JP4398784B2 - オープンラック式気化器用伝熱管 - Google Patents

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本発明は、オープンラック式気化器用伝熱管に関し、特には液化天然ガスなどの液体を気化するオープンラック式気化器に使用するための表面に犠牲陽極被膜層を備える伝熱管に関するものである。
液化天然ガス(以下LNGとも言う。)は、通常低温高圧の液状で移送あるいは貯蔵されるが、実際に使用されるときには事前に気化される。海水との熱交換によって前記LNGを加熱して気化させるオープンラック式気化器(以下ORVとも言う。)では、熱伝導性が良好であるアルミニウム合金(以下Al合金とも言う。)が伝熱管として使用されている。しかし、Al合金は、海水と接触することで腐食し、一旦腐食が始まるとその部分が集中的に侵され、いわゆる孔のあく孔食を受け易いという欠点がある。
上記の如き問題を改善して、例えば、特許第3041159号公報(特許文献1)や特開平5−164496号公報(特許文献2)には、ORV用伝熱管の表面にAl−Zn合金などの犠牲防食金属層を溶射やクラッドなどで形成して防食する方法が提案されている。そして、実用においても、ORV用伝熱管パネル(伝熱管の集合体)では、近年、表面に犠牲防食金属層(Al−Zn合金など)を溶射やクラッドなどで形成して防食がなされている。その場合、犠牲防食金属としては、一般的にはAl−2%Zn合金(%は質量%を示し、以下の説明の%も同じである。)あるいはAl−15%Zn合金が単層で用いられている。また、この犠牲防食金属層を溶射で形成する場合には、通常、平均で200μm程度(150〜250μm)の膜厚としている。その理由は、ORVでは起動停止時の温度変化によって伝熱管に熱応力が発生するので、溶射被膜を厚くすると被膜剥離や膨れが起こって、かえって寿命が短くなるという問題があるためである。
一方、ORV伝熱管パネルでは、海水の衝突によるエロージョン作用と腐食作用との相乗作用によってエロージョン・コロージョンが発生して、犠牲防食金属層を消耗させる。特にパネルの下部では、海水の速度が4m/s以上と大きくなっているため、エロージョン・コロージョンによる被膜損傷が顕著である。このエロージョン・コロージョン損傷に対する対策としては、例えば特開平8−29095号公報(特許文献3)に提案されているような、犠牲防食金属層に封孔処理剤を塗布して、更にエポキシ樹脂またはウレタン樹脂を順次積層する方法、あるいは特開平11−106889号公報(特許文献4)に提案されているような、Zn含有量の異なる複数の相で犠牲防食金属層を形成する方法、などがある。
ところが、特許文献3に提案の方法では、エポキシ樹脂またはウレタン樹脂を表面に施工した直後はある程度の効果を発揮するが、屋外では太陽の紫外線により経年劣化して、施工後1年程度で効果が消失するためエロージョン・コロージョン対策としては不十分であった。また、特許文献4に提案の方法では、Zn含有量の異なる複数の相が犠牲防食金属層に存在すると、それらの相間で電位差が生じてガルバニック腐食で犠牲防食金属層の腐食が促進されて、寿命が短くなるという問題がある。
特許第3041159号公報 特開平5−164496号公報 特開平8−29095号公報 特開平11−106889号公報
本発明は、上記の事情を基になしたものであって、その目的は、ORV伝熱管パネルの耐久性向上に関わり、犠牲防食性を維持しつつ、特に高流速下で問題になるエロージョン・コロージョン損傷に対して耐久性の高いオープンラック式気化器用伝熱管を提供するものである。
上記の目的を達成するために、本発明(請求項1)に係るORV用伝熱管は、Al合金製伝熱管の表面にZn:0.10〜1.00%、Si:0.10〜15.00%、Mn:0.10〜5.00%、Mg:0.10〜15.00%を含有するAl−Zn合金被膜を有することを特徴とするものである。
また、上記請求項の発明においては、Al−Zn合金被膜が、更にTi+Zr+Hf:0.01〜0.30%とFe:0.10質量%未満、Cu:0.005%未満を含有してもよい(請求項)。
以上説明したように、本発明に係るORV用伝熱管によれば、犠牲防食性を維持しつつ、特に高流速下で問題になるエロージョン・コロージョン損傷に対して耐久性を高めることができる。
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。図1は、本発明に係るORV用伝熱管の断面図である。
ORV用伝熱管1は、アルミニウム合金製の伝熱母管2の表面にZn:0.10〜1.00%を含有するAl−Zn合金からなる犠牲陽極被膜層3が溶射により被覆されている。なお、本発明に係る伝熱母管2は、ORV用として使用可能な伝熱母管であればよく、図1に示す断面形状を備える伝熱母管に特に限定するものではない。
以下、犠牲陽極被膜層の合金成分などの限定理由を説明する。
伝熱母管の材質としては、通常3000系、5000系、あるいは6000系などのAl合金が用いられるが、伝熱母管の表面に形成した被膜が犠牲防食金属層として防食効果を発揮するためには、これらの伝熱母管のAl合金よりも電位を低くする必要がある。また、エロージョン・コロージョンは、海水の流動により被膜電位が高められて溶解反応が促進される現象と電気化学的には理解される。そこで、本発明者等がエロージョン・コロージョン損傷について鋭意研究を行った結果、エロージョン・コロージョン損傷に対しては、被膜表面を流れる海水流れとともに、被膜の表面に生成するAlの酸化物あるいは水酸化物を主体とした不働態皮膜が影響しており、この不働態皮膜の安定性を高め、強固なものにすることによって耐久性が向上することを見出した。
溶射被膜のZnは、添加量が0.10%以上で被膜の電位を低下させる働きがあり、犠牲防食性向上の観点からは添加量が多いほど好ましい。しかしながら、そのZn量が多くなると、上記した被膜の表面に生成するAlの酸化物あるいは水酸化物を主体とした不働態皮膜中にZnの酸化物あるいは水酸化物(場合によっては塩化物)が多く生成するようになる。これらのZnの化合物は、海水環境においてはAlの酸化物あるいは水酸化物よりも溶解しやすい。そのため、不働態皮膜中のこれらのZn化合物が溶解すると、その部分がピンホール欠陥となって溶射皮膜の孔食の起点となる傾向が大きくなる。この孔食発生傾向は溶射被膜中のZn量が1.00%を超えて添加されていると顕著になり、不働態皮膜の安定性を低下させると共に母材に対する保護性が極端に低下し耐エロージョン・コロージョン性が劣化する。よって、Znの添加量は0.10〜1.00%、好ましくは0.2〜0.8%が推奨される。
Siは、Znと同様に被膜の電位を低下させる働きがあるのと同時に、表面に安定な酸化物として濃縮する傾向があるので、被膜の不働態皮膜の安定性を高める働きもあり、犠牲防食性と耐エロージョン・コロージョン性の両者の向上の観点からは添加量が多いほど好ましい。また、SiはAl合金の融点を低下させる効果があり、線材を溶射材料とした溶射法で被膜を形成する場合には、形成される被膜の均質性を高めるのに有効である。被膜の均質性が高まると局部腐食性が低下するため長寿命化に効果がある。このような効果を得るためには添加量は0.1%以上必要である。しかし、添加量が多いと被膜硬度が上昇して延性が低下し、伝熱母管との熱膨張係数の違いも大きくなるので、ORVの起動・停止による熱サイクル(低温−室温)により犠牲防食金属被膜層に剥離や割れが発生しやすくなる。このような理由から、添加量は15%以下、好ましくは12%以下とすることが推奨される。
Mnは、Znと同様に被膜の電位を低下させる働きがあるので犠牲防食性の向上の観点からは添加量が多いほど好ましい。また、被膜中でAl6Mn化合物を形成するため被膜硬度を上昇させて耐エロージョン性を向上させる効果もある。このような効果を得るためには0.1%以上、好ましくは1%以上の添加が必要である。しかし、添加量が多くなると、融点が上昇するため溶射し難くなり、被膜硬度が上昇し過ぎて延性が低下し、伝熱母管との熱膨張係数の違いも大きくなるので、ORVの起動・停止による熱サイクル(低温−室温)により犠牲防食金属被膜層に剥離や割れが発生しやすくなる。このような理由から、添加量は5%以下、好ましくは4%以下とすることが推奨される。
Mgは、Znと同様に被膜の電位を低下させる働きがあるため犠牲防食性の向上の観点からは添加量は多いほど好ましい。また、Mgは耐孔食性を向上させる効果もあるため、犠牲防食金属被膜層が局所的に消耗するのを防止して、被膜層を寿命化する効果もある。しかし、添加量が多くなると、被膜硬度が上昇し過ぎて延性が低下し、伝熱母管との熱膨張係数の違いも大きくなるので、ORVの起動・停止による熱サイクル(低温−室温)により犠牲防食金属被膜層に剥離や割れが発生しやすくなる。また、粒界に析出したAl3Mg2やMg2Siが優先的に溶解する傾向があるので、粒界腐食の原因になる。このような理由から、添加量は15%以下、好ましくは10%以下とすることが推奨される。
Ti、ZrあるいはHfを添加すると被膜の結晶粒が微細化し、機械的強度が向上し、耐エロージョン・コロージョン性を向上させる効果がある。このような効果を得るには、3元素を合計で0.01%以上の添加が必要であるが、0.3%を超えるとAl3TiやAl3Zrなどの金属間化合物によって耐食性が低下する。この場合、Fe及びCuは犠牲防食金属被膜層の基材に対する防食性を著しく低下させる元素であるため、それぞれ0.10%及び0.005%を超えない範囲とすることで効果的に防食性を確保できる。
伝熱母管の代わりにアルミ合金(A5083)板材(縦100mm×横50mm×厚さ5mm)を用い、その板材の片面に表1に示す犠牲防食金属の溶射による被膜層を形成して供試材を作製し、その供試材を用いて下記に示す(1)熱サイクル試験、(2)エロージョン試験、(3)腐食試験、(4)防食試験、(5)エロージョン・コロージョン試験を行い、伝熱母管に対する犠牲防食金属被膜層の性能を評価した。なお、供試材の作製にあたり、溶射は、溶線式フレーム溶射法(酸素+プロパン炎)で行い、用いる溶材の化学成分を変えて犠牲防食金属被膜層の成分を調整した。
また、供試材の被膜中のZn量は以下の方法で測定した。供試材の溶射被膜からヤスリなどを用いて削り取った粉末1gを希塩酸に溶解させ、その溶解液のICP発光分光分析を行って被膜中のZn量を測定した。なお、溶射被膜の溶解液の分析は、原子吸光法などの他の化学分析でもよい。
(1)熱サイクル試験
実機では、ORVの起動・停止によって伝熱管が低温−室温の熱サイクルを受け、このときの熱応力で犠牲防食金属被膜層に剥離や割れが発生する場合がある。これに対する劣化特性を調べるために、LNGよりも温度の低い液体窒素を用いた熱サイクル試験を行った。試験条件は、液体窒素に5分間浸漬した後、60℃に調整した恒温器内に55分間保持する、というサイクルを1日に連続して8回繰り返し、これを30日間継続した。1日の試験が終了したサンプルは次の日の熱サイクル試験まで室温のデシケータ内で保管した。試験後に犠牲防食金属被膜層の剥離や割れの発生状況を目視で観察した。熱サイクル性は最もマイルドな特性であり、熱サイクル試験で少しでも割れが発生するようなものは実際には使用できないため、ほんの僅かな割れであっても、割れがあるものは×と評価した。評価結果を表2に示す。
(2)エロージョン試験
実機では、海水中に混入している砂などの固体が伝熱管に衝突して、犠牲防食金属被膜層がエロージョンにより剥離や割れが発生したり、消耗により膜厚減少が発生する場合がある。そこでサンドエロージョン試験を行い、犠牲防食金属被膜層のエロージョン特性を評価した。サンドエロージョン試験は、供試材の犠牲防食金属被膜層の全面に砂を噴出速度4m/sで24時間衝突させ、試験前後の重量変化を測定した。評価結果を表2に示す。
(3)腐食試験
実機では、海水による腐食作用で犠牲防食金属被膜層が腐食を呈して、腐食生成物の体積膨張、剥離、割れが発生する場合がある。塩水噴霧試験を行って、犠牲防食金属被膜層の耐食性を評価した。供試材から作製した試験片の犠牲防食金属被膜層を施した表面以外はシリコンシーラントで被覆した。噴霧する塩水として人工海水を用い、試験温度は5℃とした。試験時間は6ヶ月間として、1日毎に犠牲防食金属被膜層の剥離や割れの発生状況を目視で観察して、試験開始から剥離や割れが発生するまでの時間を評価した。評価結果を表2に示す。
(4)防食試験
実機では、何らかの原因で剥離などが発生して犠牲防食金属被膜層の一部が消失し、伝熱母管が露出した場合にも、当該犠牲防食金属被膜層には露出部を防食する作用が要求される。そこで、犠牲防食金属被膜層の伝熱母管に対する防食特性を評価した。用いた試験片は、伝熱母管の露出を模擬して図2に示すように犠牲防食金属被膜層の一部を研削により除去し、その試験面以外はシリコンシーラントで被覆した。この試験片を温度5℃の人工海水に6ヶ月間浸漬して、試験後に板材の腐食発生状況を目視で観察した。板材の露出部に腐食が認められた場合には、触針式3次元形状測定装置を用いて最大腐食深さを測定した。試験前の3次元形状測定結果では、最大粗さは1μm程度であったので、試験後の腐食深さ1μm未満は軽微な腐食と判定した。判定結果を表2に示す。
(5)エロージョン・コロージョン試験
海水の衝突によるエロージョン作用と腐食作用との相乗作用によってエロージョン・コロージョンが発生して、犠牲防食金属層を消耗させて被膜寿命を短くしている。そこでエロージョン・コロージョン試験を行い、犠牲防食金属被膜層の耐エロージョン・コロージョン特性を次の要領で評価した。供試材の試験面に垂直方向から人工海水を衝突させて、犠牲防食金属層の損傷状況を評価した。人工海水の噴出には口径3mmφのノズルを1つの供試材に対して5本づつ用いて行った。人工海水を衝突させる位置は図3に示すように試験片長手方向に15mm間隔である。人工海水の温度は0℃、流速は10m/s、試験時間は1年間とした。試験後の供試材の外観を目視観察し、試験前後の重量変化の測定を行った。供試材の表面(試験面1面)以外はシリコンシーラントで被覆した。評価結果を表2に示す。
Figure 0004398784
Figure 0004398784
上記表1、2に示す試験結果を考察する。
(1)熱サイクル試験
比較例の供試材No.1〜3と7及び参考例の供試材No.4〜6と本発明例の供試材No.8〜19の全てにおいて、液体窒素−室温の温度変化による犠牲防食金属被膜層の剥離や割れは発生していない。このことから、比較例、参考例及び本発明例共に実機のLNG−室温の温度変化に対しても十分耐久性があると判断される。
(2)エロージョン試験
比較例の供試材No.7は、本発明例とほぼ同等の評価結果であったが、Zn含有量が本発明範囲を下回った供試材No.3の評価結果は×となり、Zn含有量が0.10%に満たないと被膜硬度が不足して耐エロージョン性が劣る結果となった。また、本発明例であっても、請求項1の発明を満たす供試材No.8〜15や請求項2の発明を満たす供試材No.16〜19は耐エロージョン性に優れることが分かる。
(3)腐食試験
比較例の供試材No.1〜3と7及び参考例の供試材No.4〜6と本発明例の供試材No.8〜19の全てが、腐食による犠牲防食金属被膜層の剥離や割れに対してほぼ同等の評価結果であった。その内特に、FeとCu含有量を低減し、Ti、ZrもしくはHfを添加した請求項2の発明を満たす供試材No.16〜19は剥離や割れが全く生じておらず、より優れた耐久性を有することが分かる。
(4)防食試験
伝熱母管に対する防食性は犠牲防食金属被膜層が具備すべき最も重要な性能であるものの、比較例の供試材No.7は本発明例とほぼ同等の評価結果であったが、Zn含有量が本発明範囲を下回った供試材No.3の評価結果は×となり、耐エロージョン性同様にZn含有量が0.10%に満たないと被膜硬度が不足して耐防食性も劣る結果となった。また、本発明例でも、請求項1の発明を満たす供試材No.8〜15や請求項2の発明を満たす供試材No.16〜19は耐防食性に優れることが分かる。
(5)エロージョン・コロージョン試験
比較例の供試材No.3は、本発明例とほぼ同等の評価結果であったが、Zn含有量が本発明範囲を上回った供試材No.1、2及び7の評価結果は×となり、Zn含有量が1.00%を超えると耐エロージョン・コロージョン性が劣る結果となった。また、本発明例であっても、請求項の発明を満たす供試材No.8〜15や請求項の発明を満たす供試材No.16〜19は、耐エロージョン・コロージョン性がより優れることが分かる。これはZn含有量の適正な範囲やSiなどの添加による不働態皮膜の安定性向上が効果的に作用しているものと考えられる。
次に、伝熱母管を想定してアルミ合金(A5083)板材(縦100mm×横50mm×厚さ5mm)を用い、その板材の片面にZn含有量を0.01〜20%の範囲で変化させた場合のAl−Znの2元系合金の溶射被膜(被膜厚:200μm)を形成して供試材とし、その供試材の防食特性及びエロージョン・コロージョン特性を調べた。なお、溶射は、溶線式フレーム溶射法(酸素+プロパン炎)で行い、溶材としてZn含有量を0.01〜20%の範囲内で15種類を選択してそれぞれを線材にしたものを用いた。
防食特性について、防食特性の評価試験は、溶射被膜作製に用いたAl−Zn合金溶材及び板材の定常腐食電位を測定することで行った。試験要領は、溶液として、温度0℃の人工海水を用い、参照電極として飽和カロメル電極を用いた。測定開始より腐食電位の時間変化を記録し、腐食電位の変動が1時間あたり20mV以内に収まった状態を定常状態と判断し、この1時間の平均値を定常腐食電位とした。
上記の防食特性の試験結果は、図4の右目盛り(□印)で示す通りであり、Zn量が0.1%を超えると、Al−Zn合金の定常腐食電位は板材(A5083)のそれ(−730.0mV、一点鎖線で示す)よりも30mV程度以上に低くなっている。この結果は、Zn量が0.1%を超えるとAl−Zn合金の溶射被膜は板材を防食可能であることを示唆するものである。
エロージョン・コロージョン特性について、エロージョン・コロージョンの評価試験は、供試材の試験面に垂直方向から人工海水を衝突させて、犠牲防食金属層の損傷状況を評価することで行った。人工海水の噴出には口径3mmφのノズルを1つの供試材に対して5本づつ用い、人工海水を衝突させる位置は図3に示すように供試材長手方向に15mm間隔である。人工海水の温度は0℃、流速は10m/s、試験時間は1年間とした。試験後の供試材の外観を目視観察し、試験前後の重量変化の測定を行った。供試材の表面(試験面1面)以外はシリコンシーラントで被覆した。
上記のエロージョン・コロージョン特性の試験結果は、図4の左目盛り(○印)で示す通りであり、Zn含有量が1%以下であれば、重量減少量は小さく、エロージョン・コロージョンによる損傷が小さい。しかしながら、Zn含有量が1%を超えると重量減少量は急激に大きくなっており、不働態皮膜の安定性向上が得にくくなり、エロージョン・コロージョンによる損傷が顕著になることが分かる。
以上のような防食特性とエロージョン・コロージョン特性の評価結果より、Al−Znの2元系合金防食被膜に関しては、伝熱母管に対する防食性が得られ、かつエロージョン・コロージョン損傷が小さい範囲として、Zn含有量は0.1〜1.00%が最適であり、この範囲であれば、犠牲防食性を維持しつつ、特に高流速下で問題になるエロージョン・コロージョン損傷に対して耐久性を高めることができる。
なお、上記実施例では、溶線式フレーム溶射法を用いた例を説明したが、犠牲防食金属被膜層を形成する溶射方法はこれに限定されるものではなく、アーク式、プラズマ式、高速フレーム式などの他の溶射法でもよい。また、炎も酸素+プロパン炎以外の酸素+アセチレン炎でもよい。また更に、溶射材料も線材でなく粉末などを用いてもよい。
本発明に係るORV用伝熱管の断面図である。 防食試験に用いた試験片の概要図である。 エロージョン・コロージョン試験におけるノズル位置の説明図である。 Zn含有量を変化させた場合のAl−Znの2元系合金の溶射被膜の防食特性及びエロージョン・コロージョン特性のグラフ図である。
符号の説明
1:ORV伝熱管 2:伝熱母管 3:犠牲陽極被膜層

Claims (2)

  1. Al合金製伝熱管の表面にZn:0.10〜1.00質量%、Si:0.10〜15.00質量%、Mn:0.10〜5.00質量%、Mg:0.10〜15.00質量%を含有するAl−Zn合金被膜を有することを特徴とするオープンラック式気化器用伝熱管。
  2. Al−Zn合金被膜が、更にTi+Zr+Hf:0.01〜0.30質量%とFe:0.10質量%未満、Cu:0.005質量%未満を含有してなる請求項に記載のオープンラック式気化器用伝熱管。
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