JP4405645B2 - 球状体の製造方法及び製造装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は,例えばBGA(Ball Grid Array)やCSP(Chip Size Package)等の半導体パッケージのバンプ材料に用いられる半田ボールのごとき球状体を製造する方法と装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
金属球などの球状体を製造する場合,従来より原料を融点以上の温度に保つことにより,表面張力によって融液を球状化させる方法が,特に低融点金属の球形化に関して提唱されている。例えば,特開平7−252510や特開平11−129094には,半田ボール等の微細金属球を作るに当たって,あらかじめ大きさを整えた微細金属片を,これに対して不活性で上下方向に温度分布を持たせた液体中において,上部で融点以上に加熱して表面張力により球形化させ,沈降させながら下部で冷却させて固化させる方法が記されている。
【0003】
【発明が解決する課題】
しかしながら,これらの方法では,上部で加熱された原料が沈降する際に下部の低温域に熱を持ち込んだり,沈降する原料に引きずられて液体が下部に移動するなどの現象を生ずる。このため,長時間にわたり連続的に原料を球形化処理したときに,当初に設定した液体の温度分布が乱され,球形化処理ができなくなることがあった。例えば極端な場合,経時的に下部の液体が高温になり,最終的に原料が容器底面に到着した時点でも原料が固化せず,連続して底面に降り積もる原料のため変形を生じ,また相互の癒着が起こる心配がある。そのため,従来は温度勾配を初期設定にもどすために球形化処理はしばしばバッチ操作となり,生産性が低下する原因の一つとなっていた。
【0004】
従って本発明の目的は,半田ボールなどの球状体の製造において,連続的に原料を球形化処理することができ,高い真球度の球状体を安定して製造できる手段を提供することにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】
この目的を達成するために,本発明によれば,球状体の原料と不活性な熱媒中に原料の融点未満の温度から原料の融点以上の温度になる下方から上方に向かって温度が高くなる温度勾配を形成して,熱媒中に,熱媒の温度が原料の融点以上の温度となる上方の成形領域と,熱媒の温度が原料の融点未満の温度となる下方の冷却領域を形成し,予め所定量に分離された原料を成形領域から冷却領域に移動させることにより,成形領域において融液の状態で原料を表面張力により球形化させ,その後,冷却領域において原料を冷却して球形のまま固化させる方法において,融点未満の温度に冷却された熱媒を冷却領域に供給し,前記原料の融点未満の温度となる冷却領域から前記原料の融点以上の温度となる成形領域に向かう方向に熱媒を流すことにより,前記温度勾配を維持することを特徴とする,球状体の製造方法が提供される。
【0006】
この製造方法によって製造される球状体としては,例えばBGAやCSP等の半導体パッケージのバンプ材料に用いられる半田ボールのごとき球状体が例示される。また,請求項5に記したように球状体の原料は例えば金属であり,一例として半田(例えばSn−Pb共晶半田など)が例示される。更に,金属以外の材料を球状体の原料として用いることも可能である。熱媒は球状体の原料と不活性なものであれば液体,気体のいずれを用いても良い。例えば球状体の原料が半田などの金属である場合は,植物油,鉱油,高沸点溶剤等の液体またはアルゴンなどの気体が熱媒として例示される。
【0007】
この製造方法にあっては,ヒーター,熱交換器,放熱器などの加熱手段や冷却手段などを適宜利用し,熱媒を適宜加熱及び/又は冷却することにより,熱媒が原料の融点未満の温度となる冷却領域と,熱媒が原料の融点以上の温度となる成形領域を形成し,これら冷却領域と成形領域の間に渡って原料の融点未満の温度から原料の融点以上の温度になる温度勾配を熱媒中に形成する。そして,予め所定量に分離された原料を熱媒中に供給する。この場合,原料の融点以上の温度となっている成形領域の熱媒中に投入等することにより,成形領域の熱媒内において原料を融点以上の温度下におく。なお,成形領域の熱媒中に供給する原料は,固体でも液体(融液)であっても良い。いずれにせよ,成形領域では熱媒中に供給された原料は原料の融点以上の温度下におかれることによって融液の状態となる。こうして,先ず原料は,成形領域にて融点以上の温度下におかれて融液の状態を維持し,その表面張力により球状に成形される。
【0008】
次に,こうして成形領域にて球状に成形した原料を,その形状(球形)を維持させながら熱媒に対して相対的に移動させ,熱媒中に形成された温度勾配の低い方向に向かって原料を移動させることにより,熱媒内において原料を冷却領域に移す。こうして原料は融点未満の温度の熱媒中におかれたことにより冷却され,冷却領域にて球形を維持したまま原料が固化することとなる。なお,原料を熱媒に対して相対的に移動させる場合,熱媒中で原料を移動させることによって原料を成形領域から冷却領域に移しても良いし,原料を固定しておき,熱媒を移動させることによって原料を成形領域から冷却領域に移すようにしても良い。また原料と熱媒の両方を移動させることによって原料を成形領域から冷却領域に移すようにしても良い。
【0009】
このように成形領域にて融点以上の温度下で融液の状態で表面張力により球状に成形させた原料を,冷却領域にて融点未満の温度下で冷却し,球形のまま固化させることにより,例えば半田ボールのごとき球状体を製造することが可能となる。しかしながら,このような球状体の製造を連続して行うと,冷却領域の熱媒は,原料を冷却したことにより次第に加熱されていく。また,熱媒に対する原料の相対的な移動に伴って,成形領域の熱媒が冷却領域中に流れ込み,冷却領域の熱媒の温度が次第に高くなっていく。かかる現象を放置したまま長時間にわたって連続的に処理すると,熱媒中に形成された温度勾配が次第に乱れ,円滑な球形化処理が阻害される心配がある。例えば極端な場合,経時的に冷却領域の熱媒の温度が融点以上の温度にまで上昇し,冷却領域で原料が充分に固化できなくなってしまう。そうすると,球状体が変形したり,相互に癒着したりする心配がある。
【0010】
そこで,この製造方法にあっては,熱媒の流れを生じさせることにより,熱媒中に形成された温度勾配を維持する。この場合,原料の相対的な移動と逆向きの流れを熱媒中に生じさせることが好ましく,例えば冷却領域から成形領域に向かう方向に熱媒を流すのが良い。また,熱媒中には1つの流れを生じさせても良いし,2以上の流れを生じさせても良い。そして,このように原料の相対的な移動と逆向きの流れを熱媒中に生じさせた場合,予め原料の融点未満の温度にさせた熱媒を冷却領域に適宜供給してやると良い。そうすれば,熱媒の流れに伴って熱媒が減っていく冷却領域に熱媒を適宜補うことが可能となる。
【0011】
原料の相対的な移動と逆向きの流れを熱媒中に生じさせることにより,原料を冷却したことによって加熱された熱媒や,原料の相対的な移動に伴って冷却領域中に流れ込もうとする熱媒は,冷却領域から成形領域に向かう方向に流れることなる。また,冷却領域には予め原料の融点未満の温度にされた熱媒が供給されることにより,冷却領域では熱媒は常に原料の融点未満の温度に保たれ,冷却領域と成形領域の間に渡って原料の融点未満の温度から原料の融点以上の温度になる温度勾配を熱媒中に安定して形成することができるようになる。これにより,成形領域では融点以上の温度下で融液の状態で表面張力により原料を球状に成形させることができ,一方,冷却領域では原料を融点未満の温度に確実に冷却して原料を球形のまま固化させることができ,例えば半田ボールのごとき球状体を連続的に製造することが可能となる。冷却領域では原料を融点未満の温度に確実に冷却できるので,球状体の変形や相互での癒着も防止できる。また適当な加熱手段や冷却手段などを利用することによって,成形領域では熱媒を加熱し,冷却領域では熱媒を冷却する場合などにおいては,冷却領域から成形領域に向かう方向に熱媒を流すことにより,原料を冷却したことによって加熱された熱媒が成形領域に流れ込むこととなり,また冷却領域には予め原料の融点未満の温度にされた熱媒を供給することにより,加熱や冷却に要するエネルギーを削減できるようになる。なお,原料の相対的な移動と逆向きの流れを熱媒中に生じさせることにより,原料に対してより多くの熱媒が熱的に接触して原料を加熱,冷却でき,処理時間の短縮化や省スペース化を図ることも可能となる。
【0012】
なお,冷却領域に原料の融点未満の温度にされた熱媒を供給する場合,系内の熱媒を一旦系外に取り出し,その後,再び系内循環供給することが望ましい。そうすれば,熱媒を繰り返し利用でき,有効利用がはかれる。なお,成形領域にて系外に取り出した熱媒を冷却領域に供給する場合は,予め原料の融点未満の温度に冷却してから熱媒を系内に供給すると良い。
【0013】
また,本発明によれば,球状体の原料と不活性な熱媒を充填した容器と,熱媒の流れを生じさせる送液手段と,熱媒中に原料の融点未満の温度から原料の融点以上の温度になる下方から上方に向かって温度が高くなる温度勾配を形成させる温度調節手段を備え,前記送液手段は,融点未満の温度に冷却された熱媒を下方の冷却領域に供給し,前記原料の融点未満の温度となる冷却領域から前記原料の融点以上の温度となる上方の成形領域に向かう方向に熱媒を流すことを特徴とする,球状体の製造装置が提供される。
【0014】
この製造装置によれば,先に説明した本発明の製造方法を好適に実施することが可能となる。この製造装置において,温度調節手段とは,ヒーター,熱交換器,放熱器などの加熱手段及び/又は冷却手段などである。例えば容器の上部に加熱手段を装着して所望の温度に加熱することにより,容器内の上部に熱媒が原料の融点以上の温度となる成形領域を形成する。また,例えば容器の下部では加熱を行わず,熱媒が原料の融点未満の温度となる冷却領域を容器内の下部に形成する。この場合,放熱器などの冷却手段を用いて容器の下部を積極的に冷却しても良い。そして,これら冷却領域と成形領域の間に渡って(容器内の下部から上部に渡って)原料の融点未満の温度から原料の融点以上の温度になる温度勾配を熱媒中に形成する。この製造装置において,熱媒の流れを生じさせる送液手段は,例えば容器内の上部に形成された成形領域から熱媒を容器外(系外)に一旦取り出し,その取り出した熱媒を熱媒が原料の融点以下の温度に冷却した後,容器内の下部に形成された冷却領域(系内)に熱媒を循環供給する構成が例示される。この場合,送液手段は,容器内の上部から熱媒を取り出して,容器内の下部に熱媒を循環供給する回路にポンプや冷却手段を設けたような構成であっても良い。
【0015】
【発明の実施の形態】
以下,本発明の好ましい実施の形態を図面を参照にして説明する。図1は本発明の実施にかかる球状体の製造装置1の内部構造を示す断面図である。この実施の形態では,球状体の一例としてBGAやCSP等の半導体パッケージのバンプ材料に用いられる半田ボールa’を製造する製造装置について説明する。
【0016】
内部が中空の筒形状をなす容器10の中心軸が鉛直方向となるように,容器10が垂直に配置されている。容器10の内部には,半田ボールa’の原料である半田(例えばSn−Pb共晶半田など)aと不活性な熱媒bが充填されている。熱媒bは,原料と不活性なものであれば液体,気体のいずれを用いても良いが,この実施の形態では,一例として半田aと不活性な植物油が用いられる。後述するように,容器10の内部において,上方には熱媒bの温度が半田aの融点(例えば約183゜C)以上の温度となる成形領域25が形成されており,下方には熱媒bの温度が半田aの融点未満の温度となる冷却領域26が形成されている。
【0017】
容器10の最上部と最下部には,熱媒bを容器10の外部において流通させる回路11の両端が接続されており,この回路11にはポンプ12と冷却手段としての熱交換器13が設けられている。そして,ポンプ12の稼働により,容器10の最上部から熱媒bを容器10外(系外)に一旦取り出し,回路11にて下方に向かって熱媒bを送液して熱交換器13で熱媒bを半田aの融点未満の温度(例えば20〜40゜C)に冷却した後,再び容器10の最下部から熱媒bを容器10内(系内)に循環供給する構成になっている。このように容器10の最上部から取り出した熱媒bを回路11を経て容器10の最下部に循環供給することにより,容器10内では,最下部から最上部に向かう熱媒bの流れ(上昇流)が発生している。
【0018】
容器10の周囲には,複数のヒーターが上下方向に連続して装着されており,この実施の形態では,4段のヒーター15,16,17,18が容器10の周囲に上から順に装着されている。これら各ヒーター15,16,17,18は,互いに独立して加熱温度を調節することが可能であり,各ヒーター15,16,17,18によって加熱することにより,各ヒーター15,16,17,18の装着箇所において,容器10の内部の熱媒bをそれぞれ所望の温度に昇温させるようになっている。各ヒーター15,16,17,18の装着箇所には,熱電対からなる温度センサー20,21,22,23が配置されており,容器10内部の熱媒bの温度は,各ヒーター15,16,17,18の装着箇所においてそれぞれ検出されている。そして,これら各温度センサー20,21,22,23の検出に基づいて各ヒーター15,16,17,18の出力を適宜制御することにより,熱媒bの温度が容器10の内部において上方ほど高温になるように制御されている。
【0019】
この実施の形態では,上から一番目のヒーター15の装着箇所における熱媒bの温度(温度センサー20の検出温度)が190℃,上から二番目のヒーター16の装着箇所における熱媒bの温度(温度センサー21の検出温度)が185℃,上から三番目のヒーター17の装着箇所における熱媒bの温度(温度センサー22の検出温度)が180℃,上から四番目のヒーター18の装着箇所における熱媒bの温度(温度センサー23の検出温度)が172℃となるように,各ヒーター15,16,17,18の出力が制御されている。一方,容器10の下部には,ヒーターを装着せずに容器10の周面が露出した箇所が形成されており,容器10の下部では,容器10の内部の熱媒bが加熱されないようになっている。
【0020】
このように容器10の下部では熱媒bの加熱が行われず,また各ヒーター15,16,17,18の装着箇所ではそれぞれ所定の目標温度をなるように加熱が行われることにより,容器10の内部においては,上方に熱媒bの温度が半田aの融点(例えば約183゜C)以上の温度となる成形領域25が形成されており,下方には熱媒bの温度が半田aの融点未満の温度となる冷却領域26が形成されている。また,各ヒーター15,16,17,18の加熱温度は,上方のセンサーほど高温に制御されているので,容器10内部の熱媒中には,これら冷却領域26と成形領域の間に渡って半田aの融点未満の温度から半田aの融点以上の温度になる温度勾配(下方から上方に向かって温度が高くなる温度勾配)が形成されている。
【0021】
そして,前述のように容器10内において熱媒bの流れ(上昇流)が発生していることにより,最下部から容器10内に供給された熱媒bは,容器10内を上向きに流れる間に,温度勾配に従って次第に昇温されるようになっている。こうして加熱された熱媒bは,容器10の最上部において容器10外(系外)に抜き出され,回路11を送液される間に半田aの融点未満の温度に冷却された後,再び容器10の最下部から容器10内(系内)に循環供給されている。
【0022】
容器10の上端には,適当な時間間隔で原料である半田aを所定量に分離して容器10内の熱媒b中に供給する原料投入器30が設けられている。この原料投入機30によって熱媒b中に供給された半田aは,容器10内において自重で熱媒b中を沈降して下降するようになっている。なお,原料投入器30によって熱媒b中に供給する半田aは固体でも液体(融液)でも良い。いずれにせよ,原料投入器30から熱媒b中に供給された半田aは,先ず成形領域25にて融点以上に昇温された熱媒b中におかれ,融液の状態となって自重で落下していくこととなる。なおこの実施の形態においては,原料投入器30は容器10の上端に取り付けられたケーシング31の内部に設置されており,ケーシング31内には,容器10の内部において半田aの融点以上の温度まで昇温された熱媒bが充填されている。これにより,原料投入器30は半田aの融点以上の温度に加熱されており,原料投入器30は半田aを融液の状態で所定量に分離して容器10内の熱媒b中に供給するようになっている。
【0023】
容器10の下端には,開閉弁35が取り付けてある。この開閉弁35を開くことにより,容器10内から熱媒bをドレイン管36を通じて排液できるようになっている。また,後述するように,容器10内にて製造された半田ボールa’をドレイン管36を通じて排出することも可能である。
【0024】
さて,以上のように構成された製造装置1において,各ヒーター15,16,17,18によって加熱を行い,容器10の内部において,上方に熱媒bの温度が半田aの融点以上の温度となる成形領域25を形成し,下方に熱媒bの温度が半田aの融点未満の温度となる冷却領域26を形成する。その際,各ヒーター15,16,17,18の出力を適宜制御することにより,上から一番目のヒーター15の装着箇所における熱媒bの温度が190℃,上から二番目のヒーター16の装着箇所における熱媒bの温度が185℃,上から三番目のヒーター17の装着箇所における熱媒bの温度が180℃,上から四番目のヒーター18の装着箇所における熱媒bの温度が172℃となるように加熱を行い,容器10内部の熱媒b中に,冷却領域26と成形領域の間に渡って半田aの融点未満の温度から半田aの融点以上の温度になる温度勾配(下方から上方に向かって温度が高くなる温度勾配)を形成する。
【0025】
また一方,ポンプ12の送液により,容器10の最上部から熱媒bを回路11に抜き出し,熱交換器13で半田aの融点未満の温度に冷却し熱媒bを再び容器10の最下部から容器10内に循環供給する。こうして,容器10内において,最下部から最上部に向かう熱媒bの流れ(上昇流)を発生させる。なお,このように回路11から容器10の最下部に供給された熱媒bは,冷却領域26では半田aの融点未満の温度を維持するが,容器10内を上昇する間に各ヒーターによって次第に加熱され,成形領域25では半田aの融点以上の温度に昇温させられる。
【0026】
そして,容器10の上端に設けられた原料投入器30からは,適当な時間間隔で半田aが所定量に分離されて容器10内の熱媒b中に供給される。この実施の形態では,原料投入器30は半田aを融液の状態で所定量に分離して容器10内の熱媒b中に供給する。
【0027】
こうして容器10上端において熱媒b中に供給された半田aは,容器10内において自重で熱媒b中を沈降して下降していく。そして,熱媒b中を沈降していく半田aは,先ず成形領域25にて融点以上に昇温された熱媒b中におかれて融液の状態を維持し,その表面張力により球状に成形されることとなる。
【0028】
次に,こうして成形領域25にて球状に成形された半田aは,その形状(球形)を維持したまま熱媒b中を沈降していくが,熱媒b中に下方から上方に向かって温度が高くなる温度勾配が形成されているため,下降に伴って半田aは徐々に冷却されていく。そして,半田aが冷却領域26まで下降してくると,半田aは融点未満の温度に冷却されて,球形を維持したまま固化することとなる。こうして製造された半田ボールa’が,容器10の底部に溜められることとなる。そして,製造された半田ボールa’は,容器10下端の開閉弁35を開くことにより,ドレイン管36を通じて排出することが可能である。
【0029】
ここで,以上に説明した半田ボールa’の製造を連続して行うに伴い,冷却領域26の熱媒bは,半田aを冷却したことにより次第に加熱され,また半田aの沈降に伴って成形領域25の熱媒bが冷却領域26中に流れ込込もうとするため,冷却領域26の熱媒bの温度が次第に高くなっていく懸念が生ずる。しかるに,この実施の形態においては,容器10内を下降していく半田aと逆向きの流れ(上昇流)を熱媒b中に生じさせることにより,半田aを冷却したことによって加熱された熱媒bや,半田aの下降に伴って冷却領域26に流れ込もうとする熱媒bを,冷却領域26から成形領域25に向って流すことができる。そして冷却領域26には,予め熱交換器13で半田aの融点未満の温度に冷却された熱媒bが,容器10の最下部を通じて供給されることとなり,また容器10の下部では熱媒bの加熱が行われないため,冷却領域26では熱媒bは常に半田aの融点未満の温度に保たれる。こうして,容器10内においては,下方の冷却領域26と上方の成形領域25の間に渡って,半田aの融点未満の温度から半田aの融点以上の温度になる温度勾配が熱媒b中に安定して形成されることとなる。これにより,容器10内の成形領域25では融点以上の温度下で融液の状態で表面張力により半田aを球状に成形させることができ,一方,冷却領域26では半田aを融点未満の温度に確実に冷却して球形のまま固化させることができ,半田ボールa’のごとき球状体を連続的に製造することが可能となる。冷却領域26では半田aを融点未満の温度に確実に冷却できるので,半田ボールa’の変形や相互での癒着も防止できるようになる。また上昇流によって,成形領域25には半田aを冷却したことによって加熱された熱媒bが流れ込むので,各ヒーター15,16,17,18は,加熱に要するエネルギーを削減できるようになる。更にこの実施の形態では,容器10内を沈降していく半田aの移動方向と逆向きの流れ(上昇流)を熱媒b中に生じさせているので,熱媒bが停止している場合に比べて,半田aに対してより多くの熱媒bが熱的に接触するので,半田aを効率よく冷却でき,処理時間の短縮化がはかれ,容器10の高さも短縮できるので省スペース化を図ることも可能となる。
【0030】
以上,本発明の好ましい実施の形態の一例を説明したが,本発明はここで説明した形態に限定されない。例えば図1で説明した実施の形態では,容器10内において熱媒b中に1つの流れを生じさせた例を示したが,容器10内において熱媒b中に2以上の流れを生じさせても良い。例えば図示の例について言えば,各ヒーター15,16,17,18の装着箇所毎に熱媒b中に流れを生じさせても良い。また各ヒーター15,16,17,18の装着箇所の対応させずに,任意の箇所に複数の熱媒bの流れを生じさせても良い。またいずれの場合も,容器10内から抜き出した熱媒bを,再び容器10内に循環供給すれば,熱媒bを繰り返し利用でき,有効利用がはかれるようになる。なお熱媒bの流量は,長時間わたり連続的に多量の原料(例えば半田a)を球形化処理した場合でも,容器10内に所定の温度分布を継続して形成できるように設定すると良い。熱媒bの流量が小さすぎると,冷却領域26での熱媒bの温度上昇が押さえきれず,目的を果たせない。一方,熱媒bの流量が多すぎると熱媒bの加熱に要するエネルギーが無駄に増えてしまう。
【0031】
また,各ヒーター15,16,17,18を4段に装着する例を説明したが,ヒーターの数や設置個所は変更可能である。例えば,容器10の下部において放熱器などの冷却手段を用いて熱媒bを積極的に冷却しても良い。また,容器10の最下部より供給された熱媒bの温度が低すぎるような場合は,図1に示したヒーター18の下方に予備ヒーター40などを設置して,熱媒bを予め加熱しても良い。また,回路11中を送液される間に熱媒bが充分に冷却されるのであれば,熱交換器13は省略しても良い。またポンプ12は,極端な脈動を伴わないものであれば,ローラーポンプ,ダイヤフラムポンプ等任意に選択可能である。
【0032】
また以上の実施の形態では,球状体の一例として半田ボールa’を製造する例について説明したが,球状体の原料は,半田a以外の金属や金属以外の材料などでも良い。また,熱媒bは植物油に限らず他の液体や気体であっても良く,各種の植物油,鉱油,高沸点溶剤等の液体またはアルゴンなどの気体を利用することができる。
【0033】
【実施例】
(実施例1)
図1の製造装置1にて,所定の温度分布に設定し循環させた熱媒b中に63Sn−37Pb共晶半田の融液を60g/分の割合で原料投入器30より連続的に滴下し,半田ボールa’を製造した。原料投入器30からは,融液の状態で半田aを所定量毎に滴下することにより供給した。熱媒bとしては食用大豆油を用い,136mリットル/分の流量(上昇流)で流した。容器10は高さ約1.5m,内径36φの管を用い,これに上方より31cm間隔でリボンヒーターを巻いて各ヒーター15,16,17,18とした。各ヒーター15,16,17,18の設置個所の温度を各温度センサー20,21,22,23で測定してフィードバック制御し,各部位の温度が目標値になるよう各ヒーター15,16,17,18の出力を制御した。各部位の温度目標値は,温度センサー20位置で190℃,温度センサー21位置で185℃,温度センサー22位置で180℃,温度センサー23位置で172℃とした。回路11には内径5φのシリコーンチューブを用い,ポンプ12としてはベローズポンプを用いた。回路11を送液中に熱媒bを自然冷却させ,熱交換器13は省略し,強制冷却は行わなかった。なお,ヒーター18の下方にリボンヒーターからなる予備ヒーター40を15cmの幅で巻いた。製造開始から1時間経過しても,各温度センサー20,21,22,23で測定された温度は,表1に示すとおり目標温度に保つことができた。半田の融液量が60g/分の場合でも熱媒を循環することで温度勾配制御は可能であった。
【0034】
【表1】
【0035】
(実施例2)
半田融液の切り出しに際し,0.25φのノズルより半田融液を吐出し,かつ,固化時に0.80φ球となるように5.2g/分の割合で吐出した。また熱媒の循環流量を190mリットル/分とした。その他は実施例1と同条件で行った。その結果,各ヒーター15,16,17,18の設置個所の温度は,ほぼ目標温度となった。実際の温度勾配は,温度センサー20位置で190℃,温度センサー21位置で185℃,温度センサー22位置で179℃,温度センサー23位置で171℃で安定した。製造された半田ボールを回収し,計測したところ,粒径0.80φ,真球度98%(n=10)の半田ボールが得られた。図2は得られた半田ボールの粒子画像のスケッチである。なお真球度は下記の式によって算出した。
真球度(%)=(1−(長径−短径)/((長径+短径)/2))×100
【0036】
(比較例)
比較例では,図1において回路11を省略し,所定の温度分布に設定した静止熱媒b中に63Sn−37Pb共晶半田aの融液を5.2g/分の割合で原料投入器より連続的に滴下して,半田ボールa’を製造した。その他の条件は,実施例と同様である。製造開始から1時間経過後に,各温度センサー20,21,22,23で測定された温度を,目標温度と共に表2に示す。
【0037】
【表2】
【0038】
各ヒーター15,16,17,18の設置個所の温度は,目標温度から大きくずれてしまい温度勾配が維持できなくなった。
【0039】
【発明の効果】
本発明によれば,高い真球度の球状体を製造することができ,長時間にわたり連続的に原料を球形化処理した場合でも,熱媒が球形化に必要な所定の温度勾配を安定して維持し,長時間にわたって高い真球度の球状体を製造できるようになる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の形態にかかる球状体の製造装置の説明図である。
【図2】実施例で製造された半田ボールの粒子画像のスケッチである。
【符号の説明】
a 半田
a’ 半田ボール
b 熱媒
1 製造装置
10 容器
11 回路
12 ポンプ
13 熱交換器
15,16,17,18 ヒーター
20,21,22,23 温度センサー
30 原料投入器
31 ケーシング
35 開閉弁
36 ドレイン管
Claims (5)
- 球状体の原料と不活性な熱媒中に原料の融点未満の温度から原料の融点以上の温度になる下方から上方に向かって温度が高くなる温度勾配を形成して,熱媒中に,熱媒の温度が原料の融点以上の温度となる上方の成形領域と,熱媒の温度が原料の融点未満の温度となる下方の冷却領域を形成し,予め所定量に分離された原料を成形領域から冷却領域に移動させることにより,成形領域において融液の状態で原料を表面張力により球形化させ,その後,冷却領域において原料を冷却して球形のまま固化させる方法において,
融点未満の温度に冷却された熱媒を冷却領域に供給し,前記原料の融点未満の温度となる冷却領域から前記原料の融点以上の温度となる成形領域に向かう方向に熱媒を流すことにより,前記温度勾配を維持することを特徴とする,球状体の製造方法。 - 熱媒中に1もしくは2以上の流れを生じさせることを特徴とする,請求項1の球状体の製造方法。
- 熱媒を系外に一旦取り出した後,再び系内に循環供給することを特徴とする,請求項1又は2のいずれかの球状体の製造方法。
- 原料が金属であることを特徴とする,請求項1,2又は3のいずれかの球状体の製造方法。
- 球状体の原料と不活性な熱媒を充填した容器と,熱媒の流れを生じさせる送液手段と,熱媒中に原料の融点未満の温度から原料の融点以上の温度になる下方から上方に向かって温度が高くなる温度勾配を形成させる温度調節手段を備え,
前記送液手段は,融点未満の温度に冷却された熱媒を冷却領域に供給し,前記原料の融点未満の温度となる下方の冷却領域から前記原料の融点以上の温度となる上方の成形領域に向かう方向に熱媒を流すことを特徴とする,球状体の製造装置。
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