JP4400535B2 - 内燃機関の燃料噴射制御装置 - Google Patents

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Description

本発明は、内燃機関に燃料を主噴射した後にポスト噴射制御を行う燃料噴射制御装置に関する。
車両等に搭載されるガソリンエンジンやディーゼルエンジンなどの内燃機関(以下、エンジンともいう)を駆動したときに排出される排気ガス中には、そのまま大気に排出することが好ましくない物質が含まれている。特に、ディーゼルエンジンの排気ガス中には、カーボンを主成分とする粒子状物質(PM:Particulate Matter)、SOOT(煤)、SOF(可溶性有機成分:Soluble Organic Fraction)などが含まれており、大気汚染の原因になる。
排気ガス中に含まれる粒子状物質(以下、PMという)を浄化する装置としては、パティキュレートフィルタをディーゼルエンジンの排気通路に配置し、排気通路を通過する排気ガス中に含まれるPMを捕集することによって、大気中に放出されるエミッションの量を低減する排気浄化装置が知られている。パティキュレートフィルタとしては、例えばDPF(Diesel Particulate Filter)や、DPNR(Diesel Particulate−NOx Reduction system)触媒が用いられている。
ところで、パティキュレートフィルタを用いてPMの捕集を行う場合、捕集したPMの堆積量が多くなるとパティキュレートフィルタの詰りが生じる。このようなフィルタの詰りが生じると、パティキュレートフィルタを通過する排気の圧力損失が増大し、これに伴うエンジンの排気背圧増大によってエンジン出力低下や燃費の低下が発生する。
このような問題を解消するため、従来、パティキュレートフィルタに捕集されたPMの捕集量(堆積量)がある程度の量に到達したときに、排気温度を上昇させる等の方法により触媒床温を高温化することで、パティキュレートフィルタ上のPMを酸化(燃焼)してPMを再生している。
そのPM再生方法としては、例えば、主燃料噴射後で排気弁が閉じられる前に少量の燃料を副次的に噴射(ポスト噴射)することで、排気ガスを高温化してパティキュレートフィルタに堆積したPMを酸化(燃焼)させる方法がある。なお、ポスト噴射は、フィルタ再生処理のほか、エンジンの性能改善のために行われることもある。
ところが、ポスト噴射を行うと、噴射燃料の一部がシリンダ内壁面に付着し、その付着燃料がピストンリングにて掻き落されて潤滑オイルが希釈される。潤滑オイルが希釈されて粘度が低下すると、エンジンの摺動各部の潤滑が不十分になる。このような問題を解消するため、ポスト噴射中には潤滑オイルを加熱し、潤滑オイル中に希釈された燃料を蒸発させることで、潤滑オイルの燃料による希釈を防止するという方法が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
特開2004−293394号公報 特開2002−371900号公報
ところで、潤滑オイルの加熱により希釈燃料を蒸発させる方法では、加熱装置を別途設ける必要があり、さらに、加熱によって燃料を蒸発させる構成であることから、蒸発燃料をトラップするキャニスタを大型化する必要がある。
本発明はそのような実情を考慮してなされたもので、ポスト噴射による潤滑オイルの燃料希釈の増大を、別途装置を設けることなく簡単な構成のもとに抑制することが可能な内燃機関の燃料噴射制御装置を提供することを目的とする。
本発明は、内燃機関へ燃料を主噴射した後に内燃機関の気筒内へポスト噴射制御を行う燃料噴射制御装置において、前記内燃機関の潤滑オイルの希釈を推定する推定手段と、前記潤滑オイルの希釈推定値が希釈限界値以上であるか否かを判定し、希釈推定値が希釈限界値以上である場合、ポスト噴射を禁止し、前記推定手段による希釈推定値が前記希釈限界値未満であり、かつ、前記希釈限界値よりも小さい所定の判定値以上である場合、前記内燃機関の運転領域のうち、燃料で希釈されやすい特定領域のポスト噴射を禁止するポスト噴射制限手段を備えていることを特徴とする。
本発明において、潤滑オイルの希釈推定値としては、希釈量推定値または希釈率推定値を挙げることができる。以下、希釈量推定値を「希釈量」、希釈率推定値を「希釈率」と言う場合もある。
本発明によれば、ポスト噴射等により潤滑オイルが燃料にて希釈され、その希釈量(または希釈率)が増大して希釈限界値以上となった場合、ポスト噴射を禁止しているので、それ以上の希釈量の増大を別途装置を設けることなく抑制することができる。
ここで、ポスト噴射は触媒暖機を目的として行われることから、触媒浄化の点では可能な限り禁止しない方が好ましい。この点を考慮して、本発明では、推定した希釈量(または希釈率)が希釈限界値未満であり、かつ、希釈限界値よりも小さい所定の判定値以上である場合、内燃機関の運転領域のうち、特定領域のポスト噴射を禁止するという構成を採用する。具体的には、潤滑オイルの希釈量が希釈限界値未満で所定の範囲にある間は、燃料で希釈されやすい運転領域(低エンジン回転数・低負荷の領域)を特定し、その特定領域についてのみポスト噴射を禁止し、ポスト噴射可能な領域でのポスト噴射を実施するという構成を採用することで、ポスト噴射領域を拡大しつつ、潤滑オイルの希釈量の増加を抑制することが可能となる。
このように特定領域のポスト噴射を禁止する場合、その特定領域を希釈量が増大するに従って広領域となるように設定すれば、例えば、潤滑オイルの希釈量の増大に応じて段階的にポスト噴射を禁止することが可能になるので、ポスト噴射領域を更に拡大しながら、潤滑オイルの希釈量の増加を抑制することができる。
本発明において、内燃機関の潤滑オイルの交換が実施されたとき、つまり、燃料が混合されていない新品の潤滑オイルがオイルパン等に貯留されたときには、希釈推定値を0にリセットする。
本発明によれば、内燃機関の潤滑オイルの希釈を推定し、その希釈推定値が希釈限界値以上である場合、ポスト噴射を禁止しているので、潤滑オイルの希釈の増大を、別途装置を設けることなく簡単な構成のもとに抑制することができる。
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
まず、本発明を適用するディーゼルエンジンについて説明する。
−エンジン−
本発明を適用するディーゼルエンジンの概略構成を図1を参照して説明する。なお、図1にはエンジンの1気筒の構成のみを示している。
図1に示すエンジン1は、例えば筒内直噴4気筒エンジンであって、その各気筒を構成するシリンダブロック1a内には上下方向に往復動するピストン1cが設けられている。ピストン1cはコネクティングロッド16を介してクランクシャフト15に連結されており、ピストン1cの往復運動がコネクティングロッド16によってクランクシャフト15の回転へと変換される。
クランクシャフト15にはシグナルロータ17が取り付けられている。シグナルロータ17の外周面には複数の突起(歯)17a・・17aが等角度ごとに設けられている。シグナルロータ17の側方近傍にはクランクポジションセンサ(エンジン回転数センサ)25が配置されている。クランクポジションセンサ25は、例えば電磁ピックアップであって、クランクシャフト15が回転する際にシグナルロータ17の突起17aに対応するパルス状の信号(出力パルス)を発生する。
エンジン1のシリンダブロック1aにはエンジン冷却水温を検出する水温センサ21が配置されている。また、シリンダブロック1aの上端にはシリンダヘッド1bが設けられており、このシリンダヘッド1bとピストン1cとの間に燃焼室1dが形成されている。
エンジン1のシリンダブロックの下側には、潤滑オイルOLを貯留するオイルパン18が設けられている。このオイルパン18に貯留された潤滑オイルOLは、エンジン1の運転時に、異物を除去するオイルストレーナを介してオイルポンプによって汲み上げられ、さらにオイルフィルタで浄化された後に、ピストン1c、クランクシャフト15、コネクティングロッド16などに供給され、各部の潤滑・冷却等に使用される。そして、このようにして供給された潤滑オイルOLは、エンジン1の各部の潤滑・冷却等のために使用された後、オイルパン18に戻され、再びオイルポンプによって汲み上げられるまでオイルパン18内に貯留される。
エンジン1のシリンダヘッド1bには、エンジン1の燃焼室1d内に燃料を直接噴射するためのインジェクタ(燃料噴射弁)2が設けられている。インジェクタ2にはコモンレール(蓄圧室)3が接続されており、インジェクタ2の電磁弁が開いている間、コモンレール3内の燃料がインジェクタ2から燃焼室1d内に噴射される。コモンレール3にはレール圧センサ24が配置されている。
コモンレール3には燃料ポンプであるサプライポンプ4が接続されている。サプライポンプ4は、エンジン1のクランクシャフト15の回転力よって駆動され、このサプライポンプ4の駆動により、燃料タンク10から燃料をコモンレール3に供給し、インジェクタ2を所定のタイミングで開弁することにより、エンジン1の各気筒の燃焼室1d内に燃料が噴射される。この噴射された燃料は燃焼室1d内で燃焼され排気ガスとなって排気される。なお、インジェクタ2の開弁タイミング(燃料噴射タイミング)は後述するECU(電子制御ユニット)100によって制御される。
以上のインジェクタ2、コモンレール3、サプライポンプ4、燃料タンク10、及び、ECU100等によって燃料噴射制御装置が構成されている。
一方、エンジン1の燃焼室1dには吸気通路11と排気通路12が接続されている。吸気通路11と燃焼室1dとの間に吸気バルブ13が設けられており、この吸気バルブ13を開閉駆動することにより、吸気通路11と燃焼室1dとが連通または遮断される。また、排気通路12と燃焼室1dとの間に排気バルブ14が設けられており、この排気バルブ14を開閉駆動することにより、排気通路12と燃焼室1dとが連通または遮断される。これら吸気バルブ13及び排気バルブ14の開閉駆動は、クランクシャフト15の回転が伝達される吸気カムシャフト及び排気カムシャフトの各回転によって行われる。
吸気通路11には、エアクリーナ8、吸気量を検出するエアフローメータ22、吸気温センサ23(エアフローメータ22に内蔵)及び吸気絞り弁7などが配置されている。また、排気通路12には触媒装置9などが配置されている。
触媒装置9は、NOx吸蔵還元型触媒91とDPNR触媒92とを備えている。NOx吸蔵還元型触媒91は、排気中に多量の酸素が存在している状態においてはNOxを吸蔵し、排気中の酸素濃度が低く、かつ還元成分(例えば燃料の未燃成分(HC))が多量に存在している状態においてはNOxをNO2もしくはNOに還元して放出する。NO2やNOとして放出されたNOxは、排気中のHCやCOと速やかに反応することによってさらに還元されてN2となる。また、HCやCOは、NO2やNOを還元することで、自身は酸化されてH2OやCO2となる。
DPNR触媒92は、例えば多孔質セラミック構造体にNOx吸蔵還元型触媒を担持させたものであり、排気ガス中のPMは多孔質の壁を通過する際に捕集される。また、排気ガスの空燃比がリーンの場合、排気ガス中のNOxはNOx吸蔵還元型触媒に吸蔵され、空燃比がリッチになると吸蔵したNOxは還元・放出される。さらに、DPNR触媒92には、捕集したPMを酸化・燃焼する触媒(例えば白金等の貴金属を主成分とする酸化触媒)が担持されている。
エンジン1には、排気圧を利用して吸入空気を過給するターボチャージャ(過給機)5が設けられている。ターボチャージャ5は、排気通路12に配置されたタービン51と、吸気通路11に配置されたコンプレッサ52によって構成されており、排気通路12に配置のタービン51が排気のエネルギによって回転し、これに伴って吸気通路11に配置のコンプレッサ52が回転する。そして、コンプレッサ52の回転により吸入空気が過給され、エンジン1の各気筒の燃焼室1dに過給空気が強制的に送り込まれる。ターボチャージャ5は可変ノズル式ターボチャージャであって、タービン51側に可変ノズルベーン機構53が設けられており、この可変ノズルベーン機構53の開度を調整することにより、エンジン1の過給圧を調整することができる。可変ノズルベーン機構53の開度は、ECU100によって制御されるDCモータ等のアクチュエータ54によって調整される。
ターボチャージャ5のコンプレッサ52の下流側の吸気通路11には、コンプレッサ52にて圧縮されて高温となった吸入空気を冷却するためのインタークーラ55が設けられている。
さらに、エンジン1にはEGR装置6が設けられている。EGR装置6は、吸入空気に排気ガスの一部を導入することで、気筒内の燃焼温度を低下させてNOxの発生量を低減させる装置であって、吸気通路11と排気通路12とを連通するEGR通路61、このEGR通路61に設けられたEGRバルブ62等によって構成されており、EGRバルブ62の開度を調整することにより、排気通路12から吸気通路11に導入されるEGR量(排気還流量)を調整することができる。なお、EGRバルブ62の開度はECU100によって制御される。
−ECU−
ECU100は、図2に示すように、CPU101、ROM102、RAM103及びバックアップRAM104などを備えている。ROM102は、各種制御プログラムや、それら各種制御プログラムを実行する際に参照されるマップ等が記憶されている。CPU101は、ROM102に記憶された各種制御プログラムやマップに基づいて各種の演算処理を実行する。また、RAM103は、CPU101での演算結果や各センサから入力されたデータ等を一時的に記憶するメモリであり、バックアップRAM104は、例えばエンジン1の停止時にその保存すべきデータ等を記憶する不揮発性のメモリである。
以上のROM102、CPU101、RAM103及びバックアップRAM104は、バス107を介して互いに接続されるとともに、外部入力回路105及び外部出力回路106と接続されている。外部入力回路105には、水温センサ21、エアフローメータ22、吸気温センサ23、レール圧センサ24、クランクポジションセンサ25、及び、アクセル開度センサ26などが接続されている。一方、外部出力回路106には、インジェクタ2、吸気絞り弁7、サプライポンプ4の電磁スピル弁41、ターボチャージャ5の可変ノズルベーン機構53の開度を調整するアクチュエータ54、及び、EGRバルブ62などが接続されている。
そして、ECU100は、上記した各種センサの出力に基づいて、エンジン1の各種制御を実行する。さらに、ECU100は、下記のPM再生制御、及び、ポスト噴射制限制御を実行する。
−PM再生制御−
まず、ECU100は、DPNR触媒92へのPMの堆積量を推定している。PM堆積量を推定する方法としては、例えば、エンジン1の運転状態(例えば、排気温度、燃料噴射量、エンジン回転数等)に応じたPM付着量を予め実験等により求めてマップ化しておき、このマップにより求められるPM付着量を積算してPMの堆積量とする方法が挙げられる。また、車両走行距離もしくは走行時間に応じてPMの堆積量を推定する方法、あるいは、触媒装置9にDPNR触媒92の上流側圧力と下流側圧力との差圧を検出する差圧センサを設け、そのセンサ出力に基づいてDPNR触媒92に捕集されたPMの堆積量を推定する方法などが挙げられる。
そして、ECU100は、PM推定量が所定の基準値(限界堆積量)以上となったときにDPNR触媒92の再生時期であると判定して、エンジン1への燃料の主噴射の後にポスト噴射制御(PM再生制御)を行う。このポスト噴射により、DPNR触媒92の触媒床温が上昇し、DPNR触媒92に堆積しているPMが酸化され、H2OやCO2となって排出する。
ここで、ポスト噴射制御としては、例えば、DPNR触媒92を再生可能な目標排気温まで昇温するための目標ポスト噴射量及び噴射時期を定めたPM再生用制御マップを、予め実験・計算によって作成してECU100のROM102内に記憶しておき、そのPM再生用制御マップを用いてインジェクタ2を制御するという方法を採用する。
なお、ECU100は、以上のPM再生制御のほか、S被毒回復制御やNOx還元制御を実行する場合もある。S被毒回復制御とは、ポスト噴射等により触媒床温を高温化するとともに、排気ガスの空燃比をストイキあるいはリッチとし、NOx吸蔵還元型触媒91及びDPNR触媒92内のNOx吸蔵還元型触媒から硫黄分を放出させる制御である。また、NOx還元制御は、ポスト噴射等によって触媒床温を高温化することにより、NOx吸蔵還元型触媒91及びDPNR触媒92内のNOx吸蔵還元型触媒に吸蔵されたNOxを、N2、CO2及びH2Oに還元して放出する制御である。
これらのPM再生制御、S被毒回復制御及びNOx還元制御は、それぞれの実行要求があったときに行われるが、各制御の実行が重なったときには、例えば、PM再生制御→S被毒回復制御→NOx還元制御の順で優先して行われる。
−ポスト噴射制限制御−
まず、ECU100で実行するポスト噴射制限制御に用いる潤滑オイルOLの希釈量(希釈推定値)及びポスト噴射の制限マップについて説明する。
[希釈量]
潤滑オイルOL希釈量については、主噴射、パイロット噴射(主噴射の直前に行われる燃料噴射)、及び、ポスト噴射の各噴射時におけるエンジン回転数NEに応じた噴射量・噴射タイミング等に基づいてマップを参照して潤滑オイルOLの燃料による希釈量を推定し、その各燃料噴射毎の推定希釈量を積算して現在の希釈量を求める。希釈量を推定するマップは、エンジン回転数NE、燃料噴射量、噴射タイミング等をパラメータとして、予め実験・計算等に基づいて経験的に取得した値をマップ化して、ECU100のROM102内に記憶しておく。
なお、希釈量は燃料の蒸発によって変化するため、その燃料蒸発分を補正することが好ましい。その補正は、例えばエンジン冷却水温をパラメータとして、予め実験・計算等に基づいて経験的に取得した値をマップ化して、ECU100のROM102内に記憶しておき、水温センサ21の出力から読み込んだ現在の冷却水温に基づいてマップを参照して算出するようにすればよい。
[制限マップ]
この例においてポスト噴射制限制御には、図5に示すような制限マップMを用いる。この制限マップMは、エンジン1の運転領域に応じてポスト噴射禁止を行うか否かを判別するのに用いられるマップであって、エンジン回転数NEとアクセル開度をパラメータとして作成されている。制限マップMには、A領域、B領域及びC領域が設定されており、後述する条件が成立したときにA領域→B領域→C領域の順番でポスト噴射を段階的に禁止するようになっている。制限マップMは、エンジン回転数及び負荷(アクセル開度)が低いほど、潤滑オイルOLが希釈されやすい点を考慮して、上記したA領域、B領域、C領域を経験的に求めてマップ化したものであり、ECU100のROM102内に予め設定されている。
[ポスト噴射制限制御の一例]
まず、この例のポスト噴射制限制御では、潤滑オイルOLの希釈限界値xlimitと、3つの判定値α1、α2、α3を用いる。
判定値α1、α3は、現在の希釈量xが上記したポスト噴射を段階的に禁止する範囲内に入っているか否かを判定するための判定値である。また、判定値α1、α2、α3は、上記したポスト噴射を禁止する運転領域(図5の制限マップMのA領域、B領域、C領域)を決定する際に用いる判定値であって、これら判定値α1、α2、α3は、ポスト噴射時の燃料による潤滑オイルOLの希釈量を考慮して、予め実験・計算等に基づいて経験的に取得した値を設定している。また、各判定値α1、α2、α3と希釈限界値xlimitとの大小の関係はα1<α2<α3<xlimitである。
次に、ECU100が実行するポスト噴射制限制御の一例を、図3に示すフローチャートを参照しながら説明する。なお、このルーチンは所定時間毎、例えば数ms毎に実行される。また、所定のクランク角毎に実行するようにしてもよい。
ステップST1において、上記した推定処理にて現在の潤滑オイルOLの希釈量xを採取し、その現在の希釈量xが希釈限界値α1以上であるか否かを判定する(ステップST2)。その判定結果が否定判定である場合はこのルーチンを一旦終了する。ステップST2の判定結果が肯定判定である場合はステップST3に進む。
ステップST3では、現在の希釈量xが、上記したポスト噴射を段階的に禁止する範囲(α1≦x≦α3)に入っているか否かを判定する。その判定結果が否定判定である場合はステップST9に進む。ステップST3の判定結果が肯定判定である場合(α1≦x≦α3)、ステップST4に進んで、図5に示す制限マップMのA領域のポスト噴射を禁止する。
ステップST5において、現在の希釈量xが判定値α2以上であるか否かを判定する。その判定結果が否定判定である場合はこのルーチンを一旦終了する。ステップST5の判定結果が肯定判定である場合、ステップST6に進んで、図5に示す制限マップMのA領域に加えてB領域のポスト噴射を禁止する。
ステップST7において、現在の希釈量xが判定値α3以上であるか否かを判定する。その判定結果が否定判定である場合はこのルーチンを一旦終了する。ステップST7の判定結果が肯定判定である場合、ステップST8に進んで、図5に示す制限マップMのA領域、B領域に加えてC領域のポスト噴射を禁止する。
そして、潤滑オイルOLの希釈量が増大して、現在の希釈量xが希釈限界値xlimit以上となった場合(ステップST9の判定結果が肯定判定)、全ての運転領域のポスト噴射を禁止する(ステップST10)。この後、例えば潤滑オイル交換の際にリセットスイッチが操作(スイッチON)され、潤滑オイルOLの交換が行われたことを検知した時点で(ステップST11の判定結果が肯定判定)、ステップST12において希釈量xをリセット(x=0)する。
以上のように、この例のポスト噴射制限制御によれば、ポスト噴射等により潤滑オイルOLが燃料にて希釈され、その希釈量xが増大して希釈限界値xlimit以上となった場合、ポスト噴射を禁止しているので、それ以上の希釈量の増大を別途装置を設けることなく抑制することができる。
しかも、潤滑オイルOLの希釈量xが所定の範囲(α1≦x≦α3)にある間は、燃料で希釈されやすい複数の領域(A領域、B領域、C領域)を特定し、その複数の領域(A領域、B領域、C領域)について、A領域→B領域→C領域の順番でポスト噴射を段階的に禁止している。このようにポスト噴射を段階的に禁止することで、従来よりも広範囲でポスト噴射が可能になるという効果と、ポスト噴射領域を縮小することで希釈量の増加を防ぐことができるという効果を達成することができる。
[ポスト噴射制限制御の他の例]
まず、この例のポスト噴射制限制御では、潤滑オイルOLの希釈限界値xlimitと、3つの判定値β1、β2、β3を用いる。判定値β1、β2、βは、希釈限界値xlimitと現在の希釈量xとの差(xlimit−x)に対して設定される値である。
判定値β1、β3は、現在の希釈量xが上記したポスト噴射を段階的に禁止する範囲内に入っているか否かを判定するための判定値である。また、判定値β1、β2、β3は、上記したポスト噴射を禁止する運転領域(図5の制限マップMのA領域、B領域、C領域)を決定する際に用いる判定値である。これら判定値β1、β2、β3は、ポスト噴射時の燃料による潤滑オイルOLの希釈量を考慮して、予め実験・計算等に基づいて経験的に取得した値を設定している。また、判定値β1、β2、β3の大小の関係はβ3<β2<β1である。
なお、この例では、希釈限界値xlimitと現在の希釈量xとの差(xlimit−x)に対して判定値β1、β2、β3を設定しているので、xlimit−xがβ1、β2またはβ3以下である場合が、上記した例の希釈量xが判定値α1、α2またはα3以上である場合に相当する。
次に、ECU100が実行するポスト噴射制限制御の他の例を、図4に示すフローチャートを参照しながら説明する。なお、このルーチンは所定時間毎、例えば数ms毎に実行される。また、所定のクランク角毎に実行するようにしてもよい。
ステップST21において、上記した推定処理にて現在の潤滑オイルOLの希釈量xを採取し、その現在の希釈量xと希釈限界値xlimitとの差(xlimit−x)がβ1以上であるか否かを判定する(ステップST22)。その判定結果が否定判定である場合はこのルーチンを一旦終了する。ステップST22の判定結果が肯定判定である場合はステップST23に進む。
ステップST23では、希釈限界値xlimitと現在の希釈量xとの差(xlimit−x)が上記したポスト噴射を段階的に禁止する範囲(β3≦xlimit−x≦β1)内に入っているか否かを判定する。その判定結果が否定判定である場合はステップST29に進む。ステップST23の判定結果が肯定判定である場合(β3≦xlimit−x≦β1)、ステップST24に進んで、図5に示す制限マップMのA領域のポスト噴射を禁止する。
ステップST25において、希釈限界値xlimitと現在の希釈量xとの差(xlimit−x)が判定値β2以下であるか否かを判定する。その判定結果が否定判定である場合は、このルーチンを一旦終了する。ステップST25の判定結果が肯定判定である場合、ステップST26に進んで、図5に示す制限マップMのA領域に加えてB領域のポスト噴射を禁止する。
ステップST27において、希釈限界値xlimitと現在の希釈量xとの差(xlimit−x)が判定値β3以下であるか否かを判定する。その判定結果が否定判定である場合は、このルーチンを一旦終了する。ステップST27の判定結果が肯定判定である場合、ステップST28に進んで、図5に示す制限マップMのA領域、B領域に加えてC領域のポスト噴射を禁止する。
そして、潤滑オイルOLの希釈量が増大して、希釈限界値xlimitと現在の希釈量xとの差(xlimit−x)が0以下(0またはマイナス)となった場合(ステップST29の判定結果が肯定判定)、全ての運転領域のポスト噴射を禁止する(ステップST30)。この後、例えば潤滑オイル交換の際にリセットスイッチが操作(スイッチON)され、潤滑オイルOLの交換が行われたことを検知した時点で(ステップST31の判定結果が肯定判定)、ステップST32において希釈量xをリセット(x=0)する。
以上のように、この例のポスト噴射制限制御によれば、ポスト噴射等により潤滑オイルOLが燃料にて希釈され、その希釈量xが増大して、希釈限界値xlimitと現在の希釈量xとの差が0またはマイナス値となった場合(xlimit−x≦0)、つまり、現在の希釈量xが希釈限界値xlimit以上となった場合、ポスト噴射を禁止しているので、それ以上の希釈量の増大を別途装置を設けることなく抑制することができる。
しかも、希釈限界値xlimitと現在の希釈量xとの差が所定の範囲(β3≦xlimit−xx≦β1)にある間は、燃料で希釈されやすい複数の領域(A領域、B領域、C領域)を特定し、その複数の領域(A領域、B領域、C領域)について、A領域→B領域→C領域の順番でポスト噴射を段階的に禁止している。このようにポスト噴射を段階的に禁止することで、従来よりも広範囲でポスト噴射が可能になるという効果と、ポスト噴射領域を縮小することで希釈量の増加を防ぐことができるという効果を達成することができる。
−他の実施形態−
以上の例では、現在の希釈量x(または希釈限界値xlimitと現在の希釈量xとの差(xlimit−x))が、ポスト噴射を段階的に禁止する範囲にある間に、A領域、B領域、C領域の3段階でポスト噴射を禁止しているが、これに限られることなく、ポスト噴射の禁止は、1段階または2段階であってもよいし、4段階以上であってもよい。
以上の例では、現在の希釈量xを推定してポスト噴射制限制御を実行しているが、これに限られることなく、現在の希釈率を推定してポスト噴射制限制御を実行するようにしてもよい。
以上の例では、本発明の排気浄化装置を筒内直噴4気筒ディーゼルエンジンに適用した例を示したが、本発明はこれに限られることなく、例えば筒内直噴6気筒ディーゼルエンジンなど他の任意の気筒数のディーゼルエンジンにも適用できる。また、筒内直噴ディーゼルエンジンに限られることなく、他のタイプのディーゼルエンジンにも本発明を適用することは可能である。また、車両用に限らず、その他の用途に使用されるエンジンにも適用可能である。
以上の例では、触媒装置9として、NOx吸蔵還元型触媒91及びDPNR触媒91を備えたものとしたが、NOx吸蔵還元型触媒91及びDPFを備えたものとしてもよい。
本発明を適用するディーゼルエンジンの一例を示す概略構成図である。 ECU等の制御系の構成を示すブロック図である。 ECUが実行するポスト噴射制限制御の一例を示すフローチャートである。 ECUが実行するポスト噴射制限制御の他の例を示すフローチャートである。 図3または図4のポスト噴射制限制御に用いる制限マップを示す図である。
符号の説明
1 エンジン
2 インジェクタ
3 コモンレール
4 サプライポンプ
5 ターボチャージャ
6 EGR装置
7 吸気絞り弁
9 触媒装置
91 NOx吸蔵還元型触媒
92 DPNR触媒
10 燃料タンク
18 オイルパン
25 クランクポジションセンサ
26 アクセル開度センサ
100 ECU

Claims (3)

  1. 内燃機関へ燃料を主噴射した後に内燃機関の気筒内へポスト噴射制御を行う燃料噴射制御装置において、
    前記内燃機関の潤滑オイルの希釈を推定する推定手段と、前記潤滑オイルの希釈推定値が希釈限界値以上であるか否かを判定し、希釈推定値が希釈限界値以上である場合、ポスト噴射を禁止し、前記推定手段による希釈推定値が前記希釈限界値未満であり、かつ、前記希釈限界値よりも小さい所定の判定値以上である場合、前記内燃機関の運転領域のうち、燃料で希釈されやすい特定領域のポスト噴射を禁止するポスト噴射制限手段を備えていることを特徴とする内燃機関の燃料噴射制御装置。
  2. 請求項1記載の内燃機関の燃料噴射制御装置において、
    前記ポスト噴射を禁止する特定領域は、前記希釈推定値が増大するに従って広領域となるように設定されていることを特徴とする内燃機関の燃料噴射制御装置。
  3. 請求項1または2記載の内燃機関の燃料噴射制御装置において、
    前記内燃機関の潤滑オイルの交換が実施されたことを検知したときには、前記希釈推定値を0にリセットすることを特徴とする内燃機関の燃料噴射制御装置。
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