JP4409080B2 - 防刃パネル - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、ナイフ等の刃物から人体の胸部や腹部を保護するために使用される防刃用衣服に使用される防刃パネルに関する。
【0002】
【従来の技術】
戦国武士が着用した鎧をはじめ、従来より様々な素材・形態の防刃用衣服が提案されている。近時では、警察官や警備員の護身用として、ポリアミド繊維を複数枚積層したり、ガラス繊維と強化プラスチックとを組み合わせた板片を用いたもの、アルミ合金等の金属製板片を連結したものなど、軽量な防刃パネルを前面に配したチョッキ等の防刃用衣服が提供されている。
【0003】
例えば、実開昭63−85611号では、隣接する周縁部を重ね合わせた複数のポケット内にアルミ合金製の板片を収納した防刃用チョッキが提案されている。この防刃チョッキは、アルミ合金製の板片を用いたことで繊維系の防刃材の欠点であったアイスピック等による突き刺しに対しても有効となり、また、同板片を複数のポケット内に収納した構成によって単一の板材を用いた場合に比して身体の動きを阻害しにくいという利点がある。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、前記考案に係る防刃用チョッキでは、アルミ合金製板片が収納されたポケット同士が周縁部を重ね合わせた状態で完全に縫着されているため、上下方向または左右方向の余裕が少なく、依然として身体の動きが制約される欠点があった。とくに、胸部から腹部にかけての広範囲を保護するように形成すると、背中を丸めようとした際には、剣道の防具である胴を装着しているかのように防刃用チョッキが動作の妨げとなっていた。しかるに、本発明では、胸部から腹部にかけて広範囲を保護するように形成しても、身体の動きに追従して防刃用衣服を実現しうる防刃パネルの提供を目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】
前記所期の課題解決のために、本発明に係る防刃パネルでは、身体の胸部から腹部を覆う大きさの複数枚の基布と、内部に板状防刃材を収納したポケットを横方向に連続形成してなる多数本の防刃帯とから概略構成し、該防刃帯を、複数枚の各基布に対して上下方向略平行に間隔をおいて各々上端を固定垂下する一方、前基布に固定された防刃帯におけるポケットと後基布に固定された防刃帯におけるポケットの各外周縁が一致しないように上下左右の位置をずらして配設して、これら防刃帯が固着された複数枚の基布を各々防刃帯固着側を内側にして重ね合わせることにより防刃パネルを形成した。
【0006】
複数本の防刃帯は、上下方向略平行に間隔をおいて各々上端が基布に固定されて、重ね合わされた複数枚の基布内において垂下された状態にある。したがって、完成した防刃パネルでは、防刃材の重量等によって基布が広がって1枚のパネル状となっているが、パネルを上下方向に圧縮する力が加わると、防刃帯間の基布が容易に畳まれる結果、パネル自体が上下方向に収縮するため、例えば防刃用チョッキの前面に使用した場合には、背中を丸める動作にしたがって防刃パネルが上下方向に収縮して、身体の動きを妨げないのである。
【0007】
基布としては、ナイロン生地等の引き裂き強度の高い生地が好適に用いられ、防刃帯のポケット内に収容される板状防刃材としては、任意厚みのアルミ合金製板片や強化プラスチック製板片が例示される。防刃帯におけるポケットの形状は任意であるが、縫製等の便宜により略方形状に形成するのが望ましい。
【0008】
ポケット内に板状防刃材を収納した場合、板状防刃材の部分は刃物による突き刺しにも耐えられるのであるが、隣接するポケット間の縫目部分には板状防刃材が存在しないので、刃物が貫通してしまうことになる。そこで、前基布に固定された防刃帯におけるポケットと、後基布に固定された防刃帯におけるポケットの外周縁が一致しないように上下左右の位置をずらして配設することにより、前基布側のポケット間の縫目部分には必ず後基布側のポケットに収容された板状防刃材が位置し、刃物の貫通を防止するよう形成される。
【0009】
このように、防刃帯を複数枚の基布のそれぞれに固着し、各防刃帯固着側を重ね合わせ、必要により周縁部を縫着等することで、1枚の防刃パネルが完成する。こうして完成した防刃パネルを最小単位として、さらに防刃帯が固着された基布を1枚重ね合わせ、計3枚の基布によってより強固な防刃パネルを形成してもよいし、防刃パネルを2枚1組として重ね合わせ、計4枚の基布によってさらに強固な防刃パネルを形成することとしてもよい。組合せ枚数を変えることによって、よりハイレベルな規格に合致した防刃衣料を提供することが可能となる。
【0010】
また、完成した防刃パネルは、そのままチョッキ等に装着使用してもよいが、さらに外側全体を布製カバーで覆うことで、ポケットの輪郭が外部から識別しにくくなり、より一体的な防刃パネルとすることができる。この際、後基布側には、刃物による衝撃等を吸収させるため、5mm厚程度のスポンジシートを配設しておくとよい。
【0011】
【発明の実施の形態】
以下、本発明に係る防刃パネルについて図面を参照しながら説明する。図1は防刃パネルの一例を示した分解図であり、前基布裏面(a)と後基布表面(b)を示したものである。本例の前基布1aと後基布1bは共にナイロン織布からなり、それぞれ身体の胸部から腹部を覆う大きさで、上端縁が首回りに沿うように湾曲形成されたチョッキ様の輪郭形状をしている。これら前後基布1a,1bの各々に対して、多数本の防刃帯21a〜26a,21b〜27bが、その上端縁を縫着されることにより固着されている。
【0012】
各防刃帯21a〜26a,21b〜27bもナイロン織布を用いて形成されており、各々幅広帯状の生地を長尺方向に沿って上下二つ折りにする等して形成される。図1(a)(b)中、破線は縫目Nを示しており、図示されるように適宜間隔をおいて複数箇所で上下方向に縫着することによって、略方形状のポケットPが横方向に連続形成されている。
【0013】
図2は、図1(a)における右側肩部分の一部破断部分拡大図である。図示されるように、防刃帯21aは、その下端部が、下方に位置する防刃帯22aの上端部に重なるように配置され、上端部分のみが前基布1aに縫着されている。したがって、防刃帯21aと防刃帯22aは、前基布1aに対して上下方向略平行に間隔Wをおいた状態で、各々の上端部のみが前基布1aに縫着されて垂下された状態にあるわけである。この間隔Wの間には前基布1aしか存在しないから、上下方向に圧力が加わると、このW間の前基布1aが畳まれて、下側に位置する防刃帯22aが防刃帯21aの内側に略密接するに至る。図1(a)の前基布1aにおいて残る防刃帯23a〜26aや、図1(b)の後基布1bにおける防刃帯21b〜27bも同様に、上下方向略平行に間隔Wをおいた状態で前基布1aや後基布1bに縫着されている。
【0014】
図2に示されるように、防刃帯21a,21bにおけるポケットP内には各々板状防刃材3が収納されている。図示された例では一辺が約6cmの正方形のものを標準サイズとして用いており、隣合うポケットP内の板状防刃材3間の隙間ができるだけ少なくなるように、板状防刃材3がポケット外周縁の縫目Nにほぼ密接するよう形成されている。
【0015】
図1において、前基布1aに縫着された防刃帯21a〜26aと、後基布1bに縫着された防刃帯21b〜27bとは、各ポケットPの外周縁が一致しないように上下方向と左右方向に各々2分の1ずつずらして配設されている。例えば、前基布1aにおいて上から3段目に縫着されている防刃帯23aの下縁中央A点は、ポケットP間の縫目Nに位置しているので鋭利な刃物であれば表面側から裏面側まで貫通してしまうおそれがある位置であるが、前基布1aと後基布1bとを重ね合わせると、後基布1bにおいて上から4段目に縫着されている防刃帯24bの中央A’点に位置するので、当該ポケットP内に収納された板状防刃材によって完全にカバーされる。このように、前基布1aに縫着された防刃帯21a〜26aと、後基布1bに縫着された防刃帯21b〜27bとが、それぞれ上下左右の位置をずらして配設・縫着されているので、各ポケットPの外周縁が一致せず、鋭利な刃物がポケット間の縫目Nを貫通して身体に到達することを防止できるのである。なお、基布を3枚合わせとする場合には、各基布における防刃帯の配設位置を3分の1ずつずらすことにしてもよい。
【0016】
以上のように形成された前基布1aと後基布1bとを、前基布1aの裏面と後基布1bの表面、すなわち各々の防刃帯21a〜26a,21b〜27bが縫着された面を対向させながら重ね合わせ、必要に応じて全周縁を縫着することにより、防刃パネルが完成する。図3は、完成した防刃パネルを外カバーに収容した状態を示す背面図である。本例では、外カバー4の両肩部に対して面ファスナー5が装着されており、この面ファスナー5に対応した面ファスナーを夜光チョッキの前面両肩部に装着するなどして、着用される。なお、外カバー4内に収納される防刃パネルにはスポンジシートを裏当てしてもよく、外カバー4内で防刃パネル等がずれることのないように、適宜箇所において外カバー4と縫着しておくとよい。
【0017】
外カバー4内に収容された状態にあっても、本発明に係る防刃パネルは、上下に圧縮する方向に力が加わると、容易に収縮する。図4は上下方向に収縮した状態を示しているが、この状態から上下方向の圧力が解除されると、自らの重量によって再び図3に示される状態に伸張復元する。したがって、胸部から腹部を十分に保護しながら、背中を丸めたり伸ばしたりする動作に伴って上下方向に伸縮するのである。
【0018】
【発明の効果】
本発明に係る防刃パネルは、上下方向に伸縮可能に形成されているので、胸部から腹部にかけて広範囲を保護するように形成しても、身体の動きに追従して、妨げとならない。また、単一の防刃材ではなく、複数枚の板状防刃材をポケット内に収容した防刃帯を用いる構成としたこと、および、防刃帯と防刃帯間には基布のみを介在させたことより、上下方向のみならず、左右方向の動きに対しても追従性がよい。そして、完成した防刃パネルでは、ポケット間の縫目などパネル上のどの箇所においても必ず身体までの間に板状防刃材が存在するよう構成されているので、鋭利な刃物の貫通を防止することができる安全性の高い防刃パネルである。
【図面の簡単な説明】
【図1】防刃パネルの一例を示した分解図であり、前基布裏面(a)と後基布前面(b)である。
【図2】図1(a)における右側肩部分の一部破断部分拡大図である。
【図3】完成した防刃パネルを外カバーに収容した状態を示す背面図である。
【図4】上下方向に収縮した状態を示す背面図である。
【符号の説明】
1a 前基布
1b 後基布
3 板状防刃材
4 外カバー
5 面ファスナー
21a〜26a,21b〜27b 防刃帯
P ポケット
N 縫目
Claims (1)
- 身体の胸部から腹部を覆う大きさの複数枚の基布と、内部に板状防刃材を収納したポケットを横方向に連続形成してなる複数の防刃帯とからなり、
該防刃帯は、複数枚の各基布に対して上下方向略平行に間隔をおいて各々上端を固定垂下されたものであって、かつ、前基布に固定された防刃帯におけるポケットと後基布に固定された防刃帯におけるポケットの各外周縁が一致しないように上下左右の位置をずらして配設されており、これら防刃帯が固着された複数枚の基布を各々防刃帯固着側を内側にして重ね合わせてなる防刃パネル。
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