JP3525934B2 - 層状媒体及び発光ダイオード - Google Patents

層状媒体及び発光ダイオード

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Description

【発明の詳細な説明】 技術分野 本発明は、様々な配座において基板の表面に密着する
ことのできる分子、1つの配座から他の配座に切り替え
ることによりこのような分子の層にパターン形成する方
法、ならびにこのようなパターン形成した層の、リソグ
ラフィ、データ記憶、および表示技術への使用に関する
ものである。
背景技術 過去40年にわたるコンピュータ技術の劇的な進歩は、
3つの基本的なハードウェア要素、すなわち記憶装置、
プロセッサ、およびディスプレイの他に比を見ない発達
によるものである。3つの分野のすべてにおいて、表面
構造化の技術および科学は不可欠な重要性を有する。小
型化および高密度化の傾向は、性能、信頼性、および生
産性の改善とあいまって、表面および境界面の、分子ま
たは原子レベルまでの良好な制御をますます必要とす
る。
現在、集積回路および記憶装置の設計の基準は、最も
重要な従来の構造化技術には、原理的な限界に近づいて
いるものがあるほど小さくなっている。たとえば、標準
的な光学リソグラフィは、波長の約2分の1、紫外線放
射については約140nmより大きい寸法が限界である。CD
−ROMのビットサイズは、現在の発光ダイオードは波長
が800ないし1000nmの赤色光を放射するため、約0.5μm
に制限される。明らかに、設計基準をさらに減少させる
ためには新しい技術を必要とする。
ディスプレイ技術に関しては、パネル設計がフラット
化の傾向にあるため、大型のマトリックス・アドレス可
能な画素アレイの必要性が増大している。ここでの技術
的な問題は、小型化ではなく、エネルギー効率、収率、
およびコストである。現在、液晶ディスプレイ(LCD)
がフラット・パネル技術で主要な役割を果たしている。
LCDセルは、電圧を適当に供給することにより、光の透
過性が変化する。薄膜トランジスタ(TFT)のアレイ
が、個々のLCDセルをオン・オフすることにより、優れ
たコントラストが達成される。しかし、この方法は高価
であり、TFT−LCDも相応して高価である。さらに、LCD
は外部光源、すなわち白色光をフィルタに通すことによ
り得られる各種の色により照射されなければならないた
め、一般にエネルギー効率が悪いという欠点がある。こ
れらの欠点のため、ディスプレイ業界はLCD技術に代わ
る可能性のある技術への関心が大きい。
発光ダイオード(LED)は、LCDよりエネルギー効率が
高いが、現在入手できるLEDは大規模ディスプレイ・パ
ネルには高価すぎる。したがって、この分野での現在の
研究開発活動は特に、低コスト大量生産に有望な有機LE
D(OLED)に集中している。OLEDの設計および特性に関
する概要は、J.R.シーツ(J.R.Sheats)、H.アントニア
ディス(H.Antoniadis)、M.ヒューシェン(M.Huesche
n)、W.レオナード(W.Leonard)、J.ミラー(J.Mille
r)、R.ムーン(R.Moon)、D.ロイトマン(D.Roitma
n)、およびA.ストッキング(A.Stocking)、「Organic
Electroluminescent Devices」、Science、Vol.273、
p.884、1996年に記載されている。主として、OLEDは金
属電極と透明な半導体電極との間に挟まれた重合体の層
で構成される。現在のOLEDの主な欠点は、環境との化学
的相互作用、および電極材料に対する重合体の電子的特
性の整合が悪いために必要とされる、過度に高いエネル
ギーでの電子注入による劣化により耐用寿命が短いこと
である。
しかし、電極と重合体との境界面に隣接する分子を改
質することにより、電子注入能力に影響を与えることが
可能である。たとえば、A.ハラン(A.Haran)、D.H.ウ
ォルデック(D.H.Waldeck)、R.ナーマン(R.Naama
n)、E.ムーンズ(E.Moons)、およびD.カーヘン(D.Ca
hen)、「The Dependence of Electron Transfer Effic
iency on the Conformational Order in Organic Monol
ayers」、Science、Vol.263、p.948−950、1994年に、
オクタデシルトリクロロシラン(OTS)分子の単分子層
の、シリコン電極から電解質水溶液への電子移動(ET)
通過への影響が記載されている。
OTS層は、加熱することにより、1つの配座から他の
配座に変換することができる。異なる配座は、ある分子
結合の湾曲(bending)または屈曲(flexing)により生
じる分子の異なる幾何形状に対応する。
本発明の発明者は、電流電圧特性は、OTS分子の被覆
率(degree of coverage)だけではなく、OTS分子の配
座にも依存することを見いだした。1つの実験で、層が
1つの配座から他の配座に変換されると、0.2Vの電圧に
おける逆電流は、4.5μAから0.2μAに変化した。
微小構造の制御された製造に向けての研究は、近年の
走査型プローブ顕微鏡(SPM)の開発により大幅に促進
されている。SPMのプローブ・チップが、原子的、また
は原子に近い解像度で試料の表面構造の変化を監視する
だけではなく、同様のスケールで表面を改質(modify)
させるのにも使用できることが、多くの例により確認さ
れている。たとえば、T.A.ジュン(T.A.Jung)、R.R.シ
ュリットラー(R.R.Schlittler)、J.K.ギムゼウスキー
(J.K.Gimzewski)、H.タン(H.Tang)、およびC.ジョ
アチム(C.Joachim)は、Science、Vol.271、p.181、19
96年に、SPMチップの影響により、各分子を所定の新し
い固定位置に移動することができ、または位置を変化す
ることなく改質させることができる、あるいはその両方
が可能なことを示している。これらの研究を追求する中
で、分子の柔軟性(flexibility)がこのような操作に
重要な役割を果たすことが見出された。
基板上の固定された順序の分子層は、たとえばラング
ミュア・ブロックジェット(LB)膜もしくは自己集合単
分子層(SAM)膜を形成し、または協同自己集合を行
い、または昇華もしくは配座エピタキシにより付着して
いる分子により形成される。
分子は、それを構成する各種のエンティティ(entiti
es)の(準)安定な配向または位置あるいはその両方に
より特徴づけられる各種の配座で存在することができ
る。これらの分子の各種エンティティは、他のエンティ
ティの原子へよりも強く相互間で結合している、個々の
原子または分子に類似の原子のサブエンティティで構成
される。個々のエンティティ間の接続は、エンティティ
の相対的回転運動の軸として機能することのできる単分
子結合であることが多い。各種の配座間の切り替え(sw
itching)は、通常このようなエンティティの回転リア
ライメントで行われる。このようなエンティティに構造
化される分子は、有機化学では標準的なものである。
発明の目的および効果 本発明発明は、いくつかの安定なまたは準安定な配座
の存在によって、これらの配座を個々に、または外部の
影響によりある範囲内で決定し、切り替え(switch)ら
れる、切り替え可能な分子の基板への固定に関する。
異なるエンティティを適切に組み合わせることによ
り、1つの配座ではある種の適用例の必要条件を満た
し、他の配座では大幅に異なる分子が設計できる。この
ような変化を受ける技術的に重要な特性には、化学活
性、導電性、色、分子寸法、および基板への密着力など
がある。反対に、これらの変化は各種の識別(interrog
ating)技術により、ある種の分子またはそのような分
子の層状媒体の配座を特定するのに使用することができ
る。このような分子の異なる配座は、配位座標における
系の分子/基板のポテンシャル・エネルギーの極小によ
って定義される。通常、この座標の関数としてプロット
した場合、ポテンシャル・エネルギーが少なくとも2つ
の特徴のある極小を有するように、2つの配座間の各変
換について関連する配位座標を定義することができる。
これらの極小の位置と深さにより、これらの配座にある
エンティティのそれぞれの構造的配置と、熱励起または
外部の影響あるいはその両方に対する安定性とが決ま
る。最も深い極小は、分子の安定な配座に対応する。他
の配座はすべて準安定である。対応するエネルギー極小
とその近傍との間のエネルギー障壁が、室温で25meVに
及ぶ熱エネルギーと比較して十分大きい場合、分子は無
期限に準安定な配座で存在することができる。
配座切り替えの原因となる外部の影響には、たとえ
ば、巨視的なスイッチのように、分子を他の配座に急速
に移動する程度に変形する機械的な力、分子が他の配座
の基底状態に崩壊するよう、励起状態に上昇させる光ま
たは電子の放射、分子が熱励起またはトンネリングによ
り他の配座に転じる(flip)程度に、特定のエネルギー
障壁の高さまたは幅あるいはその両方を低下させる電場
の供給などがある。以下、「配座」の用語は、外部の影
響による切り替えが可能な、分子の配座のみをいうもの
とする。
本発明の第1の目的は、異なる配座で基板に取り付け
可能な種類の分子を提供することにある。これらの配座
の少なくとも1つは、基板表面の近傍で生じまたは安定
化され、あるいはその両方が行われる。さらに、これら
の分子は、構造化手段によって与えられる外部の影響に
より、これらの配座のうち、少なくとも2つの間で切り
替え可能である。
たとえば、超真空下で(100)配向のCu結晶表面上に
新しく付着させたCu−−テトラ−(3,5−ジ−tert−ブ
チルフェニル)ポルフィリン(Cu−TBP−ポルフィリ
ン)分子は、遊離分子の配座と類似の配座に残留する。
この配座では、分子の周辺エンティティは、中央エンテ
ィティの平面に対して垂直に配位され、中央エンティテ
ィは、相互作用の力に影響されることがほとんどないほ
ど、基板表面から十分遠くにある。しかし、この中央エ
ンティティは、STMのチップにより押し下げられると、
引力、ここでは接着力のため、基板に向かって強く引か
れ、チップが除去されてもこの第2の状態のままにな
る。すなわち、系Cu−TBP−ポルフィリン/基板は、遊
離の分子と異なり、双安定性(bistable)である。
Cu−TBP−ポルフィリンを例とする本発明の第1の実
施態様である分子は、異なるエンティティで構成され、
物理的接着または化学結合の形成あるいはその両方によ
り基板に取り付けることができる。このことは、これら
の分子が基板表面に沿って自由に運動することができて
も、これらの分子の位置は少なくとも1つの寸法に固定
されるという利点がある。さらに、基板は切り替え中に
分子にかかる力をバランスさせ、または分子が電場に露
出されると電極として機能するという利点もある。この
分子はさらに、基板が存在するときのみ、配座の1つが
安定であるという性質がある。具体的には、エンティテ
ィの1つは切り替え中に、基板とそのエンティティとの
間に作用する引力が、第1の配座では無視できるほど小
さいが、第2の配座では切り替え後そのエンティティが
基板表面に安定に密着するほど強くなるように、基板に
対する位置を変える。このことは、自由空間で1つの配
座にのみ存在する分子は、基板に取り付けられて双安定
性となり、したがって後述の各種の適用例で使用するこ
とができるという利点を有する。基板との相互作用の劇
的な変化は、基板に支配された配座では分子は完全に不
動であるが、他の配座では基板表面に沿って運動可能で
あり、またはその逆であるという利点も有する。
第2の実施態様である分子は、少なくとも1つの配座
で基板上のある位置に固定され、したがって識別手段ま
たは構造化手段により個別にアドレスすることができる
という利点を有する。特に、構造化手段は、分子を選択
して、1つの配座から他の配座に切り替えることができ
る。分子の固定は、特定の分子の配座または複数のこの
ような分子の配座を、識別手段により局所的に個別に決
めることができるという利点も有する。
第3の実施態様である分子は、2つの配座間で順番に
繰り返し切り替えることができ、これにより表示装置ま
たは読み書き記憶装置に応用できるという利点を有す
る。
第4の実施態様である分子は、明白な、したがって実
現しやすい設計概念により構造化できるという利点を有
する。すなわち、中央エンティティは観察可能な物理
的、化学的特性を支配するように設計することができ、
一方1個または数個の周辺エンティティは、分子の構造
全体を画定し、または潜然的に中央エンティティを保護
し、または分子を基板に接続する「脚」を形成し、ある
いはそれらの組合せを実施することができる。この分子
のさらに有利な特徴として、切り替え工程中に、たとえ
ば周辺エンティティを垂直から斜め位置に傾斜させるこ
とにより、中央エンティティの基板からの距離を変化さ
せることができる。その結果、分子は第1の配座では基
板表面に沿って移動可能になるが、第2の配座では完全
に固定される。さらに、分子は第1の配座では溶媒によ
り容易に除去でき、第2の配座より高さが高くなる。ま
た、分子の電子状態の特性は2つの配座で大幅に異な
る。したがって蛍光などの分子の光学的特性は2つの配
座で劇的に異なる。
上述の取り付け可能な分子の予想される適用例は、個
々の分子の大きさより(はるかに)大きい面積について
の被覆、制御または改質あるいはそれらの組み合わせを
必要とする。したがって、本発明の第2の目的は、これ
らの分子からなる層状媒体を提供することにある。
完全な単分子層の形状の、本発明の第5の実施態様で
ある層状媒体は、下層の基板を効果的に保護する高密度
の被膜を形成する利点を有する。一方、一方、不完全な
単分子層は、基板の部分を露出して、層状媒体を除去し
なくても、媒体を改質することによりこの部分にアクセ
スすることができるという利点を有する。
第6の実施態様である層状媒体は、分子がどの配座に
あっても固定されるという利点を有する。このことは、
分子が再現可能にアドレスできるため、分子を情報担体
または可逆切り替え要素として使用する適用例で好まし
い。
第7の実施態様である層状媒体は、不完全な単分子層
の分子が熱励起により水平方向へ位置を連続的に変化す
る利点を有する。したがって、基板の一部は恒久的に分
子により被覆されない。すなわち、この部分はある期間
環境に露出され、この期間に改質手段の攻撃を受ける。
一方、分子が完全な単分子層を形成する配座では、基板
表面は環境の影響から恒久的に遮蔽される。
第8の実施態様である層状媒体は、分子が基板から層
状媒体上に位置する媒体へ、またはその逆の電子移送を
制御する局所的な電気スイッチとして機能する利点を有
する。切り替えは、1つの配座では基板から、または基
板への電子の放出を容易にするが、他の配座では放出に
好ましくないような、層状媒体中の分子の電子レベルの
配置によって可能になる。
本発明の層状媒体の適用例は、層状媒体のOLEDへの取
り込みにより、注入能力が構造化手段によりオンオフで
きる電子注入層が与えられるため、層状媒体の重要な適
用例である。たとえば、構造化手段はOLEDの2個の電極
に供給される短い電圧パルスを与えることができる。代
替方法として、たとえば、圧電的に発生する圧力パルス
が、切り替えを起こすことができる。切り替え可能な電
子注入層の機能は、現在のアクティブLCDに使用される
薄膜トランジスタの機能と類似している。
本発明の層状媒体の、多くの予想される適用例は、こ
の層状媒体または下層の基板あるいはその両方中に所定
のパターンを生成することを必要とする。したがって、
本発明の第3の目的は、このようなパターン形成を好ま
しく行う方法を提供することにある。
本発明の実施態様では、層状媒体、および任意で下層
の基板を構造化する工程の、多様な変形を開示する。
本発明の他の実施態様では、局所的に、制御された方
法で、1つまたはいくつかの外的影響を与えることによ
り、パターンを形成する方法を開示する。これらの外的
影響には、巨視的なスイッチのように分子が異なる配座
に転じることができる程度に分子を変形させる機械的な
力、分子が他の配座の基底状態へ崩壊することができる
励起状態に分子を引き上げる光または電子の照射、また
は特定のエネルギー障壁の高さまたは幅あるいはその両
方を、分子が熱励起もしくはトンネリングにより他の配
座に転じる程度に減少させる電場の供給などがある。
本発明の第10の実施態様である方法は、分子が1つの
配座にある領域と、分子が他の配座にある他の領域とか
らなる層状媒体中に所定のパターンを形成する利点を有
する。層状媒体は、分子がすべて当初は同一の配座にあ
るように製作することが好ましい。その後他の配座に変
換すべき領域は、第1の段階で適当な構造化手段により
選択し、第2の段階でこれに影響を与える環境に露出す
る。
第11の実施態様である方法は、いずれか1つの配座に
ある分子が選択的に基板から除去され、基板が層状媒体
に被覆された領域と、基板表面が被覆されていない他の
領域とからなる所定のパターンが後に残るという利点を
有する。第1の分子除去手段はこの目的に使用され、分
子除去手段として溶剤または湿式もしくは乾式エッチャ
ントを用いることができる。
第12の実施態様である方法は、第10および任意で第11
の実施態様の方法で処理された基板の表面が、基板表面
の保護されていない部分を攻撃する改質手段に露出する
ことにより、パターンの形状に構造化されるという利点
を有する。改質手段は、基板表面の保護されていない部
分から材料を除去するか、この部分に材料を付着させる
ことができる。第7の実施態様の層状媒体を使用した場
合、この層状媒体は改質手段を基板にアクセスさせるこ
とができるため、この処理工程は任意である。
第13の実施態様である方法は、基板から層状媒体の残
渣を除去し、基板表面に所定のパターンを後に残すとい
う利点を有する。第2の分子除去手段をこの目的に使用
することができる。この手段は第1の手段と同様、溶剤
または湿式もしくは乾式エッチャントとすることができ
るが、層状媒体の一部の、または層状媒体の一部であっ
た分子をすべて除去する能力を有するものでなければな
らない。完全に除去することは、たとえば集積回路電子
エレメントの製造において、必要に応じて基板をさらに
処理できる利点を有する。
第14の実施態様である、可動の誘導スタイラス(styl
us)によるパターン形成は、基板上の層状媒体の、極め
て小さい部分を選択し、切り替えることができるという
利点を有する。これにより、基板上に対応して小さい寸
法の構造を描くことができる。基板に沿ってのスタイラ
スの経路をプログラミングし直すことにより、自由にパ
ターンの形状が変更できることも、この方法の利点であ
る。スタイラスの外部の影響には、たとえば、機械的圧
力、電場または電子もしくは光子のビームへの露出など
がある。したがって、このパターン形成方法は、たとえ
ば研究開発における試験など、十分な柔軟性を必要とす
る適用例に特に適している。
第15の実施態様である、スタンプによるパターン形成
は、非常に簡単であるという利点を有する。とくに、パ
ターンが非常に複雑な構造をしていても、すべてのパタ
ーンを同時に形成することが可能である。さらに、パタ
ーンは容易に、大量に複製することができる。したがっ
て、このパターン形成方法は、たとえば、第6の実施態
様である層状媒体を記憶媒体として使用した、コンパク
ト・ディスク型の読み取り専用記憶キャリアなどの大量
生産に適している。
第16の実施態様である、アクチュエータ・アレイによ
るパターン形成は、パターン形成手段、すなわちアクチ
ュエータ・アレイが、基板に対して固定の位置に残存す
るという利点を有する。活性化すべきアレイ・エレメン
トに適切にアドレスすることにより、パターンの形状を
自由に変化させることができることも、この方法の利点
である。特に、機械的運動を必要としないため、いくつ
かのエレメントを同時に平行して操作すれば、高速処理
が可能となる。したがって、このパターン形成方法は、
たとえば読み書き記憶装置または表示装置の切り替えエ
レメントとして使用した場合など頻繁に可逆的なパター
ン変更を行う適用例に適している。
アレイのエレメントは、たとえば、電極、圧電ペスル
(pestle)、またはシャッタ付きの照射されたアパーチ
ャなどの光源とすることができる。電極は、層状媒体の
分子を局部的に電場または電子ビームに露出させる利点
を有する。圧電ペスルは、機械的圧力を与えるか、また
は媒体に衝撃波を送ることができるという利点を有す
る。光源は、層状媒体の分子を新しい配座に崩壊する励
起電子状態にするという利点を有する。
第17の実施態様である照明または粒子ビーム装置によ
るパターン形成は、パターン形成に市販のリソグラフィ
装置が使用できるという利点を有する。
第14ないし第17の実施態様のいくつかの方法を好まし
い形で組み合わせることも可能である。たとえば、パタ
ーン形成工程でSPMチップのアレイを使用して、処理能
力を増大させることができる。
本発明の第18の実施態様であるパターン識別は、ある
領域にある分子の配座を、パターン形成に使用する手段
と同一の手段で決定することができるという利点を有す
る。このことは、形成したパターンを、スポットでどう
にかして修正することができる位置の誤り(potential
error)に関して制御することができる利点も有する。
もう1つの主要な利点は、記憶媒体として層状媒体を使
用する場合、読み取り処理に必要な、既存のパターンの
形状を決定する能力である。
発明の概要 本発明は、特定の単分子、分子アセンブリ、およびデ
ータ記憶のための基板との界面における単分子層の、新
種のレジストとして、または各種の分子装置に関連する
適用に関するものである。主要な操作は、界面を接する
基板と共に、分子の官能性を設計することにより形成さ
れる分子の配座間の切り替えである。具体的には、界面
を接する基板の関連する特性を考慮した官能性の設計に
より得られた分子の双安定性を使用することである。記
載した実施例は、ポジティブおよびネガティブ・レジス
トの適用、および超高密度記憶を含む。
本発明はさらに、分子の特性、特に電子移動および光
子放射率のアドレスおよび切り替えの方法を提供する。
分子を1つの配座から他の配座に切り替える活性化エ
ネルギーおよび機構は、分子の構造、内部柔軟性、およ
び分子と基板との総合相互作用により選択することがで
きる。分子/基板の系は、切り替えのポテンシャル障壁
が、熱エネルギーkT(Tは信頼性のある操作温度を示
す)より十分高い場合に最適に調節できる。
この分子は、既存の方法で合成することができる。基
板表面におけるこの分子の不動化により、マイクロおよ
びナノ・オーダーの製造装置、および以後の任意の処理
方法の使用が可能になる。新種のレジストとして分子層
中にこの分子を適用することにより、ナノメートル・ス
ケールのパターンの形成が可能になる。開示した分子、
層状媒体、および方法により、広い適用性と、他の確立
された、および開発中の方法との多様な組み合わせが可
能になる。
ここに提示する実施例には、レジスト適用例、超高密
度記憶および表示の適用例が含まれる。本発明は、基板
上の位置のアドレス指定、切り替え、ならびに分子の特
性、とりわけ基板への密着度および電子移動効率の識別
を行う方法を提示する。
ここに開示する分子のクラスに属する様々な分子なら
びに様々な開示の方法により、広範囲の適用ならびに既
に定着したまたは開発中の他の技術との併用が可能とな
る。
図面の簡単な説明 本発明の例は、図面に示されており、下記に詳細に説
明する。
第1a図は、第1の安定な配座にある中心エンティティ
と周辺エンティティを有する分子を示す図である。
第1b図は、第2の安定な配座にある中心エンティティ
と周辺エンティティを有する分子を示す図である。
第1c図は、異なる安定な配座にある3個の分子と、1
本のスタイラスを有する基板を示す図である。
第2a図は、第1の安定な配座にある4個の等しいエン
ティティを有する分子を示す図である。
第2b図は、第2の安定な配座にある4個の等しいエン
ティティを有する分子を示す図である。
第3図は、Cu−テトラ−(3,5−ジ−tert−ブチルフ
ェニル)ポルフィリン(Cu−TBP−ポルフィリン)の構
造式を示す図である。
第4a図は、自由空間(破線)および基板表面近傍(実
線)における分子の、特定の配位座標に関するポテンシ
ャル・エネルギーを示す図であり、このポテンシャル・
エネルギーにより、基板近傍に新しいポテンシャル井戸
が発生する。
第4b図は、自由空間(破線)および基板表面近傍(実
線)における分子の、特定の配位座標に関するポテンシ
ャル・エネルギーを示す図であり、このポテンシャル・
エネルギーにより、基板近傍にある既存のポテンシャル
井戸が強化される。
第5a図は、層状媒体の選択した領域の分子を、SPMの
チップにより1つの配座から他の配座へ切り替える装置
を示す図である。
第5b図は、層状媒体の選択した領域の分子を、スタン
プにより1つの配座から他の配座へ切り替える装置を示
す図である。
第5c図は、層状媒体の選択した領域の分子を、電気ア
クチュエータ・アレイにより1つの配座から他の配座へ
切り替える装置を示す図である。
第6a図ないし第6e図は、切り替え可能、取り付け可能
な分子の完全単分子層を有する基板の表面を構造化する
工程を段階的に示す図である。
第7a図ないし第7e図は、切り替え可能、取り付け可能
な分子の不完全単分子層を有する基板の表面を構造化す
る工程を段階的に示す図である。
第8a図は、この実施例ではSTMチップである可動スタ
イラスにより、層状媒体の分子の配座を識別する装置を
示す図である。
第8b図は、第8a図に示す装置のチップが層状媒体の表
面に沿って移動する時の、トンネル電流の変化を示す図
である。
第9図は、1つが電子注入プロモータとして機能する
2つの異なる配座に存在する切り替え可能、取り付け可
能な分子を有する層状媒体を有するOLEDを示す図であ
る。
発明の詳細な説明 本発明の各種の実施例について、下記に説明する。
第1a図は、ここでは中央エンティティである第1のエ
ンティティ1と、周辺エンティティである2個の第2の
エンティティ3で構成される分子の略図である。第1の
エンティティ1は、接続2を介して第2のエンティティ
3に結合している。エンティティ3は、第2の引力5に
より基板4に密着している。この分子は第1の配座18に
あり、中央エンティティ1と周辺エンティティ3は互い
に直角に配向している。この配向は、接続2の方向性
(directionality)に関してエネルギー的に好ましい。
中央エンティティ1は基板4からある距離を置いて位置
し、この位置では第1の引力6、ここでは基板4が中央
エンティティ1に作用する近距離の接着力が小さく、し
たがって図示されていない。第2の引力5による分子と
基板4との相互作用は周辺エンティティ3の基板表面に
すぐ近くの部分に限定される。したがって、第1の配座
18は、自由空間または溶液中の分子の安定な配座にほぼ
等しい。
第1b図に、中央エンティティ1が基板4の表面に近付
くように周辺エンティティ3を横に傾斜させた第2の配
座19にある分子が示されている。この場合、中央エンテ
ィティ1は基板4に向かっての強い引力6の影響を受け
ている。中央エンティティ1の位置は、追加の引力6
と、接続2の傾斜による発生する復元力とのバランスに
より決定される。第2の配座19は、分子が自由空間また
は溶液中にある場合は存在しない。傾斜角は、この分子
の該当する配位座標として用いられる。
第1c図は、変換、すなわちここではSPMチップである
スタイラス7の影響により第1の配座18から第2の配座
19への切り替えを概略的に示す。このモジュールは、基
板4上の分子の完全単分子層15からなる層状媒体の一部
である。SPMチップ7は、たとえば機械的圧力を分子に
与えることにより、選択した分子を切り替えさせる。
第2a図および第2b図は、2つの配座18および19にある
他の種類の分子を示す。この分子は、4個の接続2によ
り閉じたチェーンの形で互いに結合した第1のエンティ
ティ1、第2のエンティティ3、および2個の第3のエ
ンティティ8で構成されている。ここでは、4個のエン
ティティ1、3、8は同一である。第2a図は、接続2の
傾斜した形状がこの分子にとってエネルギー的に好まし
いため、エンティティ1、3、8が平行四辺形の形で配
列された、第1の配座18にあるこの分子を示す。第2の
エンティティ3は、第2の引力5を介して基板4に密着
している。他のエンティティ1および8は、基板4から
遠すぎるため、大きな引力を受けない。
第2b図は、第1のエンティティ1と第2のエンティテ
ィ3が基板4上に平坦に横たわり、第3のエンティティ
8が第1のエンティティ1と第2のエンティティ3の上
に横たわった第2の配座19にある分子を示す。第1のエ
ンティティ1および第2のエンティティ3はそれぞれ、
基板4がもたらす引力5および6を受ける。第3のエン
ティティ8は、凝集力9によりエンティティ1および3
に牽引される。第2の配座19にある分子の形状は、接続
2の強い変形を示唆する。得られた弾力は引力6と凝集
力9とにより平衡を保つ。接続2の傾斜角の1つは、こ
の種の分子に対する配位座標として選択することができ
る。
第3図は、第1図による2つの配座18および19で基板
4上に存在することができる分子の1つであるCu−テト
ラ−(3,5−ジ−tert−ブチル−フェニル)ポルフィリ
ン(Cu−TBP−ポルフィリン)の構造式を示す。中央エ
ンティティ1がCu−ポルフィリン部分である。周辺エン
ティティ3は、4つのブチルフェニル基である。接続2
は、それぞれ中央エンティティ1と周辺エンティティ3
のC原子間の方向性(directional)分子結合からな
る。周辺エンティティ3は、これらのC−C軸を中心と
して回転することができ、平均傾斜角はこの分子の該当
する配位座標である。
第1の配座18では、第1a図に示すように、周辺エンテ
ィティ3は、図の平面からC−C軸を中心として90度回
転している。したがって、周辺エンティティ3は、その
C−C軸に対する周辺エンティティ3の空間的広がりに
より与えられる距離を超えて、中央エンティティ1が基
板4に近付くのを防止する。第2の配座19では、第1b図
に示すように、周辺エンティティ3は、図の平面とほぼ
平行に配向し、これにより中央エンティティ1と基板4
とを接触させる。
第4a図および第4b図は、それぞれ第1図および第2図
に示す2つの分子のエネルギー・ポテンシャルEを、そ
れぞれ該当する配位座標φの関数として概略的に示した
ものである。破線の曲線10と、実線の曲線12はそれぞ
れ、自由空間、および基板4に隣接する分子のポテンシ
ャルを示す。第4a図で、破線の曲線10は極小ポテンシャ
ル11および2つの極大ポテンシャル14を、実線の曲線12
は3つの極小ポテンシャル、すなわち1つの相対的に高
い極小ポテンシャル11と、2つの相対的に低い極小ポテ
ンシャル13を有する。
第4a図の、破線の曲線10の単一極小ポテンシャル11
は、自由空間にはエネルギー的に好ましい配向は1つし
かなく、それは第1の配座18の配向であることを示して
いる。基板4に取り付けると、さらに2つの極小ポテン
シャル13が、基板4と中央エンティティ1との間に作用
する第1の引力6により得られる。極小13は、ポテンシ
ャル・エネルギーが極大14の場合に生じるため、遊離分
子に最も好ましくない関連配位座標φの値で得られる。
極小13は、第2の配座19に対応する。いくつかのポテン
シャル極小13、11が存在することは、2つ以上の安定ま
たは準安定な配座間で分子を切り替えることができるこ
とを示す。
第2図に示す種類の分子についての、自由空間での安
定な配座を第2a図に示す。第2b図に示す配座も、凝集力
9により原理的に可能である。得られたポテンシャル曲
線10を第4b図の破線の曲線で示し、したがって、すでに
自由空間では等しくない極小11および13を有するが、第
2の極小13は浅い。したがって、熱励起により分子が対
応する配座に長期間とどまることが防止される。基板4
は、第1の引力6によりこの第2の配座を安定化する。
これを第4b図の実線の曲線12における深い極小13で示
す。
第5a図ないし第5c図は、基板4上の完全単分子層15と
して配置された切り替え可能な分子を有する層状媒体
と、パターンが形成されるように所定の領域で選択的に
分子を切り替える3つの装置を示す。分子は第1の配座
18から第2の配座19に切り替えられる。図では2つの配
座を、それぞれ「H」および「/−/」の線により示
す。
第5a図は、たとえばSPMチップなどのスタイラス7を
使用したパターン形成を示す。スタイラス7を単分子層
15に近接させて水平に移動させると、接触した分子が第
1の配座18から第2の配座19に切り替えられる。所定の
領域を第1の配座18のままにするには、これらの選択し
た領域の上を移動する間、スタイラス7を引き上げるこ
とができる。
第5b図は、突出部21を有するスタンプ20を使用したパ
ターン形成を示す。単分子層15の所定の領域を切り替え
るものとする。突出部21は、層状媒体の領域に機械的圧
力を与え、単分子層15の領域の分子を第1の配座18から
第2の配座19に切り替える。
第5c図は、個別のアクチュエータ31からなるアクチュ
エータ・アレイ30を使用したパターン形成を示す。単分
子層15の所定の領域が、単分子層15にある分子を第1の
配座18から第2の配座19に切り替える電場に露出され
る。切り替えるべき領域は、個別のアクチュエータ31を
電圧供給ライン33に接続する電気スイッチ32により選択
される。電圧供給ライン33は、基板4に接続した第2の
電圧供給ライン34に対して電圧Usに保持されている。
第6a図ないし第6e図、および第7a図ないし第7e図は、
リソグラフィ工程において、基板4の表面にパターンを
形成するための、取り付けおよび切り替え可能な分子の
単分子層の使用を示す。この適用例では、単分子層15は
レジストの機能を有する。
第6a図ないし第6e図は、基板4に密着させた、第1図
の「H」型配座18にある分子などの、配座18および19の
両方にある分子からなり、完全単分子層15で構成される
層状媒体に必要な種々の工程を示す。
第6a図および第6b図は、たとえば第5図に示す分子を
第1の配座18から第2の配座19に切り替える装置の1つ
を使用してパターン形成する前後の、基板4上の分子の
単分子層15を示す。第6c図に示す次の工程では、第1の
配座18の分子が、第1の分子除去手段により除去され
る。次に、第6d図に示すように、基板4を第2の配座19
にある残りの分子とともに、基板4の被覆されていない
領域を選択的に攻撃する改質手段42に露出する。ここで
は第6d図に示す所定のエッチング深さである所望の改質
レベルに達すると、改質手段42から層状媒体を除去する
ことにより改質工程を終了し、残留する分子の単分子層
15を第2の分子除去手段により除去すると、第6e図に示
すように、基板表面上に隆起したパターンがあとに残
る。
第7a図ないし第7e図は、最初は移動可能で基板4上に
不完全単分子層15を形成する第1の配座18にある分子か
らなる単分子層15に適用できる、代替のリソグラフィ工
程を示す。第1の配座18にある分子と基板4との間に作
用する第2の引力5が十分に小さいため、表面の一部が
一時的に分子により被覆されないように、基板4に沿っ
て分子が熱運動を行うことができる。
第7a図および第7b図は、たとえば第5図に示す分子を
第1の配座18から第2の配座19に切り替える装置の1つ
を使用してパターン形成する前後の、基板4上の分子の
単分子層15を示す。この第2の配座19では、分子は基板
4上に平坦に位置し、引力(5、6)により結合してい
る。この第2の配座19では、これらは基板4の所定の領
域を完全に被覆している。
第7c図に示す次の工程では、2つの配座18および19に
ある分子の単分子層15を有する基板4を、第1の配座18
にある分子が基板表面に浮遊する(floating)基板4の
領域を選択的に攻撃する改質手段42に露出する。熱によ
り誘起される分子の運動により、改質手段42は第1の配
座18にある分子がある領域内のすべての場所に到達す
る。配座18にある分子は、基板4にゆるく結合している
のにすぎないため、改質手段42により基板4から除去さ
れる。しかし、第2の配座にある分子は、基板4が変更
されるのを防止する。改質は材料除去工程である必要は
なく、第2の配座にある分子を遮蔽マスクとして使用し
て、必要な材料の層を成長させるなどにより、材料を追
加する工程であってもよい。
その後の工程は、第6a図ないし第6e図に示す第1の工
程と同様、すなわち、改質手段42を除去し、これにより
エッチング工程を停止させ、さらに第2の配座19にある
分子を除去する。実際に2つの工程の相違は、第6b図に
示す第1の配座18に残っている単分子層15の、これらの
部分を除去する工程である。この工程は、第2の工程の
場合、第1の配座18にある分子は基板4の表面上を移動
可能であり、したがって改質手段42により基板4が攻撃
されるのを恒久的には防止しないため、不必要である。
第8a図は、記憶媒体として、基板4上に2つの配座18
および19を有する単分子層の形態の、取り付けおよび切
り替え可能な分子を有する層状媒体の使用を示す。情報
は、変化する配座18、19中に記憶される。配座18および
19は寸法、電気抵抗、反射率、透過率、磁気特性などに
影響を与えることがあるため、層状媒体の領域における
これらの特性の1つまたはいくつかを変更することは、
記憶された情報を検索するのに使用することができる。
パターンは、第5図に示す装置の1つを使用して形成、
すなわち書き込むことができる。パターンに記憶された
情報を識別、すなわち読み取る目的で、ここでは走査型
トンネル顕微鏡(STM)のチップであるスタイラス7
を、近接させ、好ましくは一定の距離で単分子層15に沿
って移動させる。
第8b図は、トンネル電流Itと時間tとの関係を概略的
に示す。電子のトンネリングの確率は、チップ先端の下
にある分子の配座18および19に敏感に依存するため、ト
ンネル電流は2つの異なる値の間で変動する。ビット値
「1」および「0」は、容易にトンネル電流Itの2つの
異なる値に割り当てることができる。
第9図は、これまで知られていたOLEDと異なり、ここ
では2つの配座18および19にある分子の単分子層15から
なる層状媒体を内蔵するOLEDの断面を概略的に示す。OL
EDの他の要素は、上部から底部に、透明電極60、連続発
光重合体層61、および導電性基板4である。基板4およ
び透明電極60は、電圧供給ライン33および34を介して電
圧Usに接続されている。
図は、基板4から注入される電子62および重合体層61
から発射される光子63も示す。基板4は、透明電極60に
対する電子注入対向電極として機能する。重合体層61に
注入される電子は、光子63の発射によりエネルギーを失
う。注入の確率は、重合体層61と基板4との境界面の特
性、すなわち単分子層15の電子移動(ET)能力に敏感に
依存する。電子移動(ET)能力は、分子の電子状態によ
り決まる。分子の電子状態は、分子の配座18および19が
異なることによって異なる。したがって、単分子層15中
の分子を適切に設計することにより、それぞれの分子を
第1の配座18から第2の配座19に変えることにより、こ
のようなOLEDを効率の高い発光状態から暗状態へ、また
はその逆に切り替えさせる。配座18と19の切り替えは、
第5図で説明した装置による方法と類似の方法、たとえ
ば短い電圧パルスを与えることにより行うことができ
る。電極4および60を適切に構造化することにより、OL
EDの所定の領域での電子移動(ET)能力をオン・オフさ
せることができ、したがって発光をオン・オフさせる。
このような能力は、OLEDのディスプレイへの応用分野に
有用で、アクティブLCDにおける薄膜トランジスタ・ス
イッチの機能と同様な機能を与える。
要約すれば、本発明はいくつかのエンティティ1、3
に分割可能な分子に基づくものである。エンティティ
1、3は、たとえば電子軌道2を結合することにより幾
分柔軟に接続されている。エンティティ1、3は、相互
に異なる配向で、安定または準安定に配置することがで
き、異なる配向は分子の配座18および19に対応する。安
定な配向は、異なる配座18および19の配位座標に関する
分子のポテンシャル・エネルギーの極小、またはそれら
配座における配位の性質によって与えられる。分子は、
異なる配座18および19の少なくとも1つで、所望の基板
4の表面に、安定に密着する。切り替えは、相互にまた
は基板4に対するあるいはその両方について、エンティ
ティ1、3の相対的回転または並進運動あるいはその両
方で行うことができる。
記載した実施例のほか、データ記憶、リソグラフィ、
分子電子移動、および光電装置からの発光における分子
の配座の切り替えでは、一般に、配座が分子系の物理的
化学的特性を決定することを示すことが重要である。し
たがって、分子の配座の設計、集積、およびアドレス指
定のための記載した方法は、他の物理的化学的検出機構
と組み合わせることができる。上述の装置および方法
は、検出またはナノスケールの機能構造を組み立てるた
め、互いに、および他の技術と組み合わせることができ
る。具体的に、上記技術は、カンチレバー型センサ、振
動リード磁力計、NMR、ESR、免疫センサ、導波および回
折光学センサ、単一光子検出/単一分子分光分析装置な
ど、どのような検出方法とも組み合わせることができ
る。また、代替特性も、開示の方法により、制御されま
たは切り替えることができる。一般に、たとえばクロモ
フォリティ(chromophority)、ホトクロミック作用、
エレクトロクロミック作用、触媒作用、酵素作用、薬効
作用、比反応性(specific reactivity)、スピン・レ
ベル、免疫作用、NMRラベル、ホルモンなど、どのよう
な化学官能性も、配座の切り替え/活性化と組み合わせ
ることができる可能性がある。例として、誘起超電導体
の超電導のパターニングまたは制御、たとえば1つのあ
る配座では隠され、他の配座ではある反応物質に露出さ
れる基による選択的化学反応性の制御、たとえば層の磁
気、光反射率など、層の磁気的、電気的特性変化などが
ある。設計された配位系を混合したものは、特性を現す
ために利用することができる。上記の配位的不活性形態
に隠された比反応性の例を使用して、種々の反応前駆物
質を特定して合成する(integrated)ことができる。こ
の実施例に具体的に記載した粒子ビーム、光学リソグラ
フィ、スタンピングなどの集積技術(integration tech
niques)のほか、配位形態の励起、組み立ておよび集積
の技術、たとえば接触力なども使用できることが証明さ
れている。また、化学的自己アセンブリ技術、LIGAな
ど、機能構造をリソグラフィにより集積する進歩した探
究的な手段のほか、進歩した「ボトム・アップ」集積技
術を使用することもできる。書き込み媒体はいずれも読
み取り媒体としても使用することができる。一般に、ど
のような読み取り機構も使用することができる。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 ジムゼフスキー、ジェームズ、ケイ. スイス国リュシュリコン、ローシュトラ ーセ 15 (72)発明者 ユング、トーマス スイス国タールヴィル、クラリデンシュ トラーセ 2 (72)発明者 シュリットラー、ラート、アール. スイス国シューネンヴェルク、ヒットナ ーシュトラーセ 7 (56)参考文献 特表 平9−511734(JP,A) J.Am.Chem.Soc., 1992,114(26),P10662−10663 J.Phys.Chem.,1993,97 (49),P12862−12869 Lamgmuir,1995,11(11), P4495−4498 Science(Washingto n,D.C.),1996,271(5246), P.181−184 (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) G11B 9/00 G03F 7/004 CA(STN) REGISTRY(STN)

Claims (7)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】少なくとも1つの接続によって相互に結合
    された少なくとも2種類のエンティティを含み、少なく
    とも2つの異なる安定または準安定な配座をとり得る分
    子が、基板上に、前記配座で、単一層に配置された層状
    媒体であって、 前記少なくとも2つの異なる配座は、前記エンティティ
    の上記基板または相互にもしくはその両方に対する配列
    が異なることにより識別可能であり、 前記配座のうち第1の配座では、上記エンティティのう
    ち第2のエンティティと前記基板との間の第2の引力に
    より前記分子が前記基板に引きつけられ、前記エンティ
    ティのうち第1のエンティティが前記基板に対して、前
    記第2の引力と比較して無視できる第1の引力を有する
    位置を有し、上記配座のうち第2の配座では、前記第1
    のエンティティが前記第1の引力により前記基板に結合
    する位置を有することを特徴とする、層状媒体。
  2. 【請求項2】前記分子が前記第1および第2の配座間で
    可逆的に切り替え可能であることを特徴とする、請求項
    1に記載の層状媒体。
  3. 【請求項3】前記第1のエンティティが分子内に中央位
    置に有し、前記第2のエンティティが前記第1のエンテ
    ィティに対し移動可能に接続された少なくとも1個の周
    辺エンティティを含むことを特徴とする、請求項1また
    は2のいずれか一項に記載の層状媒体。
  4. 【請求項4】前記分子が、いずれの前記配座において
    も、切り替えの間においても、基板上の固定位置を保持
    することを特徴とする、請求項3に記載の層状媒体。
  5. 【請求項5】前記配座のうちの少なくとも1つにある前
    記分子が前記基板に沿って移動可能であり、前記分子が
    熱的励起により前記基板の一部分が一時的に被覆されな
    いように前記基板に沿って移動を続け、前記配座のうち
    少なくとも他の1つにおいて、前記分子が前記基板上の
    固定位置にあることを特徴とする、請求項3に記載の層
    状媒体。
  6. 【請求項6】前記基板が導電性であり、前記配座の1つ
    において、前記分子が前記基板が隣接する非金属媒体へ
    電子を注入する能力を与え、前記配座の他の1つにおい
    ては、前記電子注入能力がそれより小さいことを特徴と
    する、請求項3ないし5のいずれか一項に記載の層状媒
    体。
  7. 【請求項7】電子注入電極を有する有機発光ダイオード
    であって、 前記電子注入電極は、請求項1に記載の層状媒体を含
    み、 前記分子の前記配座間の切り替えることにより、発光能
    力を種々の効率に切り替えることが可能な、有機発光ダ
    イオード。
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