以上のように、従来においては、プローブの温度上昇を考慮して変調送信条件を設定することは行われていない。また、投入電力及び投入エネルギーに基づいて変調送信条件を設定することは行われていない。
本発明の目的は、プローブの温度上昇を考慮して良好な送信条件を設定できるようにすることにある。
本発明の他の目的は、プローブ温度上昇を考慮しつつ、ユーザ−が希望する画質を実現できる送信条件を設定できるようにすることにある。
(1)本発明は、非変調送信と変調送信の組み合わせからなる送信シーケンスに従って、非変調送信用の第1送信信号と変調送信用の第2送信信号とを生成する送信部と、前記第1送信信号の入力により第1超音波を送波すると共に反射波を受波して第1受信信号を出力し、前記第2送信信号の入力により第2超音波を送波すると共に反射波を受波して第2受信信号を出力する送受波器と、前記第2受信信号に対してパルス圧縮を行うパルス圧縮部と、前記第1受信信号と前記パルス圧縮後の第2受信信号とに基づいて超音波画像を形成する画像形成部と、指定された画質改善度に基づいて1回の非変調送信当たりの送信エネルギーe1と1回の変調送信当たりの送信エネルギーe2とを求める手段と、前記送信エネルギーe1,e2に基づき前記送受波器の温度上昇が許容値以下となるように前記送信シーケンスにおける非変調送信と変調送信を設定する手段と、を有する送信制御手段と、を含むことを特徴とする。
上記構成によれば、送信シーケンスに従って、第1送信(非変調送信)と第2送信(変調送信)とが時分割で遂行される場合に、送受波器の温度上昇が許容値以下となるように送信シーケンスが設定される。つまり、送受波器の温度という観点から送信条件を適応的に設定することができる。
第2送信信号は、チャープ信号であるのが望ましいが、2値化信号などのコード信号であってもよい。第1送信信号は、一般に、1又は複数のパルスからなる信号であって、第2送信信号よりも短い(より正確には送信エネルギーが小さい)信号である。許容値から送信シーケンスを設定する際に考慮される特性(後の図4参照)は、送受波器への投入電力に対する温度上昇を示す特性であるのが望ましく、それは実験などによって求めることが可能である。その特性は、テーブル又は関数式として保有されてもよいし、結果としてそれを考慮できるならば他のテーブル又は他の関数式に組み込まれてもよい。送信シーケンスの設定に当たっては、温度上昇が許容範囲内である限りにおいて、一定期間内において第2送信の回数ができるだけ多くなるようにその設定を行うのが望ましい。送受波器あるいはその種別ごとの当該特性を利用するのが望ましい。
望ましくは、前記送信制御手段は、所定期間当たりの第1送信と第2送信の割合を可変設定する。所定期間は1フレームであるのが望ましいが、それ以外の期間であってもよい。振幅(電圧)が同じであれば、第1送信よりも第2送信の方が1回の送信当たりの投入エネルギーが大きく、このため、その割合を可変すれば、送受波器への投入電力(平均電力に相当)を操作することができ、ひいては発熱量を操作できる。
望ましくは、前記送信制御手段は、前記送受波器の温度に関する特性に基づいて、温度上昇の許容値から投入電力を求める投入電力演算手段と、前記投入電力に基づいて、1フレーム当たりの第1送信回数及び第2送信回数を設定する送信回数設定手段と、を含む。この構成によれば、送受波器の温度上昇を考慮して投入電力を求め、その投入電力から1フレーム当たりの各送信回数が設定される。
望ましくは、前記温度上昇の許容値が大きい場合には、1フレーム内の第2送信領域(変調送信領域)が大きく設定され且つ第1送信領域(非変調送信領域)が小さく設定され、前記温度上昇の許容値が小さい場合には、1フレーム内の第2送信領域が小さく設定され且つ第1送信領域が大きく設定される。
上記構成によれば、温度上昇の許容値に応じて、1フレーム内における第2送信領域及び第1送信領域の各サイズを操作して、投入電力つまり発熱量を管理できる。各領域は均一の音線(ライン)密度を有するのが望ましいが、それが同一でなくてもよい。各領域は一部がオーバーラップしていてもよいし(その場合にはオーバーラップした画像部分について重み付け加算などの処理が望まれる)、そうでなくてもよい。
望ましくは、前記第2送信領域は、第2送信ライン数及び第2送信段数によって定義され、前記第2送信ライン数及び前記第2送信段数の少なくとも一方が可変設定される。望ましくは、前記第2送信領域はフレーム中央部に設定される。一般に、ユーザーの注目部位は画像中央に設定される場合が多いため、その部分について変調送信がなされるようにする。
望ましくは、画質パラメータに従って1回の第2送信当たりの投入エネルギーを決定する投入エネルギー決定手段と、前記1回の第2送信当たりの投入エネルギーに基づいて前記第2送信信号の波形長を決定する波形長決定手段と、を含む。
この構成によれば、画質パラメータ(特に望ましくはSNR(シグナル−ノイズの比)の改善度)に応じて、瞬時電力である送信1回当たりのエネルギーを独立して設定することができる。この場合に、電圧を維持して波形長の可変によって投入エネルギーが可変されるのが望ましい。なお、投入電力は1回の送信当たりの投入エネルギーの関数でもあり、温度特性から求められる投入可能な投入電力に照らして、第1送信及び第2送信のそれぞれの投入エネルギーから、第1送信回数と第2送信回数の割合を導出することができる。
望ましくは、前記投入エネルギー決定手段は、前記画質パラメータと前記投入エネルギーとの関係を表した特性(後の図3参照)を考慮して、前記投入エネルギーを決定する。画質パラメータはユーザーによってあるいは自動的に可変設定され、画質パラメータが定められると、前記特性から第2送信の波形長が定められる。前記特性は、画質パラメータに対する投入エネルギーの関係を示すもので、それは実験などによって求めることが可能である。その特性は、テーブル又は関数式として保有されてもよいし、結果としてそれを考慮できるならば他のテーブル又は他の関数式に組み込まれてもよい。また、送受波器、送信周波数などの前提条件に応じて複数の第2特性を利用するのが望ましい。
望ましくは、前記送信回数設定手段は、前記投入電力、1回の通常送信当たりの投入エネルギー及び1回の第2送信当たりの投入エネルギーに基づいて、前記1フレーム当たりの第1送信回数及び第2送信回数を設定する。
(2)また本発明は、変調送信信号を繰り返し生成する送信部と、前記変調送信信号の入力により変調超音波を送波すると共に反射波を受波して変調受信信号を出力する送受波器と、前記変調受信信号に対してパルス圧縮を行うパルス圧縮部と、前記パルス圧縮後の受信信号に基づいて超音波画像を形成する画像形成部と、前記送受波器の温度に関する第1特性を考慮して変調送信の繰り返し周期を設定する送信制御手段と、を含むことを特徴とする。
上記構成によれば、変調送信が繰り返し遂行される場合に、送受波器の温度に関する特性が考慮されて送信シーケンスが設定される。つまり、送受波器の温度という観点から送信条件としての送信繰り返し周期(PRT)を適応的に設定することができる。ここで、PRTの制御はPRF(送信繰り返し周波数)の制御と同じものである。
望ましくは、前記送信制御手段は、前記送受波器の温度に関する第1特性に基づいて、温度上昇の許容値から投入電力を求める投入電力演算手段と、前記投入電力に基づいて、前記変調送信の繰り返し周期を設定する繰り返し周期設定手段と、を含む。この構成によれば、変調送信の繰り返し周期の可変によって送受波器の温度上昇を管理できる。
望ましくは、前記温度上昇の許容値が大きい場合には前記繰り返し周期が短く設定され、前記温度上昇の許容値が小さい場合には前記繰り返し周期が長く設定される。
本発明は、変調送信信号を繰り返し生成する送信部と、前記変調送信信号の入力により変調超音波を送波すると共に反射波を受波して変調受信信号を出力する送受波器と、前記変調受信信号に対してパルス圧縮を行うパルス圧縮部と、前記パルス圧縮後の受信信号に基づいて超音波画像を形成する画像形成部と、画質パラメータに従って1回の変調送信当たりの投入エネルギーである送信エネルギーeを決定する投入エネルギー決定手段と、前記送信エネルギーeに基づいて前記変調送信信号の波形長を決定する波形長決定手段と、前記送信エネルギーeに基づいて前記変調送信の繰り返し周期を設定する手段と、を含むことを特徴とする。
望ましくは、前記投入エネルギー決定手段は、前記画質パラメータと前記投入エネルギーとの関係を表した第2特性に基づいて、前記投入エネルギーを決定する。
望ましくは、前記繰り返し周期設定手段は、前記投入電力及び1回の変調送信当たりの投入エネルギーに基づいて、前記変調送信の繰り返し周期を設定する。
(3)望ましくは、超音波診断装置における変調送信制御方法が、受波器の温度上昇を考慮して一定期間内の投入電力を決定し、前記投入電力に基づいて一定期間内における変調送信回数を決定し、画質パラメータに基づいて1送信当たりの投入エネルギーを決定し、前記投入エネルギーに基づいて変調送信信号の波形長を決定する。
上記構成によれば、送受波器の温度上昇の観点から変調送信の送信繰り返し周期が設定され、画質パラメータに応じて波形長が設定される。つまり、温度上昇、及び、SNR改善度などのパラメータに基づいて好適な送信繰り返し周期が設定される。投入電力は投入エネルギーに依存するので、送信繰り返し周期の設定時には一般に投入エネルギーを直接的あるいは間接的に考慮するのが望ましい。
変調送信回数の制御方法としては、非変調送信と変調送信とで1フレームを構成し、その割合を変化させる第1方法、変調送信のみで1フレームを構成し、その送信繰り返し周期を変化させる第2方法、それらの方法をフレーム単位などの所定単位で切り換える第3方法、などをあげることができる。いずれの方法でも温度上昇を許容範囲内に管理できるが、第1方法によれば、フレームレートが低下せず、高画質の関心部分について、そのサイズは変動するものの画質を維持できる利点が得られ、第2方法によれば、フレームレートは低下するが、フレーム全体の画質を維持できる。
以上説明したように、本発明によれば、プローブの温度上昇を考慮して良好な送信条件を設定できる。また本発明によれば、プローブ温度上昇を考慮しつつ、ユーザ−が希望する画質を実現できる送信条件を設定できる。
以下、本発明の好適な実施形態を図面に基づいて説明する。
図1には、本発明に係る超音波診断装置の好適な実施形態が示されており、図1はその全体構成を示すブロック図である。
図1に示す超音波診断装置は、非変調送信と変調送信とを組み合わせて1フレームを構成する第1送受信モードと、変調送信のみを繰り返して1フレームを構成する第2送受信モードとを有している。ここで、非変調送信においては、必要に応じてエンベロープの形状がガウシアン形状などに設定された1又は複数の波からなる短パルス状の超音波が送波され、変調送信の場合には本実施形態において周波数が連続的に可変されたチャープ信号が送波される。変調送信を行う場合に、チャープ信号に代えてコード信号を用いることも可能である。非変調送信時の信号電圧と変調送信時の信号電圧は本実施形態において同一に設定されているが、もちろん、それぞれについて個別的に送信電圧を設定することもできる。なお、変調送信により得られた受信信号に対してパルス圧縮処理が行われ、これによって高感度での画像形成を行うことが可能である。
図1に示す超音波診断装置においては、後に詳述するように送信電力を適応的に制御することが可能であり、特に、プローブ10の表面における温度上昇が許容範囲内となるように、しかもユーザーによりあるいは自動的に設定されたSNR改善度が達成されるように送信条件(送信シーケンスを含む)を設定する機能を有している。
図1に示されるプローブ10は、複数の振動素子からなるアレイ振動子を有している。このアレイ振動子により超音波ビームが形成され、その超音波ビームは電子的に走査される。その電子走査方式としては、電子リニア走査、電子セクタ走査などをあげることができる。プローブ10は、体表面上に当接して用いられ、あるいは、体腔内に挿入して用いられるものである。プローブ10がいわゆる2Dアレイ振動子を有し、超音波ビームを二次元走査して、三次元データ取込空間が形成されてもよい。
送信部12は、送信ビームフォーマーとして機能し、アレイ振動子が有する複数の振動素子に対して複数の送信信号を供給する。ここにおいて、各送信信号は非変調送信の場合にはガウシアン波形などのパルス波であり、変調送信の場合にはチャープ信号である。
送信条件はシステム制御部26及び送信電力制御部30によって設定されており、ここにおいて、送信電力制御部30は、システム制御部26による送信条件の設定に対して補間的に機能する。具体的には、第1送受信モードにおいては、送信電力制御部30が1フレームを構成する非変調送信と変調送信の割合を設定しており、また変調送信で用いられるチャープ信号の波形長の設定をしている。この第1送受信モードにおいては送信繰り返し周期についてはシステム制御部26によって設定される。
一方、第2送受信モードにおいては、送信電力制御部30によって変調送信について送信繰り返し周期が設定されている。また、第1送受信モードと同様に、チャープ信号の波形長についても設定されている。送信条件の設定に関しては後に詳述するが、いずれにしても、送信部12は、システム制御部26及び送信電力制御部30によって設定された条件にしたがって送信動作を行う。
受信部14は受信ビームフォーマーとして機能する。すなわち、複数の振動素子から出力される複数の受信信号に対して整相加算処理を実行し、これによって得られた整相加算後の受信信号を出力している。受信部14の動作もシステム制御部26によって制御されているが、それに関するコントロール信号については図示省略されている。このことは他の構成についても同様である。
パルス圧縮部16は、第1送受信モード及び第2送受信モードにおいて、変調送信に対応して受信信号が得られた場合に、その受信信号に対してパルス圧縮処理を実行する。このパルス圧縮処理自体は公知である。非変調送信に対応する受信信号はパルス圧縮部16をそのまま通過する。
信号処理部18は、Bモード画像を形成する場合には、受信信号に対して検波、対数変換処理などを実行する。また、血流画像を形成する場合には、受信信号に対して直交検波、自己相関演算などを実行する。いずれにしても信号処理部18により、設定された表示モードにしたがった情報が得られる。
画像形成部20は、本実施形態においてデジタルスキャンコンバータ(DSC)によって構成されており、送受波座標から表示座標への座標変換やデータの補間処理などを実行する。これにより表示モードにしたがった超音波画像、例えばBモード画像、カラードプラ画像などが構成される。その画像情報は表示処理部22を介して表示部24に出力されており、表示部24の画面上には超音波画像が表示される。
システム制御部26は、CPU及び動作プログラムなどによって構成され、図1に示される各構成の動作制御を行っている。本実施形態においては、特にシステム制御部26から送信電力制御部30に対して送信電力制御に当たって必要な複数のパラメータが出力されている。
システム制御部26には操作パネル28が接続されており、この操作パネル28を利用してユーザーはモードの切替えやパラメータの設定を行うことができる。本実施形態においては特にSNR改善度をユーザーにより設定可能であり、それを表す情報(ΔSNR102)が送信電力制御部30へ出力されている。このSNR改善度ΔSNRは送信電力制御に当たっての前提条件の1つをなすものであり、それは第1送受信モード及び第2送受信モードのいずれにおいても同様である。
送信電力制御部30は、エネルギー推定器32及び電力制御部34によって構成される。エネルギー推定器32は、入力されるSNR改善度ΔSNR102に基づいて1回の送信当たりの投入エネルギーを演算し、その投入エネルギーの情報106を電力制御部34へ出力する。第1送受モードにおいては、非変調送信の場合の送信信号についてエネルギーが演算され、また変調送信の場合のチャープ信号についてのエネルギーが演算される。ただし、非変調送信の場合の送信信号のエネルギーに関してはシステム制御部26において演算してもよいし、あらかじめ既知の情報として登録しておいてもよい。第2送受信モードにおいては、上記同様に、エネルギー推定器32が変調送信で出力されるチャープ信号についてのエネルギーを演算している。また、エネルギー推定器32は、チャープ信号について演算されたエネルギーを実現するための波形長を演算しており、その波形長を表す情報105が送信部12へ出力されている。ちなみに、電力制御部30から送信部12へ出力される情報については、直接的に送信部12へ出力するのではなく、システム制御部26へ渡して、システム制御部26が超音波の送信で必要なすべての情報を送信部12へ渡すようにしてもよい。エネルギー推定器32がSNR改善度ΔSNRに基づいて適切なエネルギーを推定し、また波形長を演算するために、システム制御部26は符号104で示すように、送信周波数、送信電圧の情報をエネルギー推定器32へ渡している。また、それ以外の情報についても必要に応じてシステム制御部26からエネルギー推定器104へ渡される。例えばそのような情報としてはプローブの種別情報をあげることができる。
電力制御器34は、プローブ10の表面温度上昇が一定の限度以内になるように、電力制御を行っている。特に本実施形態においては、1フレームを単位として電力の制御が行われており、第1送受信モードにおいては1フレームを構成する非変調送信回数と変調送信回数の割合が制御されており、本実施形態においては具体的には変調送信回数が決定されており、第2送受信モードにおいては変調送信に関する送信繰り返し周期(送信繰り返し周波数)が決定されている。すなわち、第1次送受信モードにおいては、温度上昇が許容できる範囲内において、できる限り変調送信回数が増大するように制御されており、これによれば1フレーム内において変調送信による高画質部分の領域をできる限り拡大することができる。第2送受信モードにおいてはプローブの表面温度上昇が許容範囲内になるように、しかもできる限りフレームレートを上げられるように送信繰り返し周期が設定されている。
その場合においては、エネルギー推定器32から出力される1送信当たりのエネルギーすなわち1送信当たりのプローブ投入エネルギー106が参照されており、また、符号108で示されるように、システム制御部26から渡される各種の情報が参照されている。そのような情報としては、1フレームを構成するライン(音線)の数、送信多段フォーカスにおけるフォーカス段数、送信周波数、許容される温度上昇量、プローブ種別情報、などであり、また第1送受信モードにおいてはシステム制御部26によって設定された1フレーム当たりの繰り返し周期の情報もシステム制御部26から電力制御器34へ渡されている。ちなみに、後に説明するように、必要に応じて、変調送信領域に関してそれを構成するフォーカス段数の情報についても渡すようにしてもよく、また、変調送信領域を構成するライン数の情報を渡すようにしてもよい。
送信電力制御部30における動作内容については後に詳述する。符号100はシステム制御部26から送信部20に与えられる送信条件を定めるパラメータを表しており、送信部12から送信電力制御部30に送られる情報以外の情報がシステム制御部26から送信部12へ渡されるが、上述したように、送信電力制御部30で設定した結果値をシステム制御部26に渡してシステム制御部26から必要な全情報を送信部12へ与えるようにしてもよい。ちなみに、送信電力制御部30はハードウエアによって構成することもできるが、ソフトウエアの機能として実現することも可能である。その場合においては、システム制御部26と送信電力制御部30は一体的に構成することもできる。
なお、パルス圧縮部16に対しては、第1送受信モード及び第2送受信モードにおいてパルス圧縮処理で必要な情報がシステム制御部26から渡されている。
図2には、変調送信において生成されるチャープ信号40の一例が示されている。チャープ信号は周知のように周波数をある値から別の値まで連続的に変化させ、すなわち周波数変調を行った波形である。図2においては振幅がvによって定義されており、波形長がtによって定義されている。本実施形態においては、SNR改善度ΔSNR及びプローブの発熱特性によらずに、独立してすなわち先決事項として振幅vを設定することができ、その上で各種の条件を満足するように波形長tが適応的に設定される。
図3には、エネルギー推定器32が有する第1特性が示されている。このような特性はテーブルとして格納しておくこともできるし、関数として保有しておくこともできる。図3に示される特性は特にチャープ信号についてのものであるが、非変調送信で用いられるパルス信号についても同様の特性を持たせるようにしてもよい。図3に示す特性の横軸はプローブ投入エネルギーeであり、上述したようにそのプローブ投入エネルギーeは電圧vと波形長tの関数である。図3に示される特性の縦軸はSNR改善度であり、本実施形態においては、それに関してユーザーによって設定可能である。すなわち変調送信についてどの程度の画質を要求するかをユーザーによって設定することができる。そして、そのような設定された画質に関するユーザーの要求を満たすように送信電力制御がなされる。
図3に示されるように、プローブ投入エネルギーに対するSNR改善度の関係は、プロー部の種別によって異なる。すなわち一般には線形の関係が認められるが、符号42A,42B,42Cで示されるようにプローブ種別によってその傾きは相違する。
本実施形態においては、エネルギー推定器32に対して、SNR改善度とプローブ種別とが指定されると、図3に示されるように、特定の関数が選択された上でその関数に対してSNR改善度を当てはめることにより、それを実現するためのプローブ投入エネルギーeが決定される。そして、プローブ投入エネルギーeの情報は図1に示したように電力制御器34へ出力され、その一方において、そのプローブ投入エネルギーeを実現するように、振幅vを固定し、可変パラメータとしての波形長tが設定される。ちなみに、図3に示される特性についてはあらかじめ実験などによって求めておくことが可能である。
図4には、電力制御器34が有する第2特性が示されている。この第2特性は、平均電力としてのプローブ投入電力に対するプローブ表面温度上昇すなわち発熱量の関係を表したものである。ここで、プローブ投入電力Pは所定時間(具体的には1フレーム)当たりの投入エネルギーEと所定期間の送信繰り返し周期PRTの関数として定義されるものである。一般にP=E/PRTの関係がある。図4に示されるように、一定時間当たりのプローブ投入電力を上昇させるとプローブについての温度上昇量は増加する。ただし、そのような特性はプローブの種別及び送信周波数に依存し、そのような前提条件が異なれば符号44A,44B,44Cで示されるように関数の傾きは相違する。
図4において示されているTsは温度上昇の許容上限値を表しており、これは安全性の観点から定められるものである。本実施形態においては、プローブ表面温度上昇がその上限Ts以内となるように送信電力が設定されるが、より安全マージンを確保するために、上限Tsよりも低い目標レベルTrを設定してもよい。
いずれにしても、図4に示されるような特性をたとえばあらかじめ実験で求めておき、その結果をテーブルとしてあるいは関数として電力制御器34上に登録しておけば、システム制御部26側から温度上昇に関する特定の値が指定されると、(例えばここでは上限値Tsが指定されると)、プローブ種別及び周波数にて定まる特定の関数(例えば44A)からその許容上限に対応するプローブ投入電力Pを決定することが可能となる。これは、Trが指定された場合においても同様である。
本実施形態においては、図1に示した電力制御器34は、上記のようなプロセスによってプローブ投入電力Pを求めており、その上で、そのプローブ投入電力Pを実現する送信条件を設定している。具体的には、第1送受信モードにおいては、1フレームを構成する非変調送信と変調送信の割合を設定しており、第2送受信モードにおいてはプローブ投入電力を実現する送信繰り返し周期を設定している。例えば、表面温度上昇の許容値が大きな場合には、第1送受信モードにおいてはより変調送信の回数割合が大きくなるように設定され、その一方において、許容値が小さければより変調送信の回数割合が小さくなるように設定される。第2送受信モードにおいては、許容値が大きければより送信繰り返し周期が増大するように設定され、それとは反対に許容値が小さければ送信繰り返し周期が短くなるように設定される。これによって、送信電圧を維持した上で、送信電力を適切に設定することが可能となる。本実施形態においては、その送信電力の制御に際しては、更にSNR改善度という画質パラメータも考慮されており、ユーザーが希望するSNR改善度を満たすようなプローブ投入エネルギーつまり波形長が設定されている。
図5には、第1送受信モードにおける送受信シーケンスが概念図として示されている。図5には1フレームに相当する送受波領域が示されており、ここでは、超音波ビームが電子セクタ走査あるいはコンベックス走査されたものが示されている。rは深さ方向を表しており、θはビームの走査方向を表している。θ方向に関しては、全体としてL個のラインが設定されており、すなわちL個のビームアドレスが設定されている。このうちで、変調送信が行われる変調送信領域50についてはθ方向においてM個のラインが対応付けられている。また、深さ方向rについては図5に示す例では送信多段方向の段数として3段が設定されており、すなわち深さ方向に3つの範囲が設定され、それぞれの範囲について個別的に送信がなされている。
本実施形態においては、各範囲ごとの送信ビームがB1,B2,B3で表されており、すなわち1つのビームアドレス当たり3回の送受信がなされる。ここで、図5に示す例では、送信ビームB2が変調送信エリア用の送信ビームであり、すなわち上述したM個のラインについては送信ビームB2を形成する場合にチャープ信号が用いられる。変調送信エリア50以外の非変調送信エリア48については通常の送受信が行われている。ちなみに、F1,F2,F3はそれぞれの送信ビームB1,B2,B3についての送信フォーカス深さを示している。
ここで、送信フォーカスの段数をJとし、そのうちで変調送信エリア50に属するフォーカスの段数をKとすると、図5に示される1フレームを構成する場合における全送信回数はJ×Lであり、チャープ送信が行われる回数はK×Mである。よって、非変調送信回数はJ×L−K×Mである。
第1送受信モードにおいては、図5に示すようなフレームを実現する送信シーケンスが設定されており、その場合において、プローブ投入電力を引き上げることが可能な場合には、中央に示されている変調送信エリア50のサイズが増大される。その一方において、プローブ投入電力を引き下げるべき場合においては、変調送信エリア50のサイズが小さくされる。具体的には、チャープ送信が行われるラインの数M及びチャープ送信が行われる送信フォーカスの段数Kの両方あるいは一方を可変することにより変調送信エリア50のサイズを調整することができる。この場合においては、いずれか一方あるいは両方をユーザーにより選択させるようにしてもよい。
いずれの場合においてもフレーム内における中央部が一般にユーザーにとっての関心部位であると認められるため、変調送信エリア50はフレーム内における中央部を中心として拡大あるいは縮小させる。
以上のように、第1送受信モードにおいては、非変調送信の回数と変調送信の回数の割合を調整することにより電力制御がなされていたが、第2送受信モードにおいては変調送信についての送信繰り返し周期を調整することにより送信電力の制御がなされている。これは上述したとおりである。
なお、図5に示される変調送信エリア50と非変調送信エリア48は本実施形態においては重なり合った関係にはないが、それらの領域を部分的に重なり合わせてもよい。その場合においてはそのような重なり合い部分について画像の重み付け加算などを行うのが望ましい。これによれば両エリア50,48の境界を目立たなくすることができる。あるいは、変調送信エリア50が明瞭となるようにそのエリアの形状を表す枠を画面上に表示するようにしてもよい。
なお、非変調送信に関しては、電力制御が必要である場合には送信パルスをガウシアン波形などに成形し、これによって1送信当たりのエネルギーを下げて全体としての送信電力を引き下げるようにすることも可能である。
次に、図6及び図7を用いて第1送受信モード及び第2送受信モードにおける動作例について説明する。図6及び図7には特に送信電力制御部30における処理内容がフローチャートとして示されている。
まず、第1送受信モードについて説明すると、図6において、S101乃至S104においては、システム制御部26から渡されるプローブ種類、送信周波数f、送信電圧v、SNR改善度ΔSNRなどが取り込まれる。これ以外にも必要な情報があればそのような情報はシステム制御部から渡される。
S105では、図3に示した1送信当たりのプローブ投入エネルギー(送信エネルギー)eとSNR改善度ΔSNRの関係から、チャープ信号についての波形長tが決定される。すなわち、プローブ種別に対応した特性が選択され、その特性に対してSNR改善度を当てはめることにより、それを実現するプローブ投入エネルギーeが特定される。プローブ投入エネルギーeは電圧vと波形長tの関数であり、ここで電圧vがすでに設定されているならば、波形長tを求めることができる。
S106では、非変調送信及び変調送信のそれぞれについて1送信当たりの送信エネルギーが求められる。変調送信に関しては上記の特性にしたがって波形長の演算を行う際に送信エネルギーが求められており、その一方、非変調送信に関しては送信エネルギーは同様の特性にしたがって求めることもできるし、あらかじめ計算してその結果値を登録しておいてもよい。いずれにしても、このS106においては、非変調送信についての送信エネルギーe1と変調送信についての送信エネルギーe2とが特定されることになる。
S107では、1フレーム当たりの送信繰り返し周期の総量PRTframe(フレーム周期)が特定される。これはすでにシステム制御部26で求めておいてもよいし、なんらかの条件にしたがってPRTframeを求めてもよい。
S108では、図4に示したプローブ投入電力と表面温度上昇の関係に基づいて別途指定される許容レベルを下回るようにあるいはそれに合致するようにプローブ投入電力Pが特定される。その場合においては、プローブの種別情報及び送信周波数の情報にしたがって関数が選択される。そして、次の(1)式にしたがって変調送信エリアのサイズを定めるパラメータK及びMのいずれか一方又は両方が決定される。
上記において、Jは送信フォーカスの段数であり、Kは変調送信エリアにおける送信フォーカスの段数であり、Lは全ライン数であり、Mは変調送信エリアのライン数を表している。上記の(1)式において、左辺であるPは図4に基づく特性から求めることができ、右辺について、J、Lを代入し、また上記のS106で求められたe1,e2を代入し、更にS107で特定されたPRTframeを代入することにより、K及びMの関係を特定することができる。例えば、ここでLの値が固定されていれば未知数としてのMを求めることができ、Mの値が固定されていれば、未知数としてのKを求めることができる。MとKのいずれも未知数であれば、上記(1)式を満たすようにそれらの適切な組み合わせを求めることができる。
いずれにしても、このS108の工程によってユーザーによって設定されたSNR改善度を実現でき、同時に、プローブの表面温度上昇が許容レベルを満たす送信条件を定めることができ、具体的には1フレームを構成する場合における非変調送信と変調送信の割合、上述した具体例では変調送信の回数を設定することが可能となる。
次に、図7を用いて第2送受信モードにおける動作例について説明する。S201〜S204の各工程は上記のS101〜S104の工程と同一である。
S205においては図3に示した特性に従って上述した処理を行うことによりチャープ信号についての波形長tが決定される。次に、S206では、図3に示した特許に基づく変調送信1回当たりの送信エネルギーeに基づいて、1フレームを構成する場合における全エネルギーEが計算される。すなわち、以下の(2)式が実行される。
S107では、以下の(3)式を実行することにより、現在設定されている送信多段フォーカスの下で1ラインを構成する送信繰り返し周期PRTの合計値PRT
line(ライン周期)が計算される。
すなわち、1ライン当たり上記の例に従えば送信フォーカス段数として3が設定されており、3つの送信繰り返し周期の合計値が求められる。
S208では、図4に示した特性にしたがって、表面温度上昇の許容値からプローブ投入電力が求められる。この場合においては、上述したようにプローブ種別及び送信周波数にしたがっていずれかの関数が選択されることになる。そして、以下の(4)式にしたがって、係数αの値が特定される。
上記の(4)式において、左辺であるPは図4に示した特性から求めることができ、右辺におけるEについては上記のS206で算出されており、右辺におけるLは上記の通り既知である。またPRTlineについても上記のS207において演算されている。そこで、それらの値を(4)式に代入すれば、係数であるαを具体的に特定することができる。
ここで、係数αはPRTframeの変化率、すなわち変更後のPRTlineである。つまり、送信シーケンスにおいて、各送信間にブランク期間があることを前提として、1ラインについてのパルス繰り返し周期PRTlineの値を増減することにより、フレーム全体としての周期を操作することができ、これによってプローブ投入電力を可変することが可能である。ちなみに、上記のような係数αを送信電力制御部から送信部に渡すようにしてもよいし、更新された新しいPRTlineを送信電力制御部から送信部あるいはシステム制御部に渡すようにしてもよい。
いずれにしても、この第2送受信モードにおいては、ユーザーによって設定されたSNR改善度を満たし、かつ、プローブの表面温度上昇が許容レベル以下となりあるいはそれに合致するようにフレームレートが適切に設定されることになる。ちなみに、上記のαの可変制御によっても基本的に診断深さ自体は不変とされている。但し、αの操作だけでは電力制御を行えないような場合には、送信フォーカス段数及び全ライン数を操作してフレームレートを可変するようにしてもよい。
上記の第1送受信モード及び第2送受信のいずれにおいてもユーザーによって設定されたSNR改善度を実現でき、またプローブの表面温度上昇について適切な管理を行うことができる。そして、第1送受信モードにおいてはフレームレートを維持できるという利点がある。上記の第2送受信モードでは、フレームレートは変動するものの他の条件を維持することができるという利点がある。
10 プローブ、12 送信部、14 受信部、16 パルス圧縮部、26 システム制御部、30 送信電力制御部、32 エネルギー推定器、34 電力制御器。