JP4397013B2 - 光触媒組成物 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、光エネルギーによって物質の分解作用や表面の親水化作用を示すことから、環境浄化や防汚、防曇等の分野へ応用が知られている酸化チタンに代表される光触媒の部材表面への固定化技術に関する。
具体的には、光触媒の部材表面への固定化が容易に行える光触媒組成物に関し、さらにその光触媒等を固定化した光触媒活性及び/又は水の濡れ性(親水性、疎水性)の制御能を有する機能性複合体に関する。
【0002】
【従来の技術】
酸化チタンに代表される光触媒は光エネルギーによって物質の分解作用や表面の親水化作用を示すことが知られている。この光触媒を環境浄化や防汚、防曇等の分野へ応用させる場合、光触媒の固定化技術が非常に重要な役割を担う。
光触媒の固定化技術の有用な手段として、基材への光触媒のコーティングが注目されている。ここで、コーティングによる光触媒の固定化技術に求められる最低限の条件として以下の項目が挙げられる。
1)光触媒活性を損なわずに強固に固定化。
2)光触媒作用で基材及びコーティング自体が劣化しない安定性。
さらに、固定化する基材の適応範囲を広げるための好ましい条件として以下の項目が挙げられる。
3)固定化条件が穏和である(室温〜150℃程度)。
4)コーティング膜は透明性に優れ、耐久性、耐汚染性、硬度等に優れた皮膜を形成。
【0003】
ところで、酸化チタンに代表される光触媒のコーティングによる固定化技術については種々の提案がなされている。
例えば、光触媒をスパッタリング法やゾル・ゲル法で基材にコーティングする方法として特開昭60−044053号公報ではスパッタリング法により薄膜状の光触媒を基材に担持する方法、特開昭60−118236号公報では有機チタネートを塗布した後、焼成する方法が提案されている。しかし、これらの方法は、基材上での光触媒粒子の生成、結晶化のために高温度での焼成が必要であり、大面積の固定化ができにくいという欠点がある。
【0004】
また、光触媒粒子の生成、結晶化の過程を必要としない光触媒ゾルを使用する方法として、例えば特開平6−278241号公報では水中に解膠させた酸化チタンゾルを基材にコーティングする方法が提案されている。この方法においても酸化チタンゾルに穏和な条件下での成膜性がないため高温度の焼成が必要であり、生成する被膜は脆く、容易に破壊されて触媒効果を失う欠点があった。
【0005】
さらに、樹脂塗料中に光触媒を混合し、この樹脂塗料を基材にコーティングする方法も提案されている。例えば、特開平7−171408号公報、特開平9−100437号公報、特開平9−227831号公報、特開平9−59041号公報、特開平9−188850号公報、特開平9−227829号公報ではフッ素樹脂やシリコーン樹脂等の難分解性物質を光触媒と混合する樹脂塗料として使用する方法が提案されている。しかし、これらの方法では、十分な光触媒活性や親水化能力を発現させるためには樹脂塗料の使用量を少なくする必要があり、この場合には耐候性、硬度、密着性、耐屈曲性、耐衝撃性、耐摩耗性等において良好な塗膜物性を有する被膜を得る事ができない。(逆に、良好な塗膜物性を発現するために樹脂塗料の使用量を多くすると、光触媒が樹脂塗料中に埋没し十分な光触媒活性や親水化能力を示さない。)
すなわち、光触媒のコーティングによる固定化技術において上記1)〜4)の固定化技術に求められる条件を全て満足する技術は未だ開発されていない。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の課題は、透明性や硬度等に優れるだけでなく、柔軟性(耐屈曲性、耐衝撃性)に優れ、光照射により長期にわたり、その表面が水の濡れ性(親水性、疎水性)の制御能及び/又は光触媒活性を発現する機能性複合体や成形体を得ることができる光触媒組成物を提供することである。
【0007】
【課題を解決するための手段】
発明者らは上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、本発明に到達した。
即ち、本発明の第1は、光触媒(A)の粒子を下記式(7)で表されるモノオキシジオルガノシラン単位、下記式(8)で表されるジオキシオルガノシラン単位、及び下記式(9)で表されるジフルオロメチレン単位よりなる群から選ばれる少なくとも1種の構造単位を有する化合物類よりなる群から選ばれる少なくとも1種の変性剤化合物(C)を用いて変性処理することによって得られた変性光触媒(A1)と、
下記平均組成式(2)で表されるシリコーン化合物(B1)と
を含んでなる光触媒組成物であって、
該シリコーン化合物が下記一般式(3)で表されるフェニルラダー構造を含み、
質量比(A)/(C)=1/99〜99.9/0.1であり、
質量比(A)/(B1)=1/99〜90/10である
ことを特徴とする光触媒組成物である。
【化14】
Figure 0004397013
【0008】
発明の第2は、シリコーン化合物として下記平均組成式(4)で表されるアルキルシリコーン化合物(B2)を更に含むことを特徴とする発明の第1の光触媒組成物である。
3 u v SiO (4-u-v)/2 (4)
(式中、R 3 は直鎖状または分岐状の炭素数1〜30のアルキル基を表し、Xは、式(2)で定義した通りである。
0<u<4、0<v<4、及び0<(u+v)<4である。)
【0009】
発明の第3は、平均組成式(4)で表されるアルキルシリコーン化合物(B2)が、下記式(5)で表されるモノオキシジオルガノシラン単位(T)と下記式(6)で表されるジオキシオルガノシラン単位(D)の両方を有する構造であることを特徴とする発明の第2の光触媒組成物である。
−(R 3 3 SiO)− (5)
【化2】
Figure 0004397013
(式中、R 3 は直鎖状または分岐状の炭素数1〜30のアルキル基を表す。)
【0019】
発明の第は、該変性剤化合物(C)が、式(10)で表される平均組成を有するケイ素化合物であることを特徴とする発明の第1〜3のいずれかの光触媒組成物である。
4 xyzSiO(4-x-y-z)/2 (10)
(式中、R4は式(7)で定義した通りであり、Xは、式()で定義した通りである。
【0020】
また、式中Qは、又は下記(あ)〜(え)からなる群より選ばれる少なくとも1つの機能性付与基を含有する基である。
(あ)直鎖状または分岐状の炭素数が1〜30個のアルキル基、直鎖状または分岐状の炭素数が1〜30個のアルケニル基、炭素数5〜20のシクロアルキル基、もしくは置換されていないか或いは炭素数1〜20のアルキル基又は炭素数1〜20のアルコキシ基、又はハロゲン原子で置換されている炭素数6〜20のアリール基、及び炭素数1〜30のフルオロアルキル基からなる群より選ばれる少なくとも1つの疎水性基。
(い)カルボキシル基あるいはその塩、リン酸基あるいはその塩、スルホン酸基あるいはその塩、ポリオキシアルキレン基からなる群から選ばれた少なくとも1つの親水性基。
(う)エポキシ基、アクリロイル基、メタアクリロイル基、(環状)酸無水物基、ケト基、カルボキシル基、ヒドラジン残基、イソシアネート基、イソチオシアネート基、水酸基、アミノ基、環状カーボネート基、チオール基、エステル基からなる群から選ばれた少なくとも1つの反応性基。
(え)少なくとも1つの分光増感基。
また、0<x<4、0<y<4、0≦z<4、及び(x+yz)<4である。)
【0021】
発明の第は、該変性剤化合物(C)が、式(11)で表される化合物であることを特徴とする発明の第1〜3のいずれかの光触媒組成物である。
(R4HSiO)a(R4 2SiO)b(R4QSiO)c(R4 3SiO1/2d・・・(11)
(式中、R4は式(7)で定義した通りであり、Qは式(10)で定義した通りであり、aは1以上の整数であり、b、cは0又は1以上の整数であり、(a+b+c)≦10000であり、そしてdは0又は2である。但し、(a+b+c)が2以上の整数であり且つd=0の場合、該化合物は環状シリコーン化合物であり、d=2の場合、該化合物は鎖状シリコーン化合物である。)
【0022】
発明の第は、光触媒(A)が、数平均粒子径200nm以下の光触媒ゾルであることを特徴とする発明の第1〜のいずれかの光触媒組成物である。
発明の第は、発明の第1〜のいずれかの光触媒組成物であって、自己傾斜性を有することを特徴とする光触媒組成物である。
発明の第は、発明の第1〜のいずれかの光触媒組成物であって、該光触媒組成物が基材上に塗布成膜されると、光触媒(A)が外気と接する皮膜表面側に向かって多くなるような膜厚方向に濃度勾配を有した傾斜組成皮膜を自律的に形成することを特徴とする光触媒組成物である。
発明の第は、発明の第1〜のいずれかの光触媒組成物であって、該光触媒組成物から成形体を形成する際、その形成過程において光触媒(A)が成形体の内部から表面側に向かって多くなるような濃度勾配を有する構造を自律的に形成することを特徴とする光触媒組成物である。
【0023】
発明の第10は、発明の第1〜のいずれかの光触媒組成物を含む皮膜を基材上に形成して得られる機能性複合体である。
発明の第11は、発明の第の光触媒組成物を含む皮膜を基材上に形成して得られる機能性複合体であって、該皮膜が光触媒(A)の膜厚方向の分布について異方性を有することを特徴とする機能性複合体である。
発明の第12は、発明の第1〜のいずれかの光触媒組成物から形成された成形体である。
発明の第13は、発明の第9の光触媒組成物から形成された成形体であって、光触媒(A)の内部から表面への分布について異方性を有することを特徴とする成形体である。
【0024】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明において使用できる光触媒(A)とは、その結晶の伝導帯と価電子帯との間のエネルギーギャップよりも大きなエネルギー(すなわち短い波長)の光(励起光)を照射したときに、価電子帯中の電子の励起(光励起)が生じて、伝導電子と正孔を生成しうる物質をいい、例えばTiO2、ZnO、SrTiO3、CdS、GaP、InP、GaAs、BaTiO3、BaTiO4、BaTi49、K2NbO3、Nb25、Fe23、Ta25、K3Ta3Si23、WO3、SnO2、Bi23、BiVO4、NiO、Cu2O、SiC、MoS2、InPb、RuO2、CeO2等、さらにはTi、Nb、Ta、Vから選ばれた少なくとも1種の元素を有する層状酸化物(特開昭62−74452号公報、特開平2−172535号公報、特開平7−24329号公報、特開平8−89799号公報、特開平8−89800号公報、特開平8−89804号公報、特開平8−198061号公報、特開平9−248465号公報、特開平10−99694号公報、特開平10−244165号公報等)を挙げることができる。また、これらの光触媒にPt、Rh、Ru、Nb、Cu、Sn、Ni、Feなどの金属及び/又は金属の酸化物を添加あるいは固定化したものや、多孔質リン酸カルシウム等で被覆された光触媒(特開平11−267519号公報)等も使用することもできる。
【0025】
上記光触媒(A)の結晶粒子径(1次粒子径)は1〜200nm、好ましくは1〜50nmの光触媒が好適に選択される。これらの光触媒(A)の中でTiO2(酸化チタン)は無害であり、化学的安定性にも優れるため好ましい。酸化チタンとしては、アナターゼ、ルチル、ブルッカイトのいずれも使用できる。また、窒素ドープ酸化チタンや酸素欠陥型の酸化チタンの如き、可視光応答型酸化チタン光触媒も好適に使用することができる。
【0026】
また、光触媒(A)の存在形態としては、粉体、光触媒ゾルを挙げることができる。
本発明に使用される光触媒(A)としては、一次粒子と二次粒子との混合物の数平均分散粒子径が200nm以下の光触媒が表面特性を有効に利用できるために好ましい。特に数平均分散粒子径が100nm以下の光触媒を使用した場合、本発明の光触媒組成物からは透明性に優れた皮膜を得ることができるため非常に好ましい。より好ましくは80nm以下3nm以上、さらに好ましくは50nm以下3nm以上の光触媒が好適に選択される。これらの光触媒(A)は、光触媒ゾルであることが好ましい。
【0027】
一般に微細な粒子からなる粉体は、複数の粒子が強力に凝集した二次粒子を形成するため、無駄にする表面特性が多い上、一つ一つの一次粒子にまで分散させるのは非常に困難である。これに対して、光触媒ゾルの場合、光触媒粒子は溶解せずに一次粒子に近い形で存在しているため表面特性を有効に利用でき光触媒活性が向上すると共に、後述するシリコーン化合物とからなる光触媒組成物から生成する皮膜の外観は非常に優れたものとなる。ここで、光触媒ゾルとは、光触媒粒子が水及び/又は有機溶媒中に固形分0.01〜70質量%、好ましくは0.1〜50質量%で分散されたものである。
【0028】
該光触媒ゾルとして酸化チタンのゾルを例にとると、例えば実質的に水を分散媒とし、その中に酸化チタン粒子が解膠された酸化チタンヒドロゾル等を挙げることができる。(ここで、実質的に水を分散媒とするとは、分散媒中に水が80%程度以上含有されていることを意味する。)かかるゾルの調整は公知であり、容易に製造できる(特開昭63−17221号公報、特開平7−819号公報、特開平9−165218号公報、特開平11−43327号公報等)。例えば、硫酸チタンや四塩化チタンの水溶液を加熱加水分解して生成したメタチタン酸をアンモニア水で中和し、析出した含水酸化チタンを濾別、洗浄、脱水させると酸化チタン粒子の凝集物が得られる。この凝集物を、硝酸、塩酸、又はアンモニア等の作用の下に解膠させ水熱処理等を行うことにより酸化チタンヒドロゾルが得られる。また、酸化チタンヒドロゾルとしては、酸化チタン粒子を酸やアルカリの作用の下で解膠させたものや、酸やアルカリを使用せず必要に応じ分散安定剤を使用し、強力なせんだん力の下で水中に分散させたゾルも用い得る。さらに、pHが中性付近の水溶液中においても分散安定性に優れる、粒子表面がペルオキソ基で修飾されたアナターゼ型酸化チタンゾルも特開平10−67516号公報で提案された方法によって容易に得ることができる。
上述した酸化チタンヒドロゾルはチタニアゾルとして市販されている。(例えば、商品名「STS−02」/石原産業(株)/日本、商品名「TO−240」/田中転写(株)/日本等)
【0029】
上記酸化チタンヒドロゾル中の固形分は50質量%以下、好ましくは30質量%以下である。さらに好ましくは30質量%以下0.1質量%以上である。このようなヒドロゾルの粘度(20℃)は比較的低く、例えば、2000cps〜0.5cps程度の範囲にあればよい。好ましくは1000cps〜1cps、さらに好ましくは500cps〜1cpsである。
【0030】
また、例えば酸化セリウムゾル(特開平8−59235号公報)やTi、Nb、Ta、Vから選ばれた少なくとも1種の元素を有する層状酸化物のゾル(特開平9−25123号公報、特開平9−67124号公報、特開平9−227122号公報、特開平9−227123号公報、特開平10−259023号公報等)等、様々な光触媒ゾルの製造方法についても酸化チタンゾルと同様に開示されている。
【0031】
また、実質的に有機溶媒を分散媒とし、その中に光触媒粒子が分散された光触媒オルガノゾルは、例えば上記光触媒ヒドロゾルをポリエチレングリコール類の如き相関移動活性を有する化合物(異なる第1の相と第2相との界面に第3の相を形成し、第1の相、第2の相、第3の相を相互に溶解及び/又は可溶化する化合物)で処理し有機溶媒で希釈したり(特開平10−167727号公報)、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム等の陰イオン界面活性剤で水に不溶性の有機溶剤中に分散移行させてゾルを調整する方法(特開昭58−29863号公報)やブチルセロソルブ等の水より高沸点のアルコール類を上記光触媒ヒドロゾルに添加した後、水を(減圧)蒸留等によって除去する方法等により得ることができる。また、実質的に有機溶媒を分散媒とし、その中に酸化チタン粒子が分散された酸化チタンオルガノゾルは市販されている(例えば商品名「TKS−251」/テイカ(株))。ここで、実質的に有機溶媒を分散媒とするとは、分散媒中に有機溶媒が80%程度以上含有されていることを意味する。
【0032】
本発明の光触媒組成物に用いる光触媒(A)として、光触媒粒子を、式(7)で表されるモノオキシジオルガノシラン単位、式(8)で表されるジオキシオルガノシラン単位、及び式(9)で表されるジフルオロメチレン単位よりなる群から選ばれる少なくとも1種の構造単位を有する化合物類よりなる群から選ばれる少なくとも1種の変性剤化合物(C)を用いて変性処理することによって得られた変性光触媒(A1)を用いると、本発明の光触媒組成物は貯蔵安定性に優れるとともに、該光触媒組成物から形成される皮膜は、光照射による水の濡れ性(親水性、疎水性)の制御能や光触媒活性が非常に大きくなる為、非常に好ましい。
−(R44SiO)− (7)
【0033】
【化7】
Figure 0004397013
【0034】
(式中、R4は各々独立して水素原子、直鎖状または分岐状の炭素数が1〜30個のアルキル基、炭素数5〜20のシクロアルキル基、又は置換されていないか又は炭素数1〜20のアルキル基、フェニル基、炭素数1〜20のアルコキシ基、又はハロゲン原子で置換されている炭素数6〜20のアリール基を表す)
−(CF2)− (9)
【0035】
本発明において変性とは、後述する少なくとも1種の変性剤化合物(C)を、光触媒粒子の表面に固定化することを意味する。上記の変性剤化合物(C)の光触媒粒子表面への固定化はファン・デル・ワールス力(物理吸着)やクーロン力または化学結合によるものと考えられる。特に、化学結合を利用した変性は、変性剤化合物(C)と光触媒(A)との相互作用が強く、変性剤化合物(C)が光触媒粒子の表面に強固に固定化されるので好ましい。
【0036】
本発明の変性光触媒(A1)を得るのに使用される上式(7)及び/又は上式(8)で表される構造単位を有する変性剤化合物(C)としては、例えばSi−H基、加水分解性シリル基(アルコキシシリル基、ヒドロキシシリル基、ハロゲン化シリル基、アセトキシシリル基、アミノキシシリル基等)、エポキシ基、アセトアセチル基、チオール基、酸無水物基等の光触媒粒子と化学結合の生成が期待できる反応性基を有するケイ素化合物やポリオキシアルキレン基等の光触媒粒子との親和性が期待できる親水性基を有するケイ素化合物等を挙げることができる。
これらの例としては、例えば平均組成式(10)で表されるケイ素化合物を挙げることができる。
4 xyzSiO(4-x-y-z)/2 (10)
(式中、R4は式(7)で定義した通りであり、Xは、式(1)で定義した通りである。)
【0037】
また、式中Qは、又は下記(あ)〜(え)からなる群より選ばれる少なくとも1つの機能性付与基を含有する基である。
(あ)直鎖状または分岐状の炭素数が1〜30個のアルキル基、直鎖状または分岐状の炭素数が1〜30個のアルケニル基、炭素数5〜20のシクロアルキル基、もしくは置換されていないか或いは炭素数1〜20のアルキル基又は炭素数1〜20のアルコキシ基、又はハロゲン原子で置換されている炭素数6〜20のアリール基、及び炭素数1〜30のフルオロアルキル基からなる群より選ばれる少なくとも1つの疎水性基。
(い)カルボキシル基あるいはその塩、リン酸基あるいはその塩、スルホン酸基あるいはその塩、ポリオキシアルキレン基からなる群から選ばれた少なくとも1つの親水性基。
(う)エポキシ基、アクリロイル基、メタアクリロイル基、(環状)酸無水物基、ケト基、カルボキシル基、ヒドラジン残基、イソシアネート基、イソチオシアネート基、水酸基、アミノ基、環状カーボネート基、チオール基、エステル基からなる群から選ばれた少なくとも1つの反応性基。
(え)少なくとも1つの分光増感基。
また、0<x<4、0<y<4、0≦z<4、及び(x+y+z)<4である。)
【0038】
上述した平均組成式(10)で表されるケイ素化合物として、Si−H基を有する化合物(式(10)中のXの少なくとも1つが水素原子)を選択すると、後述する光触媒(A)の変性操作により混合液からは水素ガスが発生すると共に、光触媒(A)として光触媒ゾルを用いた場合、その平均分散粒子径の増加が観察される。また、例えば光触媒(A)として酸化チタンを用いた場合、上記変性の操作により、Ti−OH基の減少がIRスペクトルにおける3630〜3640cm-1の吸収の減少として観測される。
【0039】
これらのことより、変性剤化合物(C)としてSi−H基含有ケイ素化合物を選択した場合は、本発明の変性光触媒(A1)は、光触媒とSi−H基含有ケイ素化合物の単なる混合物ではなく、化学結合等の何らかの相互作用をもったものであることが予測できるため非常に好ましい。実際、この様にして得られた変性光触媒ゾルは、分散安定性や化学的安定性、耐久性等が非常に優れた物となる。これに対し、平均組成式(10)で表されるケイ素化合物として、Xが加水分解性基(炭素数1〜20のアルコキシ基、炭素数1〜20のアシロキシ基、アミノキシ基、炭素数1〜20のオキシム基、ハロゲン原子)や水酸基を含有するものは、SiH基含有ケイ素化合物と同様に光触媒の変性に利用することもできるが、副反応が多く、貯蔵安定性を悪くするため、その含有量は少ない方が好ましい。上記平均組成式(10)のより好ましい形態は、上記加水分解性基や水酸基を実質的に含まない系である。
【0040】
上記平均組成式(10)で表されるSi−H基含有ケイ素化合物の例としては、例えば下記式(11)で表される化合物等を挙げることができる。
(R4HSiO)a(R4 2SiO)b(R4QSiO)c(R4 3SiO1/2d・・・(11)
(式中、R4は式(7)で定義した通りであり、Qは式(10)で定義した通りであり、aは1以上の整数であり、b、cは0又は1以上の整数であり、(a+b+c)≦10000であり、そしてdは0又は2である。但し、(a+b+c)が2以上の整数であり且つd=0の場合、該化合物は環状シリコーン化合物であり、d=2の場合、該化合物は鎖状シリコーン化合物である。)
【0041】
また、上記平均組成式(10)で表されるケイ素化合物として、機能性付与基含有基(Q)を有するものを選択すると、本発明で得られる変性光触媒(A1)に種々の機能を付与できるため好ましい。機能性付与基含有基(Q)は下記式で表される基であることが好ましい。
ここで機能性付与基含有基(Q)は下式(12)で表される基であることが好ましい。
−Z−(W)h ・・・(12)
(式中、Zは分子量14〜50,000のh価の有機基を表し、Wは上記機能性付与基(あ)〜(え)からなる群から選ばれる少なくとも1つであり、hは1〜20の整数である。)
【0042】
例えば機能性付与基含有基(Q)として、カルボキシル基あるいはその塩を含む1価の基、リン酸基あるいはその塩を含む1価の基、スルホン酸基あるいはその塩を含む1価の基、ポリオキシアルキレン基からなる群から選ばれた少なくとも1つの親水性基[式(10)中の(い)]を有するものを選択すると、得られる変性光触媒(A1)の水に対する分散安定性が非常に良好なものとなる。
【0043】
また、例えば機能性付与基含有基(Q)として、疎水性基である炭素数1〜30のフルオロアルキル基を含む1価の疎水性基[式(10)中の(あ)]を有するものを選択すると、得られる変性光触媒(A1)は表面エネルギーの非常に小さいものとなり、本発明の変性光触媒(A1)は後述する自己傾斜性が大きくなるばかりか、非常に疎水性の高い被膜を得ることも可能となる。
また、例えば機能性付与基含有基(Q)として、エポキシ基、アクリロイル基、メタアクリロイル基、(環状)酸無水物基、ケト基、カルボキシル基、ヒドラジン残基、イソシアネート基、イソチオシアネート基、水酸基、アミノ基、環状カーボネート基、チオール基、エステル基からなる群から選ばれた少なくとも1つの反応性基[式(10)中の(う)]を含有する基を選択すると本発明の変性光触媒(A1)は架橋性を有し、耐久性等に優れた被膜を形成することができるので好ましい。
また、例えば機能性付与基含有基(Q)として、分光増感基を有するものを選択すると、本発明の変性光触媒(A1)は、紫外線領域だけでなく、可視光領域及び/又は赤外光領域の光の照射によっても触媒活性や光電変換機能を発現することができる。
【0044】
ここで、分光増感基とは、可視光領域及び/又は赤外光領域に吸収を持つ種々の金属錯体や有機色素(即ち、増感色素)に由来する基を意味する。
増感色素としては、例えばキサンテン系色素、オキソノール系色素、シアニン系色素、メロシアニン系色素、ローダシアニン系色素、スチリル系色素、ヘミシアニン系色素、メロシアニン系色素、フタロシアニン系色素(金属錯体を含む)、ポルフィリン系色素(金属錯体を含む)、トリフェニルメタン系色素、ペリレン系色素、コロネン系色素、アゾ系色素、ニトロフェノール系色素、さらには日本国特開平1−220380号公報や日本国特許出願公表平5−504023号公報に記載のルテニウム、オスミウム、鉄、亜鉛の錯体や、他にルテニウムレッド等の金属錯体を挙げることができる。
【0045】
これらの増感色素の中で、400nm以上の波長領域で吸収を持ち、かつ最低空軌道のエネルギー準位(励起状態の酸化還元電位)が光触媒の伝導帯のエネルギー準位より高いという特徴を有するものが好ましい。このような増感色素の特徴は、赤外・可視・紫外領域における光の吸収スペクトルの測定、電気化学的方法による酸化還元電位の測定(T.Tani, Photogr. Sci. Eng., 14, 72 (1970); R.W.Berriman et al., ibid., 17. 235 (1973); P.B.Gilman Jr., ibid., 18, 475 (1974)等)、分子軌道法を用いたエネルギー準位の算定(T.Tani et al., Photogr. Sci. Eng., 11, 129 (1967); D.M.Sturmer et al., ibid., 17. 146 (1973); ibid., 18, 49 (1974); R.G.Selby et al., J. Opt. Soc. Am., 33, 1 (1970)等)、更には光触媒と分光増感色素によって作成したGratzel型湿式太陽電池の光照射による起電力の有無や効率等によって確認することができる。
【0046】
上記の特徴を有する増感色素の例としては、9−フェニルキサンテン骨格を有する化合物、2,2−ビピリジン誘導体を配位子として含むルテニウム錯体、ペリレン骨格を有する化合物、フタロシアニン系金属錯体、ポルフィリン系金属錯体等を挙げることができる。
上記の増感色素に由来する分光増感基を有するケイ素化合物を得る方法には特に限定はないが、例えば、上記の反応性基を有するケイ素化合物と、この反応性基と反応性を有する増感色素を反応させることによって得ることができる。
【0047】
また、本発明の変性光触媒(A1)を得るのに使用される上式(9)で表される構造単位を有する変性剤化合物(C)としては、例えばSi−H基、加水分解性シリル基(アルコキシシリル基、ヒドロキシシリル基、ハロゲン化シリル基、アセトキシシリル基、アミノキシシリル基等)、エポキシ基、アセトアセチル基、チオール基、酸無水物基等の光触媒粒子と化学結合の生成が期待できる反応性基やポリオキシアルキレン基等の光触媒粒子との親和性が期待できる親水性基を有する、炭素数1〜30のフルオロアルキル化合物や数平均分子量100〜1,000,000のフルオロアルキレン化合物を挙げることができる。
【0048】
具体的には、式(13)で表されるフルオロアルキル化合物、及び式(14)で表されるフルオロオレフィン重合体が挙げられる。
CF3(CF2g−Y−(V)w (13)
(式中、gは0〜29の整数を表す。
Yは分子量14〜50000のw価の有機基を表す。
wは1〜20の整数である。
Vは、加水分解性シリル基、エポキシ基、水酸基、アセトアセチル基、チオール基、環状酸無水物基、カルボキシル基、スルホン酸基、ポリオキシアルキレン基からなる群から選ばれた少なくとも1つの官能基を表す。)
【0049】
【化8】
Figure 0004397013
【0050】
(式中、A1〜A5は同一でも異なっていても良く、それぞれフッ素原子、水素原子、塩素原子、炭素数1〜6のアルキル基、及び炭素数1〜6のハロ置換アルキル基から選ばれる1種を示す。
mは10以上1000000以下の整数であり、nは0以上100000以下の整数を表す。
Yは分子量14〜50000のw価の有機基を表す。
wは1〜20の整数である。
Vは、式(13)で定義した通り。)
【0051】
これらの具体的な例としては、例えば2−パーフルオロオクチルエチルトリメトキシシラン等のフルオロアルキルシラン類、ナフィオン樹脂、クロロトリフルオロエチレンやテトラフルオロエチレン等のフルオロオレフィン類とエポキシ基、水酸基、カルボキシル基、アセトアセチル基、チオール基、環状酸無水物基、スルホン酸基、ポリオキシアルキレン基等を有するモノマー類(ビニルエーテル、ビニルエステル、アリル化合物等)との共重合体等を挙げることができる。
【0052】
さらに、本発明の変性光触媒(A1)を得るのに使用される上式(7)及び/又は上式(8)と上式(9)で表される構造単位を有する変性剤化合物(C)としては、例えばフルオロアルキル基とSi−H基、加水分解性シリル基(アルコキシシリル基、ヒドロキシシリル基、ハロゲン化シリル基、アセトキシシリル基、アミノキシシリル基等)、エポキシ基、アセトアセチル基、チオール基、酸無水物基等の光触媒粒子と化学結合の生成が期待できる反応性基を有するケイ素化合物等を挙げることができる。
【0053】
本発明の変性光触媒(A1)は、水及び/又は有機溶媒の存在下、あるいは非存在下において、前述した光触媒(A)と、同じく前述した変性剤化合物(C)とを、質量比(A)/(C)=1/99〜99.9/0.1、好ましくは(A)/(C)=10/90〜99/1の割合で0〜150℃にて混合したり、(減圧)蒸留等により該混合物の溶媒組成を変化させる等の操作をすることにより得ることができる。
【0054】
ここで上記変性処理を行う場合、使用できる有機溶媒としては、例えばトルエンやキシレン等の芳香族炭化水素類、ヘキサン、シクロヘキサン、ヘプタン等の脂肪族炭化水素類、酢酸エチル、酢酸n−ブチル等のエステル類、エチレングリコール、ブチルセロソルブ、イソプロパノール、n−ブタノール、エタノール、メタノール等のアルコール類、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン類、テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル類、ジメチルアセトアミド、ジメチルホルムアミド等のアミド類、クロロホルム、塩化メチレン、四塩化炭素等のハロゲン化合物類、ジメチルスルホキシド、ニトロベンゼン等やこれらの2種以上の混合物が挙げられる。
【0055】
本発明における光触媒組成物は、上述した光触媒(A)(変性光触媒(A1)を含む)と下記平均組成式(1)で表されるシリコーン化合物(B)とからなる。
1 p2 qrSiO(4-p-q-r)/2 (1)
(式中、R1はフェニル基を表し、R2は直鎖状または分岐状の炭素数1〜30個のアルキル基、炭素数5〜20のシクロアルキル基、及び炭素数1〜20のアルキル基、炭素数1〜20のアルコキシ基、又はハロゲン原子で置換されている炭素数6〜20のアリール基からなる群より選ばれる少なくとも1つの炭化水素基を表す。
Xは、水素原子、水酸基、炭素数1〜20のアルコキシ基、炭素数1〜20のアシロキシ基、アミノキシ基、炭素数1〜20のオキシム基、ハロゲン原子からなる群より選ばれる少なくとも1つの反応性基を表し、
0<p<4、0≦q<4、0<r<4、及び0<(p+q+r)<4であり、さらに0.1≦p/(p+q)≦1の関係を満足する。)
【0056】
上記平均組成式(1)で示されるシリコーン化合物(B)は、Ph−Si結合(Ph:フェニル基)をR−Si結合(R:水素原子または炭素数1〜20の一価の有機基)全体に対し10モル%以上有する構造である。我々は、この様な構造を有するシリコーン化合物(B)と光触媒(A)からなる光触媒組成物から形成される皮膜は、光照射による親水化能力が非常に大きくなることを見いだした。また、該親水化能力は、上記R−Si結合全体に対するPh−Si結合(Ph:フェニル基)の割合が増えるに従い増大する。よって、本発明の光触媒組成物に使用するシリコーン化合物(B)としてより好ましい構造は、R−Si結合(R:水素原子または炭素数1〜20の一価の有機基)全体に対するPh−Si結合(Ph:フェニル基)の割合が20モル%以上、さらに好ましくは50モル%以上、さらに好ましくは100モル%(フェニルシリコーン化合物(B1):下記平均組成式(2))である。
1 stSiO(4-s-t)/2 (2)
(式中、R1はフェニル基を表し、
Xは、水素原子、水酸基、炭素数1〜20のアルコキシ基、炭素数1〜20のアシロキシ基、アミノキシ基、炭素数1〜20のオキシム基、ハロゲン原子からなる群より選ばれる少なくとも1つの反応性基を表し、
0<s<4、0<t<4、及び0<(s+t)<4である。)
【0057】
本発明の光触媒組成物において、光触媒(A)と上記シリコーン化合物(B)の質量比は、(A)/(B)=1/99〜90/10で使用することができるが、(A)/(B)=1/99〜40/60、さらには(A)/(B)=1/99〜30/70という光触媒の含有量が非常に少ない範囲においてさえ、形成される皮膜は光照射による十分な親水化能力(超親水化能力:20℃における水の接触角が10゜以下)を有する。また、この様に光触媒含有量が少ない皮膜はバインダーとしてのシリコーン化合物本来の膜物性を発現するため、特に柔軟性(耐屈曲性、耐衝撃性)に優れたものとなる。
【0058】
本発明における上記平均組成式(1)で示されるシリコーン化合物(B)としては、例えば一般式(15)、(16)、(17)及び(18)で表される結合の少なくとも1種の構造を含むシリコーン化合物やそれらの混合物を挙げることができる。
【0059】
【化9】
Figure 0004397013
【0060】
−(RRSiO)− ・・・(16)
【0061】
【化10】
Figure 0004397013
【0062】
【化11】
Figure 0004397013
【0063】
(式中、Rはそれぞれ独立に炭素数1〜30の一価の有機基を表す。)
【0064】
上述した構造を含むシリコーン化合物(B)は、例えば一般式RSiX3(式中、Rは炭素数1〜30の一価の有機基を表す。Xは、水素原子、水酸基、炭素数1〜20のアルコキシ基、炭素数1〜20のアシロキシ基、アミノキシ基、炭素数1〜20のオキシム基、ハロゲン原子からなる群より選ばれる少なくとも一つの反応性基を表す。以下同様。)で表される3官能シラン誘導体及び/又は一般式R2SiX2で表される2官能シラン誘導体及び/又は一般式SiX4で表される4官能シラン誘導体を部分的に加水分解・縮重合させ、必要により一般式R3SiXで表される1官能シラン誘導体及び/又はアルコール類によって末端停止させることにより調製できる。(ここで本発明の光触媒組成物に用いるシリコーン化合物(B)の場合、上記一般式中のRは、その総量の10モル%以上がフェニル基である。)この様にして得られるシラン誘導体モノマーの部分縮合物のポリスチレン換算質量平均分子量は、好ましくは200〜100,000、さらに好ましくは400〜50,000である。
【0065】
本発明において、上記平均組成式(1)で示されるシリコーン化合物(B)として、上記一般式(15)で表されるラダー構造を10モル%以上、好ましくは40モル%以上含むものを選択すると、本発明の光触媒組成物から形成される皮膜は、硬度、耐熱性、耐候性、耐汚染性、耐薬品性等の点で優れたものとなるため好ましい。特に、上記ラダー構造として下記一般式(3)で表されるフェニルラダー構造を有するものは上述した皮膜物性が非常に向上するため好ましい。この様なラダー構造は、例えば赤外線吸収スペクトルにおける1040cm-1と1160cm-1付近の2本のシロキサン結合に由来する吸収の存在により同定する事ができる。
(J.F.Brown.Jr.,etal.:J.Am.Chem.Soc.,82,6194(1960)参照。)
【0066】
【化12】
Figure 0004397013
【0067】
(R1はフェニル基を表す。)
【0068】
また、上記平均組成式(1)で示されるシリコーン化合物(B)として、上記式(4)で表されるラダー構造に加え、式(5)で表される鎖状構造を50質量%以下、好ましくは30質量%以下の割合でさらに有するものを選択すると、本発明の光触媒組成物から形成される塗膜は、硬度、耐熱性、耐候性、耐汚染性、耐薬品性等に優れるばかりか、成膜性、基材密着性、柔軟性等の点で非常に優れたものとなるため好ましい。
【0069】
また、上記平均組成式(1)で示されるシリコーン化合物(B)として、上述したフェニルシリコーン化合物(B1)と平均組成式(4)で表されるアルキルシリコーン化合物(B2)とを、質量比(B1)/(B2)=5/95〜95/5、好ましくは(B1)/(B2)=30/70〜90/10で混合したものを用いると、本発明の光触媒組成物から形成される塗膜は、成膜性、硬度、耐熱性、耐汚染性、耐薬品性等の点で優れたものとなるため好ましい。
3 uvSiO(4-u-v)/2 (4)
(式中、R3は直鎖状または分岐状の炭素数1〜30のアルキル基を表し、
Xは、式(1)で定義した通りである。
0<u<4、0<v<4、及び0<(u+v)<4である。)
【0070】
さらに、上述したフェニルシリコーン化合物(B1)に混合するアルキルシリコーン化合物(B2)として、式(5)で表されるモノオキシジオルガノシラン単位(T)と式(6)で表されるジオキシオルガノシラン単位(D)をモル比(T)/(D)=80/20〜5/95の割合で有する構造のものを用いると、本発明の光触媒組成物から形成される塗膜は、耐候性が非常に優れたものとなるため非常に好ましい。
−(R33SiO)− (5)
【0071】
【化13】
Figure 0004397013
【0072】
(式中、R3は直鎖状または分岐状の炭素数1〜30のアルキル基を表す。)
【0073】
本発明の光触媒組成物に使用できる前述したシリコーン化合物(B)は、溶剤に溶けたタイプ、分散タイプ、液体タイプ、粉体タイプのいずれであっても良い。
本発明の光触媒組成物において上記平均組成式(1)で示されるシリコーン化合物(B)が水酸基及び/又は加水分解性基を有する場合、従来公知の加水分解触媒や硬化触媒を添加することが好ましい。
該加水分解触媒としては、酸性のハロゲン化水素、カルボン酸、スルホン酸、酸性あるいは弱酸性の無機塩、イオン交換樹脂などの固体酸などが好ましい。また、加水分解触媒の量は、ケイ素原子上の加水分解性基1モルに対して0.001〜5モルの範囲内であることが好ましい。
【0074】
また上記硬化触媒としては、例えば水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、ナトリウムメチラート、酢酸ナトリウム、テトラメチルアンモニウムクロライド、テトラメチルアンモニウムヒドロキシドのごとき塩基性化合物類;トリブチルアミン、ジアザビシクロウンデセン、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、エタノールアミン類、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−(2−アミノエチル)−アミノプロピルトリメトキシシランのごときアミン化合物;テトライソプロピルチタネート、テトラブチルチタネートのようなチタン化合物;アルミニウムトリイソプロポキシド、アルミニウムアセチルアセトナート、過塩素酸アルミニウム、塩化アルミニウムのようなアルミニウム化合物;錫アセチルアセトナート、ジブチル錫オクチレート、ジブチル錫ジラウレートのような錫化合物;コバルトオクチレート、コバルトアセチルアセトナート、鉄アセチルアセトナートのごとき含金属化合物類;リン酸、硝酸、フタル酸、p−トルエンスルホン酸、トリクロル酢酸のごとき酸性化合物類などが挙げられる。
【0075】
本発明の光触媒組成物において上記平均組成式(1)で示されるシリコーン化合物(B)がSi−H基を有する場合、多官能ビニル化合物のごとき架橋剤を添加することが好ましい。該多官能ビニル化合物としては、ビニル基を有しSi−H基と反応して硬化を促進するものであれば何でもよいが、ビニル基、ヘキセニル基などの炭素数2〜8の1価不飽和炭化水素基を有するビニルシリコーンが一般に用いられている。
【0076】
また、Si−H基とビニルシリコーンの反応を促進する目的で、触媒を添加しても良い。該触媒としては白金族触媒、すなわちルテニウム、ロジウム、パラジウム、オスミウム、イリジウム、白金の化合物が適しているが、特に白金の化合物とパラジウムの化合物が好適である。白金の化合物としては、例えば塩化白金(II)、テトラクロロ白金酸(II)、塩化白金(IV)、ヘキサクロロ白金酸(IV)、ヘキサクロロ白金(IV)アンモニウム、ヘキサクロロ白金(IV)カリウム、水酸化白金(II)、二酸化白金(IV)、ジクロロ−ジシクロペンタジエニル−白金(II)、白金−ビニルシロキサン錯体、白金−ホスフィン錯体、白金−オレフィン錯体や白金の単体、アルミナやシリカや活性炭に固体白金を担持させたものが挙げられる。パラジウムの化合物としては、例えば塩化パラジウム(II)、塩化テトラアンミンパラジウム(II)酸アンモニウム、酸化パラジウム(II)等が挙げられる。該白金族触媒はSi−H基含有シリコーンとビニルシリコーンの合計量に対し白金族金属の量で通常5〜1000ppmの範囲内で使用されるが、これは反応性、経済性及び所望の硬化速度等に応じて増減させることができる。また、必要に応じて白金族触媒の活性を抑制し、ポットライフを延長させる目的で、各種の有機窒素化合物、有機リン化合物、アセチレン系化合物などの活性抑制剤を添加してもよい。
【0077】
また、本発明の光触媒組成物には必要に応じて樹脂を添加して使用することもできる。
本発明の光触媒組成物に使用できる樹脂としては、全ての合成樹脂及び天然樹脂が使用可能であるが、水酸基及び/又は炭素数1〜20のアルコキシ基、エノキシ基、炭素数1〜20のアシロキシ基、アミノキシ基、炭素数1〜20のオキシム基、ハロゲン原子からなる群より選ばれる少なくとも1つの加水分解性基と結合したケイ素原子を有するシリル基を重合体分子鎖の末端及び/又は側鎖に有する重合体が好ましく選択される。
【0078】
また、本発明の光触媒組成物には皮膜の硬度や耐擦傷性、親水性を向上させる目的でシリカ、アルミナ、酸化ジルコニウム、酸化アンチモン、希土類酸化物等の金属酸化物微粒子を粉末あるいはゾルの状態で添加しても良い。ただしこれら金属酸化物微粒子は、本発明におけるシリコーン化合物の様なバインダーとしての能力はなく、光触媒と同様に皮膜の柔軟性(耐屈曲性、耐衝撃性)を低下させる。よって、該金属酸化物の添加量は、光触媒組成物から生成する皮膜中において光触媒(A)と金属酸化物の総質量が50質量%以下とすることが好ましい。
【0079】
さらに、本発明の光触媒組成物には、必要により通常塗料等に添加配合される成分、例えば顔料、充填剤、分散剤、光安定剤、湿潤剤、増粘剤、レオロジーコントロール剤、消泡剤、可塑剤、成膜助剤、防錆剤、染料、防腐剤等がそれぞれの目的に応じて選択、組み合わせて配合することができる。
本発明の光触媒組成物であって、光触媒(A)として表面エネルギーの非常に小さい構造を有する変性剤化合物(C)で変性処理された変性光触媒(A1)を使用した光触媒組成物は、光触媒の分布について自己傾斜性を有し易くなるため非常に好ましい。ここで自己傾斜性とは、光触媒組成物から皮膜や成形体を形成する際、その形成過程において光触媒が皮膜や成形体が接する界面の性状(特に親水/疎水性)に対応して、光触媒の濃度勾配を有する構造を自律的に形成することを意味する。
【0080】
この場合、接した面に性状(親水/疎水性)の差があれば、その差に対応して濃度勾配が生じ、また、当該皮膜や成形体の内部と該界面の間で濃度勾配が生じる。
例えば、上記自己傾斜性の光触媒組成物を基材上に塗布成膜した場合、光触媒が基材でない他の界面(例えば外気)と接する皮膜表面側に向かって多くなるような膜厚方向に濃度勾配を有した傾斜組成皮膜を得ることが可能となる。この際、全皮膜中の光触媒(A)含有量(濃度)100に対し、他の界面と接する表面側近傍の相対濃度が120以上で光触媒能力や親水化能力の向上効果が認められる。該表面側近傍の相対濃度は好ましくは150以上、より好ましくは200以上であることがよい。また、基材側界面近傍の相対濃度が80以下であると界面劣化防止効果が認められる。該基材側界面近傍の相対濃度は好ましくは50以下、より好ましくは10以下であると良い。
【0081】
本発明の光触媒組成物が自己傾斜性である場合、該光触媒組成物において光触媒(A)とシリコーン化合物(B)の固形分質量比は、(A)/(B)=0.1/99.9〜30/70、さらには(A)/(B)=0.1/99.9〜20/80、さらには(A)/(B)=0.1/99.9〜10/90、という光触媒(A)の含有量が非常に少ない範囲においてさえ、形成される皮膜又は成形体は、光照射による十分な親水化能力(超親水化能力:20℃における水の接触角が10゜以下)や光触媒活性を有する。また、この様に光触媒(A)含有量が少ない皮膜や成形体はバインダーとしてのシリコーン化合物本来の物性を発現するため、強度や柔軟性(耐屈曲性、耐衝撃性)等に優れたものとなる。
【0082】
本発明の光触媒組成物から形成される成形体や、上記光触媒組成物から形成される皮膜を基材上に形成して得られる機能性複合体は、光照射により疎水性あるいは親水性及び/又は光触媒活性、さらには光電変換機能を発現することが可能である。即ち、本発明の別の態様においては、上記光触媒組成物から形成される成形体や、上記光触媒組成物から形成される皮膜を基材上に形成して得られる機能性複合体が提供される。
【0083】
本発明において上記光触媒組成物から機能性複合体や成形体を得る方法としては、例えばそれらの形態が塗料の場合は、基材に塗布し、乾燥した後、必要に応じ熱処理等をする事により本発明の機能性複合体を得ることができる。塗布方法としては、例えばスプレー吹き付け法、フローコーティング法、ロールコート法、刷毛塗り法、ディップコーティング法、スピンコーティング法、スクリーン印刷法、キャスティング法、グラビア印刷法、フレキソ印刷法等が挙げられる。
また、例えば上記光触媒組成物の形態がペレットの場合は、押出し成形、射出成形、プレス成形等によって本発明の成形体を得ることができる。
【0084】
本発明の光触媒組成物から形成される上記の機能性複合体や成形体は、それに含まれる光触媒(A)のバンドギャップエネルギーよりも高いエネルギーの光(該光触媒(A)が分光増感色素を有する変性光触媒(A1)の場合は、該分光増感色素の吸収光を含む光)を照射することにより疎水性あるいは親水性及び/又は光触媒活性、さらには光電変換機能を示す。
本発明において、光触媒(A)のバンドギャップエネルギーよりも高いエネルギーの光(該光触媒(A)が分光増感色素を有する変性光触媒(A1)の場合は、該分光増感色素の吸収光を含む光)の光源としては、太陽光や室内照明灯等の一般住宅環境下で得られる光の他、ブラックライト、キセノンランプ、水銀灯等の光が利用できる。
【0085】
本発明によって提供される上記成形体又は機能性複合体であって、光照射により20℃における水との接触角が60゜以下(好ましくは10゜以下)となった親水性のもの(親水性の成形体や親水性膜、及び該親水性膜で被覆された基材等)は、鏡やガラスの曇りを防止する防曇技術、さらには建築外装等に対する防汚技術や帯電防止技術等への応用が可能であり、窓ガラス、鏡、レンズ、ゴーグル、カバー、碍子、建材、建物外装、建物内装、構造部材、乗物の外装及び塗装、機械装置や物品の外装、各種表示装置、照明装置、住宅設備、食器、台所用品、家庭用電気製品、磁気光記録メディアや光記録メディア等の用途に使用することができる。
【0086】
本発明によって提供される上記成形体又は機能性複合体であって、光照射により20℃における水との接触角が70゜以上(好ましくは90゜以上)となった疎水性のもの(疎水性の成形体や疎水性膜、及び該疎水性膜で被覆された基材等)は、防滴性や水切れ性の付与、水系汚れの付着防止や流水洗浄性を利用した防汚技術、さらには着氷雪防止技術等への応用が可能であり、窓ガラス、風防ガラス、鏡、レンズ、ゴーグル、カバー、碍子、建材、建物外装、建物内装、構造部材、乗物の外装及び塗装、機械装置や物品の外装、各種表示装置、照明装置、住宅設備、食器、台所用品、家庭用電気製品、屋根材、アンテナ、送電線、氷雪滑走具等の用途に使用することができる。
【0087】
本発明によって提供される上記成形体又は機能性複合体であって光電変換機能を有するものは、太陽エネルギーの電力変換等の機能を発現することが可能であり、(湿式)太陽電池等に用いる光半導体電極等の用途に使用することができる。
また、本発明によって提供される、光照射によって水との濡れ性が変化(疎水性から親水性への変化、あるいは親水性から疎水性への変化)する部材は、オフセット印刷用原版等への応用に対し非常に有用である。
【0088】
本発明を実施例に基づいて説明する。
尚、以下の実施例、参考例及び比較例中に用いられる各種物性の測定方法は、下記の通りである。
[1]粒径分布及び数平均粒子径
粒径分布及び数平均粒子径は、試料中の固形分の含有量が1〜20質量%となるよう適宜溶媒を加えて希釈し、湿式粒度分析計(日機装(株)製 マイクロトラック UPA−9230)を使用して測定した。
【0089】
[2]質量平均分子量
ゲルパーミィテーションクロマトグラフィーを用いて、ポリスチレン標品検量線より求めた。
(使用機器)
・装置:東ソー(株)HLC−8020 LC−3A
・カラム:東ソー(株)
TSKgel G−1000 HXL
TSKgel G−2000 HXL
TSKgel G−4000 HXL
・データ処理:島津製作所(株)CR−4A
・キャリヤー
フェニル基含有シリコーン化合物の測定:テトラヒドロフラン
フェニル基を含有しないシリコーン化合物の測定:トルエン
【0090】
[3]赤外線吸収スペクトル
赤外線吸収スペクトルは、JASCO FT/IR−410で測定した。
[4]29Si核磁気共鳴の測定
29Si核磁気共鳴は、JNM−LA400(日本電子(株)製)で測定した。
[5]塗膜硬度
塗膜の硬度は、JIS−K5400に準じ、鉛筆硬度(塗膜のすり傷)として求めた。
[6]耐屈曲性
塗膜の耐屈曲性は、JIS−K5400に準じ評価した。
[7]耐衝撃性
塗膜の耐屈曲性は、JIS−K5400に準じ、デュポン式(500g×50cm)で評価した。
【0091】
[8]塗膜表面に対する水の接触角
塗膜の表面に脱イオン水の滴を乗せ、20℃で1分間放置した後、接触角計(協和界面科学(株)製 CA−X150)を用いて接触角を測定した。
塗膜に対する水の接触角が小さいほど、塗膜表面は親水性が高い。
[9]紫外線照射
塗膜の表面に、ブラックライト(東芝ライテック(株)製 FL20S BLB)の光を照射した。
なおこのとき、光の強度は紫外線強度計(トプコン(株)製 UVR−2(UD−36型受光部:波長310〜400nmの光に対応))を用いて測定した紫外線強度が1mW/cm2となるよう調整した。
[10]紫外線をほとんど含まない光の照射
塗膜の表面に、蛍光ランプ(東芝ライテック(株)製 FL20S・N−SDL NU型)からの、紫外線をほとんど含まない光を照射した。
なおこのとき、紫外線をほとんど含まない光の強度を、上記UVR−2型紫外線強度計を用いて測定した可視光強度(受光部として、上記UD−40型受光部を使用)が0.3mW/cm2となるよう調整した。
【0092】
[11]塗膜の光触媒活性
塗膜表面にメチレンブルーの5質量%エタノール溶液を塗布した後、上記ブラックライトの光を3日間照射した。
なおこのとき、上記UVR−2型紫外線強度計(受光部として、上記UD−36型受光部を使用)を用いて測定した紫外線強度が1mW/cm2となるよう調整した。
その後、光触媒の作用によるメチレンブルーの分解の程度(塗膜表面の退色の程度に基づき、目視で評価)に基づき、光触媒の活性を以下の3段階で評価した。
◎:メチレンブルーが完全に分解。
△:メチレンブルーの青色がわずかに残る。
×:メチレンブルーの分解はほとんど観測されず。
【0093】
[12]塗膜の耐候性(光沢保持率)
塗膜の耐候性はデューパネル光コントロールウェザーメーター(スガ試験器(株)製、DPWL−5R)を使用して曝露試験(照射:60℃4時間、暗黒・湿潤:40℃4時間)を行った。曝露1000時間後の60°−60°鏡面反射率を最終的な光沢値として測定し、これを初期光沢値で割り、この値を光沢保持率として算出した。
[13]光触媒の傾斜構造の評価
部材における光触媒の傾斜構造の評価は、部材の断面の超薄切片を作成し、TEM観察(日立(株)製、HF2000)により実施した。
【0094】
【参考例1】
シリコーン化合物(イ)の合成。
還流冷却器、温度計および撹拌装置を有する反応器にいれたジオキサン78gにフェニルトリクロロシラン26.0gを添加した後、室温にて約10分間撹拌した。これに水3.2gとジオキサン12.9gからなる混合液を、反応液を10〜15℃に保ちながら約30分かけて滴下した後、さらに10〜15℃で約30分撹拌し、続いて反応液を60℃に昇温させ3時間撹拌した。得られた反応液を25〜30℃に降温させ、392gのトルエンを約30分かけて滴下した後、再度反応液を60℃に昇温させ2時間撹拌した。
【0095】
得られた反応液を10〜15℃に降温させ、メタノール19.2gを約30分かけて添加した。その後さらに25〜30℃にて約2時間撹拌を続行し、続いて反応液を60℃に昇温させ2時間撹拌した。得られた反応液から60℃で減圧下に溶媒を溜去することにより質量平均分子量3600のラダ−骨格を有するシリコーン化合物(イ)を得た。(得られたシリコーン化合物(イ)には、IRスペクトルにおけるラダ−骨格の伸縮振動に由来する吸収(1130cm-1及び1037cm-1)が観測された。)
【0096】
【参考例2】
シリコーン化合物(ロ)の合成。
還流冷却器、温度計および撹拌装置を有する反応器にいれたジオキサン235gにメチルトリクロロシラン25.6g、フェニルトリクロロシラン15.5gを添加した後、室温にて約10分間撹拌した。これに水6.6gとジオキサン26.4gからなる混合液を、反応液を10〜15℃に保ちながら約30分かけて滴下した後、さらに10〜15℃で約30分撹拌し、続いて反応液を60℃に昇温させ3時間撹拌した。得られた反応液を25〜30℃に降温させ、235gのトルエンを約30分かけて滴下した後、再度反応液を60℃に昇温させ2時間撹拌した。
【0097】
得られた反応液を10〜15℃に降温させメタノール42.8gを約30分かけて添加した。その後さらに25〜30℃にて約2時間撹拌を続行し、続いて反応液を60℃に昇温させ2時間撹拌した。得られた反応液から60℃で減圧下に溶媒を溜去することにより質量平均分子量が3100で、ラダ−骨格を有するシリコーン化合物(ロ)を得た。(得られたシリコーン化合物(ロ)には、IRスペクトルにおけるラダ−骨格の伸縮振動に由来する吸収(1134cm-1及び1044cm-1)が観測された。)
得られたシリコーン化合物(ロ)の構造を29Si核磁気共鳴によって測定したところ、フェニル基と結合したシラン(Ph−Si)とメチル基と結合したシラン(Me−Si)を示すシグナルが確認され、その比率はPh−Si:Me−Si=31:69であった。
【0098】
【参考例3】
シリコーン化合物(ハ)の合成。
還流冷却器、温度計および撹拌装置を有する反応器にいれたジオキサン118.0gにフェニルトリクロロシラン26.0gを添加した後、室温にて約10分間撹拌した。これに水3.2gとジオキサン12.9gからなる混合液を、反応液を10〜15℃に保ちながら約30分かけて滴下した後、さらに10〜15℃で約30分撹拌し、続いて反応液を60℃に昇温させ3時間撹拌した。得られた反応液を25〜30℃に降温させ、353gのトルエンを約30分かけて滴下した後、再度反応液を60℃に昇温させ2時間撹拌した。
【0099】
得られた反応液を10〜15℃に降温させジメチルクロロシラン25.1gを添加した後、さらに温度を10〜15℃に保ちながら水1.1gとジオキサン4.3gからなる混合液を約30分かけて添加した。続いて25〜30℃にて約2時間撹拌を続行し、その後さらに反応液の温度を60℃に昇温させ3時間撹拌した。
得られた反応液から約60℃で減圧下に溶媒を溜去することにより質量平均分子量1200のSi−H基を有するシリコーン化合物(ハ)を得た。(Si−H基に由来する吸収(2140cm-1)が観測された。)
【0100】
【参考例4】
フェニル基を有さないシリコーン化合物(ニ)の合成。
還流冷却器、温度計および撹拌装置を有する反応器にいれたジオキサン470gにメチルトリクロロシラン25.8gを添加した後、室温にて約10分間撹拌した。これに水4.7gとジオキサン18.7gからなる混合液を、反応液を10〜15℃に保ちながら約30分かけて滴下した後、さらに10〜15℃で約30分撹拌し、続いて反応液の温度を60℃に昇温させ3時間撹拌した。
【0101】
得られた反応液を10〜15℃に降温させメタノール30.2gを約30分かけて添加した。続いて25〜30℃にて約2時間撹拌を続行し、その後さらに反応液の温度を60℃に昇温させ3時間撹拌した。得られた反応液から約60℃で減圧下に溶媒を溜去することにより質量平均分子量2800のフェニル基を有さないシリコーン化合物(ニ)を得た。
【0102】
【参考例5】
フェニル基を有さないシリコーン化合物(ホ)の合成。
還流冷却器、温度計および撹拌装置を有する反応器に入れたメタノール300gにメチルトリメトキシシラン136g(1モル)、及びジメチルジメトキシシラン120g(1モル)を添加した後、室温にて約10分間撹拌した。これに氷冷下で、0.05Nの塩酸水溶液12.6g(0.7モル)とメタノール63gからなる混合液を、約40分かけて滴下し、加水分解を行った。滴下終了後、さらに10℃以下で約20分、室温で6時間それぞれ撹拌した。
【0103】
その後、得られた反応液から60℃で減圧下に溶媒を溜去することにより質量平均分子量3600のフェニル基を有さないシリコーン化合物(ホ)を得た。
得られたシリコーン化合物(ホ)の構造を29Si核磁気共鳴によって測定したところ、T構造とD構造を示すシグナルが確認され、その比率はT構造:D構造=1:1であった。
【0104】
【参考例6】
変性光触媒(変性酸化チタンオルガノゾル(ヘ))の合成
還流冷却器、温度計および撹拌装置を有する反応器にいれた酸化チタンオルガノゾル(商品名:TKS−251、テイカ(株)製、分散媒:トルエンとイソプロパノールの混合溶媒、TiO2濃度20質量%、平均結晶子径6nm(カタログ値)のもの)40gにKF9901(メチルハイドロジェンシロキサン−ジメチルシロキサンコポリマーの商品名、Si−H基含量7.14mmol/g、質量平均分子量3900、信越化学工業(株)製、)8gを40℃にて約5分かけて添加し、さらに40℃で48時間撹拌を続けることにより、非常に分散性の良好な変性酸化チタンオルガノゾル(ヘ)を得た。この時、KF9901の反応に伴い生成した水素ガス量は23℃において980mlであった。
【0105】
また、得られた変性酸化チタンオルガノゾル(ヘ)をKBr板上にコーティングしIRスペクトルを測定したところ、Ti−OH基の吸収(3630〜3640cm-1)の消失が観測された。
また、得られた変性酸化チタンオルガノゾル(ヘ)の粒径分布は単一分散(数平均粒子径は21nm)であり、さらに変性処理前の酸化チタンオルガノゾルの単一分散(数平均粒子径は12nm)の粒径分布が完全に消失していた。
【0106】
【参考例7】
変性光触媒(変性酸化チタンオルガノゾル(ト))の合成
還流冷却器、温度計および撹拌装置を取りつけた反応器に、4−アミノフルオレセイン1gとジオキサン140gを入れ、これにアリルイソシアネート0.24gをジオキサン2.3gに溶解した溶液を、撹拌下30℃にて約30分かけて添加し、さらに30℃で5時間撹拌した。得られた反応混合物に、KF9901(参考例6で使用したものと同じ)50gを添加し、撹拌下80℃に昇温した。これにユニオックスMUS−8(ポリオキシエチレンアリルメチルエーテルの商品名、質量平均分子量800(カタログ記載値)、日本油脂(株)製)137gと塩化白金(IV)酸六水和物の5質量%イソプロパノール溶液0.5gをジオキサン137gに溶解した溶液を80℃にて約1時間かけて添加し、さらに80℃にて2時間攪拌を続けた後室温にまで冷却した。
【0107】
還流冷却器、温度計および撹拌装置を取りつけた反応器に、TKS251(参考例6で使用したものと同じ)60gを入れ、これに上記反応溶液12.5gを50℃にて攪拌下約30分かけて添加し、さらに50℃にて12時間撹拌を続けることにより、非常に分散性の良好な、蛍光色を有する変性酸化チタンオルガノゾル(ト)を得た。この時、反応に伴い水素ガスが発生し、その体積は23℃において120mlであった。
【0108】
【参考例8】
変性光触媒(変性酸化チタンオルガノゾル(チ))の合成
還流冷却器、温度計および撹拌装置を取りつけた反応器に、TKS251(参考例6で使用したものと同じ)50gを入れ、これにAciplex−SS950(スルホン酸基を有するフッ素樹脂の5質量%エタノール−水(質量比1:1)溶液の商品名、旭化成(株)製)5gを30℃にて攪拌下約30分かけて添加し、さらに30℃にて8時間撹拌を続けることにより、非常に分散性の良好な、変性酸化チタンオルガノゾル(チ)を得た。
【0109】
得られた変性酸化チタンオルガノゾル(チ)の粒径分布は単一分散(数平均粒子径は54nm)であり、さらに変性処理前の酸化チタンオルガノゾルの単一分散(数平均粒子径は12nm)の粒径分布が完全に消失していた。
【0110】
参考比較例1
参考例1で合成したシリコーン化合物(イ)の20質量%トルエン溶液10gにTKS251(参考例6で使用したものと同じ)2.5gを室温で撹拌下において添加した後、ブチルセロソルブを撹拌下に4g添加し、さらに硬化触媒(DX175/信越化学(株)製)0.1gを攪拌下に添加して光触媒組成物(リ)を得た。
【0111】
得られた光触媒組成物(リ)を鋼板上に膜厚が2μmとなるようにスプレー塗布した後、室温で1週間乾燥し、透明で平滑な塗膜を有する鋼板を得た。
得られた塗膜を有する鋼板の鉛筆硬度は2Hであり、水との接触角は90゜であった。また、耐屈曲性試験、耐衝撃性試験は共に合格した。
得られた塗膜を有する鋼板に紫外線(ブラックライト)を3日間照射した後の水の接触角は54゜であったが、1週間照射した後の水の接触角は0゜となった。光触媒活性評価の結果は良好(△)であった。
【0112】
参考比較例2
参考例1で合成したシリコーン化合物(イ)の20質量%トルエン溶液10gにTKS251(参考例6で使用したものと同じ)2.5gを室温で撹拌下において添加した後、ブチルセロソルブを撹拌下に4g添加し、さらに硬化触媒(ジラウリル酸ジブチル錫)0.1gを攪拌下に添加して光触媒組成物(ヌ)を得た。
【0113】
得られた光触媒組成物(ヌ)をガラス板上に膜厚が2μmとなるようにスプレー塗布した後、室温で1時間乾燥し、150℃で30分加熱する事により、透明で平滑な塗膜を有するガラス板を得た。
得られた塗膜を有するガラス板の鉛筆硬度は4Hであり、水との接触角は92゜であった。
得られた塗膜を有するガラス板に紫外線(ブラックライト)を3日間照射した後の水の接触角は38゜であったが、1週間照射した後の水の接触角は0゜となった。光触媒活性評価の結果は良好(△)であった。
【0114】
参考比較例3
参考例2で合成したシリコーン化合物(ロ)の20質量%トルエン溶液8.75gにTKS251(参考例6で使用したものと同じ)3.75gを室温で撹拌下において添加した後、ブチルセロソルブを撹拌下に4g添加し、さらに硬化触媒(DX175/信越化学(株)製)0.1gを攪拌下に添加して光触媒組成物(ル)を得た。
【0115】
得られた光触媒組成物(ル)を鋼板上に膜厚が2μmとなるようにスプレー塗布した後、室温で1週間乾燥し、透明で平滑な塗膜を有する鋼板を得た。
得られた塗膜を有する鋼板の鉛筆硬度は3Hであり、水との接触角は87゜であった。また、耐屈曲性試験、耐衝撃性試験は共に合格した。
得られた塗膜を有する鋼板に紫外線(ブラックライト)を3日間照射した後の水の接触角は62゜であったが、1週間照射した後の水の接触角は10゜となった。光触媒活性評価の結果は良好(△)であった。
【0116】
参考比較例4
参考例3で合成したシリコーン化合物(ハ)の20質量%トルエン溶液8.75gにTKS251(参考例6で使用したものと同じ)3.75gを室温で撹拌下において添加した後、架橋剤として末端ビニルポリジメチルシロキサン(商品名:DMS−V00、チッソ(株)製)0.2gとジクロロ−ジシクロペンタジエニル−白金(II)の0.25%ジオキサン溶液0.4gを室温で撹拌下において添加し、さらにブチルセロソルブを撹拌下に4g添加して光触媒組成物(オ)を得た。
【0117】
得られた光触媒組成物(オ)を鋼板上に膜厚が2μmとなるようにスプレー塗布した後、室温で1時間乾燥し、140℃で30分加熱する事により、透明で平滑な塗膜を有する鋼板を得た。
得られた塗膜を有する鋼板の鉛筆硬度は2Hであり、水との接触角は94゜であった。また、耐屈曲性試験、耐衝撃性試験は共に合格した。
得られた塗膜を有する鋼板に紫外線(ブラックライト)を3日間照射した後の水の接触角は20゜であったが、1週間照射した後の水の接触角は6゜となった。光触媒活性評価の結果は非常に良好(◎)であった。
【0118】
【実施例
参考例1で合成したシリコーン化合物(イ)の20質量%トルエン溶液11.25gに参考例6で合成した変性酸化チタンオルガノゾル(ヘ)0.75gを室温で撹拌下において添加した後、ブチルセロソルブを撹拌下に4g添加し、さらに硬化触媒(ジラウリル酸ジブチル錫)0.1gを攪拌下に添加して光触媒組成物(ワ)を得た。
【0119】
得られた光触媒組成物(ワ)を鋼板上に膜厚が2μmとなるようにスプレー塗布した後、室温で1週間乾燥し、150℃で30分加熱する事により、透明で平滑な塗膜を有する鋼板を得た。
得られた塗膜を有する鋼板の鉛筆硬度はHであり、水との接触角は97゜であった。また、耐屈曲性試験、耐衝撃性試験は共に合格した。
得られた塗膜を有する鋼板に紫外線(ブラックライト)を3日間照射した後の水の接触角は0゜であった。また、光触媒活性評価の結果は非常に良好(◎)であった。
【0120】
【実施例
参考例1で合成したシリコーン化合物(イ)6gと参考例5で合成したシリコ−ン化合物(ホ)3gを混合したものに、トルエン17.9g、イソプロパノール32.3g、ブチルセロソルブ14.5gを添加し、室温で撹拌する事によりシリコ−ン化合物(イ)とシリコーン化合物(ホ)の混合物溶液を得た。得られたシリコ−ン化合物の混合物溶液に参考例6で調整した変性酸化チタンオルガノゾル(ヘ)11.5gを室温にて撹拌下において添加し、さらに硬化触媒(ジラウリル酸ジブチル錫)0.4gを攪拌下に添加して光触媒組成物(カ)を得た。
50mm×60mmに裁断した厚さ1mmのアルミ板(JIS,H,4000(A1050P))にアクリルウレタン樹脂塗料(日本ペイント社製、マイティラック白、2液混合型)をスプレー塗布し、室温にて3日間乾燥した。得られたアクリルウレタン塗装を行ったアルミ板に上記光触媒組成物(カ)を膜厚が2μmとなるようにスプレー塗布した後、室温で1時間乾燥し、150℃で30分加熱する事により、光触媒塗膜を有する試験板を得た。
【0121】
得られた塗膜を有する試験板の鉛筆硬度はHBであり、水との接触角は95゜であった。
得られた塗膜を有する試験板に紫外線(ブラックライト)を3日間照射した後の水の接触角は0゜であった。また、光触媒活性評価の結果は非常に良好(◎)であった。
さらに、デューパネル光コントロールウェザーメーターによる曝露試験(1000時間後)による光沢保持率は93%であり、非常に良好な耐候性を示した。
【0122】
【実施例
実施例で得られた光触媒組成物(カ)をOHPフィルム上に膜厚が2μmとなるようにスプレー塗布した後、室温で2日間乾燥し、続いて50℃にて3日間加熱することにより平滑な塗膜を有するOHPフィルムを得た。
得られた光触媒塗膜を有するOHPフィルム断面における酸化チタンの分布をTEM観察により実施したところ、基材のOHPフィルムと光触媒塗膜との界面には酸化チタンはほとんど存在せず、光触媒塗膜表面は全て酸化チタンで覆われていることが観察された。
【0123】
【実施例
参考例1で合成したシリコーン化合物(イ)の20質量%トルエン溶液8.75gに参考例7で合成した変性酸化チタンオルガノゾル(ト)4.5gを室温で撹拌下において添加した後、ブチルセロソルブを撹拌下に4g添加し、さらに硬化触媒(ジラウリル酸ジブチル錫)0.1gを攪拌下に添加して光触媒組成物(ヨ)を得た。
【0124】
得られた光触媒組成物(ヨ)をガラス板上に膜厚が2μmとなるようにスプレー塗布した後、室温で1時間乾燥し、150℃で30分加熱する事により、透明で平滑な塗膜を有するガラス板を得た。
得られた塗膜を有するガラス板の水との接触角は34゜であり、これに紫外線をほとんど含まない光(蛍光ランプ)を1日間照射すると、該塗膜の水の接触角は104゜に増加した。すなわち、光触媒組成物(ヨ)から得られた塗膜は可視光に応答して疎水性となった。
また、該疎水性となった塗膜に紫外線(ブラックライト)を1日間照射すると、水の接触角は0゜となり親水性の塗膜に変化した。
【0125】
【実施例
参考例1で合成したシリコーン化合物(イ)の20質量%トルエン溶液8.75gに参考例8で合成した変性酸化チタンオルガノゾル(チ)4.1gを室温で撹拌下において添加した後、ブチルセロソルブを撹拌下に4g添加し、さらに硬化触媒(ジラウリル酸ジブチル錫)0.1gを攪拌下に添加して光触媒組成物(タ)を得た。
【0126】
得られた光触媒組成物(タ)をガラス板上に膜厚が2μmとなるようにスプレー塗布した後、室温で1時間乾燥し、150℃で30分加熱する事により、平滑な塗膜を有するガラス板を得た。
得られた塗膜を有するガラス板の水との接触角は60゜であり、これに紫外線(ブラックライト)を7日間照射しても水の接触角はほとんど変化しなかったが、光触媒活性評価の結果は非常に良好(◎)であった。
【0127】
【比較例1】
参考例4で合成したフェニル基を有さないシリコーン化合物(ニ)の20質量%トルエン溶液8.75gにTKS251(参考例6で使用したものと同じ)3.75gを室温で撹拌下において添加した後、ブチルセロソルブを撹拌下に4g添加し、さらに硬化触媒(ジラウリル酸ジブチル錫)0.1gを攪拌下に添加して光触媒組成物(レ)を得た。
【0128】
得られた光触媒組成物(レ)を鋼板上に膜厚が2μmとなるようにスプレー塗布した後、室温で1時間乾燥し、140℃で30分加熱する事により、透明で平滑な塗膜を有する鋼板を得た。
得られた塗膜を有する鋼板の鉛筆硬度は2Hであり、水との接触角は92゜であった。また、耐屈曲性試験、耐衝撃性試験は共に合格した。
得られたコーティング膜を有する鋼板に紫外線(ブラックライト)を1週間照射した後の水の接触角は94゜であり、光触媒活性評価は悪い結果(×)であった。
また、得られたコーティング膜を有する鋼板に紫外線(ブラックライト)を1ヶ月照射した後も皮膜は親水化せず、水の接触角は88゜であった。
【0129】
【比較例2】
参考例4で合成したフェニル基を有さないシリコーン化合物(ニ)の20質量%トルエン溶液6gにTKS251(参考例6で使用したものと同じ)6.25gを室温で撹拌下において添加した後、ブチルセロソルブを撹拌下に4g添加し、さらに硬化触媒(ジラウリル酸ジブチル錫)0.1gを攪拌下に添加して光触媒組成物(ソ)を得た。
【0130】
得られた光触媒組成物(ソ)を鋼板上に膜厚が2μmとなるようにスプレー塗布した後、室温で1時間乾燥し、140℃で30分加熱する事により、微白濁した塗膜を有する鋼板を得た。
得られた塗膜を有する鋼板は親水化能力を有する(紫外線(ブラックライト)1週間照射での水の接触角は12゜となった)が、コーティング膜は非常に脆く、耐屈曲性試験、耐衝撃性試験は共に不合格であった。
【0131】
【発明の効果】
本発明の光触媒組成物からは透明性や硬度等に優れるだけでなく、柔軟性(耐屈曲性、耐衝撃性)と光触媒活性を両立でき、さらに光照射による水の濡れ性(親水性、疎水性)の制御能を有する塗膜を穏和な条件で形成することができる。

Claims (13)

  1. 光触媒(A)の粒子を下記式(7)で表されるモノオキシジオルガノシラン単位、下記式(8)で表されるジオキシオルガノシラン単位、及び下記式(9)で表されるジフルオロメチレン単位よりなる群から選ばれる少なくとも1種の構造単位を有する化合物類よりなる群から選ばれる少なくとも1種の変性剤化合物(C)を用いて変性処理することによって得られた変性光触媒(A1)と、
    下記平均組成式(2)で表されるシリコーン化合物(B1)と
    を含んでなる光触媒組成物であって、
    該シリコーン化合物が下記一般式(3)で表されるフェニルラダー構造を含み、
    質量比(A)/(C)=1/99〜99.9/0.1であり、
    質量比(A)/(B1)=1/99〜90/10である
    ことを特徴とする光触媒組成物。
    Figure 0004397013
  2. シリコーン化合物として下記平均組成式(4)で表されるアルキルシリコーン化合物(B2)を更に含むことを特徴とする請求項記載の光触媒組成物。
    3 uvSiO(4-u-v)/2 (4)
    (式中、R3は直鎖状または分岐状の炭素数1〜30のアルキル基を表し、 Xは、式(1)で定義した通りである。
    0<u<4、0<v<4、及び0<(u+v)<4である。)
  3. 平均組成式(4)で表されるアルキルシリコーン化合物(B2)が、下記式(5)で表されるモノオキシジオルガノシラン単位(T)と下記式(6)で表されるジオキシオルガノシラン単位(D)の両方を有する構造であることを特徴とする請求項記載の光触媒組成物。
    −(R33SiO)− (5)
    Figure 0004397013
    (式中、R3は直鎖状または分岐状の炭素数1〜30のアルキル基を表す。)
  4. 該変性剤化合物(C)が、式(10)で表される平均組成を有するケイ素化合物であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の光触媒組成物。
    4 xyzSiO(4-x-y-z)/2 (10)
    (式中、R4は式(7)で定義した通りであり、Xは、式()で定義した通りである。
    また、式中Qは、又は下記(あ)〜(え)からなる群より選ばれる少なくとも1つの機能性付与基を含有する基である。
    (あ)直鎖状または分岐状の炭素数が1〜30個のアルキル基、直鎖状または分岐状の炭素数が1〜30個のアルケニル基、炭素数5〜20のシクロアルキル基、もしくは置換されていないか或いは炭素数1〜20のアルキル基又は炭素数1〜20のアルコキシ基、又はハロゲン原子で置換されている炭素数6〜20のアリール基、及び炭素数1〜30のフルオロアルキル基からなる群より選ばれる少なくとも1つの疎水性基。
    (い)カルボキシル基あるいはその塩、リン酸基あるいはその塩、スルホン酸基あるいはその塩、ポリオキシアルキレン基からなる群から選ばれた少なくとも1つの親水性基。
    (う)エポキシ基、アクリロイル基、メタアクリロイル基、(環状)酸無水物基、ケト基、カルボキシル基、ヒドラジン残基、イソシアネート基、イソチオシアネート基、水酸基、アミノ基、環状カーボネート基、チオール基、エステル基からなる群から選ばれた少なくとも1つの反応性基。
    (え)少なくとも1つの分光増感基。
    また、0<x<4、0<y<4、0≦z<4、及びx+y+z)<4で
    ある。)
  5. 該変性剤化合物(C)が、下記式(11)で表される化合物であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の光触媒組成物。
    (R4HSiO)a(R4 2SiO)b(R4QSiO)c(R4 3SiO1/2d・・・(11)
    (式中、R4は式(7)で定義した通りであり、Qは式(10)で定義した通りであり、aは1以上の整数であり、b、cは0又は1以上の整数であり、(a+b+c)≦10000であり、そしてdは0又は2である。但し、(a+b+c)が2以上の整数であり且つd=0の場合、該化合物は環状シリコーン化合物であり、d=2の場合、該化合物は鎖状シリコーン化合物である。)
  6. 光触媒(A)が、数平均粒子径200nm以下の光触媒ゾルであることを特徴とする請求項1〜のいずれか一項記載の光触媒組成物。
  7. 請求項1〜のいずれか一項に記載の光触媒組成物であって、自己傾斜性を有することを特徴とする光触媒組成物。
  8. 請求項1〜のいずれか一項に記載の光触媒組成物であって、該光触媒組成物が基材上に塗布成膜されると、光触媒(A)が外気と接する皮膜表面側に向かって多くなるような膜厚方向に濃度勾配を有した傾斜組成皮膜を自律的に形成することを特徴とする光触媒組成物。
  9. 請求項1〜のいずれか一項に記載の光触媒組成物であって、該光触媒組成物から成形体を形成する際、その形成過程において光触媒(A)が成形体の内部から表面側に向かって多くなるような濃度勾配を有する構造を自律的に形成することを特徴とする光触媒組成物。
  10. 請求項1〜のいずれか一項に記載の光触媒組成物を含む皮膜を基材上に形成して得られる機能性複合体。
  11. 請求項の光触媒組成物を含む皮膜を基材上に形成して得られる機能性複合体であって、該皮膜が光触媒(A)の膜厚方向の分布について異方性を有することを特徴とする機能性複合体。
  12. 請求項1〜のいずれか一項に記載の光触媒組成物から形成された成形体。
  13. 請求項に記載の光触媒組成物から形成された成形体であって、光触媒(A)の内部から表面への分布について異方性を有することを特徴とする成形体。
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