JP4398906B2 - 永久磁石電動機 - Google Patents
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Description
従来の永久磁石埋込型電動機では、回転子コアを有する回転子と、固定子コアを有する固定子を備えている。回転子コアには、例えば、軸方向に直角な断面形状が、半径方向に略直角な長方形形状に形成された磁石収容孔、あるいは、軸方向に直角な断面形状が、凸部側が中心側を向いた円弧形状等の凸形状の磁石収容孔が各磁極に設けられている。そして、各磁極の磁石収容孔には、軸方向に直角な断面形状が長方形形状や円弧形状等に形成された永久磁石が収容されている(埋め込まれている)。永久磁石としては、フェライト磁石や希土類磁石が用いられている。
また、固定子コアには、先端部が回転子コアの外周部と間隙(エアギャップ)を介して配置されるティース部が設けられている。そして、ティース部によって形成されるスロット内に固定子巻線が配設されている。
インバータ等の電源供給源から固定子巻線に電源を供給することにより、回転子が回転する。
ここで、フェライト磁石は、温度が高くなると磁束密度が低下する特性を有している。これに対し、希土類磁石は、温度が高くなっても磁束密度の低下が少ない特性を有している。
そこで、永久磁石電動機を小型化する方法として、例えば、永久磁石として希土類磁石を用いることにより永久磁石電動機の効率を向上させる方法や永久磁石の配置状態を変更することによって永久磁石電動機の効率を向上させる方法が考えられる。しかしながら、このような方法を用いても、実際の効率は思ったほど向上しない。これは、電源供給源としてPWM制御方式のインバータを用いることにも起因する。
本発明者らは、種々検討した結果、回転子や固定子の形状、寸法等を所定の条件が満足されるように構成することによって、電源供給源としてPWM制御方式のインバータを用いた場合でも、永久磁石電動機の効率を向上させることができることを見出した。
そこで、本発明は、電源供給源としてPWM制御方式のインバータを用いた場合でも効率を向上させることができ、もって、所定の性能を維持しながら小型化を図ることができる永久磁石電動機を提供することを目的とする。
請求項1に記載の永久磁石電動機では、磁石収容孔の端部壁と回転子の外周部との間に空隙部が設けられており、隣接する磁極に設けられている空隙部の距離B、隣接するティース部の側面間の最短距離A、ティース部の幅C、空隙部の周方向の長さDが、B≧A及びD≧Cを満足するように構成されている。これにより、充分なリラクタンストルクを得ることができるため、効率が向上する。また、磁石収容孔に収容されている永久磁石の端部での磁束短絡量を低減することができるため、有効磁束量を増加させることができ、効率が向上する。さらに、リラクタンストルクの変動の低減によってトルク脈動が低減し、あるいは、永久磁石の端部での磁束短絡量の低減によって回転子と固定子との間のラジアル方向の磁気吸引力が低減するため、騒音や振動を低減することができる。なお、磁石収容孔と回転子の外周部との間に空隙部を設けて永久磁石を回転子の外周部から離れて配設することにより、永久磁石の端部がPWM制御等による高調波磁束の影響を受けることがなく、永久磁石の端部発熱を減少させて、鉄損を減少させることができる。この点においても、効率を向上させることができる。
なお、「磁石収容孔の端部壁」は、回転子の外周部近傍の端部壁を意味する。例えば、各磁極の磁石収容孔が複数の磁石収容孔部を列状に配置して構成されている場合には、「磁石収容孔の端部壁」は、回転子の外周部側に配置されている磁石収容孔部の端部壁のうち、回転子の外周部近傍の端部壁を示す。
また、請求項1に記載の永久磁石電動機では、回転子の外周部とティース先端部との間の間隙g、空隙部の周方向の各位置における半径方向の長さの最短長Lが、g×0.2≦L≦g×0.5を満足するように構成されている。g×0.2≦Lを満足することにより、短絡磁束が減少し、効率が向上する。さらに、ラジアル方向の磁気吸引力の低減によって、騒音や振動を低減することができる。L≦g×0.5を満足することにより、例えば、回転子の外周部に形成した凹部を空隙部として用いる場合に、熱交換媒体に対する凹部の抵抗力の増大を低減し、凹部での損失の増大を抑制することができるため、効率の低下を抑制することができる。
また、請求項1に記載の永久磁石電動機では、固定子には、軸方向に貫通する通路が設けられており、固定子の外径をRa、固定子の内径をRb、スロット断面積をS、スロット数をz、通路の総断面積をGとした時、[(Ra/2) 2 π−{(Rb/2) 2 π+G}]×0.2≦(S×z)≦[(Ra/2) 2 π−{(Rb/2) 2 π+G}]×0.4を満足するように構成されている。これにより、鉄損や銅損を軽減することができ、効率を向上させることができる。また、通路としては、例えば、固定子の外周部を貫通するように切り欠いた切欠部や、固定子を貫通するように形成した孔等が用いられる。
なお、請求項2に記載されているように、固定子の外径を90mmとすることにより、永久磁石電動機を小型化することができる。
さらに、本発明の永久磁石電動機を、請求項3や請求項4に記載されているように、空調装置や冷蔵庫等の圧縮機駆動用電動機として、あるいは、請求項5に記載されているように、車載装置の駆動電動機として用いることにより、各装置を小型化することができる。
本発明の永久磁石電動機の概略構成を図1、図2に示す。なお、図1は、断面図であり、図2は図1の部分拡大図である。
本発明の永久磁石電動機は、回転子10と固定子30により構成されている。
回転子10は、回転子コア11を有している。回転子コア11は、例えば、電磁鋼板等の鋼板を積層して略円筒状に形成される。
固定子30は、固定子コア(ヨーク部)31を有している。固定子コア11は、例えば、電磁鋼板等の鋼板を積層して略円筒状に形成される。
また、永久磁石を収容する(埋め込む)ための複数の磁石収容孔が軸孔12と平行に設けられている。磁石収容孔は、各磁極毎に設けられている。本実施の形態では、90度間隔で4個の磁石収容孔21a〜21dが軸線方向に設けられている。
磁石収容孔21a〜21dは同じ構造であるため、磁石収容孔21aについて説明する。なお、磁石収容孔21b〜21dの要素符号は、磁石収容孔21aの対応する要素の要素符号のアルファベットaをb〜dに置き換えて用いる。
磁石収容孔21aは、回転子コア11の半径方向中心側に設けられている直線状の内壁22a、回転子コア11の半径方向外周側に設けられている直線状の外壁23a、外壁23aが回転子コア11の外周部に近接する位置から回転子コア11の外周部に略平行して延びる(略同じ形状)端部壁24a、25a、端部壁24aと内壁22a、端部壁25aと内壁22aとの間に延び、磁極間の磁束通路の幅を決定する通路壁26a、27aにより形成されている。なお、通路壁26a、27aは省略される場合もある。
磁石収容孔21aの端部壁24a、25aと回転子コア11の外周部との間には空隙部が設けられている。本実施の形態では、回転子コア11の外周部に設けた凹部(切欠部)14a、16aを空隙部として用いている。凹部14aは、側壁14a1、14a3と、底壁14a2により形成されている。凹部16aも同様の形状である。
本実施の形態では、凹部14a、16aの底壁14a2、16a2と端部壁24a及び端部壁25aは略平行に設けられている(ほぼ同じ形状を有している)。すなわち、凹部14a〜14d、16a〜16dは、周方向に沿った各位置における半径方向の長さ(深さ)が略等しくなるように形成されている。
なお、「磁石収容孔の端部壁」は、回転子の外周部近傍の端部壁を意味する。例えば、各磁極の磁石収容孔が複数の磁石収容孔部を列状に配置して構成されている場合には、「磁石収容孔の端部壁」は、回転子の外周部側に配置されている磁石収容孔部の端部壁のうち、回転子の外周部近傍の端部壁を示す。
本実施の形態では、軸方向に対して直角な断面形状が略長方形形状に形成されている永久磁石20a〜20dを用いているため、磁石収容孔21a〜21dの回転子コア11の外周部側の両端部には間隙28a〜28d、29a〜29dが設けられている。間隙28a〜28d、29a〜29dは、空隙であってもよいし、樹脂等の非磁性絶縁体を充填してもよい。
凹部14a〜14dと端部壁24a〜24dとの間、凹部16a〜16dと端部壁25a〜25dとの間には、永久磁石20a〜20dを磁石収容孔21a〜21d内に保持するための連結部(ブリッジ部)17a〜17d、18a〜18dが形成されている。各磁極の凹部14a〜14dと16a〜16dとの間に主磁極部(有効磁極部)15a〜15dが形成される。また、隣接する磁極の凹部14a〜14dと16a〜16dとの間に磁極間部13a〜13dが形成される。
ティース部32a〜32nによって形成されるスロット34a〜34nには、固定子巻線が、例えば、分布巻方式で配設される。
また、固定子コア31には、冷媒ガス等を通す通路が軸方向に貫通して設けられている。図1では、固定子コア31の外周部を切り欠いた切欠部35a〜35nを通路として用いている。孔を通路として用いることもできる。
いま、図3及び図4に示す永久磁石埋込型電動機を考える。
図3、図4に示す永久磁石埋込型電動機では、回転子210の回転子コア211には、永久磁石220a〜220dが収納される磁石収納孔221a〜221dが各磁極毎に設けられている(図3、図4では、90度毎)。また、固定子230の固定子コア231には、スロット234a〜234nを形成するティース部232a〜232nが設けられている。ティース部232a〜232nには、回転子コア211と間隙を有して対向配置されるティース先端部233a〜233nが設けられている。
ここで、隣接する磁極の磁石収容孔の間隔(例えば、磁石収容孔221aと221bとの間の最短距離)をB、隣接するティース部232a〜232nの側面間の最短距離をAとした時、[B<A]の関係に設定されている場合を考える。
一方、回転子210と固定子230が図4に示されている位置関係(隣接する磁極の磁石収容孔221aと221bとの間の部分(磁極間通路部分)がティース部232aと232bの中間の位置に対向する)にある時には、磁石収容孔221aと221bとの間の磁極間通路部分には、ティース先端部233aの端部を介する磁束φ2と、ティース先端部233bの端部を介する磁束φ3が流れる。ここで、ティース先端部233a〜233nの端部の断面積が小さいため、少量の磁束が流れるだけでティース先端部233a〜233nが磁気飽和し、磁束が流れにくくなる。したがって、磁束φ2とφ3の和は磁束φ1に比べて小さく、発生するリラクタンストルクも小さい。
このように、リラクタンストルクが大きくなったり小さくなったりする(変動する)と、トルク脈動が大きくなり、トルク脈動に起因する振動や騒音が大きくなる。
この場合、回転子10と固定子30が図5に示されている位置関係(磁極間部13aがティース部32aに対向する)にある時には、隣接する磁極の磁石収容孔21aと21bとの間の磁極間通路部分には、ティース先端部33aの中央部を介する磁束φ4が流れる。この時の磁束φ4は大きいため、大きなリラクタンストルクが発生する。
また、回転子10と固定子30が図6に示されている位置関係(磁極間部13aがティース部32aと32bの中間部に対応)にある時には、磁極間部13aは、ティース先端部33a及びティース先端部33bの中央部と対向している。このため、隣接する磁極の磁石収容孔21aと21bとの間の磁極間通路部分には、ティース先端部33aの中央部を介する(ティース先端部33aの端部を介することなく)磁束φ5と、ティース先端部33bの中央部を介する(ティース先端部33bの端部を介することなく)磁束φ6が流れる。磁束φ5及びφ6はティース先端部33a、33bの端部を通ることなく流れるため、磁束φ5とφ6の和は大きく、発生するリラクタンストルクも大きい。
これにより、回転子の位置に関係なく常に大きなリラクタンストルクを発生させることができるため、効率が向上する。
さらに、リラクタンストルクの変動が低減されるため、トルク脈動を低減することができ、トルク脈動に起因して発生する振動や騒音を低減することができる。
磁石収容孔221a〜221dに収容されている永久磁石220a〜220dとティース先端部233a〜233nとの間に短絡磁束が流れると、有効磁束量が減少する。このため、トルクが減少し、効率が低下する。
さらに、本実施の形態では、凹部14a〜14d、16a〜16dの周方向の長さをD、ティース部32a〜32nの幅(側面間の距離)をCとした時、[D≧C]を満足するように構成されている。
ここで、[D≧C]を満足するように構成した場合、図8に示すように、ティース先端部33aの端部を介して短絡磁束φ8が流れることがある。しかしながら、前述したように、ティース先端部33a〜33nの端部の断面積が小さいため、少量の磁束が流れるだけでティース先端部33a〜33nが磁気飽和する。
このため、[D≧C]を満足するように構成されていれば、ティース先端部33a〜33nを介して流れる短絡磁束の量を低減することができる。
これにより、固定子コアに設けられているティース先端部を介して、磁石収容孔に収容されている永久磁石のN極とS極との間に流れる短絡磁束量を低減することができるため、有効磁束量を増加させて効率を向上させることができる。
また、短絡磁束量が低減することによって、固定子コアと回転子コアの間のラジアル方向の磁気吸引力が低減する。これにより、ラジアル方向の磁気吸引力に起因して発生する振動や騒音を低減することができる。
永久磁石の短絡磁束量をさらに低減することができる第2の実施の形態の構成を、図9に示す。
第2の実施の形態の基本的な構成は、図1、図2に示した構成と同様であるため、第1の実施の形態と異なる構成についてのみ説明する。
本実施の形態では、磁石収容孔21a〜21dの端部壁24a〜24d、25a〜25dと回転子コア11の外周部との間に設けられている凹部14a〜14d、16a〜16dの周方向の長さをD、ティース先端部33a〜33nの周方向の長さ(回転子コア11の移動方向の長さ)をHとした時、[D≧H]を満足するように構成されている。
この場合、図8に示した場合よりも更にティース先端部33aの端部を介して流れる短絡磁束も減少させることができる。
これにより、有効磁束量をより増大させることができ、効率を一層向上させることができる。
第3の実施の形態では、空隙部の半径方向の長さ(深さ)を所定範囲に設定することによって効率を向上させる方法を用いている。
ここで、図12に示すように、回転子コア11の外周部とティース先端部33aとの間の間隙(エアギャップ)をg、凹部14a〜14dや16a〜16dの半径方向の長さ(深さ)をLとする。
凹部14a〜14dや16a〜16dの半径方向の長さ(深さ)は、例えば、磁極間部13aあるいは有効磁極部15aと、凹部14aの底壁14a2との間の距離)で示される(図2参照)。
なお、空隙部の半径方向の長さ(深さ)が周方向の各位置において等しくない場合(例えば、図20〜図23に示す空隙部)には、空隙部の半径方向の長さ(深さ)のうち最も短い長さ(最も浅い部分の長さ)を空隙部の長さ(深さ)Lとする。
しかしながら、本実施の形態では、回転子コア11の外周部に凹部14a〜14d、16a〜16dが設けられているため、ティース部32a〜32nに作用する磁気吸引力を低減することができる。これにより、磁気吸引力によるティース部32a〜32nの変形に起因して発生する騒音を低減することができる。
回転子10の外周部に形成した凹部14a〜14d、16a〜16dの半径方向の長さ(深さ)Lと、回転子10の外周部とティース先端部32a〜32nとの間の空隙(エアギャップ)gとの比(L/g)と騒音との関係を図10に示す。
図10から、(L/g)を0.2以上に設定することにより、発生する騒音が低減されていることがわかる。
磁石収容孔21a〜21dに収容されている永久磁石20a〜20dのN極からティース先端部33〜33nを介して永久磁石20a〜20dのS極に流れる短絡磁束の量が増大すると、有効磁束量が減少するため、効率が低下する。
この点においても、(L/g)を0.2以上に設定することにより、効率を向上させることができる。
回転子の外周部に形成した凹部の半径方向の長さ(深さ)Lと、回転子の外周部とティース先端部との間の空隙(エアギャップ)gとの比(L/g)と熱交換媒体(冷媒)の抵抗との関係を図11に示す。
図11から、(L/g)を0.5以下に設定することにより、熱交換媒体の抵抗を小さく抑えることができ、凹部14a〜14dや16a〜16dでの損失の増大が抑制されていることがわかる。
これにより、ティース先端部を介する短絡磁束の量を低減することができるため、効率を向上させることができる。
また、熱交換媒体に対する凹部の抵抗による損失を低減することができるため、効率を向上させることができる。
さらに、固定子と回転子との間に作用するラジアル方向の磁気吸引力を低減することができるため、固定子と回転子との間に作用する磁気吸引力に起因する騒音を低減することができる。
第4の実施の形態は、回転子コア11の各磁極の有効磁極部15a〜15dの開角θを所定範囲に設定することによって効率を向上させる方法を用いている。
各磁極の有効磁極部15a〜15dの開角θは、図17に示すように、回転子コアの中心部Pと各有効磁極部の両端部とを結ぶ直線によって形成される角度を意味するものとする。
本実施の形態では、各有効磁極部15a〜15dの開角θとティース部32a〜32nとの関係によって、有効磁極部15a〜15dの開角θを表している。
各有効磁極部15a〜15dの開角θとティース部32a〜32nとの関係は、各有効磁極部15a〜15dと対向するティース部32a〜32nの数によって表すことができる。
ここで、ティース先端部の端部は断面積が小さく、少量の磁束が流れるのみで磁気飽和し、磁束が通り難くなる。したがって、本実施の形態では、有効磁極部に対向しているティース部の数は、ティース先端部の中央部(ティース部の柱状の本体部に対応する部分)が有効磁極部に対向しているティース部の数で表す。
パターンA〜Dは、それぞれ、回転子の回転に伴って有効磁極部に交互に2個と3個のティース部、3個と4個のティース部、4個と5個のティース部、5個と6個のティース部が対向するように有効磁極部の開角θを設定したものである。
例えは、パターンCでは、回転子の回転に伴って、有効磁極部15aとティース部32a〜32nとの対向状態が図17(a)〜(c)のように順に変化する。図17(a)〜(c)では、回転子は時計方向に回転するものとする。
例えば、任意の時点において、図17(a)に示すように、有効磁極部15aに4個のティース部32a〜32dが対向する。次に、図17(b)に示すように、有効磁極部15aに5個のティース部32a〜32eが対向する。次に、図17(c)に示すように、有効磁極部15aに4個のティース部32b〜32eが対向する。
なお、パターンA〜Dでは、永久磁石の使用量、固定子の構造は同一とする。
有効磁極部に対向するティース部の数が少ないと、ティース磁束密度が高くなり、鉄損が大きくなる。図14から、パターンC、Dは、ティース密度が低く、鉄損が小さいことがわかる。
パターンA〜Dに対する起電力定数を図15に示す。
起電力定数が高いほど起電力が大きい、d軸方向(有効磁極部の中央部と回転子コアとを結ぶ線の方向)に近い磁束量が多いほど、起電力が高くなる。そして、起電力が高いと、駆動電流が小さくなって銅損が小さくなる。図15から、起電力に寄与する磁束が特定の少ないティース部に集中するパターンA、B、Cの起電力定数が高くなっていることがわかる。
パターンA〜Dに対する効率(モータ効率)を図16に示す。
図16から、ティース磁束密度が小さくて鉄損が小さく、起電力定数が大きくて銅損が小さいパターンCの効率がよいことがわかる。
第5の実施の形態では、固定子コア31の寸法を所定範囲に設定することによって効率を向上させる方法を用いている。固定子コア31の寸法を決定する方法としては、例えば、図1に示す固定子コア31の軸線方向に直角な断面の面積(固定子コア断面積)と、固定子コア31に設けられているティース部32a〜32nによって形成されるスロット34a〜34nの軸線方向に直角な断面の面積の総和(スロット総断面積)との和に対する、スロット総断面積の比を用いる。
図1に示す固定子コア31の形状では、固定子コア断面積とスロット総断面積との和は、[(Ra/2)2π−{(Rb/2)2π+G}]で表される。ここで、Raは固定子コア31の外径、Rbは固定子コア31の内径、Gは固定子コア31に設けられている切欠部35a〜35n(通路)の軸線方向に直角な断面の面積の総和を示す。また、スロット総断面積は、[S×z]で示される。ここで、Sはスロット34a〜34nの軸方向に直角な断面の面積、zはスロット数を示す。
そして、スロット総断面積[S×z]を、固定子コア断面積とスロット総断面積との和[(Ra/2)2π−{(Rb/2)2π+G}]に種々の係数(割合)を乗算した場合の効率を求め、効率を向上させることができる係数の範囲を決定する。
また、図18は、図19に示されているスロット断面積Sに対する銅損、鉄損、効率の関係をグラフで示したものである。
図18、図19から、スロット断面積Sが小さい(係数が0.2より小さい)と、スロット34a〜34nに配設する固定子巻線の線径が細くなりすぎて、銅損が大きくなっていることが分かる。また、スロット断面積Sが大きい(係数が0.4より大きい)と、固定子コア31の磁気飽和による効率低下をカバーするために電流が増加し、銅損が大きくなっていることがわかる。
以上のことから、スロット総断面積[S×z]を、[[(Ra/2)2π−{(Rb/2)2π+G}]×0.2≦S×z≦[(Ra/2)2π−{(Rb/2)2π+G}]×0.4]が満足されるように構成することによって、銅損や鉄損を軽減することができ、効率を向上させることができる。
本実施の形態は、固定子コアに形成する孔を通路として用いる場合にも適用することができる。
また、磁石収容孔の端部壁と回転子コアの外周部との間に設ける凹部や孔の形状や数等は種々変更可能である。
また、回転子コアに設ける磁石収容孔の形状や、磁石収容孔に収容する永久磁石の形状も種々変更可能である。
図20〜図23に、回転子の他の実施の形態を示す。
なお、図20〜図23の(a)は磁石収容孔の端部壁と回転子コアの外周部との間に凹部を設けた回転子を示し、図20〜図23の(b)は磁石収容孔の端部壁と回転子コアの外周部との間に孔を設けた回転子を示している。
図20(a)に示す回転子は、回転子コア40の各磁極に、中央部43a、外周部42a及び44aを有し、軸線方向に直角な断面形状が、凸部側が中心側を向いた台形形状を有する磁石収容孔41aが形成されている。また、磁石収容孔41aの端部壁と回転子コア40の外周部との間に凹部45a及び46aが形成されている。凹部45a及び46aの側壁は、磁石収容孔41aの外周部42a及び44aの外壁(あるいは内壁)と平行に形成されている。そして、磁石収容孔41aの中央部43a、外周部42a及び44aには、軸線方向に直角な断面形状が略長方形形状を有する永久磁石47a、48a、49aが収容されている。
図20(b)に示す回転子は、回転子コア50の各磁極に、図20(a)に示す回転子コア40と同様の磁石収容孔51a、永久磁石57a〜59aを有し、磁石収容孔51aの外周部52a及び54aの回転子コア50の外周部側の端部壁と回転子コア50の外周部との間に孔55a及び56aが形成されている。
図21(b)に示す回転子は、回転子コア70の各磁極に、図21(a)に示す回転子コア60と同様の第1及び第2磁石収容孔71a及び73a、永久磁石76a及び77aを有し、第1及び第2磁石収容孔71a及び73aの回転子コア70の外周部側の端部壁と回転子コア70の外周部との間に孔74a及び75aが形成されている。
図22(b)に示す回転子は、回転子コア90の各磁極に、図22(a)に示す回転子コア70と同様の磁石収容孔91a、永久磁石96a及び97aを有し、磁石収容孔91aの端部壁と回転子コア90の外周部との間に孔94a及び95aが形成されている。
図23(b)に示す回転子は、回転子コア110の各磁極に、図23(a)に示す回転子コア100と同様の磁石収容孔111a、永久磁石114aを有し、磁石収容孔111aの端部壁と回転子コア110の外周部との間に孔112a及び113aが形成されている。
例えば、回転子の各磁極を単層で構成したが、各磁極を多層で構成してもよい。
また、磁石収容孔の形状や永久磁石の形状は種々変更可能である。さらに、永久磁石の材料も種々変更可能である。
また、固定子や回転子の大きさも種々変更可能である。
また、圧縮機に用いる場合について説明したが、本発明の永久磁石電動機は、冷蔵庫や電動機により駆動される車載装置等の種々の装置の電動機として用いることができる。
11、40、50、60、70、80、90、100、110、211 回転子コア
14a〜14d、16a〜16d、45a、46a、64a、65a、84a、85a、102a、103a 凹部(空隙部)
15a〜15d 有効磁極部
21a〜21d、41a、51a、61a、63a、71a、73a、81a、91a、101a、111a、221a〜221d 磁石収容孔
20a〜20d、47a〜49a、57a〜59a、66a、67a、76a、77a、86a、87a、96a、97a、104a、114a、220a〜220d 永久磁石
30、230 固定子
31、231 固定子コア
32a〜32n、232a〜232n ティース部
33a〜33n、233a〜233n ティース先端部
34a〜34n、234a〜234n スロット
35a〜35n 切欠部
55a、56a、74a、75a、94a、95a、112a、113a 孔
Claims (5)
- 固定子巻線が収容されるスロットを形成し、回転子と対向する部分に中央部と端部からなるティース先端部を有するティース部が設けられている固定子と、ティース先端部と間隙を介して配置され、永久磁石を収容する磁石収容孔が各磁極に設けられている回転子とを備える永久磁石電動機であって、
磁石収容孔の端部壁と回転子の外周部との間に空隙部が設けられており、
隣接する磁極に設けられている空隙部の距離をB、隣接するティース部の側面間の最短距離をA、ティース部の幅をC、空隙部の周方向の長さをDとした時、
B≧A、D≧C
を満足するように構成されているとともに、
回転子の外周部とティース先端部との間の間隙をg、空隙部の周方向の各位置における半径方向の長さの最短長をLとした時、
g×0.2≦L≦g×0.5
を満足するように構成されており、
また、固定子には、軸方向に貫通する通路が設けられており、
固定子の外径をRa、固定子の内径をRb、スロット断面積をS、スロット数をz、通路の総断面積をGとした時、
[(Ra/2) 2 π−{(Rb/2) 2 π+G}]×0.2≦(S×z)
≦[(Ra/2) 2 π−{(Rb/2) 2 π+G}]×0.4
を満足するように構成されている永久磁石電動機。 - 請求項1に記載の永久磁石電動機であって、固定子の外径が90mmである、永久磁石電動機。
- 圧縮機で圧縮した熱交換媒体を用いて室内の温度を調整する空調装置であって、圧縮機の駆動電動機として請求項1または2に記載の永久磁石電動機を用いた空調装置。
- 圧縮機で圧縮した熱交換媒体を用いて庫内の温度を調整する冷蔵庫であって、圧縮機の駆動電動機として請求項1または2に記載の永久磁石電動機を用いた冷蔵庫。
- 電動機により駆動される車載装置であって、電動機として請求項1または2に記載の永久磁石電動機を用いた車載装置。
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