JP4402877B2 - インクジェット記録用布帛、それを用いた記録方法及び記録物 - Google Patents
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Description
【産業上の利用分野】
本発明は、インクジェット記録用布帛、それを用いた記録方法及び記録物に関する。さらに詳しくは、難燃性の機能を堅牢度の低下なく有効に発揮させ、かつ撥水性の付与も可能であり、濃度、鮮明性といった品質面も損なうことのないインクジェット記録用布帛、それを用いた記録方法及び記録物に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、紙や樹脂シート等の基材を対象とした大型のインクジェット記録装置が開発されている。この装置によると、大型製品の製造が可能であり、且つフルカラー印刷を施したインクジェット記録ならではの鮮明な画像を形成することができる。これらの大型製品は屋内外を問わず広告用シート、工事足場用シート等様々な用途に使用されている。
【0003】
一方、これらの用途は、大型であるがゆえ、基材として紙を用いた場合に破れたり皺になったりしやすく、樹脂シートを用いた場合ではシートの重さ等から施工が困難であるという問題を有する。この点、基材として布帛を用いた場合はこれらの問題点もなく取扱いの容易さから懸垂幕、横断幕等として利用され現在注目を浴びている。
【0004】
しかし、基材として布帛を用いた場合にも問題点を有する。例えば、屋内外で使用されるがゆえ、難燃性を有するものが求められているという点である。さらに屋外等の風雨に曝される場所で使用する場合は撥水性等も求められる場合がある。
すなわち、インクジェット記録において布帛を用いた場合、後述する従来例のようにインク受容層に難燃性能を付与しようとすると、高濃度且つ鮮明な画像を表現することは極めて難しく、耐水性、撥水性等の堅牢度も著しく低下してしまう。
【0005】
これまで、紙や樹脂シートに対する高濃度、鮮明性及びそれに加えて難燃性を付与するための処理方法は数多く知られているが、特に表面凹凸や特有の滲み習性を有する布帛にそのまま適用しても、満足のいく製品は得られていない。
そのため布帛を対象として、滲み防止および難燃性を付与するために次のような方法が開発されている。
【0006】
例えば、難燃性を付与するために、〔特許文献1〕では、合成繊維布帛の片面にインク受容層を設け、布帛の他面に難燃層を設けるという方法が提案されている。
しかし、この場合、裏面に難燃層を付与する際に、処理液が布帛にしみ込んで、布帛表面とインク受容層との接着性を阻害し、インク受容層の耐水性が悪化する問題がある。また、布帛に対する更なる濃度アップを狙い、もしくは厚みのある布帛等の種類によってはインク付与量を増加させることが考えられるが、インクの滲み防止のためインク受容層を必然的に増加させると、このインク受容層自体の難燃性が劣るため、結局難燃性は低下してしまう。
【0007】
また、〔特許文献2〕には、インク受容層を形成した布帛に、難燃剤を含浸によって付与し、難燃性を持たせる方法が開示されている。
しかし、この加工方法でも、前述した理由と同様で、比較的燃えやすいインク受容層と難燃層の付与量のバランスがとりにくく、十分な難燃性を発揮できない場合がある。また、インク受容層の表面に難燃剤や難燃剤に含まれる分散剤や増粘剤が多量に付与されることになるため、それらがインクの滲みを生じさせ、品質面でも十分ではない。
【0008】
また、〔特許文献3〕では、ガラス転移温度が60〜130℃である合成樹脂を付与することによって、耐候性に優れ、鮮明性にも優れた画像が形成できる方法が開示されている。
しかし、この方法に単に公知の難燃剤を付加したのみでは、十分な難燃性を得られないばかりか、耐候性も低下する事態が生じることとなる。
従って、これまで述べたように高画質・高堅牢度を保ったままで難燃性が付与された布帛は未だ得られていない。
【0009】
なお、一般に行われる撥水加工等を従来技術で得られる布帛に施しても、難燃性は更に悪くなるばかりか、撥水性も十分に発揮できないのは明らかである。
このようなことから、布帛を使用したインクジェット記録方法において、インク受容層を存在させた布帛にインクを付与し高濃度且つ精細な画像を保ちつつ、十分な難燃性を持ち合わせるということは困難であり、撥水性を併せ持たせるとなると未だ達成されていない。
【特許文献1】
特開2000−203148号公報
【特許文献2】
特開2000−303361号公報
【特許文献3】
特開2000−43244号公報
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、上記従来例の問題点を解決し、濃度、鮮明性を損なうことなく難燃性をもたせることができ、さらに、簡単に撥水性等を付与することが可能なインクジェット記録用布帛、それを用いた記録方法及び記録物を提供することである。
【0011】
【課題を解決するための手段】
本発明者等は上記の問題点を解決するために鋭意努力した結果、布帛からなる基材に難燃剤、水溶性糊剤、及び2以上のガラス転移温度の異なる重合体からなる難燃被膜層を形成することにより、密で均一なインクジェット記録用布帛を得ることができ、該布帛にインクジェット記録を行うことにより、十分な難燃性と滲みのない高画質な製品が得られ、更には簡単に撥水性等の機能をも付加することが可能なことを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0012】
すなわち、本発明は、主に、布帛からなる基材に難燃剤、水溶性糊剤、及び被膜形成剤からなる難燃被膜層が形成されてなるインクジェット記録用布帛であって、該被膜形成剤が、(A)0〜40℃の範囲のガラス転移温度を有するアクリル系重合体及び(B)65〜130℃の範囲のガラス転移温度を有するアクリル系重合体からなるインクジェット記録用布帛に存する。そして、本発明は係るようにして得られるインクジェット記録用布帛にインクジェット記録を行い、その後、湿熱処理を行うことを特徴とするインクジェット記録方法に存する。また、好ましくは、インクジェット記録用布帛にインクジェット記録を行い、その後、湿熱処理を行い、更に、難燃被膜層の表面に撥水剤からなる撥水被膜層を形成することを特徴とするインクジェット記録方法に存する。そして、本発明は以上の方法により得られる記録物に存する。
【0013】
【発明の実施の形態】
以下、本発明について、更に詳細に説明する。
屋内外広告等に使用するインクジェット記録用布帛においては、以下の性能を有するものが望まれる。
▲1▼高耐候堅牢度下での確実な難燃性
▲2▼インクジェット特有の鮮明で木目の細かいフルカラーでの表現力
▲3▼布帛特有のドレープ性や暖かみ
【0014】
本発明では、被膜形成剤としてガラス転移温度(以下、Tg)の異なる重合体を2以上用いている。これは、インク吸収性よく成膜性の優れた層を形成することが可能となるためである。その理由としては以下の点が挙げられる。
被膜形成剤としてTgの低い重合体を用いる場合、被膜の形成が容易であるために、形成される被膜層が薄く、インクを受容する能力がTgの高い重合体と比べて小さくなる。更に、一般にインクを滲ませる影響を及ぼす難燃剤が含まれるとなると、鮮明かつ高濃度の画像を表現することは極めて難しい。また、インクを受容する能力が小さいことは、インクのブリードを生じさせ、後の工程や取扱いにおいて白場等への汚染(色写り等)の問題を生じさせることにもなる。
一方、Tgが高い重合体を用いる場合、被膜の形成はするものの多孔性であり表面は平滑な状態ではないため、成膜性に劣り、硬い被膜となる。特に、難燃剤を付加した場合は、更に成膜性を阻害することとなるため、柔軟性のある布帛等に形成した場合には、被膜が割れるといった事態が生じ、耐水性や摩擦等の堅牢度は著しく低下することとなる。
そこでTgの異なる重合体を併用すると、Tgが高い重合体のみで被膜形成された被膜層表面の凹の部分を成膜性の高いTgの低い重合体で埋めることができるため、表面が平滑な状態となり、均一な被膜を形成することができる。従って、含有された難燃剤は隅々まで行きわたり、高堅牢度下で必要且つ十分な難燃性能を発揮することができることとなる。また、インク受容能力に乏しい難燃剤を含有していても被膜が均一に付与されることでインク受容能力を保持することができ、高画質で滲みのない製品を得ることができることとなる。
【0015】
ここで、被膜形成剤のTgの低い重合体は、Tgが0〜40℃の範囲であり(以下、(A)とする。)、Tgの高い重合体は、Tgが65〜130℃の範囲である(以下、(B)とする。)ものが好ましい。
成膜性の高い(A)について、Tgが0℃未満では被膜の形成が容易であるため、繊維表面を被覆しやすく、着色剤が布帛に到達するのを阻害するおそれがあり、Tgが40℃を超えると被膜の硬さがでてくるため、成膜補助という機能を十分に発揮できない場合が生じうるからである。
一方、被膜の主となる(B)についてはTgが65℃未満ではインク受容能力が不十分となるおそれがあり、Tgが130℃を超えると風合いが硬くなり過ぎるため、被膜形成後の表面はヒビ割れた状態となり易く、耐水性、摩擦等の堅牢度が十分に保てないからである。また、使用する布帛の厚みによっては、硬さの影響が出やすいため、(B)については65〜110℃の範囲であれば更に好ましい。(例えば、薄手の布帛を用いた場合に影響が出やすい。)
ここで、比較的被膜の柔らかい(A)を付与するということは、布帛の風合いの良さを妨げず、ドレープ性や暖かみといった布帛の特徴を十分に発揮することができることにもなる。
なお、風合いに優れることから、一般に染色等の後に行われる洗浄工程が不要となり、安価で合理的な製品を得ることができる。
【0016】
本発明でいう重合体としては、ポリメタクリル酸アルキル、ポリメタクリル酸エステル、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリアクリロニトリル、ポリアクリル酸、ポリアクリル酸アルキル、ポリアクリル酸エステル、ポリ酢酸ビニル、ポリウレタン、ポリフッ化ビニル、ポリジビニルベンゼン、ポリビニルピロリドン等の重合体およびこれらを含む共重合体等が挙げられ、特にアクリル系化合物を使用すると布帛に対しての接着性に優れるため好ましい。具体的には、ポリメタクリル酸アルキル、ポリアクリロニトリル、ポリアクリル酸、ポリアクリル酸アルキル、アクリロニトリルースチレン共重合体、アクリロニトリルーブタジエンースチレン共重合体、メタクリル酸メチルースチレン共重合体、スチレンアクリル酸エステル共重合体、アクリル酸メタクリル酸エステル共重合体等が挙げられる。
更に、これらの中でも共重合体は成分の比率を変えることで容易にTgを調整することができ、被膜の形成に適したTgを選定することができるため、共重合体を使用することがより好ましい。
【0017】
上記の重合体よりなる被膜形成剤は布帛に対して、0.2〜20重量%付与するのが好ましい。Tgに関係なく布帛に対して20重量%を越えて付与したとしても、性能的に大きな効果は期待できず、むしろ風合いが必要以上に硬化してしまうからである。またTgに関係なく0.2重量%未満を付与しても繊維表面を十分に被覆することが困難で、十分な画像や難燃性を得ることはできない。
なお、(A)は、(B)よりも少量にするのが好ましい。具体的には添加比率はA:B=1:2〜1:10である。なぜなら(A)を(B)に対して1/2を超えて添加すると形成される被膜層のインク受容能力が劣り汚染等の問題が生じるからである。また(A)を(B)に対して1/10未満の添加では被膜が硬いままであり、ヒビ割れ等による耐久性が劣ってしまうからである。
これらの重合体よりなる被膜形成剤は、エマルジョン化して用いられる。既にエマルジョン化した製品を用いてもよいし、乳化剤にてエマルジョン化させ使用してもよい。
【0018】
本発明の難燃被膜層に含有させる難燃剤としては、公知の難燃剤のいずれもが使用可能であり、ヘキサブロモシクロドデカン、テトラブロモビスフェノール、塩素化パラフィン、デカブロムジフェニルエーテル等のハロゲン系難燃剤、トリクレジルホスフェート、クロロホスフェート、トリエチルホスフェート等のリン系難燃剤、及び三酸化アンチモン、酸化亜鉛、ホウ酸等の無機系難燃剤等が挙げられ、単品で使用しても混合して使用しても良い。
難燃剤の量は布帛に対して5〜30重量%付与することが好ましい。これは布帛に対して5重量%未満を付与しても難燃性の効果を十分に得ることができないためであり、逆に布帛に対して30重量%を越えて付与しても難燃性に大きな変化はなく、必要以上に難燃剤を付与することで処理液の粘度が高くなり、前処理加工において扱いにくいからである。
【0019】
また、前述した被膜形成剤でインクを受容した時、該インクを保持するための水溶性糊剤を付与する必要がある。着色性を阻害せず、大量のインクを保持でき、インクの付与量の変化によるインクジェット特有の濃淡の表現等を可能とするからである。水溶性糊剤としては、一般の捺染に使用される糊が使用できる。具体的には、澱粉(コーンスターチ、米粉、小麦澱粉等)、加工澱粉(デキストリン、ブリティシュガム等)、澱粉誘導体(エーテル化澱粉、エステル化澱粉、ジアルデヒド澱粉、架橋澱粉等)、天然ガム類(グアーガム、ローカストビーンガム、アラビアガム、カラヤガム、クリスタルガム、トラガントガム等)及びこれらの誘導体、セルロース誘導体(カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース等)、ビニル系(ポリビニルアルコール、ポリビニルメチルエーテル等)、アルギン酸ソーダ、カラギーナン、ふのり等が挙げられる。
これらのうち、カルボキシメチルセルロース、アルギン酸ソーダもしくはこれらの混合物が好ましい。特にインク保持力に優れるため、高濃度で着色ができ、鮮明性にも優れるためである。
【0020】
上記処理液を布帛に付与する方法としては、パディング法、スプレー法、浸漬法、コーティング法、ラミネート法、グラビア法、インクジェット法などいずれの方法でも可能であるが、好ましくはパディング法を用いるのが良い。
布帛の風合いやコスト面で優れる点は勿論のこと、単繊維を被覆しかつ繊維間隙は充填しない製品が得られるため、品質を保ちつつ、屋外で使用する際に問題となる風圧等の影響を避けることができるようになるためである。
【0021】
処理液を付与した後は難燃被膜層を仮形成させるため、乾燥処理することが望ましい。不安定な状態ではムラになるおそれがあるためである。処理条件は通常、温度が80〜150℃、時間が0.5〜30分であるが、好ましくは温度が100〜130℃、時間が1〜20分である。80℃未満では効率的に乾燥しにくいという問題があり、150℃を超えると樹脂の被膜化が過剰に進み、着色剤の布帛への移行を妨げることにもなりかねないからである。また、時間が0.5分未満の場合は被膜形成にバラツキを生じるという問題があり、30分を超えると水溶性糊剤が劣化するという問題があるためである。
【0022】
本発明においては使用する布帛は、綿、羊毛、麻、絹等の天然繊維、レーヨン等の再生繊維、アセテート等の半合成繊維、ポリエステル、ポリアミド、アクリル、ビニロン等の合成繊維が挙げられ、再生繊維、半合成繊維、合成繊維は繊維自体に難燃処理をすることも可能である。これらは単独で使用しても複合して使用してもよい。また、これらの布帛の中でも、強度、耐久性や寸法安定性の点からポリエステル繊維、難燃性ポリエステル繊維を使用することが好ましい。
【0023】
インクジェット記録方法としては、荷電変調方式、マイクロドット方式、帯電噴射制御方式、インクミスト方式などの連続方式、ステムメ方式、パルスジェット方式、バブルジェット(登録商標)方式、静電吸引方式などのオン・デマンド方式などいずれも採用可能である。
【0024】
インクジェット方式によるインクの記録後は湿熱による処理を行うのが好ましい。
湿熱による処理を行うのは、インクジェット記録用布帛の表面に着色剤を付与するのみではなく、着色剤を布帛の内部に拡散させるためである。かかることによって高耐候性を発揮することができ、高濃度で深みのある画像を得ることができる。また、難燃被膜層を均一に形成させるためにも加熱することが望ましい。
【0025】
湿熱処理の条件は、ガラス転移温度よりも高い特定の温度で処理するのがよい。好ましくは、温度が100〜190℃、時間が0.5〜60分である。100℃未満では着色剤の発色不良や被膜形成が不十分である等の問題が生じ、190℃を超えると生地の黄変、あるいは被膜形成剤の硬化の問題があるからである。また、時間が0.5分未満では発色や被膜形成にバラツキを生じるという問題があり、60分を超えると退色が進むという問題があるからである。より好ましくは温度が150〜180℃、時間が5〜30分であると効果的に被膜形成ができ、鮮明性にも優れる製品を得ることができる。
【0026】
本発明の難燃被膜層を形成するための処理液には必要に応じて紫外線吸収剤、還元防止剤、酸化防止剤、pH調整剤、ヒドロトロープ剤、乳化剤、浸透剤、濃染剤、ミクロポーラス形成剤等を適宜添加しても差し支えない。
【0027】
着色剤として使用されるのは、分散染料、油溶染料等の水不溶性染料、カチオン染料、反応性染料、酸性染料、直接染料、蛍光染料等の水溶性染料等又は顔料が挙げられるが、高耐候性を発揮させるには直接的に布帛と結合する染色(布帛と着色剤の間に化学的(共有結合、イオン結合、分子間力等)な結合又は物理的な吸着を形成する)により行うことが望ましいため、染料を使用するのが好ましい。従って、使用する布帛の種類によって適宜選択されることになる。また、耐候堅牢度に優れることから、染料の中でも分散染料を使用するのが好ましい。
なお、耐久性が優れうる点からポリエステル繊維、難燃性ポリエステル繊維からなる布帛が望ましいことを前述したが、分散染料はポリエステルを染色することができることから、これらの組合せが最も望ましいこととなる。
また、インクには必要に応じて分散剤、消泡剤、浸透剤、濃染剤、pH調整剤等を添加することが可能である。
【0028】
本発明で得られるインクジェット記録用布帛の表面に公知の機能性加工を施すことができる。
具体的には撥水剤、風合い加工剤、撥油剤、防汚加工剤、親水加工剤、帯電防止剤、平滑剤、スリップ防止剤、つやだし剤、つや消し剤、抗菌防臭剤、消臭加工剤等を付与する加工方法が挙げられる。これらは目的に応じて付与することが好ましく、複数の機能性助剤を混合して付与してもよい。
【0029】
この中でも屋外等の風雨に曝される場所で使用する場合は、高耐候性が要求されるため、撥水加工をしたものが望まれる。しかし、前述したように難燃性及び撥水性はいずれも布帛全体に均一に付与されていないとその機能を発揮しないため、これらを併せ持たせることは難しい。
一方、本発明のインクジェット記録用布帛は土台となる難燃被膜層が均一に形成されているため、撥水剤からなる撥水被膜層もムラなく均一な層を形成することができる。従って、難燃性、撥水性の両機能を持たせることができ、かかる問題を克服することができる。
【0030】
撥水剤としては公知のパラフィン系、フッ素系、ピリジニウム塩類、N−メチロールアルキルアミド、アルキルエチレン尿素、オキザリン誘導体、シリコーン系、トリアジン系、ジルコニウム系がいずれも使用可能であり、単品で使用しても混合して使用しても良い。これらの撥水剤の中でも耐摩擦等の耐久性に優れるフッ素系化合物が好ましい。
また、撥水剤の量は布帛に対して0.05〜10重量%付与することが好ましい。これは布帛に対して0.05重量%未満を付与しても撥水性の効果が得られない。逆に布帛に対して10重量%を越えて付与しても撥水性能に大きな変化はなく、また難燃性を低下させることがあるためである。
【0031】
また、本発明において被膜形成剤としては、好ましい態様であるアクリル系共重合体を用いるため、該助剤がアクリル基を有する化合物であるか、該助剤とアクリル樹脂を混合して付与するのが好ましい。難燃被膜層との接着性に優れるからである。
なお、更に接着性を向上させるために反応促進剤、架橋剤等を添加すると更に好ましい。耐候堅牢度が向上するため、屋外広告等に使用する際に、長期間の使用も可能となる。
【0032】
上記機能性助剤を布帛に付与する方法としては、パディング法、スプレー法、浸漬法、コーティング法、ラミネート法、グラビア法、インクジェット法などいずれの方法でも可能であるが、好ましくはパディング法を用いるのが良い。前述した難燃被膜層の場合と同様の理由による。
【0033】
難燃被膜層を形成した後にインクジェット記録を行うのは、本発明の難燃被膜層はインク受容層の働きを有するためであり、布帛の種類等に起因するインク受容層の付与量による難燃性のバラツキを防ぐことができるからである。
また、湿熱処理の工程を経て撥水被膜層を形成するのは、撥水被膜層の湿熱処理への影響を防ぐためである。
【0034】
本発明の撥水被膜層を形成するための処理液には必要に応じて紫外線吸収剤、還元防止剤、酸化防止剤、pH調整剤、ヒドロトロープ剤、乳化剤等を適宜添加しても差し支えない。
【0035】
【実施例】
以下、本発明の実施例を比較例と共に挙げ、本発明を具体的に説明するが、本発明は以下の実施例によって限定されるものでは無い。
【0036】
<実施例1>
ポリエステル100%の平織物に、次の組成の処理液をパディング法で塗布した。
【0037】
次に、110℃で2分間の乾燥を行った後、以下の処方のインクを使用してオン・デマンド方式シリアル走査型インクジェット印刷装置にて以下の記録条件でフルカラー画像をプリントした。
【0038】
▲2▼インク処方
分散染料 5部
リグニンスルホン酸塩(陰イオン界面活性剤) 4部
信越シリコーン KM−70(消泡剤) 0.05部
(信越化学工業(株)製)
エチレングリコール 10部
ケイ酸 0.1部
イオン交換水 残部
【0039】
なお、使用した染料は、C.I.Disperse Yellow 149、C.I.Disperse Red 92、C.I.Disperse Blue 54、C.I.Disperse Black 1であった。
【0040】
▲3▼記録条件
ノズル径;50μm
駆動電圧;100V
周波数;5kHz
解像度;360dpi
【0041】
上記の条件にてフルカラー画像を記録し、次いで175℃の加熱蒸気で10分間の湿熱処理を行った。その後、以下に示す評価方法に従い、難燃性等の評価を行った。その結果を表1に示す。
【0042】
<実施例2>
実施例1と同様の平織物に、次の組成の処理液をパディング法で塗布した。
【0043】
次に、実施例1と同様の乾燥条件、インク処方、記録条件、および湿熱条件でフルカラー画像をプリントした。その後、以下に示す評価方法に従い、難燃性等の評価を行った。その結果を表1に示す。
【0044】
<実施例3>
実施例1と同様の平織物に、次の組成の処理液をパディング法で塗布した。
【0045】
次に、実施例1と同様の乾燥条件、インク処方、記録条件、および湿熱条件でフルカラー画像をプリントした。その後、以下に示す評価方法に従い、難燃性等の評価を行った。その結果を表1に示す。
【0046】
〈実施例4〉
実施例1に準じてインクジェット記録用布帛を作成し、次の組成の処理液をパディング法で塗布した。
▲4▼処理液
撥水剤 :アサヒガードAG7000 3部
(旭硝子(株)製;フッ素系撥水剤
パーフルオロアルキル基含有アクリル系共重合体エマルション)
架橋剤 :ベッカミンJ−101 1.5部
(大日本インキ化学工業(株))
反応促進剤 :リン酸水素2アンモニウム 0.4部
水 : 95.1部
【0047】
その後、170℃で1.5分間の乾燥を行い、以下に示す評価方法に従い、難燃性、撥水性の評価を行った。その結果を表1に示す。
【0048】
<比較例1>
実施例1と同様の平織物に、次の組成の処理液をパディング法で塗布した。
▲1▼処理液
被膜形成剤 :ポリゾールAT2000 4部
(昭和高分子(株)製;スチレンアクリル酸エステル共重合体エマルション
ガラス転移温度=80℃)
水溶性糊剤 :セロゲンPR 2部
難燃剤 :ビゴールDNT−80 25部
水 : 69部
【0049】
次に、実施例1と同様の乾燥条件、インク処方、記録条件、および湿熱条件でフルカラー画像をプリントした。その後、以下に示す評価方法に従い、難燃性等の評価を行った。その結果を表1に示す。
【0050】
<比較例2>
実施例1と同様の平織物に、次の組成の処理液をパディング法で塗布した。
▲1▼処理液
被膜形成剤 :パスコールJK−747 1部
(明成化学工業(株)製;アクリル酸メタクリル酸エステル共重合体エマルション
ガラス転移温度=32℃)
水溶性糊剤 :セロゲンPR 2部
難燃剤 :ビゴールDNT−80 25部
水 : 72部
【0051】
次に、実施例1と同様の乾燥条件、インク処方、記録条件、および湿熱条件でフルカラー画像をプリントした。その後、以下に示す評価方法に従い、難燃性等の評価を行った。その結果を表1に示す。
【0052】
〈比較例3〉
比較例1に準じてインクジェット記録用布帛を作成し、実施例4に準じて撥水加工を行った。
【0053】
その後、170℃で1.5分間の乾燥を行い、以下に示す評価方法に従い、難燃性、撥水性の評価を行った。その結果を表1に示す。
【0054】
〈評価方法〉
1)JIS L―1091(A−1法:ミクロバーナー法(a燃焼面積、b残炎時間、c残炎時間+残塵時間、d燃焼長さ)D法:コイル法)で評価した
○ 合格
× 不合格
【0055】
2)濃度はフルカラー画像を記録し目視で濃度を判定し、その程度により等級付けた
◎ 濃度が高い
○ やや濃度不足を感じる
△ 濃度不足を感じる
× 極端に濃度が低い
【0056】
3)画質はフルカラー画像を記録し目視で画質を判定し、その程度により等級付けた
◎ 滲みが無く高品位な画質である
○ 僅かに滲みが見られる
△ 滲みが見られる
× 滲みがひどく画質が低い
【0057】
4)耐水性は、白場のある試験布を常温の水に浸漬し染料の白場への汚染の程度を評価した
○ 汚染なし
△ 多少汚染が認められる
× 汚染がひどく、布帛全体に汚染が認められる
【0058】
5)風合いは得られた試験布の風合いを触手で評価した
○ 肌触りがやわらかく、風合いが良好である
△ 肌触りが多少硬い
× 肌触りが硬く、柔軟性がない
【0059】
6)JIS L−1092(スプレー試験)により、試験布の湿潤状態を判定した
○ 表面に湿潤や水滴の付着がないもの
△ 表面に湿潤しないが、小さな水滴の付着を示すもの
× 表面の半分に湿潤を示し小さな個々の湿潤が布を浸透する状態を示すもの
【0060】
表 1
【0061】
表1から明白なように、本発明のインクジェット記録用布帛を使用して作成された実施例1〜4のインクジェット記録物は、確実な難燃性を得ることができ、実施例4からも明白なように撥水性を併せ持つことも可能である。特に実施例1、4のように(A):(B)の比率や温度を調整することにより、濃度、画質にも優れたインクジェット記録物を作成することができる。
【0062】
【発明の効果】
以上のように、本発明によるインクジェット捺染用布帛は、布帛特有のドレープ性や暖かみを失わずに、難燃性、撥水性を併せ持つことができ、且つ高耐候堅牢度であるため、屋内外での懸垂幕、横断幕、広告用シート等に使用するのに効果的である。更には濃度、画質といったインクジェット特有の高品質を十分に表現することができるため、近年のデザイン力の向上に対応したインクジェット記録用布帛を提供することができる。
Claims (4)
- 布帛からなる基材に難燃剤、水溶性糊剤、及び被膜形成剤からなる難燃被膜層が形成されてなるインクジェット記録用布帛であって、該被膜形成剤が、
(A)0〜40℃の範囲のガラス転移温度を有するアクリル系重合体
及び(B)65〜130℃の範囲のガラス転移温度を有するアクリル系重合体
からなることを特徴とするインクジェット記録用布帛。 - 請求項1記載のインクジェット記録用布帛にインクジェット記録を行い、その後、湿熱処理を行うことを特徴とするインクジェット記録方法。
- 請求項1記載のインクジェット記録用布帛にインクジェット記録を行い、その後、湿熱処理を行い、更に、難燃被膜層の表面に撥水剤からなる撥水被膜層を形成することを特徴とするインクジェット記録方法。
- 請求項2又は3記載の方法により得られる記録物。
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