JP4399580B2 - 耐水性窒化アルミニウム粉末及びその製造方法 - Google Patents

耐水性窒化アルミニウム粉末及びその製造方法 Download PDF

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本発明は、耐水性を改善した窒化アルミニウム粉末に関するものであり、更に詳しくは、水蒸気分圧を制御して形成した酸化被膜により耐水性を付与した耐水性窒化アルミニウム粉末の製造方法、当該方法により製造した耐水性窒化アルミニウム粉末、高耐水性フィラー及びその応用製品に関するものである。本発明は、例えば、樹脂、ゴム、グリース等に混合して熱伝導率を高めるためのフィラー等として、幅広く利用されている窒化アルミニウム粉末に関する技術分野において、フィラーとして好適な、優れた耐水性を有する耐水性窒化アルミニウム粉末の製造方法を提供するものであり、それにより、高熱伝導性を維持しつつ、耐湿信頼性に優れた封止材用樹脂組成物等を提供することを可能とするものとして有用である。
窒化アルミニウム粉末は、高熱伝導性を利用する種々の用途に活用が期待されている。しかし、窒化アルミニウム粉末は、耐水性が低く、空気中の水分と容易に反応して、特性が劣化したり、長期安定性に欠けるという問題がある。そこで、従来から、表面を酸化して安定な酸化被膜を設けて耐水性を改善する試みがなされており、例えば、乾燥した空気中で加熱することが公知の方法として広く行われている(特許文献1、非特許文献1参照)。しかし、この方法では、耐水性の改善効果は少ない。更に、薄い酸化被膜では耐水性が低いので、耐水性を高めるために酸化被膜を厚くすると窒化アルミニウム粉末の酸素含有量が多くなり、高熱伝導性が損なわれるという問題がある。
そのため、酸化方法を改良して、酸素含有量を少なく抑えつつ、耐水性の改善効果を高める方法が多く検討されてきた。それらの方法を例示すると、例えば、水蒸気を含む気流中で加熱する方法(特許文献2参照)、酸素又は二酸化炭素を添加した不活性ガス雰囲気中で加熱する方法(特許文献3参照)、α−アルミナの酸化被膜を表面に形成する方法(特許文献4参照)、活性酸素の存在する雰囲気に曝す方法(特許文献5参照)等がある。しかし、いずれの方法によっても、耐水性の改善効果が不十分であったり、コストが高い、限られた製造法の窒化アルミニウム粉末にしか適用できない等の問題点が残っており、当該技術分野では、それらを改善することが強く要請されていた。
特開平1−141811号公報 特開平3−93612号公報 特開平3−174310号公報 特開平4−175209号公報 特開平6−115912号公報 Yuan Qiang Li etc., Materials Research Bulletin, Vol.32, No.9,p.1173-1179(1997)
このような状況の中で、本発明者らは、上記従来技術に鑑みて、上記問題を抜本的に解決することが可能な、優れた耐水性を有する窒化アルミニウム粉末を製造する技術を開発することを目標として鋭意研究を積み重ねた結果、窒化アルミニウム粉末を、所定の水蒸気分圧の水蒸気又は水蒸気と不活性ガスとの混合ガス雰囲気中で、所定の温度範囲で熱処理することにより、優れた耐水性窒化アルミニウム粉末を製造することが可能であることを見出した。
即ち、本発明者らは、鋭意検討を積み重ねた結果、窒化アルミニウム粉末を、不活性ガスに水蒸気を添加した雰囲気中で熱処理する場合に、水蒸気分圧を制御して形成した良質の酸化被膜を利用することにより、窒化アルミニウム粉末の耐水性が著しく向上することを見出し、また、これが、フラックスによる球状化処理を施した窒化アルミニウム粉末の耐水化処理に特に適していることを見出し、更に研究を重ねて、本発明を完成するに至った。
即ち、本発明は、水蒸気分圧を制御して形成した良質の酸化被膜により耐水性を付与した、優れた耐水性を有し、酸素含有量の少ない耐水性窒化アルミニウム粉末を製造し、提供することを目的とするものである。また、本発明は、例えば、直接窒化法、還元窒化法、気相反応法等の、どのような方法により製造された窒化アルミニウムに対しても適用可能な耐水性窒化アルミニウムの製造方法を提供することを目的とするものである。また、本発明は、フラックスによる球形化処理を施した球状窒化アルミニウム粉末に耐水性を付与する技術として特に好適な、耐水性窒化アルミニウムの製造方法を提供することを目的とするものである。更に、本発明は、上記方法で作製された耐水性窒化アルミニウム粉末からなる高耐水性フィラー、該フィラーを利用して作製された、高熱伝導性を維持しつつ、耐湿信頼性に優れた、半導体封止材用樹脂組成物、及び放熱用グリース組成物等の応用製品を提供することを目的とするものである。
上記課題を解決するための本発明は、以下の技術的手段から構成される。
(1)水蒸気分圧を制御して形成した酸化被膜により、耐水性を付与した耐水性窒化アルミニウム粉末を製造する方法であって、窒化アルミニウム粉末を、所定の水蒸気分圧の水蒸気又は水蒸気と不活性ガスとの混合ガス雰囲気中で、850〜1100℃の温度で熱処理すること、水蒸気又は水蒸気と不活性ガスとの混合ガス雰囲気の水蒸気分圧を、10Pa〜5kPaの範囲で調整すること、を特徴とする耐水性窒化アルミニウム粉末の製造方法。
)熱処理の温度が、900〜1000℃であり、水蒸気又は水蒸気と不活性ガスとの混合ガス雰囲気の水蒸気分圧が、100〜600Paであることを特徴とする上記(1)に記載の耐水性窒化アルミニウム粉末の製造方法。
)窒化アルミニウム粉末として、フラックスによる球状化処理を施した窒化アルミニウム粉末を使用することを特徴とする上記(1)又は(2)に記載の耐水性窒化アルミニウム粉末の製造方法。
次に、本発明について更に詳細に説明する。
本発明は、上述のように、水蒸気分圧を制御して形成した酸化被膜により、耐水性を付与した窒化アルミニウム粉末を製造する方法であって、窒化アルミニウム粉末を、水蒸気又は水蒸気と不活性ガスとの混合ガス雰囲気中で、850〜1100℃の温度で熱処理することを特徴とするものである。本発明で用いる窒化アルミニウム粉末は、例えば、直接窒化法、還元窒化法、気相反応法等の、どのような方法で製造されたものであっても良い。本発明では、原料として特別なものを用意する必要はなく、一般に市販されている窒化アルミニウム粉末を使用することができる。
また、先行文献(特開2002−179413号公報)に示されるような方法によって、窒化アルミニウム粉末を、例えば、炭酸カルシウム、酸化カルシウム、カルシウムアルミネート等のフラックス中で加熱すると、球に近い形状、あるいは角が丸くなった形状の窒化アルミニウム粉末(以下、球状窒化アルミニウム粉末と記載する。)が得られる。この球状窒化アルミニウム粉末は、樹脂との混練時やグリースに混合したときの流動性が高く、高熱伝導性樹脂及びグリース用フィラーとして極めて好ましい形状をしている。一方、このような用途では、高い耐水性が要求されるが、球状窒化アルミニウム粉末は耐水性が低くそのままで使用するのは好ましくない。そこで、球状窒化アルミニウム粉末に、その形状や流動性を損なうことなく高い耐水性を付与することが望まれる。本発明では、この球状窒化アルミニウム粉末を原料に使用することによって、球に近い形状、あるいは角が丸くなった形状を保ったままで、優れた耐水性を持つ窒化アルミニウム粉末を製造することができる。
本発明で用いる熱処理中の雰囲気は、水蒸気の分圧が10Pa〜5kPaの範囲内である必要がある。10Pa未満では充分な効果を得るには、長時間の加熱が必要になって効率的ではない。5kPaを超えると酸化の進行が速いので、酸化の程度を適度にコントロールするのが困難で、良質の酸化被膜を得にくくなる。特に100Pa〜600Paの範囲が良好な結果が得られる。雰囲気は水蒸気のみから成り、上記分圧、すなわち、全圧を示す状態でもよいが、水蒸気と不活性ガスとの混合ガスで、水蒸気の分圧が上記範囲内にある状態でも良い。本発明で用いる不活性ガスは、窒化アルミニウム粉末と加熱温度で実質的に反応を起こさないガスであればどのようなものでも良い。好適には、例えば、アルゴン、キセノン、ヘリウム等の希ガスや窒素が用いられるが、それに限らず、水素のように窒化アルミニウムと加熱温度で実質的に反応を起こさないガスであればどのようなものでも良い。酸素や空気は、水蒸気よりも、窒化アルミニウム粉末と高速に反応するので適さない。しかし、水蒸気のモル数より著しく少ないモル数の酸素の混入は、影響が少なく差し支えない。
必要な水蒸気分圧の混合ガスを得るにはどのような方法を採っても良いが、水を入れたガス洗浄瓶を適当な温度に保ち、それに不活性ガスを通して一定量の水蒸気を含ませる方法が簡便で、水蒸気分圧の変動が少ないので優れている。また、水に、硫酸、水酸化カリウム、塩化リチウム等の物質を溶解させて水蒸気分圧を調節することも可能である。
加熱の方法は、通常の抵抗加熱式電気炉で差し支えないが、例えば、イメージ炉や高周波炉等、どのような方法で加熱しても良い。加熱温度は850〜1100℃の範囲内である必要がある。850℃未満では良質な酸化被膜は形成されず、耐水性の向上は不充分である。1100℃を超える温度では、冷却時に酸化被膜と窒化アルミニウムとの熱膨張率の違いによるクラックが多発するので好ましくない。また、反応が高速に進むので、酸素含有量が多くなり過ぎる。特に、900〜1000℃の範囲が良好な結果が得られる。
必要な加熱時間は、数分から数時間であり、加熱温度、水蒸気分圧、窒化アルミニウム粉末の粒径や反応性等の条件によって異なるので、適当に調節する必要がある。加熱時間が短いと、酸化被膜の形成が充分に行われず、耐水性の向上は少ない。加熱時間が長すぎると、窒化アルミニウム粉末の酸素含有量が多くなり、好ましくない。また、耐水性も、最適な時間を越えると、加熱時間が長くなるにつれて低下する傾向にある。これは、酸化被膜が厚くなりすぎて剥離やクラックが発生しやすくなるためと推測される。
熱処理中、温度や水蒸気分圧については、必ずしも一定に保つ必要はない。例えば、比較的高い温度で短時間酸化を行い、その後、温度を下げて過度の酸化を防ぎつつ、酸化被膜を熟成させるような方法が例示される。
大量の窒化アルミニウム粉末を処理する場合、単に、窒化アルミニウム粉末を入れた容器を炉内に静置するだけでは、容器下部まで水蒸気が到達するのに時間が掛かったり、上部と下部とで反応が不均一になる恐れがある。その場合には、容器下部から雰囲気ガスを導入したり、水平に近い回転軸で容器を回転させて内部の窒化アルミニウム粉末を撹拌する等の対策が効果的である。以上の手順によって、耐水性に優れた窒化アルミニウム粉末を得ることができる。
耐水性の測定は、窒化アルミニウム粉末を水中に投入すると、加水分解してアンモニアを発生し、水のpHが上昇することを利用して測定することができる。蒸留水を一定温度に保ち、窒化アルミニウム粉末を投入して、撹拌しながらpHメータでpHの時間変化を調べると、pHの上昇の遅い方が、加水分解が遅い、すなわち、耐水性が高いことになる。
フラックスによる球状化処理を施した窒化アルミニウム粉末は、上述のように、高熱伝導性樹脂及びグリース用フィラーとして極めて好ましい形状をしている。しかし、そのままでは耐水性は低く、40℃の水60ccに粉末1gを投入したとき、20分以下で水のpHが8.5に達する。エポキシ樹脂等の半導体封止材用樹脂は、少量の水分を含み、また、使用中に空気中の水分が浸透してくる。耐水性の低い窒化アルミニウム粉末をフィラーに使用すると、高温多湿の環境では、長期的にはフィラーが水分と反応してAlO(OH)が発生する。このAlO(OH)はアモルファスで熱伝導率が低いため、封止材の熱伝導率が低下することになる。このため、長期的に安定に高熱伝導率を保つためには、40℃の水60ccに粉末1gを投入したとき、水のpHが8.5に上昇するまでに200分以上かかるような高い耐水性を持つ窒化アルミニウム粉末を使用する必要がある。
このような高耐水性の窒化アルミニウム粉末を樹脂に混合することによって、長期的に安定で熱伝導率が高い半導体封止材用樹脂組成物を得ることができる。また、グリースに混合すれば、グリースの熱伝導率を高めて、長期的に安定で熱伝導率が高い放熱用グリースを得ることができる。基剤とする樹脂及びグリースの成分は、一般的に半導体封止材や放熱用グリースの用途に使用されているものが使用できる。
本発明により、(1)高価な設備や有害な薬品を使用することなく、簡単で安価な方法で、優れた耐水性を有し、酸素含有量の少ない窒化アルミニウム粉末を製造し、提供することができる、(2)直接窒化法、還元窒化法、気相反応法等のような、任意の方法により製造された窒化アルミニウム粉末を用いて、優れた耐水性を有する窒化アルミニウム粉末を製造し、提供することができる、(3)球形に近い形状で、優れた耐水性を有する窒化アルミニウム粉末を製造し、提供することができる、(4)高熱伝導性を維持しつつ、耐湿信頼性に優れた半導体封止材用樹脂組成物、及び放熱用グリースを提供することができる、(5)高熱伝導性の樹脂ないしグリース用フィラーに適した耐水性に優れた窒化アルミニウム粉末を製造し、提供することができる、という格別の効果が奏される。
次に、実施例に基づいて本発明を具体的に説明するが、本発明は、以下の実施例によって何ら限定されるものではない。
市販の直接窒化法による窒化アルミニウム粉末(平均粒径2ミクロン)5.3gを、アルミナ製反応ボートに入れて、横型管状炉で、水蒸気を混合した窒素ガス雰囲気下で、1000℃で3時間加熱して、目的の耐水性窒化アルミニウム粉末を得た。上記炉内雰囲気には、約300Paの分圧に水蒸気を混合した窒素ガスを使用し、これを毎分0.5リットルの割合で炉内に流した。このガスは、蒸留水を入れたガス洗浄瓶を0℃に保ち、その中に窒素ガスを流して水蒸気で飽和させたガスと、水蒸気を含まない窒素ガスとを1:1の体積比に混合して作製したものである。
窒化アルミニウム粉末として、市販の還元窒化法による窒化アルミニウム粉末(一次粒子径約0.6ミクロン)3.8gを使用した。その他の点は実施例1と同様にして、目的の耐水性窒化アルミニウム粉末を得た。
市販の直接窒化法による窒化アルミニウム粉末(平均粒径2ミクロン)と、炭酸カルシウムとをモル比で8:2に混合し、タングステン炉で、窒素雰囲気中1800℃で6時間加熱した。これを塩酸に入れて、フラックス成分の酸化カルシウム等を溶解除去し、球状窒化アルミニウム粉末を得た。この球状窒化アルミニウム粉末7.6gを、実施例1の市販の直接窒化法による窒化アルミニウム粉末5.3gに替えて使用し、それ以外は実施例1と同様にして、目的の球状の耐水性窒化アルミニウム粉末を得た。
市販の直接窒化法による窒化アルミニウム粉末(平均粒径2ミクロン)5.3gを、アルミナ製反応ボートに入れて、横型管状炉で、水蒸気を混合した窒素ガス雰囲気下で、900℃で3時間加熱して、目的の耐水性窒化アルミニウム粉末を得た。上記炉内雰囲気には、約600Paの分圧に水蒸気を混合した窒素ガスを使用し、これを毎分0.5リットルの割合で炉内に流した。このガスは、蒸留水を入れたガス洗浄瓶を0℃に保ち、その中に窒素ガスを流して水蒸気で飽和させて作製したものである。
市販の直接窒化法による窒化アルミニウム粉末(平均粒径2ミクロン)5.3gを、アルミナ製反応ボートに入れて、横型管状炉で、水蒸気を混合した窒素ガス雰囲気下で、1000℃で40分間加熱し、加熱温度を900℃に下げて2時間保持して、目的の耐水性窒化アルミニウム粉末を得た。上記炉内雰囲気は、実施例4と同様にした。
比較例1
市販の直接窒化法による窒化アルミニウム粉末(平均粒径2ミクロン)5.3gを、アルミナ製反応ボートに入れて横型管状炉で、850℃で3時間加熱し、窒化アルミニウム粉末を得た。炉内雰囲気には、塩化カルシウムと五酸化リンで水蒸気を取り除いた乾燥空気を使用し、これを毎分0.5リットルの割合で炉内に流した。
比較例2
加熱温度を800℃とした以外は実施例4と同様にして、窒化アルミニウム粉末を作製した。
比較例3
加熱温度を1200℃とした以外は実施例4と同様にして、窒化アルミニウム粉末を作製した。
比較例4
炉内雰囲気には、塩化カルシウムと五酸化リンで水蒸気を取り除いた乾燥窒素ガスを使用した。その他の点は実施例1と同様にして、窒化アルミニウム粉末を作製した。このときの炉内の水蒸気の分圧は、ほぼ0Paであった。
比較例5
市販の直接窒化法による窒化アルミニウム粉末(平均粒径2ミクロン)5.3gを、アルミナ製反応ボートに入れて、横型管状炉で、400℃で2時間加熱した。炉内雰囲気には、約7.5kPa(56mmHg)の分圧に水蒸気を混合した窒素ガスを使用し、これを毎分0.5リットルの割合で炉内に流した。このガスは、蒸留水を入れたガス洗浄瓶を40℃に保ち、その中に窒素ガスを流して水蒸気で飽和させて作製したものである。
次に、上記実施例1〜4及び比較例1〜5で作製した窒化アルミニウム粉末を用いて、耐水性を調べた。即ち、これらの窒化アルミニウム粉末の耐水性を調べるために、蒸留水60ccを40℃に保ち、窒化アルミニウム粉末1gを投入して、撹拌しながらpHメータでpHの時間変化を測定した。表1に、窒化アルミニウム粉末を投入してから、pHが8.5及び9.0に達するまでの時間を分単位で示す。表中、「∞」は、そのpHには永久に到達しない、すなわち、そのpHに達する前にpHが下降し始めたことを示す。pHが下降するのは、窒化アルミニウムの加水分解速度が小さく、新たに発生するアンモニアが少ないので、水面から大気中に飛散するアンモニアの方が多くなったためである。
更に、表1に、熱処理による窒化アルミニウム粉末の重量の増加割合を、熱処理前の窒化アルミニウム粉末の重量に対する割合で示す。重量の変化は、窒化アルミニウムの酸化による重量増加と、吸着水等の飛散による重量減少とによる。吸着水等の飛散による重量減少は、同じ原料粉末では同じ値になるので、重量の増加割合が小さい方が、窒化アルミニウムの酸化が少なく、従って、熱処理後の窒化アルミニウム粉末の酸素含有量が少なく、優れていることを示す。
更に、比較例6として、実施例1、4、5、及び比較例1から5で使用した市販の直接窒化法による窒化アルミニウム粉末を、そのままで水中に投入した場合、比較例7として、実施例2で使用した市販の還元窒化法による窒化アルミニウム粉末を、そのままで水中に投入した場合、比較例8として、実施例3で使用した球状窒化アルミニウム粉末を、耐水化処理をしないでそのまま水中に投入した場合についても、同様にして耐水性を調べた。表1にその結果を示す。
表1に示したように、実施例1、4、5、は比較例6と、実施例2は比較例7と、実施例3は比較例8と、それぞれ比較すると、実施例では、pHの上昇に時間が掛かることがあきらかであり、水蒸気を含む雰囲気中での加熱で窒化アルミニウムの耐水性が向上したことが分かる。
実施例3では、水中に投入してから2294分後に、pH7.61まで上昇した後、pHが下がり始めた。このように、pH上昇の程度が小さいことは、耐水性が著しく高く、本発明の方法が、フラックスによる球状化処理を施した窒化アルミニウム粉末の耐水化処理に特に適していることを示している。また、走査型電子顕微鏡による観察の結果、実施例3では、耐水化処理の前後で、球状窒化アルミニウム粉末の形状に目立った変化は見られなかった。この方法では、球に近い形状、あるいは角が丸くなった形状を保ったままで耐水性を付与することができることが分かった。
市販の直接窒化法による窒化アルミニウム粉末を原料に使用した場合について比較すると、比較例1に比べて、実施例1、4、5では耐水性が高く、しかも重量増加が少ないので、広く一般的に行われている乾燥空気による酸化に比べて、耐水性と酸素含有量の両面で、本発明の方法が優れていることが分かる。
比較例2では、加熱温度が低すぎ、比較例3では、加熱温度が高すぎて、耐水性の向上は少ない。また、比較例3では、重量増加が多いが、これは、処理後の窒化アルミニウム粉末の酸素含有量が多くなっていることを示している。比較例4で耐水性が低いのは、水蒸気を含まない不活性雰囲気中での加熱では耐水性が向上せず、耐水性の向上には水蒸気が不可欠であることを示している。
比較例5は、特許文献2に示された方法を実施したものである。同じ粉末をそのままで水中に投入した比較例6よりも耐水性が低下したように見えるが、これは、実験に使用した市販品が、二酸化炭素等を吸着して自然に得ていた耐水性が、比較例5の熱処理により失われたためである。同様に、自然の耐水性が失われた比較例4が、窒化アルミニウム本来の性質に近いので、これと比較すると、比較例5は若干の耐水性の向上があり、この処理方法が有効であることが分かる。しかしながら、同じ粉末を処理した実施例1、4、5と比べると、耐水性の差は歴然としており、これらの方法と比べて、本発明の方法が格段に優れていることが分かる。
Figure 0004399580
本実施例では、上記実施例3で得られた球状の耐水性窒化アルミニウム粉末と、市販のエポキシ樹脂とを重量比で3:1の割合に混合して、半導体封止材用樹脂組成物を作製し、厚さ0.5mmの板状に成形硬化し、これを、28日間95℃の水中に浸漬し、その前後での重量の変化を調べた。
本実施例では、上記実施例1で得られた耐水性窒化アルミニウム粉末を使用して、実施例6と同様にして重量の変化を調べた。
比較例9
市販の直接窒化法による窒化アルミニウム粉末(平均粒径2ミクロン)を、耐水化処理をしないでそのまま使用して、実施例6と同様にして重量の変化を調べた。
表2に、上記実施例6、7及び比較例9の結果を示す。表2の第2列に、水中に浸漬後の重量を、浸漬前の重量に対する割合(%)で示す。エポキシ樹脂中では、窒化アルミニウムは、エポキシ樹脂を浸透してきた水分と反応して、次式に示されるように、AlO(OH)とアンモニアガスに変化する。
AlN+2HO→AlO(OH)+NH
表2において、重量増加は、エポキシ樹脂自身の吸水と、窒化アルミニウムがAlO(OH)に変化することによる。エポキシ樹脂のみを水中に浸漬して、エポキシ樹脂の吸水量を求めると、AlO(OH)の発生量を計算で求めることができる。表2の第3列に、AlO(OH)の発生量を浸漬前の窒化アルミニウムに対する割合(モル%)で示す。比較例9に比べて、実施例6、7では、AlO(OH)の発生量が大幅に少ない。これは、エポキシ樹脂に分散された状態でも、本発明の処理をした窒化アルミニウム粉末の耐水性が高く、エポキシ樹脂を浸透してきた水分と反応しにくいことを示している。
Figure 0004399580
本実施例では、上記実施例3で得られた球状の耐水性窒化アルミニウム粉末と、市販のシリコングリースとを重量比で1:1の割合に混合して放熱用グリースを作製した。混合後のグリース組成物は、良好な流動性を示し、これを2枚のガラス板の間に挟んで押すと、容易に10ミクロン程度の厚さに伸ばすことができた。
以上詳述したように、本発明は、優れた耐水性を有する窒化アルミニウム粉末の製造方法等に係るものであり、本発明は、高価な設備や有害な薬品を使用することなく、簡単で安価な方法で、優れた耐水性を有し、酸素含有量の少ない窒化アルミニウム粉末を製造し、提供することができ、しかも、原料として特別なものを用意する必要はなく、一般に市販されている、例えば、直接窒化方、還元窒化方、気相反応方等の、どのような方法により製造された窒化アルミニウム粉末であっても、優れた耐水性を付与することが可能である。また、本発明の球形に近い形状で、優れた耐水性を有する窒化アルミニウム粉末は、樹脂組成物ないしグリース組成物のフィラーとして適している。このように、本発明では、高熱伝導性を維持しつつ、耐湿信頼性に優れた、粉末状物、セラミックス材料を製造し、提供することが可能であり、これらは、例えば、高熱伝導性で耐水性に優れたフィラー、ヒートシンク材、各種回路基板、薄膜基板、樹脂あるいはグリースのフィラー等として広く適用することが可能である。

Claims (3)

  1. 水蒸気分圧を制御して形成した酸化被膜により、耐水性を付与した耐水性窒化アルミニウム粉末を製造する方法であって、窒化アルミニウム粉末を、所定の水蒸気分圧の水蒸気又は水蒸気と不活性ガスとの混合ガス雰囲気中で、850〜1100℃の温度で熱処理すること、水蒸気又は水蒸気と不活性ガスとの混合ガス雰囲気の水蒸気分圧を、10Pa〜5kPaの範囲で調整すること、を特徴とする耐水性窒化アルミニウム粉末の製造方法。
  2. 熱処理の温度が、900〜1000℃であり、水蒸気又は水蒸気と不活性ガスとの混合ガス雰囲気の水蒸気分圧が、100〜600Paであることを特徴とする請求項1に記載の耐水性窒化アルミニウム粉末の製造方法。
  3. 窒化アルミニウム粉末として、フラックスによる球状化処理を施した窒化アルミニウム粉末を使用することを特徴とする請求項1又2に記載の耐水性窒化アルミニウム粉末の製造方法。
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