JP4394526B2 - デンプン汚れ付着防止剤組成物およびデンプン汚れの付着防止方法 - Google Patents

デンプン汚れ付着防止剤組成物およびデンプン汚れの付着防止方法 Download PDF

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本発明は、デンプン塗工液を使用するサイズプレス装置周辺において、デンプン汚れの付着、堆積を防止するためのデンプン汚れ付着防止剤組成物およびデンプン汚れの付着防止方法に関する。
従来から、食品由来のデンプンによる汚れは、粘着性が高く、一般の界面活性剤を配合した洗浄剤では落ちにくいことが問題視されており、洗浄剤にα―アミラーゼ等のデンプン分解酵素を配合する方法が採用されている(例えば、特許文献1〜4など)。また、製紙工業においても、デンプンを使用する工程があるため、これに由来する汚れの発生が問題となっている。
一般に、紙は以下のようにして製造される。まず、調成工程から送られてきた原料が、ワイヤー上で絡み合い脱水して紙層が形成される(ワイヤーパート)。ワイヤーパートを出た湿紙は、フェルトの上を走行し、2本のロール間でプレス、脱水される(プレスパート)。プレスパートを出た湿紙は、一連のドライヤードラム表面に接触し、水分がさらに蒸発する(ドライヤーパート)。この後、サイズプレス装置の2本のロール間を走行し、紙の表面にデンプン塗工液が転写される(サイズプレス)。表面がサイジングされた紙は、一連のドライヤードラム表面に接触し、水分が蒸発する(アフタードライヤーパート)。アフタードライヤーパートを出た紙は、カレンダーを通過し、必要に応じて所定の寸法にカッターで裁断され、巻き取られる(仕上げ)。
上記した各工程のうち、プレスパートでは、紙力剤の用途で使用されるカチオンデンプンの使用量の増加に伴って、フェルトがデンプンによって汚れ、操業性が低下するという問題がある。このため、特許文献5には、α−アミラーゼと浸透剤(非イオン性界面活性剤)を配合したフェルト洗浄剤が提案されている。
ところが、抄造の高速化が進むにつれて、上記サイズプレスにおいて、デンプン塗工液(デンプンが主成分のサイズ液)が、ロールの側面、該ロールの軸、軸受けなどのサイズプレス装置周辺に飛散するという問題が新たに生じている。このようにデンプン塗工液がサイズプレス装置周辺に飛散すると、ロールの側面などに付着、堆積してデンプン汚れとなる。このデンプン汚れは、紙製品へ付着するなどして製品の品質を低下させる原因の一つとなっている。
特表2002-517553号公報 特開2001-64693号公報 特開平06-172796号公報 特表2002-536500号公報 特許第2524159号公報
本発明の課題は、デンプン塗工液を使用するサイズプレス装置周辺でのデンプン汚れの付着、堆積を防止することができるデンプン汚れ付着防止剤組成物およびデンプン汚れの付着防止方法を提供することである。
上記課題を解決するための本発明のデンプン汚れ付着防止剤組成物およびデンプン汚れの付着防止方法は、以下の構成からなる。
(1) 下記成分(a)および水、または成分(a)、成分(b)および水からなり、サイズプレス装置周辺にシャワーリングまたは塗布するためのデンプン汚れ付着防止剤組成物。
(a)α−アミラーゼ、β−アミラーゼおよびグルコアミラーゼからなる群より選ばれる少なくとも1種のデンプン分解酵素
(b)防腐剤および/または無機塩
(2) 前記防腐剤がカチオン性界面活性剤および/または有機合成抗菌剤である(1)記載のデンプン汚れ付着防止剤組成物。
(3) 前記カチオン性界面活性剤が、アルキルジメチルベンジルアンモニウムクロライド、アルキルトリメチルアンモニウムクロライドおよびアルキルジメチルエチルアンモニウムエチルサルフェートからなる群より選ばれる少なくとも1種である(2)記載のデンプン汚れ付着防止剤組成物。
(4) 前記無機塩が、塩化ナトリウム、酢酸ナトリウム、硫酸ナトリウム、塩化カルシウム、酢酸カルシウムおよび硫酸カルシウムからなる群より選ばれる少なくとも1種である(1)〜(3)のいずれかに記載のデンプン汚れ付着防止剤組成物。
(5) デンプン塗工液を使用するサイズプレス装置周辺に、(1)〜(4)のいずれかに記載のデンプン汚れ付着防止剤組成物をシャワーリングまたは塗布することを特徴とするデンプン汚れの付着防止方法。
なお、本発明において、「サイズプレス装置周辺」とは、サイズプレス装置を構成する各部位のうち、ロール表面における紙の接触する部位を除いた他の部位をいい、具体的には、例えばロールの側面、該ロールの軸、軸受け、ロール表面のいわゆる耳部(ロール表面のうち、紙が接触しないロール表面の端部)などのデンプン塗工液の飛散が生じやすい部位をいう。
本発明によれば、デンプン分解酵素および水を含むデンプン汚れ付着防止剤組成物をサイズプレス装置周辺にシャワーリングまたは塗布することにより、飛散したデンプン塗工液がロールの側面、該ロールの軸、軸受けなどのサイズプレス装置周辺に付着、堆積するのを防止することができるので、紙製品への汚れの付着を抑制し、製品の品質が低下するのを防止することができる。
特に、本発明の組成物中に防腐剤が含まれているときには、組成物中、および該組成物をシャワーリングまたは塗布したサイズプレス装置周辺において、微生物が繁殖するのを抑え、酵素活性が低下するのを抑制することができる。また、本発明の組成物中に無機塩が含まれているときには、該無機塩が酵素の安定剤として働くので、酵素活性を安定ないし向上させることができる。
以下、本発明のデンプン汚れ付着防止剤組成物およびデンプン汚れの付着防止方法について詳細に説明する。本発明のデンプン汚れ付着防止剤組成物は、下記成分(a)および水、または成分(a)、成分(b)および水からなり、デンプン塗工液を使用するサイズプレス装置周辺にシャワーリングまたは塗布するためのものである。
(a)α−アミラーゼ、β−アミラーゼおよびグルコアミラーゼからなる群より選ばれる少なくとも1種のデンプン分解酵素
(b)防腐剤および/または無機塩
防腐剤としては、デンプン分解酵素の活性に悪影響を与えないカチオン性界面活性剤や有機合成抗菌剤を使用することができる。これらの防腐剤は単独で使用してもよく、併用してもよい。カチオン性界面活性剤としては、例えばアルキルジメチルベンジルアンモニウムクロライド、アルキルトリメチルアンモニウムクロライド、およびアルキルジメチルエチルアンモニウムエチルサルフェートからなる群より選ばれる少なくとも1種を使用するのがよい。
また、有機合成抗菌剤としては、例えばメチレンビスチオシアネート、エチレンビスブロモアセテート、ビス(1,4ブロモアセトキシ)2ブテン、2ブロモ4’ヒドロキシアセトフェノン、ベンジルブロモアセテート、2,2ジブロモ2’クロロアセトフェノン、ブロモモノメチルチオシアネート、2,2ジブロモ3ニトリロプロピオンアミド、1,2ジブロモ2,4ジシアノブタン、ナトリウムジメチルジチオカーバメート、エチレンチウラムモノサルファイド、1,2−ベンズイソチアゾリン3オン、2メチル4イソチアゾリン3オン、(5)クロル2メチル4イソチアゾリン3オン、ブロモニトロアルコール、3,4−ジクロロ1,2ジチオール5オン、2ピリジンチオールナトリウムNオキシドからなる群より選ばれる少なくとも1種を使用するのがよい。
無機塩としては、塩化ナトリウム、酢酸ナトリウム、硫酸ナトリウム、塩化カルシウム、酢酸カルシウムおよび硫酸カルシウムからなる群より選ばれる少なくとも1種を使用するのがよい。
本発明では、デンプン汚れ付着防止剤組成物中に、成分(a)が1〜99重量%、好ましくは5〜50重量%、より好ましくは10〜30重量%含有され、水が1〜99重量%、好ましくは30〜90重量%、より好ましくは50〜80重量%含有されるのがよい。また、成分(b)のうち、防腐剤が1〜99重量%、好ましくは1〜10重量%、より好ましくは1〜5重量%含有され、無機塩が1〜99重量%、好ましくは1〜20重量%、より好ましくは2〜20重量%含有されるのがよい。
上記のような本発明のデンプン汚れ付着防止剤組成物は、例えば2ロール型サイズプレス、ゲートロール型サイズプレス、ブレードやロッドによるメタリングサイズプレス、シムサイザなどの各種サイズプレス装置に適用可能である。特に、これらのサイズプレス装置を構成する各部位のうち、デンプン塗工液の飛散が生じやすいロールの側面、該ロールの軸、軸受けなどに、デンプン汚れ付着防止剤組成物をシャワーリングまたは塗布してデンプン汚れの付着、堆積を防止するのがよい。
上記の各種サイズプレス装置では、少なくとも2本のロールが対向して配置されており、これらのロールが軸を中心に回転している。ロールの表面には、デンプン塗工液の液膜が形成されている。そして、これらのロール間を紙が走行することにより、紙の表面にデンプン塗工液が転写される。
このようなサイズプレスでは、ロールが高速で回転しているので、表面のデンプン塗工液が、ロールの側面、該ロールの軸、該軸の軸受けなどのサイズプレス装置周辺に飛散する。本実施形態のデンプン汚れの付着防止方法では、前記サイズプレス装置周辺に、デンプン汚れ付着防止剤組成物の原液または希釈液が、サイズプレス装置の操業中、連続的または間欠的にシャワーリングまたは塗布される。デンプン汚れ付着防止剤組成物を希釈して使用する場合、該希釈液中のデンプン汚れ付着防止剤組成物の濃度が0.01〜10重量%程度、好ましくは0.1〜1重量%程度になるように、デンプン汚れ付着防止剤組成物に水を添加して希釈してもよい。デンプン汚れ付着防止剤組成物を原液のまま使用するか希釈液にして使用するかは、サイズプレス装置周辺へのデンプン塗工液の飛散量、堆積量、コスト等を考慮して適宜決定すればよく、特に限定されないが、通常、シャワーリングする場合には上記濃度範囲に希釈して使用するのがよく、塗布する場合には原液で使用するのがよい。
デンプン汚れ付着防止剤組成物をシャワーリングするには、例えばロールの近傍にスプレー管を設置し、このスプレー管を通じてデンプン汚れ付着防止剤組成物の原液または希釈液を噴霧すればよい。シャワーリングする際におけるデンプン汚れ付着防止剤組成物の原液または希釈液の吐出量は、飛散したデンプン塗工液が少なくとも乾燥して固化しない程度に濡れた状態を維持できればよく、特に限定されないが、通常50〜200mL/分程度に調整されるのがよい。
また、デンプン汚れ付着防止剤組成物を塗布するには、例えば刷毛などを用いればよい。組成物を塗布する頻度は、飛散したデンプン塗工液が少なくとも乾燥して固化しない程度に濡れた状態を維持できればよく、特に限定されるものではない。
デンプン分解酵素は、サイズプレス装置のロール表面の設定温度に応じて選定するのが好ましい。したがって、一般的なサイズプレスにおけるロール表面の設定温度を考慮に入れると、活性の高まる温度が50〜65℃程度のデンプン分解酵素を用いるのがよい。具体的には、α−アミラーゼは50〜60℃程度が最適温度であり、β−アミラーゼは55〜65℃程度が最適温度であり、グルコアミラーゼは53〜55℃程度が最適温度である。
以上のような本発明のデンプン汚れの付着防止方法によれば、紙の送り速度が例えば1500m/分以上の高速で抄紙機が運転され、サイズプレスにおいてデンプン塗工液の飛散が生じたとしても、サイズプレス装置周辺にデンプン汚れが付着、堆積するのを防止して、紙製品の品質の低下を防止することができる。
以下、実施例および比較例を挙げて本発明を詳細に説明するが、本発明は以下の実施例のみに限定されるものではない。
以下に示す各成分を下記配合比率で混合して実施例1,2および比較例1〜3のデンプン汚れ付着防止剤組成物を調製した。
α―アミラーゼ(枯草菌製,20unit/mg、和光純薬工業(株)製) 20重量%
酢酸ナトリウム(試薬、和光純薬工業(株)製) 10重量%
水 70重量%
α―アミラーゼ(枯草菌製,20unit/mg、和光純薬工業(株)製) 20重量%
塩化ベンジルジメチルテトラデシルアンモニウム・二水和物(試薬、和光純薬工業(株)製) 2重量%
塩化ナトリウム(試薬、和光純薬工業(株)製) 5重量%
水 73重量%
[比較例1]
ソフタノール90(成分:ポリオキシエチレンアルキルエーテル、日本触媒(株)製)
30重量%
水 70重量%
[比較例2]
ソフタノール90(成分:ポリオキシエチレンアルキルエーテル、日本触媒(株)製)
25重量%
スルファミン酸(試薬1級、和光純薬工業(株)製) 5重量%
水 70重量%
[比較例3]
ソフタノール90(成分:ポリオキシエチレンアルキルエーテル、日本触媒(株)製)
20重量%
水酸化ナトリウム(試薬、和光純薬工業(株)製) 5重量%
水 75重量%
<デンプン汚れに対する洗浄効果の確認>
上記で得られた実施例1,2および比較例1〜3のデンプン汚れ付着防止剤組成物に水を添加して、該組成物の濃度が表1に示す値となるように希釈して洗浄効果確認用の薬剤(希釈液)をそれぞれ得た。また、洗浄効果の確認をするためのデンプン汚れとして、抄紙機のサイズプレス周辺に飛散したデンプン汚れを採取し、乾燥して均一な粒径に調整したものを用いた。このデンプン汚れ0.5gを30mLビーカーに精秤し、予め50℃に保温した薬剤20mLをビーカー内にそれぞれ添加し、50℃で1時間放置した。
次に、秤量済みのろ紙を用いてビーカー内の内容物をろ過し、不溶物をろ別した。ついで、約10℃の精製水10mLでビーカーの壁面に付着した不溶物をろ紙上に洗い落とし、完全に液をろ別した後、不溶物を含むろ紙を105℃で恒量になるまで乾燥し、重量を測定した。デンプン汚れ洗浄率は、下記式にて求めた。また、デンプン汚れ付着防止剤組成物に代えて、ブランクとして水のみで上記と同様の洗浄効果の確認を行った。結果を表1に示す。
Figure 0004394526
Figure 0004394526
表1から、実施例1,2のデンプン汚れ付着防止剤組成物を用いた薬剤では、比較例1〜3よりも高い洗浄効果が得られていることがわかる。
<実機テスト>
実施例1,2のデンプン汚れ付着防止剤組成物を0.3重量%の濃度に水で希釈した薬剤を使用して、新聞用紙製造抄紙機のサイズプレス(ゲートロール型サイズプレス)にて実機テストを実施した。ゲートロールの側面付近にスプレー管を配管し、このスプレー管を通じてゲートロールの側面に約40℃の薬剤を吐出量150mL/分で連続的にシャワーリングした。ゲートロールの側面の温度は約55℃であった。シャワーリングは、抄き出しから開始し、次回の停抄時まで(約60日間)連続的に行った。そして、抄紙機停止時に、ゲートロール側面のデンプン汚れをブランク(約40℃の水のみを吐出量150mL/分で連続的に60日間シャワーリング)と比較した。結果を表2に示す。
Figure 0004394526
表2から、ブランクと比較して、実施例1,2のデンプン汚れ付着防止剤組成物を用いた薬剤では、デンプン汚れの付着、堆積が抑制されていることがわかる。

Claims (5)

  1. 下記成分(a)ナトリウム塩およびカルシウム塩から選ばれる無機塩と、からなり、前記無機塩の含有量が組成物中1〜20重量%である、サイズプレス装置を構成する各部位のうちロール表面における紙の接触する部位を除いた他の部位にシャワーリングまたは塗布するためのデンプン汚れ付着防止剤組成物。
    (a)α−アミラーゼ、β−アミラーゼおよびグルコアミラーゼからなる群より選ばれる少なくとも1種のデンプン分解酵素
  2. 防腐剤をも含有する、請求項1記載のデンプン汚れ付着防止剤組成物。
  3. 前記防腐剤がカチオン性界面活性剤および/または有機合成抗菌剤である請求項2記載のデンプン汚れ付着防止剤組成物。
  4. 前記無機塩が、塩化ナトリウム、酢酸ナトリウム、硫酸ナトリウム、塩化カルシウム、酢酸カルシウムおよび硫酸カルシウムからなる群より選ばれる少なくとも1種である請求項1〜3のいずれかに記載のデンプン汚れ付着防止剤組成物。
  5. デンプン塗工液を使用するサイズプレス装置を構成する各部位のうちロール表面における紙の接触する部位を除いた他の部位に、請求項1〜4のいずれかに記載のデンプン汚れ付着防止剤組成物をシャワーリングまたは塗布することを特徴とするデンプン汚れの付着防止方法。
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