JP4423801B2 - 筒内噴射式内燃機関の燃料噴射制御装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
この発明は、燃料噴射弁から気筒内に燃料を直接噴射供給する筒内噴射式内燃機関の燃料噴射制御装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
燃料噴射弁から気筒内に燃料を直接噴射するようにした筒内噴射式内燃機関では、機関低温時において噴射燃料の霧化が促進され難く、その拡散性が悪化する傾向がある。そして、このように噴射燃料の拡散性が悪化することに起因して燃焼状態の不安定化、ひいてはスモークの増大や機関出力の低下等々を招くことがある。
【0003】
そこで従来では、例えば特開平11−62680号公報や特開2000−45840号公報にみられるように、こうした機関低温時には機関負荷等、機関運転状態に応じて要求される量の燃料(要求燃料噴射量)を燃料噴射弁から一括して噴射するのではなく、これを吸気行程の前期と後期とに分割して噴射するようにしている。このように燃料噴射弁の燃料噴射形態を一括噴射から分割噴射に切り替えることにより、噴射燃料の霧化が促進され難い機関低温時であっても、同噴射燃料の良好な拡散性を確保することができるようになる。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、アイドル運転時等に要求燃料噴射量が少なくなると、分割噴射に際して各燃料噴射の燃料噴射量が燃料噴射弁において制御可能な最小噴射量よりも少なくなることがあり、この場合には要求燃料噴射量と等しい量の燃料を分割噴射によって噴射することができなくなる。従って、燃料噴射弁の燃料噴射形態を設定するに際しては、要求燃料噴射量に基づいて同燃料噴射形態を分割噴射に設定可能か否かを予め判断し、設定可能である旨の判断のもと同分割噴射を実行するようにするのが望ましい。
【0005】
しかしながら、このように要求燃料噴射量に基づいて燃料噴射形態を分割噴射に設定可能か否かを判断するようにした場合、以下のような不都合も無視できないものとなる。
【0006】
即ち、内燃機関の回転速度が各気筒間で変動することがあると、この回転変動により生じる機関負荷の変動に合わせて要求燃料噴射量が各気筒間で変動することがある。そして、このように変動する要求燃料噴射量に基づいて燃料噴射形態を分割噴射に設定可能か否かが判断された場合、その判断結果が各気筒毎で異なるものになり、燃料噴射形態が一括噴射と分割噴射との間で頻繁に切り替えられてしまうことがある。分割噴射時には、一括噴射時と比較して噴射燃料の拡散性が良好なものになるため、要求燃料噴射量が同じであっても機関出力が増大する傾向にある。従って、上述したように燃料噴射形態が一括噴射と分割噴射との間で頻繁に切り替えられると、その切り替えにより生じる機関出力の変動によって各気筒間における回転変動が更に助長されるおそれがある。
【0007】
また、燃料噴射形態が分割噴射から一括噴射に切り替えられた直後は、噴射燃料のうちピストンの頂面やシリンダの内壁面に新たに付着する燃料の量(燃料付着量)がこれらピストンの頂面やシリンダの内壁面から蒸発して燃焼に寄与する燃料の量(燃料蒸発量)を一時的に上回るようになり、空燃比がリーンになる傾向がある。これに対して、燃料噴射形態が一括噴射から分割噴射に切り替えられた直後は、上記燃料蒸発量が上記燃料付着量を一時的に上回るようになり、空燃比がリッチになる傾向がある。このため、こうした燃料噴射形態が切り替えられた直後における空燃比の変動について何ら考慮しない場合には、排気性状の悪化はもとより、こうした空燃比の変動に起因した回転変動を招くおそれもある。
【0008】
この発明は上記実情に鑑みてなされたものであり、その目的は、燃料噴射弁の燃料噴射形態が一括噴射と分割噴射との間で切り替えられることに起因した回転変動の発生を抑制することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するための手段及びその作用効果について以下に記載する。
請求項1に記載の発明では、内燃機関の気筒内に燃料を直接噴射する筒内噴射用の燃料噴射弁を備え、機関運転状態に応じて要求される要求燃料噴射量を一括して吸気行程に噴射する一括噴射と同要求燃料噴射量を分割して吸気行程に噴射する分割噴射との間で前記燃料噴射弁の燃料噴射形態を切り替え制御する筒内噴射式内燃機関の燃料噴射制御装置において、前記要求燃料噴射量に基づいて燃料噴射形態を分割噴射に設定可能か否かを各気筒毎に判断し、全気筒のうち少なくとも一気筒について燃料噴射形態を分割噴射に設定可能ではない旨の判断がなされるときに、燃料噴射形態が分割噴射に設定されるのを全気筒について禁止する禁止手段を備えるようにしている。
【0010】
上記構成によれば、燃料噴射形態を分割噴射に設定可能か否かの判断が各気筒間における回転変動に起因して各気筒毎に異なるようになった場合でも、その判断結果に応じて燃料噴射形態が一括噴射と分割噴射との間で頻繁に切り替えられることがなく、こうした燃料噴射形態の頻繁な切り替えによって生じる機関出力の変動により各気筒間における回転変動が更に助長されるのを抑制することができる。
【0011】
請求項2に記載の発明では、請求項1記載の筒内噴射式内燃機関の燃料噴射制御装置において、前記禁止手段は、燃料噴射形態を分割噴射としたときの各回の燃料噴射における燃料噴射量がいずれも前記燃料噴射弁の最小燃料噴射量を上回るときに燃料噴射形態を分割噴射に設定可能である旨判断するものであるとしている。
【0012】
上記構成によれば、燃料噴射形態が分割噴射に設定される場合に、要求燃料噴射量と等しい量の燃料を同分割噴射における各回の燃料噴射を通じて噴射することができ、燃料噴射量の不足に起因する空燃比のリーン化を抑制することができる。
【0013】
請求項3に記載の発明では、請求項1又は2に記載の筒内噴射式内燃機関の燃料噴射制御装置において、前記禁止手段は更に、分割噴射の実行に際して所定回目の燃料噴射における燃料噴射時間が同所定回目の燃料噴射の燃料噴射開始時期と次回の燃料噴射の燃料噴射開始時期との間の時間間隔よりも長くなるか否かを各気筒毎に判断し、同時間間隔よりも前記所定回目の燃料噴射における燃料噴射時間が長くなる旨判断されるときに、同気筒において燃料噴射形態が分割噴射に設定されるのを禁止するものであるとしている。
【0014】
要求燃料噴射量が多いときや機関回転速度が高回転域に移行したとき等には、分割噴射の実行に際して所定回目の燃料噴射が終了する前に次回の燃料噴射が開始されてしまう場合があり、このような場合には同所定回目の燃料噴射において所定量の燃料を噴射することができなくなる。従って、分割噴射時における実際の燃料噴射量が要求燃料噴射量に対して不足し、機関出力の低下や空燃比のリーン化を招くようになる。
【0015】
上記構成によれば、このように燃料噴射時間を確保することができず、分割噴射時における実際の燃料噴射量が要求燃料噴射量に対して不足するような場合には、燃料噴射形態が分割噴射に設定されるのが禁止されるため、こうした燃料噴射量の不足に起因する機関出力の低下や空燃比のリーン化を回避することができるようになる。
【0016】
請求項4に記載の発明では、請求項3に記載の筒内噴射式内燃機関の燃料噴射制御装置において、前記禁止手段は、全気筒のうち少なくとも一気筒について前記時間間隔よりも前記所定回目の燃料噴射における燃料噴射時間が長くなる旨の判断がなされるときに、燃料噴射形態が分割噴射に設定されるのを全気筒について禁止するものであるとしている。
【0017】
上記構成によれば、上述したような燃料噴射量の不足が一部の気筒にのみ発生する場合に、その一部の気筒における燃料噴射形態だけが一括噴射に設定されることにより、燃料噴射形態が一括噴射と分割噴射との間で頻繁に切り替えられてしまうことがなく、こうした燃料噴射形態の頻繁な切り替えによって生じる回転変動を抑制することができる。
【0018】
請求項5に記載の発明では、請求項1乃至4のいずれかに記載の筒内噴射式内燃機関の燃料噴射制御装置において、燃料噴射形態が一括噴射から分割噴射に切り替えられてから所定期間が経過するまで前記要求燃料噴射量を減量補正する一方、同燃料噴射形態が分割噴射から一括噴射に切り替えられてから所定期間が経過するまで前記要求燃料噴射量を増量補正する補正手段を更に備えるようにしている。
【0019】
上記構成によれば、燃料噴射形態が一括噴射と分割噴射との間で切り替えられた直後に、噴射燃料のうち気筒の内壁面に新たに付着する燃料の量と、同内壁面から蒸発して燃焼に寄与する燃料の量との間の平衡状態が一時的にくずれ、これに起因して空燃比が変動するのを抑えることができ、こうした空燃比の変動に伴うエミッションの悪化や回転変動の増大を抑制することができるようになる。
【0020】
請求項6に記載の発明では、内燃機関の気筒内に燃料を直接噴射する筒内噴射用の燃料噴射弁を備え、機関運転状態に応じて要求される要求燃料噴射量を一括して吸気行程に噴射する一括噴射と同要求燃料噴射量を分割して吸気行程に噴射する分割噴射との間で前記燃料噴射弁の燃料噴射形態を切り替え制御する筒内噴射式内燃機関の燃料噴射制御装置において、燃料噴射形態が一括噴射から分割噴射に切り替えられてから所定期間が経過するまで前記要求燃料噴射量を減量補正する一方、同燃料噴射形態が分割噴射から一括噴射に切り替えられてから所定期間が経過するまで前記要求燃料噴射量を増量補正する補正手段を備え、前記要求燃料噴射量の減量補正及び増量補正の少なくとも一方に用いる噴射量補正係数を、機関始動時の機関冷却水の温度、及び機関始動後からの燃料噴射量の積算値、及び機関始動後からの吸入空気量の積算値のいずれか一つに基づいて求めるようにしている。
【0021】
上記構成によれば、燃料噴射形態が一括噴射と分割噴射との間で切り替えられた直後に、噴射燃料のうち気筒の内壁面に新たに付着する燃料の量と、同内壁面から蒸発して燃焼に寄与する燃料の量との間の平衡状態が一時的にくずれ、これに起因して空燃比が変動するのを抑えることができ、こうした空燃比の変動に伴うエミッションの悪化や回転変動の増大を抑制することができるようになる。
【0022】
【発明の実施の形態】
以下、この発明にかかる燃料噴射制御装置の一実施形態について図1〜図6を参照して説明する。
【0023】
図1に示されるように、この燃料噴射制御装置が適用される内燃機関10は、4つの気筒#1〜#4を備えている。これら各気筒#1〜#4は、シリンダ11の内壁面及びピストン17の頂面によって区画形成される燃焼室12と、同燃焼室12内に燃料を直接噴射する燃料噴射弁14とをそれぞれ備えている。この燃料噴射弁14は、共通のデリバリパイプ16を介して高圧ポンプ18に接続されている。高圧ポンプ18はフィードポンプ20を介して燃料タンク22に接続されている。
【0024】
燃料タンク22の燃料は、フィードポンプ20によって高圧ポンプ18に供給された後、この高圧ポンプ18により高圧に加圧されてデリバリパイプ16に圧送される。このようにしてデリバリパイプ16に送られた高圧の燃料は、各燃料噴射弁14に分配供給され、同燃料噴射弁14の開弁に際してその噴孔部14aから燃焼室12に噴射される。このように燃焼室12に噴射された燃料は、吸気通路13を通じて燃焼室12に導入される吸入空気と混合された後に燃焼される。そして、燃焼後の排気は燃焼室12から排気通路15に排出される。
【0025】
また、燃料噴射弁14から噴射される燃料の量は、燃料噴射時間、即ち燃料噴射弁14の開弁時間と、燃料噴射圧、即ちデリバリパイプ16内の燃料圧とに応じて決定される。これら燃料噴射時間及び燃料噴射圧はいずれも内燃機関10の各種制御を統括して行なう電子制御装置30によって制御されている。
【0026】
この電子制御装置30には、機関回転速度を検出する回転速度センサ31、アクセルペダル(図示略)の踏み込み量(アクセル開度)を検出するアクセルセンサ32、並びに機関冷却水の温度(冷却水温)を検出する水温センサ33等々、機関運転状態を把握するための各種センサの検出信号が取り込まれる。その他、電子制御装置30には、デリバリパイプ16内の燃料圧を検出する燃圧センサ34の検出信号も併せて取り込まれる。電子制御装置30は、これら検出信号を取り込むための入力回路や、燃料噴射弁14等を駆動するための駆動回路の他、各種制御に際して必要となる演算用マップ等、各種のデータが記憶されるメモリ30aを備えている。
【0027】
また、電子制御装置30は、機関運転状態(例えば機関回転速度及びアクセル開度等)に基づいて燃料噴射量の要求値(要求燃料噴射量QINJ)を算出する。そして、電子制御装置30は、この要求燃料噴射量QINJと燃料圧とに基づいて燃料噴射時間を算出し、この燃料噴射時間に基づいて各気筒#1〜#4の燃料噴射弁14を開閉制御する。
【0028】
次に、本実施形態にかかる制御装置により実行される燃料噴射制御について説明する。
図2は、燃料噴射弁14の各燃料噴射形態を示している。本実施形態では、要求燃料噴射量QINJを一括して吸気行程に噴射する一括噴射と、同要求燃料噴射量QINJを2回に分割して吸気行程に噴射する分割噴射との間で、燃料噴射弁14の燃料噴射形態を切り替えるようにしている。
【0029】
例えば、1.機関高温時等、噴射燃料の良好な拡散性が確保できると判断される場合、2.アイドル運転時等に要求燃料噴射量QINJが少なくなり、分割噴射時の各回の燃料噴射における燃料噴射量が燃料噴射弁14の最小燃料噴射量を下回るようになる場合、或いは、3.要求燃料噴射量QINJが増大したり機関回転速度が高回転域に移行したりすることにより、分割噴射時において1回目の燃料噴射が終了する前に2回目の燃料噴射が開始されてしまう場合には、燃料噴射弁14の燃料噴射形態が全気筒#1〜#4とも一括噴射に設定される。
【0030】
図2(a)に示されるように、この一括噴射では、要求燃料噴射量QINJと燃料圧とに応じて定まる燃料噴射時間τをもって同要求燃料噴射量QINJと等しい量の燃料が吸気行程において一度に噴射される。また、一括噴射時において燃料噴射が開始される時期(燃料噴射時期AINJ)は、アクセル開度及び機関回転速度等、機関運転状態に応じてその都度設定される。
【0031】
これに対して、機関低温時であって噴射燃料の良好な拡散性が確保できないと判断され、且つ、上記2.又は3.の各場合のいずれにも該当しない場合には、燃料噴射弁14の燃料噴射形態が全気筒#1〜#4とも分割噴射に設定される。
【0032】
図2(b)に示されるように、この分割噴射では、要求燃料噴射量QINJがニ分され、その二分された各量と燃料圧とに応じて定まる燃料噴射時間τ1,τ2(以下、それぞれ「第1燃料噴射時間」、「第2燃料噴射時間」という)をもって燃料が吸気行程において分割して噴射される。
【0033】
この分割噴射時において1回目の燃料噴射が開始される時期(以下、「第1燃料噴射時期AINJ1」という)は、一括噴射時の燃料噴射時期AINJと同様にアクセル開度及び機関回転速度等、機関運転状態に応じてその都度設定される。尚、以下の説明では、この分割噴射時の第1燃料噴射時期AINJ1と一括噴射時の燃料噴射時期AINJとは同じ時期に設定されているものとするが、これらは異なる時期となるように各別に設定されるものであってもよい。
【0034】
また、同じく分割噴射時において2回目の燃料噴射が開始される時期(以下、「第2燃料噴射時期AINJ2」という)は、上記第1燃料噴射時期AINJ1よりも所定クランク角AINTVだけ遅角側の時期(AINJ1+AINTV)に設定される。尚、以下の説明では、上記所定クランク角AINTVは一定値(例えば120°CA(CAはクランク角を示す))に設定されているものとするが、これは機関回転速度やアクセル開度等の機関運転状態に応じてその都度設定されるものであってもよい。
【0035】
次に、こうした燃料噴射制御の処理手順について図3〜図5のフローチャートを参照して説明する。尚、このフローチャートに示される一連の処理は、各気筒#1〜#4の燃料噴射タイミングに同期した所定のタイミングをもって電子制御装置30により繰り返し実行される。
【0036】
この一連の処理では、まず、水温センサ33により検出される冷却水温THWが所定温度THW1以下であるか否かが判断される(図3のステップ100)。上記所定温度THW1は、機関冷間時にあること、換言すれば噴射燃料の良好な拡散性が確保できない状態にあることを判定するためのものであり、完全暖機状態とみなせる温度(例えば「80℃」)に設定されている。
【0037】
ここで、冷却水温THWが所定温度THW1を上回っている旨判断された場合(ステップ100:NO)、即ち噴射燃料について良好な拡散性が確保されており、分割噴射を実行する必要がないと判断された場合、この一連の処理は一旦終了される。
【0038】
一方、冷却水温THWが所定温度THW1以下である旨判断された場合には(ステップ100:YES)、機関回転速度NE及びアクセル開度ACCPに基づいて、要求燃料噴射量QINJ並びに一括噴射時の燃料噴射時期AINJ(=分割噴射時の第1燃料噴射時期AINJ1)がそれぞれ算出される(ステップ110)。
【0039】
次に、燃料噴射弁14の燃料噴射形態を分割噴射に設定した場合において、その1回目の燃料噴射によって噴射される燃料の量(以下、「第1燃料噴射量QINJ1」という)と、2回目の燃料噴射によって噴射される燃料の量(以下、「第2燃料噴射量QINJ2」という)とが以下の各式(1),(2)によりそれぞれ算出される(ステップ120,130)。
【0040】
QINJ1←QINJ・KQP ・・・(1)
QINJ2←QINJ・(1−KQP) ・・・(2)
上記各式(1),(2)において「KQP」は、分割噴射時において要求燃料噴射量QINJを分割する際の分割率であり、本実施形態では「0.5」に設定されている。従って、上記第1燃料噴射量QINJ1及び第2燃料噴射量QINJ2と要求燃料噴射量QINJとの間には、(QINJ1=QINJ2=0.5・QINJ)なる関係が成立することとなる。
【0041】
次に、以下の条件式(3)に基づいて、分割噴射時の第1燃料噴射量QINJ1が燃料噴射弁14の最小燃料噴射量αを上回っているか否かが判断される。
QINJ1≧α+QHYS ・・・(3)
QHYS:所定値(>0)
上記最小燃料噴射量αは、燃料噴射弁14において制御可能な最小通電時間(最小噴射時間)と、燃圧センサ34により検出される燃料圧PFとに基づいて算出される。
【0042】
ここで、第1燃料噴射量QINJ1が最小燃料噴射量αを上回っている旨判断された場合(ステップ140:YES)には、更に、分割噴射時の第2燃料噴射量QINJ2についても同様に、これが燃料噴射弁14の最小燃料噴射量αを上回っているか否かが以下の条件式(4)に基づいて判断される(ステップ150)。
【0043】
QINJ2≧α+QHYS ・・・(4)
そして、第2燃料噴射量QINJ2が最小燃料噴射量αを上回っている旨判断された場合には(ステップ150:YES)、分割噴射時の各回の燃料噴射における燃料噴射量QINJ1,QINJ2がいずれも燃料噴射弁14の最小燃料噴射量αを上回っており、燃料噴射形態を分割噴射に設定可能であるとして、今回の燃料噴射タイミングに対応する気筒#i(i=1〜4)についてその分割噴射許可フラグEX2INJ(i)(i=1〜4)が「オン」に設定される(ステップ160)。
【0044】
これに対して、分割噴射時における各燃料噴射量QINJ1,QINJ2の少なくとも一方が燃料噴射弁14の最小燃料噴射量αを上回っていない場合には(ステップ140:NO又はステップ150:NO)、こうした分割噴射許可フラグEX2INJ(i)のオン操作は行なわれない。
【0045】
次に、分割噴射時の各燃料噴射量QINJ1,QINJ2が燃料噴射弁14の最小燃料噴射量αを下回っているか否かが判断される(ステップ170,180)。そして、分割噴射時の各燃料噴射量QINJ1,QINJ2の少なくとも一方が最小燃料噴射量αを下回っている場合には(ステップ170:YES又はステップ180:YES)、燃料噴射形態を分割噴射に設定することができないと判断され、分割噴射許可フラグEX2INJ(i)が「オフ」に設定される(ステップ185)。これに対して、分割噴射時の各燃料噴射量QINJ1,QINJ2がいずれも最小燃料噴射量α以上である場合には(ステップ170,180:NO)、こうした分割噴射許可フラグEX2INJ(i)のオフ操作は行なわれない。
【0046】
このように、上記一連の処理(ステップ120〜ステップ185)では、要求燃料噴射量QINJ及び上記分割率KQPから求められる分割噴射時の各燃料噴射量QINJ1,QINJ2に基づいて燃料噴射形態を分割噴射に設定可能か否かが各気筒#1〜#4毎に判断され、その設定の可否に応じて分割噴射許可フラグEX2INJ(i)が操作される。尚、上記所定値QHYSは、分割噴射時の各燃料噴射量QINJ1,QINJ2が最小燃料噴射量αを跨いで変動するような場合に、その変動に応じて分割噴射許可フラグEX2INJ(i)の値が「オン」及び「オフ」の間で頻繁に切り替わる、いわゆるハンチング現象の発生を避けるために設定されたヒステリシス項である。
【0047】
次に、分割噴射許可フラグEX2INJ(i)が全て「オン」であるか否か、換言すれば、燃料噴射形態を分割噴射に設定可能である旨の判断が全気筒#1〜#4についてなされているか否かが判断される(ステップ190)。そして、同判断が全気筒#1〜#4についてなされている場合には(ステップ190:YES)、分割噴射実行フラグEX2INJALLが「オン」に設定される(ステップ200)。一方、全気筒#1〜#4のうち少なくとも一気筒について燃料噴射形態を分割噴射に設定可能ではない旨の判断がなされている場合には(ステップ190:NO)、分割噴射実行フラグEX2INJALLが「オフ」に設定される(ステップ205)。
【0048】
この分割噴射実行フラグEX2INJALLは、燃料噴射形態を分割噴射に設定可能であるか否かを最終的に判断するためのものであり、この分割噴射実行フラグEX2INJALLが「オン」である場合にのみ分割噴射が実行される。従って、仮に一部の気筒において分割噴射が実行可能である旨の判断がなされていても、この分割噴射実行フラグEX2INJALLが「オフ」に設定されている場合には、分割噴射の実行が全気筒#1〜#4について一律に禁止される。
【0049】
次に、燃料噴射形態を分割噴射に設定可能か否かの判断結果に応じて、分割噴射時の各燃料噴射時間τ1,τ2或いは一括噴射時の燃料噴射時間τが算出され、更にこれら各燃料噴射時間τ1,τ2,τが必要に応じて補正される(図4のステップ210〜280,ステップ245〜ステップ275)。
【0050】
即ちまず、機関始動時の冷却水温THW(始動時冷却水温THWSTAT)に基づいて噴射量補正係数FCW(<1.0)が算出される(ステップ210)。
上述したように、分割噴射時には噴射燃料が良好に拡散されるようになるため、噴射燃料のうちピストン17の頂面やシリンダ11の内壁面に付着して一時的に蓄積する燃料の量は、一括噴射時と比較して少なくなる。従って、燃料噴射形態が分割噴射から一括噴射に切り替えられた直後は、噴射燃料のうちピストン17の頂面やシリンダ11の内壁面に新たに付着する燃料の量(以下、「燃料付着量」という)がこれらピストン17の頂面やシリンダの内壁面から蒸発して燃焼に寄与する燃料の量(以下、「燃料蒸発量」という)を一時的に上回るようになるため、空燃比がリーンになる傾向がある。これに対して、燃料噴射形態が一括噴射から分割噴射に切り替えられた直後は、上記燃料蒸発量が上記燃料付着量を一時的に上回るようになるため、空燃比がリッチになる傾向がある。
【0051】
上記噴射量補正係数FCWは、このように燃料噴射形態が切り替えられた直後に燃料付着量と燃料蒸発量との間の平衡状態が一時的にくずれることに起因して空燃比が変動してしまうのを、燃料噴射時間の補正を通じて抑制するためのものである。
【0052】
図6は、この噴射量補正係数FCWと始動時冷却水温THWSTATとの関係を示す演算用マップである。同図6に示されるように、噴射量補正係数FCWは始動時冷却水温THWSTATが低いときほど大きな値に設定される。始動時冷却水温THWSTATが低い場合には、ピストン17の頂面やシリンダ11の内壁面の温度が低く、従ってこれら各面に付着して一時的に蓄積される燃料の量も増大する傾向がある。そして、このようにピストン17の頂面等に蓄積される燃料の量が増大すると、上述したような燃料噴射形態の切り替えに伴う空燃比の変動も一層顕著なものになる。
【0053】
そこで、本実施形態では、始動時冷却水温THWSTATが低いときほど噴射量補正係数FCWを大きな値に設定することにより、燃料噴射時間を補正する際の補正量をより大きく設定し、こうした空燃比の変動を確実に抑えるようにしている。またここで、噴射量補正係数FCWを算出するためのパラメータとして機関始動時の冷却水温THW(THWSTAT)を用いるようにしているのは、内燃機関10が完全暖機状態に移行するまで、即ち先のステップ100において冷却水温THWが所定温度THW1より高いと判断されるようになるまでは、その時々の冷却水温THWよりも機関始動時の冷却水温THWのほうが、ピストン17の頂面やシリンダ11の内壁面の温度に対してより強い相関を示すことに基づいている。
【0054】
このようにして噴射量補正係数FCWが算出されると、更に以下の式(5)に基づいてこの噴射量補正係数FCWが補正される(ステップ220)。
FCW←FCW・K ・・・(5)
上述したように、燃料噴射形態が切り替えられた直後は、燃料付着量と燃料蒸発量との間の平衡状態が一時的にくずれることに起因して空燃比が大きく変動するが、その後は時間の経過に伴って燃料付着量及び燃料蒸発量が徐々にその平衡状態に近づくように変化するため、それに応じて空燃比の変動も徐々に減少するようになる。
【0055】
上式(5)において、「K」は、このように空燃比の変動が徐々に減少するのに合わせて噴射量補正係数FCWを減衰させるための係数である。この減衰係数Kは、燃料噴射形態が切り替えられた後における各気筒#1〜#4毎での噴射回数NINJに基づいて設定されており、同噴射回数NINJが多くなるほど、即ち燃料噴射形態が切り替えられた後の経過時間が長くなるほど小さな値に設定される。
【0056】
このようにして噴射量補正係数FCWが補正されると、次に分割噴射実行フラグEX2INJALLが「オン」であるか否かが判断される(ステップ230)。そして、分割噴射実行フラグEX2INJALLが「オン」である場合には(ステップ230:YES)、以下の各式(6),(7)に基づいて分割噴射時の第1燃料噴射時間τ1及び第2燃料噴射時間τ2がそれぞれ算出される(ステップ240,250)。
【0057】
τ1←QINJ1・KPN1 ・・・(6)
τ2←QINJ2・KPN2 ・・・(7)
上記各式(6),(7)において、「KPN1」,「KPN2」はいずれも燃料噴射量QINJ1,QINJ2を燃料噴射時間τ1,τ2に換算するための換算係数であり、燃料圧PFに基づいて設定されている。
【0058】
次に、燃料噴射形態が一括噴射から分割噴射に切り替えられた後の各気筒#1〜#4毎での噴射回数NINJが所定回数N以下であるか否かが判断される(ステップ260)。この所定回数Nは、上述したような燃料噴射形態の切り替えに伴う空燃比の変動が発生する期間の長さに応じて設定されるものであり、ここでは始動時冷却水温THWSTATが低く、上記空燃比の変動が最も長期にわたって発生する場合に適合する値(固定値)に設定されている。上記判断(ステップ260)において、噴射回数NINJがこの所定回数N以下である場合には、燃料噴射形態が切り替えられてから所定期間が経過しておらず、その切り替えに伴う空燃比の変動が無視できない状況にあると判断される(ステップ260:YES)。そしてこの場合には、先の各式(6),(7)に基づいて算出された各燃料噴射時間τ1,τ2が更に以下の各式(8),(9)に基づいて補正される(ステップ270,280)。
【0059】
τ1←τ1・(1−FCW) ・・・(8)
τ2←τ2・(1−FCW) ・・・(9)
これら各式(8),(9)に基づいて各燃料噴射時間τ1,τ2が補正されることにより、分割噴射時の各燃料噴射量QINJ1,QINJ2、ひいてはこれら各燃料噴射量QINJ1,QINJ2の和である要求燃料噴射量QINJが減量補正されるようになる。そして、こうした要求燃料噴射量QINJの減量補正を通じて燃料噴射形態が一括噴射から分割噴射に切り替えられたことに起因する空燃比のリッチ化が抑制されるようになる。更に、噴射量補正係数FCWが減衰係数Kに基づいて補正されているため、上記要求燃料噴射量QINJの減量補正は、燃料噴射形態の切り替え後に空燃比の変動が徐々に減少するのに応じて行なわれるようになる。従って、上記空燃比のリッチ化が一層確実に抑制されるようになる。
【0060】
一方、先のステップ230において、分割噴射実行フラグEX2INJALLが「オフ」である旨判断された場合には(ステップ230:NO)、以下の式(10)に基づいて一括噴射時における燃料噴射時間τが算出される(ステップ245)。
【0061】
τ←QINJ・KPN ・・・(10)
上式(10)において、「KPN」は一括噴射時の燃料噴射量、即ち要求燃料噴射量QINJを燃料噴射時間τに換算するための換算係数であり、燃料圧PFに基づいて設定されている。
【0062】
次に、燃料噴射形態が分割噴射から一括噴射に切り替えられた後の各気筒#1〜#4毎での噴射回数NINJが所定回数N以下であるか否かが判断される(ステップ265)。そして、上記噴射回数NINJが所定回数N以下である場合、換言すれば、燃料噴射形態が切り替えられてから所定期間が経過しておらず、その燃料噴射形態の切り替えに伴う空燃比の変動が無視できないものと判断される場合には(ステップ265:YES)、上式(10)に基づいて算出された燃料噴射時間τが更に以下の式(11)に基づいて補正される(ステップ275)。
【0063】
τ←τ・(1+FCW) ・・・(11)
上式(11)に基づいて燃料噴射時間τが補正されることにより、一括噴射時の燃料噴射量、即ち要求燃料噴射量QINJが増量補正されるようになる。そして、こうした要求燃料噴射量QINJの増量補正を通じて燃料噴射形態が分割噴射から一括噴射に切り替えられたことに起因する空燃比のリーン化が抑制されるようになる。更に、噴射量補正係数FCWが減衰係数Kに基づいて補正されているため、上記要求燃料噴射量QINJの増量補正は、燃料噴射形態の切り替え後に空燃比の変動が徐々に減少するのに応じて行われるようになる。従って、上記空燃比のリーン化が一層確実に抑制されるようになる。
【0064】
上式(11)に基づいて燃料噴射時間τが補正された後(ステップ275)、或いは上記噴射回数NINJが所定回数Nを上回るようになり、同補正の必要がないと判断された場合には(ステップ265:NO)、先に算出された一括噴射時の燃料噴射時期AINJ並びに上記燃料噴射時間τに基づいて一括噴射が実行される(図5のステップ370)。
【0065】
一方、先の各式(8),(9)に基づいて分割噴射時の各燃料噴射時間τ1,τ2が補正された後(ステップ270,280)、或いは上記噴射回数NINJが所定回数Nを上回るようになり、同補正の必要がないと判断された場合には(ステップ260:NO)、以下の条件式(12)に基づいて、分割噴射時における1回目の燃料噴射が終了する前に2回目の燃料噴射が開始される状況にあるか否かが判断される(図5のステップ300)。
【0066】
τ1≧TINTV ・・・(12)
上式(12)において、「TINTV」は、分割噴射時において1回目の燃料噴射が開始される時期と2回目の燃料噴射が開始される時期との間の時間間隔であり、具体的には、第2燃料噴射時期AINJ2の算出に際して第1燃料噴射時期AINJ1に加算される所定クランク角AINTV(図2参照)を機関回転速度NEに基づいて時間に換算した値(以下、「噴射インターバル」という)である。
【0067】
分割噴射時の第1燃料噴射時間τ1が、この噴射インターバルTINTV以上である場合には(ステップ300:YES)、分割噴射時の1回目の燃料噴射が終了する前に2回目の燃料噴射が開始されるため(τ1>TINTV)、要求燃料噴射量QINJと等しい量の燃料を分割噴射により噴射することができないか、或いは、1回目の燃料噴射が終了すると同時に2回目の燃料噴射が開始されるため(τ1=TINTV)、分割噴射による噴射燃料の拡散化が期待できないものと判断され、分割噴射許可フラグEX2INJ(i)が「オフ」に設定される。一方、分割噴射時の第1燃料噴射時間τ1が噴射インターバルTINTVより短い場合には(ステップ300:NO)、こうした分割噴射許可フラグEX2INJ(i)のオフ操作は行なわれない。
【0068】
次に、上記噴射インターバルTINTVから所定値THYSを減算した減算値(TINTV−THYS)と分割噴射時の第1燃料噴射時間τ1とが比較される(ステップ320)。そして、分割噴射時の第1燃料噴射時間τ1がこの減算値(TINTV−THYS)を下回っている場合には(ステップ320:NO)、分割噴射時の第1燃料噴射時間τ1が噴射インターバルTINTVより十分に短いため、分割噴射において要求燃料噴射量QINJと等しい量の燃料を噴射することができるものと判断され、分割噴射許可フラグEX2INJ(i)が「オン」に設定される。一方、分割噴射時の第1燃料噴射時間τ1が上記減算値(TINTV−THYS)以上である場合には(ステップ320:NO)、こうした分割噴射許可フラグEX2INJ(i)のオン操作は行なわれない。
【0069】
このように、上記一連の処理(ステップ300〜ステップ330)では、分割噴射時の第1燃料噴射時間τ1が、1回目の燃料噴射時期AINJ1と2回目の燃料噴射時期AINJ2との間の噴射インターバルTINTVよりも長くなるか否かを各気筒#1〜#4毎に判断し、その判断結果に応じて分割噴射許可フラグEX2INJ(i)が操作される。尚、上記所定値THYSは、分割噴射時の第1燃料噴射時間τ1が噴射インターバルTINTVを跨いで変動するような場合に、その変動に応じて分割噴射許可フラグEX2INJ(i)の値が「オン」及び「オフ」の間で頻繁に切り替わるハンチング現象の発生を避けるために設定されたヒステリシス項である。
【0070】
次に、分割噴射許可フラグEX2INJ(i)が全て「オン」であるか否か、換言すれば、燃料噴射量の不足を招くことなく分割噴射を実行することが可能である旨の判断が全気筒#1〜#4についてなされているか否かが判断される(ステップ340)。そして、分割噴射許可フラグEX2INJ(i)が全て「オン」である場合には、分割噴射時の各燃料噴射時期AINJ1,AINJ2並びに燃料噴射時間τ1,τ2に基づいて分割噴射が実行される(ステップ350)。
【0071】
一方、全気筒#1〜#4のうち少なくとも一気筒について燃料噴射量の不足を招くことなく分割噴射を実行することができない旨の判断がなされている場合には(ステップ340:NO)、分割噴射実行フラグEX2INJALLが「オフ」に設定される(ステップ360)。そしてこの場合には、先のステップ245,265,275の処理を通じて一括噴射時の燃料噴射時間τが求められた後、一括噴射が実行される。
【0072】
このように一括噴射或いは分割噴射が実行された後(ステップ350,370)、この一連の処理は一旦終了される。
以上説明した処理手順に従って燃料噴射弁14の燃料噴射形態を制御するようにした本実施形態の燃料制御装置によれば、以下に示す作用効果を奏することができる。
【0073】
・要求燃料噴射量QINJに基づいて燃料噴射形態を分割噴射に設定可能か否かを各気筒#1〜#4毎に判断し、全気筒のうち少なくとも一気筒について燃料噴射形態を分割噴射に設定可能ではない旨の判断がなされるときに、燃料噴射形態が分割噴射に設定されるのを全気筒について禁止するようにした。従って、燃料噴射弁14の燃料噴射形態を分割噴射に設定可能か否かの判断が各気筒#1〜#4間における回転変動に起因して各気筒#1〜#4毎に異なるようになった場合でも、その判断結果に応じて燃料噴射形態が一括噴射と分割噴射との間で頻繁に切り替えられることがなく、こうした燃料噴射形態の頻繁な切り替えによって生じる機関出力の変動により各気筒#1〜#4間における回転変動が更に助長されるのを抑制することができる。
【0074】
・また、分割噴射時の各燃料噴射量QINJ1,QINJ2がいずれも燃料噴射弁14の最小燃料噴射量αを上回るときに、その気筒#1〜#4について燃料噴射形態を分割噴射に設定可能である旨判断するようにした。従って、燃料噴射形態が分割噴射に設定される場合に、要求燃料噴射量QINJと等しい量の燃料を同分割噴射における各回の燃料噴射を通じて確実に噴射することができ、燃料噴射量の不足に起因する空燃比のリーン化を抑制することができる。
【0075】
・更に、分割噴射時の第1燃料噴射時間τ1が第1燃料噴射時期AINJ1と第2燃料噴射時期AINJ2との間の噴射インターバルTINTVよりも長くなるか否かを各気筒気筒#1〜#4毎に判断し、同噴射インターバルTINTVよりも第1燃料噴射時間τ1が長くなる旨判断されるときに、燃料噴射形態が分割噴射に設定されるのを禁止するようにした。従って、燃料噴射時間を確保することができず、分割噴射時における実際の燃料噴射量が要求燃料噴射量QINJに対して不足するような場合には分割噴射の実行が禁止されるため、こうした燃料噴射量の不足に起因する機関出力の低下や空燃比のリーン化を回避することができる。
【0076】
・特に、この判断に際しては、全気筒#1〜#4のうち少なくとも一気筒について燃料噴射量の不足を招くことなく分割噴射を実行することができない旨の判断がなされている場合に、その燃料噴射量の不足が発生する気筒のみならず、全気筒#1〜#4について燃料噴射形態が分割噴射に設定されるのを禁止するようにした。従って、分割噴射時に燃料噴射量の不足が発生する一部の気筒の燃料噴射形態だけが一括噴射に設定されることにより燃料噴射形態が一括噴射と分割噴射との間で頻繁に切り替えられてしまうようなことがなく、こうした燃料噴射形態の頻繁な切り替えによって生じる回転変動を抑制することができる。
【0077】
・燃料噴射弁14の燃料噴射形態が一括噴射から分割噴射に切り替えられた後、各気筒#1〜#4での噴射回数NINJが所定回数Nを超えるようになるまでは、分割噴射時の各燃料噴射時間τ1,τ2の補正を通じて要求燃料噴射量QINJを減量補正するようにした。更に、燃料噴射形態が分割噴射から一括噴射に切り替えられた後、各気筒#1〜#4での噴射回数NINJが所定回数Nを超えるようになるまでは、一括噴射時の燃料噴射時間τの補正を通じて要求燃料噴射量QINJを増量補正するようにした。従って、燃料噴射形態が一括噴射と分割噴射との間で切り替えられた直後に、燃料付着量と燃料蒸発量との間の平衡状態が一時的にくずれることに起因して空燃比が変動するのを抑えることができ、こうした空燃比の変動に伴うエミッションの悪化や回転変動の増大を抑制することができるようになる。
【0078】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、同実施形態の燃料噴射制御装置は以下のようにその構成を変更することもできる。
・上記実施形態では、分割噴射に際して、要求燃料噴射量QINJと等しい量の燃料を2回に分割して噴射するようにしたが、例えば同燃料を3回以上に分割して噴射するようにしてもよい。
【0079】
・上記実施形態では、要求燃料噴射量QINJと等しい量の燃料を分割するに際してこれを等分割するようにしたが、その分割率KQPは任意に設定することができる。
【0080】
・上記実施形態では、噴射量補正係数FCWを始動時冷却水温THWSTATに基づいて算出するようにしたが、同噴射量補正係数FCWを算出するためのパラメータは、こうした始動時冷却水温THWSTATに限らず、ピストン17の頂面やシリンダ11の内壁面の温度に対し強い相関を示すものであればよい。例えば、機関始動後からの燃料噴射量や吸入空気量を積算し、その積算値に基づいて同噴射量補正係数FCWを算出するようにしてもよい。或いは、始動時冷却水温THWSTATに基づき上記ピストン17の頂面等の温度についてその初期値を推定するとともに、上記積算値に基づいて機関始動後からの温度上昇量を推定し、これら初期値及び温度上昇量をパラメータとして噴射量補正係数FCWを算出するようにしてもよい。
【0081】
・上記実施形態では、燃料噴射形態が切り替えられた後の噴射回数NINJが所定回数Nを超えるようになるまで要求燃料噴射量QINJの減量補正或いは増量補正を行なうようにしたが、こうした要求燃料噴射量QINJの補正を燃料噴射形態が切り替えられた後の経過時間が所定時間に達するまで行なうようにしてもよい。また、上記所定回数Nや上記所定時間については、これらを冷却水温THWが高いときほど小さく(或いは短く)設定する等、ピストン17の頂面やシリンダ11の内壁面の温度に対し強い相関を有するパラメータに応じて可変設定するようにしてもよい。
【0082】
・上記実施形態では、要求燃料噴射量QINJを減量補正する場合も増量補正する場合も同じ噴射量補正係数FCWを用いるようにしたが、減量補正時と増量補正時とで異なる噴射量補正係数FCWを用いるようにしてもよい。また、減衰係数Kについても同様に、これを減量補正時と増量補正時とで異なる値に設定することができる。更に、この減衰係数Kについては、これを冷却水温THWが高いときほど大きく設定する等、ピストン17の頂面やシリンダ11の内壁面の温度に対し強い相関を有するパラメータに応じて可変設定するようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【図1】筒内噴射式内燃機関並びにその燃料噴射制御装置についての概略構成図。
【図2】吸気行程噴射における燃料噴射形態を説明するための説明図。
【図3】燃料噴射制御の処理手順を示すフローチャート。
【図4】燃料噴射制御の処理手順を示すフローチャート。
【図5】燃料噴射制御の処理手順を示すフローチャート。
【図6】機関始動時の冷却水温と噴射量補正係数との関係を示す演算用マップ。
【符号の説明】
10…内燃機関、11…シリンダ、12…燃焼室、13…吸気通路、14…燃料噴射弁、14a…噴孔部、15…排気通路、16…デリバリパイプ、17…ピストン、18…高圧ポンプ、20…フィードポンプ、22…燃料タンク、30…電子制御装置、30a…メモリ、31…回転速度センサ、32…アクセルセンサ、33…水温センサ、34…燃圧センサ、#1〜#4…気筒。
Claims (6)
- 内燃機関の気筒内に燃料を直接噴射する筒内噴射用の燃料噴射弁を備え、機関運転状態に応じて要求される要求燃料噴射量を一括して吸気行程に噴射する一括噴射と同要求燃料噴射量を分割して吸気行程に噴射する分割噴射との間で前記燃料噴射弁の燃料噴射形態を切り替え制御する筒内噴射式内燃機関の燃料噴射制御装置において、
前記要求燃料噴射量に基づいて燃料噴射形態を分割噴射に設定可能か否かを各気筒毎に判断し、全気筒のうち少なくとも一気筒について燃料噴射形態を分割噴射に設定可能ではない旨の判断がなされるときに、燃料噴射形態が分割噴射に設定されるのを全気筒について禁止する禁止手段を備える
ことを特徴とする筒内噴射式内燃機関の燃料噴射制御装置。 - 請求項1記載の筒内噴射式内燃機関の燃料噴射制御装置において、
前記禁止手段は、燃料噴射形態を分割噴射としたときの各回の燃料噴射における燃料噴射量がいずれも前記燃料噴射弁の最小燃料噴射量を上回るときに燃料噴射形態を分割噴射に設定可能である旨判断する
筒内噴射式内燃機関の燃料噴射制御装置。 - 請求項1又は2に記載の筒内噴射式内燃機関の燃料噴射制御装置において、
前記禁止手段は更に、分割噴射の実行に際して所定回目の燃料噴射における燃料噴射時間が同所定回目の燃料噴射の燃料噴射開始時期と次回の燃料噴射の燃料噴射開始時期との間の時間間隔よりも長くなるか否かを各気筒毎に判断し、同時間間隔よりも前記所定回目の燃料噴射における燃料噴射時間が長くなる旨判断されるときに、同気筒において燃料噴射形態が分割噴射に設定されるのを禁止する
筒内噴射式内燃機関の燃料噴射制御装置。 - 請求項3に記載の筒内噴射式内燃機関の燃料噴射制御装置において、
前記禁止手段は、全気筒のうち少なくとも一気筒について前記時間間隔よりも前記所定回目の燃料噴射における燃料噴射時間が長くなる旨の判断がなされるときに、燃料噴射形態が分割噴射に設定されるのを全気筒について禁止する
筒内噴射式内燃機関の燃料噴射制御装置。 - 燃料噴射形態が一括噴射から分割噴射に切り替えられてから所定期間が経過するまで前記要求燃料噴射量を減量補正する一方、同燃料噴射形態が分割噴射から一括噴射に切り替えられてから所定期間が経過するまで前記要求燃料噴射量を増量補正する補正手段を更に備える
請求項1乃至4のいずれかに記載の筒内噴射式内燃機関の燃料噴射制御装置。 - 内燃機関の気筒内に燃料を直接噴射する筒内噴射用の燃料噴射弁を備え、機関運転状態に応じて要求される要求燃料噴射量を一括して吸気行程に噴射する一括噴射と同要求燃料噴射量を分割して吸気行程に噴射する分割噴射との間で前記燃料噴射弁の燃料噴射形態を切り替え制御する筒内噴射式内燃機関の燃料噴射制御装置において、
燃料噴射形態が一括噴射から分割噴射に切り替えられてから所定期間が経過するまで前記要求燃料噴射量を減量補正する一方、同燃料噴射形態が分割噴射から一括噴射に切り替えられてから所定期間が経過するまで前記要求燃料噴射量を増量補正する補正手段を備え、
前記要求燃料噴射量の減量補正及び増量補正の少なくとも一方に用いる噴射量補正係数を、機関始動時の機関冷却水の温度、及び機関始動後からの燃料噴射量の積算値、及び機関始動後からの吸入空気量の積算値のいずれか一つに基づいて求める
ことを特徴とする筒内噴射式内燃機関の燃料噴射制御装置。
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