JP4403709B2 - 有彩1次色インクと有彩2次色インクとを含む複数のインク成分への分版処理 - Google Patents

有彩1次色インクと有彩2次色インクとを含む複数のインク成分への分版処理 Download PDF

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【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は、複数種類のインクを用いたカラー印刷技術に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、画像の出力装置として、カラーインクジェットプリンタが広く普及している。通常のカラーインクジェットプリンタは、ブラック(K)インクの他に、シアンC、マゼンタM、イエローYの色相を有する複数種類のインクを使用する。カラー画像の任意の色は、これらの複数種類のインクを用いて再現することができる。
【0003】
このようなプリンタでは、カラー画像の任意の色に応じて、使用可能な各インクのインク量が決定される。本明細書では、このような色再現のために印刷時に用いる各インクのインク量を決定する処理を「分版処理」又は「インク色分解処理」と呼んでいる。カラー画像の色データと各色インク量との関係は、あらかじめ色変換ルックアップテーブル(LUT:Look Up Table)として記憶されており、印刷時にはLUTに従って各画素位置における各色のインク量が決定される。(例えば、特許文献1参照。)。
【0004】
【特許文献1】
特開平10−191089
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、プリンタによる色の再現性は、プリンタが使用可能なインクの種類によって決まる。典型的には、3つの有彩1次色インク(例えば、シアンC、マゼンタM、イエローYのインク)を組み合わせることによって任意の色を再現することができる。また、このような各有彩1次色インクとは色相が異なる有彩2次色インクが用いられる場合もある。ここで「有彩2次色」とは、2つの有彩1次色成分に分解できる色を意味する。有彩2次色インクを用いると、有彩2次色インクの色相に近い色相を有する画像領域の色の再現範囲、特に、彩度の範囲を拡張することが可能となる。ところが、従来は、彩度の均衡をとる点については、工夫がなされていないのが実情であった。
【0006】
本発明は、上述した従来の課題を解決するためのものであり、有彩1次色インクと有彩2次色インクとを利用可能なときに、再現される色の再現範囲を拡張するとともに、彩度の均衡をとることを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段およびその作用・効果】
上記課題の少なくとも一部を解決するために、この発明による分版方法は、印刷媒体上で複数色のインクを用いて任意の色を再現するために、各インクのインク量を決定する分版方法であって、(a)使用可能なインクとして、互いに組み合わせて用いることにより無彩色を再現可能な複数の有彩1次色インクと、前記複数の有彩1次色インクのいずれとも色相が異なる少なくとも1つの有彩2次色インクとを含むインクセットを設定する工程と、(b)任意の1つの入力色に応じて前記印刷媒体上で再現される色を再現色と呼び、前記再現色を前記印刷媒体上で再現するための前記インクセットの各インク量の組み合わせを分版インク量セットと呼び、前記複数の有彩1次色インクの各インク量を基準ベクトルとして表される色空間を1次色色空間と呼ぶときに、前記1次色色空間内の複数の入力色に応じて前記印刷媒体上で再現される複数の再現色を決定する工程と、(c)前記複数の再現色を再現するための複数の分版インク量セットを決定する工程と、を備え、前記工程(b)では、前記有彩2次色インクと同一の色相を有する再現色の彩度が、前記有彩1次色インクによって再現可能な彩度の範囲よりも広く、前記インクセットによって再現可能な彩度の最大限の範囲よりも狭い所定の彩度制限を満足するように、前記複数の再現色が決定される。
【0008】
この分版方法によれば、有彩2次色インクと同一の色相を有する再現色の彩度が、有彩1次色インクによって再現可能な彩度の範囲よりも広く、インクセットによって再現可能な彩度の最大限の範囲よりも狭い彩度制限を満足するように設定されるので、色の再現範囲を拡張するとともに、彩度の均衡をとった分版処理を行うことができる。
【0009】
上記分版方法において、前記1次色色空間における、前記インクセットによって再現可能な色の表現領域であって、前記彩度制限を含む所定の制限を満足する色表現領域の外殻に位置する第1種有彩色を表すベクトルを第1種ベクトルと呼び、前記有彩1次色インクによって再現可能な色の表現領域の外殻に位置するとともに、前記第1種ベクトルと同一の方向に位置する第2種有彩色を表すベクトルを第2種ベクトルと呼ぶときに、前記彩度制限は、前記第2種ベクトルの長さに対する前記第1種ベクトルの長さの割合を予め設定された所定の制限値以下に制限することが好ましい。
【0010】
こうすることで、一部の色相を有する色についてのみ、再現可能な彩度の範囲が極端に拡張されることを抑制することができるので、彩度の均衡をとった分版処理を行うことができる。
【0011】
上記各分版方法において、前記制限値は前記再現色の色相に係わらず一定であることが好ましい。
【0012】
こうすることで、制限値の変化に伴って再現可能な彩度の範囲が変化することを抑制することができるので、彩度の均衡をとった分版処理を行うことができる。
【0013】
上記各分版方法において、前記彩度制限は、前記再現色を前記1次色色空間に表現したときの、前記有彩1次色インクの各色成分の大きさを制限することが好ましい。
【0014】
こうすることで、彩度制限の設定を容易に行うことができる。
【0015】
上記各分版方法において、前記工程(b)は、(b1)前記1次色色空間における、前記有彩1次色インクによって再現可能な色の表現領域の最外殻位置にある有彩色を最外殻有彩色と呼ぶときに、前記最外殻有彩色に対応付けられた最外殻分版インク量セットであって、前記インクセットによって再現可能で前記最外殻有彩色よりも彩度の高い拡張有彩色を再現するための最外殻分版インク量セットを決定する工程と、(b2)前記最外殻有彩色と前記最外殻分版インク量セットとの関係に基づいて、前記1次色色空間内の前記複数の入力色にそれぞれ対応付けられた前記複数の再現色を決定する工程と、を含み、前記工程(b1)は、前記印刷媒体の単位面積当たりに使用可能なインク量の上限値をインクデューティ制限として設定する工程と、前記拡張有彩色を、前記1次色色空間において前記最外殻有彩色を表す最外殻有彩色ベクトルと同一の方向を有するより長い拡張有彩色ベクトルで表される色として決定するとともに、前記拡張有彩色を再現するための前記最外殻分版インク量セットを決定する工程と、を備え、前記拡張有彩色および前記最外殻分版インク量セットの決定は、以下の条件:(i)前記最外殻分版インク量セットが前記インクデューティ制限内である、(ii)前記拡張有彩色が前記彩度制限内である、を満足するように行われることが好ましい。
【0016】
こうすることで、有彩1次色インクのみで再現可能な最も高い彩度を有する最外殻有彩色よりも、さらに彩度の高い拡張有彩色を再現するように最外殻分版インク量セットを決定するので、色再現範囲の拡張を考慮した分版処理を行うことができる。また、インクデューティ制限と彩度制限によってインク量を制限しているので、印刷媒体の特性に応じた分版処理を行うとともに、彩度の均衡をとった分版処理を行うことができる。
【0017】
上記各分版方法において、前記拡張有彩色および前記最外殻分版インク量セットの決定は、さらに、以下の条件:(iii)前記インクセットで再現可能な範囲で前記拡張有彩色ベクトルの長さが最も長くなる、を満足するように行われることが好ましい。
【0018】
こうすることで、インクセットで再現可能な色再現範囲を有効に利用した分版処理を行うことができる。
【0019】
上記各分版方法において、前記拡張有彩色および前記最外殻分版インク量セットの決定は、さらに、以下の条件:(iv)前記拡張有彩色を再現するための前記最外殻分版インク量セットのインク量の合計が最も少なくなる、を満足するように行われることが好ましい。
【0020】
こうすることで、インクの使用量を節約することができる。
【0021】
上記各分版方法において、前記再現色は、前記1次色色空間において前記入力色と同じベクトル方向を有する最外殻有彩色に対する最外殻分版インク量セットに、前記入力色のベクトル長と前記最外殻有彩色のベクトル長との比を乗じることによって得られる比例分版インク量セットによって再現される色であることが好ましい。
【0022】
こうすることで、入力色に対応付けられた再現色の設定を容易に行うことができる。
【0023】
上記各分版方法において、前記有彩2次色インクは、前記複数の有彩1次色インクとは異なる色材を含有することが好ましい。
【0024】
こうすることで、色の再現性を向上させることができる。
【0025】
上記各分版方法において、前記有彩2次色インクは、前記有彩2次色インクが再現可能な色相を前記複数の有彩1次色インクの混色によって再現した場合に、前記有彩1次色インクの混色で再現することが可能な彩度よりも高い彩度を再現することが可能であることが好ましい。
【0026】
こうすることで、有彩1次色インクのみで再現可能な彩度以上の彩度を有する色彩を再現することができる。
【0027】
上記各分版方法において、前記インクセットは、互いに色相が異なる第1と第2の2つの有彩2次色インクを含み、前記有彩2次色インクを前記複数の有彩1次色インクの組み合わせに置換することによってほぼ同じ色相と彩度を再現するときの前記有彩2次色インクのインク量に対する前記複数の有彩1次色インクの各インク量を置換インク量とし、前記第1と第2の有彩2次色インクのそれぞれに関して、前記置換インク量の中で値が最も大きい2つのインクを主成分1次色インクとしたときに、前記第1の有彩2次色インクの2つの主成分1次色インクのうちの1つと、前記第2の有彩2次色インクの2つの主成分1次色インクのうちの1つが異なるインクであることが好ましい。
【0028】
こうすることで、色再現範囲をさらに拡張することができる。
【0029】
上記各分版方法において、前記インクセットは、ブラックインクを含み、前記工程(b)は、前記入力色に前記ブラックインクの下色除去処理を行うことによって、ブラック成分が除去されて複数の有彩1次色成分で構成された修正入力色を求める工程を含み、前記再現色は前記修正入力色に応じて決定されることが好ましい。
【0030】
こうすることで、色再現範囲をさらに拡張することができる。
【0031】
また、上記課題の少なくとも一部を解決するために、この発明の一態様に係る印刷装置は、互いに組み合わせて用いることにより無彩色を再現可能な複数の有彩1次色インクと、前記複数の有彩1次色インクのいずれとも色相が異なる少なくとも1つの有彩2次色インクとで構成されるインクセットの各インクを用いて画像の印刷を行う印刷装置であって、前記印刷媒体上に再現可能な彩度の範囲が少なくとも前記有彩2次色インクの色相において比較的狭い第1種のカラー印刷モードでの印刷と、前記第1種のカラー印刷モードと同一のインクを利用可能であるとともに、前記印刷媒体上に再現可能な彩度の範囲が少なくとも前記有彩2次色インクの色相において比較的広い第2種のカラー印刷モードでの印刷とを行う事ができる。
【0032】
この印刷装置によれば、再現される彩度の範囲が異なる第1種のカラー印刷モードと第2種のカラー印刷モードを利用することができるので、印刷画像の種類に応じた彩度の範囲を用いて印刷を実行することができる。
【0033】
上記印刷装置において、前記第1種のカラー印刷モードと前記第2種のカラー印刷モードとは、同一の印刷媒体を利用可能な印刷モードであることが好ましい。
【0034】
こうすることで、同一の印刷媒体を用いる場合でも、印刷画像の種類に応じた彩度の範囲を用いて印刷を実行することができる。
【0035】
上記印刷装置において、前記調整部は、第1の表色系で表された入力カラー画像データから、前記インクセットの各インクのインク量で構成される再現色表色系で表された第2のカラー画像データへの変換を、色変換ルックアップテーブルを使用して行う色変換モジュールを備えることが好ましい。
【0036】
こうすることで、画像データをインク量データに変換する処理を、ルックアップテーブルを参照することで迅速に行うことができる。
【0037】
上記各印刷装置において、前記調整部は、前記調整部が有する複数の印刷モードに対応して予め準備された複数の色変換ルックアップテーブルを備え、前記色変換モジュールは、前記調整部が使用する印刷モードに対応した色変換ルックアップテーブルを使用することが好ましい。
【0038】
こうすることで、使用する印刷モードに対応した変換処理を迅速に行うことができる。
【0039】
なお、この発明は、種々の形態で実現することが可能であり、例えば、上記分版方法を用いた画像データ変換方法および装置、印刷方法および印刷装置、色変換ルックアップテーブルの作成方法および装置、これらの方法または装置の機能を実現するためのコンピュータプログラム、そのコンピュータプログラムを記録した記録媒体、そのコンピュータプログラムを含み搬送波内に具現化されたデータ信号、等の形態で実現することができる。
【0040】
【発明の実施の形態】
次に、この発明の実施の形態を実施例に基づいて以下の順序で説明する。
A.装置の構成:
B.分版処理の第1実施例:
C.分版処理の第2実施例:
D.分版処理の第3実施例:
E.インクセットの変形例:
F.印刷システムの第2実施例:
G.変形例:
【0041】
A.装置の構成:
図1は、本発明の一実施例として印刷システムの構成を示すブロック図である。この印刷システムは、画像データ処理装置としてのコンピュータ90と、印刷部としてのカラープリンタ20と、を備えている。なお、プリンタ20とコンピュータ90とは、広義の「印刷装置」と呼ぶことができる。
【0042】
コンピュータ90では、所定のオペレーティングシステムの下で、アプリケーションプログラム95が動作している。オペレーティングシステムには、ビデオドライバ91や、調整部としてのプリンタドライバ96が組み込まれており、アプリケーションプログラム95からは、これらのドライバを介して、プリンタ20に転送するための印刷データPDが出力されることになる。画像のレタッチなどを行うアプリケーションプログラム95は、処理対象の画像に対して所望の処理を行い、また、ビデオドライバ91を介してCRT21に画像を表示している。
【0043】
アプリケーションプログラム95が印刷命令を発すると、コンピュータ90のプリンタドライバ96が、画像データをアプリケーションプログラム95から受け取り、これをプリンタ20に供給する印刷データPDに変換する。図1に示した例では、プリンタドライバ96の内部には、解像度変換モジュール97と、色変換モジュール98と、ハーフトーンモジュール99と、ラスタライザ100と、色変換ルックアップテーブルLUTと、印刷モード選択部101と、が備えられている。
【0044】
解像度変換モジュール97は、アプリケーションプログラム95で形成されたカラー画像データの解像度(即ち、単位長さ当りの画素数)を、印刷解像度に変換する役割を果たす。こうして解像度変換された画像データは、まだRGBの3つの色成分からなる画像情報である。色変換モジュール98は、色変換ルックアップテーブルLUTを参照しつつ、各画素ごとに、RGB画像データ(入力カラー画像データ)を、プリンタ20が利用可能な複数のインク色の多階調データ(第2のカラー画像データ)に変換する。
【0045】
色変換ルックアップテーブルLUTは、利用可能な印刷モードに対応して準備される。本実施例では、利用可能な印刷モードが、印刷に使用する印刷媒体とインクセットの組み合わせ(詳細は後述)に応じて設定されている。
【0046】
利用可能な印刷モードが複数あるときには、ユーザは、印刷モード選択部101に指示を出すことによって、使用する印刷モードを選択することが可能である。印刷モード選択部101への指示は、プリンタドライバ96の印刷条件設定のための画面(図示せず)を介して行うことができる。色変換モジュール98は、印刷モード選択部101によって選択された印刷モードに対応した色変換ルックアップテーブルLUTを選択して参照する。
【0047】
色変換された多階調データは、例えば256階調の階調値を有している。ハーフトーンモジュール99は、いわゆるハーフトーン処理を実行してハーフトーン画像データを生成する。このハーフトーン画像データは、ラスタライザ100によりプリンタ20に転送すべきデータ順に並べ替えられ、最終的な印刷データPDとして出力される。なお、印刷データPDは、各主走査時のドットの記録状態を示すラスタデータと、副走査送り量を示すデータと、を含んでいる。
【0048】
なお、プリンタドライバ96は、印刷データPDを生成する機能を実現するためのプログラムに相当する。プリンタドライバ96の機能を実現するためのプログラムは、コンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録された形態で供給される。このような記録媒体としては、フレキシブルディスクやCD−ROM、光磁気ディスク、ICカード、ROMカートリッジ、パンチカード、バーコードなどの符号が印刷された印刷物、コンピュータの内部記憶装置(RAMやROMなどのメモリ)および外部記憶装置等の、コンピュータが読み取り可能な種々の媒体を利用できる。
【0049】
図2は、プリンタ20の概略構成図である。プリンタ20は、紙送りモータ22によって印刷用紙PPを副走査方向に搬送する副走査送り機構と、キャリッジモータ24によってキャリッジ30をプラテン26の軸方向(主走査方向)に往復動させる主走査送り機構と、キャリッジ30に搭載された印刷ヘッドユニット60を駆動してインクの吐出およびドット形成を制御するヘッド駆動機構と、これらの紙送りモータ22,キャリッジモータ24,印刷ヘッドユニット60および操作パネル32との信号のやり取りを司る制御回路40とを備えている。制御回路40は、コネクタ56を介してコンピュータ90に接続されている。
【0050】
印刷用紙PPを搬送する副走査送り機構は、紙送りモータ22の回転をプラテン26と用紙搬送ローラ(図示せず)とに伝達するギヤトレインを備える(図示省略)。また、キャリッジ30を往復動させる主走査送り機構は、プラテン26の軸と並行に架設されキャリッジ30を摺動可能に保持する摺動軸34と、キャリッジモータ24との間に無端の駆動ベルト36を張設するプーリ38と、キャリッジ30の原点位置を検出する位置センサ39とを備えている。
【0051】
図3は、制御回路40を中心としたプリンタ20の構成を示すブロック図である。制御回路40は、CPU41と、プログラマブルROM(PROM)43と、RAM44と、文字のドットマトリクスを記憶したキャラクタジェネレータ(CG)45とを備えた算術論理演算回路として構成されている。この制御回路40は、さらに、外部のモータ等とのインタフェースを専用に行なうI/F専用回路50と、このI/F専用回路50に接続され印刷ヘッドユニット60を駆動してインクを吐出させるヘッド駆動回路52と、紙送りモータ22およびキャリッジモータ24を駆動するモータ駆動回路54と、を備えている。I/F専用回路50は、パラレルインタフェース回路を内蔵しており、コネクタ56を介してコンピュータ90から供給される印刷データPDを受け取ることができる。I/F専用回路50が内蔵する回路は、パラレルインタフェース回路に限らず、ユニバーサルシリアルバスインタフェース回路などコンピュータ90との接続の容易性や通信速度等を考慮して決めることができる。プリンタ20は、この印刷データPDに従って印刷を実行する。なお、RAM44は、ラスタデータを一時的に格納するためのバッファメモリとして機能する。
【0052】
印刷ヘッドユニット60は、印刷ヘッド28を有しており、また、インクカートリッジを搭載可能である。なお、印刷ヘッドユニット60は、1つの部品としてプリンタ20に着脱される。すなわち、印刷ヘッド28を交換しようとする際には、印刷ヘッドユニット60を交換することになる。
【0053】
図4は、印刷ヘッド28の下面におけるノズル配列を示す説明図である。印刷ヘッド28の下面には、シアンインクCを吐出するためのノズル群と、マゼンタインクMを吐出するためのノズル群と、ブラックインクKを吐出するためのノズル群と、レッドインクRを吐出するためのノズル群と、バイオレットインクVを吐出するためのノズル群と、イエローインクYを吐出するためのノズル群とが形成されている。この実施例では、6つのインクC、M、Y、R、V、Kからなるインクセットを使用することが可能である。なお、図4の例では、1つのノズル群の複数のノズルNzは副走査方向SSに沿って一直線上に配列されているが、千鳥状に配列されていてもよい。
【0054】
図5(a)は、インクセットのCMYRVK各色インクのインク成分を示す説明図である。各色のインクは、イオン交換水をベースとして、所望の色を付与するための各種染料あるいは顔料からなる色材や、粘度調整用のエチレングリコールなどが適量ずつ添加された混合溶液である。色材の種類は色材のカラーインデックス(C.I.)で示されている。
【0055】
シアンインクCと、マゼンタインクMと、イエローインクYとは、互いに組み合わせて用いることによってグレー(無彩色)を再現することが可能であり、有彩1次色インクに相当する。レッドインクRとバイオレットインクVとは、その色相が有彩1次色インク(CMY)のいずれとも異なるインクであり、有彩2次色インクに相当する。レッドインクRは、イエローインクYとマゼンタインクMとの間の色相を有しており、バイオレットインクVは、マゼンタインクMとシアンインクCとの間の色相を有している。
【0056】
有彩1次色インクC、M、Yの混色は、有彩2次色インクR、Vのそれぞれの色とほぼ同じ色相と彩度を再現することが可能である。ここで、有彩2次色インクのインク量に対する有彩1次色インクの混色の各インク量、すなわち、有彩2次色インクのインク量を1としたときの、有彩1次色インクの混色の各インク量を置換インク量と呼ぶ。このとき、CMY各色のインクとRV各色のインクとを、置換インク量に基づいて置換してもほぼ同じ色彩を再現することが可能である。
【0057】
図5(b)(c)は、それぞれ、図5(a)に示すインクセットを利用して置換インク量を測定した実験結果を示している。この実験結果は、有彩1次色インクC、M、Yの混色によるカラーパッチと、有彩2次色インクR、Vのそれぞれのカラーパッチを測色して比較することによって得たものである。図5(b)は、レッドインクRに対する置換インク量を示しており、CMY各色の置換インク量が、順にwCR、wMR、wYRの符号を付して記されている。図5(c)は、バイオレットインクVに対する置換インク量を示しており、CMY各色の置換インク量が、順にwCV、wMV、wYVの符号を付して記されている。各表の右側の列には、各置換インク量の合計値が記されている。
【0058】
このように、各有彩2次色インクR、Vの置換インク量は、3つのインク量のうちの2つのインク量がゼロより大きい値となり、1つのインク量がゼロとなる。すなわち、有彩2次色インクR、Vは、2つの有彩1次色成分に分解することができる。また、図5に示すインクセットでは、有彩1次色インクの混色を、各インク量の合計値よりも少ない量の有彩2次色インクに置換することが可能である。その結果、有彩2次色インクを積極的に用いることによって、より少ないインク量でほぼ同じ色相と彩度を再現することが可能である。また、インク量を減らすことによって、より高い明度を再現することも可能となる。さらに、有彩1次色インクの混色と同程度のインク量の有彩2次色インクを用いることによって、より高い彩度を再現することが可能である。そのため、利用するインク量の合計値に制限(インクデューティ制限)が課せられている場合(詳細は後述する)でも、有彩2次色インクを用いることによって、有彩1次色インクの混色で再現することが可能な彩度よりも高い彩度を再現することが可能である。このように、有彩1次色インクと有彩2次色インクとを利用することによって、有彩1次色インクのみで再現可能な範囲より広い範囲の色彩を再現することが可能となる。
【0059】
また、2つの有彩2次色インクR、Vは互いに色相が異なるインクである。さらに、これらのインクR、Vのそれぞれの主成分1次色インク、すなわち、CMY各色の置換インク量の中で値が最も大きい2つのインクは、その1つが互いに異なっている。図5の例では、レッドインクRの主成分1次色インクはマゼンタインクMとイエローインクYである。バイオレットインクVの主成分1次色インクはシアンインクCとマゼンタインクMである。この例では、イエローインクYとシアンインクCとが異なっている。その結果、2つの有彩2次色インクR、Vは、それぞれ色相の異なる領域の色再現範囲を拡張することができる。よって、互いに色相が類似した有彩2次色インクを用いる場合と比べて、より広い色再現範囲を再現することができる。
【0060】
さらに、図5(a)に示すインクセットでは、有彩2次色インクR、Vは、有彩1次色インクC、M、Yとは異なる色材を含有している。そのため、有彩1次色インクC、M、Yの混色の代わりに有彩2次色インクを用いることによって、有彩2次色インクに近い色相の再現性を向上させることができる。
【0061】
以上説明したハードウェア構成を有するプリンタ20は、紙送りモータ22により用紙PPを搬送しつつ、キャリッジ30をキャリッジモータ24により往復動させ、同時に印刷ヘッド28のピエゾ素子を駆動して、各色インク滴の吐出を行い、インクドットを形成して用紙PP上に多色多階調の画像を形成する。
【0062】
B.分版処理の第1実施例:
B1.色変換ルックアップテーブルの作成方法:
図6は、この実施例における色再現の処理手順を示すフローチャートである。ステップS10〜S70では、色再現を行うための色変換ルックアップテーブルLUT(図1)を作成している。
【0063】
まず、ステップS10では、印刷で使用する印刷媒体とインクセットとの組合せを1つ選択する。通常のプリンタでは、複数種類の印刷媒体(普通紙、光沢紙、マット紙など)の中から、ユーザによって選択された1つの印刷媒体を使用することを想定している。また、ある種のプリンタでは、使用するインクセットを、複数種類のインクセット(例えば染料インクセットと顔料インクセット)の中から選択できる場合がある。印刷物の色の再現性は、印刷媒体とインクセットに依存する。そこで、本実施例では、印刷媒体とインクセットの組合せ毎にステップS10〜S60の処理を実行して、その組合せに適した色変換ルックアップテーブルLUTをそれぞれ作成する。なお、プリンタ20において使用が想定されている印刷媒体の種類やインクセットの種類は、プリンタドライバ96の印刷条件設定のための画面(図示せず)に表示されるのが普通である。
【0064】
ステップS20では、1次色表色系で表された1次色階調値セットを、再現色表色系で表された第2の階調値セットに変換する分版処理を実行する。1次色表色系は、有彩1次色インクCMYの各色インク量で表される表色系であり、再現色表色系は、印刷時に用いる各色インクのインク量で表される表色系である。この1次色階調値セットは、複数の有彩1次色インクC、M、Yの各インク量で構成されている。各有彩1次色インクC、M、Yのインク量は、その取り得る最小値(ゼロ)から最大値(ベタ領域を再現するときのインク量)の範囲を、例えば、0〜255の256階調で表現した値である。この実施例においては、ベタ領域は全ての画素にインクを吐出することによって再現される。よって、このようなベタ領域を再現するときのインク量を100%とすることができる。
【0065】
このステップS20では、まず、複数の1次色階調値セットを準備する。これらの複数の1次色階調値セットの各有彩1次色インクC、M、Yのインク量は、その取り得る範囲(0%〜100%)の全体に分布していることが好ましく、全体に均一に分布することが特に好ましい。このようなインク量の複数の値としては、例えば、「0,25,50,75,100,125,150,175,200,225,255」の11個の値を用いることができる。なお、各インク量の階調値の変化に対する再現された色彩の見た目の変化が、各インクの階調値によって異なる場合がある。このような場合には、色彩の見た目の変化が大きい階調値の範囲ほど、より細かい間隔で各インクのインク量を準備することが好ましい。こうすることによって、見た目の色彩の変化に細かく対応した色変換ルックアップテーブルLUTを作成することができる。
【0066】
次に、これらの複数の1次色階調値セットを再現色表色系で表された第2の階調値セットに変換する。再現色表色系は、印刷時に用いるインクセットの各インク量、例えば、有彩1次色インクCMYと有彩2次色インクRVの各色インク量で表される表色系である。第2の階調値セットは、CMYRV各色のインク量について、その取り得る最小値(0%)から最大値(100%)の範囲を、例えば、0〜255の256階調で表現した値である。1次色表色系から再現色表色系への分版処理の詳細については後述する。
【0067】
ステップS30では、複数の1次色階調値セットに対応する複数種類のカラーパッチを作成する。図7は、本実施例において作成されるカラーパッチの一例を示す説明図である。縦軸は、上述のステップS20で準備された1次色階調値セットのマゼンタインクMの階調値、横軸はイエローインクYの階調値である。各カラーパッチは、各階調値をステップS20の分版処理に従って変換して得られたインクセットの各インク量で再現される。なお、図7の例は、1次色階調値セットにおけるシアンインクCの階調値をゼロに設定した場合について示している。実際には、シアンインクCの複数の階調値に対応した複数種類のカラーパッチが作成されるが、図示を省略している。このように、ステップS30では、上述のステップS20で準備された複数の1次色階調値セットに対応する複数種類のカラーパッチが作成される。
【0068】
ステップS40(図6)では、測色計を用いて、ステップ30で作成された複数のカラーパッチの測色を行う。測色の結果得られるデータは、プリンタやモニタ等のデバイスに依存しない表色系、例えば、L*a*b*表色系やXYZ表色系で表されたデータである。このように、ステップS40では、各カラーパッチの測色を行うことによって、1次色表色系と、デバイス非依存表色系との「1次色/デバイス非依存表色系の対応関係」を決定することができる。また測色の結果、デバイス非依存表色系における、プリンタ20が再現可能な色彩の範囲も確認することができる。
【0069】
ステップS50では、任意の第1の表色系と1次色表色系との対応関係を、上述のステップS40で得られた「1次色/デバイス非依存表色系の対応関係」に基づいて設定する。第1の表色系は、色変換ルックアップテーブルLUTの入力カラー画像データの表色系であり、例えば、sRGB表色系を用いることができる。このような第1の表色系とデバイス非依存表色系との「第1表色系/デバイス非依存表色系の対応関係」は予め設定されている。よって、この「第1表色系/デバイス非依存表色系の対応関係」と、ステップS40で得られた「1次色/デバイス非依存表色系の対応関係」とを用いることによって、第1の表色系と1次色表色系との対応関係を設定することができる。なお、第1の表色系での色再現範囲と、プリンタの色再現範囲とには、互いに重ならない部分が存在する場合がある。このような場合には、適宜、拡大縮小させた対応関係を設定することによって、互いの色彩領域の全体を有効に利用することが好ましい。
【0070】
こうして第1の表色系と1次色表色系との第1の対応関係(ステップS50)と、1次色表色系と再現色表色系との第2の対応関係(ステップS20)が設定されると、ステップS60において、設定された対応関係を再現するための色変換ルックアップテーブルLUT(図1)が作成される。本実施例における色変換ルックアップテーブルLUTは、RGB画像データを入力とし、図4に示す6つのインク色のための多階調画像データを出力とするものである。そこで、色変換ルックアップテーブルLUTを作成する際には、まず、RGB画像データの階調値に応じたCMYで表現されている1次色階調値セットが算出される。次に、この1次色階調値セットに応じた第2の階調値セット、すなわち、各インクのインク量が、後述する分版処理に従って決定される。そして、このRGB画像データの値を入力とし、各インクのインク量を出力とする対応関係がルックアップテーブルLUTに格納される。
【0071】
図6のステップS70では、プリンタ20で使用が想定されている印刷媒体とインクセットのすべての組合せについてステップS10〜S60の処理が完了したか否かが判断される。すべての処理が完了していない場合には、ステップS10〜S60の処理が繰り返され、完了している場合には次のステップS80に移行する。
【0072】
ステップS80では、作成された複数種類の色変換ルックアップテーブルLUTがプリンタドライバ96(図1)に組み込まれる。プリンタドライバ96は、プリンタ20に供給される印刷データPDを作成する機能をコンピュータ90に実現させるためのコンピュータプログラムである。色変換ルックアップテーブルLUTは、プリンタドライバ96が参照するデータとして、プリンタドライバ96とともにコンピュータ90にインストールされる。なお、色変換ルックアップテーブルLUTが組み込まれたプリンタドライバ96は、通常は、プリンタ20の製造元によって供給される。
【0073】
図6のステップS90では、ユーザがプリンタ20を用いて印刷を実行する。この際、印刷媒体とインクセットのすべての組合せに関する色変換ルックアップテーブルLUTの中から、実際の印刷に使用する印刷媒体とインクセットの組に適したルックアップテーブルが選択されて、印刷が実行される。実際の印刷に使用する印刷媒体とインクセットの組は、プリンタドライバ96の印刷条件設定のための画面(図示せず)において、ユーザによって選択される。
【0074】
B2.第1実施例における分版処理の詳細:
図8は、分版処理の処理手順を示すフローチャートである。この分版処理では、1次色表色系から再現色表色系への変換処理を実行している。図8のステップS500では、使用可能なインクとして、有彩1次色インクC,M,Yと有彩2次色インクR,Vとで構成されるインクセットを設定する。
【0075】
次に、ステップS510では、入力色I(Ci,Mi,Yi)に対応する再現色RECを決定する(詳細は後述する)。
【0076】
次に、ステップS520では、この再現色RECに基づいて、分版インク量セットO(Co,Mo,Yo,Ro,Yo)が決定される(詳細は後述する)。ステップS530では、ルックアップテーブルを作成するために必要とされるすべての再現色についてステップS510,S520の処理が終了したか否かが判定される。そして、すべての再現色についての処理が終了するまでステップS510,S520の処理が繰り返される。
【0077】
図9は、図8のステップS510において再現色を設定する様子の概略を示す説明図である。図9の例では、説明を簡略化して行うために、有彩1次色インクとしてシアンインクCとマゼンタインクMの2種類が利用可能であり、有彩2次色インクとしてバイオレットインクVの1種類が利用可能であるものとしている。
【0078】
図9(a)は、CM各色のインク量を基準ベクトルとして表される1次色色空間を示す説明図である。横軸はシアンインクCの階調値を示し、縦軸はマゼンタインクMの階調値を示している。この例では、CMVの各色の階調値は0〜100の範囲の値を取り得ることとしている。階調値=0はインク量がゼロであることを意味し、階調値=100はベタ領域を再現するときのインク量を意味している。よって、1次色表色系で表された入力色Iは、1次色色空間において一辺の長さが100の正方形内の一点として表現される。以下、1次色色空間における入力色Iが表現される領域を入力色表現領域と呼ぶ。図9(a)では、入力色表現領域INAがハッチングを付して記されている。また、入力色表現領域INAの第1種の外殻線OL10が太線で記されている。
【0079】
図9(b)は、再現色のための色の再現範囲を設定する様子を1次色色空間を用いて説明する説明図である。再現色は、入力色に応じて設定される色であり、有彩1次色インクCMと有彩2次色インクVとを用いて再現される色である。
【0080】
ここで、シアンインクCとマゼンタインクMの1:2の混色は、シアンインクCと同じインク量のバイオレットインクVと、ほぼ同じ色相と彩度を再現することが可能であるものとする。すなわち、バイオレットインクVに対する置換インク量が、シアンインクC=1、マゼンタインクM=2である。例えば、図9(b)の色P10は、C=50、M=100に設定することによって再現することが可能な色である。また、CMの各色の階調値の少なくとも一部を置換インク量に従ってVの階調値に置換してもほぼ同じ色を再現することが可能である。例えば、「C=25、M=50、V=25」や「C=0、M=0、V=50」に設定しても、ほぼ、同じ色を再現することができる。ここで、有彩2次色インクVの階調値の全てを有彩1次色インクCMの階調値に置換して得られる階調値(この例では、C=50、M=100)は、CMV各色を用いて再現される色を1次色色空間で表現するための仮想的な階調値として用いることができる。
【0081】
図中の領域MAXAは、CMV各色を用いて再現可能となる色の最大限の領域を示すものである(以下、最大色表現領域MAXAと呼ぶ)。例えば、図中の色P20は、「C=100、M=100、V=100」に設定することによって再現される色であり、仮想的な階調値「C=200、M=300」で表現されている。また、外殻線OL20は、最大色表現領域MAXAの外殻を示している。
【0082】
この最大色表現領域MAXAは、入力色表現領域INAと比べて広くなっている。有彩2次色インクVは有彩1次色インクCMと比べて彩度が高いという特徴がある。従って、有彩2次色インクVを用いることによって、再現可能な色の再現範囲を、より彩度の高い範囲へ拡張することができる。
【0083】
本実施例では、このような最大色表現領域MAXAのうち、以下の制限を満たす領域内に再現色を設定する。
【0084】
(条件a10)CD≦C_Limit1
(条件a20)MD≦M_Limit1
【0085】
CD,MDは、それぞれ、再現色におけるC,M各色成分の階調値である。C_Limit1,M_Limit1は、それぞれ、CD,MDの制限値であり、予め設定された値である。ここで、2つの制限値C_Limit1,M_Limit1は、C、M各色成分の実際の階調値の最大値(この例では100)よりも大きい値に設定されている。さらに、これらの制限値C_Limit1,M_Limit1は、外殻線OL20で囲まれた最大色表現領域MAXAにおけるC,Mの階調値の最大値よりも小さい値に設定されている。
【0086】
図中には、最大色表現領域MAXAのうち、上述の条件(条件a10、a20)を満たす領域の外殻線OL30が太線で記されている。本実施例では、この外殻線OL30で囲まれる領域内に再現色が設定される(以下、再現色が設定される領域を再現色表現領域と呼ぶ)。図中では、再現色表現領域REAは、ハッチングを付して記されている。このようにして設定された再現色表現領域REAは、1次色色空間における入力色表現領域INA(図9(a))よりも広く、さらに、3つのインクCMVで再現され得る最大限の最大色表現領域MAXAよりも狭い領域である。ところで、同じインクセットを用いる場合には、より彩度の高い色は、より多くのインクを用いて再現される。図9においては、より彩度の高い色の点は、より階調値の大きい一点、すなわち、原点Wからの距離が遠い一点で表される。従って、再現色表現領域REAは、入力色表現領域INAと比べて彩度の範囲が広く、最大色表現領域MAXAと比べて彩度の範囲が狭いと考えることができる。
【0087】
このように、本実施例においては、上述の条件a10、a20によって、再現色の彩度が、入力色表現領域INAよりも広く、最大色表現領域MAXAよりも狭い彩度の範囲に制限される。従って、条件a10、a20は、本発明における彩度制限と考えることができる。このように、彩度制限として、有彩2次色インクによって色の再現範囲が彩度の高い方向へ広がるときに、その再現範囲の拡張を制限する条件を用いることができる。
【0088】
図10は、色の再現範囲の拡張される割合を説明する説明図である。図10(a)は、図9(b)と同じ1次色色空間を示す説明図であり、図中には、外殻線OL10〜OL30が記されている。また、図中には、各外殻線OL10〜OL30上の色と原点Wとの距離L10〜L30が記されている。これらの距離L10〜L30は、同じ方向を有するベクトルで表される色に関する距離である。また、図10(a)には、ベクトルの方向とC軸の方向とがなす角度θが記されている。
【0089】
図10(b)は、距離L10〜L30と角度θとの関係を示すグラフである。横軸は角度θを表し、縦軸は、各距離L10〜L30の距離L10に対する割合LRを表している。
【0090】
角度θは、ベクトルがC軸方向を向くときが0°でM軸方向を向くときが90°となるように定義されており、CMの各色成分の比率で決まる値である。また、角度θが0°に近いほど、その色の色相はシアンインクCの色相に近づき、角度θが90°に近いほど、その色の色相がマゼンタインクMの色相に近づく。従って、角度θは、色相を表す指標として考えることができる。
【0091】
距離L10は、原点Wから第1種の外殻線OL10(図10(a))までの距離であり、有彩1次色インクCMのみを用いた場合の色の表現領域の外殻に対応する距離である。従って、この距離L10に対する距離L20の割合LR2(=L20/L10)は、最大色表現領域MAXA(図9(b))に関する彩度の拡張割合を意味すると考えることができる。同様に、距離L10に対する距離L30の割合LR3(=L30/L10)は、再現色表現領域REA(図9(b))に関する彩度の拡張割合を意味すると考えることができる。
【0092】
なお、図10(b)に記される点P50〜P56は、図10(a)の外殻線OL20上の点との対応関係を示すものであり、図10(a)の外殻線OL20上に記された点P50〜P56にそれぞれ対応している。
【0093】
図10(b)の例では、最大色表現領域MAXA(図9(b))に関する彩度の拡張割合LR2が、色相が有彩2次色インクVの色相に近いほど大きくなっている。一方、再現色表現領域REA(図9(b))に関する彩度の拡張割合LR3は、色相が有彩2次色インクVの色相に近いときでも、極端に大きくならないように構成されている。従って、再現色RECを外殻線OL30で囲まれた再現色表現領域REA内に設定すれば、有彩2次色インクVの色相に近い色であっても、その彩度が他の色と比べて極端に高くなることを抑制することができる。
【0094】
このように、再現色RECが彩度制限(条件a10、a20)を満足する再現色表現領域REA(図9(b))内に設定される理由は、以下の通りである。有彩2次色インクVは、有彩1次色インクと比べて彩度が高いという特徴がある。従って、有彩2次色インクVを用いることによって、色相が有彩2次色インクVの色相に近いほど、色再現範囲を彩度の高い方向へ広げることが可能となる。ところで、印刷画像には、自然画のように様々な色を用いて表現される画像がある。このような画像を最大色表現領域MAXAの全体を用いて出力すると、有彩2次色インクに近い色相を有する領域の彩度が極端に高くなり、その領域が不自然に目立つ可能性がある。また、色相が滑らかに変化するグラデーション領域において、有彩2次色インクに近い色相を有する部分の彩度が極端に高くなり、他の部分との境界が目立つ可能性もある。従って、有彩2次色インクを用いて色の再現範囲の拡張を図る場合には、彩度の拡張される割合を制限することが好ましい。そこで、図9、図10の例では、色相が有彩2次色インクVに近い場合であっても、再現色表現領域が彩度の極端に高い領域にまで拡張されないような彩度制限(条件a10,a20)を課している。こうすれば、印刷画像の中の一部の領域を不自然に目立たせることなく、色の再現範囲を拡張することができる。
【0095】
ここで、彩度の拡張される割合LR3は、過度に大きくならないように制限することが好ましい。色相が有彩2次色インクから遠い色については、有彩2次色インクを用いる場合でも、その彩度がほとんど拡張されない。そこで、彩度の拡張割合LR3を過度に大きくない値に制限すれば、色相が有彩2次色インクに近い色と遠い色との彩度の差が極端に大きくなることを抑制することができる。例えば、彩度の拡張割合LR3は、2.5以下であることが好ましく、2以下であることが特に好ましく、1.5以下であることが最も好ましい。一方、色再現範囲の拡張を図るためには、なるべく大きい値に設定することが好ましい。図9、図10の例では、彩度の拡張割合LR3に対する制限は、有彩1次色インクCMの各色成分の制限値C_Limit1,M_Limit1に応じて決まる。例えば、制限値C_Limit1,M_Limit1を、CM各色成分の実際の階調値の最大値(この例では100)の1.5倍の値に設定すれば、割合に対する制限値を1.5に設定することができる。
【0096】
また、割合に対する制限値は、色相に係わらず一定とすることが好ましい。こうすることによって、制限値の変化に伴って彩度が変化する部分が不自然に目立つことを抑制することができる。図9、図10に示す例では、制限値C_Limit1,M_Limit1が同じ値に設定されているので、割合に対する制限値が色相に係わらず一定となっている。
【0097】
以上で説明した再現色表現領域REAは、インクの種類が増えた場合にも同様に設定することができる。例えば、有彩1次色インクとしてのCMY3種類のインクと、有彩2次色インクとしてのRV2種類のインクを利用可能なときには、有彩2次色インクRVの階調値を有彩1次色インクCMYの階調値に置換して得られるCMY各色のそれぞれの仮想的な階調値に対する制限値を、彩度制限として用いることができる。こうすることによって、CMY各色の仮想的な階調値が有彩2次色インクに近い色相を有する色についてのみ極端に大きくなることを抑制することができる。その結果、有彩2次色インクに近い色相を有する色の彩度が極端に高くなることを抑制し、印刷画像の中の一部の領域を不自然に目立たせることなく、色の再現範囲を拡張することができる。
【0098】
入力色Iに対応する再現色RECは、上述の様に設定された再現色表現領域REA内に設定される。通常は、複数の代表的な入力色Iと複数の再現色RECとの対応関係を最初に定めておき、他の入力色Iに対応する再現色RECは、代表的な入力色に関する対応関係を補間することによって、設定することができる。ここで、予め準備しておく複数の対応関係としては、複数の入力色Iが入力色表現領域INA内のほぼ全域に分布するとともに、これら複数の入力色Iにそれぞれ対応する複数の再現色RECが再現色表現領域REA内のほぼ全域に分布するように構成することが好ましい。こうすることによって、再現色RECを入力色Iの色彩にかかわらず精度良く求めることができるとともに、再現色表現領域REAを有効に活用することができる。また、入力色Iと再現色RECの色相は、ほぼ同じとなるように設定することが好ましい。色相を表す指標としては、例えば、有彩1次色インクの各色の階調値の比率を用いることができる。また、再現色の色相を表す指標としては、仮想的な階調値の比率を用いることができる。
【0099】
図8のステップS520では、上述のように再現色表現領域REA内に設定された再現色RECを印刷媒体上で再現するための分版インク量セットO(Co,Mo,Yo,Ro,Vo)を算出する。任意の再現色RECのための分版インク量セットとしては無数のものがあり得るので、特定の条件を設けることによって分版インク量セットを決定する。例えば、本実施例では、合計インク量が最小になるように、分版インク量セットO(Co,Mo,Yo,Ro,Vo)を決定する。
【0100】
このように、第1実施例では、彩度制限によって、再現色表現領域REAのうちの有彩2次色インクに近い色相に対応する領域が、極端に彩度の高い範囲にまで拡張されないように設定される。その結果、印刷画像の中の一部の領域を不自然に目立たせることなく、色の再現範囲を拡張することができる。
【0101】
C.分版処理の第2実施例:
図11は、第2実施例の処理手順を示すフローチャートである。本実施例では、彩度制限に加えて、印刷媒体の単位面積当たりのインク吸収量の制限に対応するインクデューティ制限を満たすように再現色が設定される。
【0102】
図11のステップS100では、使用可能なインクセットとして有彩1次色インクC、M、Yと有彩2次色インクR、Vからなるインクセットを設定している。
【0103】
次に、ステップS110では、インクセットの各色のインク量の制限であるインクデューティ制限を設定する。このインクデューティ制限はインクや印刷媒体の種類に応じて設定される(詳細は後述)。
【0104】
ところで、1次色表色系で表された入力色は、CMY各色のインク量の取り得る範囲(0%〜100%)を0〜255の256階調で表現した階調値(1次色階調値セット)を用いて表現されている。また、再現色表色系で表された分版インク量セットは、CMYRV各色のインク量の取り得る範囲(0%〜100%)を0〜255の256階調で表現した階調値を用いて表現されている。
【0105】
図12(a)(b)は、CMY各色のインク量を基準ベクトルとして表される1次色色空間を示す説明図である。1次色表色系で表された色は1次色色空間においてCMYの階調値0〜255で表される立方体中の一点として表現される。また、この立方体は、有彩1次色インクのCMY各色のインク量が値を取り得る領域である。以下、この立方体を色立体と呼び、色立体の6つの表面のうちで、原点Wに対向する3つの表面(K(C=M=Y=100%)を取り囲む3つの表面)、を第1種の外殻面と呼ぶ。換言すれば、第1種の外殻面は、少なくとも1つの有彩1次色のインク量が100%であり、かつ、少なくとも1つの有彩1次色インクのインク量が100%よりも小さい値を有する色の点で構成されている。なお、原点Wと点Kとを結ぶ直線を無彩色線と呼ぶときに、1次色色空間中の一点と無彩色線との距離は、彩度の指標として用いることができる。また、1次色色空間中の一点を無彩色線上に垂直に投影して得られる点を投影点と呼ぶときに、原点Wと投影点との距離は、明度の指標として用いることができる。また、投影点から1次色色空間中の一点へと向かう方向は色相の指標として用いることができる。
【0106】
図12(a)(b)には、Yが最大(Y=255)となる第1種の外殻面にハッチングが付されている。さらに、ハッチングが付された第1種の外殻面上に1つの色mが記されている。この色mは、図11のステップS120において最外殻有彩色mとして設定される。図12(a)(b)の例では、最外殻有彩色mはY成分が最大となる外殻面上に設定されており、そのCMY各色の階調値は、CMYの順にCm、Mm、Ymとなっている(この例では、Ym=255)。
【0107】
本実施例の分版処理においては、後述するステップS130〜S140の処理を順次実行することによって、原点Wと最外殻有彩色mとを結ぶ線分上の入力色Iに対応付けられる分版インク量セット(本実施例ではCMYRV各色の階調値)を得ることができる。また、本実施例では、複数の入力色Iに対する分版処理を実行するために、複数の最外殻有彩色が準備され、各最外殻有彩色に対して一連の処理(S130〜S140)が実行される。
【0108】
図11のステップS130では、さらに、インクセットのCMYRV各色のインクを利用することによって再現可能な色彩領域の外殻に位置する拡張有彩色emを求めている(図12(b))。
【0109】
図13は、拡張有彩色emを算出する様子の概略を示す説明図である。図13の例では、図9の例と同じ2つの有彩1次色インクCMと、1つの有彩2次色インクVとを利用可能であるものとして説明している。
【0110】
図13(a)は、図9(a)と同様の1次色色空間を示す説明図である。1次色表色系で表された入力色Iは一辺の長さが100の正方形内の一点として表現される。この正方形は上述の色立体に相当する。また、図中には、正方形の第1種の外殻線OL1が太線で記されている。この第1種の外殻線OL1は上述の第1種の外殻面に相当する。この第1種の外殻線OL1のCが最大(C=100)となる線上には、最外殻有彩色mが設定されている。
【0111】
図13(b)は、再現色のための再現色表現領域Aを設定する様子を1次色色空間を用いて説明する説明図である。再現色は、有彩1次色インクCMに加えて、有彩2次色インクVを用いることによって再現することが可能な色である。拡張有彩色emは、再現色表現領域Aの外殻位置に設定される。なお、図13(b)の例では、再現色表現領域Aは、以下の条件を満たす領域に制限されている。
【0112】
(条件a1)CD≦C_Limit2
(条件a2)MD≦M_Limit2
(条件b1)各インクの階調値が100以下である。
(条件b2)各インクの階調値の合計値が200以下である。
【0113】
2つの条件a1、a2は、図9の例の条件a10、a20と同様の条件であり、本発明における彩度制限に相当するものである。
【0114】
残りの2つの条件b1、b2による階調値の制限は、以下のように説明することができる。すなわち、印刷媒体には単位面積当たりのインク吸収量に制限がある。この制限を越えた量のインクを吐出すると、吸収しきれなかったインクによって滲みが生じたり、印刷媒体が波打ったりする場合がある。そのため、利用するインク量に制限を設けるのが好ましい。このようなインク量の上限値、すなわち、階調値の上限値は、インクデューティ制限と呼ばれる。また、インクデューティ制限の適切な値は、インクの種類に応じて異なる場合がある。このような場合には、各色ごとに異なる制限値を設定することによって、印刷画像の画質をさらに向上させることができる。また、条件b2のように、各色の階調値の合計値(すなわちインク量の合計値)に制限値を設けることによって、印刷媒体のインク吸収量の制限を越えた量のインクを吐出することを抑制することができる。さらに、2色の混色で再現する領域のために、任意の2つの種類のインク量の合計値に制限値を設けることも好ましく、さらに、多くの種類のインク量の合計値に制限値を設定することも好ましい。また、これらの制限値を、印刷媒体の種類に応じて変えれば、印刷画像の画質を印刷媒体の種類に応じて向上させることもできる。
【0115】
このようなインクデューティ制限は、使用可能なインクCMVの各色の階調値で表現されるが、置換インク量を用いて得られるCM各色の仮想的な階調値を用いることによって1次色色空間に表現することができる。本実施例では、インクデューティ制限はCMV各色の階調値を用いた1次不等式で表される(図13(b))。従って、インクデューティ制限は1次色色空間において直線を用いて表される。
【0116】
再現色表現領域Aは、インクデューティ制限に対応する直線と、彩度制限に対応する直線とで囲まれた領域で表される。図13(b)において、直線LCは、C=100となる直線を示している。C軸に対して傾いているのは、バイオレットインクVを用いることによって、CM各色の仮想的な階調値をさらに大きくすることができるからである。よって、C≦100を満たす領域はこの直線LCの内側となる。また、直線LCVは、C+V=200となる直線である。この直線は、C≦100、V≦100の2つの制限から導かれるC+V≦200という制限に対応している。C+V≦200を満たす領域はこの直線LCVの内側となる。
【0117】
さらに、図13(b)には、インクデューティ制限に対応する以下の直線が示されている。すなわち、直線LCMVは、C+M+V=200となる直線であり、直線LMVは、M+V=200となる直線であり、直線LMは、M=100となる直線である。また、直線LCLimは彩度制限a1に対応する直線であり、直線LMLimは彩度制限a2に対応する直線である。
【0118】
この結果、これらの直線で囲まれた再現色表現領域A内の色が、インクデューティ制限と彩度制限とを満たす色であり、有彩2次色インクVを用いることによって再現可能となる。
【0119】
インクデューティ制限に対応する直線LCV、LCMV、LMVと原点Wとの距離は有彩2次色インクの置換インク量に応じて変わる値である。すなわち、置換インク量が多いほど、各インクデューティ制限に対応する直線と原点Wとの距離が大きくなる。その結果、置換インク量が多いほど、有彩1次色インクと有彩2次色インクを利用することによって再現可能となる領域が広くなる。そのため、再現可能な領域拡張の点からは、置換インク量の合計値は、1より大きいことが好ましく、1.5以上であることが特に好ましい。図13の例では、バイオレットインクVの置換インク量が、シアンインクC=1、マゼンタインクM=2としたので、置換インク量の合計値は3となる。また、図5のインクセットの例では、レッドインクRの置換インク量はCMYの順に0.0、0.71、2.86であり、合計値は3.57となる。またバイオレットインクVの置換インク量はCMYの順に0.68、2.89、0.0であり、合計値は3.57となる。2つのインクRVの置換インク量の合計値はいずれも1.5以上であるので、これらのインクR、Vを用いることによって、より広い色再現範囲を得ることができる。また、各有彩1次色インクの置換インク量の合計値が1よりも大きい場合には、有彩2次色インクは、有彩1次色インクの混色と同程度のインク量を用いることによって、より高い彩度を再現することが可能である。こうすれば、有彩1次色インクと有彩2次色インクとを利用することによって、有彩1次色インクのみで再現可能な領域よりも広い範囲の色彩を再現することが可能となる。
【0120】
本明細書では、このような、再現色表現領域の外殻を再現色外殻面と呼ぶ。再現色外殻面はインクセットの各インク量のための再現色表色系で表されるものであるが、有彩2次色インクの各インク量を置換インク量に従って有彩1次色インクのインク量に置換することによって、1次色表色系内に写像することができる。図13(b)の例では、再現色表現領域Aの外殻を構成する外殻線OL3が、1次色色空間に写像された再現色外殻面に相当する(以後、外殻線OL3を再現色外殻線OL3と呼ぶ)。なお、V≦100の条件については、この再現色表現領域A内であれば満たされているので、対応する直線の図示を省略している。
【0121】
図13において、再現色表現領域Aにはハッチングが付され、再現色外殻線OL3が太く表示されている。このような彩度制限とインクデューティ制限とを満たす再現色表現領域A内に再現色を設定すれば、有彩1次色インクのみを用いるときと比べてより広い色再現範囲を実現し、色相が有彩2次色インクに近いときでも極端に彩度が高い再現色が発生することを抑制するとともに、滲みが生じたり印刷媒体が波打つことを抑制することができる。
【0122】
また、再現色外殻線OL3上には、拡張有彩色emが設定されている。拡張有彩色emは、原点Wと最外殻有彩色mとを通る線分と、再現色外殻線OL3との交点に位置する色である。すなわち、本実施例では、拡張有彩色emは、1次色色空間において最外殻有彩色mを表す最外殻有彩色ベクトルと同一の方向を有する最も長い拡張有彩色ベクトルで表される色であるとともに、彩度制限を満たし、さらに、拡張有彩色emを再現するための最外殻分版インク量セットがインクデューティ制限を満たす色である。
【0123】
以上、説明した拡張有彩色は、インクの種類が増えた場合にも同様に設定することができる。ここで、拡張有彩色emを1次色色空間で表現するための仮想的な階調値を、CMY各色の順にCDem、MDem、YDemとする。また、拡張有彩色emに対応する分版インク量セット(最外殻分版インク量セットに相当する)の各インク量をCMYRVの順にCem、Mem、Yem、Rem、Vemとする。すると、仮想的なCMY各色の階調値CDem、MDem、YDemは、図5(b)(c)に示す置換インク量を用いて、以下の式で表される。
【0124】
【数1】
Figure 0004403709
【0125】
また、本実施例では、以下に示す条件を満たすように拡張有彩色emが算出される。
【0126】
(条件1)最外殻分版インク量セットがインクデューティ制限を満たす。
(条件2)拡張有彩色が彩度制限を満たす。
【0127】
インクデューティ制限としては、例えば、全種類のインク量の合計値の制限や、各色単独のインク量の制限、2色を混色するためのインク量の制限等を設定することができる。
【0128】
全種類のインク量の合計値の制限については、例えば、次式で表される。
【0129】
【数2】
Figure 0004403709
【0130】
数式中、C、M、Y、R、Vは、それぞれ、CMYRV各色のインク量である(後述する他の数式でも同様である)。また、Duty_Tは、インクや印刷媒体の種類に応じて予め設定された制限値である。
【0131】
各色単独のインク量の制限については、例えば、次式で表される。
【0132】
【数3】
Figure 0004403709
【0133】
Duty_C〜Duty_Vは、インクや印刷媒体の種類に応じて各色のために予め設定された制限値である。
【0134】
2色を混色する際のインク量の制限については、例えば、次式で表される。
【0135】
【数4】
Figure 0004403709
【0136】
なお、この制限においては、任意の2つのインクの組み合わせについて制限が課せられるが、その中の6つの組み合わせについて例示している。Duty_CM〜Duty_MRは、インクや印刷媒体の種類に応じて各インクの組み合わせのために予め設定された制限値である。
【0137】
なお、インクデューティ制限としては、3色の混色、4色の混色等、任意の種類のインクの組み合わせに対する制限を設定しても良い。
【0138】
また、彩度制限については、例えば、CMY各色の仮想的な階調値に対する制限を設定することができ、このような設定は次式で表される。
【0139】
【数5】
Figure 0004403709
【0140】
数式中、CD、MD、YDは、それぞれ、CMY各色の仮想的な階調値である。また、C_Limit、M_Limit、Y_Limitは、予め設定された制限値である。これらの制限値も、インクデューティ制限と同様に、インクや印刷媒体の種類に応じて変えれば、インクや印刷媒体の種類に応じて適切に彩度を制限することができる。
【0141】
以上のようなインクデューティ制限(条件1)と彩度制限(条件2)は、置換インク量を用いて得られるCMY各色の仮想的な階調値を用いて、図12に示す1次色色空間において面で表現することができる(図示せず)。これらの面で囲まれた領域は、インクデューティ制限と彩度制限を満たす領域である。よって、CMYRV各色のインク量で表された色のCMY各色の仮想的な階調値がこれらの面で囲まれた領域内にあれば、各インク量がインクデューティ制限と彩度制限とを満たすことができる。
【0142】
図12(b)には、拡張有彩色emが示されている。拡張有彩色emは、インクデューティ制限(条件1)と彩度制限(条件2)とを満たす領域の外殻面、すなわち、再現色外殻面(図示せず)に位置している。また、拡張有彩色emは、原点Wと最外殻有彩色mとを通る線分上に位置する。すなわち、拡張有彩色emは、原点Wと最外殻有彩色mとを通る線分と、再現色外殻面とが交わる位置にある色である。換言すれば、拡張有彩色emは、1次色色空間において最外殻有彩色mを表す最外殻有彩色ベクトルと同一の方向を有する最も長い拡張有彩色ベクトルで表される色であるとともに、彩度制限を満たし、拡張有彩色emを再現するための最外殻分版インク量セットがインクデューティ制限を満たす色である。
【0143】
このような拡張有彩色emは種々の方法を用いて算出することが可能である。例えば、1次色色空間において彩度制限(条件2)を満足する色を選択し、有彩1次色インクから有彩2次色インクへの置換を行って分版インク量セットを算出し、分版インク量セットがインクデューティ制限(条件1)を満足するか否かを判定する、という一連の処理を繰り返し実行することによって、逐次近似的に算出することができる。また、置換インク量やインクデューティ制限(条件1)、彩度制限(条件2)の各式等に基づき、いわゆる線形計画法を用いて算出することもできる。この場合には、一連のステップS120〜S130(図11)が一度に実行されることとなる。
【0144】
以上のように、インクデューティ制限(条件1)と彩度制限(条件2)とを満たす拡張有彩色em(最外殻分版インク量セット)を算出することによって、その色を印刷したときの画質が良好な範囲内で、色相が有彩2次色インクに近い場合であっても極端に彩度が高くなく、最外殻有彩色mと同じ方向に位置する最も階調値の大きい拡張有彩色emを得ることができる。
【0145】
図11のステップS140では、入力色I(図12)に対応する分版インク量セットOの算出を行う。このステップS140では、まず、拡張有彩色emに対する最外殻分版インク量セットempの算出を行う。最外殻分版インク量セットempは、上述のステップS130において拡張有彩色emを算出する際に、インクデューティ制限(条件1)を満たすか否かの判断のために既に算出されている値である。ただし、利用可能なインクの種類が多い場合には、有彩1次色インクと有彩2次色インクとの置換の自由度が高くなる。そのため、拡張有彩色emに対応する最外殻分版インク量セットempとして、インクデューティ制限(条件1)を満たす範囲において複数種類のインク量の組み合わせを選択することができる場合がある。このような場合には、本実施例では、複数の組み合わせの中から、各インク量の合計値が最も小さい組み合わせを選択して最外殻分版インク量セットempとして用いている。
【0146】
次に、最外殻分版インク量セットに基づいて分版インク量セットOの算出を行う。図12(c)は、入力色Iと分版インク量セットOとの関係の概略を示す説明図である。本実施例では、入力色Iが示すベクトルの長さLLIと、最外殻有彩色mが示すベクトルの長さLLmの比を、最外殻分版インク量セットempに乗じることによって算出した比例分版インク量セットを、分版インク量セットOとして用いる。このとき、最外殻有彩色mに対応する分版インク量セットは最外殻分版インク量セットempとなる。原点Wと最外殻分版インク量セットempとの間の色はインクデューティ制限を満たすことが可能であるので、印刷媒体とインクセットの特定の組み合わせで再現可能である。また、原点Wと最外殻分版インク量セットempとの間の色は彩度制限を満たすので、色相が有彩2次色インクに近いときであっても、その彩度が極端に高くなることを抑制することができる。よって、印刷媒体とインクセットの特定の組み合わせで再現可能な色の範囲を有効に利用することができる。また、このように長さLLIに比例するように分版インク量セットOを算出することによって、入力色Iに対する分版インク量セットOを容易に算出することができる。
【0147】
こうして、ステップS100〜S140の処理を順次実行することによって、1次色表色系で表された入力色Iに対応する再現色表色系で表された分版インク量セットOが算出される。また、分版インク量セットOは、入力色Iや長さLLI、LLmとの関係に加えて、置換インク量やインクデューティ制限(条件1)、彩度制限(条件2)の各式等に基づき、線形計画法を用いて直接算出することもできる。この場合には、一連のステップS120〜S140が一度に実行されることとなる。このようにして得られた分版インク量セットOは、図6のステップS20における第2の階調値セットとして用いることができる。なお、分版インク量セットOで再現される色が、入力色Iに対応付けられた再現色(印刷媒体上に再現される色)に相当する。
【0148】
図11のステップS150では、全ての入力色に対する分版インク量セットが算出されたか否かの判断がされる。すべての分版インク量セット算出が完了していない場合には、ステップS120〜S140の処理が繰り返され、完了している場合には処理を終了する。
【0149】
なお、分版処理に必要な時間をより短くするためには、一連の処理を実行するための最外殻有彩色の数を制限することが好ましい。このとき、分版処理を行いたい入力色に対応する最外殻有彩色が無い場合には、その入力色に近い複数の色の分版インク量セットを補間して、対応する分版インク量セットを求めることができる。また、このとき、最外殻有彩色を、最外殻有彩色と原点Wとを結ぶ直線が色立体中の全範囲に分布するように、予め複数準備するのが好ましい。こうすることによって、色立体中の特定の領域において、分版インク量セットの補間誤差が大きくなることを抑制することができる。
【0150】
以上のように、本実施例では、拡張有彩色emおよび最外殻分版インク量セットの決定が、以下の3つの条件、
(i)最外殻分版インク量セットがインクデューティ制限内である、
(ii)拡張有彩色が彩度制限内である、
(iii)インクセットで再現可能な範囲で拡張有彩色ベクトルの長さが最も長くなる、
(iv)拡張有彩色emを再現するための最外殻分版インク量セットのインク量の合計が最も少なくなる、
を満たすように実行されている。なお、これら全ての条件を満たしていなくても、拡張有彩色emが最外殻有彩色mよりも彩度が高い色であれば、色再現範囲を拡張することができる。例えば、条件(iii)を満たしておらず、拡張有彩色ベクトルが最長でない場合でも、最外殻有彩色ベクトルよりも長くなるように構成されていれば、色再現範囲を拡張することができる。
【0151】
また、色再現範囲をより広い色相範囲において拡張するためには、より広い色相範囲において、拡張有彩色ベクトルが最外殻有彩色ベクトルよりも長くなるようにすることが好ましい。ここで、拡張有彩色ベクトルを延長することができる色相の範囲は、使用可能な有彩2次色インクの色相に応じて変わる範囲である。有彩2次色インクは、そのインクの色相に近い色相を有する領域の色再現範囲を拡張することができる。そのため、互いに色相の異なるより多くの種類の有彩2次色インクを使用可能とすることによって、より広い色相範囲において、拡張有彩色ベクトルが最外殻有彩色ベクトルよりも長くなるようにすることができる。また、このときも、彩度制限を満たすように拡張有彩色を設定することによって、拡張有彩色の色相が有彩2次色インクに近い場合でも、極端に彩度の高い拡張有彩色を設定することを抑制することができる。
【0152】
以上説明したように、本実施例では、有彩1次色インクと有彩2次色インクとを用いて再現することが可能な色彩の範囲を有効に利用した分版処理を行っている。そのため、色再現範囲を拡張させた印刷を行うことができる。また、原点と最外殻有彩色とを結ぶ直線と再現色外殻面との交点に位置する拡張有彩色に基づいた分版処理を行っているので、使用可能なインクの種類が増えた場合でも、容易に分版処理結果を得ることができる。また、彩度制限を満たす範囲内に再現色が設定されるので、色相が有彩2次色インクに近いときに彩度の極端に高い色が発生することを抑制することができる。その結果、印刷画像の中の一部の領域を不自然に目立たせることなく、色の再現範囲を拡張することができる。
【0153】
D.分版処理の第3実施例:
図14は、分版処理の第3実施例の処理手順を示すフローチャートである。上述の図11の分版処理実施例との差異は、ブラックインクKを用いた下色除去(UCR:Under Color Removal)処理S220を実行している点である。本実施例のUCR処理は、有彩1次色インクC、M、Yの階調値の一部をブラックインクKの階調値に置換する処理である。UCR処理は、周知の種々の方法によって実現可能であるため、ここでは詳細な説明を省略する。
【0154】
ステップS200では、使用可能なインクセットとして、有彩1次色インクC、M、Yと有彩2次色インクR、VとブラックインクKからなるインクセットを設定している。
【0155】
次に、ステップS210では、インクセットの各色のインク量の制限であるインクデューティ制限を設定する。上述の図11に示す実施例におけるインクデューティ制限との差異は、ブラックインクKのインク量を考慮して設定されている点である(詳細は後述)。
【0156】
次に、ステップS220では、分版処理の対象となる入力色(例えば、図6のステップS20では1次色階調値セットで表現されている)に対し、UCR処理を実行する。その結果、CMYK各色の階調値Ci、Mi、Yi、Kiで表現された入力色Iが得られる。本実施例では、これらの階調値のうちのCMY各色の階調値Ci、Mi、Yiに対して、拡張有彩色emを用いた分版処理を実行する。一連の処理S230〜S260は、図11に示す実施例の処理S120〜S150と同じ処理である。その結果、CMY各色の階調値Ci、Mi、Yiに対する分版インク量Co、Mo、Yo、Ro、Voが得られる。ブラックインクKについては、UCR処理S220の結果得られる階調値Kiが分版インク量Koとして用いられる。
【0157】
このように、第3実施例の分版処理では、有彩1次色インクCMYと有彩2次色インクRVに加えて、ブラックインクKを用いて再現することが可能な色彩の範囲を有効に利用した分版処理を行っている。そのため、色再現範囲をさらに拡張させた印刷を行うことが可能である。
【0158】
また、この実施例においては、上述のインクデューティ制限(条件1)において、ブラックインクKのインク量を考慮した制限を設けるのが好ましい。例えば、数式2に示す全種類のインク量の合計値の制限については、CMYRV各色のインク量に、ステップS220で得られたブラックインクKのインク量Kiを合わせた合計値が、Duty_T以下となるように設定することができる。こうすることによって、印刷媒体のインク吸収量の制限を越えた量のインクを吐出することを抑制することができる。また、複数色を混色する場合のインク量の制限についても、ブラックインクKのインク量Kiを用いて制限を設定することができる。ブラックインクK単独のインク量の制限についてはUCR処理S220においてインク量Kiを算出する際に考慮するのが好ましい。
【0159】
なお、本実施例の分版処理を図6に示す色変換ルックアップテーブルの作成処理のステップS20に適用したときには、第2の階調値セットは、有彩1次色インクCMYと有彩2次色インクRVとブラックインクKの各色インク量で表された階調値となる。よって、ステップS30では、CMYRVK各色を用いて再現されたカラーパッチが作成される。
【0160】
E.インクセットの変形例:
上述の各実施例には、図5に示すインクセット以外にも様々な種類のインクセットを適用することができる。図15〜22は、いずれも、適用可能なインクセットの実施例の各インク成分を示す説明図である。ブラックインクKの成分と色材以外の成分については、図5と同様であるので、図示を省略している。図5に示すインクセットとの差異は、色材の種類と濃度が一部異なる点である。その結果、これらのインクセットは、互いに少しずつ異なる色彩の再現性を向上させることが可能である。よって、印刷したい画像に適したインクセットを選択して用いることによって、より高画質な印刷結果を得ることができる。
【0161】
図15〜20のインクセットには、カラーパッチを測色して得られた、レッドインクRとバイオレットインクVのそれぞれの置換インク量が示されている。このように、これらのインクセットでは、置換インク量の合計値がいずれも1.7以上である。その結果、有彩2次色インクは、有彩1次色インクの混色と同程度のインク量を用いることによって、より高い彩度を再現することが可能である。その結果、有彩1次色インクと有彩2次色インクとを利用することによって、有彩1次色インクのみで再現可能な領域よりも広い範囲の色彩を再現することが可能となる。
【0162】
また、各インクとしては、上述の図5、図15〜22に示す組成に限定されることなく、その他の組成に従った適切なインクを用いても良い。さらに、用いるインクの色や数についても、この組み合わせに限定されることなく、例えば、有彩2次色インクとしてレッドインクRのみを利用可能な構成としても良く、また、有彩2次色インクとして、グリーンインクやブルーインクを用いる構成としてもよい。但し、互いに組み合わせて無彩色を再現可能なインクを有彩1次色インクとして用い、有彩1次色インクのいずれとも色相が異なるインクを有彩2次色インクとして用いることが好ましい。このようなインクで構成されたインクセットを用いることによって、色再現範囲の拡張を考慮した分版処理を実行することができる。
【0163】
F.印刷システムの第2実施例:
図23は、印刷システムの第2実施例を説明する説明図である。第2実施例と上述の印刷システムとの差異は、同じインクと同じ印刷媒体を利用可能であるとともに再現色の彩度の範囲が互いに異なる2つの色変換ルックアップテーブルLUT1、LUT2を備えている点である。
【0164】
図23には、本実施例のプリンタドライバ96aの概略が示されている。色変換ルックアップテーブル以外の構成は、図1に示す印刷システムと同じである。すなわち、97a〜101aの各機能部の動作は、図1に示す97〜101の各機能部の動作とそれぞれ同じである。
【0165】
図23の例では、プリンタドライバ96は、自然画用色変換ルックアップテーブルLUT1と、ポスター用色変換ルックアップテーブルLUT2とを備えている。自然画用色変換ルックアップテーブルLUT1は、印刷媒体上に再現可能な彩度の範囲が比較的狭く、ポスター用色変換ルックアップテーブルLUT2は、印刷媒体上に再現可能な彩度の範囲が比較的広くなるように、それぞれ構成されている。
【0166】
このような、彩度の範囲が互いに異なる2つのルックアップテーブルLUT1、LUT2を用いる利点は、以下のように説明することができる。例えば、人の注目を集めることを目的とするポスターを印刷するために、敢えて彩度の高い色を用いる場合がある。このようなときに、彩度の範囲が比較的広いポスター用色変換ルックアップテーブルLUT2を利用して印刷すれば、再現される色の彩度を高めることが可能となる。一方、写真画像などの自然画を印刷するときには、特定の色相を有する色についてのみ極端に彩度が高くなることを抑制することが好ましい。このようなときに、彩度の範囲が比較的狭い自然画用色変換ルックアップテーブルLUT1を利用すれば、彩度の均衡のとれた自然な印刷画像を得ることができる。このように、再現される彩度の範囲が異なる複数の色変換ルックアップテーブルを利用可能とすれば、印刷画像の種類に応じた好ましい彩度の範囲を利用して印刷を行うことができる。
【0167】
このような、彩度の範囲が互いに異なる色変換ルックアップテーブルLUT1、LUT2は、上述の分版処理の各実施例において、制限値が互いに異なる複数の彩度制限を使い分けることによって作成することができる。例えば、図11〜13に示す実施例において、彩度の拡張される割合を比較的小さい値に制限する彩度制限を用いれば、自然画の印刷に適した自然画用色変換ルックアップテーブルLUT1を作成することができる。また、彩度の拡張される割合を比較的大きい値に制限する彩度制限を用いれば、より広い彩度の範囲を利用可能なポスター用色変換ルックアップテーブルLUT2を作成することができる。特に、彩度制限を課さずにインクデューティ制限を満足する色変換ルックアップテーブルを作成すれば、印刷画像の画質を印刷媒体の種類に応じて向上させるとともに、インクセットで実現可能な色の再現範囲を十分に活用するポスター用色変換ルックアップテーブルLUT2を準備することができる。
【0168】
本実施例では、このようにして準備された2つの色変換ルックアップテーブルLUT1、LUT2のそれぞれに対応する「自然画印刷モード」と「ポスター印刷モード」が利用可能である。色変換モジュール98aは、印刷モード選択部101aで選択された印刷モードに対応した色変換ルックアップテーブルを選択して参照する。ここで、印刷モードの選択をユーザに許容することが好ましい。本実施例では、ユーザは、プリンタドライバ96aの印刷条件設定のための画面(図示せず)を介して、印刷モード選択部101aに対する印刷モードの選択指示を行うことができる。こうすることによって、意図しない彩度の範囲を用いて画像が印刷されることを抑制することができる。また、印刷に用いる画像データの形式に応じ、印刷モード選択部101aが自動的に印刷モードを選択する構成とすることも好ましい。自然画の画像データを生成する画像生成装置(デジタルスチルカメラ、デジタルビデオカメラなど)は、JPEG形式の画像データを生成することが一般的である。そこで、JPEG形式の画像データに基づいて印刷を行うときに、印刷モード選択部101aが「自然画像印刷モード」を自動的に選択すれば、ユーザが指示することなく好ましい彩度の範囲を用いて印刷を行うことができる。
【0169】
なお、複数種類のインクセットと印刷媒体の組み合わせが利用可能であるときには、組み合わせ毎に、彩度の範囲が異なる複数の色変換ルックアップテーブルをそれぞれ準備することが好ましい。こうすれば、インクセットや印刷媒体の種類に係わらず、印刷画像の種類に応じた好ましい彩度の範囲を利用して印刷を行うことができる。また、利用可能な彩度の範囲は2種類に限らず、より多くの種類の彩度の範囲を利用可能とすることが好ましい。こうすることによって、印刷画像の種類に応じて、彩度の範囲をよりきめ細かく使い分けることができる。また、印刷画像の種類に応じて印刷媒体を使い分ける場合には、それぞれの印刷媒体に対し、色変換ルックアップテーブルを1つずつ準備することも好ましい。このとき、各色変換ルックアップテーブルの彩度の範囲は、対応する印刷画像の種類に合わせて設定される。こうすることによって、使用する印刷媒体に対応する印刷モード(色変換ルックアップテーブル)を選択することによって、印刷画像の種類に応じた好ましい彩度の範囲を利用して印刷を行うことができる。
【0170】
以上、説明したように、上述の各実施例では、有彩2次色インクを利用することによって色の再現範囲を拡張することができる。また、分版インク量セットを、彩度制限を満足するように算出しているので、色相が有彩2次色インクに近いときでも極端に彩度が高い色を再現することを抑制することができる。その結果、印刷画像において、極端に彩度が高い色が目立つことを抑制し、彩度の均衡をとることができる。また、階調値の大きい拡張有彩色に基づいた分版処理を行えば、色再現範囲の拡張を考慮した分版処理を容易に実行することができる。さらに、再現される彩度の範囲の異なる複数の色変換ルックアップテーブルLUTを利用可能とすることによって、印刷画像の種類に応じた彩度の範囲を用いて印刷を実行することができる。
【0171】
ところで、色変換ルックアップテーブルLUTを用いた色変換の補間精度を向上させるためには、入力色の変化に対する再現色の見た目の変化を考慮して色変換ルックアップテーブルLUTを作成することが好ましい。例えば、図6のステップS20では、1次色階調値セット(入力色)が、その階調値の取り得る範囲内に複数準備される。ここで、入力色の階調値の変化に対する再現色の見た目の変化が大きい階調値範囲ほど、入力色をより細かく設定すれば、補間の精度を向上させることができる。ところが、入力色の階調値の変化に対する再現色の階調値の変化が色によって大きく異なるときには、再現色の見た目の変化を予測することが難しくなる場合がある。その結果、複数の入力値の設定を行うために、非常な労力を必要とする場合があった。上述の分版処理の各実施例では、入力色の階調値の変化に対する再現色の階調値の変化が、有彩2次色インクに近い色相を有する領域において極端に大きくなることを抑制することができる。従って、複数の入力色の設定を容易に行うことができるので、補間精度を向上させた色変換ルックアップテーブルLUTを容易に作成することができる。
【0172】
なお、この発明は上記の実施例や実施形態に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の態様において実施することが可能であり、例えば次のような変形も可能である。
【0173】
G.変形例:
G1.変形例1:
上述の各実施例において、彩度制限を印刷媒体の種類に応じて設定することが好ましい。印刷物の色の再現性は、同じインクセットを用いる場合でも、印刷媒体の種類によって異なる場合がある。そこで、同じインクセットを用いる場合であっても、複数の彩度制限を印刷媒体の種類に応じて使い分ければ、再現される色の彩度を印刷媒体に応じて適切に制限することができる。
【0174】
G2.変形例2:
彩度制限としては、有彩1次色インクの各色成分の仮想的な階調値に対する制限に限定されるものではなく、再現色の彩度に相関のある種々の値に対する制限を用いることができる。例えば、図12に示す1次色色空間において、原点Wと点Kとを結ぶ直線を無彩色線と呼ぶときに、再現色を1次色色空間に表現したときの座標と無彩色線との距離を制限してもよい。また、彩度制限の度合いは、画像の出力結果の官能評価に基づいて設定することができる。例えば、色相が滑らかに変化するグラデーションパターンを印刷し、不自然に目立つ部分が生じない値に設定すればよい。
【0175】
G3.変形例3:
上述の各実施例において、入力色Iに対する分版インク量セットOとして、有彩1次色インクと有彩2次色インクとの置換可能な範囲において、複数のインク量の組み合わせをとることができる場合がある。このような場合には、複数のインク量の組み合わせの中から、インクデューティ制限を満たす範囲において、各インク量の合計値が最小となる組み合わせを、分版インク量セットOとして用いることが好ましい。こうすることによって、印刷画像の画質を向上させるとともに、インクの使用量を節約することができる。また、再現色の明度が高い(明るい)ときには、有彩1次色インクを積極的に用いるような組み合わせを用いることも好ましい。有彩1次色インクを積極的に用いると、置換インク量に従って複数の有彩1次色インクのインク量が増えるため、印刷媒体に記録されるインクドット数の合計が増加する。その結果、明るい領域で目立ちやすい粒状性(画像のざらつき)を目立ちにくくすることができる。また、再現色の彩度が低いときに、有彩1次色インクを積極的に用いるような組み合わせを用いることも好ましい。彩度の低い色は有彩1次色インクのみを用いて再現することが可能である。従って、このような彩度の低い色を有彩1次色インクを積極的に用いて再現すれば、有彩2次色インクを節約することができる。
【0176】
G4.変形例4:
上述の各実施例では、使用可能なインクセットの各インクの色相が互いに異なっているが、色相がほぼ同じで濃度の異なる複数種類のインクを使用可能な構成としても良い。この場合、各色相の階調値に応じて濃度の異なるインクを使い分けることによって、インクドットの数が少ないほど目立ちやすい粒状性(画像のざらつき)を向上し、インクドットの数が多い場合に目立ちやすいバンディング(筋状の模様)を抑制することができる。このとき、各インクのインク量は、上述のインクデューティ制限や彩度制限、置換インク量等の条件設定を、全てのインクのインク量を考慮した設定とし、いわゆる線形計画法を用いて算出することができる。また、各色相ごとに分版インク量を算出し、得られた分版インク量を、ほぼ同じ色相を有し濃度の異なる複数のインクに再分配する方法を用いても良い。この場合も、インクデューティ制限と彩度制限とにおいて全てのインクのインク量を考慮した制限を設け、さらに、最終的な各インクのインク量がインクデューティ制限と彩度制限とを満たすようにすることが好ましい。
【0177】
なお、上記各実施例においては、「インク量」は、ベタ領域を再現するときのインク量を100%としたときの、0%〜100%の範囲を表す各インクの階調値であり、色変換ルックアップテーブルLUTの出力を意味している。色相がほぼ同じで濃度の異なる複数種類のインクを使用可能な場合には、同じ色相を有する濃淡インクの色材の合計値を「インク量」に対応させることによって、分版処理を行うことができる。このとき、得られた「インク量」を、濃淡インクのそれぞれに分配することによって、適切な色彩を再現することができる。
【0178】
G5.変形例5:
この発明は熱転写プリンタやドラムスキャンプリンタにも適用可能である。この発明は、いわゆるインクジェットプリンタのみではなく、一般に、複数色のインク色の混色によって色を再現する印刷装置に適用することができる。このような印刷装置としては、例えばファクシミリ装置や、コピー装置がある。
【0179】
G6.変形例6:
上記実施例において、ハードウェアによって実現されていた構成の一部をソフトウェアに置き換えるようにしてもよく、逆に、ソフトウェアによって実現されていた構成の一部をハードウェアに置き換えるようにしてもよい。例えば、プリンタドライバ96(図1)の機能の一部を、プリンタ20内の制御回路40(図3)が実行するようにすることも可能である。
【図面の簡単な説明】
【図1】 印刷システムの構成を示すブロック図
【図2】 プリンタ20の概略構成図
【図3】 プリンタ20の構成を示すブロック図
【図4】 印刷ヘッド28の下面におけるノズル配列を示す説明図
【図5】 インクセットを示す説明図
【図6】 色再現の処理手順を示すフローチャート
【図7】 カラーパッチを示す説明図
【図8】 分版処理の処理手順を示すフローチャート
【図9】 再現色を設定する様子の概略を示す説明図
【図10】 色の再現範囲の拡張される割合を説明する説明図
【図11】 分版処理の処理手順を示すフローチャート
【図12】 1次色色空間を示す説明図
【図13】 拡張有彩色を算出する様子の概略を示す説明図
【図14】 分版処理の処理手順を示すフローチャート
【図15】 インク成分の別の例を示した説明図
【図16】 インク成分の別の例を示した説明図
【図17】 インク成分の別の例を示した説明図
【図18】 インク成分の別の例を示した説明図
【図19】 インク成分の別の例を示した説明図
【図20】 インク成分の別の例を示した説明図
【図21】 インク成分の別の例を示した説明図
【図22】 インク成分の別の例を示した説明図
【図23】 印刷システムの別の例を示すブロック図
【符号の説明】
20…プリンタ
21…CRT
22…紙送りモータ
24…キャリッジモータ
26…プラテン
28…印刷ヘッド
30…キャリッジ
32…操作パネル
34…摺動軸
36…駆動ベルト
38…プーリ
39…位置センサ
40…制御回路
41…CPU
43…P−ROM
44…RAM
45…CG
50…I/F専用回路
52…ヘッド駆動回路
54…モータ駆動回路
56…コネクタ
60…印刷ヘッドユニット
90…コンピュータ
91…ビデオドライバ
95…アプリケーションプログラム
96、96a…プリンタドライバ
97、97a…解像度変換モジュール
98、98a…色変換モジュール
99、99a…ハーフトーンモジュール
100、100a…ラスタライザ
101、101a…印刷モード選択部
LUT、LUT1、LUT2…色変換ルックアップテーブル
PP…印刷用紙
PD…印刷データ

Claims (12)

  1. シアンインクとマゼンタインクとイエローインクとの有彩1次色インクと、前記複数の有彩1次色インクのいずれとも色相が異なるとともに、2つの有彩1次色成分に分解することができる少なくとも1つの有彩2次色インクとで構成されるインクセットの各インクを用いて画像の印刷を行う印刷装置であって、
    前記印刷媒体上に再現可能な彩度の範囲が前記有彩2次色インクの色相において第1の範囲である第1種のカラー印刷モードでの印刷と、前記第1種のカラー印刷モードと同一のインクを利用可能であるとともに、前記印刷媒体上に再現可能な彩度の範囲が前記有彩2次色インクの色相において前記第1の範囲よりも広い第2の範囲である第2種のカラー印刷モードでの印刷とを行う事ができる、
    印刷装置。
  2. 請求項1に記載の印刷装置であって、
    前記第1種のカラー印刷モードと前記第2種のカラー印刷モードとは、同一の印刷媒体を利用可能な印刷モードである、印刷装置。
  3. 請求項1又は請求項2に記載の印刷装置であって、
    前記有彩1次色インクの色相よりも、前記有彩2次色インクの色相の方が、第1種のカラー印刷モードと第2種のカラー印刷モードとの間における前記再現可能な彩度の範囲の違いが大きい印刷装置。
  4. シアンインクとマゼンタインクとイエローインクとの有彩1次色インクと、前記複数の有彩1次色インクのいずれとも色相が異なるとともに、2つの有彩1次色成分に分解することができる少なくとも1つの有彩2次色インクとで構成されるインクセットの各インクを用いて画像の印刷を行う印刷装置であって、
    カラー印刷をする第1種カラー印刷モードと、少なくとも前記有彩2次色インクの色相をもつ部分を含む同一の画像データを用いて同一の印刷媒体に同一のインクを用いて印刷するに当って、前記有彩2次色インクの色相をもつ部分を前記第1種カラー印刷モードよりも高彩度でカラー印刷する第2種カラー印刷モードとを有する、
    印刷装置。
  5. 請求項4に記載の印刷装置であって、
    前記画像データは、さらに、前記有彩1次色インクの色相をもつ部分を含み、
    前記第1種カラー印刷モードにおける彩度に対する前記第2種カラー印刷モードにおける彩度の比は、前記有彩1次色インクの色相における値よりも、前記有彩2次色インクの色相における値の方が大きい、
    印刷装置。
  6. 請求項4乃至請求項5のいずれかに記載の印刷装置であって、
    前記有彩2次色インクの彩度は、いずれの前記有彩1次色インクの彩度よりも大きい、
    印刷装置。
  7. 請求項1乃至請求項6のいずれかに記載の印刷装置であって、
    第1の表色系で表された入力カラー画像データから、前記インクセットの各インクのインク量で構成される再現色表色系で表された第2のカラー画像データへの変換を、各モードに対応した色変換ルックアップテーブルを使用して行う色変換モジュールを備える、印刷装置。
  8. 請求項7に記載の印刷装置であって、さらに、
    前記複数の印刷モードに対応して予め準備された複数の色変換ルックアップテーブルを備え、
    前記色変換モジュールは、選択された印刷モードに対応した色変換ルックアップテーブルを使用する、
    印刷装置。
  9. シアンインクとマゼンタインクとイエローインクとの有彩1次色インクと、前記複数の有彩1次色インクのいずれとも色相が異なるとともに、2つの有彩1次色成分に分解することができる少なくとも1つの有彩2次色インクとで構成されるインクセットの各インクを印刷媒体上に吐出することによって画像の印刷を行う印刷方法であって、
    (a)前記印刷媒体上に再現可能な彩度の範囲が前記有彩2次色インクの色相において第1の範囲である第1種印刷モードと、前記印刷媒体上に再現可能な彩度の範囲が前記有彩2次色インクの色相において前記第1の範囲よりも広い第2の範囲である第2種印刷モードとを含む複数の印刷モードの中から1つを選択する工程と、
    (b)前記選択された印刷モードに基づいて印刷する工程と、
    を備える、印刷方法。
  10. シアンインクとマゼンタインクとイエローインクとの有彩1次色インクと、前記複数の有彩1次色インクのいずれとも色相が異なるとともに、2つの有彩1次色成分に分解することができる少なくとも1つの有彩2次色インクとで構成されるインクセットの各インクを印刷媒体上に吐出することによって画像の印刷を行う印刷部に供給すべき印刷データを生成するためのコンピュータプログラムであって、
    (a)前記印刷媒体上に再現可能な彩度の範囲が前記有彩2次色インクの色相において第1の範囲である第1種印刷モードと、前記印刷媒体上に再現可能な彩度の範囲が前記有彩2次色インクの色相において前記第1の範囲よりも広い第2の範囲である第2種印刷モードとを含む複数の印刷モードの中から1つを選択する機能と、
    (b)前記選択された印刷モードに応じて、印刷媒体上の各画素における各インクの吐出状態を表す印刷データを生成する機能と、
    をコンピュータに実現させるためのコンピュータプログラム。
  11. 印刷媒体上で複数色のインクを用いて任意の色を再現するために、各インクのインク量を決定する分版方法であって、
    (a)使用可能なインクとして、シアンインクとマゼンタインクとイエローインクとの有彩1次色インクと、前記複数の有彩1次色インクのいずれとも色相が異なるとともに、2つの有彩1次色成分に分解することができる少なくとも1つの有彩2次色インクとを含むインクセットを設定する工程と、
    (b)任意の1つの入力色に応じて前記印刷媒体上で再現される色を再現色と呼び、前記再現色を前記印刷媒体上で再現するための前記インクセットの各インク量の組み合わせを分版インク量セットと呼び、前記複数の有彩1次色インクの各インク量を基準ベクトルとして表される色空間を1次色色空間と呼ぶときに、前記1次色色空間内の複数の入力色に応じて前記印刷媒体上で再現される複数の再現色を決定する工程と、
    (c)前記複数の再現色を再現するための複数の分版インク量セットを決定する工程と、を備え、
    前記工程(b)では、
    前記有彩2次色インクと同一の色相を有する再現色の彩度が、前記有彩1次色インクによって再現可能な彩度の範囲よりも広く、前記インクセットによって再現可能な彩度の最大限の範囲よりも狭い範囲内に彩度を制限する所定の彩度制限を少なくとも満足するように、前記複数の再現色が決定される、
    分版方法。
  12. 請求項11に記載の分版方法であって、
    前記1次色色空間における、前記インクセットによって再現可能な色の表現領域であって、前記彩度制限を含む色再現範囲を制限する所定の制限を満足する色表現領域の外殻に位置する第1種有彩色を表すベクトルを第1種ベクトルと呼び、前記有彩1次色インクによって再現可能な色の表現領域の外殻に位置するとともに、前記第1種ベクトルと同一の方向に位置する第2種有彩色を表すベクトルを第2種ベクトルと呼ぶときに、
    前記彩度制限は、前記第2種ベクトルの長さに対する前記第1種ベクトルの長さの割合を予め設定された所定の制限値以下に制限する、分版方法。
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