JP4422431B2 - 光学要素 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、少なくとも5マイクロメートルに等しい粗さ平均を有する粗い表面を含み、前記粗い表面が少なくとも2つの粗さ母集団を含み、前記少なくとも2つの母集団の粗さ平均が少なくとも8マイクロメートル異なる、スペュキュラー光の拡散及び光の拡散強度の調節に好適な光学要素に関する。
【0002】
【従来の技術】
光を散乱又は拡散する光学構造体は、概して、次の2通りの方式の1つで機能を発揮する:(a)多方向に光を屈折又は散乱させるのに表面粗さを利用する表面ディフューザとして;又は(b)平坦な表面と埋め込まれた光散乱性要素を有するバルクディフューザとして。
【0003】
前述の種類のディフューザは、そのディフューザの材料と周囲の媒体との間に最大限可能な屈折率の差をもたらし、その結果、入射光の最大の角度広がりをもたらすように、その粗い表面が空気に露出した状態で通常使用される。しかしながら、この種の幾つかの従来技術の光ディフューザは、空気との接触を必要とするという主な欠点がある。適切に機能を発揮するのに粗い表面が空気と接触しなくてはならないという要件は、低い効率をもたらすことがある。ディフューザの入力及び出力面が例えば接着剤等の別の材料の中に埋め込まれている場合に、ディフューザの光分散能が望ましくない程度まで低下することがある。
【0004】
第2のタイプのディフューザの1つの態様において、バルクディフューザ、すなわち第2の屈折率を有する小さな粒子又は球体をディフューザの主材料中に埋め込む。バルクディフューザの別の態様において、ディフューザの材料の屈折率が当該ディフューザ体中で変化すると、その材料中を通過する光が様々な点で屈折又は散乱される。バルクディフューザには、幾つかの実際上の問題がある。高角度出力分布を得ようとする場合に、ディフューザは、同じ光学散乱力を有する表面ディフューザよりも概して厚くなる。しかしながら、バルクディフューザが薄く作られた場合、ほとんどの用途にとって望ましい1つの特性であるディフューザの散乱能は小さくなりすぎることがある。
【0005】
前述の問題にもかかわらず、表面ディフューザが望ましく、バルク型のディフューザが適切でないであろう用途がある。例えば、表面ディフューザは、現存のフィルム又は基材に適用でき、別個のフィルムを必要としない。LCDにおける光制御の場合、これは、界面を除去することによって効率を高める(これは、反射及び損失光をもたらす)。
【0006】
光ディフューザ、光ディレクタ、光ガイド、輝度向上フィルム及び偏光フィルムを含む従来技術の光学要素は、典型的には、反復する規則的に配列された幾何学的パターン又はランダムな幾何学的パターンを備える。これらの幾何学的パターンは、典型的には、意図する光学的機能を達成するために、単一のサイズ分布を有する。一例は、精密なミクロプリズムを利用するLCディスプレイ用の輝度向上フィルムである。ミクロプリズムの形状は、シートの全体にわたって単一のサイズ分布を有し、偏光シートと併用される場合には、ミクロプリズムの上部は偏光シートに接触する。これらの従来技術の光学要素は、液晶ディスプレイの場合におけるように、1つの系として使用され、光学要素は典型的には光学的に接触する。従来技術の光学要素の焦点距離は、他の光学要素と組み合わされる場合に、その光学要素の厚さを典型的には含む。
【0007】
従来技術の光学スペーサ材料は、2つの光学部品間に光学的間隔(optical spacing)が生じるように、薄い透明なポリマーシートを典型的には備える。光学スペーサ材料は、光学部品の焦点距離を変えるため又は2つの光学部品を互いに保護するために利用される。光学部品が一体の光学スペーサを含むことが望ましいであろう。
【0008】
米国特許第6,270,697号(Meyersら)明細書において、ピークと谷の表面特徴を有する反復パターンを使用して、特定の波長帯の赤外エネルギーを透過させるためにぼかし(blur)フィルムが使用されている。これは可視光を拡散するが、表面特徴の周期的性質は、ディスプレイ装置を通してそのパターンが見えるために、バックライト型LC装置には受け入れられない。
【0009】
米国特許第6,266,476号(Shieら)明細書には、光を拡散させるためのポリマーシートの表面の微細構造体が開示されている。この微細構造体は、光源からの光出力を望ましい方向、パターン又はエンベロープに形作るように光源からの光出力の方向を調節するために、基材の表面にフレネルレンズを成形することにより作り出される。米国特許第6,266,476号明細書に開示されている材料は、光を形作りコリメートするため、特に液晶ディスプレイ装置にとって有効な光のディフューザではない。さらに、ミクロ構造は、単一サイズの分布を有するものである。さらに、ミクロ構造は、単一サイズ分布を有するものである。
【0010】
片面が表面テクスチャーを有する樹脂で被覆された透明ポリマーフィルムを製造することが知られている。この種の透明ポリマーフィルムは、未加工の(被覆されていない)透明ポリマーフィルムを、溶融した樹脂、例えばポリエチレンで被覆する熱可塑性物質型押法により製造される。溶融した樹脂を上に有する透明ポリマーフィルムを、表面パターンを有するチルロールに接触させる。冷却水をチルロールに送り込んで樹脂から熱を奪い、樹脂を固化させるとともに樹脂を透明ポリマーフィルムに接着させる。このプロセスの間、チルロール表面上の表面テクスチャーを、樹脂被覆透明ポリマーフィルムに型押しする。従って、チルロール上の表面パターンは、被覆された透明ポリマーフィルム上の樹脂に生じる表面にとって重要である。
【0011】
チルロールを製造するためのある従来法は、機械的彫刻法を用いて主な表面パターンを生成させることを伴う。この彫刻法には、ずれによって表面に工具すじが生じること、費用がかかること、加工に時間がかかること等の多くの制約がある。従って、チルロールを製造するために、機械的彫刻を用いないことが望ましい。
【0012】
米国特許第6,285,001号(Flemingら)は、アブレートされた基材上の反復する微細構造の均一性を高めるため又はアブレートされた基材上に3次元的な微細構造を生成させるために、基材のエキシマーレーザーアブレーションを使用する露光方法に関する。この方法は、複雑なランダム3次元構造を作り出すためのマスターチルロールを作製するのに適用するのは困難であり、また、非常に費用がかかる。
【0013】
米国特許第6,124,974号(Burgerら)では、基材を平版印刷法により作製する。この平版印刷法は、望ましいレンズレットに対応する3次元的レリーフ構造が生成するように一連のフォトマスクに対して繰り返す。3次元的表面特徴をプラスチックフィルムに作り出すためのマスターを形成するこの手法は、時間がかかるとともに非常に費用がかかる。
【0014】
【特許文献1】
米国特許第6,124,974号明細書
【特許文献2】
米国特許第6,270,697号明細書
【0015】
【発明が解決しようとする課題】
可変の焦点距離と、2つの光学部品間での耐引掻性及び耐衝撃性をもたらす光学部品用の一体の光学スペーサが必要とされている。
【0016】
【課題を解決するための手段】
本発明は、少なくとも5マイクロメートルに等しい粗さ平均を有する粗い表面を有し、前記粗い表面が少なくとも2つの粗さ母集団(roughness population)を含み、前記少なくとも2つの母集団の粗さ平均が少なくとも8マイクロメートル異なる光学要素を提供する。本発明は、バックライト型画像形成媒体、液晶ディスプレイ構成部品及び装置、並びにそれらの製造方法も提供する。
本発明は、一体の光学スペーサを含むと同時に耐引掻性及び耐衝撃性を提供する光学要素も提供する。
【0017】
【発明の実施の形態】
本発明は、当該技術分野での従来の手法を凌ぐ多くの利点を有する。本発明は、一体の光学スペーサを有する光ディフューザ、光ガイド又は集光フィルム等の光学要素を提供する。光学スペーサは、各光学部品の間に精密な間隔を設けることによって、LC装置等の光学系で利用される光学部品の焦点距離を調節する方法を提供する。本発明の光学要素上に一体的な光学スペーサを備えることによって、光学系における間隔を細かく制御することができる。さらに、光学スペーサを備えることによって、本発明の光学要素の機能面が光学系の他の光学部品と離間されているため、本発明の光学要素は耐引掻性及び耐衝撃性を提供する。本発明の一体的な光学スペーサは、例えば光拡散のためのエアギャップを必要とする光学要素のための特定のエアギャップも提供する。特定のエアギャップを備えることによって、拡散の幾何学的構造の全てが空気と接触しているために、光ディフューザの効率は高まる。
【0018】
本発明の光学スペーサを備えることによって、光学要素は、光学要素の取扱いによる損傷や組み立て時の損傷から保護される。光学スペーサは、光学要素を、携帯電話、投影型テレビ又は自動車の表示パネル等の可視ディスプレイにおける最外層が通常遭遇する指紋や引掻きから保護するために使用することもできる。引掻き傷や指紋は、そのような装置の光学的有用性を損なう。
【0019】
本発明の光学スペーサは、光学要素と一体となっており、透明スペーサシートの必要性がなくなる。さらに、光学スペーサは光学要素と一体となっていることから、透過光エネルギーで典型的には2〜5%である従来技術の透明シートを通した場合の反射及び吸収損失が回避される。本発明は、光学的離間と光の整形(light shaping)及び光の方向付け(light directing)等の光学的機能の両方をもたらす特定の幾何学的形状を有する光学スペーサも提供する。さらに、透明な光学スペーサがなくなることによって、透過光が2つの部分反射面を通る場合に生じる望ましくない干渉パターンが回避される。望ましくない干渉パターンは、LC装置において色のついた環を生じるために望ましくない。
【0020】
好ましい形態において、本発明は、液晶ディスプレイ装置等の背面投影型ディスプレイ装置において通常使用されるスペキュラー光源の拡散を提供する。さらに、本発明は、光源に対する拡散性を提供すると同時に、高い光透過率を有する。光ディフューザの高い透過率は、液晶ディスプレイ装置にとって特に重要である。なぜなら、透過率が高いと、液晶ディスプレイがより明るく見え、また、同じ明るさでバッテリの寿命がより長くなるからである。また、輝度のレベルを維持することによって、バックライトの消費電力を減少させることができ、それによって、ノートブック型コンピュータとして普及しているバッテリ電源式液晶装置の寿命が長くなる。本発明の表面レンズレット構造ポリマー層は、多くの液晶装置の拡散及び光透過について望まれている要求品質を達成するように容易に変更できるため、本発明の材料は、液晶ディスプレイ市場での急速に変化する製品要求品質に対応できる。これら及び他の利点は、以下の詳細な説明から明らかになるであろう。
【0021】
「LCD」なる用語は、画像を形成するのに液晶を利用する任意の透過投影ディスプレイ装置を意味する。「ディフューザ」なる用語は、スペキュラー光(主方向を有する光)を拡散して拡散光(ランダムな光方向を有する光)にすることのできる任意の材料を意味する。「光」なる用語は可視光を意味する。「拡散光透過率」なる用語は、光源の500nmの光の総量に対する500nmの拡散透過した光の百分率を意味する。「全光透過率」なる用語は、光源の500nmの光の総量に対する試料を透過した500nmの光の百分率を意味する。この用語は、光の分光透過率及び拡散透過率の両方を包含する。「拡散光透過効率」なる用語は、500nmの全透過光の百分率に対する500nmの拡散透過光の百分率の比に100の係数をかけた値を意味する。「ポリマーフィルム」なる用語は、ポリマーを含んで成るフィルムを意味する。「ポリマー」なる用語は、ホモ−及びコ−ポリマーを意味する。レンズのサイズ及び周波数に関して「平均」なる用語は、全フィルム表面積での算術平均を意味する。
【0022】
「透明」なる用語は、500nmでの全光透過率が50%以上であるフィルムを意味する。フィルム上のレンズレットの配列に関して「任意の方向で」とは、ベースに平行なxy平面内の任意の方向を意味する。「パターン」なる用語は、レンズの規則的またはランダムな任意の所定の配列を意味する。
【0023】
光学スペーサは、概して、2つの光学部品の間に特定の間隔を与えるガラス又はポリマー等の透明材料である。光学スペーサの一例は、空気と光ディフューザの間の屈折率差を利用して光拡散をもたらす粗い表面を備えた光ディフューザである。ディフューザ間に空気がない場合には、光ディフューザの効率は低くなるであろう。光ディフューザを必要とする光学系において、エアギャップ、すなわち光ディフューザとその隣の光学部品の間の空間は光ディフューザの性能にとって重要である。
【0024】
一体の幾何学的光学スペーサは、光ディレクタ又は光ディフューザ等の機能的光学面を超える高さを有するにもかかわらず表面の一部を成す幾何学的形状のものである。本発明の材料の場合、一体の幾何学的光学スペーサは、機能的光学要素と同時に形成されるため、光学要素と一体的である。
【0025】
粗さ平均(roughness average)は、測定したアレイ全体で計算した算術平均高さである。算術平均とは、平均面(mean plane)からの表面特徴(surface features)の絶対値の平均である。測定するアレイは典型的には10mmから成り、その単位はマイクロメートルで表される。粗さ平均は、触針又はレーザー法によって測定される。
【0026】
光学部品は、光の拡散、光の方向付け(light direction)、光のガイド(light guiding)、カラーフィルタ、偏光フィルム等の光学的用途がある部品であって、本発明の光学要素と組み合わせて使用できるものである。一例は、光ディフューザと光方向付けフィルム(プリズムフィルムにより実現される)により実現されるスペキュラー光を拡散させるように設計された単純な系である。この例では、光ディフューザフィルム及び光方向付けフィルムは光学部品と見なされる。
【0027】
バックライトのより良好な制御及び管理は、液晶ディスプレイ(LCD)の技術的進歩をもたらす。LCDスクリーン及び他の電子ソフトディスプレイ媒体は、スペキュラー(高度に指向性の)蛍光管を主に用いてバックライトされる。ディスプレイ領域全体に均一に光を分配するとともに、光をスペキュラー光から拡散光に変えるために、拡散フィルムが使用される。ディスプレイ積層体の液晶セクションから出ていく光は細い柱状のままであり、再分散されねばならない。高い視野角が得られるように光を水平方向に選択的に拡げるために、ディスプレイのこのセクションにディフューザが使用される。
【0028】
屈折率が異なる物質中を光が透過する際に光が散乱することによって拡散が実現される。この散乱は、光エネルギーのための拡散手段をもたらす。光の透過と拡散の間には逆の相関があり、これらの2つのパラメータの最適な組み合わせは各用途にとって望ましい。
【0029】
後側ディフューザは、光源の前方に直接配置され、スペキュラー光を拡散光に変えることによりディスプレイ全体に光を均一に分配するために使用される。拡散フィルムは、入ってくる光を拡げるとともに拡散するようにウェブ材料上に配置された複数のレンズレットから構成される。LCDバックライトを拡散するための従来技術の方法としては、ポリマーフィルムに屈折率が異なるミクロボイド含有ポリマーフィルムを積層するか、またはフィルムに艶消し樹脂またはビーズをコーティングすることが挙げられる。前側ディフューザの役割は、液晶(LC)から出てきた光を方向選択的に拡げることである。光は、最高の効率を得るために密なビームに圧縮されてLCに入り、そしてその光がLCから出てくる際には細い柱状の光として出てくる。ディフューザは、光を選択的に拡げるための光学的構造を使用する。たいていの企業は、光を1つの軸に沿って選択的に引き伸ばす楕円形のミクロレンズを形成している。ポリマーマトリックス中の楕円形のポリマー及び化学的または物理的手段によって形成された表面ミクロレンズもこの方向性を実現する。本発明の拡散フィルムは、従来のフィルム生産設備を使用して高い生産性で製造できる。
【0030】
この高分子拡散フィルムは、少なくとも片側に、複数のランダムミクロレンズ又はレンズレットの形態のテクスチャー付き表面を有する。「レンズレット」なる用語は、小型のレンズを意味するが、ここでの説明では、「レンズ」及び「レンズレット」なる用語は同じものを意味すると解釈されよう。レンズレットが重なって複合レンズを形成する。「複合レンズ」とは、表面に複数の副レンズを有する主レンズを意味する。「主レンズ」とは、その上に副レンズがランダムに形成される大きな方のレンズレットを意味する。「副レンズ」とは、主レンズよりも小さく主レンズの上に形成されるレンズを意味する。カリフラワーに似た複合レンズの表面特徴が生じるように様々なサイズ及び形状の複数のレンズを一方の上に形成する。レンズレット及びレンズレットにより形成された複合レンズは、透明ポリマーフィルムの内部方向にくぼんでいても透明ポリマーフィルムの外側方向に出っ張っていてもよい。「凹状」なる用語は、球体の外表面がフィルムの表面に近接している場合の球体の表面のような湾曲を意味する。「凸状」なる用語は、球体の内表面がフィルムの表面に近接している場合の球体の表面のような湾曲を意味する。「上面」なる用語は、光源からより遠い側のフィルムの表面を意味する。「下面」なる用語は、光源により近い側のフィルムの表面を意味する。
【0031】
本発明の1つの態様は、月のクレーターができた表面に関連させることができる。月に衝突した小惑星は、他のクレーターとは別個のクレーターを形成し、このクレーターは、別のクレーターの一部と重なるか、別のクレーター内に形成されるか、又は別のクレーターを飲み込んでしまう。クレーターがより多く作られるほど、透明ポリマーフィルムに形成されるレンズの複雑さのように月の表面の陥没の複雑さはより増大する。
【0032】
各レンズレットの表面は局所的球状セグメントであり、この局所的球状セグメントはレンズを透過するエネルギー線の進路を変える小型レンズとして機能する。各レンズレットの形状は「半球状」である。これは、各レンズレットの表面が球体の扇形の部分であることを意味するが、必ずしも半球を意味するわけではない。その湾曲面は、透明ポリマーフィルムに平行な第1の軸(x)に対して求めた場合のある曲率半径と、透明ポリマーフィルムに平行で第1の軸(x)に垂直な第2の軸(y)に対する曲率半径とを有する。アレイフィルム内のレンズは、x及びy方向で等しい寸法を有する必要はない。レンズの寸法、例えば、x又はy方向での長さは概してフィルムの長さ又は幅よりもかなり小さい。「高さ/直径比」は、複合レンズの直径に対する複合レンズの高さの比を意味する。「直径」とは、xy平面内での複合レンズの最大直径を意味する。この高さ/直径比の値は、各複合レンズが生じる光の拡がり又は拡散の量の主な因子の1つである。小さな高さ/直径比は、レンズの高さよりも直径がかなり大きく、より平坦でより幅の広い複合レンズが生じることを示す。大きな高さ/直径値は、より高くより細い複合レンズであることを示す。複合レンズは、様々なサイズ、形状、光学軸からのオフセット及び焦点距離をとることができる。
【0033】
レンズレットの曲率、深さ、サイズ、間隔、構成材料(これはポリマーフィルム及び基材の基本的な屈折率を決める)及び配置は、拡散の程度を決め、これらのパラメータは本発明による製造中に定まる。
【0034】
レンズを透過する光の発散度は「非対称」であるといわれることがある。「非対称」とは、水平方向での発散度が垂直方向での発散度と異なることを意味する。発散曲線は非対称である。これは、ピーク光透過方向がθ=0°の方向に沿っておらず、表面に対して非法線方向であることを意味する。光をレンズレット拡散フィルムから非対称に分散させるのに有効な少なくとも3つの手法、すなわち、直交方向に対する1つの方向でレンズの寸法を変えること、レンズの光学軸をレンズの中心からオフセットすること、及び非点収差レンズを使用すること、がある。
【0035】
光学軸が各レンズの中心からオフセットされているレンズを有する拡散フィルムを使用すると、フィルムから光が非対称に分散する。しかしながら、光学軸がx及びy方向の両方でレンズの中心からオフセットされるようにレンズ表面を形成することができる。
【0036】
レンズレット構造は、支持体の両側に作ることができる。支持体のいずれの側にあるレンズレット構造も、様々な曲率、深さ、サイズ、間隔、及びレンズレットの配置をとることができる。
【0037】
光学スペーサを含む光学要素は、エアギャップ、特定の焦点距離、並びに耐引掻性及び耐衝撃性を提供する。少なくとも5マイクロメートルに等しい粗さ平均を有する粗い表面を含み、粗い表面が少なくとも2つの粗さ母集団を含み、その少なくとも2つの母集団が少なくとも8マイクロメートル異なる光学要素が好ましい。2つの粗さ母集団を有する光学要素は、光ディフューザ又は光ガイド等の少なくとも1つの機能的光学面を提供し、別の母集団は1つよりも多くの光学部品から成る光学系における空間配置を提供する。他の粗さ母集団よりも高い少なくとも1つの粗さ母集団を備えることによって、より高い方の母集団は、他の光学部品との光学的接触をもたらす一方で、他の粗さ母集団は光の方向付け又は光の拡散等の光学的有用性をもたらす。さらに、2つの母集団は、少なくとも8マイクロメートル異なることが好ましい。なぜなら、5マイクロメートル未満の間隔は、望ましくない光干渉パターンをもたらすことがあるからである。
【0038】
本発明の光学要素と他の光学部品の間のエアギャップの精密な制御は、光学系でのその光学要素の効率及び変動性(variability)を大きく改良することができる。一例は、一体的な光学スペーサを含む可視光拡散フィルムである。表面ディフューザと他の光学部品の間に光学スペーサを備えることで、他の光学部品中への拡散光の拡がりを、光拡散要素と比べた光学スペーサの高さによって設定及び制御することができる。スペキュラー光源、例えばレーザーを、スペーサを使用せずに狭い円錐状に表面拡散させることができ、また、拡散要素よりも5〜20倍大きいスペーサを使用して広い円錐状に表面拡散させることができる。狭い光拡散円錐は、LC装置において狭い視野角をもたらす傾向があり、一方、広い円錐は、大きな視野角をもたらす。狭い円錐のディフューザ及び広い円錐のディフューザは両方とも光拡散用途に応じた有用性がある。
【0039】
シートの表側及び裏側の両方に適用された前述の少なくとも2つの粗さ母集団を含む光学要素が好ましい。両側に前述の少なくとも2つの粗さ母集団を適用することよって、両側に光学的間隔特徴が存在する。光学要素が、偏光シート及び光ディフューザ等の2つの付加的な光学部品の間に含まれる場合に、両面光学スペーサは間隔を与える。
【0040】
好ましい態様において、前述の少なくとも2つの粗さ母集団は少なくとも250マイクロメートル異なる。少なくとも250マイクロメートルの光学的間隔を備えることによって、本発明の光学要素は、光の拡散、光のガイド又は光の方向付けに十分なエアギャップを有し、耐引掻性及び耐衝撃性を得るのに十分なギャップを有する。本発明のより好ましい態様において、前述の少なくとも2つの粗さ母集団は少なくとも75マイクロメートル異なる。少なくとも75マイクロメートルの光学的間隔は、光拡散、光の方向付け及び光のガイドに十分なエアギャップを提供し、方向付けレンズ(directing lenses)の焦点距離に十分な間隔を提供することが判った。
【0041】
本発明の好ましい態様において、前述の少なくとも2つの粗さ母集団は規則的である。規則的な粗さ母集団を備えることによって、本発明の光学要素によって光の方向付け及び光のガイドを達成できる。本発明の別の好ましい態様において、前述の少なくとも2つの粗さ母集団はランダムである。ランダムな粗さ母集団を備えることによって、本発明の光学要素によって光拡散を達成することができる。さらに、ランダムな粗さ表面は、規則的な粗さがもたらすことのある光学パターンを抑えることが判った。本発明の別の好ましい態様において、粗さ母集団の1つは秩序づけられている。少なくとも1つの規則的な母集団を備えることによって、スペーサをランダムに配置することができ、望ましくない透過パターンを低減し、また、光の方向付け及び光のガイドをもたらすように光学要素を調整することができる。
【0042】
本発明の光学要素は、好ましくは幾何学的スペーサを備える。高さが機能的光学要素よりも高い幾何学的スペーサは、輝度向上フィルム及び偏光フィルム等の他の光学部品と組み合わせて使用された場合には精密なエアギャップを提供する。幾何学的形状は、反射及び透過光エネルギーの両方に対して機械的及び光学的有用性を提供する。本発明の好ましい態様において、本発明の幾何学的スペーサは円柱を成す。円柱は、スペキュラー光の透過をもたらし、耐衝撃性がある。さらに、円柱の端部は、本発明の光学要素が他の光学部品と組み合わせて使用される場合に、優れた接点を提供する。
【0043】
本発明の別の好ましい態様において、幾何学的スペーサは球形を成す。球形は、精密なギャップを提供すると共に、透過光が幾何学的スペーサの曲面から拡散される際の光の拡散をもたらす。本発明の別の好ましい態様において、幾何学的スペーサは立方体形を成す。立方体形幾何学的スペーサは、耐衝撃性及び精密な光学的間隔をもたらす。別の好ましい態様において、幾何学的スペーサは角錐形を成す。角錐形は、精密な光学的ギャップと光の方向付けをもたらす。45°の角錐は、空気中で、角錐の底面からの透過光を角錐の頂点に集める傾向があり、光学的間隔と光の方向付けの両方をもたらす。
【0044】
幾何学的スペーサは好ましくはポリマーを含む。ポリマーの幾何学的スペーサは、高い光透過特性を与え、費用がかからず、幾何学的スペーサに容易に作り上げることができる。好ましいポリマーとしては、ポリオレフィン類、ポリエステル類、ポリアミド類、ポリカーボネート類、セルロースエステル類、ポリスチレン、ポリビニル樹脂、ポリスルホンアミド類、ポリエーテル類、ポリイミド類、ポリフッ化ビニリデン、ポリウレタン類、ポリフェニレンスルフィド類、ポリテトラフルオロエチレン、ポリアセタール類、ポリスルホネート類、ポリエステルアイオノマー類、及びポリオレフィンアイオノマーが挙げられる。これらのポリマーのコポリマー及び/又は混合物を使用してもよい。ポリオレフィン類、特にポリプロピレン、ポリエチレン、ポリメチルペンテン、及びこれらの混合物が好ましい。ポリオレフィンコポリマー(プロピレンとエチレン類、例えばヘキセン、ブテン及びオクテンのコポリマーを包含する)も好ましい。ポリプロピレン類も、それらが安価であり良好な強度及び表面特性を有し、柔軟で耐引掻性を示すことから、非常に好ましい。
【0045】
別の好ましい態様において、幾何学的スペーサは有機粒子を含む。金属、シリカ、クレー等の有機粒子が有用である。なぜなら、ポリマー等の有機スペーサ材料と比較した場合に耐熱性がかなり高く、高い温度、例えば暑い気候や産業上の用途で遭遇する高い温度が必要とされる場合にスペーサとして有用である。
【0046】
本発明の幾何学的スペーサは、80%を超える光透過率を好ましくは有する。80%を超える光透過率は、LC装置に好適な透過光効率を与え、幾何学的スペーサが透過光で見えることのある望ましくない「デッドスポット(dead spots)」を減らす。本発明の幾何学的スペーサは好ましくは60%を超える曇り度を有する。60%を超える曇り度を有するスペーサを備えることによって、スペーサの透過視認性は減少する。好ましい形態において、本発明の幾何学的光スペーサは、反射及び透過光の拡散のために曲面レンズ、複合レンズ又は型押し面等の拡散要素を備える。
【0047】
本発明の幾何学的スペーサは、1.0mmを超える周波数を有する。1.0mmを超える周波数では、精密なエアギャップが本発明の材料と他の光学部品の間に形成され、周波数は、光の方向付け、光の整形(light shaping)又は光の拡散を達成するのに典型的な光学的表面特徴よりもおよそ100〜1000倍程度大きい。別の好ましい態様において、幾何学的スペーサは5〜25mmの周波数を有する。この範囲では、精密なエアギャップが形成されポータブルLC装置で維持されることが判った。大きな幾何学的間隔、100mmを超える間隔では、エアギャップの精度が低下し始める。なぜなら、間隔が大きすぎると、幾何学的スペーサ間の支持されていない空間での光学部品の曲げを防止することができないからである。
【0048】
表面光ディフューザと付加的な光学部品の間での精密なエアギャップは、光ディフューザの効率を維持するのに重要である。前述の少なくとも2つの母集団が少なくとも8マイクロメートル異なる少なくとも2つの粗さ母集団を含む複合レンズは、光ディフューザ要素が他の光学部品と光学的に接触している光ディフューザと比較して、非常に有効な光ディフューザであることが判った。透明ポリマーフィルムの表面に複数の凸状又は凹状複合レンズを備えた上面及び下面を有する透明ポリマーフィルムが好ましい。湾曲した凸状及び凹状ポリマーレンズが、非常に有効な光の拡散をもたらすことが判った。さらに、本発明のポリマーレンズは透明であり、光の高い透過を可能にし、LCディスプレイの輝度をより多くの光を放出させるものとする。
【0049】
ポリマーフィルムの表面上の凹又は凸状レンズはランダムに配置されていることが好ましい。複数のレンズのランダム配置は、本発明の材料の拡散効率を高める。さらに、凹又は凸状の複数のレンズを規則正しく並べて配設するのを避けることによって、望ましくない光学干渉パターンを回避する。
【0050】
本発明の一態様において、透明ポリマーシートの両面に複数の凹又は凸状レンズがある。透明シートの両面に複数のレンズを配設することによって、片面に本発明のレンズが存在する場合と比較して、より有効な光の拡散が観察される。さらに、透明シートの両面に複数のレンズを配設することによって、LCディスプレイ装置内の輝度向上フィルムから最も離れた位置にあるレンズの焦点距離が増加する。
【0051】
本発明の一態様において、複数の凸状レンズが透明ポリマーフィルムの上面に存在し、凹状レンズが透明ポリマーフィルムの下面に存在する。ポリマーフィルムの両面に凸状レンズを配設することによって、他の隣接するフィルムとのスタンドオフを作り出し、レンズによる有効な拡散に必要なエアギャップを生じさせる。
【0052】
本発明の別の態様において、透明ポリマーフィルムの上面に凸状レンズが存在し、透明ポリマーフィルムの下面に凹状レンズが存在する。ポリマーフィルムの上側に凸状レンズを配設することによって、他の隣接するフィルムとのスタンドオフを作り出し、レンズによる有効な拡散に必要なエアギャップを生じさせる。ポリマーフィルムの下面に凹状レンズを配設することによって、隣接するフィルムと光学的に接触した状態にあることができるがそれでもなお光を有効に拡散できる表面を作り出す。
【0053】
本発明の別の態様において、透明ポリマーフィルムの上面に凹状レンズが存在し、透明ポリマーフィルムの下面に凹状レンズが存在する。ポリマーフィルムの両面に凹状レンズを配設することによって、隣接するフィルムと光学的に接触した状態にあることができるがそれでもなお光を有効に拡散できる表面を作り出す。
【0054】
本発明の別の態様において、透明ポリマーフィルムの上面に凹状レンズが存在し、透明ポリマーフィルムの下面に凸状レンズが存在する。ポリマーフィルムの上面に凹状レンズを配設することによって、隣接するフィルムと光学的に接触した状態にあることができるがそれでもなお光を有効に拡散できる表面を作り出す。ポリマーフィルムの下面に凸状レンズを配設することによって、他の隣接するフィルムとのスタンドオフを作り出し、レンズによる有効な拡散に必要なエアギャップを生じさせる。
【0055】
凹又は凸状レンズが任意の方向で4〜250複合レンズ/mmの平均周波数を有することが好ましい。フィルムが285複合レンズ/mmの平均値を有する場合、レンズの幅は光の波長に近くなる。これらのレンズは、これらのレンズを通る光に色を与え、ディスプレイの色温度を変える。4レンズ/mm未満であると、大きすぎて光をあまり有効に拡散できないレンズとなる。任意の方向での平均周波数が22〜66複合レンズ/mmの凹又は凸状レンズがより好ましい。平均周波数が22〜66複合レンズである場合に、有効な光拡散がもたらされ、ランダムにパターンが付けられたロールにキャストコートされたポリマーを使用して効率的に製造できる。
【0056】
好ましい透明ポリマーフィルムは、x及びy方向で3〜60ミクロンの平均幅で凹又は凸状レンズを有する。レンズが1ミクロン未満のサイズを有する場合には、レンズは、透過する光にカラーシフトを与える。なぜなら、レンズの寸法が光の波長程度であるからである。レンズがx又はy方向で68ミクロンを超える平均値を有する場合には、レンズは大きすぎて光を有効に拡散できない。x及びy方向で凹又は凸状レンズが15〜40ミクロンの平均幅で存在することがより好ましい。このサイズのレンズは、最も有効な拡散をもたらすことが判った。
【0057】
凹又は凸状複合レンズは副レンズを含んで成り、小さい方のレンズの直径は、平均して主レンズの直径の好ましくは80%以下である。副レンズの直径が主レンズの直径の80%を超える場合には、レンズの複雑さが減少して拡散効率が低下する。
【0058】
凹又は凸状複合レンズは副レンズを含んで成り、小さい方のレンズのx及びy方向での幅は好ましくは2〜20ミクロンである。副レンズが1ミクロン未満のサイズを有する場合に、レンズは、透過する光にカラーシフトを与える。なぜなら、レンズの寸法が光の波長程度であるからである。副レンズが25ミクロンを超えるサイズを有する場合には、レンズの複雑さが減少して拡散効率が低下する。x及びy方向で3〜8ミクロンの幅を有する副レンズがより好ましい。この範囲で、最も有効な拡散が生じることが判った。
【0059】
好ましくは、凹又は凸状複合レンズはオレフィン反復単位を含む。ポリオレフィンは安価であり、光透過率が高い。さらに、ポリオレフィンポリマーは効率的に溶融押出可能であるため、ロール状の光ディフューザを製造するために使用できる。
【0060】
本発明の別の態様において、凹又は凸状複合レンズはカーボネート反復単位を含む。ポリカーボネートは、高い光透過率及び拡散率を得ることを可能にする高い光透過率を有する。高い光透過率は、低い光透過率を有する拡散材料よりも明るいLC装置をもたらす。
【0061】
本発明の別の態様において、凹又は凸状複合レンズはエステル反復単位を含む。ポリエステルは安価であり、良好な強度及び表面特性を有する。さらに、ポリエステルポリマーは、80〜200℃の温度で寸法安定性があり、従ってディスプレイの光源により発生する熱に耐えることができる。
【0062】
好ましくは、ポリマー支持体はエステル反復単位を含む。ポリエステルは安価であり、良好な強度及び表面特性を有する。さらに、ポリエステルポリマーフィルムは、封入されたディスプレイ装置で遭遇する現行の温度範囲で寸法安定性がある。ポリエステルポリマーは、容易に破断でき、ディスプレイ装置への組み込みに適するディフューザシートの打ち抜きが可能である。
【0063】
透明ポリマーフィルムの別の態様において、ポリマー支持体はカーボネート反復単位を含む。ポリカーボネートは、ポリオレフィンポリマーよりも高い光透過率を有し、従って、ディスプレイ装置の輝度を向上できる。
【0064】
本発明の別の態様において、ポリマー支持体はオレフィン反復単位を含む。ポリオレフィンは安価であり、良好な強度及び表面特性を有する。
【0065】
本発明の別の態様において、ポリマー支持体は酢酸セルロースを含む。トリアセチルセルロースは、高い光透過率と低い光学複屈折性の両方を有し、本発明のディフューザが光を拡散するとともに望ましくない光学パターンを減らすことを可能にする。
【0066】
本発明の材料の好ましい拡散光透過率は50%超である。ディフューザの拡散光透過率が45%未満であると、十分な量の光がディフューザを透過せず、ディフューザは非効率的なものとなる。レンズレットフィルムのより好ましい拡散光透過率は少なくとも80%であり、典型的には80〜95%である。80%の拡散透過率では、LC装置のバッテリー寿命の向上とスクリーン輝度の向上が可能となる。透明ポリマーフィルムの最も好ましい拡散透過率は少なくとも92%である。92%の拡散透過率は、バックライト光源の拡散を可能にするとともにLC装置の輝度を最大限に高め、LCスクリーンが自然の太陽光と太刀打ちできなくてはならない屋外での使用に適する画像品質の著しい向上をもたらす。
【0067】
好ましくは、凹又は凸状レンズは半球状である。半球状とは、各レンズレットの表面が球体の扇形の部分であることを意味するが、必ずしも半球を意味するわけではない。これは、x−y平面内での優れた均一な拡散をもたらす。この半球状レンズは、ディスプレイ領域が均一に照明される必要があるバックライト型ディスプレイ用途にとって理想的なことに、入射光を均一に散乱する。
【0068】
本発明の別の態様において、凹又は凸状レンズは非球面状である。非球面状とは、レンズの幅がx及びy方向で異なることを意味する。これは、x−y平面内で光を選択的に散乱する。例えば、ある特定のx−yアスペクト比は楕円型の散乱パターンを生じる。これは、LCディスプレイの前側において、視野角を増加させるために垂直方向よりも水平方向に光を拡げるのに有用であろう。
【0069】
凸又は凹状レンズは、好ましくは、0.03〜1.0の高さ/直径比を有する。0.01未満の高さ/直径比(非常に幅が広く薄いレンズ)は、拡散性を制限する。なぜなら、レンズは、光を有効に拡げるのに十分な曲率を持たないからである。2.5を超える高さ/直径比では、レンズの側部と基材とが成す角度が大きいレンズとなる。これは、内部反射をもたらし、レンズの拡散能を制限する。0.25〜0.48の凸又は凹状レンズの高さ/直径が非常に好ましい。最も有効な拡散がこの範囲内で生じることが判った。
【0070】
主レンズ1個当たりの副レンズの数は好ましくは2〜60である。主レンズが1個の副レンズを有するか又は副レンズを有しない場合に、その複雑さは低く、そのため光は有効に拡散しない。主レンズがその上に70個を超える副レンズを有する場合には、副レンズの幾つかの幅は光の波長に近くなり、透過した光に色を与える。主レンズ1個当たり5〜18個の副レンズが非常に好ましい。この範囲で、最も有効な拡散が生じることが判った。
【0071】
透明ポリマーフィルムの厚さは好ましくは250マイクロメートル以下であり、より好ましくは12.5〜50マイクロメートルである。LC装置の設計の最近の動向は、より高輝度でより薄型の装置を目指している。光ディフューザの厚さを250マイクロメートル以下に抑えることによって、LC装置をより高輝度でより薄く製造することができる。さらに、光ディフューザの厚さを抑えることによって、光透過率を減少させることで、LC装置の輝度を改良できる。光ディフューザのより好ましい厚さは12.5〜50マイクロメートルである。このより好ましい厚さによると、光ディフューザを輝度向上フィルム等のLC装置内の他の光学材料と都合よく組み合わせることができる。さらに、光ディフューザの厚さを減少させることで、ディフューザの材料含有量は減少する。
【0072】
本発明の熱可塑性の光ディフューザは典型的には他の光学的ウェブ材料と組み合わせて使用されるが、500MPaを超える弾性率を有する光ディフューザが好ましい。500MPaを超える弾性率では、光ディフューザを結合用の感圧接着剤により他の光学的ウェブ材料と貼り合わせることが可能である。さらに、光ディフューザは機械的に強靱であるため、光ディフューザは、デリケートで組立てが困難な従来技術のキャスト拡散フィルムと比較して組立てプロセスの厳しい条件により耐えることができる。
【0073】
図1に、液晶ディスプレイ装置における使用に好適な、幾何学的スペーサを含む透明ベース材料上に形成された複合レンズの断面図を示す。複合レンズ及び幾何学的スペーサを含む光拡散フィルム12は、透明ポリマーベース20を含んで成り、この透明ポリマーベースの表面26上に凹状主レンズ22が存在する。ポリマー幾何学的スペーサ24は光拡散フィルム12の表面と一体的である、すなわち表面の一部を成しており、複合レンズの表面よりも上方にある。ポリマー幾何学的スペーサ24の周波数は、ポリマー幾何学的スペーサ24の間の距離である。プリズムフィルム等の付加的な光学部品は、ポリマー幾何学的スペーサ24の露出面で光ディフューザ12と接触するであろう。
【0074】
図2に、光ディフューザを備えた液晶ディスプレイ装置を示す。可視光源18を点灯し、光を光ガイド2に導く。ランプレフレクター4を使用して、光エネルギーをアクリル性の箱により例示される光ガイド2に向ける。反射テープ6、反射テープ10及び反射フィルム8を使用して、光エネルギーが光ガイド2から望ましくない方向に出るのを妨げる。複合レンズと幾何学的スペーサを含む透明ポリマーフィルムの形態にある光拡散フィルム12を使用して、光ガイドから出てくる光エネルギーを光ディフューザに垂直な方向に拡散させる。輝度向上フィルム14を使用して、光エネルギーを偏光フィルム16に集める。複合レンズ及び幾何学的スペーサを含む光拡散フィルム12は、輝度向上フィルム14と接触している。
【0075】
その表面に複数の凸状及び/又は凹状複合レンズを含んで成る透明ポリマーフィルム用のポリマーシートは概して寸法安定性があり、光学的に透明であり、滑らかな表面を有する。二軸延伸ポリマーシートが好ましい。なぜなら、二軸延伸ポリマーシートは、薄く、キャストコートされたポリマーシートよりも弾性率が高いからである。二軸延伸シートは、幾つかの層を含んでいてよいシートの同時押出と、その後の二軸延伸により都合よく製造される。そのような二軸延伸シートは、例えば米国特許第4,764,425号明細書に開示されている。
【0076】
透明ポリマーシートに適切な種類の熱可塑性ポリマーとしては、ポリオレフィン類、ポリエステル類、ポリアミド類、ポリカーボネート類、セルロースエステル類、ポリスチレン、ポリビニル樹脂、ポリスルホンアミド類、ポリエーテル類、ポリイミド類、ポリフッ化ビニリデン、ポリウレタン類、ポリフェニレンスルフィド類、ポリテトラフルオロエチレン、ポリアセタール類、ポリスルホネート類、ポリエステルアイオノマー類、及びポリオレフィンアイオノマーが挙げられる。これらのポリマーのコポリマー及び/又は混合物を使用できる。
【0077】
ポリオレフィン類、特にポリプロピレン、ポリエチレン、ポリメチルペンテン、及びこれらの混合物が好ましい。ポリオレフィンコポリマー(プロピレンとエチレンやヘキセン、ブテン及びオクテンのコポリマーを包含する)も有用である。ポリプロピレン類も、それらが安価であり良好な強度及び表面特性を有することから、非常に好ましい。
【0078】
本発明の透明ポリマーフィルムに好ましいポリエステル類としては、炭素原子数4〜20の芳香族、脂肪族又は脂環式のジカルボン酸と、炭素原子数2〜24の脂肪族又は脂環式グリコールとから製造されるものが挙げられる。好適なジカルボン酸の例としては、テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、ナフタレンジカルボン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、フマル酸、マレイン酸、イタコン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、ナトリオスルホイソフタル酸、及びこれらの混合物が挙げられる。好適なグリコール類の例としては、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、ペンタンジオール、ヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、ジエチレングリコール、他のポリエチレングリコール類、及びこれらの混合物が挙げられる。そのようなポリエステル類は当該技術分野でよく知られており、周知の方法、例えば米国特許第2,465,319号及び第2,901,466号明細書に記載されている方法により製造できる。好ましい連続マトリックスポリエステルは、テレフタル酸又はナフタレンジカルボン酸と、エチレングリコール、1,4−ブタンジオール及び1,4−シクロヘキサンジメタノールから選ばれる少なくとも1種のグリコールとに由来する反復単位を有するものである。ポリ(エチレンテレフタレート)(これは少量の他のモノマーにより変性されていてもよい)が特に好ましい。他の好適なポリエステル類としては、好適な量のスチルベンジカルボン酸等の共酸(co-acid)成分を含めることにより形成される液晶コポリエステルが挙げられる。そのような液晶コポリエステルの例は、米国特許第4,420,607号、第4,459,402号及び第4,468,510号明細書に記載されている。
【0079】
透明ポリマーフィルムに有用なポリアミド類としては、ナイロン6、ナイロン66、及びこれらの混合物が挙げられる。ポリアミド類のコポリマーも好適な連続相ポリマーである。有用なポリカーボネートの一例はビスフェノールAポリカーボネートである。複合材料シートの連続相ポリマーとしての使用に好適なセルロース系エステルとしては、硝酸セルロース、三酢酸セルロース、二酢酸セルロース、酢酸プロピオン酸セルロース、酢酪酸セルロース、及びこれらの混合物又はコポリマーが挙げられる。有用なポリビニル樹脂としては、ポリ塩化ビニル、ポリ(ビニルアセタール)、及びこれらの混合物が挙げられる。ビニル樹脂のコポリマーも使用できる。
【0080】
本発明の複合レンズは、好ましくはポリマーを含んで成る。ポリマーは、概して、従来技術のガラスレンズと比較してコストが低く、優れた光学的性質を有し、溶融押出、真空成形及び射出成形等の周知の方法を使用してレンズに効率的に成形できるため、ポリマーが好ましい。複合レンズの形成に好ましいポリマーとしては、ポリオレフィン類、ポリエステル類、ポリアミド類、ポリカーボネート類、セルロースエステル類、ポリスチレン、ポリビニル樹脂、ポリスルホンアミド類、ポリエーテル類、ポリイミド類、ポリフッ化ビニリデン、ポリウレタン類、ポリフェニレンスルフィド類、ポリテトラフルオロエチレン、ポリアセタール類、ポリスルホネート類、ポリエステルアイオノマー、及びポリオレフィンアイオノマーが挙げられる。機械的又は光学的特性を改良するために、これらのポリマーのコポリマー及び/又は混合物を使用できる。透明複合レンズに好ましいポリアミド類としては、ナイロン6、ナイロン66、及びこれらの混合物が挙げられる。ポリアミド類のコポリマーも好適な連続相ポリマーである。有用なポリカーボネートの一例はビスフェノールAポリカーボネートである。複合レンズの連続相ポリマーとしての使用に好適なセルロース系エステルとしては、硝酸セルロース、三酢酸セルロース、二酢酸セルロース、酢酸プロピオン酸セルロース、酢酪酸セルロース、及びこれらの混合物又はコポリマーが挙げられる。好ましいポリビニル樹脂としては、ポリ塩化ビニル、ポリ(ビニルアセタール)、及びこれらの混合物が挙げられる。ビニル樹脂のコポリマーも使用できる。本発明の複合レンズに好ましいポリエステル類としては、炭素原子数4〜20の芳香族、脂肪族又は脂環式のジカルボン酸と、炭素原子数2〜24の脂肪族又は脂環式グリコールとから製造されるものが挙げられる。好適なジカルボン酸の例としては、テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、ナフタレンジカルボン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、フマル酸、マレイン酸、イタコン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、ナトリオスルホイソフタル酸、及びこれらの混合物が挙げられる。好適なグリコール類の例としては、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、ペンタンジオール、ヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、ジエチレングリコール、他のポリエチレングリコール類、及びこれらの混合物が挙げられる。
【0081】
画像形成要素の色を変えるためにポリエステル表皮層に添加剤を加えることが好ましい。添加することのできる本発明の添加剤は蛍光増白剤である。蛍光増白剤は、実質的に無色の、蛍光性の有機化合物であり、紫外線を吸収して可視光を発する。例としては、限定するわけではないが、4,4’−ジアミノスチルベン−2,2’−ジスルホン酸、クマリン誘導体、例えば4−メチル−7−ジエチルアミノクマリン、1−4−ビス(o−シアノスチリル)ベンゾール及び2−アミノ−4−メチルフェノールが挙げられる。蛍光増白剤の効果的な使用は予想外の望ましい特徴である。透過型ディスプレイ材料用の紫外線源は、画像の反対側にあるため、紫外線の強度は、画像形成層に一般的な使用される紫外線フィルターによって低減されない。その結果、望ましいバックグラウンドを得るために、より少ない量の蛍光増白剤で済む。
【0082】
熱可塑性レンズレットのキャスティングの前又は後に、印刷適性等のシートの特性を改良するため、蒸気バリヤーを設けるため、シートをヒートシール可能なものにするため又は接着性を改良するために使用できる任意の数のコーティングをディフューザシートにコートしてもディフューザシートを処理してもよい。これの例には、印刷適性についてはアクリル系コーティング、ヒートシール特性についてはポリ塩化ビニリデンがある。さらなる例としては、印刷適性又は接着性を改良するための火炎、プラズマ又はコロナ放電処理が挙げられる。
【0083】
本発明のディフューザシートは、光学補償フィルム、偏光フィルム及び基材の一構成要素である液晶層から選ばれる1つ以上の層と組み合わせて使用できる。本発明の拡散フィルムは、拡散フィルム/偏光フィルム/光学補償フィルムという組み合わせでこの順序の通りで使用されるのが好ましい。液晶ディスプレイ装置において上記フィルムを組み合わせて使用する場合に、例えば反射損などを最低限に抑えるように粘着性接着剤により上記フィルムを互いに結合することができる。粘着性接着剤は、光の界面反射損を抑えるために、延伸フィルムの屈折率に近い屈折率を有するものであることが好ましい。
【0084】
レンズレットディフューザフィルムは、別の光ディフューザ、例えばバルクディフューザ、レンチキュラー層、ビーズ含有層、表面ディフューザ、ホログラフィーディフューザ、ミクロ構造ディフューザ、別のレンズアレイ、又はこれらの組み合わせと併用してもよい。レンズレットディフューザフィルムは、光を分散又は拡散するため、規則的に並んだ周期的レンズアレイを加えることによって生じうるいかなる回折パターンも壊す。任意のディフューザ又はレンズアレイの前又は後にレンズレットディフューザフィルムを配置することができる。
【0085】
本発明の拡散シートは、透明ポリマーから作られたフィルム又はシートと組み合わせて使用できる。そのようなポリマーの例には、ポリエステル類、例えばポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート及びポリエチレンナフタレート、アクリル系ポリマー、例えばポリメチルメタクリレート、並びにポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリエーテルスルホン、ポリスルホン、ポリアクリレート及びトリアセチルセルロースがある。バルクディフューザ層は、支持体のガラスシートに備え付けられてもよい。
【0086】
本発明の透明ポリマーフィルムは、別の側面において、1つ以上のレンズレットチャンネルを通る際の光透過率を高めるための1つ以上の光学的コーティングを含んでもよい。ディフューザの効率を高めるために、ディフューザに反射防止(AR)コーティングをコートすることが往々にして望ましい。
【0087】
本発明のディフューザシートに、例えば、入射角での光散乱性を変えるほどには光学的特性を低下させない範囲でフィルムの表面スリップ性改良するためにシリカ等の滑剤を含めてもよい。そのような添加剤の例には、有機溶剤、例えばキシレン、アルコール類又はケトン類、アクリル樹脂、シリコーン樹脂若しくは金属酸化物の微粒子又は充填剤がある。
【0088】
本発明のレンズレットディフューザフィルムは、通常、光学的異方性を有する。ウェブ材料及びキャストされた熱可塑性樹脂は、一般的に、延伸方向に光軸を有する光学的異方性を示す光学的異方性材料である。光学的異方性は、フィルムの厚さdとフィルム面内の遅軸方向での屈折率と速軸方向での屈折率の差である複屈折率Δnとの積、すなわちΔn・d(リタデーション)により表される。配向方向は本発明のフィルムの延伸軸と一致する。延伸軸は、正の固有複屈折率を有する熱可塑性ポリマーの場合には遅軸方向であり、負の固有複屈折率を有する熱可塑性ポリマーの場合には速軸方向である。Δn・dの値の必要なレベルに関する明確な要件はない。なぜなら、Δn・dのレベルはフィルムの用途に依存するからである。
【0089】
本発明の製造方法において、好ましいレンズポリマーはスリットダイから溶融押出される。一般的に、Tダイ又はコートハンガーダイを使用することが好ましい。製造方法は、スリットダイを通じてポリマー又はポリマーブレンドを押出し、押出したウェブを、透明シートのレンズポリマー成分がそのガラス固化温度よりも低い温度に冷却され拡散レンズの形状が残るように好ましいレンズ形状寸法有するチルドキャストドラムにより急冷することを伴う。
【0090】
粗さの2つの母集団を含む拡散フィルムの製造方法を開発した。好ましい方法は、複数の複合レンズを有する雄型マスターチルロールを用意する工程を含む。拡散フィルムは、溶融ポリマー材料をチルロールの面にキャストし、複合レンズ構造の2つの粗さ母集団を有するそのポリマー材料を透明ポリマーフィルム上に移すことによりマスターチルロールから複製される。本発明の別の態様において、幾何学的スペーサは、複合レンズ形状を含むローラーを形成し、それらを、ランダムな複合レンズ形状と多数の円柱状の幾何学的スペーサの両方を含むローラーが形成されるように円柱状等の幾何学的形状で機械加工することにより形成される。
【0091】
チルロールは、ロールの表面に銅の層を電気めっきする工程、次いで、銅層の表面にガラス又は二酸化ケイ素等のビーズによりブラスト加工して半球状の表面特徴を有する表面テクスチャーを生成させる工程を含む方法により製造される。得られるブラスト加工された表面は、ロール内側方向にくぼんでいる又はロールの外側方向に出っ張った表面特徴を有する表面テクスチャーをもたらす深さまで光沢ニッケル電気めっき又はクロムめっきされる。チルロール表面の剥離特性のために、樹脂はロールの表面に付着しない。
【0092】
ビーズブラスト加工工程は、望ましいレンズレット構造が生じるように、ノズル供給量、ロール表面からのノズル距離、ブラスト工程中のロール回転速度及び粒子の速度を正確に制御する自動化された直圧システムを使用して実施される。
【0093】
単位面積当たりのチルロールの表面特徴の数は、ビーズのサイズ及びパターンの深さにより決まる。ビーズの直径がより大きくパターンがより深いほど、所定の領域内の表面特徴の数はより少なくなる。従って、表面特徴の数は、ビーズのサイズ及びパターンの深さによって本質的に決まる。
【0094】
本発明の光学要素及び幾何学的スペーサは、ある型の周りに真空成形することにより、レンズを射出成形することにより、及びポリマーウェブにレンズを型押しすることによっても製造できる。これらの製造法は、光を有効に拡散できる許容可能なレンズをもたらすが、パターン付きロール上へのポリマーの溶融キャストコーティング、及びその後の透明ポリマーウェブ上への移動によって、本発明のレンズをロールに形成でき、そのために拡散レンズの製造費を低くすることができる。さらに、キャストコーティングポリマーは、型押及び真空成形と比較して望ましい複合レンズ形状をより効率的に複製することが判った。
【0095】
別の態様において、平均直径の異なる複数のポリマービーズをマトリックス中に存在する形態でポリマー透明ウェブ上にコートすることが好ましい。ビーズの2つの母集団の間の平均直径の差は、本発明の光学要素と他の光学部品の間に望ましい幾何学的間隔を与える。例えば、PVAマトリックス中に存在する形態でコートされた2つの母集団のポリスチレンポリマービーズ(一方は10マイクロメートル、他方は50マイクロメートル)は、透明ポリマーウェブの表面に40マイクロメートルの幾何学的スペーサを与える。
【0096】
本発明の光学スペーサを、ボイド含有ポリマー光ディフューザの表面に配置することが好ましい。光学スペーサを備えることによって、ボイド含有ポリマーの拡散円錐(diffusion cone)を精密に制御することができる。本発明は、入射光を均一に散乱するフィルムを提供する。本発明の配向フィルムは、従来のフィルム製造設備を使用して高い生産性で製造できる。本発明は、ミクロボイドを含むボイド含有熱可塑性層を利用する。ポリマーマトリックス中の空気のミクロボイドが好ましく、LCD装置用の光拡散を生じさせるのにポリマーシート上の表面粗さに頼る従来技術のディフューザ材料と比べて、光の非常に有効なディフューザであることが判った。空気を含むミクロボイド含有層は、ボイド中に含まれる空気(n=1)とポリマーマトリックス(n=1.2〜1.8)の間の大きな屈折率差を有する。この大きな屈折率差は、優れた拡散と高い光透過率をもたらし、LCD画像をより高輝度にし、及び/又は光の電力必要量を少なくし、バッテリの寿命を長くするのを可能にする。本発明のディフューザ材料の好ましい拡散光透過率は65%超である。60%未満の拡散光透過率では、十分な量の光がディフューザを透過せず、ディフューザは不十分なものとなる。ミクロボイド含有熱可塑性ボイド含有層のよりこのましい拡散光透過率は80%超である。80%の拡散透過率では、LC装置のバッテリ寿命を改善し、スクリーンの輝度を増加させることができる。ボイド含有熱可塑性層の最も好ましい拡散透過率は87%超である。87%の拡散透過率は、バックライト光源の拡散を可能にするとともに、LC装置の輝度を最大限に高め、LCスクリーンが天然の日光を補償することが必要な屋外用LC装置の画像品質を著しく改良する。
【0097】
本発明のミクロボイドは実質的に空気であるため、空気含有ボイドの屈折率は1である。空気ボイドと熱可塑性マトリックスの間の屈折率差は好ましくは0.2を超える。0.2を超える屈折率差は、LCDバックライト光源の優れた拡散をもたらし、0.2を超える屈折率は薄いフィルム中でのバルク拡散を可能にするため、LCD製造業者はLCスクリーンの厚さを薄くすることができる。熱可塑性拡散層は、垂直方向での0.2を超える屈折率変化が少なくとも4回あるものであることが好ましい。4回を超える屈折率変化は、ほとんどのLC装置にとって十分な拡散をもたらすことが判った。垂直方向での30以上の屈折率差は、優れた拡散をもたらす一方で、透過光の量を著しく減らし、LC装置の輝度を著しく低下させる。
【0098】
本発明の熱可塑性光ディフューザは典型的には他の光学ウェブ材料を組み合わせて使用されるため、500MPaを超える弾性率を有する光ディフューザが好ましい。500MPaを超える弾性率では、前記光ディフューザを、他の光学ウェブ材料と組み合わせるために感圧接着剤を使用して貼り合わせることが可能である。さらに、前記光ディフューザは機械的に強靱であるため、繊細であり組み立てるのが困難な従来技術のキャスト拡散フィルムと比較して組み立てプロセスの過酷さにより耐えることができる。0.6GPaを超える耐衝撃性を有する光ディフューザが好ましい。0.6GPaを超える耐衝撃性では、前記光ディフューザは、望ましくない光の拡散をもたらして、LC装置において「ホット」スポットを生じることのある引掻き及び機械的変形に耐えることができる。
【0099】
本発明は、いかなる液晶ディスプレイ装置とともに使用できる。典型的な構成は、以下で説明する。液晶(LC)は、電子ディスプレイとして広く使用されている。これらのディスプレイ装置において、LC層は偏光子層と検光子層の間に位置し、層内で法線軸に旋光ねじれを示すディレクターを有する。検光子は、その吸収軸が偏光子の吸収軸に対して垂直であるように配向される。偏光子により偏光された入射光は、液晶セルを通って液晶の分子配向の影響を受ける。この液晶の分子配向は、セルに電圧を印加することにより変えることができる。この原理を用いることによって、周囲光を含む外部光源からの光の透過を制御できる。この制御を達成するのに必要なエネルギーは、陰極線管等の他のディスプレイタイプで使用されている発光材料に対して必要とされるものよりもかなり少ない。従って、LC技術は、軽量で、低電力消費量で、長動作寿命であることが重要な特徴であるデジタル時計、計算機、ポータブルコンピューター、電子ゲーム等(これらに限られない)の多くの用途で使用されている。
【0100】
アクティブマトリックス液晶ディスプレイ(LCD)は、薄膜トランジスタ(TFT)を各液晶画素を駆動するためのスイッチ素子として使用する。これらのLCDは、個々の液晶画素を選択的に駆動できるため、クロストークなしに高いデフィニションの画像を表示することができる。光学モード干渉(OMI)ディスプレイは、「ノーマリーホワイト」である液晶、すなわちオフ状態のときに光がディスプレイ層を透過する液晶ディスプレイである。ツイストネマチック液晶を使用するLCDの動作モードは、複屈折モードと光学回転モードに大きく分けられる。「フィルム補償型スーパーツイストネマチック」(FSTN)LCDはノーマリーブラックである。すなわちFSTN LCDは、電圧が印加されていないオフ状態のときに光の透過が阻止される。OMIディスプレイは、報告されているところでは、応答時間が速く動作温度範囲が広い。
【0101】
白熱電球又は太陽からの常光(ordinary light)は、ランダムに偏光している。すなわち白熱電球又は太陽からの光は、あらゆる可能な方向に向いた波を含む。偏光子は、光のランダム偏光(非偏光)ビームを、直交する面に偏光した2つの成分のうちの1つを選択的に除去することにより偏光した光に変換する二色性材料である。線形偏光子は、液晶ディスプレイ(LCD)の重要な構成要素である。
【0102】
LCD装置での使用に十分な光学的性能を有する幾つかの種類の高二色比偏光子がある。これらの偏光子は、1つの偏光成分を透過し、互いに直交する他の成分を吸収する(この効果は、二色性として知られている)材料の薄いシートから作られる。最も一般的に使用されているプラスチックシート偏光子は、ポリビニルアルコール(PVA)ポリマー鎖がおおよそ平行に配列している薄い一軸延伸ポリビニルアルコール(PVA)フィルムから構成される。配列したPVAに、ヨウ素分子をドープするか又は着色二色性色素の組み合わせ(例えば、欧州特許第0182632A2号、Sumitomo Chemical Company, Limited参照)をドープする。ヨウ素分子又は着色二色性色素の組み合わせはPVAに吸着されるか又は一軸配向して、ニュートラルグレー色の高異方性マトリックスを生じる。脆いPVAフィルムを機械的に支えるために、両面に剛いトリアセチルセルロース(TAC)層又は同様な支持体を貼り合わせる。
【0103】
コントラスト、色再現、及び安定したグレースケール強度は、液晶技術を用いる電子ディスプレイの重要な品質特性である。液晶ディスプレイのコントラストを制限する主な因子は、液晶素子又はセルを通って光が「漏れる」傾向である。この場合に、液晶素子又はセルは、暗い又は「黒い」画素状態になる。さらに、漏れや、それによる液晶ディスプレイのコントラストは、ディスプレイスクリーンを観察する角度にも依存する。典型的には、最適なコントラストは、ディスプレイに対する法線入射を中心としてある狭い視野角内でのみ観察され、視野角がそれよりも高いと急速にコントラストが低下する。カラーディスプレイにおいて、漏れの問題はコントラストを低下させるだけでなく、色又は色相シフトももたらし、それに伴って色再現が低下する。黒状態の漏光に加えて、典型的なツイストネマチック液晶ディスプレイにおける狭い視野角の問題は、液晶材料の光学異方性のために視野角の関数として輝度−電圧曲線でのシフトによって悪影響を受ける。
【0104】
本発明の透明ポリマーフィルムは、バックライトシステムで光散乱フィルムとして使用された場合に、輝度を一様にすることができる。バックライト型LCDディスプレイスクリーン、例えばポータブルコンピューターで使用されるものは、比較的局所的な光源(例えば、蛍光灯)又はLCDスクリーンの比較的近くに配置された比較的局所的な光源を備えていることがあるため、光源に対応する個々の「ホットスポット」が見える場合がある。拡散フィルムは、ディスプレイ全体にわたって照明を一様にする役割を果たす。液晶ディスプレイ装置としては、例えばアクティブマトリックス駆動及び単純マトリックス駆動から選ばれる駆動方法と、例えばツイストネマチック、スーパーツイストネマチック、強誘電性液晶及び反強誘電性液晶モードから選ばれる液晶モードとの組み合わせを有するディスプレイ装置が挙げられるが、本発明は、上記の組み合わせに限定されない。液晶ディスプレイ装置において、本発明の配向フィルムは、バックライトの前方に位置することが必要である。本発明のレンズレットディフューザフィルムは、光を拡げてあらゆる方向での優れた可視度を与えるという優れた光散乱特性を有するために、本発明のレンズレットディフューザフィルムは、ディスプレイ全体にわたって液晶ディスプレイ装置の明るさを一様にすることができる。上記の効果は、そのようなレンズレット拡散フィルムを1つ使用しても達成できるが、複数のフィルムを組み合わせて使用してもよい。光を分散させて光をより一層均一にするために、拡散レンズレットディフューザフィルムを透過モードでLCD材料の前方に配置することができる。本発明には、光源隠蔽装置としての重要な用途がある。多くの用途において、フィラメントの構造は、試料全体に分配される光を変化させ、これは望ましくないため、光源自体の出力から、用途によっては問題となりうるフィラメントの構造をなくすことが望ましい。また、光源を再配置した後の光源フィラメント又はアークの向きの不一致は、誤りのある及び誤解を招きやすい読取りをもたらすことがある。光源と検出子の間に配置される本発明の均一化用レンズレットディフューザフィルムは、光源の出力からフィラメント構造のいかなる跡もなくすことができ、そのため、光源から光源までの間で一様な均一な出力をもたらす。
【0105】
望みの場所に向けられる感じの良い均一な光を提供することによって、演劇の照明を制御することにレンズレットディフューザフィルムを使用できる。演劇及びテレビ制作物において、適切な照明に必要なあらゆる様々な効果を達成するために、様々なステージライトを使用しなくてはならない。これには、多くの様々なランプを使用することを必要とし、これは不便であるとともに費用がかかる。ランプの上に重ねられた本発明のフィルムは、必要とされる場合に、融通性にほとんど制限がない分散光を与えることができる。その結果、動いているか動いていない、任意の形状のほとんどあらゆる対象を、正確に照明することができる。
【0106】
金属フィルムなどから構成される反射層を本発明のレンズレットディフューザフィルムに適用することにより形成される反射フィルムを、例えば交通標識用の再帰反射要素として使用することができる。この反射フィルムは、自動車、自転車、人などに適用された状態で使用できる。
【0107】
本発明のレンズレットディフューザフィルムは、警察及び警備システムの分野でも使用でき、レーザーダイオード(LD)又は発光ダイオード(LED)からの出力を警備している領域全体で均一にしてより高いコントラストを赤外(IR)検出器に与える。本発明のフィルムは、紙幣読取機又はスキントリートメント装置におけるように、LED又はLD光源を使用する装置から構造をなくすためにも使用できる。これは、より高い正確性をもたらす。
【0108】
外科医の頭部に取り付けられる光ファイバー光アセンブリーは、ある1つの光ファイバー要素が手術の間に故障したならばその手術している領域の強度変動を抑える光を当てることができる。ファイバー束の端に取り付けられた本発明のレンズレットディフューザフィルムは、残りのファイバーに由来する光を均一化し、故障したファイバーの跡が患者に影を落とすことがなくなる。標準的な粉末ガラスディフューザは、スループットの損失をもたらす著しい後方散乱のために、この用途では有効でないであろう。
【0109】
本発明のレンズレットディフューザフィルムは、光源のフィラメント又はアークの構造をなくし、均一に照明された観察領域をもたらすことによって、顕微鏡で試料を均一に照明することに使用することもできる。このフィルムは、ファイバーを伝搬する様々なモード、例えばヘリカルモードファイバーからの光出力を均一化することにも使用できる。
【0110】
本発明のレンズレットディフューザフィルムには、労働及び居住空間に適切な光を提供すること等の重要な建築用途もある。典型的な商業的用途では、室内に光を拡散させるのを促進するために、費用のかからない透明ポリマーディフューザフィルムが使用される。これらの従来のディフューザの1つと置き換わる本発明のホモジナイザーは、光が室内に均一にあらゆる角度に拡散してホットスポットが生じないというより均一な光出力を提供する。
【0111】
芸術品を照明する光を拡散させるために、本発明のレンズレットディフューザフィルムも使用できる。透明ポリマーフィルムディフューザは、非常に望ましい様式で芸術品を表現するための適切なサイズ及び向きにされた適切なアパーチャを備える。
【0112】
さらに、本発明のレンズレットディフーザフィルムは、表示装置等の光学機器の一構成要素として広く使用できる。例えば、本発明のレンズレットディフューザフィルムは、液晶ディスプレイ装置のバックライトシステムに関する前述の光散乱板に加えて、反射型液晶ディスプレイ装置においては金属フィルム等の反射フィルムを貼り合わせた光反射板として、又はその装置の背面側(観察者に対して反対側)に金属フィルムを配置する場合には本発明のフィルムを前側(観察者側)に向けて前方散乱フィルムとして使用できる。本発明のレンズレットディフューザフィルムは、ITOフィルムに代表される酸化インジウムから構成される透明導電性層を積層することにより電極として使用できる。この材料を反射スクリーンを形成するために使用する場合には、光反射層を透明ポリマーフィルムディフューザに適用する。
【0113】
透明ポリマーディフューザフィルムの別の用途は、光源からスクリーン上に大きな領域一面に投影することが一般的に望ましい透過投影スクリーンである。テレビの視野角は典型的には水平方向よりも垂直方向のほうが小さい。ディフューザは、光を広げる機能を果たし、視野角を増加させる。
【0114】
拡散フィルム試料を、積分球を備えたHitachi U4001 UV/Vis/NIR分光光度計を用いて評価した。複合レンズを有する前面を積分球の方に向けて試料をビームポートに置き、全透過スペクトルを測定した。標準試料ポートに較正済みの99%拡散反射標準(NISTトレース可能)を置いた。同様であるが99%のタイルを除いて、拡散透過スペクトルを測定した。被覆された側を積分球の方に向けて試料ポートに試料を置き、拡散反射スペクトルを測定した。試料バッキングからの反射を除くために、試料の後方にはなにも設置しなかった。全てのスペクトルを350〜800nmで得た。拡散反射の結果は、99%タイルで求められたものであるためにそれらの値は絶対値であるが、99%タイルの較正報告値で補正する必要があるであろう。
【0115】
全透過光百分率とは、全角度での試料を透過した光の百分率である。拡散透過率は、入射光角度から2度の角度を除く試料を透過した光の百分率として定義される。拡散光透過率は、拡散透過により試料を透過した光の百分率である。拡散反射率は、試料により反射された光の百分率として定義される。試料で求めたこれらの百分率は、500nmで測定したものである。これらの値は、試料の吸収性又は測定した試料のわずかな違いのために合計しても100%にならない場合がある。
【0116】
本発明の態様は、光拡散及び透過の改良だけではなく、厚さが薄く、光散乱の傾向が抑えられた拡散フィルムも提供することができる。
【0117】
本明細書で引用した特許文献及び刊行物の全内容は、引用によりここに含まれていることにする。
【0118】
【実施例】
この例において、押出グレードのポリオレフィンポリマーを、複合レンズの形状を含むパターン付きチルロール上に押出キャストすることによって、本発明の複合光拡散レンズを作り出した。パターン付きチルロールは、複合光拡散レンズの表面を超えて延びた円柱状スペーサも含んでいた。複合レンズ及び円柱状スペーサの形態のパターン付きポリオレフィンポリマーを、次にポリエステルウェブ材料上に移して複合表面レンズ及び一体的な円柱状スペーサを有する光ディフューザを形成した。この例は、複合光拡散レンズの表面に加えられた円柱状スペーサが光拡散円錐を改良することを示すものである。さらに、円柱状スペーサを含む光ディフューザは、低コストのものであり、LC装置への挿入を可能にする機械的特性を有することが明らかである。
【0119】
ロールの表面に銅の層を電気めっきする工程と、次に、銅層の表面をガラスビーズによりブラスト加工して半球状の表面特徴を有する表面テクスチャーを生成させる工程を含む方法によって、複合光拡散レンズ及び円柱状スペーサを含むパターン付きチルロールを製造した。得られたブラスト加工された表面は、ロール内側方向にくぼんでいる表面特徴を有する表面テクスチャーをもたらす深さまで光沢ニッケル電気めっきした。ビーズブラスト加工工程を、望ましい複合レンズ構造が生じるように、ノズル供給量、ロール表面からのノズル距離、ブラスト工程中のロール回転速度及び粒子の速度を正確に制御する自動化された直圧システムを使用して実施した。単位面積当たりのチルロールの表面特徴の数は、ビーズのサイズ及びパターンの深さにより決まる。ビーズの直径がより大きくパターンがより深いほど、所定の領域内の表面特徴の数はより少なくなる。
【0120】
スチールロール素材片を原材料とし、447MPaの圧力で粒度14番のグリットを用いてグリットブラスト加工することにより複合レンズパターン付きロールを製造した。ロールの表面に得られた複合レンズは凸状であった。銅ロール素材片を原材料とし、310MPaの圧力で粒度14番のグリットを用いてグリットブラスト加工することにより単レンズパターン付きロール(対照)を製造した。ロールの表面上の得られた単レンズは凹状であった。パターン付きロールの表面への複合レンズの幾何学的形状の適用後、精密穴あけ工具使用して深さ50、100及び150マイクロメートルの円柱状スペーサをロールに機械加工した。各円柱状スペーサ間の間隔が10mmである規則的なパターンで円柱状スペーサを配置した。
【0121】
複合拡散レンズと円柱状スペーサを含むパターン付きチルロールを使用し、96.5%のLDPE(Eastman Chemical銘柄のD4002P)、3%の酸化亜鉛及び0.5%のステアリン酸カルシウムから実質的に成るポリオレフィンポリマーを、コートハンガースロットダイから光透過率が97.2%の100マイクロメートル透明配向ウェブポリエステルウェブ上に押出コーティングすることによって、光拡散シートを製造した。ポリオレフィンキャストコーティング被覆量は25.88g/m2であった。
【0122】
複合レンズを有する本発明の材料は、平均直径が27.1マイクロメートルの主レンズとこの主レンズの表面上にある平均直径が6.7マイクロメートルの副レンズとを含んで成るランダムに分布したレンズを有していた。主レンズに対する副レンズの平均比率は17.2対1であった。対照の拡散シートは、平均直径が25.4マイクロメートルであるランダムに分布する単レンズを含んで成っていた。チルロールは、3つの円柱状スペーサの各々についての別個の領域を含んでいた。キャストコートされた拡散シートの構造は以下の通りである。
【0123】
【外1】
【0124】
上記のように形成されたポリマーレンズ及び円柱状スペーサを含む光拡散材料について、光透過率(%)、拡散光透過率(%)、スペキュラー光透過率(%)及び拡散反射率(%)を求めた。拡散フィルム試料を、積分球を備えたHitachi U4001 UV/Vis/NIR分光光度計を用いて評価した。複合レンズを有する前面を積分球の方に向けて試料をビームポートに置き、全透過スペクトルを求めた。標準試料ポートに較正済みの99%拡散反射標準(NISTトレース可能)を置いた。同様であるが99%のタイルを除いて、拡散透過スペクトルを求めた。被覆された側を積分球の方に向けて試料ポートに試料を置き、拡散反射スペクトルを求めた。試料バッキングからの反射を除くために、試料の後方にはなにも設置しなかった。全てのスペクトルは、350〜800nmで得た。拡散反射の結果は、99%タイルで求められたものであるためにそれらの値は絶対値であるが、99%タイルの較正報告値で補正する必要があるであろう。
【0125】
全透過光百分率とは、全角度での試料を透過した光の百分率である。拡散透過率は、入射光角度から2.5度の角度を除く試料を透過した光の百分率として定義される。拡散光透過率は、拡散透過により試料を透過した光の百分率である。拡散反射率は、試料により反射された光の百分率として定義される。試料で求めたこれらの百分率は、500nmで測定したものである。これらの値は、試料の吸収性又は測定した試料のわずかな違いのために合計しても100%にならない場合がある。本発明について求めた値を下記表1に示す。
【0126】
【表1】
【0127】
次に、複合レンズ及び4種の円柱状スペーサ(0、50、100及び150マイクロメートル)を、93%の光透過率(%)を有する厚さ100マイクロメートルのポリエステルシートに適用することにより本発明の材料を光学系に組み立てた。本発明の材料を、3.0mmのビーム径を有する633ナノメートルの0.02W/cm2レーザーを使用して、透明ポリエステルシートの後方に配置された検出器を通して画像形成した。4つの円柱状スペーサの円錐直径(cone diameter)を計算した。強度がピーク強度(検出器に垂直)の10%に減少したときの円錐直径を求めた。円柱状スペーサの円錐直径(mm単位で求めた)を下記表2に示す。
【0128】
【表2】
【0129】
上記表1のデータから、透明ポリマーの表面上に形成された複合ポリマーレンズは、より輝度の高い液晶ディスプレイ装置を得ることを可能にする優れた光拡散性及び光透過率(%)を提供することがはっきりと判る。本発明の材料の場合の89.1%の拡散光透過率は、70%の光透過率を概して有する従来技術の材料よりもかなり優れている。本発明の複合レンズは、マトリックス中に含まれる形態でコートされたポリマービーズを典型的には含む従来技術の材料と比較してかなり多くの透過光拡散のための曲面領域を備えている。拡散シートがLC装置に共通の光ガイドのパターンをマスクする必要がある点で、拡散光透過率はLC装置の品質の重要な因子である。92.4%の本発明の全光透過率は、従来技術の材料よりもかなり高い。内部散乱及び光源への反射戻りを抑えるレンズを設けることによって、本発明の材料では、光エネルギーの92.4%がディフューザを透過することが可能であり、より高輝度の液晶ディスプレイをもたらす。
【0130】
表2中のデータから、幾何学的スペーサの有用性がはっきり判る。幾何学的間隔が増加するにつれて、光拡散円錐の直径は増加し、調節可能な光ディフューザが提供される。本発明の材料によってもたらされる精密な空間配置は、本発明の材料が他の光学部品とともに使用される場合に一定のエアギャップを得ることを可能にする。幾何学的スペーサの高さがゼロである場合に、3mmの光源は、光ディフューザを出ると絞り込まれた(3.1mm)。この光拡散円錐は小さいが強力な拡散円錐を必要とするディスプレイ装置、LC携帯電話又はLC自動車計器等の装置で商業的価値がある。150マイクロメートルの間隔では、円錐直径は4.8mmに増加し、あまり強力ではないがより広い拡散円錐をもたらし、視野角及び広い角度にわたる輝度が重要なLCテレビ又は投影型テレビの改良をもたらす。
【0131】
さらに、本発明の材料は、配向ポリエステルベース上に作り上げたため、本発明の材料は、キャストディフューザシートと比較してより高い弾性率を有する。幾何学的スペーサは、本発明の光ディフューザの表面と一体的であったため、低コストであり、光ディフューザの表面に構造的に付着されており、光ディフューザの寿命の間に脱着する可能性が低くなる。幾何学的スペーサは、ディフューザシートと透明ポリエステルシートの間の離間ももたらし、かなりの振動を受けるポータブル装置で生じうる引掻き傷の機会が少なくなる。本発明の幾何学的スペーサは低密度ポリエチレンを含むため、幾何学的スペーサは柔軟であり、アクリル又はPMMAポリマーと比較して引掻き傷を受けにくい。
【0132】
携帯電話等のポータブルディスプレイ装置が誤って落ちた場合に衝撃エネルギーが生じるが、エアギャップ及び幾何学的スペーサは、ちょうど機械的バネがエネルギーを吸収するように衝撃エネルギーを吸収し、典型的にはガラスで作られていたLCマトリックスにかかる衝撃力を減らすことから、幾何学的スペーサは耐衝撃性も提供する。精密なエアギャップは、LC装置に典型的な高強度光源と熱に敏感な繊細なLC材料の間に熱的絶縁も生じる。幾何学的スペーサにより生じる絶縁層は、より長いLC寿命をもたらし、高強度光源からの加熱により生じる画像形成の変動性を低減する。
【0133】
この例は、主として、LC装置用の熱可塑性光拡散材料の使用に関するものであるが、本発明の材料はバックライトディスプレイ、拡散層を含む画像形成要素、家庭用のスペキュラー照明及びプライバシースクリーン用のディフューザ、有機発光ディスプレイ、画像捕獲拡散レンズ、並びにグリーンハウスの光拡散等の他の拡散用途で有用である。幾何学的スペーサは、光ディレクタ、プリズムシート、光ガイド及びカラーフィルタ等の他の光学要素と使用する場合にも有用である。
【0134】
本発明のさらなる態様を特許請求の範囲に記載の態様とともに以下に示す。
[態様1] 少なくとも5マイクロメートルに等しい粗さ平均を有する粗い表面を含み、前記粗い表面が少なくとも2つの粗さ母集団を含み、前記少なくとも2つの母集団の粗さ平均が少なくとも8マイクロメートル異なる光学要素。
[態様2] 前記光学要素が、前記粗い表面を含む上面及び下面を有する上記態様1記載の光学要素。
[態様3] 前記少なくとも2つの母集団の粗さ平均が少なくとも75マイクロメートル異なる上記態様1記載の光学要素。
[態様4] 前記少なくとも2つの母集団の粗さ平均が少なくとも250マイクロメートル異なる上記態様1記載の光学要素。
[態様5] 前記粗い表面が少なくとも15マイクロメートルに等しい粗さ平均を有する上記態様1記載の光学要素。
[態様6] 前記少なくとも2つの粗さ母集団が規則的である上記態様1記載の光学要素。
[態様7] 前記少なくとも2つの粗さ母集団がランダムである上記態様1記載の光学要素。
[態様8] 前記少なくとも2つの粗さ母集団が規則的である1つの母集団を含む上記態様1記載の光学要素。
[態様9] 前記少なくとも2つの粗さ母集団が一体の幾何学的スペーサをさらに含む請求項1記載の光学要素。
[態様10] 前記一体の幾何学的スペーサが円柱形を成す上記態様9記載の光学要素。
【0135】
[態様11] 前記幾何学的スペーサが球形を成す上記態様9記載の光学要素。
[態様12] 前記一体の幾何学的スペーサが立方体形を成す上記態様9記載の光学要素。
[態様13] 前記一体の幾何学的スペーサが角錐形を成す上記態様9記載の光学要素。
[態様14] 前記一体の幾何学的スペーサがポリマーを含む上記態様9記載の光学要素。
[態様15] 前記一体の幾何学的スペーサが無機粒子を含む上記態様9記載の光学要素。
[態様16] 前記一体の幾何学的スペーサが80%を超える光透過率を有する上記態様9記載の光学要素。
[態様17] 前記一体の幾何学的スペーサが60%を超える曇り度を有する上記態様9記載の光学要素。
[態様18] 前記一体の幾何学的スペーサが1.0mmを超える周波数を有する上記態様9記載の光学要素。
[態様19] 前記一体の幾何学的スペーサが5〜25mmの周波数を有する上記態様9記載の光学要素。
[態様20] 光ディフューザをさらに含む上記態様1記載の光学要素。
【0136】
[態様21] 上面及び下面を有する透明ポリマーフィルムを含んで成り、前記上面及び下面の少なくとも一方の上に複数の複合レンズを含む上記態様20記載の光学要素。
[態様22] 前記複合レンズが前記表面上にランダムに分布している透明ポリマーフィルムを含む上記態様21記載の光ディフューザ。
[態様23] 前記複合レンズが凹形レンズである上記態様21記載の光ディフューザ。
[態様24] 前記複合レンズが、前記フィルムの面内のx及びy方向で3〜60ミクロンの平均幅を有する上記態様21記載の光ディフューザ。
[態様25] 前記複合レンズが、副レンズを含み、小さい方のレンズの直径が、平均して、それらと関連している主レンズの直径の80%未満である上記態様21記載の光デイフューザ。
[態様26] 前記拡散光の透過率が80〜95%である上記態様21記載の光ディフューザ。
[態様27] 前記複合レンズが半球状である上記態様21記載の光ディフューザ。
[態様28] 前記複合レンズが球状である上記態様21記載の光ディフューザ。
[態様29] 前記複合レンズが0.03〜1.0の高さ/直径比を有する上記態様21記載の光ディフューザ。
[態様30] 熱可塑性ポリマー材料と、光の進行方向に対して垂直な平面内で実質的に円形の断面を有するミクロボイドを含むとともに少なくとも65%の拡散光透過効率を有する上記態様21記載の光ディフューザ。
【0137】
[態様31] 熱可塑性ポリマー材料とミクロボイドの間の屈折率の差が0.2よりも大きい上記態様30記載の光ディフューザ。
[態様32] 前記ミクロボイドが有機微小球により形成される上記態様30記載の光ディフューザ。
[態様33] 前記ミクロボイドが散乱性の無機粒子を実質的に含まない上記態様30記載の光ディフューザ。
[態様34] 前記光学要素が少なくとも2つの一体層を含み、その第1の層が複合ポリマーレンズと前記複合レンズよりも少なくとも50マイクロメートル高い高さを有するポリマー柱状体を含み、第2の層が前記第1の層のための支持体として機能する上記態様1記載の光学要素。
[態様35] 前記柱状体が約250マイクロメートルの直径と約20nmの周波数を有する上記態様34記載の光学要素。
[態様36] 光源と、少なくとも5マイクロメートルに等しい粗さ平均を有する粗い表面を含み、前記粗い表面が少なくとも2つの粗さ母集団を含み、前記少なくとも2つの母集団の粗さ平均が少なくとも8マイクロメートル異なる光学要素とを含んで成るバックライト型装置。
[態様37] 光源と、少なくとも5マイクロメートルに等しい粗さ平均を有する粗い表面を含み、前記粗い表面が少なくとも2つの粗さ母集団を含み、前記少なくとも2つの母集団の粗さ平均が少なくとも8マイクロメートル異なる光学要素とを含み、前記光学要素が前記光源と偏光フィルムの間に配置されている液晶装置。
[態様38] 支持体上にポリマー材料の溶融した層をコートし、この層を、上記態様1記載の粗い表面の逆の型に対応する粗いパターンを有する型に接触させながら前記材料を冷却する工程を含む、透明支持体上に望ましいパターンで少なくとも2つの粗さ母集団を形成する方法。
[態様39] 支持体上にポリマー材料の溶融した層を連続的にキャストし、この層を、上記態様1記載の粗い表面の逆の型に対応する粗いパターンを有する型に接触させながら前記材料を冷却する工程を含む、透明支持体上に望ましいパターンで少なくとも2つの粗さ母集団を形成する方法。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は、液晶ディスプレイ装置での使用に好適な光学スペーサを含む透明ベース材料上に形成された複合レンズの断面図である。
【図2】図2は、光学スペーサを含む複合レンズ光ディフューザーを備えた液晶ディスプレイ装置である。
【符号の説明】
2…光ガイド
4…ランプレフレクター
6…反射テープ
8…反射フィルム
10…反射テープ
12…複合レンズ及び幾何学的スペーサを含む光拡散フィルム
14…輝度向上フィルム
16…偏光フィルム
18…可視光源
20…透明ポリマーベース
22…複合ポリマー光拡散レンズ
24…ポリマー幾何学的スペーサ
26…透明ポリマーベースの表面
Claims (8)
- 少なくとも5マイクロメートルの粗さ平均を有する少なくとも1つの粗い表面を含む、液晶ディスプレイ(LCD)においてスペキュラー光を拡散するための光学要素であって、該光学要素は光ディフューザであり、該粗い表面はランダムに分布した複数の複合レンズを含み、該ランダムに分布した複合レンズは、ランダムに配置された主レンズとランダムに配置された副レンズとを含み、フィルムの少なくとも1つの表面上で、各個々の主レンズ及び副レンズは、それぞれ他の主レンズ及び副レンズの一部と重なるか、副レンズは主レンズ内に形成されるか、または主レンズは副レンズを包み込んでおり、前記粗い表面は主レンズ及び副レンズによる少なくとも2つの粗さ母集団を含み、前記少なくとも2つの母集団の粗さ平均が少なくとも8マイクロメートル異なる、光学要素。
- 前記光学要素が、前記粗い表面を含む上面及び下面を有する請求項1記載の光学要素。
- 前記少なくとも2つの母集団の粗さ平均が少なくとも75マイクロメートル異なる請求項1記載の光学要素。
- 前記粗い表面が少なくとも15マイクロメートルの粗さ平均を有する請求項1記載の光学要素。
- 前記光学要素が、前記光学要素と一体となっている一体の幾何学的スペーサをさらに含む請求項1記載の光学要素。
- 前記一体の幾何学的スペーサが80%を超える光透過率を有する請求項5記載の光学要素。
- 前記一体の幾何学的スペーサ間の距離が5〜25mmである請求項5記載の光学要素。
- 上面及び下面を有する透明ポリマーフィルムを含んで成り、前記上面及び下面の少なくとも一方の上に複数の複合レンズを含む請求項1記載の光学要素。
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