JP4410628B2 - ポリウレタンペースト改質用熱可塑性エラストマー組成物およびその溶剤ペースト - Google Patents

ポリウレタンペースト改質用熱可塑性エラストマー組成物およびその溶剤ペースト Download PDF

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Description

本発明は、ポリウレタンペースト改質用熱可塑性エラストマー組成物およびその溶剤ペーストに関し、詳しくはポリウレタンとの相溶性、柔軟性に優れるウレタン皮膜のグリップ性を向上させるポリウレタンペースト改質用熱可塑性エラストマー組成物およびその溶剤ペーストに関する。
従来、ポリ塩化ビニル/フタル酸可塑剤系やポリウレタン/有機溶剤系のペーストの熱処理から得られる成形品のひとつに手袋があるが、これらの成形品は、耐油性や耐摩耗性には優れているものの、手袋としてはグリップ力が劣ることが問題になっていた。
また、天然ゴムラテックスから得られる手袋はグリップ力には優れるものの、皮膚へのアレルギー問題や、ゴム臭気、ゴワゴワ感があり、細かい作業や長時間の作業には耐えられず、原因となると考えられる天然ゴムに含まれる蛋白質量を減らすために、−OH基を有する微粒子をゴムラテックスに含有させたり(例えば、特許文献1参照。)、プロアテーゼを添加させたり(例えば、特許文献2参照。)しているが、未だ満足な結果が得られず、追加の工程を必要とするという問題を有するという状況にある。
特開2002−348712号公報 特開2004−107483号公報
本発明の目的は、上記問題点に鑑み、ポリウレタンペーストに相溶可能で、手袋等のポリウレタン製ディッピング成形品の柔軟性とグリップ性を向上させるポリウレタンペースト改質用熱可塑性エラストマー組成物、及び該熱可塑性エラストマー組成物を用いた溶剤ペーストを提供することにある。
本発明者は、上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、ポリウレタンとの相溶性に優れるイソブチレン系化合物ブロック及び芳香族ビニル系化合物ブロックから構成されるイソブチレン系ブロック共重合体(SIBS)に、必要に応じて粘度調整用に水添及び/または部分水添共重合体を、柔軟性付与剤として非芳香族系ゴム用軟化剤を、ポリウレタンとの相溶性付与剤として石油樹脂を配合した熱可塑性エラストマー組成物、さらに、該熱可塑性エラストマー組成物を工業用溶剤に溶解した溶剤ペーストは、ポリウレタンペーストと混合することにより、手袋をはじめとするディッピング成形が可能で、得られた成形品は、柔軟性、ポリウレタンとの相溶性、グリップ力向上特性に優れる成形品を得ることができることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明の第1の発明によれば、(a)イソブチレン系化合物ブロック及び芳香族ビニル系化合物ブロックから構成されるイソブチレン系ブロック共重合体を含有することを特徴とするポリウレタンペースト改質用熱可塑性エラストマー組成物が提供される。
また、本発明の第2の発明によれば、第1の発明において、さらに、成分(a)100重量部に対し、(b)水添及び/または部分水添共重合体1〜80重量部を含むことを特徴とするポリウレタンペースト改質用熱可塑性エラストマー組成物が提供される。
また、本発明の第3の発明によれば、第1又は2の発明において、さらに、成分(a)100重量部に対し、(c)非芳香族系ゴム用軟化剤1〜100重量部を含むことを特徴とする請求項1又は2に記載のポリウレタンペースト改質用熱可塑性エラストマー組成物が提供される。
また、本発明の第4の発明によれば、第1〜3のいずれかの発明において、さらに、成分(a)100重量部に対し、(d)石油樹脂1〜50重量部を含むことを特徴とするポリウレタンペースト改質用熱可塑性エラストマー組成物が提供される。
また、本発明の第5の発明によれば、第1〜4のいずれかの発明のポリウレタンペースト改質用熱可塑性エラストマー組成物100重量部を溶剤200〜2000重量部に溶解して得られるポリウレタンペースト改質用溶剤ペーストが提供される。
また、本発明の第6の発明によれば、第1〜4のいずれかの発明のポリウレタンペースト改質用熱可塑性エラストマー組成物を用いたディッピング成形品が提供される。
また、本発明の第7の発明によれば、第5の発明のポリウレタンペースト改質用溶剤ペーストを用いたディッピング成形品が提供される。
本発明のポリウレタンペースト改質用熱可塑性エラストマー組成物及びそれを用いた溶剤ペーストからは、ウレタン皮膜のグリップ性を向上させたせ成形品を好適にディッピング成形することができる。
本発明は、イソブチレン系ブロック共重合体を含有するポリウレタンとの相溶性、柔軟性に優れるポリウレタンペースト改質用熱可塑性エラストマー組成物、それを用いた溶剤ペーストである。本発明を構成する成分、製造方法、用途について以下に詳細に説明する。
1.ポリウレタンペースト改質用熱可塑性エラストマー組成物の構成成分
(a)イソブチレン系ブロック共重合体
本発明のポリウレタンペースト改質用熱可塑性エラストマー組成物で使用されるイソブチレン系ブロック共重合体(a)は、イソブチレン系化合物ブロック及び芳香族ビニル系化合物ブロックから構成されるイソブチレン系ブロック共重合体である。イソブチレン系ブロック共重合体(a)は、イソブチレンを主体とするユニットと芳香族ビニル化合物を主体とするユニットを有しているものであれば、いずれの構造を有するものも使用可能であるが、物性のバランスと合成の簡便さから、(芳香族ビニル化合物を主体とするユニット−イソブチレンを主体とするユニット−芳香族ビニル化合物を主体とするユニット)の構造を有するトリブロック体、(イソブチレンを主体とするユニット−芳香族ビニル化合物を主体とするユニット)の構造を有するジブロック体、またはこれらの混合物を用いることができる。
ブロック共重合体のイソブチレンを主体とするユニットと芳香族ビニル化合物芳香族ビニル化合物を主体とするユニットの割合に特に制限はないが、物性のバランスから、イソブチレンを主体とする単量体95〜20重量部と芳香族ビニル化合物芳香族ビニル化合物を主体とする単量体5〜80重量部が好ましく、さらにイソブチレンを主体とする単量体90〜60重量部と芳香族ビニル化合物を主体とする単量体10〜40重量部が好ましい。
イソブチレン系ブロック共重合体(a)の数平均分子量は、特に制限はないが、30,000〜500,000が好ましく、50,000〜400,000が特に好ましい。数平均分子量が30,000未満の場合、機械特性が低下、また、500,000を超える場合、成形性が低化する。
上記芳香族ビニル系重合体ブロックで用いられる芳香族ビニル化合物としては、スチレン、α−メチルスチレン、β−メチルスチレン、p−メチルスチレン、t−ブチルスチレン、モノクロロスチレン、ジクロロスチレン、メトキシスチレン、インデン等が挙げられる。上記化合物の中でもコストと物性及び生産性のバランスからスチレン、α−メチルスチレン、p−メチルスチレン、インデンが好ましく、その中から2種以上選んでもよい。
イソブチレン系ブロック共重合体の具体例としては、鐘淵化学(株)製の103T(重量平均分子量=100、000)又は073T(重量平均分子量=65、000)等を挙げることができる。
(b)水添及び/または部分水添共重合体
本発明のポリウレタンペースト改質用熱可塑性エラストマー組成物においては、必要に応じて、水添及び/または部分水添共重合体(b)を用いることができる。成分(b)は、増粘剤(粘度調整剤)として機能する成分である。
成分(b)としては、芳香族ビニル化合物−共役ジエン化合物系ブロック共重合体の水添物及び/または部分水添物、水添及び/または部分水添共役ジエン化合物系ブロック共重合体、芳香族ビニル化合物−共役ジエン化合物系ランダム共重合の水添物及び/または部分水添物等を挙げることができる。これらの中では、芳香族ビニル化合物−共役ジエン化合物系ブロック共重合体の水添物及び/または部分水添物、水添共役ジエン化合物系ブロック共重合体が好ましい。
上記芳香族ビニル化合物−共役ジエン化合物系ブロック共重合体の水添物及び/または部分水添物としては、芳香族ビニル化合物を主体とする少なくとも1個の重合体ブロックAと、共役ジエン化合物を主体とする少なくとも1個の重合体ブロックBとからなるブロック共重合体を水素添加して得られる水添ブロック共重合体または共役ジエンブロック共重合体の水素添加物を挙げることができる。
芳香族ビニル化合物を主体とする少なくとも1個の重合体ブロックAと、共役ジエン化合物を主体とする少なくとも1個の重合体ブロックBとからなるブロック共重合体を水素添加して得られる水添ブロック共重合体成分は、芳香族ビニル化合物を主体とする重合体ブロックAの少なくとも1個と、共役ジエン化合物を主体とする重合体ブロックBの少なくとも1個とからなるブロック共重合体を水素添加して得られる重合体である。例えば、A−B、A−B−A、B−A−B−A、A−B−A−B−A等の構造を有する芳香族ビニル化合物−共役ジエン化合物のブロック共重合体を水素添加して得られるものである。
芳香族ビニル化合物を主体とする重合体ブロックAは、芳香族ビニル化合物のみからなる重合体か、芳香族ビニル化合物と50重量%未満の共役ジエン化合物との共重合体であってもよい。また、共役ジエン化合物を主体とする重合体ブロックBは、共役ジエン化合物のみからなる重合体か、共役ジエン化合物と50重量%未満の芳香族ビニル化合物の共重合体であってもよい。
芳香族ビニル化合物−共役ジエン化合物系ブロック共重合体を構成する芳香族ビニル化合物としては、例えば、スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン、p−第3ブチルスチレン等のうちから1種又は2種以上を選択でき、なかでもスチレンが好ましい。また共役ジエン化合物としては、例えば、ブタジエン、イソプレン、1,3−ペンタジエン、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン等のうちから1種又は2種以上が選ばれ、なかでもブタジエン、イソプレン及びこれらの組合せが好ましい。
芳香族ビニル化合物を主体とする少なくとも1個の重合体ブロックAと、共役ジエン化合物を主体とする少なくとも1個の重合体ブロックBとからなるブロック共重合体を水素添加して得られる水添ブロック重合体成分は、共役ジエン化合物を主体とする重合体ブロックBにおいて、その水素添加率は任意であるが、好ましくは50%以上、より好ましくは55%以上、更に好ましくは60%以上である。また、そのミクロ構造は、任意であり、例えば、ブロックBがブタジエン単独で構成される場合、ポリブタジエンブロックにおいては、1,2−ミクロ構造が好ましくは20〜50重量%、特に好ましくは25〜45重量%である。また、1,2−結合を選択的に水素添加した物であっても良い。ブロックBがイソプレンとブタジエンの混合物から構成される場合、1,2−ミクロ構造が好ましくは50%未満、より好ましくは25%未満、より更に好ましくは15%未満である。
ブロックBがイソプレン単独で構成される場合、ポリイソプレンブロックにおいてはイソプレンの好ましくは70〜100重量%が1,4−ミクロ構造を有し、かつイソプレンに由来する脂肪族二重結合の好ましくは少なくとも90%が水素添加されたものが好ましい。
用途により水素添加したブロック共重合体を使用する場合には、好ましくは上記水添物を用途に合わせて適宜使用することが出来る。
また、重合体ブロックAは、成分全体の5〜70重量%の割合で存在するのが好ましい。さらに、成分全体の重量平均分子量は、350,000以下であり、好ましくは30,000〜250,000である。重量平均分子量が350,000を超えると、成形性が悪化する。
芳香族ビニル化合物−共役ジエン化合物系ブロック共重合体の水添物及び/または部分水添物の具体例としては、スチレン−エチレン・ブテン共重合体(SEB)、スチレン−エチレン・プロピレン共重合体(SEP)、スチレン−エチレン・ブテン−スチレン共重合体(SEBS)、スチレン−エチレン・プロピレン−スチレン共重合体(SEPS)、スチレン−エチレン・エチレン・プロピレン−スチレン共重合体(SEEPS)、スチレン−ブタジエン・ブチレン−スチレン共重合体(スチレン−ブタジエン−スチレン共重合体の部分水添物、SBBS)、スチレン−イソプレン−スチレン共重合体の部分水添物、スチレン−イソプレン・ブタジエン−スチレン共重合体の部分水添物等を挙げることができる。本発明においては、該芳香族ビニル化合物−共役ジエン化合物ブロック共重合体の水添物及び/または部分水添物は、単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
これらの芳香族ビニル化合物を主体とする少なくとも1個の重合体ブロックAと、共役ジエン化合物を主体とする少なくとも1個の重合体ブロックBとからなるブロック共重合体を水素添加して得られるブロック共重合体の製造方法としては、数多くの方法が提案されているが、代表的な方法としては、例えば特公昭40−23798号公報に記載された方法により、リチウム触媒又はチーグラー型触媒を用い、不活性媒体中でブロック重合させて得ることができる。こうしたブロック共重合体の水素添加処理は、公知の方法により、不活性溶媒中で水素添加触媒の存在下に行うことができる。
また、上記水添共役ジエン化合物系ブロック共重合体としては、例えば、ブタジエンのブロック共重合体を水素添加して得られる結晶性エチレンブロックと非晶性エチレン−ブテンブロックを有するブロック共重合体(CEBC)、ブタジエンのブロック共重合体を水素添加して得られる結晶性エチレンブロックと非晶性エチレン−ブテンブロックと芳香族ビニル化合物から成るブロックを有するブロック共重合体(SEBC)等が挙げられる。本発明においては、水添共役ジエン化合物ブロック共重合体は、単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
この水添共役ジエン化合物系ブロック共重合体の重量平均分子量は、好ましくは350,000以下であり、より好ましくは30,000〜250,000である。重量平均分子量が350,000を超えると、成形性が悪化する。
さらに、上記芳香族ビニル化合物−共役ジエン化合物系ランダム共重合体の水添物としては、例えば、芳香族ビニル化合物(スチレン)と共役ジエン化合物(ブタジエン)を主体とするランダム共重合体の水素添加物(H−SBR)が挙げられ、具体的な市販品としては、例えば、JSR(株)製のダイナロン1320P(商品名)が挙げられる。
成分(b)として、芳香族ビニル化合物を主体とする少なくとも1個の重合体ブロックAと、共役ジエン化合物を主体とする少なくとも1個の重合体ブロックBとからなるブロック共重合体を水素添加して得られる水添ブロック共重合体または共役ジエンブロック共重合体の水素添加物と、ブタジエンのブロック共重合体を水素添加して得られる結晶性エチレンブロックと非晶性エチレン−ブテンブロックを有するブロック共重合体(CEBC)を併用する場合には、成分(b)全体に含まれる芳香族ビニル化合物の割合は、15〜45重量%が好ましく、より好ましくは20〜40重量%である。芳香族ビニル化合物が、45重量%を超えるとオイルブリード、タック性、ディッピング成形性の低下が起こる。一方、15重量%未満であるとディッピング成形性の低下が起こる。
成分(b)の配合量は、成分(a)100重量部に対して、好ましくは1〜80重量部であり、より好ましくは3〜50重量部である。前記上限値を超えるとポリウレタンペーストとの相容性が低下すると同時に、粘度が高くなりすぎ、成形加工性が低下し用途によって問題となることがある。一方、前記下限値未満ではメチルエチルケトン(MEK)、ジメチルホルムアミド(DMF)、キシロールなどの溶剤でペーストにした時に、増粘効果(消泡効果、均一膜厚形成効果)が不充分となる。
(c)非芳香族系ゴム用軟化剤
本発明のポリウレタンペースト改質用熱可塑性エラストマー組成物においては、必要に応じて、非芳香族系ゴム用軟化剤(c)を用いることができる。成分(c)は、得られる熱可塑性エラストマー組成物の硬度を調整する機能及び成形性の改良の機能を果たす成分である。
成分(c)としては、非芳香族系の鉱物油又は液状、若しくは、低分子量の合成軟化剤が挙げられる。一般にゴム用鉱物油軟化剤は、芳香族環、ナフテン環及びパラフィン鎖を組み合わせた混合物であって、飽和炭化水素鎖炭素数が全炭素数の50%以上を占めるものをパラフィン系、ナフテン環炭素数が30〜40%を占めるものをナフテン系、芳香族炭素数が30%以上を占めるものを芳香族系と呼び区別されている。本発明で用いられるゴム用鉱物油軟化剤は、上記のパラフィン系及びナフテン系が好ましい。芳香族系の軟化剤は、分散性が悪く好ましくない。
非芳香族炭化水素系ゴム用軟化剤として、パラフィン系の鉱物油軟化剤が特に好ましく、パラフィン系のなかでも芳香族環成分の少ないものが特に適している。
パラフィン系軟化剤を構成している化合物としては、例えば、炭素数4〜155のパラフィン系化合物、好ましくは炭素数4〜50のパラフィン系化合物が挙げられ、具体的には、ブタン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、ノナン、デカン、ウンデカン、ドデカン、テトラデカン、ペンタデカン、ヘキサデカン、ヘプタデカン、オクタデカン、ノナデカン、エイコサン、ヘンエイコサン、ドコサン、トリコサン、テトラコサン、ペンタコサン、ヘキサコサン、ヘプタコサン、オクタコサン、ノナコサン、トリアコンタン、ヘントリアコンタン、ドトリアコンタン、ペンタトリアコンタン、ヘキサコンタン、ヘプタコンタン等のn−パラフィン(直鎖状飽和炭化水素)、イソブタン、イソペンタン、ネオペンタン、イソヘキサン、イソペンタン、ネオヘキサン、2,3−ジメチルブタン、2−メチルヘキサン、3−メチルヘキサン、3−エチルペンタン、2,2−ジメチルペンタン、2,3−ジメチルペンタン、2,4−ジメチルペンタン、3,3−ジメチルペンタン、2,2,3−トリメチルブタン、3−メチルヘプタン、2,2−ジメチルヘキサン、2,3−ジメチルヘキサン、2,4−ジメチルヘキサン、2,5−ジメチルヘキサン、3,4−ジメチルヘキサン、2,2,3−トリメチルペンタン、イソオクタン、2,3,4−トリメチルペンタン、2,3,3−トリメチルペンタン、2,3,4−トリメチルペンタン、イソノナン、2−メチルノナン、イソデカン、イソウンデカン、イソドデカン、イソトリデカン、イソテトラデカン、イソペンタデカン、イソオクタデカン、イソナノデカン、イソエイコサン、4−エチル−5−メチルオクタン等のイソパラフィン(分岐状飽和炭化水素)及び、これらの飽和炭化水素の誘導体等を挙げることができる。これらのパラフィンは、混合物で用いられ、室温で液状であるものが好ましい。
室温で液状であるパラフィン系軟化剤の市販品としては、日本油脂株式会社製のNAソルベント(イソパラフィン系炭化水素油)、出光興産株式会社製のPW−90(n−パラフィン系プロセスオイル)、出光石油化学株式会社製のIP−ソルベント2835(合成イソパラフィン系炭化水素、99.8wt%以上のイソパラフィン)、三光化学工業株式会社製のネオチオゾール(n−パラフィン系プロセスオイル)等が挙げられる。
また、非芳香族系炭化水素軟化剤には、少量の不飽和炭化水素及びこれらの誘導体が共存していても良い。不飽和炭化水素としては、エチレン、プロピレン、1−ブテン、2−ブテン、イソブチレン、1−ペンテン、2−ペンテン、3−メチル−1−ブテン、3−メチル−1−ブテン、2−メチル−2−ブテン、1−ヘキセン、2,3−ジメチル−2−ブテン、1−ヘプテン、1−オクテン、1−ノネン、1−デセン等のエチレン系炭化水素、アセチレン、メチルアセチレン、1−ブチン、2−ブチン、1−ペンチン、1−ヘキシン、1−オクチン、1−ノニン、1−デシン等のアセチレン系炭化水素を挙げることができる。
成分(c)の配合量は、成分(a)100重量部に対して、好ましくは1〜100重量部であり、より好ましくは3〜60重量部である。前記上限値を超えると軟化剤のブリードアウトを生じやすく最終製品に粘着性を与え、成形体の機械的性質も低下し用途によっては問題となる場合がある。一方、前記下限値未満では添加による柔軟性付与効果が充分でない。
(d)石油樹脂
本発明のポリウレタンペースト改質用熱可塑性エラストマー組成物においては、必要に応じて、(d)石油樹脂を用いることができる。成分(d)は、ポリウレタンとの相容性付与機能を果たす成分である。
成分(d)としては、石油精製工業、石油化学工業の各種工程、特にナフサの分解工程で得られる不飽和炭化水素を原料として共重合して得られる樹脂であって、C5留分を原料とした脂肪族系石油樹脂、C9留分を原料とした芳香族系石油樹脂、ジシクロペンタジエンを原料とした脂環族系石油樹脂、並びにテルペン系樹脂およびこれら2種以上が共重合した共重合系石油樹脂、さらにこれらを水素化した水素化石油樹脂などが例示できる。上記した樹脂の水素添石油樹脂は、上記の樹脂を当業者に公知の方法により水素添加して得られる。具体的には、出光石油化学(株)製のアイマーブ(水素化石油樹脂)、荒川化学工業(株)製のアルコン(水素化石油樹脂)、ヤスハラケミカル(株)製のクリアロン(水素化テルペン樹脂)、トーネックス(株)製のエスコレッツ(脂肪族系炭化水素樹脂)、などの市販品を用いることができる。
成分(d)の配合量は、成分(a)100重量部に対して、好ましくは1〜50重量部であり、より好ましくは3〜20重量部である。前記上限値を超えるとディッピング成形性が悪化し、ベタツキ性が顕著になり用途によっては問題となることがある。一方、前記下限値未満では添加による柔軟性付与効果、ポリウレタンとの相溶付与効果が充分でない。
(e)テルペン系オイル
本発明のポリウレタンペースト改質用熱可塑性エラストマー組成物においては、必要に応じて、テルペン系オイル(e)を用いることができる。テルペン系オイル(e)は、得られる組成物の柔軟性とディッピング成形性を向上させる機能を有する。
成分(e)としては、主として北米や中国本土に産するアカマツ、クロマツの立木から採取した生松脂を水蒸気蒸留して得られる精油、また同樹のパルプ生産の副生物のテレピン油、あるいはオレンジの皮から抽出される精油またはこれらの精油から異性化反応等により誘導されたオレンジ油等から得られ、具体的には、炭素数10からなるテルペン系炭化水素、テルペンエーテルが挙げられる。
炭素数10からなるテルペン系炭化水素としては、ミルセン(沸点167℃)、カレン(沸点167℃)、オシメン、ピネン(沸点155℃)、リモネン(沸点176℃)、カンフェン(沸点160℃)、テルピノレン(沸点187℃)、トリシクレン(沸点153℃)、テルピネン(沸点170〜180℃)、フェンチェン(沸点150〜155℃)、フェランドレン(沸点170〜175℃)、シルベストレン(沸点175℃)、サビネン(沸点163℃)、P−メンテン−1(カルボメンテン)(沸点176℃)、P−メンテン−3(沸点168℃)、P−サイメン、P−メンタン(沸点168℃)等が挙げられる。そのなかでも特に、α−ピネン、β−ピネン、リモネン、P−メンテン−1、P−メンテン−3、P−サイメン、P−メンタンが好ましい。
炭素数10からなるテルペンエーテルとしては、1,4−シネオール(沸点173℃)、1,8−シネオール(沸点173℃)、ピノール(沸点180℃)等が挙げられる。その中でも特に、1,4−シネオール、1,8−シネオールから選ばれた少なくとも1種類が好ましい。
成分(e)の配合量は、配合する場合は、成分(a)100重量部に対して、1〜50重量部であり、好ましくは3〜20重量部である。成分(e)の配合量が前記上限値を超えると臭気、ブリード、成形加工時のガス発生が顕著となり、用途によっては問題となることがある。また、前記下限未満では添加による柔軟性、ディッピング成形性の向上効果が充分でない。
(f)その他の成分
本発明の組成物においては、さらに、本発明の目的を損なわない範囲で、熱安定剤、酸化防止剤、光安定剤、紫外線吸収剤、結晶核剤、ブロッキング防止剤、シール性改良剤、ステアリン酸、シリコーンオイル等の離型剤、ポリエチレンワックス等の滑剤、着色剤、顔料、無機充填剤(アルミナ、タルク、炭酸カルシウム、マイカ、ウァラステナイト、クレー)、発泡剤(有機系、無機系)、難燃剤(水和金属化合物、赤燐、ポリりん酸アンモニウム、アンチモン、シリコーン)などを配合することができる。
酸化防止剤としては、例えば、2,6−ジ−tert−p−ブチル−p−クレゾール、2,6−ジ−tert−ブチルフェノール、2,4−ジメチル−6−tert−ブチルフェノール、4,4−ジヒドロキシジフェニル、トリス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−tert−ブチルフェニル)ブタン等のフェノール系酸化防止剤、ホスファイト系酸化防止剤、チオエーテル系酸化防止剤等が挙げられる。このうちフェノール系酸化防止剤、ホスファイト系酸化防止剤が特に好ましい。
発泡剤としては、エクスパンセルが好ましい。
2.熱可塑性エラストマー組成物の製造
本発明の熱可塑性エラストマー組成物は、上記成分(a)、必要に応じて、(b)〜(f)等を加えて、各成分を同時にあるいは任意の順に加えて溶融混練する。溶融混練の方法は、特に制限はなく、通常公知の方法を使用し得る。例えば、単軸押出機、二軸押出機、ロール、バンバリーミキサー又は各種のニーダー等を使用し得る。例えば、適度なL/Dの二軸押出機、バンバリーミキサー、加圧ニーダー等を用いることにより、上記操作を連続して行うこともできる。ここで、溶融混練の温度は、好ましくは180〜220℃である。
3.溶剤ペーストの製造
本発明の溶剤ペーストは、上記熱可塑性エラストマー組成物を有機溶剤に溶解して得られる。有機溶剤は、熱可塑性エラストマー組成物100重量部に対し、好ましくは200〜2000重量部、より好ましくは500〜1500重量部を用い、溶剤ペースト中に固形分が、好ましくは5〜35重量%、より好ましくは10〜25重量%になるように製造する。溶剤ペーストの製造は、上記の熱可塑性エラストマー組成物のペレット等を有機溶剤に溶解させるか、上記成分(a)、又は必要に応じて用いる成分(b)〜(f)等を直接有機溶剤に溶解させて得られる。溶剤ペーストで用いる有機溶剤としては、工業用キシロール、MEK(メチルエチルケトン)、DMF(ジメチルホルムアミド)等が挙げられる。
溶剤量が前記上限値を超えると粘度が低下し、気泡が発生しやすくなり、膜厚が薄くなる。一方、前記下限値未満では粘度が高くなり、ペースト性が悪化し、ディッピング成形性が悪化する
なお、溶剤ペーストとポリウレタンペーストに用いる溶剤が異なる場合は、それぞれのペーストにおける溶剤量が制限を受けるので注意を有する。例えば、ポリウレタンペーストとして、MEKまたはDMFペーストを用いる場合は、上記溶剤ペーストの溶剤としてキシロールを用いると、MEKまたはDMF100重量部に対して、キシロールが10重量部以上では相溶しない場合がある。したがって、MEKまたはDMF100重量部に対してキシロール1〜10重量部、好ましくは1〜5重量部にすることが好ましい。下限未満では、柔軟性、グリップ力改良効果がなく、上限を超えるとペースト粘度が上がりディッピング成形不能になる。
4.成形品
本発明の熱可塑性エラストマー組成物または溶剤ペーストは、ポリウレタンペーストと混合してディッピング成形用材料を形成し、ディッピング成形を行って、成形体、例えば、手袋、指サック、床上表皮、壁紙表皮等を形成することができる。
なお、本発明で用いるポリウレタンペーストとしては、市販のポリウレタンを約20重量%固形分でDMFまたはMEKに溶解させたものを挙げることができる。
以下実施例、比較例を用いて本発明を詳細に説明するが、本発明は、実施例のみに限定されるものではない。なお、実施例で用いた評価方法及び原料は以下の通りである。
1.評価方法
(1)比重:JIS K 7112に準拠し、試験片は約0.5mm厚ディッピング成形シートを用いて測定を行なった。
(2)硬度:JIS K 7215に準拠し、ディッピング成形シートを重ねて4.0mm厚にして、デュロメータ硬さ・タイプAにて測定した。
(3)引張強さ/100%伸び応力/伸び:JIS K 6301に準拠し、試験片は0.5mm厚ディッピング成形シートを、3号ダンベル型に打抜いて使用した。引張速度は500mm/分とした。
(4)オイルブリード/タック性:ディッピング成形で得られた約65×80×0.5mm厚のシートをクラフト紙に挟んで、直径70mm円盤状の500gの重りをのせ、室温(23℃)で168時間放置後のクラフト紙の状態を目視で観察し、次の基準で評価した。
○:クラフト紙が容易にシートから剥がれオイルブリードの痕跡が認められない。
△:クラフト紙が僅かにシートに密着しかすかにオイルブリードの痕跡が認められる。
×:クラフト紙がシートに密着しオイルブリードの痕跡が認められる。
(5)ディッピイング性:還流冷却器を取り付けた1000cc丸底フラスコに60mm×φ8mmのマグネットスターラーと熱可塑性エラストマーのペレット200gと工業用MEK300gを投入し、約95℃に保持されたスターラー付き高温槽で1時間攪拌を行なった。そのまま室温になるまで12時間以上放置した後、10分攪拌を行い、フェロタイプ板(130×130×1mm)を用いて1回ディッピングを行った。フェロタイプ板を室温で30分放置した後、オーブン中で120℃×30分熱処理を行い、その製膜状態を目視で観察し次の基準で評価した。
○:良い
△:ピンホール状の未溶融物あり
×:悪い
(6)ポリウレタン(PU)との相溶性:(5)で得られた製膜後のフェロタイプを、さらにポリウレタンペーストを用いて1回ディッピングを行なった。フェロタイプを室温で30分放置した後、オーブン中で120℃×30分熱処理を行い、得られた膜をフェロタイプから剥がした。約0.5mm厚の膜を3号ダンベル型に打抜いて使用した。JIS K 6301に準拠し、引張速度は500mm/分とした。引張始めから破断状態までを目視で観察し次の基準で評価した。
○:100%以上伸び、剥離することなく破断
△:100%以上伸び破断直前に剥離
×:100%未満の伸び、または引張始めから剥離
(7)グリップ力:HEIDON社製学振式摩耗試験機(HEIDON−14DK:新東科学)を用いてSUSボール圧子を摩耗冶具にセットし、さらに押出成形シート表面に摩耗冶具をのせ、垂直荷重200g、移動速度200mm/分、移動距離50mmにて動摩擦係数の測定を行った。
2.使用原料
(a):リビングカチオン重合によって得られるスチレン−イソブチレン−スチレンブロック共重合体(SIBS):SIBSTAR 073T(鐘淵化学工業株式会社製)、スチレン含有量:30重量%、数平均分子量:60,000、重量平均分子量:65,000、分子量分布:1.08、硬さ:57A、不飽和結合:0%
(b−1)水添ブロック共重合体(SEPS):セプトン2104(商標;クラレ株式会社製)、スチレン含有量65重量%、数平均分子量70,000、重量平均分子量91,000、分子量分布1.30、水素添加率90%以上
(b−2)水添ブロック共重合体(SEBS):クレイトンE−1818E(商標;クレイトンポリマージャパン株式会社製)、スチレン含有量30重量%、数平均分子量160,000、重量平均分子量200,000、分子量分布1.25、水素添加率90%以上
(b−3)水添ブロック共重合体成分(SEEPS):セプトン4077(商標;クラレ株式会社製)、スチレン含有量30重量%、数平均分子量260,000、重量平均分子量320,000、分子量分布1.23、水素添加率90%以上
(b−4)水添ブロック共重合体(CEBC):ダイナロンDR6201B(商標;JSR株式会社製)、スチレン含有量0重量%、数平均分子量180,000、重量平均分子量230,000、分子量分布1.27、水素添加率90%以上
(c)非芳香族系ゴム軟化剤:NAソルベント NAS−5H (日本油脂(株)製)比重:0.823、種類:イソパラフィン系炭化水素油、粘度(40℃):11.0cSt、引火点:146℃
(d)石油樹脂:アイマーブP−140(商標;出光石油化学社製)、軟化点:140℃、平均分子量:910、密度:1.03
(e)テルペン系オイル:ウッディリバー#10(ヤスハラケミカル(株)製)比重:0.80、粘度(25℃):1.14cP、沸点:167〜170℃、引火点:41.5℃
(f)ヒンダードフェノール/フォスファイト/ラクトン系複合酸化防止剤:HP2215(チバスペシャリティケミカルズ製)
(実施例1〜6、比較例1〜5)
表1及び表2に示す量の各成分を用い、L/Dが47の二軸押出機に投入して、混練温度180℃、スクリュー回転数350rpmで溶融混練をして、ペレット化し、熱可塑性エラストマー組成物を得た。
還流冷却器を取り付けた1000cc丸底フラスコに60mm×φ8mmのマグネットスターラーと熱可塑性エラストマー組成物のペレット200gと工業用MEK300gを投入し、約95℃に保持されたスターラー付き高温槽で1時間攪拌を行なった。そのまま室温になるまで12時間以上放置した後、別途100℃で溶解混合して室温まで冷却して調整したポリウレタン(PU)(パンデックス T−1180:ディーアイシーバイエルポリマー株式会社)/DMF(=20/80)ペーストと50/50の比率で混合し、10分攪拌を行い、フェロタイプ板(130×130×1mm)を用いて1回ディッピングを行った。フェロタイプ板を室温で30分放置した後、オーブン中で120℃×30分熱処理を行い試験片を得た。試験片の評価結果を表1及び表2に示す。なお、ポリウレタン単体を用いた場合についても比較例5としてその物性値を示す。
Figure 0004410628
Figure 0004410628
表1及び表2より明らかなように、本発明の熱可塑性エラストマー組成物はPUペーストとのアロイにおいて良好な特性を有していた。特に、グリップ力がポリウレタン単体を使用した場合、及び本発明の熱可塑性エラストマー組成物を使用しない場合に比べ顕著に向上した(実施例1〜6)。
一方、比較例1〜4は、成分(a)を用いない場合である。成分(a)を用いないと、PUとの相溶性が得られず、グリップ力に劣った。
本発明のポリウレタンペースト改質用熱可塑性エラストマー組成物と溶剤ペーストは、ポリウレタンペーストからの成形品のウレタン皮膜のグリップ性を向上させることができ、手袋、指サック、床上表皮、壁紙表皮等を好適にディッピング成形することができる。

Claims (6)

  1. (a)イソブチレン系化合物ブロック及び芳香族ビニル系化合物ブロックから構成されるイソブチレン系ブロック共重合体を含有することを特徴とするポリウレタンペースト改質用熱可塑性エラストマー組成物。
  2. さらに、成分(a)100重量部に対し、(b)水添及び/または部分水添共重合体1〜80重量部を含み、前記(b)水添及び/または部分水添共重合体が、スチレン−エチレン・ブテン−スチレン共重合体(SEBS)、スチレン−エチレン・プロピレン−スチレン共重合体(SEPS)、スチレン−エチレン・エチレン・プロピレン−スチレン共重合体(SEEPS)またはブタジエンのブロック共重合体を水素添加して得られる結晶性エチレンブロックと非晶性エチレン−ブテンブロックを有するブロック共重合体(CEBC)であることを特徴とする請求項1に記載のポリウレタンペースト改質用熱可塑性エラストマー組成物。
  3. さらに、成分(a)100重量部に対し、(c)非芳香族系ゴム用軟化剤1〜100重量部を含むことを特徴とする請求項1又は2に記載のポリウレタンペースト改質用熱可塑性エラストマー組成物。
  4. さらに、成分(a)100重量部に対し、(d)石油樹脂1〜50重量部を含むことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のポリウレタンペースト改質用熱可塑性エラストマー組成物。
  5. 請求項1〜4のいずれか1項に記載のポリウレタンペースト改質用熱可塑性エラストマー組成物100重量部を溶剤200〜2000重量部に溶解して得られるポリウレタンペースト改質用溶剤ペースト。
  6. 請求項5に記載のポリウレタンペースト改質用溶剤ペーストを用いたディッピング成形品。
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