第1工程に、リン酸ナトリウムと塩化マグネシウムを添加しないで、コンポスト発酵させた場合に発生する臭気を用いて、実施例1と同様に生物脱臭試験をする。
実施例1と同様に生物脱臭試験に供する模擬ガスは、表1の結果を基に市販の標準ガスと空気で調製した。
その組成はアンモニア:600ppm、硫化水素:2ppm、アセトアルデヒド:3ppmである。
実施例1の試験から、比較例1の試験に切り替えた直後から、循環液のpHが8.5以上となり、2週間経過しても硫化水素の除去率は40%程度であった。アンモニアも、試験開始数日で処理ガスにアンモニアが検出された。
試験を中止し、循環液を全量排出し、新たに実施例1のように種汚泥を添加して馴致を行ったが、アンモニアの除去率が約20〜40%で、硫化水素の除去率も約20%と低かった。このように、高濃度のアンモニアを含むコンポスト臭気を、生物脱臭するのは困難である。
【0028】
実施例2
実施例1の第1工程のコンポスト臭気を、臭気袋に捕集し、強制的に室温まで冷却して、コンポスト原料5kgあたり約1リットルの凝縮液が得られた。この凝縮液の全量を実施例1の第1工程でコンポスト原料の投入時に、リン酸ナトリウムと塩化マグネシウムとともに添加し、実施例1と同様に試験した。発酵槽から排出されるコンポスト臭気は、冷水で間接的に20〜30℃に冷却した。
凝縮液の液量は0.2リットル/kg原料で、そのアンモニア濃度は2g−NH3/リットルであった。
表2に冷却後のコンポスト臭気(試験開始5日後)の測定結果を示す。
コンポスト臭気中のアンモニア濃度が低く抑えられて、第2工程の生物脱臭へのアンモニア負荷が低減できた。
【0029】
【表2】
【0030】
表2におけるNa3PO412H2O 50g/kgとMgCl26H2O 20g/kgの条件下での、コンポスト臭気のアンモニアとアセトアルデヒドの濃度を基に、模擬ガスを調製し、実施例1と同様に生物脱臭試験を行った。
模擬ガスは、アンモニアが6ppm、アセトアルデヒドが4ppm、硫化水素が1ppmとした。
硫化水素の除去率が、約1週間後には90%となり、馴致が完了した。試験開始1ヶ月後の処理ガス(第2工程出口ガス)の各臭気成分濃度は次の通りであった。
アンモニア:1ppm以下、硫化水素:0.05ppm、アセトアルデヒド:0.1ppm以下
コンポスト臭気を冷却し、アンモニアを含む凝縮液を分離し、これを発酵槽に戻すことによって、第2工程にかかるアンモニア負荷が軽減できて、生物脱臭の脱臭効率が向上した。
【0031】
【発明の効果】
本発明は、コンポスト発酵工程にリン化合物とマグネシウム化合物を添加し、発生するアンモニアを除去する第1工程と、コンポスト製造施設から発生するコンポスト臭気を生物学的脱臭する第2工程から構成されるために、次のような効果を奏することができた。
(1) コンポスト発酵工程でのアンモニアの除去効果が高い。
(2) 従来除去困難であったアルデヒド類の除去効果が高い。
(3) コンポスト臭気の濃度変動があっても、脱臭性能が安定。
(4) 生物脱臭装置の前処理としてアンモニアが除去できるので、脱臭装置のコ
ンパクト化が図れる。
(5) 臭気発生源である発酵槽での臭気が抑制できるために、作業環境が改善で
きる。
(6) コンポスト中に肥料成分であるリン酸マグネシウムアンモニウムが含まれ
るために、肥料としての利用価値が高い。
Claims (5)
- 有機性廃棄物をコンポスト化する際に発生する臭気の脱臭方法が、該有機性廃棄物に、リン酸、リン酸ナトリウム、リン酸カリウム、ピロリン酸及びその塩又はメタリン酸及びその塩から選ばれるリン化合物と、水酸化マグネシウム、塩化マグネシウム、硫酸マグネシウム又は硝酸マグネシウムから選ばれるマグネシウム化合物とを添加して発酵させ、発酵時に発生するアンモニアをリン酸マグネシウム化合物として固定化する工程と、発生する臭気を生物学的に脱臭する工程とから構成されることを特徴とするコンポスト臭気の脱臭方法。
- 有機性廃棄物をコンポスト化する際に発生する臭気の脱臭方法が、該有機性廃棄物に、リン酸、リン酸ナトリウム、リン酸カリウム、ピロリン酸及びその塩又はメタリン酸及びその塩から選ばれるリン化合物と、水酸化マグネシウム、塩化マグネシウム、硫酸マグネシウム又は硝酸マグネシウムから選ばれるマグネシウム化合物とを添加して発酵させ、発酵時に発生するアンモニアをリン酸マグネシウム化合物として固定化する工程と、発生する臭気を冷却して得られる凝縮液を該コンポストに戻して該凝縮水中のアンモニアをリン酸マグネシウム化合物として固定化する工程と、該凝縮液を分離した臭気を生物学的に脱臭する工程とから構成されることを特徴とするコンポスト臭気の脱臭方法。
- 前記有機性廃棄物は、脱水された下水汚泥であることを特徴とする請求項1又は2記載のコンポスト臭気の脱臭方法。
- 前記リン化合物が、リン酸ナトリウムであり、前記マグネシウム化合物が、塩化マグネシウムであることを特徴とする請求項1又は2記載のコンポスト臭気の脱臭方法。
- 前記発酵は、pHが8以上で行うことを特徴とする請求項1又は2記載のコンポスト臭気の脱臭方法 。
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