JP4399645B1 - 唾液分泌促進器 - Google Patents
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Abstract
【課題】無歯顎によりまたは欠損歯が多いことにより生ずる唾液分泌量減少を回復させ、無歯顎者であっても容易に唾液腺刺激訓練ができる唾液分泌促進器を提供する。
【解決手段】弾性樹脂で成形された棒状体の断面の上下辺が直線状、外側に凸の曲線状または内側に凸の曲線状を呈し、該上下面の内の少なくとも一つの面が歯肉で覆われた臼歯部分の無歯顎堤に当接する咬合部と、前記咬合部に連設される把持部と、からなり、前記上下辺の中心点間距離は有歯列状態の中心咬合位における上下の顎堤頂間距離に略同じ、または該顎堤頂間距離の略1/2である、構成とした。
【選択図】図1
【解決手段】弾性樹脂で成形された棒状体の断面の上下辺が直線状、外側に凸の曲線状または内側に凸の曲線状を呈し、該上下面の内の少なくとも一つの面が歯肉で覆われた臼歯部分の無歯顎堤に当接する咬合部と、前記咬合部に連設される把持部と、からなり、前記上下辺の中心点間距離は有歯列状態の中心咬合位における上下の顎堤頂間距離に略同じ、または該顎堤頂間距離の略1/2である、構成とした。
【選択図】図1
Description
本発明は、唾液腺を刺激して唾液の分泌を促す唾液分泌促進器に関し、より詳しくは義歯使用の高齢者を対象とする唾液分泌促進器に関する。
現代では少子高齢化、そして社会保障の不安、そこから来る医療不安が日々の生活を覆う中、いかに健康的な生活するかが求められているが、多数の高齢者は、分泌される唾液が減少したり、あるいは嚥下機能が低下したりすることに悩まされている。
嚥下機能を回復させる訓練具としては、特許文献1や特許文献2に開示のものがある。
特許文献1に開示の「嚥下障害リハビリ訓練器」は、「介護者、セラピストあるいは嚥下障害者本人が容易かつ安全に嚥下訓練を行なうことのできる嚥下障害リハビリ訓練器を提供する」ことを課題としていて、その解決手段を「使用者が把持する把持部と、この把持部の先端側に連設され口腔内に挿入可能とされている歯列状の被咬合部とを有しているので、被咬合部を上下歯列の全体で咬合することにより上下歯茎部を刺激して、唾液の分泌を促進することができ、容易かつ安全に嚥下訓練を行なうことができる」としている。
また、特許文献2に開示の「口腔筋トレーニング器具」は、「口輪筋、咀嚼筋群、舌筋群の3つからなる筋群を1つの器具で同時にトレーニングできるようにする」ことを課題としていて、その解決手段として「本発明の口腔筋トレーニング器具は、弾性樹脂を成型してなり、実質的に人間の歯列に沿うU字形に形成された咬合部と、咬合部の中央から後方に延在する舌支え部と、咬合部の中央から前方に延在する棒状の突出部と、当該突出部と直交し咬合部とほぼ同一平面上に延在する横棒部を具えている。咬合部は、対象とする利用者層の左右の第一大臼歯の約半分まで延在する長さに形成され、両端部が幅広く略円形をなすよう形成されている。舌支え部は、咬合部から延在する細長い支持棒と、当該支持棒の先端に設けられた概略球形あるいは略俵形の舌支え本体とから構成されており、咬合部の延在面から約20度下向きに延在している」構成としている。
特許文献1に開示の「嚥下障害リハビリ訓練器」は、「介護者、セラピストあるいは嚥下障害者本人が容易かつ安全に嚥下訓練を行なうことのできる嚥下障害リハビリ訓練器を提供する」ことを課題としていて、その解決手段を「使用者が把持する把持部と、この把持部の先端側に連設され口腔内に挿入可能とされている歯列状の被咬合部とを有しているので、被咬合部を上下歯列の全体で咬合することにより上下歯茎部を刺激して、唾液の分泌を促進することができ、容易かつ安全に嚥下訓練を行なうことができる」としている。
また、特許文献2に開示の「口腔筋トレーニング器具」は、「口輪筋、咀嚼筋群、舌筋群の3つからなる筋群を1つの器具で同時にトレーニングできるようにする」ことを課題としていて、その解決手段として「本発明の口腔筋トレーニング器具は、弾性樹脂を成型してなり、実質的に人間の歯列に沿うU字形に形成された咬合部と、咬合部の中央から後方に延在する舌支え部と、咬合部の中央から前方に延在する棒状の突出部と、当該突出部と直交し咬合部とほぼ同一平面上に延在する横棒部を具えている。咬合部は、対象とする利用者層の左右の第一大臼歯の約半分まで延在する長さに形成され、両端部が幅広く略円形をなすよう形成されている。舌支え部は、咬合部から延在する細長い支持棒と、当該支持棒の先端に設けられた概略球形あるいは略俵形の舌支え本体とから構成されており、咬合部の延在面から約20度下向きに延在している」構成としている。
そして、特許文献1に開示の訓練具は、「このような状態において、嚥下障害者が嚥下障害リハビリ訓練器の被咬合部を上下歯列の全体で咬合することにより上下歯茎部を刺激して、唾液の分泌を促進することができ、容易かつ安全に嚥下訓練を行なうことができる」(段落番号〔0040〕の記載)という効果があるとされ、特許文献2に開示の訓練具は、「すなわち、例えば噛むトレーニングをすると唾液が多量に分泌される。すると、唾液が口からこぼれないように口を閉じる筋肉も活発化し、同時に嚥下に用いる筋肉や舌の運動も活性化する」(段落番号〔0025〕の記載)という効果があるとされている。
ところで、唾液分泌が減少すると、それに伴う口腔内乾燥感を訴える者が多い。すなわち、全身の健康を維持するには、まず日々の食生活の安定が大切であるが、一般的に高齢者と呼ばれる60代後半以降の世代は、戦後、高度経済成長を支えるため過度な業務を強いられ、歯科疾患の予防が疎かになり、残っている歯が少なく、義歯の使用者が非常に多い。この義歯の材料には、基本的にレジン(合成樹脂)が使われていて、このレジンには吸湿性があるため、義歯使用者の多くが口腔内乾燥感を訴えると考えられる。
しかし、社会保険制度上、義歯は欠損歯の治療の中心になっているのが現状であるものの、義歯は天然の歯牙と比べて、咀嚼機能が劣り、それに加えて義歯は口腔内で異物感覚が高く、その違和感から食事のときに外してしまう者もいるのが現状である。そして、これまで無歯顎者は好むと好まざると関係なく、歯科治療として義歯装着を余儀なくされてきていて、義歯装着による口腔内乾燥感や咀嚼量の減少からくる唾液減少は加齢によるもので仕方がないものとされてきていた。
しかし、社会保険制度上、義歯は欠損歯の治療の中心になっているのが現状であるものの、義歯は天然の歯牙と比べて、咀嚼機能が劣り、それに加えて義歯は口腔内で異物感覚が高く、その違和感から食事のときに外してしまう者もいるのが現状である。そして、これまで無歯顎者は好むと好まざると関係なく、歯科治療として義歯装着を余儀なくされてきていて、義歯装着による口腔内乾燥感や咀嚼量の減少からくる唾液減少は加齢によるもので仕方がないものとされてきていた。
一方で、特許文献1および特許文献2に開示されているように、唾液の分泌は咀嚼行為や嚥下行為と密接に関係しているものの、これらの訓練具は、主に有歯顎者を対象とするものであり、必ずしも義歯使用者や無歯顎者に適した訓練具ではなかった。
そこで、本発明は、無歯顎によりまたは欠損歯が多いことにより生ずる唾液分泌量減少を回復させ、義歯使用者や無歯顎者であっても容易に唾液腺刺激訓練ができる唾液分泌促進器を提供することを課題とする。
そこで、本発明は、無歯顎によりまたは欠損歯が多いことにより生ずる唾液分泌量減少を回復させ、義歯使用者や無歯顎者であっても容易に唾液腺刺激訓練ができる唾液分泌促進器を提供することを課題とする。
本発明者は、鋭意研究を重ねた結果、中心咬合位の喪失者である義歯使用者や無歯顎者に唾液腺刺激をして、唾液分泌が多くなると、咀嚼能力や嚥下能力も回復する、との知見を得た。本発明はこの知見に基づくものである。
上記課題を解決するために、請求項1に係る唾液分泌促進器は、中心咬合位の喪失者に使用される唾液分泌を促進させる器具であって、弾性樹脂で成形された棒状体の断面における上下辺が直線状、外側に凸の曲線状または内側に凸の曲線状を呈し、該棒状体の上下面の内の少なくとも一つの面が歯肉で覆われた臼歯部分の無歯顎堤に当接する咬合部と、前記咬合部に連設される把持部と、からなり、前記棒状体の上下辺の中心点間距離が10mmないし30mmである、ことを特徴としている。なお、弾性樹脂としては、例えば、シリコンゴムやポリエチレンゴムがある。また、咬合部の上下とは、唾液分泌促進器を咬合したときの向きをいう。なお、無歯顎堤とは、本来歯があった部分で歯肉が盛り上がった場所をいい、全く歯がない状態では上顎では口蓋、下顎では舌の周囲に対して馬蹄形に歯肉が盛り上がっているところをいう。そして、有歯列状態の中心咬合位とは、歯列がある状態においての上顎と下顎の位置であり、上顎と下顎の歯列が最も多くの部位で接触し、安定して噛み合った状態をいう。
また、請求項2に係る唾液分泌促進器は、請求項1に記載の唾液分泌促進器であって、前記咬合部は前記把持部に対し、着脱自在に連設されている、ことを特徴としている。
そして、請求項3に係る唾液分泌促進器は、請求項1または請求項2に記載の唾液分泌促進器であって、前記把持部は前記咬合部よりも硬い材料で成形されている、ことを特徴としている。なお、把持部の素材は、合成樹脂以外に金属製や木製であっても良い。
さらに、請求項4に係る唾液分泌促進器は、請求項1ないし請求項3のいずれかに記載の唾液分泌促進器であって、前記把持部は上下面が扁平または前記咬合部と略同一形状に成形されている、ことを特徴としている。
また、請求項5に係る唾液分泌促進器は、請求項1ないし請求項4のいずれかに記載の唾液分泌促進器であって、前記咬合部の表面には口腔ケア用の芳香剤が塗布されている、ことを特徴としている。
上記課題を解決するために、請求項1に係る唾液分泌促進器は、中心咬合位の喪失者に使用される唾液分泌を促進させる器具であって、弾性樹脂で成形された棒状体の断面における上下辺が直線状、外側に凸の曲線状または内側に凸の曲線状を呈し、該棒状体の上下面の内の少なくとも一つの面が歯肉で覆われた臼歯部分の無歯顎堤に当接する咬合部と、前記咬合部に連設される把持部と、からなり、前記棒状体の上下辺の中心点間距離が10mmないし30mmである、ことを特徴としている。なお、弾性樹脂としては、例えば、シリコンゴムやポリエチレンゴムがある。また、咬合部の上下とは、唾液分泌促進器を咬合したときの向きをいう。なお、無歯顎堤とは、本来歯があった部分で歯肉が盛り上がった場所をいい、全く歯がない状態では上顎では口蓋、下顎では舌の周囲に対して馬蹄形に歯肉が盛り上がっているところをいう。そして、有歯列状態の中心咬合位とは、歯列がある状態においての上顎と下顎の位置であり、上顎と下顎の歯列が最も多くの部位で接触し、安定して噛み合った状態をいう。
また、請求項2に係る唾液分泌促進器は、請求項1に記載の唾液分泌促進器であって、前記咬合部は前記把持部に対し、着脱自在に連設されている、ことを特徴としている。
そして、請求項3に係る唾液分泌促進器は、請求項1または請求項2に記載の唾液分泌促進器であって、前記把持部は前記咬合部よりも硬い材料で成形されている、ことを特徴としている。なお、把持部の素材は、合成樹脂以外に金属製や木製であっても良い。
さらに、請求項4に係る唾液分泌促進器は、請求項1ないし請求項3のいずれかに記載の唾液分泌促進器であって、前記把持部は上下面が扁平または前記咬合部と略同一形状に成形されている、ことを特徴としている。
また、請求項5に係る唾液分泌促進器は、請求項1ないし請求項4のいずれかに記載の唾液分泌促進器であって、前記咬合部の表面には口腔ケア用の芳香剤が塗布されている、ことを特徴としている。
上記解決手段により、本発明は以下の効果を奏する。
(1)本発明は、棒状に成形された弾性樹脂製の咬合部と、該咬合部に連設される把持部とから構成される、という極めて簡単な構成ながら、咬合部の高さを中心咬合位における上下の顎堤頂間距離に略同じ、または顎堤頂間距離の略1/2としている。すなわち、本発明に係る唾液分泌促進器は、義歯を外した状態で使用するが、上顎の顎堤と下顎の顎堤ともに義歯の場合は、咬合部の高さが義歯装着時における咬合時の上下の顎堤頂間距離に略同じものを使用し、上顎の顎堤または下顎の顎堤のいずれかが義歯の場合は、咬合部の高さを中心咬合位における上下の顎堤頂間距離の略1/2のものを使用することとしている。
顎関節の開閉運動には本来歯があった頃にできた可動可能域があり、歯牙喪失後、入れ歯を外した状態で口を閉じようとすると、可動可能域を超えてしまうため、顎関節に違和感や痛みが出ることがあるが、本発明に係る唾液分泌促進器は、可動可能域を超えることなく使用することができるため、顎関節に違和感や痛みが生じない。そして、後述するように、咬合部を臼歯があった顎堤部分で痛くない程度の咬合力による咀嚼運動を1回につき1分〜2分、それを1日数回続けることで、唾液の分泌量が増加する。なお、唾液の分泌量が増えることによる連鎖効果については、後述する。
(2)咬合部の断面の上下辺を内側に凸の曲線状とした場合には、咬合部の当接面と無歯顎堤とが互いに嵌合するため、下顎の側方の動きを拘束し、負担を掛けることなく上下の咀嚼運動をすることができる。また、咬合部の断面の上下辺を外側に凸の曲線状とした場合には、咬合部の当接面と無歯顎堤とはいわば線接触するため、上下の咀嚼運動に加えて側方方向の咀嚼運動をすることができる。そして、咬合部の断面の上下辺を直線状とした場合には、曲線状とした場合のそれぞれの利点を兼備することができる。
(3)咬合部を把持部に対し着脱自在に連設することとした場合には、消耗部分である咬合部の取り替えが容易となり、咬合部と把持部とを異なった材料の組合せとすることも容易になる。
(4)把持部を咬合部よりも硬い、例えば、歯ブラシの柄程度の硬さにすることで、把持し易くなり、上下面を扁平に成形することにより、把持部の上下面と咬合部の上下面とが平行になるので、口腔内に挿入する咬合部の方向を間違えることがなくなる。なお、上下面を扁平に成形する代わりに、咬合部の上下面と略同一形状としても、口腔内に挿入する咬合部の向きを確実に把握することができる。
(5)咬合部の表面には口腔ケア用の芳香剤を塗布することにより、唾液の分泌効果が一段と大きいものとなる。なお、このような観点からは、芳香剤としては、ミント系やシトラス系の香りが好ましい。
(1)本発明は、棒状に成形された弾性樹脂製の咬合部と、該咬合部に連設される把持部とから構成される、という極めて簡単な構成ながら、咬合部の高さを中心咬合位における上下の顎堤頂間距離に略同じ、または顎堤頂間距離の略1/2としている。すなわち、本発明に係る唾液分泌促進器は、義歯を外した状態で使用するが、上顎の顎堤と下顎の顎堤ともに義歯の場合は、咬合部の高さが義歯装着時における咬合時の上下の顎堤頂間距離に略同じものを使用し、上顎の顎堤または下顎の顎堤のいずれかが義歯の場合は、咬合部の高さを中心咬合位における上下の顎堤頂間距離の略1/2のものを使用することとしている。
顎関節の開閉運動には本来歯があった頃にできた可動可能域があり、歯牙喪失後、入れ歯を外した状態で口を閉じようとすると、可動可能域を超えてしまうため、顎関節に違和感や痛みが出ることがあるが、本発明に係る唾液分泌促進器は、可動可能域を超えることなく使用することができるため、顎関節に違和感や痛みが生じない。そして、後述するように、咬合部を臼歯があった顎堤部分で痛くない程度の咬合力による咀嚼運動を1回につき1分〜2分、それを1日数回続けることで、唾液の分泌量が増加する。なお、唾液の分泌量が増えることによる連鎖効果については、後述する。
(2)咬合部の断面の上下辺を内側に凸の曲線状とした場合には、咬合部の当接面と無歯顎堤とが互いに嵌合するため、下顎の側方の動きを拘束し、負担を掛けることなく上下の咀嚼運動をすることができる。また、咬合部の断面の上下辺を外側に凸の曲線状とした場合には、咬合部の当接面と無歯顎堤とはいわば線接触するため、上下の咀嚼運動に加えて側方方向の咀嚼運動をすることができる。そして、咬合部の断面の上下辺を直線状とした場合には、曲線状とした場合のそれぞれの利点を兼備することができる。
(3)咬合部を把持部に対し着脱自在に連設することとした場合には、消耗部分である咬合部の取り替えが容易となり、咬合部と把持部とを異なった材料の組合せとすることも容易になる。
(4)把持部を咬合部よりも硬い、例えば、歯ブラシの柄程度の硬さにすることで、把持し易くなり、上下面を扁平に成形することにより、把持部の上下面と咬合部の上下面とが平行になるので、口腔内に挿入する咬合部の方向を間違えることがなくなる。なお、上下面を扁平に成形する代わりに、咬合部の上下面と略同一形状としても、口腔内に挿入する咬合部の向きを確実に把握することができる。
(5)咬合部の表面には口腔ケア用の芳香剤を塗布することにより、唾液の分泌効果が一段と大きいものとなる。なお、このような観点からは、芳香剤としては、ミント系やシトラス系の香りが好ましい。
本発明に係る唾液分泌促進器の実施形態および使用方法例について、図1ないし図5を基に説明する。なお、図1ないし図5において、符号1は本発明に係る唾液分泌促進器、符号11は咬合部、符号13は把持部、符号30は使用者、符号31は使用者の無歯顎堤、符号33は使用者の手、である。
唾液分泌促進器1は、弾性樹脂が棒状に成形された咬合部11と、咬合部11に着脱自在に螺着する把持部13と、から構成されていて、実施例における咬合部11は、図3に示すように、平らな上下面を有するように成形され、把持部13は平板状の上下面を有するように形成されている。実施例では、咬合部11をシリコンゴム製とし、把持部13をポリプロピレン製としている。
上述したように、咬合部11は、平らな上下面を有していて、その上下両面あるいは上下面のいずれか一つの面が使用者30の歯肉で覆われた臼歯部分の無歯顎堤31(図1では上顎部分)に当接する。そして、咬合部11の厚み(h)は、上下両面が無歯顎堤31に当接する場合は、20mm〜30mmとし、上下両面のいずれか一つの面が無歯顎堤31に当接する場合は、10mm程度少なくした略1/2の10mm〜20mmとしている。これは、本来歯があったときの上顎と下顎の歯列が最も多くの部位で接触した状態における顎堤頂間距離は、概ね20mm±3mmであって、加えて、咬合部11が弾性樹脂で成形されていることに依るものである。なお、実施例では、咬合部11の厚みを15mmとしていて、その幅を20mmとし、咬合部11の長さを50mm程度でとしている。
また、咬合部11の断面を、図4に示すように、上辺を外側に凸の曲線状とし、下辺を内側に凸の曲線状としても良く、さらには、上下辺とも外側に凸の曲線状とし、あるいは、上下辺とも内側に凸の曲線状としても良い。この場合、咬合部11の厚み(h)は、上下辺の中心点間距離を指している。
把持部13は、その断面が扁平となっていて、幅を15mm〜20mmとし、厚さを5mm〜15mmとし、その長さを100mm〜130mmとしている。そして、把持部13の咬合部11側の先端はその断面が円形に絞られていて、雄螺子が螺刻され、咬合部11の端部に穿設された螺入孔に螺入することにより、把持部13は咬合部11に対して着脱自在に螺着されるようになっている。なお、螺着に代えて嵌着するようにしても良いことは勿論である。
また、螺着して咬合部11と一体となった把持部13の扁平な上下の面は、咬合部11の上下両面に平行になるように構成されている。
また、螺着して咬合部11と一体となった把持部13の扁平な上下の面は、咬合部11の上下両面に平行になるように構成されている。
つぎに、唾液分泌促進器1の使用方法とその効果について説明する。
使用者30は、唾液分泌促進器1の把持部13を片手33で把持して、口腔内に咬合部11を挿入し、臼歯があった部分の無歯顎堤31あるいは臼歯の表面で咬合部11の上下両面で咬合する。なお、図1では、上顎が無歯顎堤31となっている。
そして、痛みを感じない程度の咬合力で咀嚼運動を1回につき1分〜2分程度、それを1日数回、すなわち、唾液分泌が必要な食前時および口腔内に乾きを感じたときに行う。
使用者30は、唾液分泌促進器1の把持部13を片手33で把持して、口腔内に咬合部11を挿入し、臼歯があった部分の無歯顎堤31あるいは臼歯の表面で咬合部11の上下両面で咬合する。なお、図1では、上顎が無歯顎堤31となっている。
そして、痛みを感じない程度の咬合力で咀嚼運動を1回につき1分〜2分程度、それを1日数回、すなわち、唾液分泌が必要な食前時および口腔内に乾きを感じたときに行う。
唾液分泌促進器1について、横浜市内の歯科医院に通院する上顎、下顎ともに義歯の無歯顎者5名にお願いして実験したところ、5名の被験者すべてから咀嚼時、唾液の分泌量が即効的に増えたとの回答を受けた。
なお、実験で使用した唾液分泌促進器1は、図3に示す咬合部11のものを使用したが、被験者5名ともに使い勝手は良好との回答であった。図4では、咬合部11の断面の上下辺のいずれか一方を外側に凸の曲線状とし、他方を内側に凸の曲線状としているが、前述したように、上下辺ともに外側に凸の曲線状とした場合には、咬合部の当接面と無歯顎堤とはいわば線接触して、上下の咀嚼運動をする際に下顎が側方に動き易くなるため、比較的咀嚼運動能力の高い者の訓練に適し、上下辺ともに内側に凸の曲線状とした場合には、咬合部の当接面と無歯顎堤とは互いに嵌合し、下顎の側方の動きが拘束されるため、比較的咀嚼運動能力の低い者の訓練に適したものとなる。
また、唾液分泌促進器1の使用に際しては、咬合部11の表面にミント系やシトラス系の口腔ケア用の芳香剤を塗布し、あるいは、使用者30の口腔内に口腔ケア用の芳香剤をスプレー散布することで、使用者30の唾液の分泌効果がより大きなものとなることが確認された。
以下に、実験に協力していただいた当該歯科医院の医師の見解を記す。
〔義歯使用者の口腔内乾燥感について〕
今回、唾液分泌促進器1を繰り返し咀嚼することにより唾液分泌活性化が見られた。これは唾液分泌促進器1によって咀嚼筋が活動することにより、唾液腺が活性化されたためと思われる。また、義歯は口腔内で異物感覚が高く、その違和感から食事のときに外してしまう者もいるが、たとえ長時間、義歯を入れ続けることができたとしても、その違和感から食事の時の咀嚼運動は少なくなる傾向にある。
なお、義歯使用者の口腔内乾燥感はレジンの吸湿性の影響だけではなく、上記の咀嚼運動の減少に拠る影響も関係していると思われる。
〔義歯使用者の口腔内乾燥感について〕
今回、唾液分泌促進器1を繰り返し咀嚼することにより唾液分泌活性化が見られた。これは唾液分泌促進器1によって咀嚼筋が活動することにより、唾液腺が活性化されたためと思われる。また、義歯は口腔内で異物感覚が高く、その違和感から食事のときに外してしまう者もいるが、たとえ長時間、義歯を入れ続けることができたとしても、その違和感から食事の時の咀嚼運動は少なくなる傾向にある。
なお、義歯使用者の口腔内乾燥感はレジンの吸湿性の影響だけではなく、上記の咀嚼運動の減少に拠る影響も関係していると思われる。
〔唾液分泌減少について〕
唾液の分泌は、摂食時の食べ物をすりつぶし粥状の食塊にする咀嚼、そしてその粥状になった食塊を飲み込む嚥下、そして胃腸内での消化に密接に関係するとともに、吸収に重要な働きを担っている。唾液分泌が少なくなると咀嚼困難になり、それに伴って嚥下が困難になる。さらに、胃腸での消化、そして栄養吸収が低下することになる。
元々、唾液は耳下腺、顎下腺、舌下腺から分泌されるが、異物感のある義歯装着により咀嚼運動が少なくなり、咀嚼筋(咬筋、側頭筋、外側翼突筋、舌筋等)の活動は少なくなる。唾液腺は咀嚼筋に隣接していて咀嚼運動によって刺激を受けて活性化されていると思われる。唾液分泌の減少は、義歯装着の異物感、または天然歯と比べて咀嚼能力が低い義歯からくる咀嚼運動量の減少が影響していると思われる。
唾液の分泌は、摂食時の食べ物をすりつぶし粥状の食塊にする咀嚼、そしてその粥状になった食塊を飲み込む嚥下、そして胃腸内での消化に密接に関係するとともに、吸収に重要な働きを担っている。唾液分泌が少なくなると咀嚼困難になり、それに伴って嚥下が困難になる。さらに、胃腸での消化、そして栄養吸収が低下することになる。
元々、唾液は耳下腺、顎下腺、舌下腺から分泌されるが、異物感のある義歯装着により咀嚼運動が少なくなり、咀嚼筋(咬筋、側頭筋、外側翼突筋、舌筋等)の活動は少なくなる。唾液腺は咀嚼筋に隣接していて咀嚼運動によって刺激を受けて活性化されていると思われる。唾液分泌の減少は、義歯装着の異物感、または天然歯と比べて咀嚼能力が低い義歯からくる咀嚼運動量の減少が影響していると思われる。
〔義歯未装着時の咀嚼について〕
顎関節の開閉運動には本来歯があった頃にできた可動可能域があり、歯牙喪失後、義歯を外した状態で口を閉じようとすると、可動可能域を超えてしまうため、上顎の顎堤と下顎の顎堤が触れ合うことができず、そのため、咀嚼筋の活動が少なくなり、その結果、唾液腺への刺激が少なくなる。仮に、可動領域を超えて咀嚼しようとした場合、顎関節に違和感や痛みが出ることがある。
顎関節の開閉運動には本来歯があった頃にできた可動可能域があり、歯牙喪失後、義歯を外した状態で口を閉じようとすると、可動可能域を超えてしまうため、上顎の顎堤と下顎の顎堤が触れ合うことができず、そのため、咀嚼筋の活動が少なくなり、その結果、唾液腺への刺激が少なくなる。仮に、可動領域を超えて咀嚼しようとした場合、顎関節に違和感や痛みが出ることがある。
〔唾液分泌促進器1の効果〕
唾液分泌促進器1は、義歯の固いレジンと違って弾性があるため咬合圧を分散し、比較的力強く咀嚼運動ができる。またシリコンゴムの厚みを歯牙喪失前の上下顎堤間の厚みと略同等にしていて、顎の開閉運動が可働可能域内でできるため、本来、義歯未装着ではできない咀嚼筋運動を、顎関節に負担をかけることなくおこなうことができる。
これらにより唾液分泌促進器1は、義歯装着、未装着の如何にかかわらず容易に顎関節の開閉運動ができるようになり、咀嚼筋の活動量は増加し、その活動による唾液腺への刺激が増加し、その結果、唾液の分泌が促進されると思われる。
唾液分泌促進器1は、義歯の固いレジンと違って弾性があるため咬合圧を分散し、比較的力強く咀嚼運動ができる。またシリコンゴムの厚みを歯牙喪失前の上下顎堤間の厚みと略同等にしていて、顎の開閉運動が可働可能域内でできるため、本来、義歯未装着ではできない咀嚼筋運動を、顎関節に負担をかけることなくおこなうことができる。
これらにより唾液分泌促進器1は、義歯装着、未装着の如何にかかわらず容易に顎関節の開閉運動ができるようになり、咀嚼筋の活動量は増加し、その活動による唾液腺への刺激が増加し、その結果、唾液の分泌が促進されると思われる。
〔唾液分泌促進の影響〕
唾液分泌の促進は、一連の咀嚼、嚥下、消化吸収の摂食行為を円滑にするだけでなく、分泌した唾液は咽頭(喉)を湿潤させる。咽頭の湿潤は、乾燥した咽頭と比較してウィルス等の感染予防に効果がある。
唾液分泌の促進は、一連の咀嚼、嚥下、消化吸収の摂食行為を円滑にするだけでなく、分泌した唾液は咽頭(喉)を湿潤させる。咽頭の湿潤は、乾燥した咽頭と比較してウィルス等の感染予防に効果がある。
上記の医師の見解を踏まえて、唾液分泌促進器1の効果をまとめると、
(1)無歯顎になるということで顎運動そのものが困難になり、その結果、唾液分泌量が減少してくる。唾液分泌量が減少すると食事や会話が困難になり、これら健康の根本的要因が困難になると、家族とのコミュニケーションも取り難くなり、日々の生活の快適感が薄れ、精神的にも委縮してしまう、という負の連鎖に陥る。唾液分泌促進器1を使用した咀嚼運動により、唾液分泌量が増大し、これらの負の連鎖を断ち切るばかりでなく、日々の生活にも改善が見られる。
(2)また、今回、被験者の意見の中には、噛むという行為により、精神的にリラックス状態になるというのもあった。これは、咀嚼運動が円滑化することにより、咀嚼筋の一つの側頭筋運動がリズミカルになり、リズミカルな側頭筋運動は、頭部のマッサージになることに拠るものと思われる。
(3)なお、実際の検証はこれからになるが、高齢者の健忘防止にも効果の可能性を示唆したものと思われる。
(1)無歯顎になるということで顎運動そのものが困難になり、その結果、唾液分泌量が減少してくる。唾液分泌量が減少すると食事や会話が困難になり、これら健康の根本的要因が困難になると、家族とのコミュニケーションも取り難くなり、日々の生活の快適感が薄れ、精神的にも委縮してしまう、という負の連鎖に陥る。唾液分泌促進器1を使用した咀嚼運動により、唾液分泌量が増大し、これらの負の連鎖を断ち切るばかりでなく、日々の生活にも改善が見られる。
(2)また、今回、被験者の意見の中には、噛むという行為により、精神的にリラックス状態になるというのもあった。これは、咀嚼運動が円滑化することにより、咀嚼筋の一つの側頭筋運動がリズミカルになり、リズミカルな側頭筋運動は、頭部のマッサージになることに拠るものと思われる。
(3)なお、実際の検証はこれからになるが、高齢者の健忘防止にも効果の可能性を示唆したものと思われる。
1 本発明に係る唾液分泌促進器
11 咬合部
13 把持部
11 咬合部
13 把持部
Claims (5)
- 中心咬合位の喪失者に使用される唾液分泌を促進させる器具であって、
弾性樹脂で成形された棒状体の断面における上下辺が直線状、外側に凸の曲線状または内側に凸の曲線状を呈し、該棒状体の上下面の内の少なくとも一つの面が歯肉で覆われた臼歯部分の無歯顎堤に当接する咬合部と、
前記咬合部に連設される把持部と、からなり、
前記棒状体の上下辺の中心点間距離が10mmないし30mmである、ことを特徴とする唾液分泌促進器。 - 前記咬合部は前記把持部に対し、着脱自在に連設されている、ことを特徴とする請求項1に記載の唾液分泌促進器。
- 前記把持部は前記咬合部よりも硬い材料で成形されている、ことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の唾液分泌促進器。
- 前記把持部は上下面が扁平または前記咬合部と略同一形状に成形されている、ことを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれかに記載の唾液分泌促進器。
- 前記咬合部の表面には口腔ケア用の芳香剤が塗布されている、ことを特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれかに記載の唾液分泌促進器。
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