JP4415529B2 - 内燃機関のヘッドカバー - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、内燃機関のチェーンケース等を含めてその上部を覆うように設けられる内燃機関のヘッドカバーに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
一般に、この種のヘッドカバーは、内燃機関のシリンダヘッドと、動力伝達系の一部を構成するチェーン駆動機構のチェーン(タイミングチェーン)が配設されるチェーンケースとの上部を覆うように設けられている。ここで、上記チェーンは、チェーンケース内において、例えばクランクシャフトの一端に一体回転可能に固定される駆動体と、カムシャフトの一端に一体回転可能に固定される被動体との間に巻回され、上記駆動体の回転に伴って回転走行可能となっている。
【0003】
また通常、内燃機関は、そのシリンダブロックの下部にオイルパンが設けられており、このオイルパン内には、当該機関の各種摺動部を潤滑したりするためのオイルが貯溜されている。なお、このオイルパン内のオイルは、その一部が前記駆動体とチェーンとの噛合部や前記被動体とチェーンとの噛合部にも供給されている。
【0004】
一方、内燃機関にあっては、その燃焼室内からクランクケース内へ漏出した混合気や燃焼ガス等のブローバイガスを吸気系に還元するブローバイガス還元機構を備えるものがある。このブローバイガス還元機構は、例えば図6に示されるような構成となっている。
【0005】
すなわち、同図6に示すように、このブローバイガス還元機構100は、基本的には、新気導入通路101と、還流通路102と、同還流通路102の途中に設けられるPCV(Positive Crankcase Ventilation)バルブ103とを備えて構成されている。
【0006】
このうち、新気導入通路101は、その一端が内燃機関110の吸気通路111におけるスロットルバルブ112の上流に接続され、他端がヘッドカバー120に接続されている。一方、還流通路102は、その一端が上記吸気通路111におけるスロットルバルブ112の下流に接続され、他端がヘッドカバー120に接続されている。また、PCVバルブ103は、上記吸気通路111の途中に設けられるインテークマニホールド(図示略)内の圧力に応じて開閉する開閉弁である。
【0007】
また、ヘッドカバー120、内燃機関110のシリンダヘッド113及びシリンダブロック114内には、上記各通路101,102のそれぞれと、内燃機関110のクランクシャフト(図示略)が収容されるクランクケース115とを連通する連通路(図示略)が形成されている。なお、上記各通路101,102は、上記連通路の他、ヘッドカバー120及びチェーンケース116及びシリンダブロック114を介してクランクケース115にも連通している。
【0008】
そして、このブローバイガス還元機構100では、例えば以下のような態様で、クランクケース115内のブローバイガスを吸気通路111内に還元する。
すなわち、内燃機関110の低負荷時には、吸気通路111内の吸気の一部を新気導入通路101を介してクランクケース115内に導入しつつ、インテークマニホールド内の負圧によりクランクケース115内のブローバイガスをPCVバルブ103及び還流通路102を介して吸気通路111内に還元する。
【0009】
一方、内燃機関110の高負荷時には、内燃機関110の燃焼室(図示略)からクランクケース115内へ多量に漏出するブローバイガスに対応すべく、上記吸気のクランクケース115内への導入を中止し、クランクケース115のブローバイガスを両通路101,102を介して吸気通路111内に還元する。
【0010】
このブローバイガス還元機構100によりクランクケース115内のブローバイガスを吸気通路111内に還元し、ブローバイガスを混合気とともに燃焼室にて燃焼させることにより、有害な炭化水素を多量に含むブローバイガスの大気中への放出を抑制するようにしている。
【0011】
ところで、先の動力伝達系を備える内燃機関では、前記チェーンの回転走行時、同チェーンと被動体との噛合部において、それらチェーン及び被動体に付着しているオイルに遠心力が作用し、そのオイルがヘッドカバーの天井面に向かって飛散する。そして、飛散したオイルの一部がチェーン上に滴下することにより、その滴下したオイルの液滴がチェーンによって切り裂かれるように接触して霧化し、オイルミストとなってチェーンケース内を浮遊するようになる。このオイルミストは、内燃機関が運転している間、すなわち上記チェーンが回転走行している間においてほぼ連続的に発生することとなるため、そのオイルミストの発生量は無視できないほどに多量となる。なお、このオイルミストは、回転走行中のチェーンに滴下する場合のみならず、例えば、チェーンと噛合する駆動体や被動体等に滴下する場合にも同様に生じる。
【0012】
そして、このように多量のオイルミストが発生してそのオイルミストがチェーンケース内を浮遊すると、前記オイルパン内に貯溜されるオイルの絶対量が減少することとなるため、内燃機関の潤滑性能や冷却性能の低下を招くおそれがある。また、上記オイルパン内のオイルの量が減少することにより、内燃機関の運転時においてそのオイルの温度が上昇し易くなり、これに起因して、オイルの劣化が進行し易くなるという不具合が生じる。
【0013】
さらに、上述したブローバイガス還元機構を備える内燃機関にあっては、クランクケース内のブローバイガスが前記吸気系に還元される際、そのブローバイガスとともにチェーンケース内のオイルミストも吸気系に排出されることとなる。これにより、上記吸気系へのオイルミストのオイル持ち去り量、すなわちオイルミストの排出量が非常に大きなものとなり、オイルパン内のオイルの絶対量がますます減少し易くなる。このため、上述した潤滑性能や冷却性能の低下、オイルの劣化が進み易くなるばかりでなく、吸気系に排出されたオイルミストが壁面等に付着してデポジットが堆積し易くなる。ここで、このデポジットとは、主に未燃焼の燃料中の炭化成分等からなる堆積物であり、上記壁面に付着したオイルミストに上記炭化成分等が更に付着することにより生じる。
【0014】
このように吸気系の壁面等にデポジットが堆積すると、内燃機関の燃料噴射弁から噴射された燃料の一部がそのデポジット中に吸い込まれたり同デポジットの表面に付着し易くなる。そして、燃料噴射弁から噴射された燃料の一部が上記デポジットに吸収されたり表面に付着したりすると、前記燃焼室内に供給される実際の燃料の量が目標量よりも少なくなり、内燃機関において実際の空燃比が目標値に達しなくなって、ドライバビリティの悪化やエミッションの不良といった問題が生じるようになる。
【0015】
特に、内燃機関の燃焼室内に燃料噴射弁にて直接燃料を噴射する、いわゆる直噴型の内燃機関では、燃焼ガス中に未燃の炭化成分が生じ易く、その炭化成分を多量に含んだ燃焼ガスが吸気弁の開弁時に吸気ポート内に吹き返されることにより、デポジットが堆積し易くなる。
【0016】
また、内燃機関に対して使用される燃料にあっては、その燃料の成分の一部であるガム質の含有量が増加してきており、これも、上記デポジットが堆積し易くなる一因となっている。
【0017】
このような直噴型内燃機関の採用や燃料成分の変化等により、デポジットの発生要因がさらに増加する一方で、近年の排出ガス規制の更なる強化により、エミッション不良の一因となるデポジットの許容付着量を低減することが望まれている。
【0018】
そこで従来は、こうしたオイルミストの発生を抑制するために、前記ヘッドカバーの前記ブローバイガスが流通する通路の途中に、ブローバイガスからオイルミストを分離するためのオイルセパレータ室を設けたものもある。このオイルセパレータ室としては、例えば以下のような構成のものがある。
【0019】
すなわち、先の図6に併せて示されるように、ヘッドカバー120の内部にて、その天井面122から所定距離だけ離間した位置で水平に設けた底板123と、同底板123の上面から上記天井面122に向かって当接するように突設される複数の仕切壁124とによってこのオイルセパレータ室121が形成される。
【0020】
また、その平面方向から見た断面構造を図7に示すように、このオイルセパレータ室121は、前記チェーンケース116と新気導入通路101との間において、上記ヘッドカバー120の天井面122と底板123と複数の仕切壁124とにより、複数の折返し部125を有するように形成されている。
【0021】
このようなオイルセパレータ室121を設けることにより、内燃機関110のクランクケース115内からチェーンケース116を介してオイルセパレータ室121内に流入するブローバイガスは、同オイルセパレータ室121内を、前記仕切壁124と衝突しながら蛇行して流通する。このように、ブローバイガスを仕切壁124に衝突させることにより、そのブローバイガス中のオイルミストの一部が仕切壁124に付着し、ブローバイガスから分離される。そして、オイルミストの一部が分離されたブローバイガスは、引続きオイルセパレータ室121内を流通し、新気導入通路101を介して内燃機関110の吸気通路111に還元される。
【0022】
なお、オイルセパレータ室121内を流通するブローバイガスから分離されたオイルは、底板123に設けられた落とし穴(図示略)を介して内燃機関110のシリンダヘッド113上に滴下される。そして、その滴下したオイルは、シリンダヘッド113及びシリンダブロック114の油通路(図示略)を介してオイルパン(図6参照)内に戻される。
【0023】
【発明が解決しようとする課題】
このように、ヘッドカバー120内にオイルセパレータ室121を設け、そのオイルセパレータ室121内におけるブローバイガスの流通経路を工夫することにより、ブローバイガスからオイルミストの一部を分離することは確かに可能である。しかしながら、このような構成のオイルセパレータ室121では、ブローバイガスからオイルミストを十分に分離することができなかった。このため、オイルセパレータ室121内を流通し新気導入通路101を介して内燃機関110の吸気通路111内に還元されるブローバイガス中には、依然として多量のオイルミストが存在することとなり、そのオイルミストが吸気通路111の壁面等に付着されることとなっていた。しかも、こうして吸気通路111の壁面等に付着したオイルミストに前記炭化成分が更に付着されるようなことがあると、前記デポジットが堆積されることともなり、結局、デポジットの付着量を前記許容付着量未満にまで低減するには至っていなかった。
【0024】
なお従来は、例えば特開平11―280490号公報にみられるように、内燃機関の作動室内において、同作動室内に設けられるリングギアの上方に、そのリングギアの回転に伴って飛散したオイルを捕集するためのオイル捕集室を設けるようにしたものもある。
【0025】
このオイル捕集室は、上記リングギアから上方に離間した位置にあってそのリングギアの外周面の一部を覆うように延設された底板によって上記作動室内におけるリングギアの上部が区画されることにより形成されている。
【0026】
また、このオイル捕集室には、上記リングギアの回転により飛散したオイルの一部を直接、及び、上記リングギアの回転により飛散して内燃機関のクランクケース及びクランクケースカバーの内面に沿って移動するオイルの一部を受入れる入口が設けられている。なお、この内燃機関では、前記作動室内において、上記リングギアの下部が浸るほどにオイルが満たされている。
【0027】
このようなオイル捕集室を設けることにより、上記リングギアの回転に伴って飛散したオイルは、その一部が上記入口を介してオイル捕集室内に流入するようになる。これにより、上記リングギアの回転に伴って飛散したオイルの一部をオイル捕集室にて捕集することが可能となり、その捕集されたオイルがリングギア上に滴下することがなくなる。このため、上記捕集されたオイルがリングギア上に滴下することによるオイルミストの発生は回避される。
【0028】
しかしながら、この内燃機関においては、上記リングギアの回転に伴って飛散したオイルのうち上記オイル捕集室の前記底板の下面に向かって飛散したオイルは、オイル捕集室では捕集されない。そして、オイル捕集室に捕集されずにその底板の下面に衝突したオイルは、その一部が前記リングギアに滴下するようになる。そして、このリングギア上に滴下したオイルは、そのリングギアと接触した際にオイルミストとなって、やはり前記作動室内を浮遊することとなる。
【0029】
このため、この内燃機関にあっても、結局は、潤滑性能や冷却性能の低下、オイルの劣化等は避けられず、特に前記ブローバイガス還元機構が搭載される場合には、デポジットの堆積、ひいてはドライバビリティの悪化やエミッションの不良も避けきれない。
【0030】
本発明は、こうした実情に鑑みてなされたものであり、その目的は、オイルミストの発生自体を好適に抑制することができる内燃機関のヘッドカバーを提供することにある。
【0042】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するための手段及びその作用効果について以下に記載する。
請求項1に記載の発明は、少なくとも2つの回転軸の間に巻き掛けられたチェーンによってそれら回転軸が駆動連結されたチェーン駆動機構を備える内燃機関にあって、少なくとも前記チェーンの上方を覆うように設けられる内燃機関のヘッドカバーにおいて、前記チェーンの上方近傍には、前記チェーンの走行によって生じる気流をカバーの内側壁に案内する方向に前記チェーンの回転走行面を含む平面と交差してカバーの上部内壁面から突出する突出壁が前記チェーンの走行方向に複数配設され、前記複数配設される突出壁は、それぞれ前記カバーの内側壁との離間距離が同一に保たれた状態で前記チェーンの走行方向の後部に配設されるものほどその幅が拡大されてなることを要旨とする。
【0043】
上記構成によれば、チェーンの回転走行に伴って飛散したオイルは、上記回転走行面を含む平面から離間した位置で滴下することとなり、チェーン上に滴下することが抑制される。またチェーンの回転走行により飛散して前記突出壁に衝突したオイルを、上記突出壁に沿ってカバーの内側壁へ向かう方向に偏向される気流により、該カバーの内側壁に接近する方向に容易に変位させることができる。このため、突出壁に衝突して下方に滴下したオイルが、上記チェーンの回転走行に伴って回転している前記回転軸上に滴下することを抑制することができ、ひいては、突出壁に衝突して下方に滴下したオイルが上記回転軸上に滴下することによるオイルミストの発生を抑制することができる。また、チェーンの回転走行に伴って飛散したオイルがチェーン上に滴下することをより広い範囲で抑制することができる。
また上記構成によれば、内燃機関において上記チェーンが設けられる密閉空間内に生じた気流は、複数の突出壁のそれぞれにおける上記チェーンの走行方向の前部を通過する際に、気流自身の循環方向に流れる気流と、対応する突出壁によりカバーの内側壁に案内される方向に突出壁に沿って偏向される気流とに分岐されるようになる。これにより、各突出壁の間には、上記偏向される気流が流通し、チェーンの回転走行に伴って飛散したオイルが各突出壁に衝突すると、その衝突したオイルは、上記偏向される気流とともに前記チェーンの走行方向の前部側から後部側へと速やかに流れるようになる。このため、チェーンの回転走行に伴って飛散したオイルがそのチェーン上に滴下することを好適に抑制することができる。
【0044】
請求項2に記載の発明は、請求項3に記載の内燃機関のヘッドカバーにおいて、前記突出壁は、それぞれ前記カバーの内側壁に対向する部分と反対側の部分に、前記チェーンの走行方向と平行をなす壁面部と、該平行をなす壁面部をそれぞれ該当する突出壁に曲線的に連絡する曲面部とを備えてなることを要旨とする。
【0045】
上記構成によれば、チェーンケース内においてチェーンの回転走行により生じた気流が、突出壁の壁面部を通過し、前記気流自身の循環方向に流れる気流と、前記突出壁に沿って偏向される気流とに分岐されると、後者の気流は、突出壁の曲面部にて前記カバーの内側壁に向かって徐々に偏向されるようになる。このため、上記気流自身の循環方向に流れる気流と、突出壁に沿って偏向される気流とに分岐されることに起因した風切り音等の騒音の発生を抑制することができる。
【0046】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は2に記載の内燃機関のヘッドカバーにおいて、前記突出壁は、前記チェーンの回転走行面を含む平面と斜めに交差されてなることを要旨とする。
上記構成によれば、チェーンの回転走行により飛散して突出壁に衝突したオイルにおける前記チェーンの上方から同チェーンの側方上部への変位をより的確に確保することができる。
請求項4に記載の発明は、請求項1〜3のいずれか一項に記載の内燃機関のヘッドカバーにおいて、前記突出壁は、前記カバーの内側壁に向かうほどその突出長が長く設定されてなることを要旨とする。
上記構成によれば、チェーンの回転走行に伴って飛散したオイルが突出壁に衝突すると、その衝突したオイルの一部は、突出壁の表面上を、衝突した部位から下方に向かって流れる。そして、その下方に向かって流れたオイルは、突出壁の下端部に到達すると、同下端部に到達した部位から直ちに下方に滴下するのではなく、その下端部に沿って、同突出壁と前記チェーンとが互いに対向する部分におけるチェーンの走行方向の後部側に向かって速やかに流れる。このため、チェーンの回転走行に伴って飛散したオイルがそのチェーン上に滴下することをより抑制することができる。
請求項5に記載の発明は、少なくとも2つの回転軸の間に巻き掛けられたチェーンによってそれら回転軸が駆動連結されたチェーン駆動機構を備える内燃機関にあって、少なくとも前記チェーンの上方を覆うように設けられる内燃機関のヘッドカバーにおいて、前記チェーンの上方近傍で同チェーンの回転走行面を含む平面と交差してカバーの上部内壁面から突出し、同上部内壁面と平行をなす平面での断面形状が前記回転走行面を含む平面上の点から前記チェーンの回転走行方向に向うにつれて同回転走行面を含む平面からそれぞれ離間するく字状をなす突出壁を備えることを要旨とする。
また請求項6に記載の発明は、請求項5に記載の内燃機関のヘッドカバーにおいて、前記突出壁は、前記チェーンの走行方向に複数配設されてなることを要旨とする。
上記構成によれば、チェーンの回転走行に伴って飛散したオイルがチェーン上に滴下することをより広い範囲で抑制することができる。
請求項7に記載の発明は、請求項1〜6のいずれか一項に記載の内燃機関のヘッドカバーにおいて、前記チェーンの走行方向の最後部に設けられてカバーの上部内壁面から前記チェーンの上方空間を囲繞する囲繞突出壁を更に備えることを要旨とする。
【0047】
上記構成によれば、チェーンの回転走行に伴って飛散したオイルは、その一部が囲繞突出壁に衝突し、その衝突したオイルの一部は、囲繞突出壁の壁面上を流れて同囲繞突出壁における前記チェーンの走行方向の後部にて収集される。そして、その収集されたオイルは、囲繞突出壁の前記後部からチェーン上に滴下される。このため、チェーンに付着しているオイルが同チェーンの回転走行により飛散し、そのチェーンに付着しているオイルの量が減少したとしても、前記飛散したオイルの一部を囲繞突出壁からチェーンに供給することにより、オイルミストの発生量を低減しつつ、チェーンの摩耗をより抑制することができる。
【0048】
請求項8に記載の発明は、請求項7に記載の内燃機関のヘッドカバーにおいて、前記囲繞突出壁は、前記チェーンの走行方向に対向する側に開口部を有するとともに、同チェーンの走行方向の後部に向かうほどその突出長が長く設定されてなることを要旨とする。
【0049】
上記構成によれば、チェーンの回転走行に伴って飛散したオイルは、その一部が囲繞突出壁の開口部を介して同囲繞突出壁の内面に衝突する。そして、その衝突したオイルの一部は、囲繞突出壁の内面上を、衝突した部位から下方に向かって流れる。さらに、その下方に向かって流れたオイルは、囲繞突出壁の下端部に到達すると、同下端部に到達した部位から直ちに下方に滴下するのではなく、その下端部に沿って、チェーンの走行方向の後部に向かって流れる。こうしてチェーンの走行方向の後部に向かって流れたオイルは、囲繞突出壁において上記チェーンの走行方向の後部における突出長の最も長い部位の近傍にてチェーン上に滴下するようになる。このため、チェーンの回転走行に伴って飛散して囲繞突出壁に衝突したオイルの一部を、チェーン上に滴下し易くすることができる。
【0050】
請求項9に記載の発明は、請求項1〜8のいずれか一項に記載の内燃機関のヘッドカバーにおいて、前記チェーンは、前記少なくとも2つの回転軸の各一端部に一体回転可能に固定されたスプロケットまたはギアと噛合されるものであることを要旨とする。
【0051】
上記構成によれば、チェーンの回転走行に伴って飛散したオイルを突出壁に衝突させ、その衝突したオイルを、チェーンの上方から同チェーンの側方上部に導くことにより、その導かれたオイルが、チェーンはもとより同チェーンと噛合するスプロケットまたはギア上に滴下することが抑制される。このため、チェーンの回転走行に伴って飛散したオイルがスプロケットまたはギア上に滴下することに起因してオイルミストが発生することを抑制することができる。
【0052】
請求項10に記載の発明は、請求項1〜9のいずれか一項に記載の内燃機関のヘッドカバーにおいて、前記内燃機関は、その燃焼室内からクランクケース内へ漏出したブローバイガスを吸気系に還元するブローバイガス還元機構を備えるものであり、当該ヘッドカバーは、該ブローバイガス還元機構の一部として前記内燃機関の上面全域を覆うものであることを要旨とする。
【0053】
上記構成によれば、チェーンの回転走行時においてそのチェーン上にオイルが滴下することに起因したオイルミストの発生が抑制されるとともに、ブローバイガスが吸気系に還元される際におけるオイルミストの吸気系への排出量、すなわち、オイル持ち去り量を低減することができる。このため、吸気系に付着するオイルミストが減少するとともに、同吸気系にデポジットが堆積しにくくなる。この結果、内燃機関の運転時における実際の空燃比が目標値から大きくずれることを抑制することができ、ひいては、同内燃機関のドライバビリティ及びエミッションの悪化を抑制することができる。
【0054】
【発明の実施の形態】
以下、本発明にかかる内燃機関のヘッドカバーを具体化した一実施形態について、図1〜図3を参照して説明する。
【0055】
まず、このヘッドカバーを備える内燃機関は、燃料供給系内の燃料をその内燃機関の燃焼室内に直接、噴射供給する、いわゆる直噴型の内燃機関である。また、この内燃機関は、先に図6にて示した内燃機関110と同一の構成のブローバイガス還元機構を備えている。
【0056】
また、図1に示されるように、この内燃機関10は、動力伝達系の一部を構成するチェーン駆動機構として、回転軸である1本のクランクシャフト11と、同じく回転軸である2本のカムシャフト12,13とを備えている。これらクランクシャフト11及び両カムシャフト12,13は、それらの一端部が内燃機関10のチェーンケース14内に表出するように軸支されている。
【0057】
上記クランクシャフト11には、上記チェーンケース14内に表出する一端部にて一体回転可能に固定される駆動軸スプロケット15が設けられている。一方、上記カムシャフト12,13にはそれぞれ、同じくチェーンケース14内に表出する一端部にて一体回転可能に固定される被動軸スプロケット16,17が設けられている。
【0058】
また、前記チェーンケース14内には、各シャフト11〜13を駆動連結すべく、上記スプロケット15〜17のそれぞれに対して噛合するように巻き掛けられる環状のタイミングチェーン18が回転走行可能に設けられている。ここで、タイミングチェーン18には、上記スプロケット15〜17との噛合による摩耗を抑制するために、内燃機関10のオイルパン19内に貯溜されるオイルの一部が供給されている。なお、タイミングチェーン18は、上記シャフト11〜13の各一端部に一体回転可能に固定されたギアと噛合するものであってもよく、この場合も、タイミングチェーン18には上記オイルが供給される。
【0059】
さて、このような構成の内燃機関10には、そのシリンダヘッド20の上部のみならず前記タイミングチェーン18の上方をも覆うように、すなわち内燃機関10の上面全域を覆うようにヘッドカバー30が上記シリンダヘッド20に対して固定されている。このヘッドカバー30は、前記ブローバイガス還元機構の一部を構成するものであり、同ヘッドカバー30には、ブローバイガス還元機構の新気導入通路や還流通路(ともに図示略)等が接続されている。
【0060】
本実施形態では、先の図1に示されるように、このヘッドカバー30は、タイミングチェーン18の上方近傍においてヘッドカバー30の壁面31の上部内壁面としての天井面32から下方に向かって突出する突出壁33〜36を備えている。
【0061】
この突出壁33〜36は、図2に示されるように、同突出壁33〜36と前記タイミングチェーン18とが互いに対向する部分における同タイミングチェーン18の走行方向(図2中の矢印Aの方向)において複数(この例では4つ)設けられている。
【0062】
また、各突出壁33〜36は、タイミングチェーン18の上方近傍において、チェーンケース14内でタイミングチェーン18の回転走行によって生じる気流をヘッドカバー30の内側壁37に案内する方向に前記回転走行面Pを含む平面と斜めに交差するように延設されている。すなわち、各突出壁33〜36は、前記タイミングチェーン18の走行方向(図2中の矢印Aの方向)の前部から後部に向かうにつれてヘッドカバー30の内側壁37に徐々に接近するように設けられている。なお、上記タイミングチェーン18の回転走行面Pとは、前記シャフト11〜13に対して直交するとともにタイミングチェーン18の全周を含む平面である。
【0063】
また、各突出壁33〜36には、前記タイミングチェーン18の走行方向(図2中の矢印Aの方向)の前部側において、同走行方向と平行をなす壁面部33a〜36aと、同壁面部33a〜36aをそれぞれ該当する突出壁33〜36に曲線的に連絡する曲面部33b〜36bとが設けられている。
【0064】
また、同図2及び図3に示されるように、突出壁33〜36は、それぞれヘッドカバー30の内側壁37との離間距離D1が同一に保たれた状態で、タイミングチェーン18の走行方向の後部に配設されるものほど、タイミングチェーン18の前記回転走行面Pと直交する方向の幅が拡大されるように設けられている。すなわち、突出壁33〜36は、各突出壁33〜36における上記幅を、タイミングチェーン18の走行方向の前部に配設されるものから順に、D2、D3、D4、D5とすると、D2<D3<D4<D5となるように設けられている。
【0065】
さらに、図3に示されるように、各突出壁33〜36は、前記壁面部33a〜36aからヘッドカバー30の上記内側壁37に向かうほどその突出長H1が長くなるように設定されている。
【0066】
このような突出壁33〜36をヘッドカバー30に対して設けることにより、タイミングチェーン18に付着しているオイルが、同タイミングチェーン18の回転走行によってヘッドカバー30の天井面32に向かって飛散すると、その飛散したオイルは、その天井面32の突出壁33〜36に衝突する。そして、その衝突したオイルは、突出壁33〜36とタイミングチェーン18とが互いに対向する部分におけるタイミングチェーン18の走行方向の前部側から後部側、すなわち突出壁33〜36の壁面部33a〜36aから後部33c〜36cに向かって突出壁33〜36の壁面に沿って流れる。
【0067】
ここで、本実施形態では、各突出壁33〜36は、タイミングチェーン18の回転走行面Pを含む平面と斜めに交差している。これにより、突出壁33〜36に衝突したオイルは、上記壁面部33a〜36a側から後部33c〜36c側へ流れることで、タイミングチェーン18の上方から同タイミングチェーン18の側方上部へと的確に変位する。このため、タイミングチェーン18の回転走行に伴って飛散したオイルは、上記回転走行面Pを含む平面から離間した位置で滴下することとなり、タイミングチェーン18上に滴下することが抑制される。この結果、上記飛散したオイルがタイミングチェーン18上に滴下することによるオイルミストの発生自体を好適に抑制することができる。また、こうしたオイルミストの発生自体を抑制するに際して、上述のような突出壁33〜36を設けるのみでよいため、ヘッドカバー30の構造が複雑化することを抑制することができる。
【0068】
また、本実施形態では、各突出壁33〜36は、チェーンケース14内においてタイミングチェーン18の回転走行によって生じる気流をヘッドカバー30の内側壁37に案内する方向に前記回転走行面Pを含む平面と交差している。ここで、内燃機関10のチェーンケース14内には気体が存在しており、その気体は、タイミングチェーン18の回転走行により、そのタイミングチェーン18に引きづられるように移動し、チェーンケース14内をタイミングチェーン18と同一の回転方向に循環するようになる。
【0069】
そして、このチェーンケース14内に存在する気体の循環気流が生じると、その気流は、突出壁33〜36の壁面部33a〜36aを通過する際に、気流自身の循環方向に流れる気流と、ヘッドカバー30の内側壁37に案内される方向に突出壁33〜36に沿って偏向される気流とに分岐されるようになる。
【0070】
このため、タイミングチェーン18の回転走行により飛散して突出壁33〜36に衝突したオイルを、上記気流により、ヘッドカバー30の内側壁37に接近する方向に容易に変位させることができる。この結果、突出壁33〜36に衝突して下方に滴下したオイルが、タイミングチェーン18の回転走行に伴って回転している各シャフト11〜13上に滴下することを抑制することができる。また、突出壁33〜36に衝突して下方に滴下したオイルが各シャフト11〜13上に滴下することによるオイルミストの発生を抑制することができる。
【0071】
また、本実施形態では、各突出壁33〜36は、上記内側壁37に向かうほどその突出長H1が長く設定されている。これにより、タイミングチェーン18の回転走行に伴って飛散したオイルが突出壁33〜36に衝突すると、その衝突したオイルの一部は、突出壁33〜36の表面上を、衝突した部位から下方に向かって流れる。そして、その下方に向かって流れたオイルは、突出壁33〜36の下端部に到達すると、同下端部に到達した部位から直ちに下方に滴下するのではなく、その下端部に沿って、前記タイミングチェーン18の走行方向(図2中の矢印Aの方向)の後部側、すなわち後部33c〜36cに向かって速やかに流れる。このため、タイミングチェーン18の回転走行に伴って飛散したオイルがタイミングチェーン18上に滴下することをより抑制することができる。
【0072】
また、本実施形態では、突出壁33〜36は、前記タイミングチェーン18の走行方向において複数配列配設されている。このため、タイミングチェーン18の回転走行に伴って飛散したオイルがタイミングチェーン18上に滴下することをより広い範囲で抑制することができる。
【0073】
また、本実施形態では、突出壁33〜36は、それぞれヘッドカバー30の前記内側壁37との離間距離D1が同一に保たれた状態で、前記タイミングチェーン18の走行方向の後部に配設されるものほどその幅D2〜D5が拡大されるように設けられている。これにより、チェーンケース14内に生じた気流は、それぞれの突出壁33〜36の壁面部33a〜36aを通過する際、気流自身の循環方向に流れる気流と、対応する突出壁33〜36によりヘッドカバー30の内側壁37に案内される方向に各突出壁33〜36に沿って偏向される気流とに分岐される。そして、各突出壁33〜36の間には、それぞれ上記突出壁33〜36に沿って偏向された気流が流通することとなる。
【0074】
このため、タイミングチェーン18の回転走行に伴って飛散したオイルが各突出壁33〜36に衝突すると、その衝突したオイルは、上記突出壁33〜36に沿って偏向された気流とともに突出壁33〜36の後部33c〜36cへと速やかに流れるようになる。この結果、タイミングチェーン18の回転走行に伴って飛散したオイルがそのタイミングチェーン18上に滴下することを好適に抑制することができる。
【0075】
また、本実施形態では、各突出壁33〜36には、それらの前部側に、前記タイミングチェーン18の走行方向(図2中の矢印Aの方向)と平行をなす壁面部33a〜36aと、同壁面部33a〜36aをそれぞれ該当する突出壁33〜36に曲線的に連絡する曲面部33b〜36bとが設けられている。これにより、タイミングチェーン18の回転走行により生じた気流が、各突出壁33〜36の壁面部33a〜36aにて、気流自身の循環方向に流れる気流と、突出壁33〜36に沿って偏向される気流とに分岐されると、後者の気流は、曲面部33b〜36bにてヘッドカバー30の内側壁37へ徐々に偏向される。このため、上記気流自身の循環方向に流れる気流と、突出壁33〜36に沿って偏向される気流とに分岐されることに起因した風切り音等の騒音の発生を抑制することができる。
【0076】
また、本実施形態では、突出壁33〜36を有するヘッドカバー30は、シャフト11〜13の各一端部に一体回転可能に固定されたスプロケット15〜17と噛合するタイミングチェーン18をチェーン駆動機構の一部として備える内燃機関10に対して設けられている。これにより、タイミングチェーン18の回転走行に伴って飛散したオイルを突出壁33〜36に衝突させ、その衝突したオイルを、タイミングチェーン18の上方から側方上部に導くことにより、その導かれたオイルがタイミングチェーン18はもとより各スプロケット15〜17に滴下することが抑制される。このため、タイミングチェーン18の回転走行に伴って飛散したオイルがそれぞれのスプロケット15〜17に滴下することによるオイルミストの発生を抑制することができる。
【0077】
また、本実施形態では、突出壁33〜36を有するヘッドカバー30は、機関燃焼室(図示略)からクランクケース(図示略)内へ漏出したブローバイガスを吸気系(図示略)に還元するブローバイガス還元機構を備える内燃機関10に対して設けられている。さらに、このヘッドカバー30は、前記ブローバイガス還元機構の一部として内燃機関10の上部全域を覆うものとなっている。これにより、タイミングチェーン18の回転走行時においてそのタイミングチェーン18上にオイルが滴下することに起因したオイルミストの発生が抑制されることにより、ブローバイガスが吸気系に還元される際におけるオイルミストの吸気系への排出量、すなわち、オイル持ち去り量を低減することができる。このため、吸気系に付着するオイルミストが減少するとともに、同吸気系にデポジットが堆積しにくくなる。この結果、内燃機関10の運転時における実際の空燃比が目標値から大きくずれることを抑制することができ、ひいては、同内燃機関10のドライバビリティ及びエミッションの悪化を抑制することができる。
【0078】
また、本実施形態では、突出壁33〜36を有するヘッドカバー30は、燃料供給系(図示略)内の燃料をその機関燃焼室内に直接、噴射供給する、いわゆる直噴型の内燃機関10に対して設けられている。
【0079】
ここで、一般に、上記直噴型の内燃機関10では、燃焼ガス中に未燃の炭化成分が生じやすく、その炭化成分を多量に含んだ燃焼ガスが吸気弁の開弁時に吸気ポート内に吹き返されることがある。このような燃焼ガスの吹き返しが生じると、吸気ポート内に流入した炭化成分が、その吸気ポート内の壁面等において既に付着しているオイルミストに付着してデポジットが堆積し易くなる。
【0080】
この点、本実施形態では、上述のように、オイルミストのブローバイガス還元機構を介した吸気系内へのオイル持ち去り量が低減されるため、吸気系内の壁面等に付着するオイルミストの付着量が減少する。これにより、上記吹き返しによって吸気系内に炭化成分が流入しても、その炭化成分の吸気系の壁面等への付着が抑制される。このため、同吸気系の壁面等にデポジットが堆積することを抑制することができる。
【0081】
以上詳述したように、この実施形態にかかる内燃機関のカバーによれば、以下に示すような優れた効果が得られるようになる。
(1)タイミングチェーン18の回転走行に伴って飛散したオイルがタイミングチェーン18やスプロケット15〜17等の上に滴下することによるオイルミストの発生自体を好適に抑制することができる。
【0082】
(2)ヘッドカバー30の構造が複雑化することを抑制することができる。
(3)風切り音等の騒音の発生を抑制することができる。
(4)内燃機関10の吸気系内にデポジットが堆積することを抑制することができ、ひいては、内燃機関10のドライバビリティ及びエミッションの悪化を抑制することができる。
【0083】
なお、上記実施形態は、例えば以下のように適宜変更することもできる。
・上記実施形態において、ヘッドカバー30に対し、前記タイミングチェーン18の走行方向(図2中の矢印Aの方向)の最後部に設けられてヘッドカバー30の天井面32からタイミングチェーン18の上方空間を囲繞する囲繞突出壁を更に設ける構成としてもよい。この囲繞突出壁は、例えば図4及び図5に示す構成とすることができる。
【0084】
すなわち、図4に示すように、囲繞突出壁40は、ヘッドカバー30の天井面32と平行をなす平面での断面形状がU字状をなし、前記タイミングチェーン18の走行方向(図2中の矢印Aの方向)に対向する側に開口部41を有している。
【0085】
また、図5に示すように、囲繞突出壁40は、上記開口部41からタイミングチェーン18の走行方向(図2中の矢印Aの方向)の後部に向かうほどその突出長が長くなるように設定されている。すなわち、囲繞突出壁40は、その突出長が、開口部41における突出長H2から、タイミングチェーン18の走行方向(図2中の矢印Aの方向)の後部に向かうほど徐々に大きくなり、同走行方向における後端部42における突出長がH3(>H2)となるように設けられている。
【0086】
このような囲繞突出壁40を設けることにより、タイミングチェーン18の回転走行に伴って飛散したオイルは、その一部が囲繞突出壁40に衝突し、その衝突したオイルの一部は、囲繞突出壁40の壁面上を流れて後端部42にて収集される。そして、その収集されたオイルは、囲繞突出壁40の後端部42からタイミングチェーン18上に滴下される。このため、タイミングチェーン18に付着しているオイルが同タイミングチェーン18の回転走行により飛散し、そのタイミングチェーン18に付着しているオイルの量が減少したとしても、上記飛散したオイルの一部を囲繞突出壁40からタイミングチェーン18に供給することができる。この結果、オイルミストの発生量を低減しつつ、タイミングチェーン18の摩耗をより抑制することができる。
【0087】
また、囲繞突出壁40は、その開口部41から後端部42に向かうほどその突出長が長くなるように設定されているため、囲繞突出壁40に衝突してその下端部に到達したオイルは、その下端部に沿って後端部42へ向かって流れ、同後端部42近傍にてタイミングチェーン18上に滴下する。このため、タイミングチェーン18の回転走行に伴って飛散して囲繞突出壁40に衝突したオイルの一部を、タイミングチェーン18上に滴下し易くすることができる。
【0088】
なお、この囲繞突出壁40を、ヘッドカバー30の天井面32と平行をなす平面での断面形状が、例えば、前記タイミングチェーン18の走行方向に対向する側に開口部を有するく字形、コ字形、半円形等をなすように設ける構成としてもよいし、矩形や円形や楕円形といった環状形をなすように設ける構成としてもよい。
【0089】
また、囲繞突出壁40を、その開口部41から後端部42にかけて同一の突出長となるように設ける構成としてもよい。
・上記実施形態において、ヘッドカバー30に設けられる突出壁33〜36の数は4つには限定されない。この突出壁の数は、単数または、4つ以外の複数であってもよい。
【0090】
・上記実施形態において、突出壁33〜36の下端部に、タイミングチェーン18の回転走行に伴って飛散して突出壁33〜36に衝突したオイルを同突出壁33〜36の後部33c〜36c側に流すための樋部を設ける構成としてもよい。
【0091】
・上記実施形態において、ヘッドカバー30の突出壁33〜36を、壁面部33a〜36aおよび曲面部33b〜36bの一方を省略して設ける構成としてもよいし、壁面部33a〜36aおよび曲面部33b〜36bの双方を設けずに直線状に設ける構成としてもよい。
【0092】
・また、各突出壁33〜36を、ヘッドカバー30の天井面32と平行をなす平面での断面形状が、例えば、タイミングチェーン18の回転走行面P上の点から同タイミングチェーン18の回転走行方向(図2中の矢印Aの方向)に向かうにつれて回転走行面Pから離間するく字状をなすように設ける構成としてもよい。
【0093】
また、このようにした場合、その突出壁の下端面を、上記回転走行面P上の点から上記回転走行方向の奥側の両端部にかけて一定の位置となるように設ける構成としてもよいし、上記回転走行面P上の点から上記回転走行方向の奥側の両端部に向かうにつれて下方に位置するように設ける構成としてもよい。
【0094】
・上記実施形態において、ヘッドカバー30の各突出壁33〜36を、それらの幅D2〜D5が同一となるように設ける構成としてもよい。なお、このようにした場合には、タイミングチェーン18の回転走行に伴って飛散したオイルを、突出壁33〜36に衝突した後に後部33c〜36cへ速やかに流すべく、各突出壁33〜36と前記回転走行面Pとのなす角がより小さくなるようにそれら突出壁33〜36を設けることが望ましい。
【0095】
・上記実施形態において、ヘッドカバー30の各突出壁33〜36を、それらの後部33c〜36cがヘッドカバー30における内側壁37(図2参照)に当接するように設ける構成としてもよい。これにより、タイミングチェーン18の回転走行に伴って飛散して突出壁33〜36に衝突したオイルが内側壁37に達すると、その内側壁37及び、チェーンケース14を構成するチェーンカバーの内側面上を流れてオイルパン19内に流入する。このため、タイミングチェーン18の回転走行に伴って飛散して突出壁33〜36に衝突したオイルをオイルパン19内に戻す際に、そのオイルがチェーンケース14内の構造物に衝突することを抑制することができる。また、ヘッドカバー30においてチェーンケース14と対応する部位を好適に補強することができる。
【0096】
・上記実施形態において、ヘッドカバー30の各突出壁33〜36を、全体にわたって同一の突出長で設ける構成としてもよい。また、突出壁33〜36を、それら突出壁33〜36毎に、異なる突出長で設ける構成としてもよい。
【0097】
・上記実施形態では、図3および図5に示したように、ヘッドカバー30の突出壁33〜36を、それらの下端部が、後部33c〜36cに向かうほど勾配が大きくなる曲線を描くように設ける構成とした。しかしながら、これら突出壁33〜36を、それらの下端部が、後部33c〜36cに向かうほど勾配が小さくなる曲線、または直線をなすように設ける構成としてもよい。
【0098】
・上記実施形態において、ヘッドカバー30の突出壁33〜36を、タイミングチェーン18の回転走行によって生じる気流を内燃機関10のシリンダヘッド20側に案内する方向に前記タイミングチェーン18の回転走行面Pを含む平面と交差するように設ける構成としてもよい。
【0099】
・上記実施形態において、各突出壁33〜36を、タイミングチェーン18の回転走行面Pを含む平面に対して直交するように設ける構成としてもよい。このようにした場合でも、タイミングチェーン18の回転走行により飛散して突出壁33〜36に衝突したオイルを、タイミングチェーン18の上方から同タイミングチェーン18の側方上部へと変位させ易くなり、オイルミストの発生自体を好適に抑制することができる。
【0100】
・上記実施形態において、ヘッドカバー30の天井面32における各突出壁33〜36間に、例えば、タイミングチェーン18の回転走行方向に上り勾配または下り勾配となる傾斜部等を設ける構成としてもよい。また、このような傾斜部を、ヘッドカバー30の天井面32における突出壁33とヘッドカバー30の内側壁38(図2参照)との間、及び突出壁36とヘッドカバー30の内側壁39(図2参照)との間にも設ける構成としてもよい。
【0101】
このようにした場合には、タイミングチェーン18の回転走行に伴って飛散したオイルがヘッドカバー30の天井面32に衝突したとしても、その衝突したオイルが突出壁33〜36及びヘッドカバー30の内側壁38,39に向かって速やかに流れるようになる。このため、タイミングチェーン18の回転走行に伴って飛散したオイルがヘッドカバー30の天井面32からタイミングチェーン18に滴下することを抑制することができる。
【0102】
・上記実施形態において、ヘッドカバー30の突出壁33〜36、囲繞突出壁40を、例えば図6及び図7にて示したような構成のオイルセパレータ室を備えるヘッドカバーに対して設けるようにしてもよい。
【0103】
・上記実施形態では、クランクシャフト11及びカムシャフト12,13の3つの回転軸の間に巻き掛けられたタイミングチェーン18によってそれらシャフト11〜13が駆動連結されたチェーン駆動機構を備える内燃機関10に設けられるヘッドカバー30の例を示した。しかしながら、本発明は、2つまたは4つ以上の回転軸の間に巻き掛けられたチェーンによってそれら回転軸が駆動連結されたチェーン駆動機構を備える内燃機関のヘッドカバーにも同様に適用することができる。
【0104】
また、複数の回転軸のうちの2つ以上の任意の回転軸の間にチェーンが巻き掛けられるとともに、そのチェーンが巻き掛けられた回転軸と、チェーンが巻き掛けられていない回転軸とがギアを介して駆動連結されたチェーン駆動機構を備える内燃機関のヘッドカバーにも同様に適用することができる。なお、この場合には、ヘッドカバー30の突出壁33〜36を、上記チェーンの回転走行に伴って飛散したオイルがチェーンのみならず上記ギアにも滴下しないように設けることが望ましい。
【0105】
・上記実施形態では、直噴型の内燃機関10に設けられるヘッドカバー30の例を示したが、本発明は、直噴型以外の内燃機関に対して設けられるヘッドカバーにも同様に適用することができる。
【0106】
・上記実施形態では、ブローバイガス還元機構を備えた内燃機関10に設けられるヘッドカバー30の例を示したが、本発明は、ブローバイガス還元機構を備えない内燃機関に対して設けられるヘッドカバーにも同様に適用することができる。
【0107】
その他、以上の記載から把握できる技術的思想について、その効果とともに以下に記載する。
(イ)前記内燃機関が、燃料供給系内の燃料を該機関の燃焼室内に直接噴射供給する直噴型の内燃機関である請求項1〜12のいずれかに記載の内燃機関のヘッドカバー。
【0108】
上記構成によれば、オイルミストの吸気系内への排出量が低減し、吸気系内の壁面等に付着するオイルミストの付着量が減少するため、炭化成分を多量に含んだ燃焼ガスが吸気弁の開弁時に吸気ポート内に吹き返されても、その炭化成分の吸気系の壁面等への付着が抑制される。このため、同吸気系の壁面等にデポジットが堆積することを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明にかかるヘッドカバーの一実施形態を示す断面図。
【図2】図1の2―2線に沿った断面図。
【図3】図1の3―3線に沿った断面図。
【図4】変形例にかかるヘッドカバーの断面図。
【図5】同じく変形例にかかるヘッドカバーの断面図。
【図6】従来のヘッドカバー及び内燃機関を示す側面図。
【図7】図6の7―7線に沿った断面図。
【符号の説明】
10…内燃機関、11…クランクシャフト、12,13…カムシャフト、14…チェーンケース、15…駆動軸スプロケット、16,17…被動軸スプロケット、18…タイミングチェーン、19…オイルパン、20…シリンダヘッド、30…ヘッドカバー、31…壁面、32…天井面、33〜36…突出壁、33a〜36a…壁面部、33b〜36b…曲面部、33c〜36c…後部、37〜39…内側壁、40…囲繞突出壁、41…開口部、42…後端部。
Claims (10)
- 少なくとも2つの回転軸の間に巻き掛けられたチェーンによってそれら回転軸が駆動連結されたチェーン駆動機構を備える内燃機関にあって、少なくとも前記チェーンの上方を覆うように設けられる内燃機関のヘッドカバーにおいて、
前記チェーンの上方近傍には、前記チェーンの走行によって生じる気流をカバーの内側壁に案内する方向に前記チェーンの回転走行面を含む平面と交差してカバーの上部内壁面から突出する突出壁が前記チェーンの走行方向に複数配設され、
前記複数配設される突出壁は、それぞれ前記カバーの内側壁との離間距離が同一に保たれた状態で前記チェーンの走行方向の後部に配設されるものほどその幅が拡大されてなる
ことを特徴とする内燃機関のヘッドカバー。 - 前記突出壁は、それぞれ前記カバーの内側壁に対向する部分と反対側の部分に、前記チェーンの走行方向と平行をなす壁面部と、該平行をなす壁面部をそれぞれ該当する突出壁に曲線的に連絡する曲面部とを備えてなる
請求項1に記載の内燃機関のヘッドカバー。 - 前記突出壁は、前記チェーンの回転走行面を含む平面と斜めに交差されてなる
請求項1又は2に記載の内燃機関のヘッドカバー。 - 前記突出壁は、前記カバーの内側壁に向かうほどその突出長が長く設定されてなる
請求項1〜3のいずれか一項に記載の内燃機関のヘッドカバー。 - 少なくとも2つの回転軸の間に巻き掛けられたチェーンによってそれら回転軸が駆動連結されたチェーン駆動機構を備える内燃機関にあって、少なくとも前記チェーンの上方を覆うように設けられる内燃機関のヘッドカバーにおいて、
前記チェーンの上方近傍で同チェーンの回転走行面を含む平面と交差してカバーの上部内壁面から突出し、同上部内壁面と平行をなす平面での断面形状が前記回転走行面を含む平面上の点から前記チェーンの回転走行方向に向うにつれて同回転走行面を含む平面からそれぞれ離間するく字状をなす突出壁を備える
ことを特徴とする内燃機関のヘッドカバー。 - 前記突出壁は、前記チェーンの走行方向に複数配設されてなる
請求項5に記載の内燃機関のヘッドカバー。 - 前記チェーンの走行方向の最後部に設けられてカバーの上部内壁面から前記チェーンの上方空間を囲繞する囲繞突出壁を更に備える
請求項1〜6のいずれか一項に記載の内燃機関のヘッドカバー。 - 前記囲繞突出壁は、前記チェーンの走行方向に対向する側に開口部を有するとともに、同チェーンの走行方向の後部に向かうほどその突出長が長く設定されてなる
請求項7に記載の内燃機関のヘッドカバー。 - 前記チェーンは、前記少なくとも2つの回転軸の各一端部に一体回転可能に固定されたスプロケットまたはギアと噛合されるものである
請求項1〜8のいずれか一項に記載の内燃機関のヘッドカバー。 - 前記内燃機関は、その燃焼室内からクランクケース内へ漏出したブローバイガスを吸気系に還元するブローバイガス還元機構を備えるものであり、当該ヘッドカバーは、該ブローバイガス還元機構の一部として前記内燃機関の上面全域を覆うものである
請求項1〜9のいずれか一項に記載の内燃機関のヘッドカバー。
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