JP4403241B2 - 一軸偏心ねじポンプのジョイント構造 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
この発明は、一軸偏心ねじポンプのジョイント構造に関する。
【0002】
【従来の技術】
周知のように、一般的な一軸偏心ねじポンプは、雄ねじ形ロータを、雌ねじ形ステータ内に嵌挿して偏心回転させることにより、移送液(液・粘性液)を移送するものである。このロータを回転駆動するドライブシャフトは、ユニバーサルジョイント及びカップリングロッドを介して、ロータに連結される構造となっているのが一般的である(例えば特許文献1参照)。
【0003】
つまり、一軸偏心ねじポンプにおいては、ロータの端部にユニバーサルジョイントを介して長尺のカップリングロッドの一端部を連結し、このカップリングロッドの他端部にユニバーサルジョイントを介してドライブシャフトの端部に連結している。このようにユニバーサルジョイントやカップリングロッドを用いるのは、ロータがドライブシャフトに対して偏心して回転するため、ロータとドライブシャフトとを直結することができないからである。
【0004】
しかしながら、このような構造であると、ユニバーサルジョイントを端部に有するカップリングロッドの長さがかなり長くなるので、ポンプの全長が長くなる。ポンプの全長が長くなると、重量も大きくなる。また、ロータの分解・組立の際は、ユニバーサルジョイントのトルク伝達ピンを抜き取ったり差し込んだりする必要があるが、その作業は専用工具を要し、しかも手間がかかっていた。
【0005】
そこで、出願人は、そのようなユニバーサルジョイントに代えて、オルダム継手(食い違い軸継手)を用いて、ロータとドライブシャフトとを連結したものを先に提案している(例えば特許文献2参照)。
【0006】
そのような従来のオルダム継手101は、例えば図5に示すように、2つのオスボス102,103と、それらに接続されるメスボス104とを有する。そして、ロータ107及びドライブシャフト108の端部に取付部107a,108aが形成され、その取付部107a,108aにオスボス102,103の嵌合部102a,103aがそれぞれ嵌め込まれ、固定ピン105,110にて固定され、その固定によりオスボス102,103がロータ107及びドライブシャフト108と一体化される構成とされる。
【0007】
【特許文献1】
特公昭59−04558号公報(第3、4頁及びFig.1)
【特許文献2】
実開平04−75175号公報(明細書第7頁及び図面第2図)
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
このように、オルダム継手101のオスボス102,103は、ロータ107及びドライブシャフト108に取り付けられる構成となっているので、次のような問題があった。
【0009】
(i)オスボス102,103の嵌合部102a,103aをそれぞれロータ107及びドライブシャフト108の取付部107a,108aに嵌め込み、それらを固定ピン105,110にて固定しているため、嵌合部102a,103aと取付部107a,108aとの嵌め合いの部分が必要となる。そのため、オルダム継手101が設けられるポンプケーシング106の長さをあまり短くすることができず、ポンプ運転終了後などにおいてポンプケーシング内の残液量が多くなる。
【0010】
(ii)オスボス102,103の嵌合部102a,103aをそれぞれロータ107及びドライブシャフト108の取付部107a,108aに嵌め込むことにより組立てる構造であるために、図5に示すように、接合面イ、ハ、嵌合部ロ、ニ及び固定ピン105,110周囲の隙間に移送液が浸入しやすく、分解がしにくくなる。そのため、分解・洗浄・組立に手間を要し、洗浄の作業が面倒である。
【0011】
(iii)オスボス102,103に嵌合部102a,103aを形成するために、余分な機械加工をしなければならず、コスト高となる。
【0012】
(iv)ポンプの全長が長くなり、重量が重くなるので、ポンプをロボットに搭載して使用する場合には、搬重量の大きいロボットが必要となる。そのため、ロボットがコスト高になり、この点からもコスト面で不利になる。
【0013】
この発明は、洗浄を容易にすると共に、ポンプ運転終了後のポンプケーシング内の残液量を少なくして、洗浄による移送液(特に、高価なケミカル液、粘性液)のロスを少なくした経済的な一軸偏心ねじポンプのジョイント構造を提供することを目的とする。
【0014】
【課題を解決するための手段】
請求項1の発明は、ステータ内で偏心回転するロータの端部と、このロータを回転駆動するドライブシャフトの端部との間に、ロータのステータ内での偏心回転を許容するジョイント部材が設けられる一軸偏心ねじポンプのジョイント構造であって、前記ロータ及びドライブシャフトの端部にそれぞれ断面略円形状の第1及び第2の係合凸部がくびれ部を介して一体に形成され、前記ジョイント部材は、エンジニアリングプラスチック材で形成されると共に、前記ロータの第1の係合凸部に対応する形状を有し前記第1の係合凸部がスライド可能に係合する第1の係合溝部と、前記ドライブシャフトの第2の係合凸部に対応する形状を有し前記第2の係合凸部がスライド可能に係合する第2の係合溝部とを備え、前記第1の係合溝部と第2の係合溝部とが互いに直交する方向に延びていることを特徴とする。
【0015】
つまり、請求項1の発明は、オルダム継手を構成するオスボスを、ロータやドライブシャフトの端部に単に一体化するのではなく、ロータやドライブシャフトの取付部(図5の取付部107a,108a)及びオスボスの嵌合部(図5の嵌合部102a,103a)を省略して一体化するものであり、この取付部と嵌合部とに相当する部分だけポンプ長手方向の寸法を短くすることによりポンプ室を小さくし、ポンプ室内に残る移送液(残液)のロスを少なくすることを実現するものである。
【0016】
このようにすれば、オルダム継手そのものをロータとドライブシャフトとの間に設けるのではなく、それらの間にオルダム継手と同等の機能を発揮する継手機構を組み込むことになるので、オルダム継手をそのまま設ける場合よりも、継手を設けるのに必要とされるポンプ長手方向の寸法が短くなる。
【0017】
よって、オルダム継手をそのまま設ける場合に比べて、ポンプケーシングのポンプ長手方向の寸法が短くなるので、その分、ポンプ室が小さくなり、ポンプ運転終了後のポンプケーシング内の移送液(残液)量が減り、洗浄時における移送液のロスを少なくすることができる。これにより、洗浄を必要とする、食品やケミカル液及び粘性液を移送・充填(ディスペンサ)・汲出(ディスチャージャ)する一軸偏心ねじポンプに特に適する。
【0018】
また、ロータとドライブシャフトの端部に一体に形成された係合凸部(オルダム継手のオスボスに相当するもの)が、それらの間に位置するジョイント部材(オルダム継手のメスボスに相当するもの)にスライド可能に係合しているだけであるので、構造が複雑とならず、また、移送液が浸入する隙間等の個所が少ないので、分解・洗浄・組立が容易で、それらの作業に要する時間も短縮化できる。
【0019】
【発明の実施の形態】
以下、この発明の実施の形態を図面に沿って説明する。なお、本発明を適用する一軸偏心ねじポンプは、食品・薬品及びケミカル液・固形物含有液・スラリー・高粘度液などの低粘度液から高粘度液に至るまでの各種対象液の移送・充填・汲出を行う一軸偏心ねじポンプで、(a)食品やケミカル液を移送する移送ポンプ、(b)ディスペンサ(充填ポンプ)、(c)ディスチャージャ(汲出ポンプ)に適用できるものである。
【0020】
図1に示すように、本発明に係る一軸偏心ねじポンプ1は、ポンプ部U2及び駆動部U1により構成される。このポンプ1は、設置状態では、ポンプ長手方向が上下方向となる縦置きで、下側にポンプ部U2、上側に駆動部U1がそれぞれ位置し、本例では、下側(ノズル11)から移送液を吐出する充填作業に使用される(商品名:ディスペンサ)。
【0021】
ポンプ部U2は、基本的には、ロータ2がステータ3内を偏心回転するポンプ本体4を有する。ロータ2は、減速機5付きモータ6によって回転駆動されるドライブシャフト7に連結されて、回転駆動されるようになっている。すなわち、減速機5の出力軸5a(駆動部の出力軸)にはカップリングスリーブ8の一端部が挿入され、その状態で出力軸5aにカップリングスリーブ8の一端部が固定ピン9によって固定されている。このカップリングスリーブ8の他端部にはドライブシャフト7の一端部が挿入され、その状態でカップリングスリーブ8の他端部にドライブシャフト7の一端部が固定ピン10によって固定されている。これにより減速機5付きモータ6よりの駆動力がカップリングスリーブ8を介してドライブシャフト7に伝達される。
【0022】
ポンプ本体4の一端部にはノズル11が設けられ、他端部には筒状のポンプケーシング12の一端部が連結され、ポンプケーシング12の他端部内にはサポートハウジング13が設けられている。そのポンプケーシング12内で、ドライブシャフト7がジョイント部材21を介してロータ2に一緒に回転するように連結されている。また、ポンプケーシング12には、ポンプ室に連通する吸込口16aを形成する部材16も設けられている。
【0023】
ドライブシャフト7には、ポンプケーシング12内でのドライブシャフト7の回転を許容すると共に前記ポンプケーシング12内のポンプ室からの液漏れを防止するメカニカルシール14が設けられている。メカニカルシール14は、ポンプケーシング12のポンプ室内の移送液が、ドライブシャフト7とサポートハウジング13との間を通じて外部に漏れないように取り付けられるものである。
【0024】
また、サポートハウジング13に対し減速機取付べース15が取り付けられ、この取付ベース15に対し、減速機5付きモータ6が設けられている。減速機取付ベース15内に、前述したカップリングスリーブ8などが設けられている。また、減速機取付ベース15には、ロボットアーム(図示せず)に固定的に取付けられる取付部15aが形成されている。
【0025】
続いて、ドライブシャフト7がジョイント部材21を介してロータ2に連結されるジョイント構造について説明する。
【0026】
前記ロータ2及びドライブシャフト7の端部には、図2(a)〜(c)及び図3(a)〜(c)に示すように、それぞれ断面略円形状の第1及び第2の係合凸部2a,7aがくびれ部2b,7bを介して一体に形成されている。このくびれ部2b,7bの幅は第1及び第2の係合凸部2a,7aの直径の概略1/2程度の大きさを有する。
【0027】
一方、ジョイント部材21は、図4に示すように、一側には、前記ロータ2の第1の係合凸部2aに対応する形状を有する第1の係合溝部21aがスリット部21cを介して形成されている。このスリット部21cは、くびれ部2bの幅に対応する幅を有する。前記係合凸部2aが第1の係合溝部21aにスライド可能にかつ相対回転可能に係合している。
【0028】
ジョイント部材21の他側には、前記ドライブシャフト7の第2の係合凸部7aに対応する形状を有する第2の係合溝部21bがスリット部21dを介して形成されている。このスリット部21dはくびれ部7bの幅に対応する幅を有する。前記係合凸部7aが第2の係合溝部21bにスライド可能にかつ相対回転可能に係合している。
【0029】
第1の係合溝部21aと第2の係合溝部21bとは互いに直交する方向に延びている。なお、ジョイント部材21は、エンジニアリングプラスチック材で形成されている。
【0030】
係合凸部2a,7a及び係合溝部21a,21bが断面略円形状をしているのはそれらが一定の範囲で相対回転できるようにするためであり、相対回転できるようにするのは、ロータ2及びドライブシャフト7が相対的に傾くのを許容できるようにするためである。
【0031】
また、係合凸部2a,7a及び係合溝部21a,21bの断面形状を略円形状にすることにより、ロータ2がノズル方向に移動する際に、係合凸部2a,7aとジョイント部材21a,21bの係合溝部との係合が外れるのを防止する機能も併せて持つようになっている。
【0032】
ジョイント部材21にエンジニアリングプラスチックが使用されるのは、耐摩耗性があり、摩擦係数が小さく、潤滑性に優れるからである。なお、係合凸部2a,7aについては、耐摩耗性があり、摩擦係数の少ない金属、表面処理した金属等が使用される。
【0033】
このように、従来ロータ及びドライブシャフトとは別体であった(オルダム継手の)オスボスをロータ2及びドライブシャフト7の端部に一体に設けることにより、従来必要とされたオスボスをロータやドライブシャフトの端部に取り付けるための寸法(取付部107a,108aや嵌合部102a,103aを設けるために必要とされるポンプ長手方向の寸法)を確保する必要がなくなる。それにより、従来(図5参照)のポンプケーシング106の内寸法L1に対し、本例(図1参照)のポンプケーシング12の内寸法はL2になり、それらの差L3(=L1−L2)だけ、本例はポンプケーシング12の内寸法が従来のものよりも短くなる。よって、その短くなる分だけ、ポンプ運転終了後にポンプケーシング12内に残る移送液(残液)の量が従来のものよりも減少する。また、ポンプ全長も、従来(図5参照)は寸法L4であったのに対し、本例(図1参照)では寸法L5となり、前記ポンプケーシング12が短くなった寸法L3(=L4−L5)に相当する分だけ短くなり、ポンプのコンパクト化が図れる。
【0034】
また、ロータ2やドライブシャフト7の係合凸部2a,7aにジョイント部材21の係合溝部21a,21bをスライド可能に取り付けるという簡単な構造であるので、分解・洗浄・組立が容易で、作業時間も短縮化できる。
【0035】
さらに、オルダム継手のオスボスに相当する係合凸部2aをロータ2の端部に一体に設けることにより、従来のオスボスの嵌合部とロータ2の端部の取付部が必要なくなり、ステータ3の端部とジョイント部材21による連結部分との距離が短くなるので、ロータ2の偏心回転が安定して、次のような利点も併せて持つことになる。
【0036】
(i) ロータ2に作用する曲げ応力を削減できる。
【0037】
(ii) 回転するロータ2がステータの内周面に強く擦れるすりこぎ運動をなくすことができる(すりこぎ運動が起こると、ステータの早期摩耗及び吐出量のバラツキが発生する)。
【0038】
(iii)ロータ2に作用する曲げモーメントが小さいので、ステータ端部の発熱が少なく、ステータの早期摩耗を防止できる。
【0039】
なお、前記実施の形態において、駆動部U1側から見てロータ2がステータ3内を左回転で、ポンプケーシング12側からの吸込となり、ノズル11(エンドスタッド)から吐出される(この場合はディスペンサに一般的に適用される)。また、駆動部U1側から見てロータ2が右回転で、エンドスタッド側からの吸込となり、ポンプケーシング12に設けられた吐出口から吐出される(この場合はディスチャージャに一般的に適用される)。
【0040】
【発明の効果】
この発明は、以上に説明したように実施され、以下に述べるような効果を奏する。
【0041】
請求項1の発明は、ポンプケーシングの内寸法が短くなるので、その分だけ、ポンプ運転終了後のポンプケーシング内の残液量を少なくすることができ、洗浄による移送液のロスを低減することができる。特に高価なケミカル液・粘性液の場合に有効である。
【0042】
また、簡単な構造であるので、分解・洗浄・組立が容易で、それらの作業に要する時間も短縮化できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の実施例に係わる一軸偏心ねじポンプを示す一部を断面で示す側面図である。
【図2】 (a)(b)(c)はそれぞれロータの端部に一体に設けた係合凸部の形状を示す正面図、平面図及び右側面図である。
【図3】 (a)(b)(c)はそれぞれドライブシャフトの端部に一体に設けた係合凸部の形状を示す正面図、平面図及び左側面図である。
【図4】 (a)(b)(c)はそれぞれジョイント部材の形状を示す正面図、平面図及び右側面図である。
【図5】 従来のオルダム継手を用いた一軸偏心ポンプを示す一部を断面で示す側面図である。
【符号の説明】
U1 駆動部
U2 ポンプ部
1 一軸偏心ねじポンプ
2 ロータ
2a 係合凸部
3 ステータ
4 ポンプ本体
5 減速機
6 モータ
7 ドライブシャフト
7a 係合凸部
8 カップリングスリーブ
11 ノズル
12 ポンプケーシング
13 サポートハウジング
14 メカニカルシール
15 減速機取付ベース
21 ジョイント部材
21a,21b 係合溝部
Claims (1)
- ステータ内で偏心回転するロータの端部と、このロータを回転駆動するドライブシャフトの端部との間に、ロータのステータ内での偏心回転を許容するジョイント部材が設けられる一軸偏心ねじポンプのジョイント構造であって、
前記ロータ及びドライブシャフトの端部にそれぞれ断面略円形状の第1及び第2の係合凸部がくびれ部を介して一体に形成され、
前記ジョイント部材は、エンジニアリングプラスチック材で形成されると共に、前記ロータの第1の係合凸部に対応する形状を有し前記第1の係合凸部がスライド可能に係合する第1の係合溝部と、前記ドライブシャフトの第2の係合凸部に対応する形状を有し前記第2の係合凸部がスライド可能に係合する第2の係合溝部とを備え、前記第1の係合溝部と第2の係合溝部とが互いに直交する方向に延びていることを特徴とする一軸偏心ねじポンプのジョイント構造。
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JP2003156201A JP4403241B2 (ja) | 2003-06-02 | 2003-06-02 | 一軸偏心ねじポンプのジョイント構造 |
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- 2003-06-02 JP JP2003156201A patent/JP4403241B2/ja not_active Expired - Lifetime
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