JP4422330B2 - 新規な免疫異常性疾患予防・治療用剤 - Google Patents

新規な免疫異常性疾患予防・治療用剤 Download PDF

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Description

技術分野
本発明は、新規な免疫異常性疾患の予防・治療用剤に関する。さらに詳細には、スーパー抗原の一つとして知られる天然型の黄色ブドウ球菌腸管内毒素B(Staphylococcal enterotoxin B;以下、SEBと呼称することもある)の改変体またはその誘導体を有効成分として含有する慢性関節リウマチ、アレルギー性疾患等の免疫異常性疾患の予防・治療用剤に関する。
背景技術
自己免疫疾患は、慢性関節リウマチ(Rheumatoid arthritis;以下、RAと呼称することがある)等の臓器非特異的自己免疫疾患と潰瘍性大腸炎等の臓器特異的自己免疫疾患とに大きく分けられるが、通常は免疫学的寛容の状態にある自己の抗原に対して応答するT細胞が、何らかの原因で自己の組織内で活性化され自己の抗原と応答するようになり、これが持続的な炎症反応となって組織に障害を与えることに起因するものである。その場合の自己の抗原とは、それぞれ自己の関節の成分であるII型コラーゲンや消化管粘膜の主成分である。
これら疾患の患者数は毎年、僅かながら増加しているにも拘わらず、今なお有効な治療薬や予防方法は見出されていない(山村雄一、岸本忠三、ロバート・A・グッド編:薬剤による免疫不全、「免疫科学」、9巻、p.285−289、(1984))。現在、これらの疾患の治療には、サラゾピリン、5−アミノサリチル酸、アザチオプリン、6−MP、トラニラスト、メトトレキシサート、シクロスポリンA、メトロダニゾールの投与および7S−免疫グロブリンの大量投与等の薬物療法や胸腺摘出術、人工関節への置換術等の外科的療法、さらには栄養療法等の対症療法が行われている(市川陽一ら:慢性関節リウマチにおけるメトトレキサートおよびサラゾスルファピリジン長期投与例の検討、リウマチ、35巻、p.663−670、(1995);柏崎禎夫:慢性関節リウマチに対するオーラノフィンとメトトレキシサートによる併用療法の検討、リウマチ、36巻、p.528−544、(1996);古谷武文ら:慢性関節リウマチにおける低用量メトトレキシレート療法の有害事象、リウマチ、36巻、p.746−752、(1996);渡辺言夫:若年性関節リウマチの薬物療法、リウマチ、36巻、p.670−675、(1996);八倉隆保:免疫抑制療法・自己免疫疾患の治療 総合臨床、30巻、p.3358、(1981);都外川新ら:慢性関節リウマチにおけるメトトレキシサート療法の検討−有効性のより高い投与法を求めて−、リウマチ、37巻、p.681−687(1997))。しかしながら、これらは根治的な療法とはいえず、むしろ長期服用によるため重篤な副作用の原因ともなり、より有効な予防・治療薬、治療法の開発が望まれている。
SEBは周知のように細菌性スーパー抗原の一種である(White J.et.al.Cell,Vol.56,p.27−35,1989)。通常の抗原はクラスII主要組織適合遺伝子複合体(Major Histocompatibility Complex:以下、MHCと呼称することもある)と複合体を形成した状態でT細胞上のT細胞抗原受容体(T cell antigen receptor:以下、TCRと呼称することもある)に認識され、しかもその認識はクラスIIMHCのハプロタイプに限定される(これをMHC拘束性という)。これに対して、スーパー抗原はクラスIIMHC分子にハプロタイプに関係なく結合し、さらに特定のTCRのβ鎖可変領域(Vβ鎖)に結合する。このような結合が生じると、スーパー抗原が結合したT細胞は一時的に活性化され分裂増殖を引き起こし、炎症性のサイトカインを産生する(Micusan V.V.& Thibodean J,Seminars in Immunology,Vol.5,p.3−11,1993)。
SEBは食中毒を起こす毒素の一つであるが、食中毒様の症状はSEBを動物に静脈内投与しても認められることからSEBの上記生物活性を介して、毒性が発現されていることが示唆される(Micusan V.V.& Thibodean J, Seminars in Immunology,Vol.5,p.3−11,1993)。
ところが、スーパー抗原を新生マウスに静脈内或いは腹腔内に投与すると、これに応答するVβ鎖(SEBではVβ7及びVβ8TCR)を持ったT細胞亜集団は除去され、同じ抗原に対して応答しなくなる免疫寛容の状態になる(White J.et.al.Cell,Vol.56,p.27−35,1989)。一方、SEBを成体のマウスに投与した場合は、前述のような一時的な活性化の後に応答性のVβ7、Vβ8TCRを持つT細胞亜集団は、再度のSEBの刺激に対して応答しなくなる状態、即ちアナジーの状態が誘導されて免疫寛容になる。SEBがこのような活性を有することから、前述の慢性関節リウマチや潰瘍性大腸炎のような難治性の自己免疫疾患、さらには免疫異常性疾患の予防・治療用薬剤になる可能性が示唆されている(特開平9−110704)。また、SEBはブドウ球菌の食中毒を引き起こす腸管内毒素でもあるため、生体内に投与したときのSEBの病原性の問題があるが、かかる毒性を回避するため、特開平9−110704では、高度に精製したSEBを病原性を与えない投与量で連続的に長期間経口投与することにより生体に病原性を与えることなく免疫寛容のみ有効に誘導させている。
SEBの毒性を回避する他の方法としては、カップラー及びマーラックらが特表平8−500328で開示している「突然変異したスーパー抗原の保護作用」があり、彼らの発明の骨子は以下のものである。SEBの突然変異体を調製し精製した後、ヒトのクラスIIMHC分子及びTCRに結合可能なSEB突然変異体を選択した。その後、突然変異していないSEBと区別できないほどにクラスII陽性細胞に結合し、T細胞の増殖を刺激しないSEB突然変異体をSEBに暴露する前に動物に注射するとSEBの毒性作用に対して完全な防御を示した。
特表平8−500328の開示がもたらす特に重要な知見は、毒性除去に関わるSEBの構造研究である。SEBの3次元構造はスワミノサンら(Nature,Vol.359,p.801(1992))によって報告されている。SEB分子は2つのドメインから構成され、最初のドメインは残基1−120よりなり、2番目は残基127−239よりなる。また、SEBのN−末端部分にはクラスIIMHC分子結合及び/またはTCR結合に影響を与える3つの領域(領域1(残基9−23)、領域2(残基41−53)および領域3(残基60−61))が同定されている。
発明の開示
上述の知見に着目し、本発明者らは、本来のSEBの有する毒性を軽減し免疫異常性疾患の予防・治療に効果を発揮し得るSEB改変体及びそれらの誘導体を本態とする新規な免疫異常性疾患の予防・治療用薬剤を提供する本発明を完成した。
すなわち、本発明は、天然型の黄色ブドウ球菌腸管内毒素B(SEB)のアミノ酸配列において少なくとも1のアミノ酸残基の置換を有するSEB改変体またはその誘導体を有効成分として含有する免疫異常性疾患予防・治療用剤であって、該改変体または該誘導体は、T細胞レセプター(TCR)の特異的Vβ成分と相互作用するが、天然型SEBや組換え野生型SEBによって惹起される特定のVβ成分をもつT細胞の除去を誘導することなくSEBに対する免疫学的応答性のみを低下させるT細胞活性化の抑制作用を有するものであることを特徴とする、免疫異常性疾患予防・治療用剤を提供するものである。
本発明の第一の態様において、SEB改変体またはその誘導体は、部位特異的突然変異により、天然型SEBを基準にして9位のアミノ酸がアスパラギン酸以外のタンパク質構成アミノ酸、好ましくはアスパラギンで置換されているもの,またはその誘導体である。
本発明の第二の態様において、SEB改変体またはその誘導体は、部位特異的突然変異により、天然型SEBを基準にして23位のアミノ酸がアスパラギン以外のタンパク質構成アミノ酸、好ましくはチロシン、アスパラギン酸、イソロイシンまたはリジンで置換されているもの、またはその誘導体である。
本発明の第三の態様において、SEB改変体またはその誘導体は、部位特異的突然変異により、天然型SEBを基準にして41位のアミノ酸がイソロイシン以外のタンパク質構成アミノ酸、好ましくはアルギニンもしくはスレオニンで置換されており、かつ44位のアミノ酸がフェニルアラニン以外のタンパク質構成アミノ酸、好ましくはバリンに置換されているかもしくは45位のアミノ酸がロイシン以外のタンパク質構成アミノ酸、好ましくはバリンに置換されているもの、またはその誘導体である。
本発明の第四の態様において、SEB改変体またはその誘導体は、部位特異的突然変異により、天然型SEBを基準にして44位のアミノ酸がフェニルアラニン以外のタンパク質構成アミノ酸、好ましくはセリンに置換されているもの、またはその誘導体である。
発明を実施するための最良の形態
本発明では、SEB改変体の調製に際し、TCRとの結合に係る部位には改変を施すことなく、クラスIIMHC分子への結合に影響を与えるものについて鋭意検討を重ねた。スーパー抗原とクラスIIMHCとの結合は、スーパー抗原によるT細胞活性化に必須であるため、直接TCR結合部位に影響を与えずともクラスIIMHC分子への結合を抑制することによりT細胞のSEBに対する応答性が低下する可能性(アナジーの誘導)が期待されたからである。
9−23のアミノ酸残基として定義される領域1では、特に重要なクラスIIMHC分子への結合を妨害する23位アスパラギンの改変(N23D、N23K、N23Y、N23I)について重点的に検討した。また、9位アスパラギン酸(D9N)及び17位フェニルアラニン(F17S)の改変についても同様に調べた。なお、本明細書に用いられる改変に係る表記は、アミノ酸残基位置の数字の前に改変前のアミノ酸名を、後に改変後のアミノ酸名を表記したものであり、例えば「N23D」の場合、N末端から23番目(23位)のN(Asn:アスパラギン)をD(Asp:アスパラギン酸)に置換した改変体を意味する。
残基40−53で定義される領域2は、全ての黄色ブドウ球菌の腸管内毒素においてクラスIIMHC分子への結合を仲介するのに重要である。ここで41位、44位、45位及び53位の変異について検討した。これらの残基はクラスIIMHC分子への結合に特異的である。残基41、44、45、53位、さらに59位に点突然変異(部位特異的突然変異)を導入し改変体を作製した。即ち、I41T L45V、I41R F44V、F44S、F44L I53N、F44L I53N G59Wである。
上述のSEB改変体について後述の方法でその安全性と有効性について検討した結果、以下の態様のSEB改変体が、慢性関節リウマチ等の免疫異常性疾患に対する新規な予防・治療用薬剤の本態として安全で、かつ良好な機能を発揮し得ることを確認した。
▲1▼天然型SEBを基準にして9位のアミノ酸がアスパラギン酸以外のタンパク質構成アミノ酸、とりわけアスパラギンで置換されているSEB改変体またはその誘導体。
▲2▼天然型SEBを基準にして23位のアミノ酸がアスパラギン以外のタンパク質構成アミノ酸、とりわけチロシン、アスパラギン酸、イソロイシンまたはリジンで置換されているSEB改変体またはその誘導体。
▲3▼天然型SEBを基準にして41位のアミノ酸がイソロイシン以外のタンパク質構成アミノ酸、とりわけアルギニンもしくはスレオニンで置換されており、かつ44位のアミノ酸がフェニルアラニン以外のタンパク質構成アミノ酸、とりわけバリンに置換されているかもしくは45位のアミノ酸がロイシン以外のタンパク質構成アミノ酸、とりわけバリンに置換されているSEB改変体またはその誘導体。
▲4▼天然型SEBを基準にして44位のアミノ酸がフェニルアラニン以外のタンパク質構成アミノ酸、とりわけセリンに置換されているSEB改変体またはその誘導体。
さらに、これらのSEB改変体を本態とする薬剤において、とりわけ、経口投与ルートでの投与形態が驚くべき効果をもたらすことを見出した。
まずSEB改変体の毒性低減について体重減少誘発を指標として検討した。体重減少の評定はBALB/cマウスを用いて行なった。含まれるエンドトキシンを実験に影響を与えない濃度に除去したSEB300μgをPBS(リン酸緩衝化生理食塩水)に溶解し、マウスに腹腔内投与し、翌日より各個体の体重測定を行なった。結果は、野生型SEB及びD9Nでは7〜9%の体重減少が投与後3日まで認められたが、残り全ての改変体では体重減少は認められなかった。
さらに、本発明者らはこれら改変体について、D−ガラクトサミン誘導致死毒性の有無について検討した。D−ガラクトサミンを投与するとSEBに対するマウスの感受性が著しく上昇し、雌のBALB/cマウスに投与した場合LD50が2μg/マウスまで低下し、20μg/マウスでは100%死亡することをMiethke T.らが報告している(J.Exp.Med.,vol.175,p.91−98(1992))。
本発明者らは、この実験系を用いて改変体の致死毒性の有無について検討した。その結果、野生型とD9Nでは48時間後の死亡率がそれぞれ9/10、8/10であったのに対して、I41T L45Vが3/10、I41R F44Vが1/10、F44Sが0/10、F44L I53Nが0/10、F44L I53Nが1/10、そしてF44L I53N G59Wが0/10であり、これらの改変体では致死毒性は著しく低減されていることが判明した。これは、特表平8−500328で開示された毒性低減のみならず、致死毒性も除去できることを明確に示している。
ところで、免疫異常性疾患の予防・治療用剤としての可能性が期待されるSEBであるが、この物質そのものが免疫異常性疾患の発症に関与しているとの報告がある(Omata S.et.al.,Cellular Immunol.,Vol.179,p.138−145(1997))。そこで、SEBそのもの及び本発明のSEB改変体の免疫異常性疾患発症との関連について、ヒトの慢性関節リウマチのモデルであるコラーゲン誘導関節炎(collagen−induced arthritis;以下、CIAと呼称することがある)の系を用いて検討した。コラーゲンを投与して関節炎を誘導したマウスに、天然型SEB及び本発明によって提供される代表的なSEB改変体を追加投与すると、天然型SEBを投与されたマウス群では関節炎の発症率が高度に高く、その重症度も高度であって、発症とSEBとの関連が否定できないデータが得られたのに対して、SEB改変体の投与では重篤な発症を生じることはなかった。
SEBによるいくつかの毒性はSEBによって刺激された白血球が産生するモノカイン、とくに腫瘍壊死因子−α(TNF−α)に起因すると考えられる。事実、ヒトの末梢血リンパ球にSEBを反応させると多量のTNF−αが産生される。しかしながら、SEB改変体によるTNF−α産生は著しく少なく、特にN23Yの刺激活性は最も低かった。
このように、SEB改変体は増殖あるいはサイトカイン産生などの刺激活性が低下していた。この活性低下がインビボにおけるマウスの致死毒性の軽減や、関節炎惹起能の失活などと密接にかかわるものと推察された。しかしながら興味深いことに、SEB改変体は上述のTリンパ球刺激活性は著しく低下しているものの、逆に、Tリンパ球の活性化を抑制する活性が認められた。T細胞を抗原提示細胞存在下で抗原で刺激した場合、T細胞は増殖したりガンマーインターフェロン(γ−IFN)等のサイトカインを産生するが、本系にSEB改変体を加えるとこれらの反応が抑制された。すなわち、SEBを改変することによって、単に天然型SEBの有する毒性が軽減されるだけでなく、T細胞の活性化反応を抑制するという天然型SEBにはみられない作用が新たに生じることがわかった。
このT細胞活性化の抑制効果はインビボでも認められた。まず、前述の実験系で関節炎の発症に深く関与する天然型SEBの投与に先立ち、本発明のSEB改変体を投与しておくと、重篤な関節炎の発症を防御し得るという、SEB改変体投与の優れた効果を支持する結果が得られた。
本発明のこれらSEB改変体について経口投与による自己免疫疾患治療薬への応用の可能性について、コラーゲン誘導関節炎(CIA)の系で検討した。その結果、野生型、I41T L45V、 I41R F44V、F44L I53N G59W、F44S、N23Y、N23I、N23Dは関節炎の増悪を抑制することが判明し、有効性が保たれていることが確認された。とりわけ、N23Yは改変体の中でも最も強くCIAを抑制した。
従って、本発明によってもたらされるSEB改変体を本態とする薬剤は、従来のものと比べて毒性が低く、且つT細胞の抑制活性に基づいたより有効性の高い慢性関節リウマチの予防・治療用剤、特に経口投与剤として利用可能である。また、特開平9−110704で開示される天然型SEBで示されているような炎症性腸疾患に対する発症予防効果も期待できる。
本願発明の免疫異常性疾患の予防・治療用経口投与剤は、その本態であるSEB改変体を他の投与形態の薬剤に比べて極めて少量含有することを特徴とする。これらSEB改変体はSEBと同様にSEB結合性のVβTCR T細胞亜集団に特異的に弱いトレランスを誘導するが、一方で、経口投与した場合、炎症性のT細胞の作用を抑制する働きを有している。
本発明に使用されるSEB改変体を調製する方法は特に限定されることはないが、遺伝子組み換え技術によって得られるSEB産生細胞より分離する方法によって調製することができる。
例えば、本発明の薬剤の本態となるSEB改変体の基本となる野生型SEB(黄色ブドウ球菌に由来するSEBと同じアミノ酸配列を有する遺伝子組換え技術に基づいて調製されたSEB)は、概略以下の方法で調製する。
SEBの染色体DNAは公知であるので(Ranelli D.M.,et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA.,Vol.82,p.5850〜(1985))、DNA合成機等を用いて5’センスプライマー及び3’アンチセンスプライマーを合成することができる。該プライマーと市販されているSEBのDNAライブラリーに存する染色体DNAによるプラークハイブリダイゼーションによりプラークを採取し、さらにセンスのプライマーを用いてPCRを行ない、得られたバンドからDNAを抽出する。そして、好適なクローニングベクターに抽出されたDNAを挿入してクローニングする。
クローニングされたSEBをコードする遺伝子をSacI、HindIII、EcoRI、BamHI、XbaI、SalI及びPstI等の制限酵素で切断し、同じく制限酵素XmnI、HindIII、EcoRI、BamHI、XbaI、SalI及びPstI等で切断したベクターに組み込むことによって組換え体DNAを得る(Sambrookら、Molecular Cloning、第2版、第9章、1989年、New York,Cold Spring Harbor Laboratory Press)。ベクターとしては、分泌発現用ベクターpTrc99A等が好適に用いられ得る。
得られた組換え体DNAを適当な宿主、例えば大腸菌に組み込むことにより、形質転換体を得ることができる。当該形質転換体を常法により培養した後、培養終了後に菌体を採取し、常法により菌体を破砕し懸濁液より所望の野生型SEBを得ることができる。なお、条件によっては培養上清中に好適に野生型SEBが分泌されている場合があり、この場合、培養上清が調製の出発原料となり得る。出発原料を、例えば、抗SEB単クローン抗体を吸着体に結合させた免疫アフィニティークロマトグラフィー等の精製手段により精製する。なお、各種試験に用いられる最終調剤の緩衝液は、トリス―塩酸緩衝液、リン酸緩衝液等を用いることが好ましい。
本発明のSEB改変体の調製は前述の野生型SEBの調製に準じて行うことができる。ただし、SEBのX線構造解析データに基づく分析によりクラスIIMHC分子との結合部位を解析し、アミノ酸の特定の改変部位を決定して好適なプライマーを調製し、PCRによる点突然変異の操作を加えることが必須の要件となる。
調製された野生型SEB及びSEB改変体を最大限に維持するためには、新鮮であるか、4℃で保存する場合は保存後約5日以内のものが好ましい。あるいは、本発明のSEB改変体は、ゼラチン、塩、糖、糖アルコールまたはアミノ酸等の好適な環境で保存することができる。
また、本発明では有効成分としてのSEB改変体もしくはその誘導体と公知の適当な賦形剤を組み合わせ、公知の方法で本発明の免疫異常性疾患予防・治療用剤とすることができる。本薬剤の最終的な剤型については、経口投与用の薬剤である限り特別の制約はなく粉末(固形)状、溶液状あるいはシロップ状のものが考慮され得る。例えば、SEB改変体もしくはその誘導体を適当な賦形剤、例えば炭水化物、糖、糖アルコールおよびアミノ酸等と共に凍結乾燥し固形状としたものまたはSEB改変体もしくはその誘導体を生理食塩水および許容し得る張度のイオン強度を有する適当な緩衝液中に溶解した液状製剤等は好適な態様である。また、本態となるSEB改変体もしくはその誘導体を市販の飲料水に溶解し経口的に摂取することも考えられ得る。薬剤中の含量については、1回の投与当たり0.05μg〜50mg(0.001〜1,000μg/kg体重)、好ましくは0.5μg〜0.5mg(0.01〜10μg/kg体重)のSEB改変体もしくはその誘導体を含有する薬剤が好適である。
本発明のSEB改変体もしくはその誘導体を本態とする免疫異常性疾患予防・治療用剤の有効投与量は、例えば投与対象者の年齢、症状および重症度などにより変動し、最終的には医師の意図により変動するものであるが、例えばSEB改変体に換算した場合、一般に成人1日当たり0.05〜50,000μgであり、好ましくは0.5〜500μgを1〜2回に分けて経口的に投与するのがよい。また、場合により例えばアザチオプリン、シクロフォスファミド、またTNFα抗体等の高分子の抗炎症剤等の他の薬剤と併用することも可能である。
本発明のSEB改変体含有免疫異常性疾患予防・治療用剤が適用できる免疫異常性疾患としては、慢性関節リウマチや潰瘍性大腸炎等の自己免疫疾患が主たる適用疾患として挙げられるが、自己免疫疾患以外にも例えば骨髄移植後の移植片対宿主病やI型、II型、III型アレルギー性疾患にも適用できる。
また、本発明のSEB改変体の「誘導体」とは、上記少なくとも1のアミノ酸残基の置換を有するSEB改変体がさらにアミノ酸修飾を受けたものをいい、上記特定のアミノ酸以外に天然型SEBのアミノ酸配列中のいずれかのアミノ酸残基がさらに置換、欠失、挿入等されたもので、本発明のSEB改変体と同等の活性を有するものはいずれも本発明に包含される。
産業上の利用可能性
本発明により、従来より強く望まれていた慢性関節リウマチ等の自己免疫疾患をはじめとする免疫異常性疾患に対する新規な予防・治療用薬剤を提供することが可能となる。
実施例
以下に、調製例及び実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに何ら限定されるものではない。
調製例1(組換えSEB改変体の作製と発現)
1−1 SEB遺伝子のクローニング
CLONOTEC社よりStaphylococcus aureus enterotoxin A+B+DのDNAライブラリーを購入し、プラークハイブリダイゼーション法を行なった。プローブとして、アンチセンスの合成DNAあるいはPCR断片を用いた。プライマーは以後のクローニング操作を容易にするために両端にSalI切断部位を付加した。
上記プライマーと結合したプラークを採取し、さらにセンスのプライマーを用いてPCRを行ない、得られたバンドからDNAを抽出し、PCR−IIベクター(Invitrogen社)にクローニングした。上記ハイブリダイゼーションに用いたプライマーを表1に示す。
Figure 0004422330
その後、オートシークエンサーを使用して、DNAの塩基配列を確認した。得られたSEB遺伝子はプロモーター領域(SEB−Pro)を含んでいたので、プロモーター領域を含まないSEB遺伝子を得るために更に、表2に記載のプライマーを用いてPCRを行ない、得られたDNA断片をPCR−IIベクターにクローニングした。
Figure 0004422330
得られたSEB遺伝子のDNA塩基配列は、オートシークエンサーを用いて決定したが、上記のようにして得られたSEB遺伝子には突然変異は含まれていなかった。プロモーター領域を含まないSEB遺伝子を、SalIで切断し、同じ切断部位を持つ分泌発現用ベクターpTrc99A(Pharmacia Biotech社)にクローニングし、正常な方向に挿入されているものを使用して、IPTGを用いた誘導を行ない、SEBが分泌発現されることを確認した。
1−2 ポリメラーゼチェイン反応(PCR)
本実施例では、PCRはSaikiら(Science vol.,239,p.487(1988))の報告に従い、TaqポリメラーゼとPerkin Elmer Cetus(Norwalk,CT,USA)のDNAサーマルサイクラーを用いて行なった。2本鎖テンプレートDNAを変性解離させるための1分間の変性工程(94℃)、プライマーとテンプレートを会合させるための2分間のアニーリング工程(55℃)及び合成のための2分間の延長工程(72℃)を30〜35サイクル行なった。テンプレート濃度は1〜10Mであり、オリゴヌクレオチドプライマー濃度は1mMとした。dNTPの濃度は200mMであるが、突然変異を導入する場合は1つのdNTP濃度を20mMに低下させた。
1−3 組換えSEB改変体の作製と発現
SEB改変体は、アミノ酸置換導入を行なったもののみ組換え発現した。Marrack P.et.el.(J.Exp.Med.,Vol.,171,p.445(1990))の報告に基づき、MHCクラスII分子に対する結合力に影響を与える領域を改変した。表3にアミノ酸置換の導入部位について示す。
Figure 0004422330
1−4 アミノ酸置換の導入
PCRIIベクターに挿入したSEB−Pro遺伝子を鋳型DNAとして、5’末端にSfiI部位を、3’末端にNotI部位をPCRを用いて付加した。得られたDNA断片をpTrc99ApelBベクターに挿入し、塩基配列をシーケンシングして確認した。各SEB改変体のアミノ酸置換導入位置の遺伝子に本来のアミノ酸が目的とするアミノ酸に変換されるように塩基配列に変異を入れたPCR用プライマーをセンス側及びアンチセンス側それぞれ1本ずつ合成した。まずアンチセンス側のプライマー(D9N、N23I、N23Y、N23D、N23K、F17S、F17S N23D)−SEBを用いて先に作製し、SfiI部位付加用プライマーをセンスプライマーにしてPCRを行なった。
図1及び図2にそれぞれの改変体に用いたPCRプライマーの塩基配列を示す(配列番号5〜19)。
次に、センスプライマーを用いて先に作製したNotI部位付加用プライマーをアンチセンスプライマーとしてPCRを行なった。得られた2本のDNA断片を使用してPCRを行ない、得られたDNA断片をpTrc99Aにクローニングした。その後SfiIとNotIで挿入されたベクターを処理して目的とするサイズのDNA断片に切断されるか調べ、切断されたものについてDNA塩基配列のシーケンシングを行ない変異の導入が正確になされているかどうか確認した。
1−5 SEB改変体の発現及び該改変体の調製
SEB改変体の発現はpTrc99Aベクターに挿入された改変体遺伝子を用いて行なった。遺伝子を組み込んだ大腸菌を4%CIRCLEGROW(BIO 101 Inc.,Vista,CA,USA)、アンピシリン(50mg/ml)を溶かした培地で37℃18時間培養し、細胞を集めた後、さらに同じ培地に、O.D.550nmが0.3〜1.0になるように調整して浮遊し、2mMイソプロピル−B−D(−)−チオガラクトピラノシド(IPTG)を加えて37℃で一晩振とうすることにより誘導を行なった。誘導後、遠心分離により宿主の大腸菌を除去し、0.45μmの濾過膜で濾過した。
このようにして調製した培養上清を、抗SEB単クローン抗体SA58−2−6IgGを固相化したSepharose4Bカラムに通液し、含まれるSEB改変体を吸着させた。0.1M Tris HCl(pH8.0)で洗浄したのち、4M MgClで溶出した。溶出画分は、20倍容の生理食塩水に3回透析後、20倍容のPBSに2回透析した。今回調製したSEB改変体は全てこの単クローン抗体カラムで精製することが可能であった。
実施例1(マウスを用いた致死毒性試験)
Miethke T.らが報告しているように、天然型SEBは通常はマウスに致死毒性をもたらさないが、これにD−ガラクトサミンを20μg/kgで投与し、さらに20μg/マウスのSEBを投与静脈内若しくは腹腔内に投与することで、死亡することが知られている(J.Exp.Med.,Vol.,175,p.91−98(1992))。本実施例では予めD−ガラクトサミンを投与したマウスに引き続きSEB及びSEB改変体を投与して、これらが実際に死亡率を改善するものであるかどうかを調べた。
先ず、エンドトキシンに対する感受性を調べるため、BALB/cマウスにD−ガラクトサミン20mg/マウスを投与後、E.coli B4株由来のLPS(リポ多糖)を静脈内投与して24時間後の死亡率を調べた。その結果、LPS投与量が1ng/マウス以下では死亡例は0であった(表4)。
Figure 0004422330
SEB改変体標品中に含まれるエンドトキシンの量を最終投与量が10ng/マウス以下になるように除去し、雄を使用して実験を行なった。雄では、D−ガラクトサミン投与後のSEBの致死毒性は100μg/マウス以上を投与したときに発現されたので、SEB改変体の投与量は100μg/マウスとした。表5に示すように、天然型SEB、野生型SEB及びD9N−SEBではマウスの死亡率は高く、致死毒性があることが示されたが、他の改変体では致死毒性は低減されていた。なお、ここでいう天然型SEBとは黄色ブドウ球菌に由来する腸管内毒素を意味し、野生型SEBは天然型SEBとアミノ酸配列を同じくする遺伝子組換え技術に基づいて調製されたSEBを意味する。
Figure 0004422330
次に、雌のBALB/cマウスを用いて実験を行なった。雌ではD−ガラクトサミン40mg/マウスを投与したとき、SEB20μg/マウスで高い致死毒性が認められた。天然型−SEB、野生型−SEB、D9N−SEBでは高い死亡率となったが、その他の改変体では死亡率は低く、致死毒性が低減されていることが示された。
実施例2(SEB及びSEB改変体刺激によるヒト末梢血単核球(PBMC)のTNF−α産生の比較)
健常人末梢血よりリンパ球分離液(Pharmacia)にて末梢血単核球(PBMC)を採取し、1×10cells/mlになるように10%FCS含有RPMI1640培地に浮遊させた。100mlの細胞浮遊液を96穴マイクロタイタープレート(Falcon)に加え、これにさらに100mlのSEB及びSEB改変体溶液を添加して37℃で24時間培養した。24時間後に培養上清を回収し、上清中のTNF−αをヒトTNF−α用エンザイムイムノアッセイキット(Biosource)で定量した。図3にその結果を示す。SEBでPBMCを刺激した場合、多量のTNF−αが産生されたのに対し、SEB改変体ではTNF−α産生は著しく低下していた。特にN23Yが最も低い値を示し、SEBに対する比活性は1000倍以下であった。
実施例3(SEB改変体によるT細胞抑制活性)
SEB改変体によるT細胞抑制活性をpurified peptide derivative(PPD)応答性マウスT細胞株PPD914を用いて評価した。本T細胞株はVβ8TCR陽性であり、抗原であるPPDのみならず、SEBにも反応することができる。1×10個のPPD914をマイトマイシン処理したDBA/1J由来の脾臓細胞5×10個を96穴マイクロタイタープレート(Falcon)で培養し、0.5mg/mlのPPDを加えて刺激した。この系にSEB改変体を1mg/mlで添加し、37℃で48時間培養した。48時間後に0.5mCi/wellでトリチウムチミジンを加えて、さらに16時間追加培養し増殖反応を測定した。SEB改変体による抑制活性は改変体非添加群と比較することにより評価した。結果を図4に示す。改変体N23Y及びF44Sは抗原であるPPDによって惹起されるT細胞の増殖応答を抑制した。
実施例4(コラーゲン誘導関節炎(CIA)でのSEB改変体の安全性の評価)
コラーゲン誘導関節炎(CIA)は、DBA/1マウスに、ウシII型コラーゲンをフロイント完全アジュバントとともに、200μg/マウスで皮内投与して誘導した。ウシII型コラーゲン投与より21日後にSEB、F44SまたはN23Dを各々50μg/マウスの投与量で腹腔内投与し、一週間後(初回のコラーゲンの投与より28日後)に関節炎の発症率を比較した。表6に関節炎発症率と重症度について結果をまとめてある。SEBを投与されたマウスでは強力な関節炎が8例中5匹に観察されたが、F44SまたはN23Dの投与群のマウスには1例も関節炎は認められなかった。
Figure 0004422330
実施例5(SEB誘導性関節炎におけるSEB改変体の予防効果)
実施例4と同様の方法で誘導したDBA/1マウスに、ウシII型コラーゲン投与より18日後、F44SまたはN23Dおよび対照としてリン酸緩衝液を各々50μg/マウスの投与量で腹腔内投与した。さらに3日後に50μg/マウスのSEBを腹腔内投与した。表7にリン酸緩衝液投与群では8例中4例(50%発症率)のマウスに関節炎が認められたが、F44SまたはN23Dを前投与することによって、発症率はそれぞれ13%及び25%に抑制された。
Figure 0004422330
実施例6(コラーゲン誘導関節炎(CIA)でのSEB改変体の経口投与による治療効果)
実施例4と同様にしてCIAを誘導したDBA/1マウスに、その後21日後にウシII型コラーゲンをそのまま腹腔内投与するブースターを行なった。CIAの発症は関節炎スコアを測定し、重症度を比較し、実験開始時点での疾患の重症度を一定にそろえた。経口投与は、予め計算したマウス1日の飲水量を調べ平均飲水量を計算し、適度にバラツキがでるように群分けしたものを用いた。
群分け後、SEB改変体を自由飲水投与し、疾患の軽減を見る実験を開始した。毎週1回スコアを読み、重症度の推移を記録した。これらの結果を図5及び図6に示す。CIAの症状軽減、増悪抑制活性については、I41R F44V、I41T L45V、D9N、N23K、F44S、N23I及び野生型SEBについて有効であった。各実験群の関節炎スコアを基にPBS(CIA発症群)投与群と改変体投与群との間でウイルコクソン検定による有意差検定を行なった。その結果、上記の改変体投与群すべてにおいて、発症からの経過日数が25日〜75日の間は0.05以下の危険率で有意であり、これらの改変体はCIAで症状軽減効果があることが判った。従って、毒性が低減されかつCIAでの有効性が保持されているSEB改変体の有効性が確認され、これらは副作用の極めて少ないヒトの慢性関節リウマチの治療用経口投与剤としての可能性が高いことを示唆している。
一方、D9N N23D、F17S E22D及びN23Y F208Lの投与群ではPBS投与群との比較で、ウイルコクソン検定において0.05の危険率で有意差はなかった。
実施例7(コラーゲン誘導関節炎(CIA)でのSEB改変体の経口投与による予防的治療効果)
実施例4と同様にして、200μgのウシII型コラーゲンをCFAに懸濁してDBA/Iマウスの尾部皮内に免疫した。免疫後20日後より生理食塩水に溶解したSEB改変体をマウスあたり0.5mg、隔日経口投与した。初回免疫後30日目に100μgのコラーゲンを腹腔内に投与した(ブースター)。経時的に関節炎を観察しスコア化し、SEB改変体のCIA抑制作用を評価した。図7に示すように、ブースターの10日前よりSEB改変体を投与する系においてもSEB改変体はCIAを抑制し、SEB改変体の関節炎に対する予防的治療効果が確認された。なかでもN23Yは最も効果的で、関節炎を顕著に軽減させた。
【配列表】
Figure 0004422330
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【図面の簡単な説明】
図1は、本発明のSEB改変体調製時のアミノ酸置換に用いたそれぞれの改変体に応じたPCRプライマーの塩基配列を示す図である。
図2は、本願発明のSEB改変体調製時のアミノ酸置換に用いたそれぞれの改変体に応じたPCRプライマーの塩基配列を示す図である。
図3は、野性型SEB及びSEB改変体刺激によるヒト末梢血単核球(PBMC)のTNF−α産生量を示す図である。
図4は、SEB改変体によるT細胞抑制活性を示す図である。
図5は、コラーゲン誘導関節炎に対するSEB改変体の経口投与による治療効果を示した図であり、有効であった投与群のものである。縦軸は被験マウスの重症度、横軸は発症してからの経過日数を示す。
図6は、コラーゲン誘導関節炎に対するSEB改変体の経口投与による治療効果を示した図であり、無効であった投与群のものである。縦軸は被験マウスの重症度、横軸は発症してからの経過日数を示す。
図7は、コラーゲン誘導関節炎に対するSEB改変体の経口投与による予防的治療効果を示した図である。縦軸は被験マウスの重症度、横軸はSEB改変体の投与開始からの経過日数を示す。

Claims (3)

  1. 天然型の黄色ブドウ球菌腸管内毒素B(SEB)のアミノ酸配列において少なくとも1のアミノ酸残基の置換を有するSEB改変体 を有効成分として含有する慢性関節リウマチの予防・治療用剤であって、該改変体 は、T細胞レセプター(TCR)の特異的Vβ成分と相互作用するが、天然型SEBや組換え野生型SEBによって惹起される特定のVβ成分をもつT細胞の除去を誘導することなくSEBに対する免疫学的応答性のみを低下させるT細胞活性化の抑制作用を有するものであり、該アミノ酸残基の置換が、
    (i)天然型SEBを基準にして9位のアミノ酸がアスパラギンで置換;
    (ii)天然型SEBを基準にして23位のアミノ酸がチロシン、アスパラギン酸、イソロイシンまたはリジンで置換;
    (iii)天然型SEBを基準にして41位のアミノ酸がアルギニンもしくはスレオニンで置換、かつ44位のアミノ酸がバリンに置換もしくは45位のアミノ酸がバリンに置換;および
    (iv)天然型SEBを基準にして44位のアミノ酸がセリンに置換
    よりなる群から選ばれたものであることを特徴とする、慢性関節リウマチの予防・治療用剤
  2. 生理学的に許容しうるpH及び許容しうる強度のイオン強度を有する水溶液である請求項記載の慢性関節リウマチの予防・治療用剤。
  3. 生理学的に許容しうる張度を溶液に与えるのに十分な量で、炭水化物、糖、糖アルコールおよびアミノ酸よりなる群から選ばれる物質を含有する請求項記載の慢性関節リウマチの予防・治療用剤
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