JP4418781B2 - プロポリス粉末の製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、プロポリス粉末の製造方法に関する。より詳しくは、流動性の高いサラサラの粉末を製造可能なプロポリス粉末の製造方法に関する。
プロポリスは、種々の植物の新芽や樹脂状物質を原料として蜜蜂により生産される膠状の物質である。プロポリスは、多様な生理活性を有することから健康維持や健康増進を始めとして、疾病の予防や治療等に利用されている。プロポリスを利用した製品としては、エタノール抽出液や含水エタノール抽出液のようなプロポリス抽出液をチンキ、ドリンク、ソフトカプセル等の剤形に加工した健康食品や医薬品等が広く利用されている。また、粉剤や顆粒剤のような剤形のプロポリス製品も利用されている。粉剤や顆粒剤の剤形を有するプロポリス製品は、通常、プロポリス抽出液に乳糖やデキストリン等の賦形剤を添加して粉末化した後、錠剤、ハードカプセル、顆粒等に加工することにより製造される。
しかしながら、プロポリスのエタノール抽出液を濃縮する場合、樹脂状物質の影響により、該抽出液が粘稠な液体に変化してしまう。前記エタノール抽出液をさらに濃縮して乾燥させると、樹脂状物質が粉末を巻き込みながら固化するとともに、流動性が極端に低下してしまう。その結果、ドロドロのペースト状又は固形状となり、器具や容器から回収する作業に著しく支障を来してしまう。
従って、このようにして得られたプロポリス粉末は、高い粘着性及び固化性を有するものとなるため、健康食品や医薬品等の原料として打錠したりカプセル内に充填したりする際に、極めて取り扱いにくいものとなってしまっていた。このような粉末化に際して発生する問題は、特に、プロポリス抽出液を抽出する際の抽出溶媒中のエタノール濃度が高い程、樹脂状物質の抽出率が高まることから起こりやすくなる。
そこで、このような問題を解決するために、特許文献1には、プロポリス抽出液にサポニンを添加して溶解させ、これを乾燥して粉末化するプロポリス粉末組成物の製造方法が開示されている。また、特許文献2には、プロポリスのエタノール抽出液を賦形剤に含浸させた後に乾燥して得られるプロポリスのエタノール抽出物含有粉末と、プロポリスの水抽出物粉末とを混合し、この混合粉末を混捏するプロポリス粉末の製造方法が開示されている。さらに、特許文献3には、ドラム乾燥法により製造された薄片状の澱粉加水分解物を攪拌しながら、これにプロポリス抽出物の含水エタノール溶液を添加し、得られた混合物を乾燥した後に粉砕するプロポリス抽出物の製造方法が開示されている。
特開2001−10963号公報 特開平11−9201号公報 特開平8−70797号公報
本発明者らは、プロポリス抽出液を濃縮及び乾燥させてプロポリス粉末を製造する際の様々な条件について鋭意研究を行った結果、高い流動性を有し、取り扱い性のよいプロポリス粉末を製造することに成功した。そして、これらの知見に基づいて本発明を完成するに至った。本発明の目的とするところは、流動性の高いプロポリス粉末を容易に製造することができるプロポリス粉末の製造方法を提供することにある。
上記の目的を達成するために、請求項1に記載のプロポリス粉末の製造方法は、プロポリス粉末の製造方法であって、該方法は、プロポリス抽出液を水希釈して希釈液を調製する希釈工程と、前記希釈液を粉末化する粉末化工程とを備え、前記プロポリス抽出液は、プロポリス原料をアルコール又は60容量%以上のアルコール濃度の含水アルコールで抽出したものであり、かつプロポリス由来の固形分を25重量%以下含有し、前記希釈工程は、前記希釈液中のアルコール濃度が50容量%以下であると共に、前記希釈液中のプロポリス由来の固形分が2重量%以下となるように前記希釈液を調整する工程であり、前記希釈工程では、粉末化を促進させるためのバインダーを前記希釈液中に形成させるバインダー形成処理が施され、前記バインダー形成処理は、前記希釈液に対してカルシウムを含有するアルカリ剤を添加して、該希釈液のpHを6.5以上に調整する処理であることを要旨とする。
請求項に記載のプロポリス粉末の製造方法は、プロポリス粉末の製造方法であって、該方法は、プロポリス抽出液を水希釈して希釈液を調製する希釈工程と、前記希釈液を粉末化する粉末化工程とを備え、前記プロポリス抽出液は、プロポリス原料をアルコール又は60容量%以上のアルコール濃度の含水アルコールで抽出したものであり、前記希釈工程は、前記希釈液中のアルコール濃度が50容量%以下であると共に、前記希釈液中のプロポリス由来の固形分が2重量%以下となるように前記希釈液を調整する工程であり、前記希釈工程では、粉末化を促進させるためのバインダーを前記希釈液中に形成させるバインダー形成処理が施され、前記バインダー形成処理は、前記希釈液に対して有機物を添加する処理であることを要旨とする。
請求項に記載のプロポリス粉末の製造方法は、請求項に記載の発明において、前記有機物は、異性化糖、オリゴ糖、デンプン、セルロース、多糖、食物繊維、キノコ粉砕物、キノコ抽出物、ローヤルゼリー、茶葉抽出物、花粉、ブドウ抽出物、シソ抽出物、ブルーベリー抽出物、タマネギ抽出物、ビタミンC、藻類抽出物、海藻抽出物、大豆抽出物、ケール粉砕物、大麦若葉粉砕物、桑葉抽出物、クマザサ抽出物、エキナセア抽出物、シリマリン抽出物、エゾウコギ抽出物、ウコン抽出物、ビール酵母、プロテイン、コラーゲン、キトサン及びグルコサミンから選ばれる少なくとも一種であることを要旨とする。
請求項に記載のプロポリス粉末の製造方法は、請求項1から請求項のいずれか一項に記載の発明において、前記希釈工程では、前記希釈液にカルシウムが添加されることを要旨とする。
(作用)
本発明の方法において、プロポリス抽出液には、アルコール又はアルコール濃度の高い含水アルコールによって抽出されたプロポリス由来の樹脂状物質が高含有されている。このような樹脂状物質は、プロポリス抽出液を濃縮する時に該抽出液を粘稠な液体にしてしまうとともに、乾燥後の粉末に対して粘着性及び固化性を付与してしまう。
このような樹脂状物質の影響を抑えて流動性の高いプロポリス粉末を製造するために、本発明の方法では、プロポリス由来の固形分が含水アルコール中に溶解された状態のままで濃縮及び乾燥が行われる。この方法における粉末化工程では、水とアルコールとの揮発性の差に起因して、含水アルコールに含まれるアルコール分がまずは優先的に揮発する。その後、水分が蒸発して乾燥されるが、プロポリス由来の固形分濃度が高い状態にまで濃縮された段階では、アルコール分はほとんど存在していないことになる。従って、プロポリス由来の固形分は、乾燥直前には水に対して高濃度に濃縮された状態にあり、その状態から水分を失って乾燥するため、高濃度のアルコールに対して高濃度に濃縮された状態から直接的に乾燥する場合よりも、樹脂状物質の影響を受けにくく、粘着性及び固化性の低いプロポリス粉末が得られる。
さらに、本発明の方法では、粉末化を促進させるためのバインダーを希釈液中に人為的に形成させるための処理が施される。前記バインダーは、濃縮によって水分を減少させたとき、水に対して溶解された状態のプロポリス由来の固形分を積極的に吸着させて所定サイズの塊(核)を形成すると考えられる。このとき、樹脂状物質も前記核に吸着されて他の核に対する影響を失うものと見られる。従って、前記核は、樹脂状物質を含むプロポリス由来の固形分を結合させて粉末化を促進させるためのバインダーとして機能する。そして、このような核を中心にして迅速かつ個別に粉末化が進行するとともに、樹脂状物質による影響を極力排除することが極めて容易になるため、粘着性及び固化性の低いプロポリス粉末が製造される。
なお、請求項の方法において、前記バインダーは、プロポリス由来の固形分に存在するフェノール基やカルボキシル基等の有機系官能基と、アルカリ剤との間で形成されるエステル化物やキレート錯体等によって構成される。請求項の方法において、前記バインダーは、外部から添加される有機物によって構成される。請求項の方法において、前記バインダーは、外部から添加されるカルシウム(液体中であるため、カルシウムイオン)によって構成される。
本発明によれば、流動性の高いプロポリス粉末を容易に製造することができるプロポリス粉末の製造方法を提供することができる。
以下、本発明のプロポリス粉末の製造方法を具体化した一実施形態について説明する。
本実施形態のプロポリス粉末の製造方法は、プロポリス抽出液を水希釈して希釈液を調製する希釈工程と、前記希釈液を粉末化する粉末化工程とを備える。本実施形態の製造方法は、異なる希釈工程を有する第1から第3の製造方法に大きく分けられる。
いずれの製造方法によって製造された場合でも、プロポリス由来の樹脂状物質の影響による粘着性及び固化性をほとんど有することなく、流動性の高いサラサラの粉末性状となるため、健康食品や医薬品等に加工する際の加工性及び取り扱い性(例えば打錠性やカプセル内への充填性)が極めて良好になる。また、製造時にプロポリス由来の水不溶性成分及び水難溶性成分の損失がほとんど起こらないため、健康維持や健康増進を始めとして、疾病の予防や治療等に高い効果を発揮することができる。また、粉末化工程で用いられる賦形剤等の添加物の含有量を低減させることが容易であるため、プロポリス粉末に含まれるプロポリス由来の固形分濃度を容易に高めることができる。
第1から第3の製造方法において、前記プロポリス抽出液としては、プロポリス原料をアルコール又は60容量%以上のアルコール濃度の含水アルコールで抽出したものが用いられる。なお、プロポリス原料を含水アルコールで抽出する際のアルコール濃度は、60容量%を超えることが好ましく、80容量%以上であることがより好ましい。アルコールとしては、メタノール、エタノール、ブタノール、プロパノール等の低級アルコールが使用可能であり、メタノール又はエタノールが好適に使用される。但し、プロポリス粉末を健康食品の素材に使用する場合にはエタノールが使用される。なお、本実施形態において、含水アルコールとはアルコール濃度が95容量%未満のものを指し、アルコールとはアルコール濃度が95〜100容量%のものを指すこととする。
前記プロポリス原料としては、プロポリス原塊が好適に使用され、さらには該プロポリス原塊を水抽出、超臨界抽出又はミセル化抽出した後の残渣(固形分)が使用可能である。また、プロポリス原料としては、プロポリス原塊を60容量%未満、好ましくは50容量%以下のアルコール濃度の含水アルコールで抽出した後の残渣(固形分)、又はプロポリス原塊をアルコール以外の有機溶媒で抽出した後の残渣(固形分)を使用することも可能である。プロポリス原塊としては、ブラジルを含む南アメリカ諸国、中国や日本等のアジア諸国、ヨーロッパ諸国、北アメリカ諸国、オセアニア諸国で採取されるもの等あらゆる産地のものが使用可能である。
第1から第3の製造方法における希釈工程では、水又は水を主成分とする溶媒にて前記プロポリス抽出液を水希釈することにより希釈液を調製する。なお、希釈工程後の希釈液の溶媒には、水及びアルコールが含まれるが、粉末化工程における濃縮及び乾燥中に樹脂状物質の影響による粘着性及び固化性の発現を抑えるために、水の容量がアルコールの容量以上のものであることが好ましい。このような溶媒は、前記希釈液中のアルコール濃度が50容量%以下であり、40容量%以下であることが好ましく、30容量%以下であることがより好ましく、20容量%以下であることがさらに好ましく、10容量%以下であることが特に好ましい。
第1から第3の製造方法における粉末化工程は、例えば、常圧での加熱による直接濃縮法を始めとして、減圧濃縮法、スプレードライ法、凍結乾燥法等の公知の粉末化の方法により、特に好ましくは凍結乾燥法により、前記希釈液を濃縮及び乾燥させることにより実施される。なおこのとき、乳糖やデキストリン等の公知の賦形剤を添加して粉末化工程を実施しても構わない。
また、第1から第3の製造方法における粉末化工程では、前記希釈液中のアルコール分を主として揮発させる第一段階と、希釈液中の水分を蒸発させる第二段階との二段階に分けて実施されることも好ましい。この場合、前記第一段階では、主に希釈液中のアルコール分を揮発させて該希釈液を濃縮するために、好ましくは加熱による直接濃縮法や減圧濃縮法等の公知の濃縮方法が採用され、前記第二段階では、希釈液を乾燥させて粉末化するために、好ましくはスプレードライ法や凍結乾燥法等の公知の乾燥方法が採用される。
次に、第1から第3の製造方法についてそれぞれ説明する。
第1の製造方法は、プロポリス由来の固形分濃度が25重量%以下のプロポリス抽出液に水を加えて水希釈するとともにアルカリ処理を施す希釈工程と、該希釈工程後の希釈液を粉末化する粉末化工程とを備える。即ち、第1の製造方法における希釈工程では、プロポリス由来の固形分濃度が25重量%以下のプロポリス抽出液を用いるとともに、希釈液に対してアルカリ処理が施されることを特徴とする。
前記プロポリス抽出液中に含まれるプロポリス由来の固形分濃度が25重量%を超える場合、粉末化工程における濃縮及び乾燥中に樹脂状物質の影響による粘着性及び固化性が発現されるため、流動性の高いプロポリス粉末を製造することが困難になる。またこのとき、希釈工程を行う際に、プロポリス由来の水不溶性成分及び水難溶性成分がヤニ状に析出して器具や容器に付着したり、溶液から分離したりしてしまうおそれが高いため、それらの成分が損失しやすくなる。
なお、前記プロポリス抽出液中に含まれるプロポリス由来の固形分濃度は、プロポリス由来の水不溶性成分及び水難溶性成分の損失をより一層効果的に抑えるために、15重量%以下であることが好ましく、10重量%以下であることがより好ましい。また、前記プロポリス抽出液中に含まれるプロポリス由来の固形分濃度の下限値は、特に限定されないが、粉末化工程における濃縮及び乾燥を迅速に行うために、1重量%以上であることが好ましい。一方、前記希釈液中に含まれるプロポリス由来の固形分濃度は、粉末化工程を行う際に、プロポリス由来の水不溶性成分及び水難溶性成分がヤニ状に析出しにくくなるため、2重量%以下であることが好ましい。
前記アルカリ処理は、希釈液(プロポリス抽出液及び/又は水)に対してアルカリ剤を添加することにより実施される。具体的には、プロポリス抽出液にアルカリ剤を添加した後に水希釈すること、希釈用の水にアルカリ剤を添加した後にプロポリス抽出液と混合すること、並びに、プロポリス抽出液及び水からなる希釈後の希釈液にアルカリ剤を添加することのいずれかにより実施される。
アルカリ剤としては、無機アルカリ若しくは有機アルカリ、又はそれらを含む素材や添加物等が使用可能である。無機アルカリとしては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、酸化カルシウム、酸化マグネシウム等の無機強アルカリ、又は、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム等の無機弱アルカリが挙げられる。有機アルカリとしては、酢酸、酒石酸、クエン酸、グルコン酸等の弱酸(カルボン酸)のアルカリ金属塩又はアルカリ土類金属塩等が挙げられる。また、これらのアルカリ剤は、単独又は二種類以上を組み合わせて使用してもよい。これらのアルカリ剤のうち、プロポリス粉末に含まれる塩類の含有量を低減させるために、無機強アルカリが特に好適に使用される。
アルカリ処理を施した後の希釈液のpHは、6.5以上に調整されており、6.7以上に調整されていることが好ましく、7〜8に調整されていることがより好ましく、7〜7.5に調整されていることがさらに好ましい。ちなみに、プロポリス原塊をエタノールで抽出した後のプロポリス抽出液のpHは概ね4である。希釈液のpHが6.5未満の場合、希釈工程を行う際にプロポリス由来の水不溶性成分及び水難溶性成分がヤニ状に析出するおそれが高い。逆に希釈液のpHが8を超える場合、食品としての取り扱い性が低下するおそれが高い。
さらに、この第1の製造方法において、得られるプロポリス粉末の流動性を顕著に高めることが可能であることから、希釈工程後の希釈液には、カルシウム(カルシウムイオン)が含有されていることが好ましい。カルシウムは、水酸化カルシウム、炭酸カルシウム、リン酸カルシウム等のカルシウム塩、クエン酸、グルコン酸、グリセロリン酸、パントテン酸、ピロリン酸二水素、L−グルタミン酸等の有機酸やアミノ酸のカルシウム塩、焼成カルシウム(焼成した貝殻、卵殻、骨、乳清、牡蠣殻、うに殻、サンゴ等)、未焼成カルシウム(未焼成の貝殻、サンゴ、卵殻、骨、真珠等)、木灰、ドロマイト鉱石、石膏等を希釈液に添加することにより供給可能である。
特に、カルシウムを含む素材や添加物を用いて前記アルカリ処理を施すと、高い嵩密度を有し、流動性、取り扱い性(打錠性やカプセル内への充填性等)及び吸湿防止性能等に優れたプロポリス粉末を製造することが極めて容易になる。また、プロポリス由来の固形分濃度の高いプロポリス粉末を製造するためには、少量でアルカリ処理を効果的に実施することが可能な水酸化カルシウムを使用することが最も好ましい。
第2の製造方法は、プロポリス抽出液に水を加えて水希釈するとともに有機物を添加する希釈工程と、該希釈工程後の希釈液を粉末化する粉末化工程とを備える。即ち、第2の製造方法における希釈工程では、希釈液(プロポリス抽出液及び/又は水)に有機物を添加することにより、プロポリス由来の固形分と有機物とが含水アルコール中に溶解、懸濁又は乳化された希釈液を調製することを特徴とする。
この希釈液は、具体的には、プロポリス抽出液に有機物を添加した後に水希釈すること、プロポリス抽出液を水希釈した後に有機物を添加すること、及び、有機物の水溶液、水懸濁液又は水中油型(O/W型)乳化液からなる希釈用液を調製した後にプロポリス抽出液と混合することのいずれかにより実施される。前記有機物の乳化液からなる希釈用液を調製する場合、水を主成分とする溶媒が用いられ、特に好ましくは水が用いられる。なお、有機物の水中油型乳化液の場合、希釈用液中には通常50容量%未満の乳化剤が含有されているが、溶質としての上記有機物自体が乳化剤として機能する場合には、水のみからなる希釈用液を使用することが可能である。そして、上記有機物は、該有機物の極性(親水性や疎水性)等に応じて、希釈液中で含水アルコールに対し溶解、懸濁又は乳化されている。
前記希釈液に添加される有機物としては、乳糖、デキストリン、サイクロデキストリン、蔗糖、ブドウ糖、麦芽糖、異性化糖、オリゴ糖、糖アルコール、デンプン、セルロース、多糖、食物繊維等の有機物を含む公知の賦形剤を始めとして、人参サポニン、キラヤサポニン、大豆サポニン、エンジュサポニン等のサポニン、タモギタケ粉砕物のようなキノコ粉砕物、キノコ抽出物、ローヤルゼリー、茶葉抽出物、花粉、ブドウ抽出物、シソ抽出物、ブルーベリー抽出物、タマネギ抽出物、ビタミンC、藻類抽出物、海藻抽出物、大豆抽出物、ケール粉砕物、大麦若葉粉砕物、桑葉抽出物、クマザサ抽出物、エキナセア抽出物、シリマリン抽出物、エゾウコギ抽出物、ウコン抽出物、ビール酵母、プロテイン、コラーゲン、キトサン、グルコサミン等の動植物由来の有機物が挙げられる。なお、前記花粉としては、トウモロコシ、シスタス、菜種、オレンジ等の花粉荷及び花粉のエキスを、単独又は二種類以上組み合わせて使用することが可能である。また、プロポリスの抽出物(水抽出物、超臨界抽出物、ミセル化抽出物、有機溶媒抽出物等)は、本実施形態では上述したようなバインダーとしての機能を発揮しにくいため、前記有機物として希釈液に添加されないことが好ましいが、添加されていても構わない。
希釈工程後の希釈液に含まれる有機物の濃度は、0.1〜10重量%であることが好ましく、0.5〜7.5重量%であることがより好ましく、1〜5重量%であることがさらに好ましい。希釈液中の有機物濃度が0.1重量%未満の場合、粉末化工程における濃縮及び乾燥中に樹脂状物質の影響による粘着性及び固化性が発現されるため、流動性の高いプロポリス粉末を製造することが困難になる。またこのとき、希釈工程を行う際に、プロポリス由来の水不溶性成分及び水難溶性成分がヤニ状に析出して器具や容器に付着したり、溶液から分離したりしてしまうおそれが高いため、それらの成分が損失しやすくなる。逆に、希釈液中の有機物濃度が10重量%を超える場合、プロポリス粉末中のプロポリス由来の固形分濃度が相対的に低下するために好ましくない。
第2の製造方法において、プロポリス抽出液に含まれるプロポリス由来の固形分濃度は、25重量%以下であることが好ましく、15重量%以下であることがより好ましく、10重量%以下であることがさらに好ましい。前記プロポリス抽出液に含まれるプロポリス由来の固形分濃度が25重量%を超える場合、粉末化工程における濃縮及び乾燥中に樹脂状物質の影響による粘着性及び固化性が発現されやすくなるうえ、希釈工程を行う際にプロポリス由来の水不溶性成分及び水難溶性成分が損失しやすくなる。また、前記プロポリス抽出液に含まれるプロポリス由来の固形分濃度の下限値は、特に限定されないが、粉末化工程における濃縮及び乾燥を迅速に行うために、1重量%以上であることが好ましい。一方、希釈液中に含まれるプロポリス由来の固形分濃度は、粉末化工程を行う際に、プロポリス由来の水不溶性成分及び水難溶性成分がヤニ状に析出しにくくなるため、2重量%以下であることが好ましい。
さらに、この第2の製造方法における希釈工程では、希釈液に対してアルカリ処理が施されることが好ましい。ちなみに、上記希釈液に含まれる有機物自体が希釈液のpHを高める作用を有している場合、アルカリ処理を施す必要性は少ない。この第2の製造方法においても、上記第1の製造方法の場合と同様の理由で、希釈液のpHは、6.5以上であることが好ましく、6.7以上であることがより好ましく、7〜8であることがさらに好ましく、7〜7.5であることが特に好ましい。
また、この第2の製造方法においても、プロポリス粉末の流動性を顕著に高めることが可能であることから、希釈工程後の希釈液には、カルシウムが含有されていることが好ましい。特に、カルシウムを含む素材や添加物を用いて前記アルカリ処理を施すと、高い嵩密度を有し、流動性、取り扱い性(打錠性やカプセル内への充填性等)及び吸湿防止性能等に優れたプロポリス粉末を製造することが極めて容易になる。但し、上記希釈液にカルシウムを含む有機物が含有されている場合、別途カルシウムを添加する必要性は少ない。また、プロポリス含量の高いプロポリス粉末を製造するためには、少量でアルカリ処理を効果的に実施することが可能な水酸化カルシウムを使用することが最も好ましい。
第3の製造方法は、プロポリス抽出液に水を加えて水希釈するとともにカルシウムを添加する希釈工程と、該希釈工程後の希釈液を粉末化する粉末化工程とを備える。即ち、第3の製造方法における希釈工程では、希釈液(プロポリス抽出液及び/又は水)に対してカルシウム添加処理が施されることを特徴とする。
カルシウム添加処理は、得られるプロポリス粉末の流動性を高めるために実施される。カルシウムは、水酸化カルシウム、炭酸カルシウム、乳酸カルシウム、硫酸カルシウム、塩化カルシウム、リン酸カルシウム等のカルシウム塩、クエン酸、グルコン酸、グリセロリン酸、パントテン酸、ピロリン酸二水素、L−グルタミン酸等の有機酸やアミノ酸のカルシウム塩、焼成カルシウム(焼成した貝殻、卵殻、骨、乳清、牡蠣殻、うに殻、サンゴ等)、未焼成カルシウム(未焼成の貝殻、サンゴ、卵殻、骨、真珠等)、木灰、ドロマイト鉱石、石膏等を希釈液に添加することにより供給可能である。カルシウムとしては、プロポリス粉末の流動性を顕著に高めることが可能であることから、水酸化カルシウムを用いることが特に好ましい。
希釈工程後の希釈液に含まれるカルシウムの濃度(食品添加物濃度)は、特に限定されないが、0.01〜1重量%であることが好ましく、0.05〜0.75重量%であることがより好ましく、0.1〜0.5重量%であることがさらに好ましい。希釈液中のカルシウム濃度が0.01重量%未満の場合、粉末化工程における濃縮及び乾燥中に樹脂状物質の影響による粘着性及び固化性が発現されるため、流動性の高いプロポリス粉末を製造することが困難になる。またこのとき、希釈工程を行う際に、プロポリス由来の水不溶性成分及び水難溶性成分がヤニ状に析出して器具や容器に付着したり、溶液から分離したりしてしまうおそれが高いため、それらの成分が損失しやすくなる。逆に、希釈液中のカルシウム濃度が1重量%を超える場合、希釈液中にカルシウムが溶解されにくくなるため不経済であるうえ、プロポリス粉末中のプロポリス由来の固形分濃度が相対的に低下するために好ましくない。
第3の製造方法において、プロポリス抽出液に含まれるプロポリス由来の固形分濃度は、25重量%以下であることが好ましく、15重量%以下であることがより好ましく、10重量%以下であることがさらに好ましい。前記プロポリス抽出液に含まれるプロポリス由来の固形分濃度が25重量%を超える場合、粉末化工程における濃縮及び乾燥中に樹脂状物質の影響による粘着性及び固化性が発現されやすくなるうえ、希釈工程を行う際にプロポリス由来の水不溶性成分及び水難溶性成分が損失しやすくなる。また、前記プロポリス抽出液に含まれるプロポリス由来の固形分濃度の下限値は、特に限定されないが、粉末化工程における濃縮及び乾燥を迅速に行うために、1重量%以上であることが好ましい。一方、希釈液中に含まれるプロポリス由来の固形分濃度は、粉末化工程を行う際に、プロポリス由来の水不溶性成分及び水難溶性成分がヤニ状に析出しにくくなるため、2重量%以下であることが好ましい。
さらに、この第3の製造方法における希釈工程では、希釈液に対してアルカリ処理を施すことが好ましい。この第3の製造方法においても、上記第1の製造方法の場合と同様の理由で、希釈液のpHは、6.5以上であることが好ましく、6.7以上であることがより好ましく、7〜8であることがさらに好ましく、7〜7.5であることが特に好ましい。ちなみに、上記カルシウム添加処理に用いられるカルシウム自体が希釈液のpHを高める作用を有している場合、アルカリ処理を施す必要性は少ない。
次に、上記プロポリス粉末の製造方法の作用について説明する。
本実施形態のプロポリス粉末の製造方法で用いられるプロポリス抽出液には、アルコール又はアルコール濃度の高い含水アルコールによって抽出されたプロポリス由来の樹脂状物質が高含有されている。このような樹脂状物質は、プロポリス抽出液を濃縮する時に該抽出液を粘稠な液体にしてしまうとともに、乾燥後の粉末に対して粘着性及び固化性を付与してしまう。
このような樹脂状物質の影響を抑えて流動性の高いプロポリス粉末を製造するために、第1から第3の製造方法はいずれも、プロポリス由来の固形分をアルコール濃度の低い(好ましくはアルコール濃度が50容量%以下の)含水アルコール中に溶解した状態で濃縮及び乾燥を行うことに第一の特徴を有している。この場合、粉末化工程においては、水とアルコールとの揮発性の差に起因して、含水アルコールに含まれるアルコール分がまずは優先的に揮発する。その後、水分が蒸発して乾燥(粉末化)されるが、プロポリス由来の固形分濃度が高い状態にまで濃縮された段階では、アルコール分はほとんど存在していないことになる(本発明者らの測定によれば1容量%未満)。従って、本実施形態では、プロポリス由来の固形分は、乾燥直前には水に対して高濃度に濃縮された状態で溶解されており、その状態から水分を失って乾燥される。このため、メカニズムの詳細は不明であるが、高濃度のアルコールに対して高濃度に濃縮された状態から直接的に乾燥される場合よりも、樹脂状物質の影響を受けにくくなり、固化性及び流動性が改善されたサラサラの粉末が製造される。
さらに、第1から第3の製造方法はいずれも、粉末化を促進させるためのバインダーを希釈液中に人為的に形成させることに第二の特徴を有している。第二の特徴の詳細及びその作用効果は、以下のようであると推測される。
第1の製造方法において、前記バインダーは、プロポリス由来の固形分に存在するフェノール基やカルボキシル基等の有機系官能基と、水酸化ナトリウムや水酸化カルシウム等のアルカリ剤との間で形成されるエステル化物やキレート錯体等によって構成されると考えられる。このようなエステル化物やキレート錯体は、溶媒の量が減少したとき、水に対して溶解された状態のプロポリス由来の固形分を積極的に吸着させて所定サイズの塊(核)を形成するものと考えられる。このとき、樹脂状物質も前記核に吸着されて他の核に対する影響を失うものと見られる。従って、前記核は、樹脂状物質を含むプロポリス由来の固形分を結合させて粉末化を促進させるためのバインダーとして機能する。そして、このような核を中心にして迅速かつ個別に粉末化が進行するとともに、樹脂状物質による影響を極力排除することが可能になる。
第2の製造方法において、前記バインダーは、外部から添加された有機物によって構成される。この場合、前記有機物は、上記第1の製造方法におけるエステル化物やキレート錯体と同様に粉末化を促進させるための核となり、固化性及び流動性の改善されたサラサラの粉末を製造することに大きく寄与する。一方、第3の製造方法において、前記バインダーは、外部から添加されるカルシウム(液体中であるため、カルシウムイオン)によって構成される。この場合、前記カルシウムは、上記第1の製造方法におけるエステル化物やキレート錯体と同様に粉末化を促進させるための核となり、固化性及び流動性の改善されたサラサラの粉末を製造することに大きく寄与する。
前記実施形態によって発揮される効果について、以下に記載する。
本実施形態の第1から第3のプロポリス粉末の製造方法はいずれも、プロポリス由来の固形分をアルコール濃度の低い含水アルコール中に溶解した状態で濃縮及び乾燥するとともに、粉末化を促進させるためのバインダーを希釈液中に人為的に形成させるように工夫されている。このため、樹脂状物質の影響による粘着性及び固化性をほとんど有することなく、流動性の高いサラサラの性状のプロポリス粉末を製造することが可能となるため、健康食品や医薬品等に加工する際の加工性及び取り扱い性を高めたプロポリス粉末を提供することができる。
さらに、これら第1から第3の製造方法では、バインダーの作用により、希釈工程でプロポリス由来の水不溶性成分及び水難溶性成分の損失がほとんど起こらない。このため、健康維持や健康増進を始めとして、疾病の予防や治療等に高い効果を発揮するプロポリス粉末を提供することが容易である。また、これら第1から第3の製造方法では、バインダーを人為的に形成させることにより、粉末化工程で用いられる賦形剤等の添加物の含有量を低減させることが容易であるため、プロポリス含量の高いプロポリス粉末を製造することが容易である。従って、健康食品や医薬品として期待される摂取量に足るだけの有効成分を高含有するようなプロポリス粉末を提供することが可能となることから、極めて有用である。
以下に実施例を挙げて具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
<希釈工程の検討1(予備試験)>
ブラジル産プロポリス原塊を95容量%エタノールで抽出した後、脱ロウろ過することによりプロポリス抽出液を調製した。なお、プロポリス抽出液の調製時には、プロポリス原塊の量とエタノールの量とを適宜相対的に変更することにより、下記表1に示すようにプロポリス由来の固形分濃度がそれぞれ異なる3種類のプロポリス抽出液を調製した。各プロポリス抽出液に下記表1に示す量の蒸留水を加えて希釈し、得られた各希釈液の分散状態を目視にて評価した。結果を下記表1に示す。
Figure 0004418781
表1の結果より、プロポリス由来の固形分濃度が15重量%以下のプロポリス抽出液に水を加えて希釈したとき、ヤニ状物質の析出や分離が認められなかった。特に、希釈液中の固形分濃度が2重量%以下となるように希釈した場合、濃縮及び凍結乾燥する際にほとんどヤニが析出しないことが容易に予想されるため、粉末化に非常に適していると言える。なお、同表に示すように、希釈液中のアルコール濃度は、40容量%以下であれば、分散状態に対する影響は認められなかった。また、表1には示していないが、60容量%のアルコール濃度の含水エタノールで抽出したプロポリス抽出液についても全く同様に試験を行ったところ、同様の結果が得られた。
<希釈工程の検討2(アルカリ処理)>
ブラジル産プロポリス原塊を95容量%エタノールで抽出した後、脱ロウろ過することによりプロポリス抽出液を調製した。なお、プロポリス抽出液の調製時には、プロポリス原塊の量とエタノールの量とを適宜相対的に変更することにより、下記表2に示すようにプロポリス由来の固形分濃度がそれぞれ異なる5種類のプロポリス抽出液を調製した。各プロポリス抽出液に、下記表2に示す量の蒸留水を加えて希釈した後、水酸化ナトリウムを用いて希釈液のpHが12となるように調整した。得られた各希釈液の分散状態を目視にて評価した。結果を下記表2に示す。
Figure 0004418781
表2の結果より、プロポリス由来の固形分濃度が25重量%以下のプロポリス抽出液を水希釈した後にアルカリ処理したとき、ヤニ状物質の析出や分離が認められなかった。特に、希釈液中の固形分濃度が2重量%以下となるように希釈した場合、濃縮及び凍結乾燥する際にほとんどヤニが析出しないことが容易に予想されるため、粉末化に非常に適していると言える。ちなみに、調製された各希釈液はpHが非常に高いため、アルカリ処理によって良好なプロポリス粉末を製造する場合、プロポリス抽出液中に含まれるプロポリス由来の固形分濃度の上限値は25重量%が限界であると言える。
<プロポリス粉末の製造1(アルカリ処理及びカルシウム添加処理)>
(試験例1) 実施例1で調製したプロポリス抽出液(プロポリス由来の固形分濃度が10重量%)100mLに400mLの蒸留水を添加して希釈した。次に、水酸化カルシウムを加えて希釈液のpHを7に調整し、一晩攪拌した後、減圧濃縮及び凍結乾燥することによりプロポリス粉末を製造した。
(試験例2) 水酸化カルシウムでpH11.5に調整した蒸留水400mLに、実施例1で調製したプロポリス抽出液(プロポリス由来の固形分濃度が10重量%)100mLを添加しながら、pH7の希釈液を調製した(逆滴定)。次に、この希釈液を一晩攪拌した後、減圧濃縮及び凍結乾燥することによりプロポリス粉末を製造した。
(試験例3) 実施例1で調製したプロポリス抽出液(プロポリス由来の固形分濃度が10重量%)100mLに400mLの蒸留水を添加して希釈した。次に、水酸化ナトリウムを加えて希釈液のpHを7に調整し、一晩攪拌した後、減圧濃縮及び凍結乾燥することによりプロポリス粉末を製造した。
(試験例4) 実施例1で調製したプロポリス抽出液(プロポリス由来の固形分濃度が10重量%)100mLに400mLの蒸留水を添加して希釈した。次に、水酸化カリウムを加えて希釈液のpHを7に調整し、一晩攪拌した後、減圧濃縮及び凍結乾燥することによりプロポリス粉末を製造した。
(試験例5) 実施例1で調製したプロポリス抽出液(プロポリス由来の固形分濃度が10重量%)100mLに400mLの蒸留水を添加して希釈した。次に、炭酸マグネシウムを加えて希釈液のpHを7に調整し、一晩攪拌した後、減圧濃縮及び凍結乾燥することによりプロポリス粉末を製造した。
(比較例1) 実施例1で調製したプロポリス抽出液(プロポリス由来の固形分濃度が10重量%)100mLに400mLの蒸留水を添加して希釈した。この希釈液のpHは3.9であった。次に、希釈液を一晩攪拌した後、減圧濃縮及び凍結乾燥することによりプロポリス粉末を製造した。
(参考例) 実施例1で調製したプロポリス抽出液を濃縮し、プロポリス由来の固形分濃度が60重量%となるように調整した濃縮プロポリス抽出液を作製した。次に、澱粉加水分解物(松谷化学工業(株)製の商品名パインフロー)1kgをケーキミキサーに投入した後、低速で攪拌しながら、前記濃縮プロポリス抽出液1.67kgをゆっくりと添加した。ケーキミキサー内の混合物全体を均一に混合した後、この混合物を棚式の熱風乾燥機にセットして50℃で24時間乾燥させた。乾燥物を冷却後、衝撃式粉砕機で粉砕した。次いで、粉砕物を80メッシュの篩で篩分けすることにより、プロポリス粉末組成物(EEP−B50P)を1.84kg得た。
<粉末性状の評価>
試験例1〜5、比較例1及び参考例で得られた各粉末をそれぞれ透明なガラス製のサンプル瓶に入れ、室温で1ヶ月間保存した。1ヶ月経過後、各サンプル瓶中の粉末の固化状態を4段階(◎、○、△、×)で評価した。粉末の固化状態の評価は、各サンプル瓶に衝撃を与えたときのサンプル瓶内の粉末の状態変化を目視にて観察することにより行った。具体的には、衝撃を与えずとも軽くサンプル瓶を振るだけで粉末の粒子が滑り始めた場合を◎、軽い衝撃を与えるのみで粉末の塊が崩壊した場合を○、軽い衝撃を与えても粉末の塊が崩壊しないが、強い衝撃を与えることにより多少の塊は残るが大部分の塊が崩壊した場合を△、強い衝撃を与えても粉末の塊が崩壊しなかった場合を×で評価した。結果を下記表3に示す。
Figure 0004418781
表3の結果より、プロポリス抽出液を水希釈した後にアルカリ処理することにより、得られたプロポリス粉末の粘着性及び固化性が効果的に抑制された。さらに、アルカリ処理では、希釈液のpHを7以上に調整するとよいことも分かった。特に、水酸化カルシウムを用いてアルカリ処理した試験例1、2では、極めて流動性の高いプロポリス粉末の製造が可能であったことが示された。また、データは示さないが、実施例1で調製したプロポリス抽出液(プロポリス由来の固形分濃度が10重量%)の代わりに、60容量%のアルコール濃度の含水エタノールで抽出したプロポリス抽出液についても全く同様に試験を行ったところ、同様の結果が得られた。
<プロポリス粉末の製造2(pHの検討)>
流動性が顕著に改善された試験例1、2のプロポリス粉末の製造方法において、水酸化カルシウムの添加量を変更することにより、各希釈液のpHを下記表4に示すように調整した。得られた各プロポリス粉末について、上記実施例3の<粉末性状の評価>と同様に評価した。結果を表4に示す。
Figure 0004418781
表4の結果より、希釈液のpHを6.5未満(表4では6.3以下)に調整した場合、プロポリス抽出液からヤニが析出するとともに、粉末化した場合には吸湿性の高い粉末が得られた。一方、希釈液のpHを6.5以上(表4では6.7以上)に調整した場合、明らかに低い粘着性及び固化性を有し、かつ顕著に高い吸湿性及び流動性を有するプロポリス粉末が製造された。また、希釈液のpHを8.0以上(表4では8.1以上)に調整した場合には、プロポリス粉末の嵩比重の低下が認められた。
<カプセル剤適性及び錠剤適性の評価>
流動性が顕著に改善された試験例1、2のプロポリス粉末、及び参考例のプロポリス粉末組成物のそれぞれについて、カプセル剤適性及び錠剤適性を評価した。カプセル剤適性は、ハードカプセル充填機(Ultra8)を用いてハードカプセルを作製し、各粉末の流動性、カプセル内への充填障害、カプセル重量のバラツキ等について総合的に評価した。錠剤適性は、打錠機(HATA社製HT−P22)を用いて錠剤を作製し、各粉末の流動性、打錠障害(スティッキング等)、錠剤の硬度や重量のバラツキ等について総合的に評価した。結果を下記表5に示す。
Figure 0004418781
表5の結果より、試験例1、2のプロポリス粉末は、参考例の粉末と比較して、カプセル剤及び錠剤への加工・製造特性に優れていた。さらに、参考例のカプセル剤及び錠剤はいずれもプロポリス含量が50重量%程度であるのに対し、試験例1、2のカプセル剤及び錠剤はいずれもプロポリス含量が90重量%以上である。
<希釈工程の検討3(有機物添加処理)>
ブラジル産プロポリス原塊を95容量%エタノールで抽出した後、脱ロウろ過することによりプロポリス抽出液を調製した。なお、プロポリス抽出液の調製時には、プロポリス原塊の量とエタノールの量とを適宜相対的に変更することにより、下記表6に示すようにプロポリス由来の固形分濃度がそれぞれ異なる3種類のプロポリス抽出液を調製した。各プロポリス抽出液に、キラヤニンS−100(丸善化成株式会社製、キラヤ抽出物25%含有)を添加して攪拌した後、下記表6に示す量の蒸留水を加えて希釈した。なお、キラヤニンS−100は、プロポリス抽出液に対して重量比で10分の1量添加した。得られた各希釈液の分散状態を目視にて評価した。結果を下記表6に示す。
Figure 0004418781
表6の結果より、プロポリス由来の固形分濃度が25重量%以下のプロポリス抽出液に有機物及び水を添加したとき、ヤニ状物質の析出や分離が認められなかった。特に、希釈液中の固形分濃度が2重量%以下となるように希釈した場合、濃縮及び凍結乾燥する際にほとんどヤニが析出しないことが容易に予想されるため、粉末化に非常に適していると言える。また、プロポリス由来の固形分濃度が25重量%を超えるプロポリス抽出液を用いる場合でも、有機物の添加量を増加させることにより、粉末性状に優れたプロポリス粉末が製造可能であることも容易に予想される。
<プロポリス粉末の製造3(有機物添加処理)>
(試験例6) 生ローヤルゼリー40gを10倍量の蒸留水で溶解した後(pH3.7)、上記実施例1で調製したプロポリス抽出液(プロポリス由来の固形分濃度が10重量%)100mLを添加し、4時間攪拌した(pH3.9)。その後、減圧濃縮及び凍結乾燥することにより、プロポリス粉末23.98gを得た。このプロポリス粉末中のプロポリス含量は約42重量%である。
(試験例7) 乾燥したタモギタケを粉砕したタモギタケ粉砕物10gに、40倍量の蒸留水と、酵素Ceremix 2LX(ノボザイム製)とを添加し、45℃で4時間攪拌した。次に、80℃で30分間加熱することにより酵素を失活させた後に冷却した。続いて、この懸濁液(pH5.5)に、上記実施例1で調製したプロポリス抽出液(プロポリス由来の固形分濃度が10重量%)100mLを添加し、4時間攪拌した(pH5.5)。その後、減圧濃縮及び凍結乾燥することにより、プロポリス粉末19.97gを得た。このプロポリス粉末中のプロポリス含量は約50重量%である。
(試験例8) 花粉エキス(アピ株式会社製、固形分量:50w/w%)20gに、20倍量の蒸留水を加えた後(pH3.9)、上記実施例1で調製したプロポリス抽出液(プロポリス由来の固形分濃度が10重量%)100mLを添加し、4時間攪拌した(pH4.0)。その後、減圧濃縮及び凍結乾燥することにより、プロポリス粉末19.56gを得た。このプロポリス粉末中のプロポリス含量は約50重量%である。
(試験例9) 赤ブドウ抽出物(固形分量:2.5w/v%、pH4.0)400mLに、上記実施例1で調製したプロポリス抽出液(プロポリス由来の固形分濃度が10重量%)100mLを添加し、4時間攪拌した(pH4.1)。その後、減圧濃縮及び凍結乾燥することにより、プロポリス粉末19.28gを得た。このプロポリス粉末中のプロポリス含量は約50重量%である。
(試験例10) サイクロデキストリン(塩水港精糖株式会社製のデキシパール)10gに40倍量の蒸留水を加え、45℃で攪拌して溶解させた。この溶解液に上記実施例1で調製したプロポリス抽出液(プロポリス由来の固形分濃度が10重量%)100mLを添加し、4時間攪拌した(pH4.0)。その後、減圧濃縮及び凍結乾燥することにより、プロポリス粉末19.92gを得た。このプロポリス粉末中のプロポリス含量は約50重量%である。
<プロポリス粉末の評価>
試験例6〜10の各プロポリス粉末では、いずれも粘着性及び固化性が効果的に抑えられていた。特に、試験例7、10のプロポリス粉末では、その他の試験例のプロポリス粉末よりも明らかに粘着性及び固化性が低減されていた。
さらに、前記実施形態より把握できる技術的思想について以下に記載する。
・ 前記希釈液のpHは7〜8に調整されることを特徴とするプロポリス粉末の製造方法。
前記プロポリス抽出液は、プロポリス由来の固形分を15重量%以下含有することを特徴とするプロポリス粉末の製造方法。
前記プロポリス抽出液は、前記プロポリス原料を95〜100容量%のエタノールで抽出したエタノール抽出液であることを特徴とするプロポリス粉末の製造方法。

Claims (4)

  1. プロポリス粉末の製造方法であって、
    該方法は、プロポリス抽出液を水希釈して希釈液を調製する希釈工程と、前記希釈液を粉末化する粉末化工程とを備え、
    前記プロポリス抽出液は、プロポリス原料をアルコール又は60容量%以上のアルコール濃度の含水アルコールで抽出したものであり、かつプロポリス由来の固形分を25重量%以下含有し、
    前記希釈工程は、前記希釈液中のアルコール濃度が50容量%以下であると共に、前記希釈液中のプロポリス由来の固形分が2重量%以下となるように前記希釈液を調整する工程であり、
    前記希釈工程では、粉末化を促進させるためのバインダーを前記希釈液中に形成させるバインダー形成処理が施され
    前記バインダー形成処理は、前記希釈液に対してカルシウムを含有するアルカリ剤を添加して、該希釈液のpHを6.5以上に調整する処理であることを特徴とするプロポリス粉末の製造方法。
  2. プロポリス粉末の製造方法であって、
    該方法は、プロポリス抽出液を水希釈して希釈液を調製する希釈工程と、前記希釈液を粉末化する粉末化工程とを備え、
    前記プロポリス抽出液は、プロポリス原料をアルコール又は60容量%以上のアルコール濃度の含水アルコールで抽出したものであり、
    前記希釈工程は、前記希釈液中のアルコール濃度が50容量%以下であると共に、前記希釈液中のプロポリス由来の固形分が2重量%以下となるように前記希釈液を調整する工程であり、
    前記希釈工程では、粉末化を促進させるためのバインダーを前記希釈液中に形成させるバインダー形成処理が施され、
    前記バインダー形成処理は、前記希釈液に対して有機物を添加する処理であることを特徴とするプロポリス粉末の製造方法。
  3. 前記有機物は、異性化糖、オリゴ糖、デンプン、セルロース、多糖、食物繊維、キノコ粉砕物、キノコ抽出物、ローヤルゼリー、茶葉抽出物、花粉、ブドウ抽出物、シソ抽出物、ブルーベリー抽出物、タマネギ抽出物、ビタミンC、藻類抽出物、海藻抽出物、大豆抽出物、ケール粉砕物、大麦若葉粉砕物、桑葉抽出物、クマザサ抽出物、エキナセア抽出物、シリマリン抽出物、エゾウコギ抽出物、ウコン抽出物、ビール酵母、プロテイン、コラーゲン、キトサン及びグルコサミンから選ばれる少なくとも一種であることを特徴とする請求項2に記載のプロポリス粉末の製造方法。
  4. 前記希釈工程では、前記希釈液にカルシウムが添加されることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか一項に記載のプロポリス粉末の製造方法
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