図1は本発明の映像合成処理システムで用いる映像合成演算処理装置の一実施例を示している。図中1は装置全体を表し、1A,1B,1Cは映像信号入力端子、2A,2B,2Cは書き込み用ラインバッファ、3A,3B,3Cはフレームメモリ、4A,4B,4Cは読み取り用ラインバッファを表わしている。これらは合成映像を作成するに必要な映像信号に対応して複数組設けられている。図1の例では映像合成する映像信号はA,B,Cの3個の場合を示している。
1Kは合成制御命令データの入力端子、5は複数の映像データを合成制御命令データの指定する方法により合成演算を行う演算部、6は演算結果用のラインバッファ、7は合成映像出力用のラインバッファ、8は制御メモリ、9は制御メモリ用ラインバッファ、10は各バッファ、メモリの書き込み、読み取りタイミング信号(C2〜C6)を発生するコントローラを表わしている。
書き込み用ラインバッファ2A,2B,2C、読み取り用ラインバッファ4A,4B,4C、演算結果用のラインバッファ6、合成映像出力用のラインバッファ7、制御メモリ用ラインバッファ9はそれぞれFIFO構成となっている。
細部を説明する前に、全体的なシステム構成について説明する。図2は複数の映像信号を受信し、上記の装置を使用して映像合成した後、合成映像信号を実時間で出力し、表示装置に合成映像を表示するシステム例を模式的に示したものである。図2中、20A,20B,20Cは、カメラを表し、21A,21B,21Cはアナログ・デジタル変換部、25はデジタル・アナログ変換器、26は同期信号付加回路、27は表示装置、27aは合成映像を表示する表示画面を表している。
22B,22Cはキー信号発生装置、23B,23Cはアナログ・デジタル変換部、24は映像信号A,B,Cの映像を合成する演算方法を指定する合成制御命令データKを出力する合成制御命令データ作成装置を表している。なお、本明細書において同じ参照符号で表すものは同じものを表している。
コンポジット映像信号がアナログ信号の場合、図2のアナログ・デジタル変換部21A,21B,21Cによりコンポジット信号はデジタル信号に変換される。図3はこの動作を説明する図で、(a)はアナログ・デジタル変換部21A,21B,21Cの構成例を、(b)は装置に入力される出力信号を示している。
図3(a)中、31は水平同期信号H、垂直同期信号Vを取り出す同期信号分離回路、32はアナログ信号のサンプル時点における画素データ(D1〜D8)を出力するアナログ・デジタル変換器、33は書き込み信号Wとコマンド/データ切換信号CSとを出力するパルス信号発生器、34は1水平走査線(以下ライン)における映像信号の描画開始時点の映像信号アドレス部(XX,YY,LL)を作成するためのアドレス発生器を表している。
出力信号のコマンド/データDはコマンドである映像信号アドレス部(XX,YY,LL)と映像データ(DATA)とを含むパケット単位で構成される。XX(8ビット)は映像データが出現する画素番号サンプル番号(画素番号)を、YY(8ビット)はライン番号、LL(8ビット)はサンプル数(画素数)を表している。書き込み信号WはコマンドのXX,YY,LL、映像データ(DATA)のサンプルデータ(画素データ、8ビット)に対応して、読み取り又は書き込みするタイミング信号である。CSはHレベルがコマンド信号期間であることを示すコマンド/データ切換信号である。
なお、図3(b)のコンポジット信号の場合は、描画開始の横方向の位置は左端に固定され(XX=「0」)、さらに画素数LLも一定であるため、アドレス発生器34はライン番号YYを発生するカウンタ回路とXX,LLの値を保持したメモリ回路との組み合わせで実現できる。
デジタル映像データ(DATA)の1ライン分をフレームメモリ3に書き込むまでの動作を図4,図5(a)〜(c),図6を参照して説明する。図4は、書き込み用ラインバッファ2,フレームメモリ3の動作を説明する概略図で、図3の信号を取り入れた場合における一例である。41,43はメモリ、42,44は書き込みアドレス制御手段、45は読み取りアドレス制御手段を表している。
書き込み用ラインバッファ2に書き込まれたデータ(D1〜D8)はコマンド/データ切換信号CSのHレベル期間、書き込み信号Wに同期してコマンドは書き込みアドレス制御手段42に書き込まれる。コマンド/データ切換信号CSのLレベル期間、映像信号の画素データ(DATA)は書き込み信号Wに同期して書き込み用ラインバッファ2のメモリ41に順次書き込まれる。
書き込みアドレス制御手段42内のカウンタに記憶された「LL」は1画素データが書き込まれる毎に減算される。書き込み用ラインバッファ2の書き込み終了をカウンタ値「0」で検出すると、以後に続くブランキング期間に相当する所定期間内でラインデータ全てをフレームメモリ3に転送する。上記所定期間の時点において、書き込みアドレス制御手段44は、転送されてきたパケットデータのアドレス部XX,YY,LLに基づき、書き込み用ラインバッファ2のメモリ41からLL画素分の映像データをフレームメモリ3のラインアドレス#YYのXX番目以降に転送する。
図5は、コンポジット映像信号Aがノン・インタレース走査、合成映像信号Fがインタレース走査である場合のバッファ,フレームの書き込み、読み取り動作を示したタイムチャートである。図中(a)は、入力映像信号AのラインY,Y+1のラインデータAY,AY+1が入力された状態を示している。書き込み用ラインバッファ2Aに書き込まれたラインデータAYは水平帰線ブランキング期間内の時刻t2においてフレームメモリ3Aのラインアドレス#Yの記憶領域に書き込まれる((b),(c)参照)。なお、図5中で、ハッチングしたものは記録された映像データが一括して転送されることを、(c)では次の映像データが転送されて記録内容が更新するまで、(e),(f),(g)では1ライン期間映像データが記憶保持されていることを表している。
図6は、映像合成する映像データA,B,Cが非同期で入力する状態でのフレームメモリにおける映像データの記録更新状態を模式的に説明する図である。映像信号Aはノンインタレース、B,Cはインタレース走査の映像信号である場合である。なお、図5,6中のラインデータにダッシュ(′)を付加したものはt時刻(又は図5中の経過時刻)で記憶データが前フレームの映像データであることを表している。例えば、AYは最新データ、AY+2′は後フレームのデータを表している。
映像データA,B,Cは非同期で順次書き込み用ラインバッファ2A,2B,2Cに書き込まれる(図6(a))。各書き込み用ラインバッファ2A,2B,2Cに書き込まれた映像信号A,B,Cのラインデータは次の水平帰線期間にフレームメモリ3A,3B,3Cのラインアドレスのメモリ領域に書き込まれ、ラインデータを更新する。(図6(b),(c)参照)
次に、フレームメモリ3A,3B,3Cに記憶された映像データを基に映像合成する方法を説明する。キー信号発生装置22B,22Cは前景映像信号を使用するか、背景映像信号を使用するかのキー信号を発生し、アナログ・デジタル変換部23B,23Cで該キー信号が前景映像信号を選択する画素に対応する合成制御データを「1」に、そうでない画素に対応する合成制御データを「0」となるように該キー信号を画素単位でデジタル化し、アドレス部を付加して、合成制御命令データ作成装置24に信号を転送する。
キー信号はクロマキー信号処理、ルミナンスキー信号処理,距離情報を利用したZキー信号処理や、背景画像との差分を用いた信号処理を行う公知のキー信号発生装置により作成できる。ただし、図2の例では、合成制御命令データは前景映像信号B,Cのキー信号だけで決定されるため、背景映像信号Aのキー信号は不要であり、省略している。(詳しくは後述する。)
合成制御命令データ作成装置24はコンピュータで構成され、前景映像信号のキー信号と距離関係情報から合成制御命令データKを生成し、合成画面の画素の演算方法を指定する命令として映像合成処理装置1中の制御メモリ8の合成画面の画素に対応した所定領域に書き込む。合成制御命令データKは映像合成の演算を行うに際し、コンピュータの機械語に相当する機能を有するデータである。
制御メモリ8は、フレームメモリ3A,3B,3Cの画素記憶領域に対応して、メモリの領域が決められている。制御メモリ8の行,列アドレスは、映像信号のラインアドレス,サンプルデータ番号(画素データ番号)に対応させている。つまり、制御メモリに記憶される合成制御命令データはフレームメモリ3A,3B,3Cの画素に対応させて記録され、読み出される。
フレームメモリ3A,3B,3Cの画素に対応させて合成制御命令データが読み出されることにより、映像合成の演算処理手順が制御メモリ8に記憶されていることになる。制御メモリ8の記憶セルを8ビットとすると、制御メモリ8は256種類の合成制御命令データ(演算命令)Kを画素単位で記憶することができる。合成制御命令データ作成装置24は、そのモニタ画面により制御メモリ8に記憶された合成制御命令データを確認、修正できる。
コントローラ10の読み出しタイミングC2のタイミング(図5(d)参照)に同期してフレームメモリ3A,3B,3Cの同一ラインアドレスのラインデータは各々のフレームメモリから読み取り用ラインバッファ4A,4B,4Cにそれぞれ転送される(図5、時刻t3参照)。
図5の(e)映像データAは各映像信号の映像データを代表して示している。フレームメモリ3Aのラインアドレス・・・,#Y−2,#Y,#Y+2,・・・のラインデータ・・・,AY−2,AY,AY+2′,AY+4′,・・・は1ラインデータ毎に読み取られ、タイミングC2に同期して順次読み取り用ラインバッファ4Aに書き込まれる。ラインY+4のラインデータはこの時点では未更新なので、前走査のラインデータAY+4′を読み取る。図6の例で、時刻tでフレームメモリ3A,3B,3Cのラインアドレス#3のラインデータを読み取り用ラインバッファ3A,3B,3Cにそれぞれ読み取るタイミングの場合では、ラインデータA3′,B3,C3が各読み取り用バッファにそれぞれ転送される。
一方、合成制御命令データKも、読み取り信号C2に対応して、各フレームメモリの読み取るラインアドレスに対応した行アドレスの1ライン分が制御メモリ8から読み出され、制御メモリ用ラインバッファ9に書き込まれる。読み取り用ラインバッファ4A,4B,4C、制御メモリ用ラインバッファ9はそれぞれ、コンピュータのデータキャッシュメモリ、命令キャッシュメモリの機能を有する。
フレームメモリ3A,3B,3Cの画素に対応する映像データ及び合成制御命令データは読み取り用ラインバッファ4A,4B,4C、制御メモリ用ラインバッファ9からコントローラのタイミングパルスに同期して読み出され演算部5に取り込まれる。演算部5において、合成制御命令データが指定する演算方法により画素毎に合成映像が演算され、画素毎に、コントローラ10のタイミングに同期して順次演算結果用のラインバッファ6に転送される。
このようにして、1ライン分の合成映像が画素単位で演算され、演算結果用のラインバッファ6に書き込まれると、演算結果用のラインバッファ7から1ライン分の合成映像データが、合成映像信号出力用のラインバッファ7に転送される。表示装置27の描画速度と同一速度で、コントローラ10は合成映像信号を画素単位で合成映像信号出力用のラインバッファ7から外部のD/A変換器25に出力する。合成映像信号は、外部のD/A変換器25でアナログ量に変換され、同期信号付加回路26で水平同期信号、垂直同期信号等の信号が付加され表示映像信号として表示装置27に入力され、表示画面27aに描画される。
演算処理は時刻t4から時刻t5の間に終了すれば良く、この演算は1ライン分について画素毎に独立に処理できるので、演算装置を複数個用いることにより、演算の実質的高速化が容易に可能となる。
図7は、上記画素単位の演算処理を高速にするために3個の演算単位でパイプライン並列演算処理をした一実施例である。51,55は1画素分のデータを格納するレジスタ、52,54は1画素分のデータを記憶するデータメモリである。56は制御メモリを画素単位の合成制御命令データKを記憶するレジスタ、57は合成制御命令データKを記憶するメモリを表している。
レジスタ51で直列3画素データを並列に変換し各演算単位53に入力し、レジスタ55は演算結果の並列画素データを入力された順に直列に変換し演算結果用のラインバッファ6に出力する。この例では3倍の高速演算処理ができる。n個の演算単位を使用するとn倍の高速演算処理ができる。
図2のシステム例では、入力映像信号をインタレース(映像信号A)、ノン・インタレース走査信号(映像信号B,C)で、合成映像出力信号をノン・インタレース走査信号で説明したが(図5,図6)、これらは、フレームメモリ43の書き込みアドレス制御手段44、読み取りアドレス制御手段45のアドレス制御により、フレームメモリ43にアドレスを書き込み、フレームメモリ43からアドレスを読み取ることで対応できることは明らかである。
すなわち、1ライン毎のパケットの値が、インタレース走査信号では[1,1,・・・・],[1,3,・・・・],[1,5,・・・・]なので、フレームメモリのラインアドレス#1,#3,#5,・・・の記憶領域に、ノン・インタレース走査信号では[1,1,・・・・],[1,2,・・・・],[1,3,・・・・]なので、フレームメモリのラインアドレス#1,#2,#3,・・・の記憶領域にそれぞれ書き込まれる。また、合成映像出力信号をノン・インタレース走査信号とするならば、読み取りアドレス制御手段45により、フレームメモリのラインアドレス#1,#2,#3,・・・に記憶されたラインデータを読み取ればよい。
図2では、入力映像信号をカメラ撮影信号によるアナログ・コンポジット映像信号として説明したが、テレビ撮影信号,衛星放送の映像信号でも、またデジタル・コンポジット映像信号であっても、さらにコンピュータグラフィック(CG)信号入力でも映像合成は可能である。これらの信号はアナログ・デジタル変換部21A,21B,21Cでパケットデータ作成を調整することにより対応できる。
図8は、合成映像の作成例を示している。この例は、映像信号Aに背景映像が、映像信号Bに自動車の映像が、映像信号Cに人物の映像が与えられ、合成映像の合成制御命令データが映像信号A,B,Cだけをそれぞれ選択する命令データKA,KB,KCである場合の例である。映像信号A,Bは合成映像信号Fと同じ画素数の映像信号であり、映像信号Cはそれらより小さい画素数の映像信号とする例である。映像信号Cは合成画面の画素位置に対応したフレームバッファの所定記憶領域に書き込まれる。書き込みを行わない部分(映像信号Cの図の黒い部分)は最終的に使用されることがないので、どのような値でも構わない。
合成制御命令データ作成装置24は、これらの入力映像信号A,B,Cの画像のいずれを使用するか否かの合成制御データAs,Bs,Csを基に、映像信号A,B,Cだけを選択する合成制御命令データKA,KB,KCを作成し、制御メモリ8中の合成画面の画素に対応する所定領域に書き込む。
例えば、図2の各映像信号A,B,Cの例で説明する。この例では、合成画像上で各映像信号を選択する基準は、視聴者に近い標準距離の映像信号を優先、つまり標準距離の逆順位で選択するとする。合成映像上での標準距離は、背景映像信号A>前景映像信号B>前景映像信号Cであるので、合成制御命令データKの合成画面の画素(x,y)に対する命令K(x,y)は、合成制御データBs,Csに対して以下の値(命令コード,8ビット)が割り当てられる。
Cs(x,y)=「1」 のとき、
映像信号Cを選択する命令KC、
Cs(x,y)=「0」 かつ Bs(x,y)=「1」のとき、
映像信号Bを選択する命令KB、
Cs(x,y)=「0」 かつ Bs(x,y)=「0」のとき、
映像信号Aを選択する命令KA、
このとき、映像信号Aの選択は不要なので、映像信号Aのキー信号は省略できる。
合成制御命令データKA,KB,KCは合成制御命令データ作成装置24のモニタ画面に図8のように映像信号と関連させて表示することができる。背景映像信号Aの地点に、映像信号Bの自動車の指定した1台と、映像信号Cの人物の中の指定した1人がいるような合成映像Fが得られ、表示装置27に描画される。
複数の画像データは合成映像を作り出す時点で、失う訳ではない。例えば、合成映像には使われないある物体の後方に隠れる部分の映像も、フレームメモリに保存されている。この性質を積極的に利用して映像情報を送受信することにより、伝送する場合に必要な情報量を大幅に低下させることも可能である。例えば、ある風景に自動車があり、その手前に人物が動いている映像があるとすると、これを、映像の背景、自動車の映像、人物の映像としてそれぞれ独立した映像として送信し、受信側で、それらを組み合わせて映像を再生する。
動きの速い自動車は、例えば秒60コマで、背景は秒5コマで送ることもできる。映像合成画面の表示方式では、自動車の移動によって、一旦は自動車の後ろになった背景画面が、自動車の通過により再表示される時点で、再送信する必要はない。それは合成映像で一旦は表示されなくなった背景画像は失ったのではなく、合成表示されなかっただけで、画像メモリ(フレームメモリ)に残っているからである。
同様に、時々刻々書き換えられるそれぞれの画像メモリとは無関係に、その瞬間の複数の映像データを用いて、合成映像データを作成し、表示することもできる。例えば、上記の背景の秒5コマ、人物の秒15コマ、自動車の秒60コマの合成映像が、ディスプレーの性能に応じた読み出し速度、例えば、秒70コマで表示することも問題なくできる。
図9はこれら複数の素材の映像を撮影し、それらの映像信号を加工し、合成映像を作成してから放送する代わりに、素材の映像信号と合成制御命令データ又は合成制御データを作成し、これらのデータを放送し、受信側では、これらのデータを基に映像合成処理装置1を使用して合成映像を得て、受信側の表示装置の描画速度で実時間で出力するシステム構成例を模式的に示している。図9(a)のシステムは、放送局側で作成された素材映像信号、合成制御命令データを送信し、受信側で合成映像を作成するシステム構成であり、図9(b)のシステムは、放送局側で作成された素材映像信号、合成制御データを送信し、受信側において受信した合成制御データに基づいて合成制御命令データを作成して、合成映像を作成するシステム構成の例である。
図中、60は合成制御命令データ作成装置、61は送信パケット作成部、62は送信装置、63は受信装置を表している。60Sは合成制御データ作成装置、60Rは合成制御命令データ作成装置を表している。なお、図9(a),(b)の例では、キー信号発生装置、アナログ・デジタル変換部に相当する装置は、合成制御命令データ作成装置60,合成制御データ作成装置60S内に組みこまれている。
素材映像信号A,B,Cは、図9(a)の例ではそれぞれカメラ20A,20B,20Cにより撮影された背景,車,人物の映像信号である。合成制御命令データ作成装置60は撮影された各映像画面をもとに画素毎に合成制御命令データKを作成する。映像信号A,B,C、合成制御命令データKはそれぞれに最適なデータ圧縮・加工を施した後、送信パケット作成部61によりパケット信号に構成されて、送信される。
図9(b)の合成制御データ作成装置60Sは、映像信号A,B,Cから例えば各種キー処理により、合成制御データを作成する装置である。図2,図9の例において、厳密にはキー信号がそのまま合成制御データに対応せず、距離関係情報(LA,LB,LC又はLA:LB:LC)から合成映像上での標準配置位置(視聴者が位置補正せずに見る位置)が決定されたものとなっている。これは、2値化してカメラマン(撮影者)が意図した構図になるように画面位置(x,y)を標準位置に設定するからである。
距離関係情報を合成制御データ作成装置60Sに入力する方法としては、例えば、カメラマン(撮影者)が直接その値を入力する方法、カメラ毎に距離計測装置を設置して、その計測結果を自動的に入力する方法がある。例えば、カメラマンは観察者(視聴者)から山までLA=10km、車までLB=30m、人物までLC=10mとなる構図となるように映像信号A,B,Cの標準位置を設定する。
図9(b)中、合成制御命令データ作成装置60Rは受信した合成制御命令As〜Cs,LA〜LCに基づいて合成制御命令データKを作成し、映像合成制御装置1の制御メモリに合成制御命令データKを送信する装置である。受信側で合成画面の映像信号の表示位置を修正する場合には、合成制御データとともに距離関係情報が送信側から伝送される。
図9の例では、例えば、背景信号が動きが少ない代りとして高精度の画像が送信でき、人物,車は動きがある代りに画像範囲が狭いという特徴を生かして、小領域だけの画像を送信するとことができる。例えば、画像の送信は全て(XX,YY,LL,画素データ)という1ライン1パケットのデータ形式で行えばこれは可能である。
図10は、図9(a)の方式における送信パケットデータ(A,B,C,K)、映像合成の演算結果(F)のタイムチャート例及びタイムチャートに対応した1フレーム映像画面例(A*,B*,C*)、合成制御命令データ例(K*)、演算映像合成画面(F*)例を模式的に示したものである。この例では、各送信パケットデータはフレーム画像単位で、添え字は送信される順番を表している。合成制御命令データK1*,K2*,K3*は制御メモリに記憶された画素ごとの演算命令データKA,KB,KCをフレーム画像対応で表示している。伝送パケットは映像データの伝送情報量に対応して、非同期で伝送されている。映像信号B,Cの黒い部分は伝送されない画素を表している。
図11(a)は、例えば、3つの素材映像により最終的な合成映像を作り出すことが想定された素材映像群に対し、第2番目の素材映像の代わりに利用者の映像を使うことにより、特定の俳優の代理を利用者が演じる映像を得る映像合成演算処理システム例を模式的に示している。
図11(a)中、65、66は、利用者の素材映像信号の切換設定(図ではBからD)に応じて映像信号、合成制御データをそれぞれ切り換える切換手段を表している。20Dは利用者が合成映像の素材を撮影するカメラを表している。67は複数の素材映像信号(A,B,C)及びこれに関する合成制御データ(As,Bs,Cs)を記録し、合成映像の素材として利用するときに再生する記録再生装置を、68は受信装置63の出力と記録再生装置67の出力とを切り換える切換回路を、69は素材表示位置検出回路を表している。また、受信装置63により受信される素材映像信号及び制御データは切換回路68を介して、記録再生装置67に記録するようにしてもよい。21D,23Dはアナログ・デジタル変換部を、22Dはキー信号発生装置を表し、図2のものと同じ動作を行う。
素材映像信号Dの標準位置データはアナログ・デジタル変換部21D,23Dにより作成される。素材映像信号Dを素材映像信号Bの役者映像の代役映像信号とすると、役者が動き回れば、それに追従して代役の役者を動かす必要がある。素材映像信号Bと素材映像信号Dとが同じ位置になるようにアナログ・デジタル変換部21D,23Dの出力信号D,Dsのアドレス部は調整されて出力される。
素材表示位置検出回路69はこの調節を正確に行うために特に設けられたものである。素材表示位置検出回路69は、合成制御データBsあるいは素材映像信号Bを取り入れて、役者の合成画面上の位置を計算して、それをアナログ・デジタル変換部21D,23Dに出力する。アナログ・デジタル変換部21D,23Dは、これにより調整されたアドレス部の出力信号D,Dsをそれぞれ映像合成演算処理装置1,合成制御命令作成装置60Rに出力する。
図11(b)は該映像合成演算処理システムの素材映像データ、合成制御命令データを例示的に示している。図中A,B,Cは素材映像データで、黒い部分は素材映像データの内放送されない画素を、As,Bs,Csはそれぞれの素材映像の有効範囲を示す合成制御データで、それぞれ画面表示で表している。同様に、Dは利用者を撮影した映像データを、Dsは素材として有効範囲を示す合成制御データを表している。Fは受信した素材映像データA,B,Cを映像合成した合成映像データ、FDは受信素材映像データA,Cと利用者が撮影した素材映像データDを映像合成した合成映像データを画面表示で表したものである。
利用者がカメラ20Dで撮影した映像信号と、キー信号発生装置22Dによって得られたキー信号は、素材表示位置検出回路69によって検出された素材映像Bの表示位置に表示されるように映像データとDと合成制御データDsに加工される。
利用者が撮影した映像を利用して合成映像を作成する場合、切換手段65,66により、素材映像信号A,B,Cの内Bを素材映像信号Dに切換え、合成制御命令データ作成装置60Rに入力している素材映像信号の合成制御データAs,Bs,Csの内合成制御データBsを素材映像信号の合成制御データDsに、切り換える。合成制御命令データ作成装置60Rは合成制御データAs,Bs,Dsから合成制御命令データKを作成し、映像合成処理装置1は素材映像信号A,B,Dと合成制御命令Kデータとから利用者の要求に応じた合成映像FDが得られる。切換回路68により記録再生装置67のデータを利用することができる。
例えば、第1番目,第2番目,第3番目の素材映像信号A,B,Cをそれぞれ背景,俳優,道具の映像とすると、切換手段65,66の切り換えにより第2番目の素材映像信号Bの代わりに利用者の映像信号Dを利用すると、対応した俳優の代わりに利用者が演じている合成映像が得られる。
図12は、図9(b)と同じデータを受信し、受信側では、視聴者の移動位置に追従させて実時間で合成映像画面を動かし、合成映像画面に立体感を持たせた映像合成処理システムを模式的に示したものである。図9(b)中※印に相当する受信側箇所で図12の機能システムを接続する。70は、受信した画像信号パケット先頭の映像信号アドレス部(XX,YY,LL)及び同時に対応する合成制御命令データを加工するアドレス加工処理部、71は表示装置、72は表示装置71と視聴者との位置関係を検知する位置センサー、73は、その値をアドレス加工処理部70にフィードバックするフィードバック信号である。
表示装置71と視聴者との位置関係を位置センサー72により検知し、その値をアドレス加工処理部70にフィードバックする。受信したパケットデータから取り出された距離データと上記相対位置関係とをもとにアドレス加工処理部70は各映像信号アドレス部のXX,YY,LLの加工量を個別に増減制御する。加工された映像信号アドレス部のコマンドを及び映像データを装置1に入力し合成映像を表示装置71に描画する。
アドレス加工処理部70では、合成映像画面におけるカメラ20A,20B,20Cによって撮影された映像信号の奥行きの位置関係を基に、各映像信号アドレス部(XX,YY,LL)のXXの増減値をフィードバック信号73を基に計算し、その結果合成画面からはみ出る部分は削除して画素数LLを調整する。これと同時に、合成制御命令データ作成装置60Rで作成された合成制御命令データの各映像信号を選択する制御命令データの配置も前述の鑑賞位置から算出したXXの増減値に基づき修正を加える。
図13を参照して、アドレス加工処理部70による映像信号A,B,Cおよび合成制御データAs,Bs,Csのアドレス増減制御について、簡単に説明する。(a)は素材映像Aが不動とする場合、(b)は素材映像Cが不動とする場合の位置変動計算例を示している。Δxは、視聴者が位置P1から位置P2への位置変動量を表している。位置センサー72でこの位置変動量Δxを計測し、距離関係情報LA,LB,LCで比例配分し、映像データA,B,Cの位置変動量ΔxA,ΔxB、ΔxCが計算される。この位置変動に応じた画素数だけ映像信号A,B,Cのアドレス部XX、合成制御データAs,Bs,Csのアドレス増減調整がなされ、アドレス加工処理部70から映像信号A’,B’,C’、合成制御データAs’,Bs’,Cs’が出力される。
これにより、視聴者の視点の動きに応じた合成映像をリアルタイムに表示でき、立体感のある映像を視聴者は鑑賞することができる。図12の右側に、鑑賞位置P1での映像と鑑賞位置P2での映像を模式的に例示している。同じ瞬間の映像であっても鑑賞位置P2では、画面内人物は画面内背景の山より右にいるが、鑑賞位置P1では山と人物は重なって、表示されている。
図14は、図9(b)中※印に相当する受信側箇所で接続され、複数の映像信号を受信し、受信側では映像合成演算処理装置を2個使用し、映像信号のアドレス部を加工して両眼視差のある2個の合成映像を出力するステレオ映像合成演算処理システムを模式的に示している。図14(a)中、1R,1Lは右眼,左眼用の映像合成演算処理装置、70R,70Lは右眼,左眼用のアドレス加工処理部、74R,74Lはアドレス加工処理部70R,70Lの映像信号アドレス部(XX,YY,LL)を増減加工する調整入力を表している。
アドレス加工処理部70R,70Lは、右眼,左眼用の映像合成演算処理装置の合成映像出力信号FR,FLが両眼視差により充分遠近感を与える量になるように受信したパケットデータから取り出された距離データをもとに調整入力74R,74Lによりそれぞれのアドレス部を加減調整する。 合成映像信号FR,RLは図示していないステレオディスプレイ装置に供給される。受信側のステレオディスプレイ装置により、両眼視差を利用して得られる立体感のあるステレオ映像を、実時間で視聴者は見ることができる。
図14(b)の映像合成演算システムは、図14(a)の両眼の映像データ内どちらか一方の受信映像データのアドレス加工を省略したシステムである。図14(b)では左眼用映像データはアドレス加工をせず、アドレス加工処理部70により、右眼用,左眼用合成映像信号の両眼視差量だけアドレス部を調整入力74により増減調整する。
映像合成演算処理では、映像合成する映像信号毎にフレームメモリを用意し、書き込み用ラインバッファにより1ライン分の映像データをフレームメモリに書き込み、フレームメモリから1ライン分データを読み出して画像合成の演算処理をするので、従来のように1フレーム後に画像合成するのに比べて合成映像作成に時間遅れが少なく、実時間で映像合成画面を得ることができる。書き込み用ラインバッファ、読み出し用ラインバッファを設けて、フレームメモリのアクセス競合が防止できる。さらに、コンピュータの機械語に相当する映像信号の合成制御命令データを演算部に各画素毎に取り込むことで演算速度が速くなる。
合成画像を1枚のビットマップ型の映像データを作成するのではなく、表示する瞬間に表示する1行分(ライン分)だけをその場で合成して表示するという、汎用性の高い映像画像表示とすることができる。合成演算部は定型処理であり、並列処理により高速化が可能であり、LSIチップで作成でき小型化も可能である。
これらすべての処理が同時並行に進行するので、並列処理ができ、装置内の個々の処理に高速性が要求されずに、合成映像が得られるまでの時間が短くできるという効果を奏する。しかも、映像入力、映像出力及び制御入力は非同期でよいという特長がある。さらに、描画速度(1秒間の画面更新回数)が異なっていても動作できる効果もある。
複数の映像入力、制御メモリのアクセス、映像出力は非同期で良く、それぞれの映像更新周期も等しくする必要はない。さらに更新間隔が不定の映像入力や、画面の一部だけの映像信号であっても構わない。このように、各映像入力信号は他の映像入力信号とは独立に与えることができ、システム全体の複雑さが低減できる。