JP4416385B2 - 電界によりアドレス指定可能な書換え可能媒体 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は一般には情報を頒布するための方法及び装置に関し、より特定的には情報コンテンツを電子的に表示することに関し、さらに詳細には、再利用可能で、コントラストが高く、非常に高い解像度を有する書換え可能な印刷媒体、及びそれを製造するための方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
ハードコピー情報、より最近では電子ディスプレイの情報は、多くの形態で、多くの手段によって伝達される。消去可能で書換え可能な印刷媒体による伝達手段は、単純な紙と鉛筆、チョークと黒板といったものから、ドライマーカペンとホワイトボードにまで及んでいる。より洗練されたハードコピープロセスは、印刷のために機械化されたビジネス用及び商業用の印刷プロセスを用いることを許容するが、それにはレーザプリンタ及びインクジェットプリンタ、オフセット印刷、シルクスクリーン等が含まれる。しかしこれらのプロセスは通常、永続的印刷物(「消去可能な印刷物」又は「消去可能に書込み可能な」フォーマット及び方法と対比される)の分野に限定される。印刷物の大部分は、本、雑誌、新聞及びセルロース繊維媒体(一般に「紙」として知られる)上に永続的なトインク(「トナー」又はより一般的には「着色剤」)を用いた他の種々の形態でもって商業的に生産されており、また入手可能である。これらの形態に含まれる情報コンテンツ、一般には文字数字及び図形画像は、眼に不快感を生じさせることなく長時間楽に読むことができるように、十分に高い解像度とコントラストとを有する。電子装置と比較すると、ハードコピー媒体は高い可搬性を保持しながら全く電力を消費しないという利点を有し、快適性を維持するために読む位置と姿勢を定期的に変えながら、好きな場所で快適に読むことができる。しかしながら、こうした印刷媒体は、印刷、装丁、保管及び頒布に比較的高いコストがかかる。ハードコピーのコストは、印刷手段とは別に、標準的には一回読むことにより償却され、その後に本又は他のドキュメントは物理的に保管されるか、破棄される。後者のコスト要因は、コンテンツの生成と読者への入手性の間に、定義可能な時間的支出も必要とする。これらの媒体のコンテンツは同時性ではない。例えば今日の「新」聞には実際には、「昨日起こったこと」が満載されている。
【0003】
多くの印刷物は手で、例えばペン又は鉛筆を用いて紙の上に作成される。多くの場合、そのような印刷物は、電話番号、メモ、買い物リスト及び予定のような、一時的な情報記憶のために用いられる。そのような印刷物のための印刷媒体は一般に、メモ用紙、ポストイット(登録商標)、カレンダー、用紙剥ぎ取り式の掲示板等からなる。それぞれの場合に、媒体は通常、所期の目的を果たすために用いられ、その後は破棄されるか無視されて、ゴミや再利用コスト、散らかりなどになる。
【0004】
チョークと黒板、ドライマーカペンとホワイトボードといった印刷物は、媒体の無駄及び散乱の問題を解消する。そのような印刷画像は、永続的な付着なしに、媒体表面に塗布される粉末又はインクによって生成され、画像を視認し、消去し、その後再度画像を生成するのは容易である。しかしながら、そのような印刷物は、買い物リストのように媒体を持ち運ぶ用途、画像が装丁される用途、又は媒体表面が接触によって擦られる場合がある他の用途には適用することができない。さらに別の欠点は、媒体表面からチョークまたはインクを除去するのに起因して生ずる厄介な残りかすである。
【0005】
遍在的な(ユビキタス)レーザプリンタ及びインクジェットプリンタのような業務用のプリンタは、インターネットとの関連で、これらの問題のいくつかを解消し、ハードコピー印刷物入手可能性を伴いつつ、同時性のある情報頒布をもたらすが、商業的な印刷物よりもページ当たりのコストが高く、また通常は低品質であったりフォーマットが異なっていたりする。本明細書では、用語「インターネット」は、業界標準プロトコル(例えばTCP/IP、HTTP、UDP等)によって互いにリンクされ、全体としてグローバルな分散ネットワークを形成する、分散され相互接続されたネットワークの集合体(ARPANET、DARPANET、ワールドワイドウェブ等)についての一般的な用語として用いられる(私設及び専有のイントラネットも知られており、本発明の用途に容易に一致させることができる)。
【0006】
一方コンピュータは、読み手に対して、著しく安いコストで、インターネットを介してコンテンツをほぼ瞬時に頒布できる。同様に、パームトップコンピュータ、電子ブック、ネット接続電話及び「個人情報端末」(PDA)のような携帯型の装置の出現によって、印刷物を種々のサイズ及びタイプの電子ディスプレイ上に生成することができる。しかしながらコンピュータディスプレイは、ハードコピー媒体よりも著しく低い解像度でコンテンツを表示し、極めて快適性の劣る読み取り性しか提供しない。陰極線管(「CRT」)ディスプレイは、より高い解像能力を有するが、もしあるとしても可搬性は低く、概ね静止した姿勢で、概ね固定された焦点距離で読む必要があり、結果として比較的早く眼精疲労になり、姿勢も不快になる。一般にポータブルコンピュータで用いられる液晶ディスプレイ(「LCD」)は、幾分可搬性を高めることが可能であるが、その代わりにディスプレイコントラストが劣り、軸外視認性が劣り、コストが高い。部分的には、ポータブルディスプレイの解像度の低さは、高い分解能でマトリクスをアドレス指定することが難しいことに起因する。
【0007】
図1AA(従来技術)は、市販のフラットパネルLCD1のようなフラットパネル電子ディスプレイの基本的な動作を例示する(破線はこの図において、図面を複雑にしないように装置の個別の部品が連続していることを示すために用いられている)。基本的には、LCD1は、この図では小さすぎて見えないが、通常は薄膜トランジスタ(「TFT」)のアレイによって形成され(例えば600ドット/インチ(「dpi」))、ディスプレイの解像度を規定する複数の画像素子(「画素」)を含んでいる。複数のゲート線2及びデータ線3が、パネル1のアクティブ領域「B」のための画素制御グリッドを形成する。ゲート線2及びデータ線3は、既知の態様で集積回路ドライバに接続するように、アクティブ領域Bの外側にリード線5として延在する。各線に1つずつの複数のパッドがアクティブ領域Bの周縁部の領域「C」に形成され、個々のパッド領域4はリード線5によってゲート線2及びデータ線3に接続される。カラーLCDは、カラーフィルタを通して、個別に切り替えられる画素液晶を背面から照明することにより製造される。画面の解像度は、相互接続される配線、即ちゲート線及びデータ線と、データを送出するマイクロプロセッサ又はメモリの間の配線に関連するテクノロジと、各画素のためのドライバサイズによって制限されるということに留意するのが重要である。さらに、こうした装置では、各画素をその現在の状態に保持し、液晶画面を背面から連続的に照明するために電力を必要とする。
【0008】
商用のハードコピーと比較して、コンピュータディスプレイの解像度が少なくとも1桁低いことにより、読者が一度にページ全体に相当するドキュメントを視認することは妨げられる。さらに、画面サイズの制約のため、非常に大きなビデオモニタを用いたり、ページを画面に合うように縮小したりしない場合には、読者はコンテンツ全体を読むために、マニュアル制御を用いてドキュメントページの下方へと、表示された画像をスクロールしなければならない。さらに、グラフィック画像は多くの場合、著しくズームアウトしてサイズを縮小しなければ、1つの画面に適合させることはできず、表示することができる細部が制限される。さらにまた、対象とするドキュメントページを取得するためには、コンピューティング装置を起動し、特定のアプリケーション(ノートパッド、カレンダー等)を立ち上げ、少なくとも1つのユーザコマンドを入力するという必要性が存在する。大抵の場合、PDAを用いてメモを取るよりは、紙片に走り書きされた簡単なメモのほうが、はるかに便利である。
【0009】
電子ディスプレイに関する上記の欠点に加えて、特に画面がアクティブトランジスタタイプの場合には、こうしたディスプレイは比較的消費電力が大きい。また、こうしたディスプレイは、屋外、又は他の明るい周囲環境条件において、比較的コントラスト(視認性)が低下する。CRT、プラズマ、発光ダイオード(「LED」)及びバックライト型LCDのような電子放出ディスプレイは、自己照明画像素子(「画素」)を有する。電子放出ディスプレイは、光を生成する必要があるため、消費電力が非常に大きい。しかしそのような自己照明は依然として比較的輝度が低く、従って、眼が周囲の輝度に自動的に順応することに起因して、明るい周囲環境の視認条件では暗く見える。非バックライト型LCDは、概ね全ての周囲照明下でコントラストが低下する。各LCD画素から反射される周囲光は偏光子を通過しなければならないが、これは周囲の明るさに対して著しく画素の輝度を低減させる。これがLCDを暗く見えるようにし、コントラストを低下させる。それゆえ、コンピュータ及びテレビにおいて用いられる従来技術の電子ディスプレイは、職場及び家庭における制御された周囲照明下での実用に限定されてきた。ウェブ電話、パームトップコンピュータ、及びテレビのようなモバイルコンピュータ装置の出現と共に、ユーザが普通に通信を行い、業務を行い、楽しむに際しての、広い範囲の周囲照明条件下で良好な視認性を提供するディスプレイテクノロジへの要望が高まっている。モバイル装置は、電池寿命を長くするために消費電力が低いことを要求する。それゆえ、従来の電子ディスプレイに対し、あまり電力を消費しない代替機器への要望が高まっている。
【0010】
インターネットから長いドキュメントをダウンロードするとき、読者は通常そのコンテンツを印刷し、上述したハードコピー媒体の利点を改めて求める。しかしながらそのような印刷は、一般には一度しか読まれず結局は破棄されることになるドキュメントのために、プロセスにローカルコストを追加する。紙をリサイクルしても、環境に対する複合コストはわずかに削減されるだけである。そうした訳で、情報の頒布に関し、現在のコンピュータによるソリューションは、本、雑誌や新聞のような定期刊行物等の頒布の必要性に対してはある程度アンチテーゼをなしている。
【0011】
ディスプレイのための、静電気的に分極される2色性の粒子が、1960年代初頭から知られている。最近になって、電子ペーパのような印刷媒体に対する要望が、少なくとも2つのエレクトロクロミック画像素子(画素)着色剤の開発を促した。(1)マイクロカプセル封入型の電気泳動着色剤(例えばイー・インク社を譲受人とする「ELECTRONIC BOOK WITH MULTIPLE PAGE DISPLAYS」と題する米国特許第6124851号(ヤコブソン)を参照されたい)、及び(2)電界により回転可能な2色性着色剤球体(例えばXerox(登録商標)Gyricon(商標))である。これらのエレクトロクロミック着色剤は各々、概ね半球ずつの2色性であり、各マイクロカプセルの一方の半球はディスプレイの背景色(例えば白色)をなし、これに対して他方の半球は印刷又は画像色(例えば黒又は濃青色)をなす。これらの着色剤は、各画素において所望の半球色が観察者に対面するように、電界によって移動又は回転される。図1BB及び図1CCは、このタイプの従来技術を概略的に示す。
【0012】
電子インクは最近開発されたものである。イー・インク社(米国マサチューセッツ州ケンブリッジ、www.eink.com)は、何らかの表面上にコーティングできる液状の電子インクを提供している。そのコーティングの中には小さなマイクロカプセルが存在する(例えば直径が約30μm〜100μm、即ち概ね人間の髪の毛の太さであり、それゆえ肉眼で明瞭に視認することができる)。図1BB(従来技術)に示されているように、各マイクロカプセル6は暗色の染料8内に懸濁された白色の粒子7を有する。電界がかけられ、第1の極性に維持された場合、白色粒子はマイクロカプセルの一端に移動し、その位置で可視状態になる、これによりその部分において、表面は白色に見えるようになる。キャリヤ9が設けられている。逆の極性の電界がその粒子をマイクロカプセルの他端に引き寄せると、粒子はその場所で染料によって実質的に隠される。これによりその部分において、表面は暗色に見えるようになる。
【0013】
Xerox Gyricon(ゼロックス・ジリコン)球体は所定の特許で説明されている。図1CC(従来技術)は、このタイプの球体の概略図である。米国特許第4126854号(シェリドンの854号)は、ゼータ電位の異なる着色された半球体を有する2色球体を記載している。球体はその電位によって、アドレス指定可能な電界の作用の下に、誘電性流体内で回転できる。米国特許第4143103号(シェリドンの103号)は、透明ポリマー材料内の2色球体を用いるディスプレイシステムを記載している。1997年2月18日に発行された「SOME USES OF MICROENCAPSULATION FOR ELECTRIC PAPER」と題する米国特許第5604027号(シェリドンの027号)は、プリンタを記載している。基本的に、各球体10(この場合も直径は約30μm)は、典型的には一方が黒色、他方が白色で、それぞれに異なる電気的特性を有する2つの半球体11及び12を有する2色ボール13を有する。各ボールは球形シェル14内に封入され、ボールとシェルの間の空間15は液体で満たされて微小球体が形成され、ボールは電界に応じて自在に回転する。これらの微小球体は、シートとして形成することができる基体内に混合可能であり、或いは表面上に塗布されることもできる。その結果、印加され保持される電界によって画像を形成可能なフィルムが形成される。現在、このGyricon球体を用いる画像素子(「画素」)の解像度は、約100dpiに制限されている。
【0014】
このように、公知の従来技術では、個々の着色剤素子がほぼ半球ずつの2色性を有し、一方の半球体はディスプレイ背景色(例えば白色)に加工され、他方、第2の半球体は印刷又は画像色(例えば黒又は濃青色)に加工される。テキストデータ及び画像データに従って、これらの微小球を用いる着色剤素子は、各画素において所望の半球色が視認者に対面するように、電界によって移動又は回転される。商業的な実用形態では、これらの着色剤から形成されるディスプレイは、コントラスト及び色が比較的劣ることに留意されたい。マイクロカプセルを含む層は、厚みが大体少なくとも3又は4マイクロカプセル分である。層の表面を通過して入射された光は、裏側の半球体から内部反射され、色(例えば黒及び白)の混合を生ずる。従ってその画像は、例えば薄い灰色の背景に対して濃い灰色でレンダリングされる。このように、これらのテクノロジでは、着色剤が2つの不透明色の間でのみ切り替わり、所与の画素について、種々の着色剤層から光を通過させることができないので、高解像度のカラーディスプレイに対する将来的な拡張性及びスケーリングは提供されない。さらに、現状の着色剤テクノロジでは、着色剤マイクロカプセル球体のサイズが比較的大きいため、ハードコピー印刷物に対して視覚的に劣った表示解像度しか得られない。またさらに、球体は2色性であり、応用形態は厳密なフルカラーディスプレイではなく、2色に制限される。さらに、十分な色濃度を達成するためには、多数の層を用いて球体をオーバーラップさせる必要があるが、これは画素解像度を制限する。さらに別の制約は、これらの着色剤テクノロジでは、標準的なCRTテクノロジ及びLCDテクノロジに比べて、画素切替え(スイッチング)時間が劣ることである。これらの各テクノロジは、イソパラフィンのような誘電体材料内における着色剤質量を電気泳動で移動させる。実用的な電界強度下での2色性球体の色回転速度は、20ミリ秒(ms)以上の範囲にある。この速度では、電極アレイを用いる300dpiの解像度のプリンタは、毎分1ページ未満の印刷速度に制限されることになる。大きな球体着色剤は、その大きさに応じて厚くなる(>100μm)キャリヤ−着色剤層を介して十分な電界を得るために、高い切替え電圧(例えば80〜200V)を必要とする。そのような切替え電圧は、ハイエンドのマトリクスLCD装置のコストと同程度に、画素駆動電子装置に高いコストを付加する。従って、マイクロカプセルタイプの着色剤の開発に関与する者は、これらの問題及び他の関連する問題を解決に取り組んでおり、本発明により記載されるような、新しい分子レベル技術には焦点は当てられていない。
【0015】
【発明が解決しようとする課題】
マイクロカプセルテクノロジには制約がある。Gyriconマイクロカプセルテクノロジは、マイクロカプセル球体の比較的大きなサイズ、典型的には直径が30μm以上のサイズに起因して、ハードコピーと比べて解像度が制限される。図1DD(従来技術)に概略的に示されるように、適切な色濃度を達成するためには、多数の層を用いて球体を重ね合わせることが必要とされ、画素解像度は約300〜400ドット/インチ(「dpi」)に制限される。これに対して、視認条件にもよるが、人間の肉眼は1000dpi以上まで識別可能である。マイクロカプセルから形成されるディスプレイは、コントラスト及び色が劣る傾向があるが、これは、マイクロカプセルの表面層を通過して入射する光が、下方にあるマイクロカプセルから反射され、それにより色の混合が生ずるためである。またやはり図1DDに示されるように、各マイクロカプセルからの後方反射に起因して、画像コントラストの低下が生ずる。媒体表面コーティング16内の第1のマイクロカプセル(ここでは、半球ごとに着色された黒色と白色の球8として示される)層のカプセル間の隙間に入射し通過する光は、反射され、カプセルの背面、及び下側のマイクロカプセル層の半球の表面によって吸収される。マイクロカプセルの外側全体が一様な色を有していた場合(標準的な印刷プロセスにおいて用いられる顔料及び染料の場合に当てはまる)に生ずるであろうものと比較すると、画像中の色濃度の低い領域はより暗くなり、色濃度の高い領域はより明るくなる。従って、2色性のマイクロカプセルの層を用いる装置では多くの場合、実際には画像は薄い灰色の背景に対して濃い灰色でレンダリングされる。
【0016】
高いコントラストを達成することに対する別の制約は、図1BBに示されるタイプのマイクロカプセルにおいて、カプセル封入された2つの構成成分が重なり合い、どちらの着色剤が視認者に対面するかに関係なく、他方の着色剤も視認可能となることである。白色粒子7及び暗色染料8は特性が限定されているため、白色の半球が表示される(視認者に向けて回転される)とき、白色粒子間の隙間の空間を通して依然として染料が視認される。同様に、染料の半球体が表示されるとき、染料固有の透過性によって、下方の白色粒子から視認者に向けて光が反射され、染料の色が薄められる(例えば、濃青色から中間的な青色)。言い換えると、白色の100%の反射及び100%の吸収はいずれも達成されない。図1CCに示されるようなマイクロカプセルのタイプでは、半球体はそれぞれ不透明な黒色と不透明な白色であるが、図1DDに示されるように、光はボール13に衝当する際に球体10の間にも入射し、この場合にもコントラスト及び解像能力が制限される。
【0017】
さらに、マイクロカプセルテクノロジは液体内の質量の電気泳動的移動に基づくので、標準的なCRT及びLCD画面に比べて、画素の切替え時間が劣る。色の切替え(スイッチング)は、固体粒子及び液体を、前向きの半球体から後向きの半球体へと相対的に回転又は並進移動させることを含む。色の切替え時間が相対的に遅いことは単に、球体内のマイクロカプセルの質量及び流体の抗力に由来する。質量及び流体の抗力の組み合わせは、所与の画素において色の切替えを行うのにかかる時間を規定する。これはさらに、このテクノロジを用いた媒体を用いるプリンタの切替えエネルギー及び描画(イメージング)速度、即ち「スループット」の両方を規定する。
【0018】
さらにまた、これらの比較的大きなマイクロカプセルは、比較的厚い(100μm以上)多数のマイクロカプセル層16を介して十分な電界を得るために、高い切替え電圧(例えば20〜200V)を必要とする。そのような切替え電圧は、画素駆動電子装置にさらなるコストを付加し、そのコストはLCD画面のコストに匹敵してしまう。
【0019】
さらに、これらのマイクロカプセルテクノロジは、高解像度のカラーディスプレイへの将来的な拡張性を提供しない。なぜなら着色剤は2つの不透明色の間でのみ切り替わり、ある所与の画素について、種々の下側着色剤層から光を通過させることができないためである。言い換えると、マイクロカプセル着色剤は本来の染料ではなく、特定の染料吸収帯域の外側で着色剤が透明になり、層状にされた種々の化学組成によってフルカラー画像のレンダリングが可能になるにすぎない(例えばカラーフィルム及び印刷技術において用いられているように)。従って、フルカラーに適合させるためには、マイクロカプセル着色剤を用いた装置はモザイクパターンを有するものに限定され、それがさらに解像度、最終的には印刷品質を制限する。
【0020】
さらに、マイクロカプセル自体が難しい製造プロセスを必要とし、比較的耐久性が悪いという問題点がある。マイクロカプセルは本質的に薄い壁を有しており、破壊されやすく、液体漏れを起こした場合には着色剤の機能性が破壊される。壁の厚みは典型的には約1〜2μm(又は直径の約10%)である。マイクロカプセルの破壊は、媒体表面に外部からかけられる圧力、媒体の折りたたみ、及び媒体を形成するために用いられるコーティングプロセス自体によって生じる恐れがある。カプセル破壊及びその後のイメージング機能の消失の危険性を低減しなければ、これは折り畳んだり、或いは接触についてさえも、ディスプレイ媒体の能力を制限することになる。
【0021】
上記の制約の少なくとも幾つかを持たない、現時点で利用可能な電子情報表示機構は存在しないと結論付けることができる。本発明に関してさらに具体的には、現在の印刷及び表示のための最新テクノロジの集合の中には、商用のハードコピーの解像度、コントラスト及び耐久性を可能にする書換え可能な媒体は存在しない。さらに、商用で印刷された紙のフルカラー品質の体裁及び印刷物の読みやすさを有する書換え可能媒体は存在しない。従って、新規な改善された印刷用媒体が必要である。
【0022】
さらに、明るい周囲照明時に良好な視認性を有し、消費電力が小さい電子書換え可能な媒体は存在しない。
【0023】
さらに最新技術では、別の形態の「書換え可能媒体」として、デジタルデータのための大容量記憶媒体がある。従来の大容量記憶媒体は、磁気表面コーティングを有するディスク及びテープを含む。ディスク及びテープにおいて用いられる表面コーティングは一般に、薄膜に堆積された、又はポリマー中に懸濁された、強磁性結晶層を含む。外部から印加される磁界に暴露された際、強磁性結晶は残留磁界を有するようになり、これは外部磁界が消失した場合でも安定なままである。この表面コーティングには、その表面コーティングに対して平行移動される(ディスクの回転又はテープの走行により)磁気書込みヘッドによって、データ記憶のために書込みが行われる。データは表面上に、残留磁界のパターンの形で格納される。そのデータは、符号化されたコーティング表面に対して平行移動される磁気読取りヘッド(例えば電気コイル)によって復元され、残留磁界パターンは元の電子データ形式を表す、振動する電流の流れに変換される。磁気的に記録されたデータの面密度及び磁界強度は、強磁性結晶領域のサイズによって決定される。別の形態では、デジタルデータは、光反射ディスクの表面上にレーザ融除又は印像によって形成されるピットの形で、CD−ROM媒体上に格納される。このデータはディスクが回転する際に、その表面から光センサへと光を反射することによって、光学的に読み取られる。検出される信号は、光がピット及び連続したピット間の反射性領域に交互に衝突するのに応じて変化する。ディスク上のデータ記憶密度は、融除されたピットと、間に介在する反射性領域のサイズの関数である。書込みはピットを形成する際に材料の物理的な融除を必要とするので、一般にデータはCD−ROMから、書き込み速度よりも著しく速い速度で読み取ることができる。しかしながら現時点では、書込み可能CD技術は初期段階にあり、高品質の装置は比較的高価である。
【0024】
記憶媒体上により多くのデータを格納することに対するニーズは際限なく増え続けており、これに伴い、従来の磁気及びCD−ROM媒体を通して利用可能なものより非常に小さく、高いデータ密度能力を生成する、書換え可能なデータ記憶素子への要望が高まっている。また、より速いデータ速度でデータを書き込むことも必要とされている。
【0025】
種々多様な具現化形態で適用可能な、情報を表示する分野のための新しいテクノロジが必要とされている。分子サイエンスは、消去可能な書込み、ならびにデータの記憶、復元及び表示のために現時点で利用可能な従来の方法及び装置が有する欠点の、全てではないとしても、大部分に対する解決策を約束する。しかして本発明は、分子レベルの解決手法、即ち分子レベルの光スイッチの形の分子システムを提供する。これはディスプレイ、電子ブック、書換え可能媒体、電子レンズ、ウィンドウやミラーの電気制御式着色、光ファイバ通信のための光クロスバー交換機等を形成するよう、容易にアセンブル可能である。
【0026】
分子サイエンステクノロジにまで及ぶ本発明の特質に起因して、何が「印刷媒体」であり、何が「書込み表面」であり、また何が「表示画面」(文脈に最も適合するように簡単に言えば「ディスプレイ」又は「スクリーン」)であるか、という問題が生じることも明らかであろう。いくつかの実施形態では、こうした装置や使用方法が従来のどの定義に該当するかを区別することが、明らかではない場合もある。それゆえ、本発明を詳細に説明するに際して、そのような特定の従来の用語を使用しても、それは本発明の範囲に制限を加えることを意図したものではなく、またそこから、そのような制限が暗示されるものでもない。そして従来のディスプレイに関してさらなる限界があるとすれば、それらもまた本発明の必要性、目的及び利点を理解するのに役立つものである。
【0027】
本発明の目的は、再利用可能で、ハードコピー印刷媒体に匹敵する高いコントラストと非常に高い解像度を有し、書換え可能な印刷媒体、及びそれを製造するための方法を提供することである。
【0028】
【課題を解決するための手段】
基本的な態様において、本発明は基体のための着色剤を提供し、その着色剤は分子システムを含み、その分子システムはエレクトロクロミックな切替え(スイッチング)可能分子を含み、かかる分子の各々は少なくとも2つの光学的に識別可能な状態の間で選択的に切替え(スイッチング)可能である。この分子システムは基体上に分布させることができ、それにより消去可能な書込み可能表面が形成される。別の態様では、本発明は、キャリヤと、そのキャリヤ内にある、エレクトロクロミックな切替え可能分子を含む組成物からなる、基体のための書込み可能−消去可能コーティングを提供する。その分子はそれぞれ、少なくとも2つの光学的に識別可能な状態の間で選択的に切替え可能であり、その分子は基体上に分布させることができ、それにより消去可能な書込み可能表面が形成される。本発明の別の態様は、基体と、その基体に付着される分子着色剤コーティングの少なくとも1つの層からなる消去可能な書込み媒体である。このコーティングの分子は少なくとも2色性であり、局在化された電界の作用によって着色状態の間で選択的に切替え可能である。本発明のさらに別の態様は、電界によりアドレス指定可能な書換え可能媒体に書込みを行うための方法である。この方法は、分子着色剤コーティングの少なくとも1つの層を有する基体を準備することを含み、このコーティングの分子は少なくとも2色性であり、局在化された電界の作用によって着色状態の間での切替えを受ける。分子着色剤コーティングの層は基体全体に分布され、媒体上に画素を形成する。局在化された各電界を選択的に制御することにより、画素を電気的にアドレス指定することで、媒体上にドキュメントコンテンツが形成される。本発明の別の態様は、基体と、分子着色剤コーティングの少なくとも1つの層からなるデータ記憶デバイスである。そのコーティングの分子は少なくとも2色性であり、局在化された電界の作用によって、少なくとも2つの電気光学的な状態の間で双安定な切替えを受ける。本発明のさらに別の態様は、書換え可能な媒体を製造する方法であり、その方法は、基体を準備し、その基体に書換え可能な層を形成することを含む。書換え可能な層、即ち書込み可能で消去可能な層は分子システムによって形成され、そのシステムはエレクトロクロミックな切替え可能分子を含み、その分子は各々、少なくとも2つの光学的に識別可能な状態の間で選択的に切替え可能である。
【0029】
本発明の電子媒体の重要な利点及び新規な特徴は、レンダリングされる画像が、従来の非常に解像度の高い、紙上のインクと同等以上の良好な品質を有し、写真印刷と同様に良好にレンダリング可能なことである。
【0030】
課題を解決するための手段として上記した概要は、本発明の全ての態様、目的、利点及び特徴の包括的なリストであることを意図したものではなく、また本発明の範囲に関する制限がそこから暗示される訳でもない。この概要は37CFRの1.73及びMPEPの608.01(d)の規定に従って、将来の研究において本特許の理解を容易にするのを補助するために、一般の人々、特に本発明が関連する特定の技術に関心を持つ当業者に本発明の特質を知らせることを目的として与えられたにすぎない。本発明の目的、特徴及び利点は、以下の説明及び添付の図面を検討すれば明らかになるであろう。図面全体を通して、類似の参照符号は類似の特徴部分を表している。
【0031】
【発明の実施の形態】
37CFRの1.84(u)に従って、後段の補足的な説明に用いられる図面との混同を避けるために、本特許出願の図面は二重の大文字の添え字を用いている。
【0032】
本明細書において参照される図面は、具体的に注釈される場合を除いて、縮尺どおりに描かれていないことを理解されたい。
【0033】
以下では、本発明の特定の実施形態への参照が詳細になされる。それらの実施形態は、現時点で本発明者らによって熟慮された、本発明を実施するためのベストモードを示している。必要に応じて、別の実施形態も簡単に記載される。以降において用いられるサブタイトルは、単に便宜上のものである。本発明の範囲を制限することを意図したものではなく、またそのような制限を暗示するものでもない。
定義
以下の用語及び概念は、本発明の説明及び後段の補足説明の両方に当てはまる。
【0034】
本明細書で用いられる用語「自己集合性」は、システムの構成成分の独自性によって、自然に何らかの幾何学的パターンを取るシステム(系)を指す。システムはこの構成を取ることにより、そのエネルギーについて少なくとも局所的な最小値(安定性)を達成する。例えば自己集合性の分子は分子間引力により、秩序正しく安定に、分子集団へと自発的に凝集する。
【0035】
用語「一度だけ構成可能」は、酸化又は還元反応のような不可逆的なプロセスを介して、切替(スイッチ)が一度だけその状態を変更可能であることを意味する。そのような切替は例えば、プログラマブル・リードオンリーメモリ(PROM)の基礎をなしうる。
【0036】
用語「再構成可能」は、酸化又は還元反応のような可逆的なプロセスを介して、切替(スイッチ)が何度もその状態を変更可能であることを意味する。言い換えると、この切替は、ランダムアクセスメモリ(RAM)内のメモリビット又はディスプレイ内の色画素のように、何度も開閉できる。
【0037】
分子に適用される用語「双安定」は、分子が、エネルギー(又は活性化)障壁によって隔てられた2つの比較的低いエネルギー状態(局所的最小値)を有することを意味する。その分子は、ある状態から他の状態に不可逆的に切り替えられ(一度だけ構成可能)、又はある状態から他の状態に可逆的に切り替えられる(再構成可能)。用語「多安定」は、3つ以上のそのような低エネルギー状態、即ち局所的最小値を有する分子を指す。
【0038】
本発明による着色剤分子の用語「二モード性」は、高速ではあるが非持久性の切替えのための、活性化障壁がないか、又は低い場合を含むことを意味する。この後者の状況では双安定性は必要とされず、分子は電界によって1つの状態に切り替えられ、電界が除去されると元の状態に戻る。そのような分子を「二モード性」と呼ぶ。実際には、これらの形態の二モード性着色剤分子は「自己消去型」である。対照的に、双安定性着色剤分子では、着色剤分子は電界を除去されても状態を保持したままになり(持久性スイッチ)、その場合の活性化障壁の存在は、分子を切り替えて以前の状態に戻すために、逆の電界をかけることを必要とする。また、本発明の態様を記述するための用語として用いられる「分子着色剤」は分子レベルで作用するものであり、染料のような他の化学的な系統から区別されるべきである。言い換えると、「分子着色剤」は、後段の補足説明に記載の着色剤分子及びそれらの均等物が、本発明に従って用いられることを示す。
【0039】
ミクロンスケールの寸法とは、1μm〜数μmの大きさの範囲の寸法を指す。
【0040】
サブミクロンスケールの寸法とは、1μm〜0.05μmの範囲の寸法を指す。
【0041】
ナノメートルスケールの寸法とは、0.1nm〜50nm(0.05μm)の範囲の寸法を指す。
【0042】
ミクロンスケール及びサブミクロンスケールのワイヤとは、0.05〜10μmの寸法を有する幅又は直径と、数10nm〜1μmの範囲を有することができる高さと、数μm以上の長さとを有する棒状又はリボン状の導体又は半導体を指す。
【0043】
「HOMO」は、「最高被占軌道」の一般的な化学的頭字語であり、一方「LUMO」は「最低空軌道」の一般的な化学的頭字語である。HOMO及びLUMOは分子内の電子伝導の役割を果たし、HOMO及びLUMO並びに他のエネルギーが近い分子軌道の間のエネルギー差は分子の色について役割を果たす。
【0044】
本発明の文脈で用いられる「光学的切替(光学的スイッチ)」は、人間の眼によって検出可能な範囲内又は範囲外の両方の波長における分子の電磁特性の変化を含む。これは例えば、遠赤外線(IR)から深紫外線(UV)までの範囲にわたる。光学的スイッチングは、電磁放射線の吸収、反射、屈折、回折及び散漫散乱のような特性の変化を含む。
【0045】
用語「透明性」は、可視スペクトル内において、着色剤を通過する光が、着色剤がスペクトルを吸収する領域内を除いて、光学的に妨害も変更もされないことを意味するものと定義される。例えば分子着色剤が可視スペクトル内の光を吸収しない場合には、その着色剤は無色透明な透過性を有するように見えるであろう。
【0046】
本明細書において用語「全周囲照明視認性」は、眼が反応する任意の周囲照明条件下における視認性と定義される。
【0047】
原則として、本発明の内容に沿って用いられる「媒体」は、可搬性であるか固定されるかを問わず、「双安定性」分子が用いられた本発明の分子着色剤又はその分子着色剤を含むコーティングを含むか又はそれと共に積層される、任意の表面を含む。例えば、一枚の紙の全ての特性を有する可撓性シート、及び機器(冷蔵庫のドアであろうと、分子着色剤を用いるコンピューティング装置であろうと)の書込み可能な表面の両方が挙げられる。本発明の文脈で用いられる「ディスプレイ」(又は「画面」)は、「二モード性」の分子を用いる任意の装置を含むが、これは必ずしも双安定性分子である必要はない。媒体タイプのデバイスがどこまでで、ディスプレイ機構がどこからかに関する境界は不明瞭であるので、本発明の範囲に関して、「媒体」又は「ディスプレイ」と指定することで任意の特定の実施形態に制限することは意図しておらず、またそれによって制限が暗示されるべきでもない。
【0048】
詳細な説明及び後段の補足説明を読むと明らかになるように、本発明によれば、「分子」は単独の分子素子、例えば光学的スイッチを意味するとも解釈でき、又は文脈によっては、分子レベル素子の大規模なアレイ、例えば実際には自己集合化が生じる際に1つの分子として共有結合される、個別にアドレス指定可能な画素サイズの光学的スイッチのアレイの場合もある。従って、いくつかの分子システムは超分子を含み、その場合には、そのシステムを形成する個々の分子素子の選択的な領域の変化を利用可能であることが理解されねばならない。本明細書において用いられる用語「分子システム」は、例えば規則的なアレイの画素パターンとして体系的に用いられる単独の分子素子、及び分子レベルで結合される個々の素子の両方を指す。これらの用語を交換可能に用いることにより、本発明の範囲に関する制限が意図されるわけではなく、それが暗示されるべきでもない。
概要
図2AAに部分的に拡大して概略的に示されるように、本発明の一実施形態による電子印刷媒体200は、背面基体202の上側に付着されるエレクトロクロミックコーティング201を含む。本発明の媒体200は、エレクトロクロミック分子着色剤コーティング201層(細線による図示は、以下で説明するように実際にその層を透明にできることを示し、またその層が非常に薄く、例えば約数μmであることを示すために用いられる)を用いており、コーティング201は双安定性のエレクトロクロミック分子203(大きく拡大されたドットによって表される)を含む。この分子は電界を印加すると配座的な変化を受け、実際上このコーティングの選択的な局所領域を1つの色相から別の色相に変化させる。本発明を説明するために、エレクトロクロミック分子自体は、図2BBにおいて簡単なドット203として示す。しかしながら実際には、着色剤の1立方マイクロメール当たりに文字どおり数百万ものそのような分子が存在する(結合(リンク)されていないシステムの場合)ことを理解されたい。これは、リンクされた分子システムにおいて、着色剤の1立方マイクロメートル当たりに数百万もの分子光スイッチ素子が存在するとも考えられる。
【0049】
分子着色剤はその分子スケールにおいて空間的にアドレス指定可能であるので、着色剤分子は任意選択的に、基体の分子と混合される場合があることに留意されたい。基体着色及び製造を一体にしたプロセスは、印刷媒体の技術分野においてよく知られている。
エレクトロクロミック着色剤のための2色性分子
書換え可能媒体に適した分子着色剤を開発するためには、化学的な酸化及び/又は還元を回避し、第1の状態から第2の状態に適当な速度で切り替わることができ、リアルタイム又はビデオ速度での書込み−消去の応用形態を可能にするように可逆的であり、種々の光学デバイスで用いるために適合されることができる分子システムが必要とされる。
【0050】
本発明は、光スイッチのために分子を用いる可能性を導入する。そこでは分子の状態が変化すると色が変化する。この特性は、多種多様な書込み−読出し−消去デバイス、又は色を変化させることができるか、又は透明から有色に変化させることができる材料によって可能になる任意の他の応用形態に用いることができる。本発明は、いくつかの新しいタイプの分子光学特性スイッチング機構を導入する。即ち(1)分子のバンドギャップを変化させる、分子の少なくとも1つの回転可能な部分(ロータ)の電界(E)によって引き起こされる回転、(2)バンドギャップを変化させる化学結合の変化による、電界によって引き起こされる分子の電荷分離又は再結合、(3)分子の折りたたみ又は延伸による、電界によって引き起こされるバンドギャップ変化である。こうした素子又はデバイスは一般に、電界素子であると考えられ、電気化学素子とは区別されるべきである。
【0051】
2001年4月27日に出願された「MOLECULAR MECHANICAL DEVICES WITH A BAND GAP CHANGE ACTIVATED BY AN ELECTRIC FIELD FOR OPTICAL SWITCHING APPLICATIONS」と題するZhang等による米国特許出願第09/844862号は、その一部を後段の補足説明で本明細書に取り入れるものであるが、本発明に従って用いることができる2色性分子の複数の実施形態を詳細に記載している。
【0052】
後段の補足説明に記載されるようなテクノロジに関して言うと、電子印刷媒体のためのマイクロカプセルテクノロジ(前述の従来技術の項を参照)よりも格段に優れた、エレクトロクロミック分子着色剤の著しい利点は、標準的な従来のハードコピー品質、印刷コントラスト、画像解像度、切替え(スイッチング)速度、及び色の透明性の実現である。そのようなエレクトロクロミック分子着色剤の使用により、色のモード、色濃度及びコーティング層の組込み可能性において、従来の紙に染料で印刷する形態に類似した、読取り可能なコンテンツが提供される。図7AAには、図1DDに示されるような半球マイクロカプセルテクノロジの吸収−反射を組み合わせた物理的特性との完全な相違が示されている。そこに示すように、高色濃度状態701(例えば黒色)では、エレクトロクロミック分子着色剤201は全ての光入射角及び位置において均一に光を吸収し、従来どおりのインク色密度を提供する。透明状態703(図7AA、右側)では、本発明の2色性分子203は可視光を感知可能な程度には吸収せず、媒体基体202はコーティング層201を通して完全に見えるようになる。従って観察者には、エレクトロクロミック分子着色剤の画像は、従来の紙上のインク印刷物において見られる画像と実質的に同じように見える。即ち、もしあるとしても、特定の高濃度色のグラデーションは肉眼では見ることができない。本明細書で用いられる用語「エレクトロクロミック分子着色剤」は特に、例示した黒の状態以外の所望の合成色を達成することができる層を形成すべく混合された、複数の異なる着色剤分子を含むことを意図している。
【0053】
加えてエレクトロクロミック分子着色剤は、その分子(オングストローム)スケールで空間的にアドレス指定可能であり、マイクロカプセル着色剤の数十ミクロンスケールよりも非常に高い画像解像度を可能にすることに留意されたい。上記のように、分子は双安定又は二モード性の場合がある。双安定のとき、例えば印刷媒体の一枚のシートであるように見える実施形態では、画素のスイッチングのために種々の印刷による作動方法が利用可能である。本発明による双安定性分子着色剤の場合、電極のアドレス指定可能なマトリクスを通して保持用の電界をかけておく必要はないが、そのようなマトリスクを用いても構わない(シート全体をフラッシュ書込み−消去し、その後電力を節約するために電界をオフにする場合のように)。二モード性で、それゆえ自己消去する実施形態では、保持用の電界を有する電極アレイが必要である。画素の印刷用に適合可能な典型的な分子ワイヤが、Kuekes等による、「MOLECULAR WIRE CROSSBAR MEMORY」と題する米国特許第6128214号に記載されている(この特許は本出願人に譲渡されており、その内容はここでの参照によって本明細書に取り入れられる)。
【0054】
さらに、媒体200の画素領域に行きわたったエレクトロクロミック分子着色剤の色切替え時間は、マイクロカプセル着色剤の場合よりも著しく短く、非常に高速の描画速度を可能にする。これは主に、着色剤のエレクトロクロミック分子が実質的に静止しており、電子の移動、または分子要素のねじれのいずれか、又はその両方を通して色を変化させるためである。それぞれの場合について、任意のアドレス指定された画素について移動する全質量は、マイクロカプセル着色剤に必要とされるものより何桁も小さい。付加的な粘性抗力成分が存在しないことにも留意されたい。
【0055】
さらに、後に詳細に記載されるような、エレクトロクロミック分子着色剤コーティング層(単数又は複数)を含む電子媒体200は、従来の媒体上の印刷物と同様の耐久性を有し、マイクロカプセル着色剤でコーティングされた媒体のように、製造又は使用時に外部から加えられる圧力による着色剤破壊を受けることはない。
【0056】
従って、本発明の有利な特徴は、適合可能な書換え可能表面のためのコーティング、又はフィルムとして用いる形態の2色性分子を含む、着色剤材料層を有することである。本発明の別の有利な特徴は、固定された表面に対するものをも含めて、書換え可能な媒体を製造するために用いられる液状の分子着色剤を提供することである。
2色性着色剤を用いる電界によりアドレス指定可能な書換え可能媒体
さて図2AA及び図2BBについて考えてみると、本発明は第1の実施形態では、2色性のエレクトロクロミック分子着色剤を用いる、電界によりアドレス指定可能な書換え可能媒体200を含む。着色剤は分子レベルで活性であるので、多数の態様で形成することができる。自己集合化の実施形態、含浸を用いて形成される実施形態、又は基体202上に液体、塗料、インクまたは別の適合した形態の液体ビヒクルを用いてなるコーティングの実施形態は、全て本発明の範囲内にある。分子着色剤は自己集合化システムの場合があり、又は従来の堆積及び乾燥(又は硬化)技術を用いて基体に着色剤を塗着するための担体又はビヒクルを有する場合がある。これら種々のタイプのビヒクルについては以下でより詳細に説明する。
【0057】
本発明の媒体200は、基体202の種々の材料及び形態を考慮する。一例として、プリンタ用紙及び未コート紙のような応用形態の用途に向けられる際には、コーティング201は、市販の事務用その他の印刷可能な媒体と同様の大きさ、厚み及び形状の、プラスチックその他の可撓性で耐久性がある材料の基体202に付着される場合がある(Kent D. Vincentによる1997年5月28日に出願の「PRINT METHOD AND APPARATUS FOR RE-WRITABLE MEDIUM」と題する米国特許第5866284号、及びやはりVincent等による米国特許出願(本出願人整理番号10010539)を参照されたい)。実施される特定の基体202の組成は特定の応用形態に依存し、特にコーティング201の層を介して印加される電界を維持又は形成する際に、基体が果たす役割に完全に依存する。実際、分子コーティングは、少なくとも双安定性の分子システム形態では、書込み又は画像を形成することができるどのような表面についても用いることができる。
分子システムによる消去可能に書込み可能な表面
本発明に関連する好ましい実施形態では、媒体200のコーティング層201は、電界に反応して高い色濃度状態(以下単に「着色状態」という)と透明状態、即ち2つの極めて対照的な(コントラストをなす)着色状態、例えば黒色と黒色以外のカラー色(例えば黄色)を有するエレクトロクロミック分子203(図2AA〜図2BB)を、自己集合性分子、又は別の化学的成分である「ビヒクル」との組み合わせにおいて含有する。ビヒクルは、結合剤、溶媒、流動添加剤、又はその時々の実施に適した他の一般的なコーティング添加剤を含んで構わない。
【0058】
好ましくは、コーティング201の着色剤は、第1の電界が印加されるときに着色状態(例えば黒色)になり、第2の電界が印加されるときに透明状態になる。コーティング201、より具体的には媒体200のアドレス指定可能な画素領域は、好ましい実施形態では双安定性である。言い換えると、一旦セット又は書き込まれると、電界の作用を受けた「有色(着色)画素」分子は、「印刷されたコンテンツ」を形成し、第2の電界を印加して、電界の作用を受けた画素の分子を透明状態に戻すことによって画像が意図的に消去されるまで、現在の印刷された状態を保持する。この場合、所与の何れの画素内にも、そのように切り替えられる分子は無数に存在しうることが理解されよう。印刷されたコンテンツを保持するために保持用の電界は必要とされない。
【0059】
代替的には、着色剤は単安定性であってもよく、局在化された電界が印加された場合には局在化された第1の色状態(例えば透明)を獲得し、その後に電界が存在しなくなると第2の色状態(例えば黒色)へと構成的に緩和され、かくして2色性及び自己消去性を有する。
【0060】
構成的には非常に異なるが、本発明のコーティング組成は、従来のコーティング配合技術に類似している。着色剤の成分は、レオロジー及び印刷/コーティングのプロセス及び基体材料における接着の必要性に依存する。幾つかの実施形態では、着色剤の層は自己集合性である。典型的には、コーティング201の層は、基体202上にコーティング201の層を形成するために堆積される薄膜の固体含有量の1%〜30%を構成する。この量は通常、所望の画像色濃度によって決定される。基体202上に乾燥又は硬化されたコーティング201の層を形成するために、コーティング201はポリマー結合剤を含む場合があり、基体内にはエレクトロクロミック分子着色剤が懸濁される。代替的に、ある特定の既知の蒸着堆積方法又は他の薄膜堆積方法では、固形分含量として最大で100%の量の着色剤を含む場合がある。その方法においては、着色剤及び関連するビヒクルが堆積される。堆積−蒸発方法の場合には、関連するビヒクルは存在しないであろう。場合によっては、着色剤は堆積されたコーティング201の層内で予め配向され、印刷コンテンツを書き込み、消去するために用いられる電界との最適な整列状態(アライメント)が得られるようにされる。そのような配向は、堆積されたコーティング201の層を、媒体200を介して同時に印加される電界の作用の下で固化することにより達成されうる。1つの特定の実施形態では、コーティング201は、エレクトロクロミック分子着色剤と、紫外線(「UV」)硬化可能な液体プレポリマー(例えば(メタ)アクリレート又はビニルモノマー/オリゴマー)を含む。この場合にポリマーは、紫外線放射を受ける際に、媒体基体202上にその場で形成される。そのようなプレポリマーはコーティングの分野においてよく知られている。
【0061】
第2の特定の実施形態では、コーティングの固化は、エポキシ、ウレタン及び熱的に活性化されるフリーラジカル重合に共通する、熱的に活性化されるビヒクルの化学反応を通して行われる。
【0062】
第3の特定の実施形態では、コーティングの固化は、ビヒクルを部分的又は全体に蒸発させることにより行われる。
【0063】
また着色剤は、自己集合性格子構造を可能にする着色剤/コーティング設計を通して自己配列される場合もあり、その場合、各着色剤モノマーは隣接する着色剤モノマーと整列状態になる。そのような設計及び格子構造は、例えばデンドリマーや結晶に共通している。自己集合化のためのプロセスは、よく知られているラングミュア薄膜堆積技術及び気相堆積技術のような、逐次的な単層堆積方法を含みうる。
基体
本発明における媒体の任意の特定の実施形態の構成は、図3AA、図4AA及び図5AAに概略的に示され、以下にさらに詳細に記載されるような書込み手段に依存する。前述した幾つかの同時係属中の米国特許出願において、本出願人は、書き込み機器、及び分子着色剤を用いて書込みを行うための装置の詳細な説明を行っている。媒体の表面に垂直な電界を用いる実施形態の場合(例えば、図4AA及び図5AAを参照)、基体202は、着色剤コーティング201の層の誘電率及び導電率と相補的な誘電率及び導電率を有する材料から製造される。全体的に見れば、基体は可撓性であるか、半可撓性であるか、又は剛性である。基体はまた、薄膜(フィルム)、箔(フォイル)、シート、布帛、又はより頑丈な予め成形された3次元物体のような構成を有することができる。基体は、特定の実施形態の必要性に応じて、導電性、半導電性又は絶縁性であってよい。同様に、基体は特定の実施形態の必要性に応じて、光学的に透明、半透明または不透明、又は有色または無色の場合がある。図3AAに示されるような片面電極の実施形態の場合に適した基体材料は、例えば、紙、プラスチック、金属、ガラス、ゴム、セラミック、木、合成及び有機繊維、ならびにこれらの組み合わせからなる場合がある。適切な可撓性シート材料は、例えば、樹脂含浸シート(例えばAppleton Papers Master Flex(商標))、合成繊維シート(例えばDuPont(商標)Tyvex(商標))、プラスチックフィルム(例えばDuPont Mylar(商標)、General Electric(商標)Lexan(商標)等)、エラストマーフィルム(例えばネオプレンゴム、ポリウレタン等)、織布(例えばコットン、レーヨン、アクリル、ガラス、金属、セラミックファイバ等)及び金属フォイルなどであり、繰返しイメージングするだけの耐久性を有することが好ましい。図4AA及び図5AAに示されるような両面電極の応用形態に適した基体材料も、同様の材料から形成されうるが、その場合に好ましくは、基体は導電性又は半導電性であり、分子着色剤層201とほぼ接触する導電層を有するか、又は基体を介しての電圧降下を最小限に抑えるようバルク特性として高い誘電率を有する。導電性基体は、金属、強い共役状態の導電性ポリマー、イオン性ポリマー、塩又は炭素充填プラスチック及びエラストマー等を含む。適当な半導電性基体は、従来のドープされたシリコン等から形成されうる。導電層を有する基体は、金属被覆プリント回路基板、インジウムスズ酸化物コーティングガラス、セラミック等を含む。ガラス、セラミック、金属又は他の基体材料上に蒸着堆積又は成長させた半導体薄膜が用いられる場合もある。これらの基体はそれぞれ市販されている。高誘電率の材料は、チタニアのような金属酸化物セラミックスからなる場合がある。好適な基体は、焼結セラミックス、セラミック織布、又はセラミック充填プラスチック、エラストマー及び紙(セラミック−樹脂含浸を用いる)から形成される場合がある。周囲光視認とバックライト視認を任意選択的に同じ基体で利用可能にする応用形態においては、半透明材料を用いることができる。一般に半透明基体は、周囲光視認条件下で比較的不透明な白色に見え、バックライト視認条件下で透明な白色に見えることが望ましい。適当な半透明基体は、結晶性及び半結晶性プラスチック、ファイバシート及びフィルム(例えばDuPont(商標)Tyvex(商標))、つや消し表面のプラスチックフィルム(例えばDuPont(商標)のマット仕上げMylar(商標)、General Electric(商標)のマット仕上げLexan(商標))、市販のつや消し表面ガラス等を含む。
装置及び方法
ここで図3AAを参照すると、単純なシート状形態からなる書換え可能媒体又は大容量データ記憶媒体の実施形態の場合(従来の技術の項を参照)、又は保持用の電界を用いない他の双安定分子着色剤コーティングが塗布された表面の場合、例えば電子ペン先端又は電極対301及び303、又は301、305を用いて、単一のコーティング側から電気的な書込み電界を生成し、コーティング201の層を横断して電界を加えることが望ましい。そのような場合、コーティング層内で電界がシャント(分路)を形成するのを防止するため、適当に低い導電率及び誘電率を有する着色剤コーティング201が望ましい。このようなフリンジ電界(破線矢印307によって表される)タイプの書込み手段を用いる場合、基体202の電気的特性はあまり重要でない。
【0064】
媒体の両面の電極403、405を用いて、図4AAに示されるように、媒体200の厚みを通して垂直に書込み電界(破線矢印401)を形成することが望ましい応用形態の場合、隣接する電極が全ての画素に共通であるならば、基体202は高誘電率又は高導電率を有することが好ましい。これらの特性は、基体202を介しての電圧降下(損失)を最小限に抑え、媒体の切替え電圧要件を最小にする。例えば利用可能な基体202は、チタニア充填プラスチック、ある種の高誘電率の樹脂を含浸した紙、及び金属からなる群によって代表される。
【0065】
ある種の実施形態、例えば大きなイーゼルボードの場合(コンピュータ、PDA等において用いられる、分子着色剤を基礎とする電子ディスプレイ及び表示画面は、本出願人に譲渡されたVincent等による他の同時係属特許出願に記載されている)、コーティングされる基体表面に電極又は電極アレイを有する基体をコーティングすることが望ましい。代表的な基体は、金属被覆繊維板、プリント回路基板、金属化(メタライズ)ガラス、表面をエッチングされた金属化(メタライズ)ガラス、グラファイト含浸ゴム及びプラスチック、シートメタル等を含む。
【0066】
ここで図5AAを参照すると、よりコストの高い実施形態では、媒体200’は、好ましい背景色層503でコーティングされた反射性基体501を有する基体202を含んでいてもよい。その場合に背景色は固定されたままであり、印加される書込み電界(破線矢印505)とは無関係である。この表面501は通常、分子着色剤コーティング201の層が透明状態に切り替えられるときに、媒体200’の背景色を形成する。そのような表面コーティングは一般に、ポリマー結合剤中に含まれる従来の顔料又は着色剤を含む。基体202の場合のように、表面501のコーティング503は、媒体200’に印加される電界505のシャントのない一体性を保持し、媒体を横断して生じる付加的な電圧降下を最小限に抑えるように選ばれた組成の、結合剤及び着色剤を含む。代替的には、従来の顔料又は着色剤を、基体202自体の内部に含むことができる。そのような表面コーティング及び基体中に含有された着色剤の製造プロセスは、媒体の分野においてよく知られている。
【0067】
本発明の媒体200’は、さらに保護表面507の層を含むことができる。一般に、保護表面層507は視覚的に透明であり、摩耗、光酸化による色落ち、化学分解、又は媒体200’の性質を変更する可能性のある他の環境的に作用する要因から着色剤コーティング201を保護する。保護表面層507の製造は、ポリマーコーティング、透明材料堆積又は積層のような、公知の仕方で行うことができる。例えば、ポリメチルメタクリレートやポリウレタンタイプのポリマーコーティングは、紫外線吸収添加剤を含むことが知られている。薄膜、蒸着ガラス及びポリマー積層薄膜を用いることもできる。層を適用するための方法は、当分野においてよく知られている。基体202の場合と同様に、保護表面層507は、媒体に印加される電界の一体性を保持し、かつ媒体を介しての付加的な電圧降下を最小限に抑えるように構成されることが好ましい。
【0068】
本発明の上記の媒体200、200’のうちの何れの媒体の着色剤コーティング201も、同じコーティング面に共通の、交互になった着色剤分子画素領域のモザイクパターンからなることができる。そのように互い違いにされる色は、例えばシアン、マゼンタ及びイエロー画素の繰返しパターンからなる場合がある。カラーディスプレイのためのモザイクパターンは、ディスプレイの分野においてよく知られており、本発明によりカラー画像を生成するために有用である。達成可能な解像度は、ある色の連続した印刷コンテンツの領域が裸眼ではほぼ連続して見える程度に、十分に精細である。各カラー画素をモザイク状に正確に堆積するために非常に適している、数多くの印刷プロセスがある。そのようなプロセスには、オフセットリソグラフィ、グラビア印刷、シルクスクリーン、インクジェット、電子写真、及びフォトマスク堆積が含まれる。インクジェットは、非接触の堆積プロセスにおいて細かく制御可能なドット形状及び配置を行うという観点から、特に魅力的なモザイク堆積手段を提供する。大部分の応用形態の場合に、モザイク状の画素のパターンは、各画素を駆動するように構成される電極のパターンに一致しなければならない。またモザイクパターンは、背景としてモザイク色パターンを印刷することにより、又は保護層の一部として、またはそれに隣接して従来のモザイクフィルタを用いて形成することもできる。本実施形態は、黒色状態の分子及び透明状態の分子(例えば図7を参照)を用いることを示しており、これらは1つの層として、予め印刷されたカラーのモザイクの背景(例えばCYMインクジェット装置を用いて従来どおりに印刷される)上に用いることができる。黒色切替え状態ではカラーは何も見えず、透明切替え状態ではカラーが透過的に見える。同様に、バックライト又は投影ディスプレイの用途の場合に、従来のカラーフィルタ(例えばカラーLCD画面において用いられるもの)を用いて実施することもできる。背面の透明な着色剤分子は、液晶シャッタに類似の光バルブとして機能する。これらの各手法の利点は、従来のモザイク着色剤(インク、フィルタ)とともに単一の分子着色剤を用いることである。カラーモザイクフィルタは、任意選択的に、元来は透明な基体(例えばガラス)上に背景層として印刷してもよい。これらの手法によって、固有の色を有する分子を切り替える(例えば、黄色/透明状態等)ことなく、フルカラーが可能になる。
【0069】
着色剤分子は、透明状態を有する実施形態でもって実施可能であるため、着色剤層を積層して(例えば、分子は個々の層内で透明色と原色の間で切り替える)、非常に解像度の高い、フルカラーのレンダリングを、多色層の画素の重ね合わせ(例えば、減法混色の原色であるシアン、マゼンタ及びイエローのオーバーレイ)を通して達成できるということが重要である。本発明においてのみ、そのような実施形態は完全に書換え可能な形式で行われる。従来の技術の項で記載したように、これはマイクロカプセル技術に固有の制約のうちの1つを解決する。
【0070】
本発明の媒体200、200’などの、コーティング、層及び基体といった各々の構成要素の厚み及び誘電率は、両側にある電極の間隔、電界の形状、及び所与の媒体画素を切り替えるために用いられる電圧に対処するように選択されることが好ましい。長さ寸法当たりの画素数として測定されるような、画素の解像度(例えば、カラーの場合に1200画素/インチ(「ppi」)、グレースケールの場合に4800ppi)は、電極の間隔に反比例する。図5AAに示されるような実施形態の場合の画素切替え電圧は、両端の電極間に介在されている各層にわたる電圧降下の和に等しい。これは、図6AAの概略的な電気回路図によって表される。各層は、電圧降下を伴う直列のキャパシタンスを導入しており、電圧降下「Vn」は層の厚み(「dn」)に比例し、層の誘電率(「kn」)に反比例する。ここで図6AA中、「q」は電極に蓄積される電荷(クーロン)であり、「ε」は誘電率であり、「A」は電界が印加されるコーティング層の面積である。基体202は一般に著しい電圧降下を示し、また電界中に含まれた場合には、電界を拡張させる原因となる。従って好ましくは、基体202は導電性材料からなり、基体が書込み電界内に存在する必要がある図4AA及び図5AAのような応用形態において、有効な共通接地面電極を形成する。そのような場合には、金属、ならびに導電性及びイオン性ポリマーが良好な材料の選択肢である。代替的には、基体202は、図4AAによって概略的に表される実施形態において電圧損失を埋め合わせるために、高誘電性の材料から構成されうる。この目的で、チタニア又は同様の誘電性充填物が含浸されたポリマー、繊維系の紙及びプラスチックを用いることができる。
例示的な有用性
消去可能に書込み可能な媒体
本発明によるエレクトロクロミック分子着色剤の一部は、従来の着色剤が一般的に用いられる概ね全てのタイプのインク、塗料、コーティング等に含有させることができるエレクトロクロミック分子着色剤として記述される。さらにこれは、従来の顔料を用いる場合の殆どの標準的な任意のプロセスを用いて、基体に対して適用できる。この場合にも本発明により得られる利点は、マイクロカプセル着色剤とは著しい対照をなす。マイクロカプセルの場合には、その大きさ及び脆弱な特性によって、安定な液体への分散、及び大部分の標準的な適用プロセスに共通な物理的な力の作用の適用が妨げられる
本発明のエレクトロクロミック分子着色剤を含む溶液は、紙又はプラスチックフィルムのような材料の大きな表面又はウェブ上に、例えば、噴霧、浸漬、ローラ、注型又はナイフを用いてコーティングして、その表面又はウェブに書換え可能な領域を形成することができる。さらに、本発明の分子着色剤の標準的な塗布プロセスへの適合性によって、概ね全ての表面、例えば冷蔵庫のドア、ホワイトボード、机上、腕時計表面、コンピュータディスプレイ、看板又はメモを取ることが望まれる場合がある任意の表面などに、分子着色剤を有する、電界によって書換え可能なエレクトロクロミック分子着色剤コーティングを塗布することができる。
【0071】
双安定性の2色性分子着色剤を用いると、次いでそのような表面に、コーティング内に選択的に局在化された電界を生成することができる装置を用いて、書込み及び消去を行うことができる。本発明のエレクトロクロミック分子着色剤を表面にコーティングされた、紙のようなシートに、例えば、電極アレイを介して画素サイズの電界を生成することができるプリンタを用いてイメージングすることができる。これらの書込み−消去装置、デバイス及び動作方法は、本出願人に譲渡されたKent Vincent等による他の特許出願の目的となっている。
【0072】
本発明のエレクトロクロミック分子着色剤を含むインク又は塗料は、例えば、消去できない従来のインクを用いて事前印刷領域が印刷された印刷用紙上に、書換え可能な領域を生成するために、種々の基体上に選択的に印刷することができる。そのような書換え可能な領域は、本発明の分子着色剤を用いて、従来のオフセットリソグラフィ、グラビア印刷、凹版、シルクスクリーン、インクジェットプロセス等を用いて印刷することができる。
【0073】
上記のような消去可能に書込み可能な領域の幾つかは、バックライトを含む場合があり、その場合にはエレクトロクロミック分子着色剤インクは、オーバーヘッドプロジェクター用の透明基体上に印刷されることに留意されたい。分子着色剤は或いは、受容光を視認するための白色基体上に印刷されうる。バックライト構成では、エレクトロクロミック分子着色剤画素のモザイクが、投影ディスプレイのためのアクティブカラーフィルタとして用いられる場合がある。受容光構成では、エレクトロクロミック分子着色剤画素のモザイクは、固定された紙上に印刷されたかのように、固定的に形成されうる。エレクトロクロミック分子着色剤には電流を流す必要がなく、それゆえ、酸化や電荷のトラップのような、ディスプレイの寿命を低下させるプロセスの影響を受けにくい。受容光で視認される構成の場合にも、自然光による照明条件下で良好な視認性が提供される。一般に、エレクトロクロミック分子着色剤は発光せず、バックライトを必要としないため、既知の電子ディスプレイ手段よりも非常に低い駆動エネルギーしか必要としない。任意選択的に双安定な着色剤を用いて着色状態を達成することにより、さらにエネルギーが節約される。液晶とは異なり、双安定エレクトロクロミック分子着色剤は、所与の画像を保持するための電界を必要としない。
データ記憶装置への応用形態
本発明のエレクトロクロミック分子着色剤は、従来の強磁性コーティング及びCD−ROM記憶媒体より優れた、非常に大きな記憶密度、コスト及び書込み速度に関する利点を提供する。この場合にデータ記憶要素は、双安定性な2つの電気光学状態を有する分子、より正確には層状の分子からなる概ね分子大、又はそれより大きい列であり、これらは選択的に局在化された電界を通して書き込まれ、光学的に又は電界検出によって読み取られる。光学的に読み取るための電界検出応用形態は当分野においてよく知られている。本発明の分子状の記憶要素又は素子は、より大きな磁気結晶又はレーザにより読取り可能なピットを用いる記憶素子よりも優れた、非常に大きな記憶密度を提供する。エレクトロクロミック分子着色剤は、ポリマー樹脂に含有させることができ、殆どの任意の標準的な連続厚薄膜コーティング方法を用いて、標準的な記憶媒体基体上に低コストでコーティングすることができる。薄膜堆積コーティング方法を用いることもできる。着色剤の構造及び双安定性によって、ビット書込み時間は、10−3〜10−9秒の範囲にあることが予想される(コンピュータシミュレーションに基づく)。
概要
本発明は、エレクトロクロミック分子着色剤201と、消去可能に書込み可能な媒体201としての複数の用途とを提供する。紙202のような多数のタイプの基体は、着色剤のコーティングを受容するために適合可能である。フリンジ電界307又は通過電界401、505を用いて、第1の高い着色状態701と第2の対照をなす着色状態又は透明状態703との間で、標的とされる画素分子を変化させ、ハードコピードキュメント印刷物と少なくとも同等の解像度と視認性を有する情報コンテンツを提供することができる。
【0074】
本発明の好ましい実施形態についての以上の説明は、例示及び説明の目的で提供されている。それは、本発明について細大漏らさず述べた記述ではなく、また本発明をここに開示した特定の形態や例示的な実施形態に限定することを意図したものでもない。明らかに、多くの変更及び変形が当業者には明らかであろう。同様に、記述された任意のプロセスステップを他のステップと入れ替えて、同じ結果を達成することができる場合がある。本発明の実施形態は、本発明の原理及びそのベストモードの実用的な応用形態を最もわかりやすく説明し、それにより当業者が、種々の実施形態について本発明を理解し、また意図している特定の用途及び実施形態に適した種々の変更形態について理解できるように選択され、記載されている。本発明の範囲は、特許請求の範囲及びその均等物によって画定されることが意図されている。単数形での素子又は要素などの表現は、明示されていない限り「1つだけしかない」ことを意味することを意図したわけではなく、むしろ「1つ又はそれ以上」を意味している。さらに、本明細書における要素、構成部品、方法ステップは、それらの要素、構成部品、方法ステップが特許請求の範囲に明示的に記載されると否とにかかわらず、一般に開放することを意図してはいない。本明細書に記載される特許請求の範囲の構成要素は、その要素が特に「〜のための手段」という表現を用いて記述されていない場合には、米国特許法第112条第6項の規定に従って解釈されるべきではなく、またプロセスステップは、そのステップが特に「〜のステップからなる」という表現を用いて記述されていない場合には、かかる規定に従って解釈されるべきではない。
【0075】
【発明の効果】
上記のように、本発明によれば、再利用可能で、高コントラストで、非常に高い解像度を有し、書換え可能な印刷媒体、及びそれを製造するための方法を実現することができる。
【0076】
以下に本発明の実施態様を列記する。
1.基体のための着色剤であって、前記着色剤が分子システムからなり、前記分子システムがエレクトロクロミックな切替え可能分子を含み、前記分子の各々が、少なくとも2つの光学的に識別可能な状態の間で選択的に切替え可能であり、前記分子システムが基体上に分布可能であって消去可能に書込み可能な表面を形成することからなる着色剤。
2.前記分子は、電界によって引き起こされるバンドギャップの変化を示す、上記1に記載の着色剤。
3.前記電界によって引き起こされるバンドギャップの変化が、(1)分子配座の変化又は異性化、(2)化学結合の変化による延長共役の変化、(3)分子の折りたたみ又は延伸、からなる群より選択される機構を介して生じる、上記2に記載の着色剤。
4.前記電界によって引き起こされるバンドギャップの変化が、分子配座の変化又は異性化によって生じる、上記2に記載の着色剤。
5.前記分子システムを形成する分子がさらに、少なくとも1つの固定(ステータ)部分と少なくとも1つの回転(ロータ)部分を含み、前記回転部分は電界が印加されると第1の状態から第2の状態に回転し、前記第1の状態では前記分子システム全体にわたって延長共役が存在し、結果としてバンドギャップが相対的に小さくなり、また前記第2の状態では前記延長共役が破壊され、結果としてバンドギャップが相対的に大きくなる、上記4に記載の着色剤。
6.印加される電界の方向に応じて、前記分子は第1の状態でより強い共役状態になり相対的に小さなバンドギャップを有し、前記分子は第2の状態でより弱い共役状態になり相対的に大きなバンドギャップを有する、上記4に記載の着色剤。
7.前記電界によって引き起こされるバンドギャップの変化が、化学結合の変化を介して延長共役を変化させることにより生じる、上記2に記載の着色剤。
8.前記電界によって引き起こされるバンドギャップの変化が、結合の局在化の増減を伴う電荷の分離又は再結合を介して、延長共役を変化させることにより生じる、上記7に記載の着色剤。
9.電界の印加により第1の状態から第2の状態への変化が生じ、前記変化が前記第1の状態から前記第2の状態に変化する際の電荷分離を伴い、結果としてπ(π結合又はπ電子)−非局在化がより小さい、相対的にバンドギャップが大きい状態になり、また前記変化が前記第2の状態から前記第1の状態に変化する際の電荷再結合を伴い、結果として、π−非局在化がより大きい、相対的にバンドギャップが小さい状態になる、上記8に記載の着色剤。
10.前記電界によって引き起こされるバンドギャップの変化が、電荷の分離又は再結合と、π結合の切断又は形成によって延長共役を変化させることにより生じる、上記7に記載の着色剤。
11.電界の印加により第1の状態から第2の状態への変化が生じ、前記変化が前記第1の状態から前記第2の状態に変化する際の電荷分離を伴い、前記第1の状態では全体にわたって延長共役が存在し、結果として相対的にバンドギャップが小さい状態になり、前記第2の状態では前記延長共役が破壊されて分離された正及び負の電荷が形成され、結果として相対的にバンドギャップが大きい状態になる、上記10に記載の着色剤。
12.前記電界によって引き起こされるバンドギャップの変化が、分子の折りたたみ又は延伸によって生じる、上記2に記載の着色剤。
13.前記着色剤が3つの部分を有し、第1の部分及び第3の部分がそれぞれ中央の第2の部分に結合され、電界の印加により第1の状態から第2の状態への変化が生じ、前記変化が前記第2の部分を中心とした折りたたみ又は延伸を伴い、前記第1の状態では延長共役が存在し、結果として相対的にバンドギャップが小さい状態になり、前記第2の状態では前記延長共役が破壊され、結果として相対的にバンドギャップが大きい状態になる、上記12に記載の着色剤。
14.前記分子が双安定性であり、持久性の構成部品が提供される、上記1に記載の着色剤。
15.複数層からなる分子の着色剤層を含み、前記各層において分子が透明状態又は原色状態にあり、多色層の画素の重ね合わせを通じてフルカラーイメージングのレンダリングが可能である、上記1に記載の着色剤。
16.前記分子が異なる状態間で低い活性化障壁を有し、高速の非持久性切替が提供される、上記1に記載の着色剤。
17.前記分子が3つ以上の状態を有し、非持久性切替を形成すべく減少又は増大する電界を印加することにより光学特性が連続的に調整され、又は少なくとも1つの分子活性化障壁を通じて切替えを行うべく電圧パルスを印加して選択された組成領域の色を急激に変化させるように調整されるよう切替え可能である、上記1に記載の着色剤。
18.前記分子システムが、透明状態と着色状態の間で選択された分子を変化させる、上記1に記載の着色剤。
19.前記分子システムが、前記分子によって形成される選択された画像素子を2つの視覚的に異なる着色状態間で切り替えるよう構成される、上記1に記載の着色剤。
20.前記分子システムが、前記分子によって形成される選択された画像素子を透明状態と着色状態の間で切り替えるよう構成される、上記1に記載の着色剤。
21.前記分子システムが、1つの屈折率と別の屈折率の間で変化する、上記1に記載の着色剤。
22.前記分子が双安定性である、上記1に記載の着色剤。
23.前記分子が2つのモードを有する、上記1に記載の着色剤。
24.前記分子が前記基体の表面に、離散したアドレス指定可能な画像素子を形成するよう配列される、上記1に記載の着色剤。
25.前記画像素子が前記分子のモザイクパターンから構成され、前記パターンは光学的に組み合わせ可能な可視色状態を有する、上記24に記載の着色剤。
26.前記画像素子が前記分子のモザイクパターンから構成され、前記パターンは原色のモザイクを形成する、上記24に記載の着色剤。
27.前記分子が透明状態と不透明状態の間で選択的に切替え可能であり、原色サブピクセル領域のモザイクパターンのオーバーレイとして前記基体上に分布される、上記24に記載の着色剤。
28.前記着色剤が受光視認のために白色基体上に印刷される、上記24に記載の着色剤。
29.前記着色剤が、オーバーヘッドプロジェクタで利用するため透明な基体上に印刷される、上記24に記載の着色剤。
30.基体のための書込み可能で消去可能なコーティングであって、
キャリヤと、及び
前記キャリヤ内にありエレクトロクロミックな切替え可能分子を含む組成物とからなり、前記分子の各々は少なくとも2つの光学的に識別可能な状態の間で選択的に切り替え可能であり、前記分子が前記キャリヤ上に分布可能であって消去可能に書込み可能な表面を形成することからなるコーティング。
31.消去可能な書込み媒体であって、
基体と、及び
前記基体に付着される分子着色剤コーティングの少なくとも1つの層からなり、前記コーティングの分子は少なくとも2色性であり、局在化された電界の作用下に着色状態間で選択的に切替え可能である媒体。
32.前記分子が透明状態と黒色状態の間で切替え可能である、上記31に記載の媒体。
33.前記分子が透明状態と原色状態の間で切替え可能である、上記31に記載の媒体。
34.前記分子着色剤コーティングが、電気的にアドレス指定可能なサブピクセル配列を有するモザイク状にパターン化された分子からなる層であり、フルカラーの組み合わせが画素を複数の色相でレンダリング可能である、上記33に記載の媒体。
35.前記着色剤の層が、原色の画像素子からなるモザイクパターンのためのオーバーレイである、上記32に記載の媒体。
36.前記分子が電界によって引き起こされるバンドギャップの変化を示す、上記31に記載の媒体。
37.前記電界によって引き起こされるバンドギャップの変化が、(1)分子配座の変化又は異性化、(2)化学結合の変化による延長共役の変化、(3)分子の折りたたみ又は延伸、からなる群より選択される機構を介して生じる、上記36に記載の媒体。
38.前記電界によって引き起こされるバンドギャップの変化が、分子配座の変化又は異性化によって生じる、上記36に記載の媒体。
39.前記分子がさらに、少なくとも1つの固定部分と少なくとも1つの回転部分を含み、前記回転部分は電界が印加されると第1の状態から第2の状態に回転し、前記第1の状態では前記分子全体にわたって延長共役が存在し、結果としてバンドギャップが相対的に小さくなり、また前記第2の状態では前記延長共役が破壊され、結果としてバンドギャップが相対的に大きくなる、上記38に記載の媒体。
40.印加される電界の方向に応じて、前記分子は第1の状態でより強い共役状態になり相対的に小さなバンドギャップを有し、前記分子は第2の状態でより弱い共役状態になり相対的に大きなバンドギャップを有する、上記38に記載の媒体。
41.前記電界によって引き起こされるバンドギャップの変化が、化学結合の変化を介して延長共役を変化させることにより生じる、上記36に記載の媒体。
42.前記電界によって引き起こされるバンドギャップの変化が、結合の局在化の増減を伴う電荷の分離又は再結合を介して、延長共役を変化させることにより生じる、上記41に記載の媒体。
43.電界の印加により第1の状態から第2の状態への変化が生じ、前記変化が前記第1の状態から前記第2の状態に変化する際の電荷分離を伴い、結果としてπ(π結合又はπ電子)−非局在化がより小さい、相対的にバンドギャップが大きい状態になり、また前記変化が前記第2の状態から前記第1の状態に変化する際の電荷再結合を伴い、結果として、π−非局在化がより大きい、相対的にバンドギャップが小さい状態になる、上記42に記載の媒体。
44.前記電界によって引き起こされるバンドギャップの変化が、電荷の分離又は再結合と、π結合の切断又は形成によって延長共役を変化させることにより生じる、上記41に記載の媒体。
45.電界の印加により第1の状態から第2の状態への変化が生じ、前記変化が前記第1の状態から前記第2の状態に変化する際の電荷分離を伴い、前記第1の状態では全体にわたって延長共役が存在し、結果として相対的にバンドギャップが小さい状態になり、前記第2の状態では前記延長共役が破壊されて分離された正及び負の電荷が形成され、結果として相対的にバンドギャップが大きい状態になる、上記44に記載の媒体。
46.前記電界によって引き起こされるバンドギャップの変化が、分子の折りたたみ又は延伸によって生じる、上記36に記載の媒体。
47.前記着色剤が3つの部分を有し、第1の部分及び第3の部分がそれぞれ中央の第2の部分に結合され、電界の印加により第1の状態から第2の状態への変化が生じ、前記変化が前記第2の部分を中心とした折りたたみ又は延伸を伴い、前記第1の状態では延長共役が存在し、結果として相対的にバンドギャップが小さい状態になり、前記第2の状態では前記延長共役が破壊され、結果として相対的にバンドギャップが大きい状態になる、上記46に記載の媒体。
48.前記分子が双安定性であり、持久性の構成部品が提供される、上記31に記載の媒体。
49.前記分子が異なる状態間で低い活性化障壁を有し、高速の非持久性切替が提供される、上記31に記載の媒体。
50.前記分子が3つ以上の状態を有し、非持久性切替を形成すべく減少又は増大する電界を印加することにより光学特性が連続的に調整され、又は少なくとも1つの分子活性化障壁を通じて切替えを行うべく電圧パルスを印加して選択された組成領域の色を急激に変化させるように調整されるよう切替え可能である、上記31に記載の媒体。
51.前記分子が、前記分子によって形成される選択された画像素子を2つの視覚的に異なる着色状態間で切り替えるよう構成される、上記31に記載の媒体。
52.前記分子が、前記分子によって形成される選択された画像素子を透明状態と着色状態の間で切り替えるよう構成される、上記31に記載の媒体。
53.前記分子が、1つの屈折率と別の屈折率の間で変化する、上記31に記載の媒体。
54.前記分子が双安定性である、上記31に記載の媒体。
55.前記分子が2つのモードを有する、上記31に記載の媒体。
56.前記分子が前記基体の表面に、離散したアドレス指定可能なサブピクセルを形成するよう配列される、上記31に記載の媒体。
57.前記サブピクセルが前記分子のモザイクパターンから構成され、前記パターンは光学的に組み合わせ可能な可視色状態を有する、上記56に記載の媒体。
58.前記サブピクセルが前記分子のモザイクパターンから構成され、前記パターンは原色のモザイクを形成する、上記56に記載の媒体。
59.前記分子が透明状態と不透明状態の間で選択的に切替え可能であり、前記基体上に印刷された原色サブピクセル領域のモザイクパターンのオーバーレイとして前記基体上に分布される、上記56に記載の媒体。
60.前記着色剤が受光視認のために白色基体上に印刷される、上記56に記載の媒体。
61.前記着色剤が、オーバーヘッドプロジェクタで利用するため透明な基体上に印刷される、上記56に記載の媒体。
62.前記基体が、繰返しイメージングするために、可撓性で耐久性の材料である、上記31に記載の媒体。
63.前記可撓性材料がカットシート印刷媒体として構成される、上記62に記載の媒体。
64.前記可撓性材料がウェブ印刷媒体として構成される、上記62に記載の媒体。
65.電界でアドレス指定可能な書換え可能媒体上に書込みを行うための方法であって、
分子着色剤コーティングからなる少なくとも1つの層を有する基体を準備し、前記コーティングの分子は少なくとも2色性であり、局在化された電界の作用下に着色状態の間で切替えを受け、前記層は前記基体にわたって分布されて前記媒体上に画素を形成し、及び
前記局在化された電界の各々を選択的に制御することにより画素を電気的にアドレス指定し、前記媒体上にドキュメントコンテンツを形成することからなる方法。
66.データ記憶デバイスであって、
基体と、及び
分子着色剤コーティングの少なくとも1つの層からなり、前記コーティングの分子は少なくとも2色性であり、局在化された電界の作用下に少なくとも2つの電気光学状態の間で双安定な切替えを受ける、データ記憶デバイス。
67.前記分子が電界によって引き起こされるバンドギャップの変化を示す、上記66に記載のデータ記憶デバイス。
68.前記電界によって引き起こされるバンドギャップの変化が、(1)分子配座の変化又は異性化、(2)化学結合の変化による延長共役の変化、(3)分子の折りたたみ又は延伸、からなる群より選択される機構を介して生じる、上記65に記載のデータ記憶デバイス。
69.前記電界によって引き起こされるバンドギャップの変化が、分子配座の変化又は異性化によって生じる、上記67に記載のデータ記憶デバイス。
70.前記分子がさらに、少なくとも1つの固定部分と少なくとも1つの回転部分を含み、前記回転部分は電界が印加されると第1の状態から第2の状態に回転し、前記第1の状態では前記分子全体にわたって延長共役が存在し、結果としてバンドギャップが相対的に小さくなり、また前記第2の状態では前記延長共役が破壊され、結果としてバンドギャップが相対的に大きくなる、上記69に記載のデータ記憶デバイス。
71.印加される電界の方向に応じて、前記分子は第1の状態でより強い共役状態になり相対的に小さなバンドギャップを有し、前記分子は第2の状態でより弱い共役状態になり相対的に大きなバンドギャップを有する、上記69に記載のデータ記憶デバイス。
72.前記電界によって引き起こされるバンドギャップの変化が、化学結合の変化を介して延長共役を変化させることにより生じる、上記67に記載のデータ記憶デバイス。
73.前記電界によって引き起こされるバンドギャップの変化が、結合の局在化の増減を伴う電荷の分離又は再結合を介して、延長共役を変化させることにより生じる、上記72に記載のデータ記憶デバイス。
74.電界の印加により第1の状態から第2の状態への変化が生じ、前記変化が前記第1の状態から前記第2の状態に変化する際の電荷分離を伴い、結果としてπ(π結合又はπ電子)−非局在化がより小さい、相対的にバンドギャップが大きい状態になり、また前記変化が前記第2の状態から前記第1の状態に変化する際の電荷再結合を伴い、結果として、π−非局在化がより大きい、相対的にバンドギャップが小さい状態になる、上記73に記載のデータ記憶デバイス。
75.前記電界によって引き起こされるバンドギャップの変化が、電荷の分離又は再結合と、π結合の切断又は形成によって延長共役を変化させることにより生じる、上記72に記載のデータ記憶デバイス。
76.電界の印加により第1の状態から第2の状態への変化が生じ、前記変化が前記第1の状態から前記第2の状態に変化する際の電荷分離を伴い、前記第1の状態では全体にわたって延長共役が存在し、結果として相対的にバンドギャップが小さい状態になり、前記第2の状態では前記延長共役が破壊されて分離された正及び負の電荷が形成され、結果として相対的にバンドギャップが大きい状態になる、上記75に記載のデータ記憶デバイス。
77.前記電界によって引き起こされるバンドギャップの変化が、分子の折りたたみ又は延伸によって生じる、上記67に記載のデータ記憶デバイス。
78.前記着色剤が3つの部分を有し、第1の部分及び第3の部分がそれぞれ中央の第2の部分に結合され、電界の印加により第1の状態から第2の状態への変化が生じ、前記変化が前記第2の部分を中心とした折りたたみ又は延伸を伴い、前記第1の状態では延長共役が存在し、結果として相対的にバンドギャップが小さい状態になり、前記第2の状態では前記延長共役が破壊され、結果として相対的にバンドギャップが大きい状態になる、上記77に記載のデータ記憶デバイス。
79.前記分子が双安定性であり、持久性の構成部品が提供される、上記66に記載のデータ記憶デバイス。
80.前記分子が異なる状態間で低い活性化障壁を有し、高速の非持久性切替が提供される、上記66に記載のデータ記憶デバイス。
81.前記分子が3つ以上の状態を有し、非持久性切替を形成すべく減少又は増大する電界を印加することにより電気光学特性が連続的に調整され、又は少なくとも1つの分子活性化障壁を通じて切替えを行うべく電圧パルスを印加して選択された組成領域の色を急激に変化させるように調整されるよう切替え可能である、上記66に記載のデータ記憶デバイス。
82.前記分子が、前記分子によって形成される選択されたメモリ素子を2つの異なる電気光学状態間で切り替えるよう構成される、上記66に記載のデータ記憶デバイス。
83.前記分子が、前記分子によって形成される選択されたメモリ素子を透明状態と着色状態の間で切り替えるよう構成される、上記66に記載のデータ記憶デバイス。
84.前記分子が、1つの屈折率と別の屈折率の間で変化する、上記66に記載のデータ記憶デバイス。
85.書換え可能媒体を製造する方法であって、
基体を準備し、及び
前記基体で書換え可能な層を形成することからなり、書込み可能で消去可能な層が分子システムによって形成され、前記システムがエレクトロクロミックな切替え可能分子を含み、前記分子の各々が少なくとも2つの光学的に識別可能な状態の間で選択的に切替え可能である方法。
86.前記分子は、電界によって引き起こされるバンドギャップの変化を示す、上記85に記載の方法。
87.前記電界によって引き起こされるバンドギャップの変化が、(1)分子配座の変化又は異性化、(2)化学結合の変化による延長共役の変化、(3)分子の折りたたみ又は延伸、からなる群より選択される機構を介して生じる、上記86に記載の方法。
88.前記電界によって引き起こされるバンドギャップの変化が、分子配座の変化又は異性化によって生じる、上記86に記載の方法。
89.前記分子システムを形成する分子がさらに、少なくとも1つの固定部分と少なくとも1つの回転部分を含み、前記回転部分は電界が印加されると第1の状態から第2の状態に回転し、前記第1の状態では前記分子システム全体にわたって延長共役が存在し、結果としてバンドギャップが相対的に小さくなり、また前記第2の状態では前記延長共役が破壊され、結果としてバンドギャップが相対的に大きくなる、上記88に記載の方法。
90.印加される電界の方向に応じて、前記分子は第1の状態でより強い共役状態になり相対的に小さなバンドギャップを有し、前記分子は第2の状態でより弱い共役状態になり相対的に大きなバンドギャップを有する、上記88に記載の方法。
91.前記電界によって引き起こされるバンドギャップの変化が、化学結合の変化を介して延長共役を変化させることにより生じる、上記86に記載の方法。
92.前記電界によって引き起こされるバンドギャップの変化が、結合の局在化の増減を伴う電荷の分離又は再結合を介して、延長共役を変化させることにより生じる、上記91に記載の方法。
93.電界の印加により第1の状態から第2の状態への変化が生じ、前記変化が前記第1の状態から前記第2の状態に変化する際の電荷分離を伴い、結果としてπ(π結合又はπ電子)−非局在化がより小さい、相対的にバンドギャップが大きい状態になり、また前記変化が前記第2の状態から前記第1の状態に変化する際の電荷再結合を伴い、結果として、π−非局在化がより大きい、相対的にバンドギャップが小さい状態になる、上記92に記載の方法。
94.前記電界によって引き起こされるバンドギャップの変化が、電荷の分離又は再結合と、π結合の切断又は形成によって延長共役を変化させることにより生じる、上記91に記載の方法。
95.電界の印加により第1の状態から第2の状態への変化が生じ、前記変化が前記第1の状態から前記第2の状態に変化する際の電荷分離を伴い、前記第1の状態では全体にわたって延長共役が存在し、結果として相対的にバンドギャップが小さい状態になり、前記第2の状態では前記延長共役が破壊されて分離された正及び負の電荷が形成され、結果として相対的にバンドギャップが大きい状態になる、上記94に記載の方法。
96.前記電界によって引き起こされるバンドギャップの変化が、分子の折りたたみ又は延伸によって生じる、上記86に記載の方法。
97.前記着色剤が3つの部分を有し、第1の部分及び第3の部分がそれぞれ中央の第2の部分に結合され、電界の印加により第1の状態から第2の状態への変化が生じ、前記変化が前記第2の部分を中心とした折りたたみ又は延伸を伴い、前記第1の状態では延長共役が存在し、結果として相対的にバンドギャップが小さい状態になり、前記第2の状態では前記延長共役が破壊され、結果として相対的にバンドギャップが大きい状態になる、上記96に記載の方法。
98.前記分子が双安定性であり、持久性の構成部品が提供される、上記85に記載の方法。
99.前記分子が異なる状態間で低い活性化障壁を有し、高速の非持久性切替が提供される、上記85に記載の方法。
100.前記分子が3つ以上の状態を有し、非持久性切替を形成すべく減少又は増大する電界を印加することにより光学特性が連続的に調整され、又は少なくとも1つの分子活性化障壁を通じて切替えを行うべく電圧パルスを印加して選択された組成領域の色を急激に変化させるように調整されるよう切替え可能である、上記85に記載の方法。
補足説明
以下の補足説明は、2001年4月27日に出願された「MOLECULAR MECHANICAL DEVICES WITH A BAND GAP CHANGE ACTIVATED BY AN ELECTRIC FIELD FOR OPTICAL SWITCHING APPLICATIONS」と題するZhang等による米国特許出願第09/844862号の一部を本明細書に取り入れる目的で行われている。そこでは、本発明に従って用いることができる2色性分子の複数の実施形態が詳細に記載されている。
【0077】
スイッチングの幾つかの新しい型の1つを示す分子が、着色層101に与えられる。すなわち、本発明は、従来技術とは区別されるスイッチング機構の幾つかの新しい型、
(1)電界(Eフィールド)によって誘導される、分子のバンドギャップを変化させるための、少なくとも1つの回転セクション(ロータ)又は分子の回転、
(2)電界によって誘導される、バンドギャップを変化させるための、化学結合変化を介した、分子の電荷の分離又は再結合、及び
(3)電界によって誘導される、分子の折りたたみ又は伸びを介した、ギャップバンド変化。
を提供する。
【0078】
従って、色のスイッチングは、従来技術のアプローチとは対照的に、拡散又は酸化/還元反応ではなく、電界によって誘導される分子内変化の結果である。また、移動する分子の部分が非常に小さく、従ってスイッチング時間が非常に早くなると予測される。また、そのような分子はきわめて単純であり、よってロタキサン、カテナン及び同類の化合物よりも製造するのがより容易でかつ安価である。
【0079】
以下に、モデル化合物の簡単な説明とともに、モデル化合物の例を示す。
(1)分子立体配座の変化を介した、電界誘導のバンドギャップ変化(ロータ/ステータ型のモデル)−図H及び図E〜図G、
(2a)バンドの局在化を増加又は減少させることに伴う、電荷の分離又は再結合を介した拡大された共役の変化に起因する、電界誘導のバンドギャップ変化−図I、
(2b)電荷の分離又は再結合及びπ−結合の破壊又は形成を介した拡大された共役の変化により生じる、電界誘導のバンドギャップ変化−図J、及び
(3)分子の折りたたみ又は伸びを介した、電界誘導のバンドギャップ変化−図K。
【0080】
各モデルを、支持例により、以下に記載する。しかしながら、ここに与えられる例は、本発明を、開示の特定の分子システムに限定するものではなく、むしろ上記スイッチング機構の単なる例示とみなされるべきである。
モデル(1):分子立体配座の変化を介した、電界誘導のバンドギャップ変化(ローター/ステーター型のモデル)
図Hは、このモデルの一実施態様の概略図であり、分子立体配座の変化を介した電界誘導のバンドギャップ変化(ロータ/ステータ型のモデル)に関する。図Hに示されるように、分子430は、ロータ432及びステータ434を含む。ロータ432は、印加された電界によって回転する。図の左側に描写されている状態では、分子全体を通して拡大された共役が存在するため、比較的小さなバンドギャップが生じる結果となり、それにより長い波長(レッドシフト)の吸光が生じる。図の右側に描写されているロータの回転後である他方の状態では、拡大された共役は破壊され、比較的大きなバンドギャップが生じる結果となり、それにより短波長(ブルーシフト)の吸光が生じる。図E〜図Gは、このモデル1の代替の好ましい実施態様を表す。これら後の図は、以下にこのモデルの例Ia〜IIbと関連して説明する。
【0081】
このモデルでは、以下の要件を満たさなければならない。
(a)分子は、少なくとも1つのロータセグメントと少なくとも1つのステータセグメントを有さなくてはならない、
(b)分子の一方の状態では、分子(ロータ(複数可)とステータ(複数可))の大部分にわたって拡大されたHOMO及び/又はLUMO(π状態及び/又は非結合性軌道)が非局在化すべきであり、他の状態では、ロータ(複数可)とステータ(複数可)、及び他のセグメントに関する軌道は、局在化している、
(c)ロータとステータの間の連結ユニットは、単σ結合、あるいは(1)非結合性電子(p又は他の電子)、又は(2)π電子、あるいは(3)π電子と非結合性電子(複数可)を有する少なくとも1つの原子であり得る、
(d)ロータ(複数可)及びステータ(複数可)の非結合性電子又はπ電子、あるいはπ電子と非結合性電子(複数可)を、分子の立体配座に依存して局在化又は非局在化することができ、一方でロータは、電界により活性化されると回転する、
(e)分子の立体配座(複数可)は、電界依存性又は双安定性であり得る、
(f)双安定性状態(複数可)は、水素結合、クーロン力、ファンデルワールス力、金属イオン錯体又は双極子間安定化などの分子内力又は分子間力により達成され得る、かつ
(g)分子のバンドギャップは、分子の非結合性電子又はπ電子、あるいはπ電子と非結合性電子の非局在化の度合いに依存して変化するであろう。これは、光学特性(例えば、色及び/又は屈折率)を制御するであろう。
【0082】
以下は、このモデルの2つの例である(例Ia〜IIb)。
【0083】
本発明の新規な二モード性分子は、外部電界によりスイッチングされ得る活性光学デバイスである。好ましくは、着色剤分子は双安定性である。この概念は、大きな双極子モーメントを有し(例Ia〜IIbを参照)、固定化部分(ステータ)434である分子430の2つの他の部分を結合する、回転可能な中間セグメント(ロータ)432を分子内に設計することである。印加される電界の影響下では、ロータ432のベクトル双極子モーメントは、外部電界の方向に対して平行に整列しようとするであろう。しかしながら、分子430は、ステータ434に対して特定の配向でロータ432を安定化する、水素結合又は双極子−双極子相互作用などの分子内力及び/又は分子間力、ならびに立体反発が存在するように設計される。従って、ロータ432がその初期配向から外れて、ステータ434に対してロータ432が回転するには、大きな電界が必要である。
【0084】
特定の配向に一旦スイッチングされると、分子430は、異なる配向にスイッチングされるか、又は再配置されるまでその配向を保つであろう。しかしながら、分子設計の重要な構成要素は、ロータ432が完全に180度の半サイクルで回転することを妨げ得る立体反発又は立体障害が存在することである。それどころか、初期配向から典型的に10〜170°の光学的に有意な角度にて、ロータ432及びステータ434における嵩高な基の立体的相互作用により、回転は停止される。説明の目的で、この角度は、本願では90°として示される。さらに、このスイッチングの配向は、異なるセットの分子間及び/又は分子内水素結合あるいは双極子相互作用により安定化されてもよく、従って印加される電界を止めた後でさえも同じ場所に留まる。双安定性又は多安定性着色剤分子に関して、ステータからの光学的に有意な回転により分離される2つの状態間にロータ432を留めるためのこの能力はきわめて重要である。
【0085】
前述の戦略は、多重状態(例えば、マルチカラー)システムを生成するための多数の状態(2つよりも多い)となるように、幾つかのスイッチングステップを提供する着色剤分子を設計するように一般化し得る。そのような分子は、減少又は増加する電界で連続的に向きを変える、又は、パルス電界を印加することにより突然ある状態から別の状態に転換する、という着色剤層の光学特性を可能にする。
【0086】
さらに、着色剤分子は、速いが揮発性であるスイッチングに対する活性化障壁が全くないか、又は低い場合を含むように設計されてもよい。この場合、双安定性である必要がなく、分子は、電界により1つの状態にスイッチングされ、電界が除去されると弛緩してもとの状態に戻る(「二モード性」)。実質的に、これら形態の二モード性着色剤分子は、「自己消去」する。対照的に、双安定性着色剤分子の場合、電界を除去しても着色剤分子はその状態に留まったままであり(不揮発性スイッチング)、この場合における活性化障壁の存在は、分子を以前の状態にスイッチングして戻すために、反対の電界を印加することが必要とされる。
【0087】
ロータ432及びステータ434が、すべて同一平面である場合、その分子を「より強く共役されている」という。従って、最高被占分子軌道(HOMO)及び最低空軌道(LUMO)を通って、着色剤分子の非結合性電子、又はπ電子、あるいはπ電子と非結合性電子は、分子430の大部分にわたって非局在化される。このことを、分子に関する「レッドシフト状態」、又は「光学状態I」と称する。ロータ432がステータ434に対し、約90°だけ共役から回転する場合には、分子430の共役は破壊され、HOMO及びLUMOは、分子のいくつかの小さな部分にわたって局在化され、それは「より弱く共役されている」と呼ばれる。これは、分子430の「ブルーシフト状態」又は「光学状態II」である。従って、着色剤分子430は、2つの異なる光学状態間で可逆的にスイッチング可能である。
【0088】
理想的な場合において、ロータ432及びステータ434が完全に同一平面であると分子は十分に共役し、ロータ432がステータ434に対して90°の角度で回転すると分子は共役しないことは、当業者には理解され得るであろう。しかしながら、熱変動により、これらの理想状態は完全には実現されず、従って分子は、前者の場合には「より強く共役されている」、後者の場合には「より弱く共役されている」と称される。さらに、「レッドシフト」及び「ブルーシフト」という用語は、色相との関係を表現するのではなく、むしろ、HOMO状態とLUMO状態の間におけるギャップであるエネルギーシフトの電磁エネルギースペクトル方向を表現するものであることを意味する。
【0089】
例Ia〜IIbは、分子をスイッチングするための2つの異なる配向を示す。以下の例Iaは、このモデル1に関する第1の一般的な分子の例を表す。
【0090】
【化1】
【0091】
Con1: 連結基
Con2: 連結基
SB: ステータA
SA: ステータB
A-: アクセプター(電子吸引性基)
D+: ドナー(電子供与性基)
式中、A-は、アクセプター基を表し、これは電子吸引性基である。これは、水素、カルボン酸又はその誘導体、硫酸又はその誘導体、リン酸又はその誘導体、ニトロ、ニトリル、ヘテロ原子(例えば、N、O、S、P、F、Cl、Br)、又は前記ヘテロ原子の少なくとも1つを有する官能基(例えば、OH、SH、NH等)、炭化水素(飽和又は不飽和)又は置換炭化水素のうちの1つであり得る。
【0092】
D+は、ドナー基を表し、電子供与性基である。これは、水素、アミン、OH、SH、エーテル、炭化水素(飽和又は不飽和)又は置換炭化水素、あるいはヘテロ原子(例えば、B、Si、I、N、O、S、P)の少なくとも1つを有する官能基のうちの1つであり得る。ドナーは、分子上のアクセプター基よりも電気的陰性が低いか、又は電気的陽性が高いという事実により、アクセプターと区別される。
【0093】
Con1及びCon2は、1つの分子と別の分子間、又は分子と固体基板(例えば、金属電極、無機又は有機器体基板等)間の連結基(連結ユニット)を表す。それらは、水素(水素結合を利用する)、多価ヘテロ原子(すなわち、C、N、O、S、P等)又はこれらのヘテロ原子を含有する官能基(例えば、NH、PH等)、炭化水素(飽和又は不飽和)又は置換炭化水素うちの1つであり得る。
【0094】
SA及びSBは、ステータA及びステータBを示すために本明細書中で使用される。それらは、炭化水素(飽和又は不飽和)又は置換炭化水素であり得る。典型的に、これらの炭化水素単位は、平面状態(レッドシフト状態)の場合に分子の拡大された共役に寄与する共役環を含有する。これらのステータユニットでは、それらは、ブリッジング基Gn及び/又はスペーシング基Rnを含有してもよい。ブリッジング基(たとえば、アセチレン、エチレン、アミド、イミド、イミン、アゾ等)は、典型的にステータをロータに連結するか、又は2つ又はそれ以上の共役環に連結して、所望の発色団を獲得するのに使用される。あるいは連結子は、単酸素原子を用いたエーテル架橋などの一原子架橋、又はロータ及びステータ間の直接的なシグマ結合を含んでもよい。スペーシング基(例えば、フェニル、イソプロピル又はt−ブチル等)は、適切な3次元の足場(scaffolding)を提供して、各ロータが所望の移動範囲にわたって回転するスペースを提供する一方で、分子が一緒に充填されるようにするのに使用される。
【0095】
以下の例Ibは、モデル1の実際の分子の例である。例Ibでは、ロータの回転軸は、分子の正味通電軸に対してほぼ直角であるのに対し、例2では、回転軸は、分子の配向軸に平行であるように設計される。所望の結果に依存して、これらの設計により、使用される分子膜及び分子電極の種々のジオメトリーが可能となる。
【0096】
【化2】
【0097】
式中、A-は、アクセプター基を表し、電子吸引性基であり、水素、カルボン酸又はその誘導体、硫酸又はその誘導体、リン酸又はその誘導体、ニトロ、ニトリル、ヘテロ原子(例えば、N、O、S、P、F、Cl、Br)又は前記ヘテロ原子の少なくとも1つを有する官能基(例えば、OH、SH、NH等)、炭化水素(飽和又は不飽和)又は置換炭化水素のうちの1つであり得る。
【0098】
D+は、ドナー基を表し、電子供与性基である。これは、水素、アミン、OH、SH、エーテル、炭化水素(飽和又は不飽和)又は置換炭化水素、あるいはヘテロ原子(例えば、B、Si、I、N、O、S、P)の少なくとも1つを有する官能基のうちの1つであり得る。ドナーは、分子上のアクセプター基よりも電気的陰性が低いか、又は電気的陽性が高いという事実により、アクセプターと区別される。
【0099】
Con1及びCon2は、1つの分子と他の分子間、又は分子と固体基板(例えば、金属電極、無機又は有機基板等)間の連結ユニットを表す。それらは、水素(水素結合を利用する)、多価ヘテロ原子(すなわち、C、N、O、S、P等)又はこれらのヘテロ原子を含有する官能基(例えば、NH、PH等)、炭化水素(飽和又は不飽和)又は置換炭化水素うちの1つであり得る。
【0100】
R1、R2、R3は、分子中に構築されたスペーシング基を表す。これらのスペーサーユニットの機能は、各ロータの回転スペースを提供する一方で、分子が一緒に充填されるようにする適切な3次元の足場(scaffolding)を提供するものである。これらは、水素、炭化水素(飽和又は不飽和のいずれか)又は置換炭化水素のいずれか1つであり得る。
【0101】
G1、G2、G3、及びG4は、ブリッジング基である。これらのブリッジング基の機能は、ステータ及びロータを連結するか、あるいは2つ又はそれ以上の共役環を連結して、所望の発色団を獲得することである。それらは、ヘテロ原子(例えば、N、O、S、P等)又は前記ヘテロ原子の少なくとも1つを有する官能基(例えば、NH又はNHNH等)、炭化水素(飽和又は不飽和)又は置換炭化水素のいずれか1つであり得る。あるいは、連結子は、酸素原子を用いたエーテル架橋のような単一原子架橋、又はロータとステータの間の直接的なシグマ結合を含んでもよい。
【0102】
上記例Ibにおいて、垂直な点線は、他の分子又は固体基板を表す。スイッチングの電界方向は、垂直な点線に対して直角である。そのような配座は、電気的なスイッチングに用いられ、光学的なスイッチングに対しては、結合部分を除去してもよく、分子を単に2つの電極間に配置すればよい。それらはまた、ある分子を別の分子に、あるいは分子を有機もしくは無機固体基板に結合させるために単に使用され得る。
【0103】
図Eを参照すると、上記(例Ib)に示した分子は、分子430全体の配向軸に対して直角な内部ロータ432を用いて設計されている。この場合、外部の電界は、図示するように分子430の配向軸に沿って印加され、電極(垂直な点線)は、紙面に対して直角に、かつ分子430の配向軸に対して直角に配向される。図の左から右に向かって電界を印加すると、図Eに図示したロータ432は図Gに図示した位置に回転し、またその逆に回転する場合もあり得るであろう。この場合に、図Gに図示したロータ432は、分子の残部と同一平面でなく、従って、これは分子のブルーシフトされた光学的状態であり、これに対して、図Fについて、ロータは、分子の残部と同一平面であり、従って、これは分子のレッドシフトされた光学的状態である。図示される構造は、図F(同一平面、共役)及び図G(中央部が回転、非共役)間の回転の遷移状態を表す。
【0104】
例Ibに示した分子は、色彩的に透明であるか、又はブルーシフトである。共役状態では、分子は着色しているか、又はレッドシフトである。
【0105】
例Ibの分子に関して、分子の配向軸が分子をスイッチングするのに用いられる電極の平面に直角になるように、単一の単層分子膜を、例えばラングミュア−ブロジェットの技法又は自己集合単層を用いて成長させる。電極を、従来の方法(Collier等により記載される方法等)で堆積してもよい。代わりの厚膜堆積技法としては、気相堆積、接触又はインクジェット印刷、又はスクリーン印刷が包含される。
【0106】
以下の例IIaは、このモデル1に関する第2の一般的な分子の例を表す。
【0107】
【化3】
【0108】
Con1: 連結基
Con2: 連結基
SB: ステータA
SA: ステータB
A-: アクセプター(電子吸引性基)
D+: ドナー(電子供与性基)
式中、A-は、アクセプター基を表し、電子吸引性基である。これは、水素、カルボン酸又はその誘導体、硫酸又はその誘導体、リン酸又はその誘導体、ニトロ、ニトリル、ヘテロ原子(例えば、N、O、S、P、F、Cl、Br)又は前記ヘテロ原子の少なくとも1つを有する官能基(例えば、OH、SH、NH等)、炭化水素(飽和又は不飽和)又は置換炭化水素のうちの1つであり得る。
【0109】
D+は、ドナー基を表し、電子供与性基である。これは、水素、アミン、OH、SH、エーテル、炭化水素(飽和又は不飽和)又は置換炭化水素、あるいはヘテロ原子(例えば、B、Si、I、N、O、S、P)の少なくとも1つを有する官能基のうちの1つであり得る。ドナーは、分子上のアクセプター基よりも電気的陰性が低いか、又は電気的陽性が高いという事実により、アクセプターと区別される。
【0110】
Con1及びCon2は、1つの分子と別の分子間、又は分子と固体基板(例えば、金属電極、無機又は有機基板等)間の連結基(連結ユニット)を表す。それらは、水素(水素結合を利用する)、多価ヘテロ原子(すなわち、C、N、O、S、P等)又はこれらのヘテロ原子を含有する官能基(例えば、NH、PH等)、炭化水素(飽和又は不飽和)又は置換炭化水素うちの1つであり得る。
【0111】
SA及びSBは、ステータA及びステータBを示すために本明細書中で使用される。それらは、炭化水素(飽和又は不飽和)又は置換炭化水素であり得る。典型的に、これらの炭化水素ユニットは、平面状態(レッドシフト状態)の場合に分子の拡大された共役に寄与する共役環を含有する。これらのステータユニットでは、それらは、ブリッジング基Gn及び/又はスペーシング基Rnを含有してもよい。ブリッジング基は、典型的にステータ及びロータに連結するか、あるいは2つ又はそれ以上の共役環に連結して、所望の発色団を獲得するのに使用される。あるいは連結子は、単酸素原子を用いたエーテル架橋のような一原子架橋、又はロータ及びステータ間の直接的なシグマ結合を含んでもよい。スペーシング基は、適切な3次元の足場(scaffolding)を提供して、各ロータの回転スペースを提供する一方、分子が一緒に充填されるようにする。
【0112】
以下の例IIbは、モデル1の別の実際の分子の例である。
【0113】
【化4】
【0114】
式中、A-は、アクセプター基を表し、電子吸引性基である。これは、水素、カルボン酸又はその誘導体、硫酸又はその誘導体、リン酸又はその誘導体、ニトロ、ニトリル、ヘテロ原子(例えば、N、O、S、P、F、Cl、Br)又は前記ヘテロ原子の少なくとも1つを有する官能基(例えば、OH、SH、NH等)、炭化水素(飽和又は不飽和)又は置換炭化水素のうちの1つであり得る。
【0115】
D+は、ドナー基を表し、電子供与性基である。これは、水素、アミン、OH、SH、エーテル、炭化水素(飽和又は不飽和)又は置換炭化水素、あるいはヘテロ原子(例えば、B、Si、I、N、O、S、P)の少なくとも1つを有する官能基のうちの1つであり得る。ドナーは、分子上のアクセプター基よりも電気的陰性が低いか、又は電気的陽性が高いという事実により、アクセプターと区別される。
【0116】
Con1及びCon2は、1つの分子と別の分子間、又は分子と固体基板(例えば、金属電極、無機又は有機基板等)間の連結ユニットを表す。それらは、水素(水素結合を利用する)、多価ヘテロ原子(すなわち、C、N、O、S、P等)又はこれらのヘテロ原子を含有する官能基(例えば、NH、PH等)、炭化水素(飽和又は不飽和)又は置換炭化水素うちの1つであり得る。
【0117】
R1、R2、及びR3は、分子中に構築されたスペーシング基を表す。これらのスペーサーユニットの機能は、適切な3次元の足場(scaffolding)を提供して、各ロータの回転スペースを提供する一方、分子が一緒に充填されるようにする。それらは、水素、炭化水素(飽和又は不飽和のいずれか)又は置換炭化水素のいずれか1つであり得る。
【0118】
G1、G2、G3、G4、G5、G6、G7、及びG8は、ブリッジング基である。これらのブリッジング基の機能は、ステータ及びロータを連結するか、又は2つ又はそれ以上の共役環を連結して、所望の発色団を獲得することである。それらは、ヘテロ原子(例えば、C、N、O、S、P等)又は前記ヘテロ原子の少なくとも1つを有する官能基(例えば、NH又はNHNH等)、炭化水素(飽和又は不飽和)又は置換炭化水素のいずれか1つであり得る。あるいは、連結子は、酸素原子を用いたエーテル架橋のような単一原子架橋、又はロータ及びステータ間の直接的なシグマ結合を含んでもよい。
【0119】
J1及びJ2は、分子内に構築されたチューニング基を表す。これらのチューニング基(例えば、OH、NHR、COOH、CN、ニトロ等)の機能は、適切な機能効果(例えば、誘導効果及び共鳴効果)及び/又は立体効果を提供することである。機能効果は、分子のバンドギャップ(ΔEHOMO/LUMO)を調整して、分子の所望の電子的特性ならびに光学的特性を獲得することである。立体効果は、分子の配向の双安定性又は多安定性を提供するよう立体障害、分子間又は分子内相互作用力(例えば、水素結合、クーロン相互作用、ファンデルワールス力)により分子の立体配座を調整することである。それらは、水素、ヘテロ原子(例えば、N、O、S、P、B、F、Cl、Br及びI)、前記ヘテロ原子の少なくとも1つを有する官能基、炭化水素(飽和又は不飽和)又は置換炭化水素のいずれか1つであり得る。
【0120】
上記(例IIb)に示した分子は、分子全体の配向軸に対して平行な内部ロータを用いて設計されている。この場合、外部電界は、分子軸に垂直に印加され、電極は、分子の長軸に対して平行に向き、上記モデル構造の平面に対して表面上は直角又は平行であり得る。例えば、例IIbに示す上方の分子(光学状態I)に、磁力線が分子軸に対して直角であり、かつ上方を指示する電界を印加すると、下方の分子の図(光学状態II)に示すように、図示されたロータが約90度回転して、(ロータの)端部を見せ、またその逆の回転の場合もあり得るだろう。この場合に、図の下方に示したロータは、分子の残部と同一平面でなく、従って、これは分子のブルーシフトされた光学的状態又は光学状態IIであるのに対して、図の上方に関して、ロータは、分子の残部と同一平面であり、従って、これは分子のレッドシフトされた光学的状態又は光学状態Iである。N、H、及びOという文字は、それらの通常の意味を保有する。
【0121】
図Eは、例Ib及びIIbの分子に類似した分子を表すが、より簡潔に、中間ロータ部分432及び2つの末端ステータ部分434を含む。例Ib及びIIbに示すように、ロータ部分432は、双極子を有するロータを与える置換基で提供されるベンゼン環を含む。2つのステータ部分434は、それぞれアゾ結合を介してベンゼン環に共有結合され、ステータ部分の両方は芳香環を含む。
【0122】
図Fは、ロータ432及びステータ434すべてが同一平面である平面状態を示す概略図(透視図)である。平面状態では、分子430は、完全に共役しており、色を示し(第1の分光又は光学状態)、比較的より誘電性である。環の共役は、分子430の平面の上方及び下方それぞれのπ軌道雲500a及び500bにより示される。
【0123】
図Gは又、ロータ432が、同一平面を保っているロータ434に関して90°回転した状態を示す概略図(透視図)である。回転状態では、分子430の共役は破壊されている。従って、分子430は、透明であり(第2の分光又は光学状態)、比較的より低い導電性である。
【0124】
例IIbの分子に関して、分子軸が電極の平面に平行であるように膜を構築する。これは、複数の単層厚である膜を含んでもよい。分子は、大きなステータ基が分子間相互作用又は支持体構造への直接結合によって適所に固定される固体状態又は液晶を形成するが、ロータは、分子の格子内に移動するのに十分小さい。この型の構造は、電界制御ディスプレイを構築するのに使用することができる。
モデル(2a):バンドの局在化の増加又は減少に伴う電荷の分離又は再結合を介した拡大された共役の変化により生じる、電界誘導のバンドギャップ変化
図Iは、このモデルの概略図であり、それはバンドの局在化の増加又は減少に伴う電荷の分離又は再結合を介した拡大された共役の変化により生じる、電界が引き起こすバンドギャップ変化を含む。図Iに示すように、分子630は、2つの部分632及び634を含む。分子630は、π非局在化がより小さい、大きなバンドギャップ状態を示す。電界が印加されると、分子630に電荷の分離が生じ、より良好なπ非局在化を伴う小さなバンドギャップを生じる結果となる。電荷の再結合は、分子630をもとの状態に戻す。
【0125】
このモデルでは、以下の要件を満たさなければならない。
(a)分子は、程度の低い誘電率εγを有さなくてはならず、外部電界により容易に分極することができ、εγは、2〜10の範囲であり、分極電界は、0.01〜10V/nmの範囲である、
(b)分子の少なくとも1つのセグメントは、分子全体もしくは分子の一部にわたって移動することができる、非結合性電子、又はπ電子、あるいはπ電子と非結合性電子を有さなくてはならない、
(c)分子は、対称又は非対称であり得る、
(d)分子の誘導性双極子(複数可)は、少なくとも1つの方向に配向され得る、
(e)電荷は、電界が引き起こす分極の間に、部分的に又は完全に分離される、
(f)電荷の分離又は再結合の状態は、電界依存性又は双安定性であり、共有結合形成、水素結合、電荷引力、クーロン力、金属錯体、又はルイス酸(塩基)錯体等の分子間力又は分子内力により安定化され得る、
(g)分子の電荷の分離又は再結合のプロセスは、σ結合及びπ結合の破壊又は形成を含み得るか、又は含むことができない、及び
(h)電界により活性化される電荷の分離又は再結合プロセス中に、分子のバンドギャップは、分子における非結合性電子、又はπ電子、あるいはπ電子と非結合性電子の非局在化の度合いに依存して変化するであろう。従って、分子の光学的特性及び電気的特性の両方は、変化する。
【0126】
結合破壊もしくは結合形成を含む電荷の分離又は再結合を介する、電界が引き起こすバンドギャップ変化(色の変化)の一例を以下に示す(例III)。
【0127】
【化5】
【0128】
式中、J1、J2、J3、J4及びJ5は、分子に構築されたチューニング基を表す。これらのチューニング基(例えば、OH、NHR、COOH、CN、ニトロ等)の機能は、適切な機能効果(例えば、誘導効果及び共鳴効果)及び/又は立体効果を提供することである。機能効果は、分子のバンドギャップ(ΔEHOMO/LUMO)を調整して、分子の所望の電子的特性ならびに光学的特性を獲得することである。立体効果は、分子の配向の双安定性又は多安定性を提供するよう立体障害、分子間又は分子内相互作用力(例えば、水素結合、クーロン相互作用、ファンデルワールス力)により分子の立体配座を調整することである。それらは、水素、ヘテロ原子(例えば、N、O、S、P、B、F、Cl、Br、及びI)、前記ヘテロ原子の少なくとも1つを有する官能基、炭化水素(飽和又は不飽和)又は置換炭化水素のいずれか1つであり得る。
【0129】
G1は、ブリッジング基である。ブリッジング基の機能は、2つ又はそれ以上の共役環を連結して、所望の発色団を獲得することである。ブリッジング基は、ヘテロ原子(例えば、N、O、S、P等)又は前記へテロ原子の少なくとも1つを有する官能基(例えば、NH等)、炭化水素又は置換炭化水素のいずれか1つであり得る。
【0130】
Wは、電子吸引性基である。この基の機能は、この分子の無水マレイン酸基の反応性を調整し、印加される外部電界の影響下にて分子が円滑に電荷の分離又は再結合(結合の破壊又は形成等)を受けることができるようにすることである。電子吸引性基は、カルボン酸又はその誘導体(例えば、エステル又はアミド等)、ニトロ、ニトリル、ケトン、アルデヒド、スルホン、硫酸又はその誘導体、ヘテロ原子(例えば、F、Cl等)又はヘテロ原子(例えば、F、Cl、Br、N、O、S等)の少なくとも1つを有する官能基のいずれか1つであり得る。
【0131】
分子−金属錯体又は分子−ルイス酸錯体の形成を含む、電界によって引き起こされるバンドギャップ変化の例を以下に示す(例IV)。
【0132】
【化6】
【0133】
式中、J1、J2、J3、J4及びJ5は、分子内に構築されたチューニング基を表す。これらのチューニング基(例えば、OH、NHR、COOH、CN、ニトロ等)の機能は、適切な機能効果(例えば、誘導効果及び共鳴効果)及び/又は立体効果を提供することである。機能効果は、分子のバンドギャップ(ΔEHOMO/LUMO)を調整して、分子の所望の電子的特性ならびに光学的特性を獲得することである。立体効果は、分子の配向の双安定性又は多安定性を提供するよう立体障害、分子間又は分子内相互作用力(例えば、水素結合、クーロン相互作用、ファンデルワールス力)により分子の立体配座を調整することである。それらは、水素、ヘテロ原子(例えば、N、O、S、P、B、F、Cl、Br、及びI)、前記へテロ原子の少なくとも1つを有する官能基、炭化水素(飽和又は不飽和)又は置換炭化水素のいずれか1つであり得る。
【0134】
G1は、ブリッジング基である。ブリッジング基の機能は、2つ又はそれ以上の共役環を連結して、所望の発色団を獲得することである。ブリッジング基は、ヘテロ原子(例えば、N、O、S、P等)又は前記へテロ原子の少なくとも1つを有する官能基(例えば、NH等)、炭化水素又は置換炭化水素のいずれか1つであり得る。
【0135】
M+は、遷移金属を含む金属、又はそれらのハロゲン錯体、あるいはH+又は他の型のルイス酸(複数可)を表す。
モデル(2b):電荷の分離又は再結合及びπ結合の破壊又は形成を介した拡大された共役の変化により生じる、電界によって引き起こされるバンドギャップ変化
図Jは、このモデルの概略図であり、電荷の分離又は再結合及びπ結合の破壊又は形成を介した拡大された共役の変化により生じる、電界によって引き起こされるバンドギャップ変化を含む。図Jに示すように、分子630’は、2つの部分632’及び634’を含む。分子630’は、より小さいバンドギャップ状態を示す。電界が印加されると、分子630’にてπ結合の破壊が生じ、より大きなバンドギャップ状態を生じる結果となる。電界を逆転させると、2つの部分632’及び634’間のπ結合が再結合され、分子630’はもとの状態に戻る。
【0136】
このモデルで満たさなければならない要件は、モデル2(a)に関して列挙したのと同じである。
【0137】
電荷の分離(σ結合破壊及びπ結合形成)を介した拡大された共役により生じる、電界によって引き起こされるバンドギャップ変化の一例を以下に示す(例V)。
【0138】
【化7】
【0139】
式中、Qは、本明細書中では、2つのフェニル環の間の連結ユニットを示すために用いられる。これは、S、O、NH、NR、炭化水素又は置換炭化水素のいずれか1つであり得る。
【0140】
Con1及びCon2は、1つの分子と別の分子間、又は分子と固体基板(例えば、金属電極、無機又は有機基板等)間の連結基を表す。それらは、水素(水素結合を介して)、ヘテロ原子(すなわち、N、O、S、P等)又は前記ヘテロ原子の少なくとも1つを有する官能基(例えば、NH等)、炭化水素(飽和又は不飽和)又は置換炭化水素うちのいずれか1つであり得る。
【0141】
R1及びR2は、分子中に構築されたスペーシング基を表す。これらのスペーサーユニットの機能は、適切な3次元の足場(scaffolding)を提供して、各ロータの回転スペースを提供する一方、分子が一緒に充填されるようにすることである。それらは、水素、炭化水素(飽和又は不飽和)又は置換炭化水素のいずれか1つであり得る。
【0142】
J1、J2、J3、及びJ4は、分子に構築されたチューニング基を表す。これらのチューニング基(例えば、OH、NHR、COOH、CN、ニトロ等)の機能は、適切な機能効果(例えば、誘導効果及び共鳴効果)及び/又は立体効果を提供することである。機能効果は、分子のバンドギャップ(ΔEHOMO/LUMO)を調整して、分子の所望の電子特性ならびに光学特性を獲得することである。立体効果は、分子の配向の双安定性又は多安定性を提供するよう立体障害、分子間又は分子内相互作用力(例えば、水素結合、クーロン相互作用、ファンデルワールス力)により分子の立体配座を調整することである。それらはまた、適切な3次元の足場(scaffolding)を提供して、各ロータの回転スペースを提供する一方、分子が一緒に充填されるようにする、スペーシング基としても使用される。それらは、水素、ヘテロ原子(例えば、N、O、S、P、B、F、Cl、Br、及びI)、前記ヘテロ原子の少なくとも1つを有する官能基、炭化水素(飽和又は不飽和)又は置換炭化水素のいずれか1つであり得る。
【0143】
G1は、ブリッジング基である。ブリッジング基の機能は、ステータ及びロータを連結するか、あるいは2つ又はそれ以上の共役環を連結して、所望の発色団を獲得することである。ブリッジング基は、ヘテロ原子(例えば、N、O、S、P等)又は前記ヘテロ原子の少なくとも1つを有する官能基(例えば、NH又はNHNH等)、炭化水素(飽和又は不飽和)又は置換炭化水素のいずれか1つであり得る。
【0144】
W1は、電子吸引性基である。この基の機能は、この分子のラクトン基の反応性を調整し、印加される電界の影響下にて分子が円滑に電荷の分離又は再結合(結合の破壊又は形成等)を受けることができるようにすることである。電子吸引性基は、カルボン酸又はその誘導体(例えば、エステル又はアミド等)、ニトロ、ニトリル、ケトン、アルデヒド、スルホン、硫酸又はその誘導体、ヘテロ原子(例えば、F、Cl等)又はヘテロ原子(例えば、F、Cl、Br、N、O及びS等)の少なくとも1つを有する官能基、炭化水素(飽和又は不飽和)又は置換炭化水素のいずれか1つであり得る。
【0145】
例Vにおいて、一番上の分子構造は、一番下の分子構造よりも小さなバンドギャップ状態を有する。
【0146】
電荷の再結合及びσ結合の形成を介した拡大されたπ結合共役の破壊による電界によって引き起こされるバンドギャップ変化の別の例を以下に示す(例VI)。
【0147】
【化8】
【0148】
式中、Qは、本明細書中では、2つのフェニル環の間の連結ユニットを示すために用いられる。それは、S、O、NH、NR、炭化水素又は置換炭化水素のいずれか1つであり得る。
【0149】
Con1及びCon2は、1つの分子と別の分子間、又は分子と固体基板(例えば、金属電極、無機又は有機基板等)間の連結基を表す。それらは、水素、ヘテロ原子(すなわち、N、O、S、P等)又は前記ヘテロ原子の少なくとも1つを有する官能基(例えば、NH等)、炭化水素(飽和又は不飽和)又は置換炭化水素のいずれか1つであり得る。
【0150】
R1及びR2は、分子中に構築されたスペーシング基を表す。これらのスペーサーユニットの機能は、適切な3次元の足場(scaffolding)を提供して、各ロータの回転スペースを提供する一方、分子が一緒に充填されるようにすることである。それらは、水素、炭化水素(飽和又は不飽和)又は置換炭化水素のいずれか1つであり得る。
【0151】
J1、J2、J3、及びJ4は、分子内に構築されたチューニング基を表す。これらのチューニング基(例えば、OH、NHR、COOH、CN、ニトロ等)の機能は、適切な機能効果(例えば、誘導効果及び共鳴効果)及び/又は立体効果を提供することである。機能効果は、分子のバンドギャップ(ΔEHOMO/LUMO)を調整して、分子の所望の電子的特性ならびに光学的特性を獲得することである。立体効果は、分子の配向の双安定性又は多安定性を提供するよう立体障害、分子間又は分子内相互作用力(例えば、水素結合、クーロン相互作用、ファンデルワールス力)により分子の立体配座を調整することである。それらはまた、適切な3次元の足場(scaffolding)を提供して、各ロータの回転スペースを提供する一方、分子が一緒に充填されるようにするスペーシング基としても使用され得る。それらは、水素、ヘテロ原子(例えば、N、O、S、P、B、F、Cl、Br、及びI)、前記ヘテロ原子の少なくとも1つを有する官能基、炭化水素(飽和又は不飽和)又は置換炭化水素のいずれか1つであり得る。
【0152】
G1は、ブリッジング基である。ブリッジング基の機能は、ステータ及びロータを連結するか、あるいは2つ又はそれ以上の共役環を連結して、所望の発色団を獲得することである。ブリッジング基は、ヘテロ原子(例えば、N、O、S、P等)又は前記ヘテロ原子の少なくとも1つを有する官能基(例えば、NH又はNHNH等)、炭化水素(飽和又は不飽和)又は置換炭化水素のいずれか1つであり得る。
【0153】
W1は、電子吸引性基である。この基の機能は、この分子のラクトン基の反応性を調整し、印加される電界の影響下にて分子が円滑に電荷の分離又は再結合(結合破壊又は形成等)を受けることができるようにすることである。電子吸引性基は、カルボン酸又はその誘導体(例えば、エステル又はアミド等)、ニトロ、ニトリル、ケトン、アルデヒド、スルホン、硫酸又はその誘導体、ヘテロ原子(例えば、F、Cl等)又はヘテロ原子(例えば、F、Cl、Br、N、O、S等)の少なくとも1つを有する官能基、炭化水素(飽和又は不飽和)又は置換炭化水素の少なくとも1つを有する官能基のいずれか1つであり得る。
【0154】
さらに、例VIにおいて、一番上の分子構造は、一番下の分子構造よりも小さなバンドギャップ状態を有する。
【0155】
本発明は、インク又は色素分子を変化させて、これまでに記載されているエレクトロクロミック材料又は色素生成材料とは完全に異なる機構により外部電界を用いてスイッチング可能な活性デバイスにする。その概念は、ラクトンのC−O結合が、十分に不安定で、印加される電界の影響下にて、結合の破壊及び形成を受け得る(上記例V及び例VIを参照)、改質クリスタルバイオレットラクトン型分子を使用することである。
【0156】
正の電荷及び負の電荷は、C−O結合破壊プロセス中に生成する。得られた電荷は分離して、反対方向の、印加される外部電界(分子の上部)又は結合回転(分子の下部)に対して平行に移動するであろう。分子の拡大された双極子(上部及び下部)を有する2つの芳香環は、完全に共役し、色(レッドシフト)が生じる(例V参照)。しかしながら、分子は、水素結合、クーロン、又は双極子−双極子相互作用のような分子間力及び/又は子内力、ならびに立体反発を有するように、あるいは不変の外部電荷により、この特定配向の両方の電荷を安定化するように設計される。従って、初期の配向から分子を外すには、大きな電界が必要である。特定配向に一旦スイッチングされると、分子は、電界が消えるまでその配向を保つであろう。
【0157】
逆の電界が印加されると(例VI)、両方の電荷は、その逆の外部電界の方向に再整列する傾向がある。分子の上部の正の電荷は、非結合性電子、又はπ電子、あるいはπ電子と非結合性電子の非局在化を介して分子の側面から分子の中央部(トリアリールメタン位置)に移動するであろう。同様に、負に荷電した分子の下部は、C−C結合回転を介して外部電界のほうに近づいて移動する傾向にあろう。分子設計の重要な構成要素は、分子の下部(負に荷電した領域)が完全な180°の半サイクルで回転することを妨げるであろう、CO2とJ3基及びJ4基間の立体及び静電反発が存在することである。その代わりに、初期配向から典型的に90°の角度にある下部及び上部における嵩高な基の立体的相互作用により、回転は停止される。さらに、この90°の配向は、C−O結合形成及び電荷の再結合により安定化される。このプロセス中、トリアリールメタン位置にて四面体炭素(アイソレーター)が形成される。分子の共役は破壊され、HOMO及びLUMOは、もはや分子の上部全体にわたって非局在化しない。これは、電子により占有される体積の大きさを縮小する効果を有し、HOMO−LUMOギャップを増加させる。ブルーシフトカラー又は透明状態は、このプロセス中に生じるであろう。
【0158】
着色インク及び色素分子について、ちょうど分子の片面と中心位置間における正電荷移動の制限は重要である。他の重要な要素は、ステータ(分子の上部)から光学的に有意な角度(表面上、10〜170°)により分離される2つの状態間のロータ(分子の下部)をスイッチングする能力である。分子内電荷の分離が最大距離に達すると、分子の最上部のほとんどが完全に共役するようになる。従って、分子のπ電子又はπ電子と非結合性電子は、最高被占有分子軌道(HOMO)及び最低非占有分子軌道(LUMO)により、上部のほとんどの領域にわたって非局在化される。この効果は、箱(箱が分子全体の大きさである場合)における量子力学的粒子に関する効果と同一である。すなわち、軌道が非局在化されるとき、HOMO及びLUMO間のギャップは比較的小さい。この場合、分子のHOMO−LUMOギャップは、インク又は色素の所望の色を得るように設計される。全平行な構造に関するHOMO−LUMOギャップは、分子の異なる芳香環上に様々な化学基(J1、J2、J3、J4及びW)を置換することにより調整することができる。ロータ(分子の下部)が、ロータ及びステータに結合した化学置換基(J1、J2、J3、J4及びW)の性質に依存してステータ(分子の上部)に対して10〜170°で回転する場合には、HOMO−LUMOギャップの増加は、全平行な構造の色に関してブルーシフトである色に対応するであろう。十分にシフトすると、新たなHOMO−LUMOギャップが十分に大きい場合、分子は透明になる。従って、分子は、2つの色の間を、又はある色から透明状態へスイッチング可能である。
【0159】
例V及びVIは、外部から印加される電界の影響下における代表的なスイッチング可能な分子の2つの異なる状態を示す。この特定型の分子に関して、十分に厚い分子膜を、分子の配向軸が分子をスイッチングするのに用いられる電極の平面に対して直角であるように、例えば、ラングミュア−ブロジェッドの技法、気相堆積、又は電気化学的堆積を用いて成長させる。別の堆積技法は、基板上に厚膜被覆(例えば、リバースロール)又はスピン被覆され、続いて分子を配向させる電界にその被覆をさらす間に重合されるか(例えば、UV照射による)、又は乾燥される、モノマー/オリゴマー又は溶媒ベースの溶液として、分子を懸濁することである。最上部の電極は、インジウム−酸化錫などの透明な導体であってもよく、膜を、分子軸が電極の平面に対して平行であるように成長させる。分子は、大きなステータ基が分子間相互作用又は支持体構造への直接結合により適所に固定される固体状態又は液晶を形成するが、ロータは、分子の格子内に移動するのに十分小さい。
モデル(3):分子の折りたたみ又は伸びを介した電界によって引き起こされるバンドギャップ変化
図Kは、このモデルの概略図であり、これは分子の折りたたみ又は伸びを介した、拡大された共役の変化により生じる電界によって引き起こされるバンドギャップ変化を含む。図Kに示すように、分子730は、3つの部分732、734及び736を含む。分子730は、分子の大きな領域による拡大された共役に起因した、より小さいバンドギャップ状態を示す。電界が印加されると、中央の部分734に関する分子の折りたたみに起因して、分子730にて共役の破壊が生じ、分子の大きな領域における非拡大共役に起因するより大きなバンドギャップ状態を生じる結果となる。逆の電界が印加されると、分子730は広がって、分子730はもとの状態に戻る。分子730の中央部734の伸びと弛緩は、同じ効果を有する。
【0160】
このモデルでは、以下の要件を満たさなければならない。
(a)分子は、少なくとも2つのセグメントを有さなくてはならない、
(b)幾つかのセグメント(部分)は、HOMO、LUMO、及びその近傍の軌道に関与する非結合性電子、又はπ電子、あるいはπ電子と非結合性電子を有するべきである、
(c)分子は、対称であるか、又は片側にドナー基及び別の側にアクセプター基を有する非対称であり得る、
(d)分子の少なくとも1つのセグメントは、水素結合、ファンデルワールス力、クーロン引力もしくは金属錯体形成などの分子内力又は分子間力により、折りたたみ状態又は伸び状態の両方を安定化するのを助長するであろう幾つかの官能基を有する、
(e)分子の折りたたみ状態又は伸び状態は、電界によりアドレス指定可能でなくてはならない、
(f)少なくとも1つの状態(推定では完全に伸びした状態)において、分子の非結合性電子、又はπ電子、あるいはπ電子と非結合性電子は、十分非局在化され、分子のπ電子とp電子は、他の状態(複数可)では局在化されるか、又は部分的にのみ非局在化されるであろう、
(g)分子のバンドギャップは、非結合性電子、又はπ電子、あるいはπ電子と非結合性分子の非局在化の度合いに依存して変化する一方で、分子は、印加された外部電界により折りたたまれるか又は伸びされ、この型の変化もまた同様に、分子の電気的特性又は光学的特性に影響を及ぼすであろう、
(h)この特徴は、光スイッチ又は電気スイッチ、ゲート、保存又はディスプレイ用途のために、これらの型の分子を適用させ得る。
【0161】
分子の折りたたみ又は伸びを介した電界によって引き起こされるバンドギャップ変化の例を以下に示す(例VII)。
【0162】
【化9】
【0163】
式中、R1及びR2は、分子中に構築されたスペーシング基を表す。それらは水素、炭化水素(飽和又は不飽和)又は置換炭化水素のいずれか1つであり得る。
【0164】
J1、J2、J3、J4及びJ5は、分子内に構築されたチューニング基を表す。これらのチューニング基(例えば、OH、NHR、COOH、CN、ニトロ等)の機能は、適切な機能効果(例えば、誘導効果及び共鳴効果)及び/又は立体効果を提供するために使用される。機能効果は、分子のバンドギャップ(ΔEHOMO/LUMO)を調整して、分子の所望の電子的特性ならびに光学的特性を獲得することである。立体効果は、分子の配向の双安定性又は多安定性を提供するよう立体障害、分子間又は分子内相互作用力(例えば、水素結合、クーロン相互作用、ファンデルワールス力)により分子の立体配座を調整することである。それらはまた、スペーシング基として用いられてもよい。それらは、水素、ヘテロ原子(例えば、N、O、S、P、B、F、Cl、Br、及びI)、前記ヘテロ原子の少なくとも1つを有する官能基、炭化水素(飽和又は不飽和)又は置換炭化水素のいずれか1つであり得る。
【0165】
Y及びZは、分子間又は分子内水素結合を形成するであろう官能基である。それらは、SH、OH、アミン、炭化水素、又は置換炭化水素のいずれか1つであり得る。
【0166】
例7において、上方の分子は、分子の局在化した共役の様々な部分に起因する、より大きなバンドギャップを有し、一方、下方の分子は、分子の大きな領域により拡大された共役に起因する、より小さなバンドギャップを有する。
【図面の簡単な説明】
【図1AA】従来技術によるLCD画面装置の概略的な立面図である。
【図1BB】従来技術による典型的な電子インク装置を示す図である。
【図1CC】従来技術によるXerox Gyricon球体の概略図である。
【図1DD】図1BB及び図1CCに示されるような従来技術に関連する物理現象を表す概略図である。
【図2AA】本発明による印刷媒体のユニットの拡大された斜視図を示す概略図である。
【図2BB】図2AAの拡大詳細図である。
【図3AA】図2AA及び図2BBに示されるような本発明による書込み−消去のための第1の方法及び装置の概略図である。
【図4AA】図2AA及び図2BBに示されるような本発明による書込み−消去のための第2の方法及び装置の概略図である。
【図5AA】図2AAから図4AAによって示された本発明の別の実施形態を示す図である。
【図6AA】本発明による概略的な電気回路図である。
【図7AA】図1DDと比較するため、図2AAから図4AAに示された本発明に関連する物理現象を示す概略図である。
【図A】補足説明に記載される印刷媒体ユニットの基体と電極アレイの組み合わせを示した概略図である。
【図B】色の異なりを示す画素の平面図である。
【図C】図Aと同様の概略図であり、さらなる電極アレイとの組み合わせを示す。
【図D】印加された電界と得られる画素パターンを示す説明図である。
【図E】本発明の代替の一実施態様の分子の構造を示す図である。
【図F】図Eの分子のロータ432とステータ434がすべて同一平面上にある平面状態を示す概略透視図である。
【図G】図Eの分子のロータ432が同一平面上にある状態から90°回転した状態を示す概略透視図である。
【図H】本発明の一実施態様の分子モデル(モデルI)の概略図である。
【図I】本発明の一実施態様の分子モデル(モデル(IIa))の概略図である。
【図J】本発明の一実施態様の分子モデル(モデル(IIb))の概略図である。
【図K】本発明の一実施態様の分子モデル(モデル(III))の概略図である。
【符号の説明】
200、200’ 媒体
201 コーティング
202 基体
203 エレクトロクロミック分子
301、303、305、403、405 電極
307、401、505 電界
501 反射性表面
503 コーティング
507 保護層
701 着色状態
703 透明状態
Claims (12)
- 基体のための着色剤であって、前記着色剤が分子システムからなり、前記分子システムがエレクトロクロミックな切替え可能分子を含み、
ここで前記分子が以下の例Iaもしくは例IIaの一般式を有する少なくとも一つの分子からなり;
A - は、アクセプター基を表し、水素、カルボン酸又はその誘導体、硫酸又はその誘導体、リン酸又はその誘導体、ニトロ、ニトリル、ヘテロ原子(例えば、N、O、S、P、F、Cl、Br)、又は前記ヘテロ原子の少なくとも1つを有する官能基(例えば、OH、SH、NH等)、炭化水素(飽和又は不飽和)又は置換炭化水素のうちの1つであり得る。
D + は、ドナー基を表し、水素、アミン、OH、SH、エーテル、炭化水素(飽和又は不飽和)又は置換炭化水素、あるいはヘテロ原子(例えば、B、Si、I、N、O、S、P)の少なくとも1つを有する官能基のうちの1つであり得、分子上のアクセプター基よりも電気的陰性が低いか、又は電気的陽性が高いという事実により、アクセプターと区別される。
Con 1 及びCon 2 は、1つの分子と別の分子間、又は分子と固体基板(例えば、金属電極、無機又は有機器体基板等)間の連結基(連結ユニット)を表し、水素(水素結合を利用する)、多価ヘテロ原子(すなわち、C、N、O、S、P等)又はこれらのヘテロ原子を含有する官能基(例えば、NH、PH等)、炭化水素(飽和又は不飽和)又は置換炭化水素うちの1つであり得る。〕
前記分子の各々が、少なくとも2つの光学的に識別可能な状態の間で選択的に切替え可能であり、
前記分子の各々が、分子配座の変化又は異性化を介した、局所的な電界によって引き起こされるバンドギャップの変化を示し、
前記分子の各々が、少なくとも1つの固定部分と少なくとも1つの回転部分を含み、前記回転部分は電界が印加されると第1の状態から第2の状態に回転し、前記第1の状態では前記分子システム全体にわたって延長共役が存在し、結果としてバンドギャップが相対的に小さくなり、また前記第2の状態では、前記延長共役が破壊され、結果としてバンドギャップが相対的に大きくなり、
前記システムが、前記基体上に分布可能であって消去可能に書込み可能な表面を形成する、着色剤。 - 前記分子が双安定性であり、持久性の構成部品が提供される、請求項1に記載の着色剤。
- 複数層からなる分子の着色剤層を含み、前記各層において分子が透明状態又は原色状態にあり、多色層のが画素の重ね合わせを通じてフルカラーイメージングのレンダリングが可能である、請求項1に記載の着色剤。
- 前記分子が異なる状態の間で低い活性化障壁を有し、高速の非持久性切替が提供される、請求項1に記載の着色剤。
- 前記分子が3つ以上の状態を有し、非持久性切替を形成すべく減少又は増大する電界を印加することにより光学特性が連続的に調整されるか、又は少なくとも1つの分子活性化障壁を通じて切替えを行うべく電圧パルスを印加して選択された組成領域の色が急激に変化するよう切替え可能である、請求項1に記載の着色剤。
- 前記分子システムが、選択した分子を、透明状態と着色状態との間で変化させる、請求項1に記載の着色剤。
- 前記分子システムが、前記分子によって形成される、選択された画像素子を、2つの視覚的に異なる着色状態間で切り替えるよう構成されている、請求項1に記載の着色剤。
- 前記分子システムが、前記分子によって形成される、選択された画像素子を、透明状態と着色状態の間で切り替えるよう構成される、請求項1に記載の着色剤。
- 前記分子システムが、1つの屈折率と別の屈折率の間で変化する、請求項1に記載の着色剤。
- 前記分子が双安定性である、請求項1に記載の着色剤。
- 前記分子が2モード性である、請求項1に記載の着色剤。
- 前記分子が、前記基体の表面に、離散したアドレス指定可能な画像素子を形成するよう配列される、請求項1に記載の着色剤。
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