JP4419419B2 - 微小液滴を利用した化学反応実施方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、微小流路を有する微小流路構造体において、微小流路内で化学反応や抽出、分離を行なうに好適な方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、数cm角のガラス基板上に長さが数cm程度で、幅と深さがサブμmから数百μmの微小流路を有する微小流路構造体を用い、流体を微小流路へ導入することにより化学反応を行う研究が注目されている。このような微小流路では、微小空間での短い分子間距離および大きな比界面積の効果による分子のすみやかな拡散により、特別な攪拌操作を行なわなくとも効率の良い化学反応を行なうことができることや、反応によって生じた目的化合物が反応相から抽出相へすばやく抽出、分離されることによって、引き続いて起こる副反応が抑えられることが示唆されている(例えば、非特許文献1参照)。
【0003】
上記の例等では、図1(a)に示すようにY字状の微小流路(16)に原材料を溶かした有機相(2)と水相(1)を導入し、Y字の合流部で形成される有機相(2)と水相(1)の流体境界(3)で反応や抽出を行なっている。一般的に、マイクロスケールの流路内ではレイノルズ数が1より小さいケースがほとんどであり、よほど流速を大きくしない限りは図1(a)に示すような層流の状態となる。また、拡散時間は微小流路の幅(9)の2乗に比例するので、微小流路の幅(9)を小さくするほど反応液を能動的に混合しなくとも分子の拡散によって混合が進み、反応や抽出が起こりやすくなる。また、一般に反応や抽出は比界面積が大きいほど効率が良い。ここで比界面積とは、相同士が接触することで界面を形成している時の、相の総体積に対する界面の面積比を意味する。反応や抽出において、物質は界面を通してのみ他の相へ移動できるので、比界面積が大きいということは、それだけ反応や抽出の効率が高いことを意味する。
【0004】
以下では、図1(b)を用いて微小流路内の比界面積の計算方法を示す。図1(b)は、図1(a)のY字流路の合一部の一部分を切り出した立体断面図である。微小流路の幅(9)をW[μm]、微小流路の単位長さ(24)をL[μm]、微小流路の深さ(25)をd[μm]とすると、有機相(1)の総体積は、(W/2)×d×L[μm3]となる。また、水相と有機相の流体境界(3)の面積は、d×L[μm2]となる。従って比界面積は、(d×L)/{(W/2)×d×L}=2×104/W[cm-1]となり、微小流路の長さや深さ(d)に関係なく微小流路の幅(W)だけで決まることが分かる。例えば、微小流路の幅(9)が1000[μm]の比界面積は、20[cm-1]であるのに対して、微小流路の幅(9)が100[μm]の比界面積は、200[cm-1]となる。従って、微小流路の幅(9)を小さくするほど比界面積が大きくなり、反応や抽出の効率が良くなる。
【0005】
しかしながら、通常図1のような場合、反応の進行は主に流体境界(3)で進行するため、前述した図1(a)に示すような層流間での反応や抽出の効率は、逆に言えば拡散時間の短縮と流体境界(3)の比界面積の大きさ、すなわち微小流路の幅(9)で制限されることを意味している(例えば、非特許文献2参照)。すなわち、反応や抽出に使用する微小流路の幅(9)によって拡散時間と流体境界(3)の比界面積が決まってしまい、反応や抽出の効率を微小流路の幅(9)で決定される効率以上に向上させることができない。また、前述したように微小流路の幅(9)を小さくすればさらに拡散時間を短くして比界面積を大きくでき、反応や抽出の効率を向上させることは可能だが、微小流路の幅(9)が小さいほど圧力損失が大きく送液自体が難しくなり現実的でないため微小流路の幅(9)を小さくすることには限界がある。
【0006】
【非特許文献1】
H.Hisamoto(H.ひさもと)ら著、「Fast and highconversion phase−transfer synthesisexploiting the liquid−liquid interface formed in a microchannel chip」, Chem.Commun., 2001年発行,2662−2663頁
【非特許文献2】
藤井著、『集積型マイクロリアクターチップ』、「ながれ」、2001年発行、20巻、99〜105頁
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、かかる従来の実状に鑑みて提案されたものであり、微小流路の幅で決定される以上の拡散時間の短縮と流体境界の比界面積の大きさを得ることによって、微小流路内における反応の効率を微小流路の幅で決定される効率以上に向上する方法を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明は上記課題を解決するものとして、化学反応のための原材料を含有する2種以上の流体を微小流路に導入し、前記導入した1つ以上の流体を微小液滴化して分散相とし、分散相とした流体以外を連続相とし、前記分散相を形成する前記微小液滴を囲む前記連続相との間で化学反応を行なうことで、上記の従来技術による課題を解決することができ、遂に本発明を完成することができた。
【0009】
すなわち本発明は、化学反応用原材料を含有する2種以上の流体を微小流路に導入し、導入された流体を微小液滴化して分散相とし、残りの流体を連続相とし、微小液滴化された分散相と分散相の残りの流体である連続相との間で化学反応を行なわせることを特徴とする化学反応実施方法である。
【0010】
さらにこのような化学反応実施方法を好適になすために、流体を導入するための2以上の導入口及びそれに連通する導入流路と、導入流路と連通しかつ導入される流体を流すための微小流路と、微小流路から流体を排出するための排出流路及びそれに連通する排出口と、を有した微小流路構造体を用い、微小流路中の導入流路が合流する合流部又はその近傍において、導入された化学反応用原材料を含有する流体の内の1以上を他の流体をせん断することにより微小液滴化し、微小液滴化された流体とそれ以外の流体との間で化学反応を行わせることを可能とする化学反応実施方法である。
【0011】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0012】
本発明の化学反応実施方法に用いられる化学反応用原材料とは、本発明の目的を達成しうるものであればいかなる原材料を用いてもよく、例えば、エチレンジアミンとヨードメタンによるN−メチルエチレンジアミン生成といった有機反応用原材料による反応系であってもよく、この化学反応用原材料には触媒も含まれる。さらに、ルシフェリンとアデノシン三りん酸(ATP)をルシフェラーゼにより発光反応させるといった生体触媒である酵素を用いた反応系であってもよい。
【0013】
このような化学反応用原材料を含有する2種以上の流体が微小流路に導入されるわけであるが、導入された流体が微小流路で合流する部分又はその近傍において、一方の流体が他方の流体によりせん断されることで微小液滴化される。これは微小流路という極めて断面積が微小な空間において連続的に送液される流体の衝突により生じる現象であり、本願発明は微小空間という特殊な環境下での特異な流体の流れを巧みに利用したものである。なお、本明細書においては、この微小液滴化された流体を「分散相」と称する。また、この分散相以外の流体にも上記の化学反応用原材料が含まれており、これらの分散相以外の流体を「連続相」と称する。
【0014】
そして本発明の方法は、分散相に含まれる化学反応用原材料と連続相に含まれる化学反応用原材料との間で化学反応させるものである。このような手法は、通常の均一触媒においては均一な流体中で反応を起こさせるためその必要性はあまり高くはないと考えられるが、例えば、反応により副反応が生じたり、反応生成物が目的の反応を抑制してしまうような反応系においては、副反応物や反応生成物を反応系外へ移動させるような手法が必要となることがある。あるいは、反応に用いられる触媒が高価あるいは不安定ゆえ、その回収を意図したり、より安定な条件で反応させる必要がある場合があり、その場合に例えば、水と非水溶媒といった親水性媒体と疎水性媒体中に化学反応用原材料を溶解し、不均一系といった均一混合系ではない手法にて反応を行わしめることがある。しかしながらこのような場合には、2相以上の相の間での物質の移動が起こりにくく、その為に相の間の界面で反応が実質的に進行することとなる。その際に、本発明の方法は一方の流体を微小液滴化しているため、単位反応液あたりの相間の界面の面積が極めて大きくなり、相間の物質移動がより容易となって、結果として反応が効率的に進行することになる。
【0015】
さらに、このような反応の効率化をより一層効果的とするため、化学反応用原材料を含有する2種以上の流体のうち、少なくとも1つの流体として反応生成物を抽出するための抽出溶媒として作用しうる媒体を用いるとよい。
【0016】
さらに本発明の化学反応実施方法をより好適になすために、流体を導入するための2以上の導入口及びそれに連通する導入流路と、導入流路と連通しかつ導入される流体を流すための微小流路と、微小流路から流体を排出するための排出流路及びそれに連通する排出口と、を有した微小流路構造体を用い、微小流路中の導入流路が合流する合流部又はその近傍において、導入された化学反応用原材料を含有する流体の内の1以上を他の流体をせん断することにより微小液滴化し、微小液滴化された流体とそれ以外の流体との間で化学反応を行わせるとよい。
【0017】
ここで、上記の本発明の化学反応実施方法に用いられる微小流路構造体に備わる導入口とは、化学反応用原材料を含有する2種以上の流体を微小流路構造体へ導入させるための開口部であり、導入される流体はこの導入口よりこれに連通する導入流路を通じて送液される。本発明においては化学反応を実施するため、反応原料を含有した流体を2種以上、さらには必要に応じて反応生成物を抽出したりするための流体を導入するために、導入口及び導入流路の数としては、2以上有することが必須となる。
【0018】
ここで、微小流路とは、一般的に幅500μm以下、深さ300μm以下のサイズの流路を示す。また、ここでいう分散相とは液滴となる液状物であり、連続相とは分散相をせん断して液滴にする液状物を意味している。また、微小液滴とは微小流路内で連続相が分散相をせん断することで生成される液滴であり、その液滴サイズは、一般的に直径が微小流路の幅あるいは深さよりも小さい。例えば、幅が100μm、深さが50μmの微小流路で生成される液滴の大きさは、液滴が完全球体であると仮定するとその直径は50μmより小さい。
【0019】
導入流路へ送液された上記の流体は、導入流路に連通する微小流路へ送液される。上記の通り、微小流路においては、導入された流体が合流する部分又はその近傍において、一方の流体が他方の流体によりせん断されることで微小液滴化できる構造となっている。この際、導入流路の各々が微小流路の合流部で任意の角度で交わる構造とすることで、生成する液滴の粒子径を制御することが可能となる。これは、従来の構造体を使った液滴生成においては、流体の導入速度を変えて生成させる場合よりもより制御しやすく、工業的な量産に適している。殊に、各々の流体の導入速度が実質的に同じであれば、導入装置をより少なくすることができると共にコスト面においても優位となる。交差角度の設定については、目的とする液滴の粒子径に応じて適宜決めればよい。尚、ここでいう導入速度とが実質的に同じとは、導入速度が多少変動があっても生成する液滴の粒子径には大きな影響を与えないことを意味している。
【0020】
さらに、微小流路の構成としても、微小流路断面の比(流路の深さ/幅の比)が0.30以上であることが好ましく、さらに0.30以上3.0未満であることがこのましい。アスペクト比がこの範囲にあれば、合流部において均一な液滴を生成させることができる。この範囲を逸脱して、アスペクト比が0.30未満となると均一な液滴を生成させることが困難となることがある。
【0021】
さらに、導入流路の幅及び深さが等しい場合には上記の効果に加え、微小流路構造体の設計が容易となり、また、送液時の制御もより容易となって、工業的量産に好適となる。
【0022】
また、導入流路の幅と微小流路の幅との関係において、導入流路の幅≧微小流路の幅であれば、導入流路の幅=微小流路の幅よりも、送液流速を増加しても合流部において均一な液滴の生成が可能となり、液滴生成速度を増加させることができるという効果を奏することができ、好ましい態様となる。
【0023】
微小流路の幅としては、上記合流部より排出口に至る微小流路中の一部の部位において、微小流路の幅が狭くなっていることが好ましい。すなわち、液滴排出口に至るまでの間の内、導入流路と微小流路の合流部において部分的に狭くするあるいは流路に沿った流路構成壁を凸上に形成することで送液流速を増加しても合流部において均一な液滴生成が可能でありかつ、送液圧力の上昇を緩和することが可能とすることができ、好ましい態様となる。
【0024】
さらに、この微小流路の幅が狭くなっている部位が、微小流路中の交差部又はその近傍にあることが好ましく、特に、微小流路の幅が狭くなっている部位が、微小流路の交差部の分散相とした流体の導入流路側にあることが好ましい。
【0025】
また、微小流路において、微小液滴化された分散相とそれ以外の流体からなる連続相との間で化学反応させるわけであるが、化学反応生成物に対して、必要に応じて、光照射装置により光を照射したり、加熱装置により加熱したりして、微小流路部分へエネルギーを供給し化学反応を効率的に行わせることもできる。さらに、微小流路内で化学反応を行なった後、このようなエネルギー供給装置等を用いて、反応生成物を含有する微小液滴の、少なくとも表面を固化し連続相と分散相とを分離することもできる。このように固化することにより連続相と分散相との分離が容易となり、また、ゲルやマイクロカプセルを直接製造することが可能となる。
【0026】
以下、本発明を図面を参照しながらさらに詳しく説明する。
【0027】
本発明の化学反応実施方法が、微小流路の幅で決定される以上の拡散時間の短縮と流体境界の比界面積の大きさを得ることで微小流路内における反応効率を微小流路の幅で決定される効率以上に向上させることを図2により説明する。
【0028】
図2に示すように球状の微小液滴の直径(5)をD[μm]とすると、微小液滴(4)の総体積は(4π/3)×(D/2)3[μm3]となる。また、微小液滴(4)の表面積は、4π×(D/2)2[μm2]となる。従って、微小液滴(4)とその周囲の媒体との比界面積は、{4π×(D/2)2}/{(4π/3)×(D/2)3}=6×104/D[cm-1]となる。一方、図1に示したように微小流路(16)に形成された流体境界(3)の比界面積は、2×104/W[cm-1]である。一般に、微小流路(16)により形成される微小液滴の直径(5)Dは、微小流路の幅(9)Wよりも小さいので、D<Wであることから、微小流路(16)で微小液滴(4)を生成すればその比界面積は、単に微小流路(16)で形成される流体境界(3)の比界面積よりも大きくなり、かつ微小液滴(4)と周囲の溶媒との拡散時間も、微小流路(16)で単に層流を形成させたときの拡散時間よりも短くなる。従って、微小流路(16)で化学反応のための原材料を含有する2種以上の流体のうち、少なくとも1つの流体の微小液滴(4)を形成すれば、微小流路の幅(9)で決定される以上の拡散時間の短縮と流体境界の比界面積の大きさを得ることができ、微小流路(16)における反応効率を微小流路の幅(9)で決定される効率以上に向上することができる。
【0029】
また本発明の化学反応実施方法は、化学反応のための原材料を含有する2種以上の流体を別々に微小流路に導入し、微小流路の合流部において、1つ以上の流体を連続相とし、前記連続相により前記連続相以外の流体をせん断することにより微小液滴化して分散相を形成させることを特徴とする請求項1記載の化学反応実施方法である。
【0030】
一般に微小液滴を形成する方法は、攪拌翼やローターを高速回転させたり、超音波を利用する機械的方法などがあるが、幅と深さがサブμmから数百μmの微小流路内で微小液滴を形成する必要があること、微小液滴化する流体を選択できること、比界面積を正確に制御するため微小液滴の粒径制御が容易にできることなどがより好ましい要件であることを考慮すると、図3に示すように、化学反応のための原材料を含有する2種以上の流体を別々に微小流路(16)に導入し、微小流路(16)の合流部分近傍において、1つ以上の流体を連続相とし、前記連続相により前記連続相以外の流体をせん断することにより微小液滴化して分散相を形成する方法(以下「微小流路合流せん断法」と称する)がより好ましい。図3(a)は、2種類の流体A(13)と流体B(14)を別々に微小流路(16)に導入し、微小流路(16)の合流部分近傍において、1つの流体を連続相(7)とし、この連続相(7)によりもう一方の流体をせん断することにより微小液滴化して分散相(6)を形成した例である。また図3(b)は、3種類の流体A(13)、流体B(14)、流体C(15)を別々に微小流路(16)に導入し、微小流路(16)の合流部分近傍において、両側2つの流体A(13)と流体B(14)を連続相(7)とし、この2つ連続相(7)により中央に導入した流体C(15)をせん断することにより微小液滴化して分散相(6)を形成した例である。微小流路合流せん断法は、合一するそれぞれの流体の流速を適切に制御するか、微小流路内壁の親水性、疎水性をそれ自体は公知の方法により変えることで微小液滴化する流体を選択することができ、化学反応実施後に連続相(7)と分散相(6)を分離しやすい様態に合わせて微小液滴化する対象を選択することができる。また微小液滴の直径(5)は、流速や微小流路の合一する角度(8)や、微小流路の幅(9)と深さ、あるいはこれらを組合わせることで制御することができ、比界面積をより正確に制御できる。
【0031】
本発明の化学反応実施方法は、前記微小流路に導入する化学反応のための原材料を含有する2種以上の流体のうち、少なくとも1つの流体が、均一系触媒を含む流体であっても良く、前記均一系触媒が酵素であっても良い。また、前記均一系触媒が相間移動触媒であっても良く、前記相間移動触媒が温度依存性相間移動触媒であっても良い。
【0032】
ここで一般的な均一系触媒としては、オキソニウムイオンや水酸化物イオンなどの酸・塩基触媒や、ニッケルやパラジウム、銅、チタンなどを中心金属とした遷移金属錯体などがある。
また、均一系触媒反応の一つに生体内で合成されるタンパク質である酵素を用いた酵素反応があり、酵素は別名、生体触媒と呼ばれている。代表的な酵素としては、トリプシン、キモトリプシン、カテプシン、フマレートヒドラターゼなどがある。
【0033】
また、均一系触媒の一つに相間移動触媒がある。相間移動触媒の具体的な例の一つとして、図4に四級アンモニウム塩を用いた反応系を例に説明する。図4では、求核アニオン(26)としてCN-を用い、アルキルハライド(27)である(R−X)をニトリル(28)である(R−CN)に交換する反応において、四級アンモニウム塩(29)である(Q+X-)を相間移動触媒として用いたときの反応メカニズムの概念を示している。求核アニオン(26)からなるNa+CN-を含む水相と、これと反応する有機基質であるアルキルハライド(27)である(R−X)を含む非極性の有機相の反応系で、相間移動触媒の四級アンモニウム塩(29)である(Q+X-)は、水相の求核アニオン(26)である(CN-)と自分とイオン対になっているハロゲンアニオン(30)である(X-)を交換することにより、反応の起こる有機相に求核アニオン(26)である(CN-)を移行させて反応を促進する。反応後は、脱離したハロゲンアニオン(30)である(X-)とイオン対をつくり、再び四級アンモニウム塩(29)である(Q+X-)となって水相に戻りこのサイクルを繰り返す。相間移動触媒としては、四級アンモニウム塩の他にホスホニウム塩、クラウンエーテル、クリプタンド、ジアルキルポリオキシエチレンオキサイド等が一般的に知られている。相間移動触媒を用いた反応系の反応の効率は、相間移動触媒がいかに効率よく相間を移動できるかに依存しており、相間移動触の相間移動の効率は、触媒相と反応相の比界面積が大きいほど、さらに相間移動触の拡散距離が短いほど良くなる。
【0034】
また、均一系触媒である相間移動触媒の一つとして温度依存性相間移動触媒がある。ここで、図5を用いて温度依存性相間移動触媒を用いた反応系の概念を説明する。図5に示すように触媒D(34)が温度を上げることで触媒相(35)から反応相(36)に溶解し、反応物質A(31)と反応物質B(32)の反応を促進し、生成物C(33)を生成する。温度が下がると触媒D(34)の反応相への溶解度が低減し触媒相(35)にへ戻り本合成反応への寄与がなくなる。一般に、このような触媒D(34)を温度依存性相間移動触媒と呼ぶ。このような温度依存性相間移動触媒を用いた反応の例として、図12に示したGladysz reactionやYamamoto reactionが一般に良く知られている。
【0035】
このような温度依存性相間移動触媒を用いた反応系の反応効率は、温度依存性相間移動触媒がいかに効率よく相間を移動できるかに依存しており、温度依存性相間移動触の相間移動の効率は、加熱・冷却の効率が良いほど、また触媒相と反応相の比界面積が大きいほど、さらに温度依存性相間移動触の拡散距離が短いほど良くなる。ここで微小空間においては、熱容量が小さく急速な加熱や冷却が可能であるため、温度依存性相間移動触媒の触媒相から反応相への相間移動および反応相から触媒相への相間移動が効率よく行なわれる。また前述したように微小空間において分散相と連続相で反応を行なわせる事により、微小流路の幅で決定される以上の大きい比界面積が得られ、分子間距離が短いため、温度依存性相間移動触媒の触媒相から反応相への相間移動および反応相から触媒相への相間移動はさらに効率よく行なわれる。
【0036】
以上の例からわかるように、本発明の化学反応実施方法では、微小流路の幅で決定される以上の拡散時間の短縮と流体境界の比界面積の大きさを得ることによって、微小流路内における反応の効率を微小流路の幅で決定される効率以上に向上することができるため、比界面積が大きく拡散時間が短いほど反応効率が高くなる均一系触媒を用いた反応に特に有効である。また、均一系触媒である相間移動触媒の一つとして温度依存性相間移動触媒を用いた反応に関しては、比界面積増大の効果と拡散時間短縮の効果に加えて、微小空間においては、熱容量が小さく急速な加熱や冷却が可能であるため、温度依存性相間移動触媒の触媒相から反応相への相間移動および反応相から触媒相への相間移動がより効率よく行なわれる。
【0037】
図6は、微小流路に導入する化学反応のための原材料を含有する2種以上の流体のうち、少なくとも1つの流体が、温度依存性相間移動触媒である場合の化学反応を実施する一例を示す概念図である。図6の例では、流体導入口A(10)から反応物質を含有した流体(37)をキャピラリーチューブ(40)を介して送液ポンプ(41)を用いて導入し、流体導入口B(11)から温度依存性相間移動触媒(38)をキャピラリーチューブ(40)を介して送液ポンプ(41)を用いて導入している。微小液滴化する対象は、反応物質を含有した流体(37)を連続相とし、温度依存性相間移動触媒(38)を微小液滴化して分散相としても良いし、温度依存性相間移動触媒(38)を連続相とし、反応物質を含有した流体(37)を微小液滴化して分散相としても良い。また、図6に示すように微小流路基板(22)にヒーター(39)を設置し加熱することで、温度依存性相間移動触媒(38)を触媒相から反応相へ効率よく相間移動させた後化学反応を実施し、流体排出口(12)から流体が排出された後、キャピラリーチューブ(40)を通って回収容器(21)に回収され、流体を常温に戻すことで温度依存性相間移動触媒(38)が反応相から触媒相に戻り、化学反応を実施することができる。
【0038】
また、本発明の化学反応実施方法は、前記微小流路に導入する化学反応のための原材料を含有する2種以上の流体のうち、少なくとも1つの流体が、反応生成物を抽出する抽出溶媒であっても良い。このようにすることで、微小流路に導入された少なくとも1つの流体を微小液滴化することにより、前述したように比界面積は、単に微小流路で形成される流体境界の比界面積よりも大きくなり、かつ微小液滴と周囲の溶媒との拡散時間も、微小流路で単に層流を形成させたときの拡散時間よりも短くなるため、微小流路の幅で決定される効率以上に効率よく化学反応を実施し、その結果得られた生成物を微小流路の幅で決定される効率以上に効率よく抽出溶媒に抽出することができる。
【0039】
また、本発明の化学反応実施方法は、微小流路内で化学反応を行なったあと、前記微小液滴の少なくとも表面を硬化することにより、連続相と分散相を分離しても良い。このようにすることで、微小液滴の分散相と微小液滴を取り囲む連続相をより容易に分離することができ、特に微小流路に導入する化学反応のための原材料を含有する2種以上の流体のうち、少なくとも1つの流体が、反応生成物を抽出する抽出溶媒であった場合、化学反応により得られた生成物が抽出された相とそれ以外の相を容易に分離することができる。例えば、図7に示すように微小液滴化された分散相(6)に化学反応により得られた生成物が含有されており、連続相(7)に生成物を相間移動により溶媒抽出(18)を行なったあと、紫外線照射(17)より微小液滴(4)の少なくとも表面を硬化することで微粒子(19)を形成すれば、連続相(7)の液相と微粒子(19)の固相をろ過等の手法を用いて容易に分離することができ、液相に抽出された生成物を容易に回収できる。なお図7の例では、分散相(6)は紫外線照射により硬化する液体を選択しているが、紫外線照射の他にも加熱や化学反応により架橋や重合など、硬化させる分散相(6)の材質にあわせて選択すれば良い。
また逆に、図8に示すように連続相(7)に生成物が含有されており、連続相(7)のせん断により微小液滴化された分散相(6)に生成物を相間移動により溶媒抽出(18)を行なったあと、紫外線照射(17)により微小液滴(4)の少なくとも表面を硬化することで微粒子(19)を形成すれば、同様に連続相(7)の液相と微粒子(19)の固相をろ過等の手法を用いて容易に分離することができる。この場合は、生成物を内部に有する表面が硬化された微粒子(19)との表面を、化学的あるいは機械的などの手法により引き割り、微粒子(19)の内部に存在する生成物を取出せば良い。なお図8の例では、分散相(6)は、紫外線照射により硬化する液体を選択しているが、紫外線照射の他にも加熱や化学反応により架橋や重合など、硬化させる分散相(6)の材質にあわせて選択すれば良い。
【0040】
図10に紫外線照射などの光照射により液滴を硬化させる場合の一例を 示す。光照射45は、図10(a)に示すように微小流路構造体の排出口12から液滴が微小流路構造体の外部に出た後に行なっても良いし、図10(b)に示すように、微小流路の合流部44で前記液滴が生成し反応が十分進行した後に光照射45を行ない微小流路構造体中の微小流路16で硬化しても良い。しかしながら、流路構造体中の微小流路16において光照射45微小流路の部分は、図10(b)に示すように、微小流路構造体の必要なところだけに光照射スポット46があたるようにマスク48を設置しておく必要がある。
【0041】
図11には、加熱による化学反応により架橋や重合などにより液滴を硬化させる場合の一例を示す。図11(a)に示すように微小流路構造体の排出口12から液滴が微小流路構造体の外部に出た後にヒーター39などにより加熱を行なっても良いし、図11(b)に示すように、微小流路の合流部44で前記液滴が生成し反応が十分進行した後にヒーター39などにより加熱を行ない微小流路構造体中の微小流路16で硬化しても良い。しかしながら、流路構造体中の微小流路16において加熱を行なう場合は、液滴が生成され反応が十分進行する前に硬化しないように、加熱して液滴を硬化させる微小流路の部分は、図11(b)に示すように、断熱材49などを微小流路構造体の中に埋め込むなどの既知の断熱手法により熱的に絶縁しておく必要がある。
【0042】
本発明の化学反応実施方法に使用する微小流路を有する微小流路基板は、例えばガラスや石英、セラミック、シリコン、あるいは金属や樹脂等の基板材料を、機械加工やレーザー加工、エッチングなどにより直接加工することによって製作できる。また、基板材料がセラミックや樹脂の場合は、流路形状を有する金属等の鋳型を用いて成形することで製作することもできる。なお一般的に、前記微小流路基板は、流体導入口、流体排出口、および各微小流路の排出口に対応する位置に直径数mm程度の小穴を設けたカバー体と積層一体化させた微小流路構造体として使用する。カバー体と微小流路基板をの接合方法としては、基板材料がセラミックスや金属の場合は、ハンダ付けや接着剤を用いたり、基板材料がガラスや石英、樹脂の場合は、百度〜千数百度の高温下で荷重をかけて熱接合させたり、基板材料がシリコンの場合は洗浄により表面を活性化させて常温で接合させるなどそれぞれの基板材料に適した接合方法が用いられる。
【0043】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。なお本発明は、これらの実施例のみに限定されるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲で、任意に変更が可能であることは言うまでもない。
【0044】
(実施例)
第1の実施例として、図9に示すようなY字状の微小流路構造体を製作した。形成した微小流路の幅(9)はW=220[μm]、微小流路の深さ(25)はd=80[μm]、微小流路の長さ40[mm]であり、流体導入口A(10)と流体導入口B(11)とつながる2本の微小流路(16)は、44°の角度で合流させた。微小流路(16)は、70mm×38mm×1mm(厚さ)のパイレックス(登録商標)基板に一般的なフォトリソグラフィーとウエットエッチングにより形成して微小流路基板(22)とし、流体導入口A(10)と流体導入口B(11)及び、流体排出口(12)の位置に直径0.6mmの貫通した小穴(23)を機械的加工手段により設けた同サイズのパイレックス(登録商標)基板をカバー体(20)として熱融着により接合することで微小流路(16)を密閉した。
【0045】
この微小流路構造体を用いて、エチレンジアミンのヨードメタンによるメチル化反応を行なった。微小流路の流体導入口の一方からエチレンジアミンの水溶液の水相を送液し、もう一方の流体導入口からは、ヨードメタンのブタノール溶液の有機相を送液した。この反応系は、エチレンジアミンがヨードメタンと反応し、N−メチルエチレンジアミンが合成され水相に抽出される反応系である。
【0046】
送液速度を調整することで、水相と有機相の層流を形成して反応を行なった場合と、水相により有機相をせん断し有機相を微小液滴化して反応を行なった場合で実験を行なった。層流を形成したときの送液速度は、水相および有機相とも20μl/minであった。また水相により有機相をせん断し有機相を微小液滴化した場合の送液速度は、水相および有機相とも2μl/minであった。
【0047】
この微小流路では、層流を形成した場合に得られる比界面積は、微小流路の幅(9)がW=約220[μm]であることから、2×104/W[cm-1]=約2×104/220[cm-1]=約90[cm-1]となった。また、水相により有機相をせん断し有機相を微小液滴化した場合の微小液滴の平均粒系を高速カメラを用いて測定し、微小液滴の直径(5)を求めたところD=約200[μm]であった。この場合の比界面積は、6×104/D[cm-1]=約6×104/200[cm-1]=約300[cm-1]となった。このことから水相により有機相をせん断し有機相を微小液滴化した場合の方が、水相と有機相で層流を形成した場合よりも非界面積が大きくなり、反応効率が上がるものと推定される。
【0048】
実際に、流体排出口から排出された流体を試験管で回収し、水相のみを取出して高速液体クロマトグラフィーを用いて生成物であるN−メチルエチレンジアミンの量を分析した。なお、有機相と水相が接している時間が長いほど化学反応の進行が進むことから、分析して得られたN−メチルエチレンジアミンの生成量を送液速度から計算される微小流路内滞在時間で割り算して補正した。その結果、水相と有機相の層流を形成して反応を行なった場合は、エチレンジアミンとN−メチルエチレンジアミンの量比が約95:7で確認され、この反応におけるN−メチルエチレンジアミンの転換率は約7%程度であった。これに対し水相により有機相をせん断し有機相を微小液滴化して反応を行なった場合は、エチレンジアミンとN−メチルエチレンジアミンの量比が約88:12であり、この反応におけるN−メチルエチレンジアミンの転換率は約12%程度であった。
【0049】
以上のことから、化学反応のための原材料を含有する流体を微小流路に導入し、導入した一方の流体を微小液滴化して分散相とし、分散相とした流体以外を連続相とし、分散相を形成する微小液滴を囲む連続相との間で化学反応を行なうことで、化学反応の効率が微小流路の幅で決まる効率以上に向上したことを確認した。
【0050】
【発明の効果】
本発明によれば以下の効果を奏することができる。
【0051】
本発明の化学反応実施方法は、化学反応のための原材料を含有する2種以上の流体を微小流路に導入し、前記導入した1つ以上の流体を微小液滴化して分散相とし、分散相とした流体以外を連続相とし、前記分散相を形成する前記微小液滴を囲む前記連続相との間で化学反応を行なうことで、微小流路内で液滴を生成することにより得られる比界面積が、単に微小流路内で形成される層流の比界面積よりも大きくなり、かつ微小液滴と周囲の連続相との拡散時間も、微小流路内で単に層流を形成させたときの拡散時間よりも短くなるため、微小流路の幅で決定される以上の拡散時間の短縮と流体境界の比界面積の大きさを得ることができ、微小流路内における化学反応の効率を微小流路の幅で決定される効率以上に向上することができる。すなわち、本発明の方法は一方の流体を微小液滴化しているため、単位反応液あたりの相間の界面の面積が極めて大きくなり、相間の物質移動がより容易となって、結果として反応が効率的に進行することになる。このため、酵素反応や均一系触媒反応などの拡散律速の反応に特に適しており、後者の均一系触媒のうち相間移動のし易さが反応の効率に顕著に表れる相間移動触媒や温度依存性相間移動触媒を用いたい均一系触媒反応により適する。
【0052】
さらに、化学反応用原材料を含有する2種以上の流体のうち、少なくとも1つの流体として反応生成物を抽出するための抽出溶媒として作用しうる媒体を用いることにより、反応の効率化をより一層効果的とする事ができる。
【0053】
本発明の化学反応実施方法は、化学反応のための原材料を含有する2種以上の流体を別々に微小流路に導入し、微小流路の合流部において、1つ以上の流体を連続相とし、前記連続相により前記連続相以外の流体をせん断することにより微小液滴化して分散相を形成させることにより、合一するそれぞれの流体の流速を適切に制御するか、微小流路内壁の親水性、疎水性を変えることで微小液滴化する対象を選択することができ、化学反応実施後に連続相と分散相を分離しやすい様態に合わせて微小液滴化する対象を選択することができる。この際、導入流路の各々が微小流路の合流部で任意の角度で交わる構造とすることで、生成する液滴の粒子径を制御することが可能となる。これは、従来の構造体を使った液滴生成においては、流体の導入速度を変えて生成させる場合よりもより制御しやすく、工業的な量産に適している。殊に、各々の流体の導入速度が実質的に同じであれば、導入装置をより少なくすることができると共にコスト面においても優位となる。また、微小流路断面のアスペクト比(流路の深さ/幅の比)が0.30以上、さらに好ましくは0.30以上3.0未満とする事により、合流部において均一な液滴をより容易に生成させることができる。
【0054】
さらに、導入流路の幅及び深さが等しい場合には上記の効果に加え、微小流路構造体の設計が容易となり、また、送液時の制御もより容易となって、工業的量産に好適となる。
【0055】
また、導入流路の幅と微小流路の幅との関係において、導入流路の幅≧微小流路の幅であれば、導入流路の幅=微小流路の幅よりも、送液流速を増加しても合流部において均一な液滴の生成が可能となり、液滴生成速度を増加させることができるという効果を奏することができる。
また、微小流路の幅としては、上記合流部より排出口に至る微小流路中の一部の部位において、微小流路の幅が狭くなっていること、すなわち、液滴排出口に至るまでの間の内、導入流路と微小流路の合流部において部分的に狭くするあるいは流路に沿った流路構成壁を凸上に形成し、さらに、この微小流路の幅が狭くなっている部位が、微小流路中の交差部又はその近傍にあり、特に、微小流路の幅が狭くなっている部位が、微小流路の交差部の分散相とした流体の導入流路側にあることで、送液流速を増加しても合流部において均一な液滴生成が可能でありかつ、送液圧力の上昇を緩和することが可能とすることができる。
【0056】
本発明の化学反応実施方法は、微小流路内で化学反応を行なったあと、前記微小液滴の少なくとも表面を硬化することにより、連続相と分散相を分離しても良く、このようにすることで、微小液滴の分散相と微小液滴を取り囲む連続相をより容易に分離することができ、特に微小流路に導入する化学反応のための原材料を含有する2種以上の流体のうち、少なくとも1つの流体が、反応生成物を抽出する抽出溶媒であった場合、化学反応により得られた生成物が抽出された相とそれ以外の相を容易に分離することができる。
【0057】
【図面の簡単な説明】
【図1】図1(a)はY字状微小流路内における層流を示す概念図であり、図1(b)は図1(a)の一部である円内を拡大した立体断面図である。
【図2】微小流路内での微小液滴を示す概念図である。
【図3】微小流路の合流部近傍において流体がせん断して微小液滴を形成する方法を示す概念図である。
【図4】相間移動触媒を用いた反応系の一例を示す図である。
【図5】温度依存性相間移動触媒を用いた反応系の一例を示す図である。
【図6】温度依存性相間移動触媒を用いた反応系を本発明による化学反応実施方法を用いて実施する場合の一例を示す概念図である。
【図7】生成物含有の流体を微小液滴化して分散相とし、連続相に相間移動を行なって生成物を溶媒抽出を行なったあと、微小液滴の少なくとも表面を硬化することで連続相と分散相を分離することを示す概念図である。
【図8】生成物含有の流体を連続相とし、微小液滴化して分散相に相間移動を行なって生成物を溶媒抽出を行なったあと、微小液滴の少なくとも表面を硬化することで連続相と分散相を分離することを示す概念図である。
【図9】実施例に用いた微小流路構造体の概略図である。
【図10】光照射により液滴を硬化させる方法の一例を示した概略図である。
【図11】加熱により液滴を硬化させる方法の一例を示した概略図である。
【図12】温度依存性相間移動触媒を用いた反応の例である。
【符号の説明】
1:水相
2:有機相
3:流体境界
4:微小液滴
5:微小液滴の直径
6:分散相
7:連続相
8:微小流路の合一する角度
9:微小流路の幅
10:流体導入口A
11:流体導入口B
12:流体排出口
13:流体A
14:流体B
15:流体C
16:微小流路
17:紫外線照射
18:溶媒抽出
19:微粒子
20:カバー体
21:回収容器
22:微小流路基板
23:小穴
24:微小流路の単位長さ
25:微小流路の深さ
26:求核アニオン
27:アルキルハライド
28:ニトリル
29:四級アンモニウム塩
30:ハロゲンアニオン
31:反応物質A
32:反応物質B
33:生成物C
34:触媒D
35:触媒相
36:反応相
37:反応物質を含有した流体
38:温度依存性相間移動触媒
39:ヒーター
40:キャピラリーチューブ
41:送液ポンプ
42:テフロン(登録商標)チューブ
43:導入流路
44:合流部
45:光照射
46:光照射スポット
47:ビーカー
48:マスク
49:断熱材
Claims (3)
- 化学反応用原材料を含有する2種以上の流体を微小流路に導入し、導入された流体を微小液滴化して分散相とし、残りの流体を連続相とし、前記分散相と前記連続相との間で化学反応を行なわせる化学反応実施方法であって、前記化学反応用原材料を含有する2種以上の流体のうち、少なくとも1つの流体が反応生成物を抽出する抽出溶媒であり、微小流路内で化学反応を行なったあと、前記微小液滴の少なくとも表面を固化することにより連続相と分散相を分離し、連続相側又は分散相側の生成物を回収することを特徴とする化学反応実施方法。
- 流体を導入するための2以上の導入口及びそれに連通する導入流路と、前記導入流路と連通しかつ導入される流体を流すための微小流路と、前記微小流路から流体を排出するための排出流路及びそれに連通する排出口と、を有した微小流路構造体を用いて化学反応を実施する方法であって、前記微小流路中の導入流路が合流する合流部又はその近傍において、導入された化学反応用原材料を含有する流体の内の1以上を他の流体をせん断することにより微小液滴化し、微小液滴化された流体とそれ以外の流体との間で化学反応を行わせることを特徴とする請求項1記載の化学反応実施方法。
- 2以上の導入流路の各々が微小流路の合流部で任意の角度で交わる構造であることを特徴とする請求項2記載の化学反応実施方法。
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