JP4394320B2 - 人工衛星や宇宙空間搬送機などに用いる駆動機構の推力室 - Google Patents
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Description
本発明は、人工衛星や宇宙空間搬送機ないしはそれらの姿勢制御用駆動機構などに用いられ、また特に、人工衛星を輸送ロケット軌道から衛星供用軌道へ移し替えるための宇宙空間搬送機などに用いられる推力室に関する。
【0002】
この種の駆動機構は、噴射ヘッドを備えており、その噴射ヘッドから、その噴射ヘッドに連結した推力室の中へ、推進剤を噴射する。推進剤としては、例えば、燃料としてのMMH(ヒドラジン化合物の一種)と、酸化剤としてのN2O4(四酸化二窒素)とを組合せたものなどが用いられる。また、推力室は、燃焼室と、ノズル部材と、膨張ノズル部とを含んでいる。推進剤が燃焼することにより、非常な高温が発生し、その温度は、推力室の中心部では、即ち、燃焼ガスの内部では、約2600℃にも達する。また、それによって、ノズル部材の壁が熱せられ、その温度は、約1600℃ほどにもなる。この理由のため、これまでは、ノズル部材は、その壁の内側に冷却通路を形成し、その冷却通路に燃焼するために順次供給される推進剤の冷却を行うようにした構造が広く使用されていた。しかしながら、このような熱回生冷却方式のノズル部材(regeneratively cooled nozzle)には、その製作コストが高く付くこと、それに、推進エンジンの点火時の及び消火時の動作特性に不都合が生じることなどの短所が付随していた。
【0003】
例えば、白金−イリジウム(Pt−Ir)合金などの耐熱合金を使用すれば、上述した熱回生冷却構造を採用せずに済む。そのような耐熱合金を使用することによる問題は、ノズル部材に接合される燃焼室及び膨張ノズルの材料としては、例えばクロム−ニッケル−モリブデン合金などの材料が使用されるのであるが、溶接技術によって接合しようとしても、適切に接合することができないことである。白金−イリジウム合金とクロム−ニッケル−モリブデン合金とでは、例えば融点や、熱膨張率、比重、それに結晶構造などの様々な物理的特性が異なるため、これら2つの金属合金を溶接によって接合しても、結晶レベルでの十分な接合状態が得られないのである。走査電子顕微鏡(REM)によって観察したところ、溶接による溶融領域には、厚さが数千分の1ミリメータ(μ程度)の、白金−イリジウム合金の結晶から成る境界層が形成されていることが判明した。このような理由から、融合していないことを意味している。そのため、それらを溶接によって接合した溶接部は、必要な動的強度を持ち得ず、振動荷重が加わったならば破壊して分離してしまう。
【0004】
従って本発明の目的は、ノズル部材を熱回生冷却構造とする必要がなく、しかも、それらの内壁部が1600℃までの温度において十分な強度を維持し得るようにした、人工衛星や宇宙空間搬送機などの推力室を提供することにある。
【0005】
上記目的は、請求項1の前提部分に記載した構成要件に、請求項1の特徴部分に記載した構成要件を組合せて成る、本発明の主題により達成される。従属請求項は、本発明の実施の形態に係る特徴を含むものである。
【0006】
本発明に係る推力室の利点は、製造が比較的容易であり、製造コストが低廉であることにある。また、更なる利点として、既存のエンジン構造を略々そのまま踏襲しつつ、それに僅かな改造を施すだけで、優れた作動強度を達成できるということがある。
【0007】
以下に添付図面を参照しつつ、本発明について更に詳細に説明して行く。添付図面は、本発明に係る推力室を噴射ヘッドと共に示した分解斜視図である。
【0008】
添付図面には、推力室1及び噴射ヘッド2を示した。推力室1は回転対称形状に形成されており、この推力室1の両端部のうち、噴射ヘッド2の方を向いた端部3が、噴射ヘッド2のフランジ部4に連結されており、両者の連結は、溶接による接合とすることが好ましい。噴射ヘッド2には、2個の推進剤遮断弁5、6が取付けられ、一方の推進剤遮断弁5は、燃料の供給を遮断するための弁であり、他方の推進剤遮断弁6は、酸化剤の供給を遮断するための弁である。推進剤すなわち燃料と酸化剤とは、これら推進剤遮断弁5、6を介して噴射ヘッド2へ供給され、そして、この噴射ヘッド2から、旋回噴流を成すようにして(helically)推力室1の中へ供給される。
【0009】
推力室1は、噴射ヘッド2に近い方から順に、燃焼室ハウジング11、第1中間リング12、ノズル部材13、第2中間リング14、アダプタリング15、それに膨張ノズル部材16から構成される。また特に、アダプタリング15と膨張ノズル部材16とで、膨張ノズル17が構成されている。
【0010】
推進剤は、旋回噴流を成すように噴射されて、燃焼室ハウジング11の内壁へ噴き付けられて、冷却膜層が形成され、これは燃焼室ハウジング11の軸心方向及び周方向の運動成分を有する。そのため、推進剤は、冷却膜層が形成された箇所から燃焼室内側へ向かって流動して行き、燃焼室の内部において燃焼する。この流動に伴って、冷却膜層は、噴射ヘッド2から軸心方向へ増していく(build up)。この冷却膜層は、ノズル部材13の近くで消失する。更に、ノズル部材13の部分では断面積が狭まっているため、燃焼ガスが高温になる。従って、ノズル部材13に作用する熱負荷は、燃焼室ハウジング11に作用する熱負荷よりはるかに大きい。そこで、推力室1を低コストで製造するための手段として、燃焼室ハウジング11と、ノズル部材13とを、異なった材料で構成することが考えられる。更に、ノズル部材13の高温に耐えられる材料は、燃焼室ハウジング11に一般的に用いられる材料と比べて、その比重が2.5倍も大きい。更に、膨張ノズルハウジング17は、燃焼室ハウジング11に作用する温度及び応力と大差ないため、膨張ノズル部ハウジング17の材料は、一般的に、燃焼室ハウジング11の材料と同じものとして構わない。
【0011】
本発明においては、燃焼室ハウジング11は耐熱鋼で作られ、クロム−ニッケル−モリブデン合金とすることが好ましい。また、本発明においては、アダプタリング15及び膨張ノズル部材16も耐熱鋼としており、特にクロム−ニッケル−モリブデン合金とする。
【0012】
ノズル部材13は、白金−イリジウム合金製である。ノズル部材13と燃焼室ハウジング11との間に配設する第1中間リング12は、白金−ロジウム合金製である。また、同様に、第2中間リング14も白金−ロジウム合金製である。
【0013】
推力室ハウジング1の構成部材は、溶接によって互いに接合するようにしている。それによって、燃焼室ハウジング11と、第1中間リング12と、ノズル部材13と、第2中間リング14と、アダプタリング15と、膨張ノズル部材16とから成る推力室ハウジング1を一体化した構成にし、また、推力室ハウジング1の内面を、滑らかな面とすることができる。
【0014】
白金−イリジウム合金製のノズル部材13と耐熱鋼製の燃焼室ハウジング11とは、耐熱鋼製のアダプタリング15と同じように、それらの合金の物理的性質が異なるため、溶接技術によって両者を直接的に接合することはできない。そこで、燃焼室ハウジング11とノズル部材13との間には第1中間リング12を配設し、また、ノズル部材13とアダプタリング15との間には第2中間リング14を配設することにより、それら第1中間リング12及び第2中間リング14を介して、燃焼室ハウジング11、膨張ノズルハウジング17、及びノズル部材13を溶接により接合して、推力室ハウジング1を構成するようにしたので、これによって、推力室ハウジング1の製造が容易化されている。更に、本発明に係る推力室ハウジング1は、第1中間リング12及び第2中間リング14を装備することで、推力室ハウジング1に通常発生する温度内で十分な強度を持つものとなっている。第1中間リング12及び第2中間リング14の材料である白金−ロジウム合金の基本的な物理特性、特に、その熱膨張率及び弾性率は、燃焼室ハウジング11及び膨張ノズルハウジング17の合金の値と、ノズル部材13の値との中間に位置している。そのため、溶接接合領域が良好な膨張特性で、振動による応力が軽減される。
【0015】
推力室ハウジング1の構成部材の溶接は、電子ビーム溶接法を用いることが好ましく、なぜならば、この溶接法によれば、製造中に推力室ハウジング1へ入力される熱量が小さいからである。
【0016】
膨張ノズル部材16は、プラテン手段によるシートから成形されることが好ましい。
【0017】
推力発生ハウジング1の構成部材同士の間の溶接部の試験は、個々の溶接部を、3次元超音波試験法によることが好ましい。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明に係る推力室を噴射ヘッドと共に示した分解斜視図である。
Claims (4)
- 耐熱鋼製の燃焼室ハウジング(11)と、耐熱鋼製の膨張ノズルハウジング(17)とを含み、一方の端部(3)が噴射ヘッド(2)に連結された宇宙航行用の駆動機構の推力室ハウジング(1)において、
前記燃焼室ハウジング(11)と前記膨張ノズルハウジング(17)との間に白金−イリジウム合金製のノズル部材(13)が配設されていることを特徴とする推力室ハウジング。 - 前記燃焼室ハウジング(11)が第1中間リング(12)を介して前記ノズル部材(13)に溶接により接合され、前記ノズル部材(13)が第2中間リング(14)を介して前記膨張ノズルハウジング(17)に溶接により接合されており、前記第1中間リング(12)及び前記第2中間リング(14)が白金−ロジウム合金製であることを特徴とする請求項1記載の推力室ハウジング。
- 前記溶接による接合が、電子ビーム溶接法によるものであることを特徴とする請求項2記載の推力室ハウジング。
- 前記膨張ノズルハウジング(17)が、膨張ノズル部材(16)と、溶接により前記第2中間リング(14)に接合されたアダプタリング(15)とを含んでおり、前記アダプタリング(15)が前記膨張ノズル部材(16)に溶接により接合されていることを特徴とする請求項2又は3記載の推力室ハウジング。
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