JP4394224B2 - 煙センサ及び煙熱複合センサ - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、火災による煙を検出する煙センサ、特に、煙の接触によって抵抗値が変化する金属酸化物半導体を用いて煙を検出する煙センサ及びこの煙センサを用いた煙熱複合センサに関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、火災による煙を検出する煙感知器としては、検煙室の検煙領域に対し発光素子と受光素子の光軸をずらして配置し、検煙領域に流入した煙による発光素子からの光の散乱光を受光素子で受光して火災を判断するようにした散乱光式の煙感知器が知られている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、このような従来の散乱光式煙感知器にあっては、煙による光の散乱現象を利用していることから、調理等による湯気で水蒸気が流入した場合にも、水蒸気による光の散乱現象によって煙検出信号が得られ、非火災報の原因となっている。
【0004】
また煙による散乱光を検出するため、感知器内部に煙を効率良く流入すると同時に外部からの光の入射を防止する特殊な構造を備えた暗箱を必要とし、暗箱の中には発光素子及び受光素子を配置する必要があるため、ある程度の大きさを必要とし、このため感知器全体としての小型化に限界があった。
【0005】
本発明は、火災以外の原因による非火災報を確実に防止すると共に暗箱を不要にして大幅な小型化を可能とする煙センサ及び煙熱複合センサを提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
この目的を達成するため本発明は次のように構成する。
本発明の煙センサは、所定温度に加熱された金属酸化物半導体に火災による煙が接触した際の抵抗値の変化に応じた検出信号を出力する半導体煙検出素子を備えたことを特徴とする。
【0007】
また、煙センサは、半導体煙検出素子の検出信号から煙濃度を判断して火災を判定する煙判定部とを備える。
【0008】
このような本発明の煙センサによれば、光学的な煙検出構造をもたないことから、水蒸気の接触を受けても煙が接触したときのような検出信号は得られず、調理場等の水蒸気の多い場所に設置したとしても確実に非火災報を防止できる。
【0009】
また光学的な煙検出ではないことから、従来の散乱光式煙感知器のような暗箱が不要となり、煙感知器とした場合の大幅な小型化が可能である。
【0010】
ここで半導体煙検出素子は、火災の煙に対する検出感度の選択性が高くなるように、金属酸化物半導体の加熱温度及び直列接続した検出レンジを決める抵抗の抵抗値を設定する。
【0011】
本発明の煙センサで使用する金属酸化物半導体は、様々な還元性ガスに対し検出感度を有するが、還元性ガスの種類に対する検出感度は金属酸化物半導体の加熱温度を100℃〜500℃の範囲で変化させることで、還元性ガスの種類に対し検出感度の選択性が得られる。そこで、火災の煙に対する金属酸化物半導体の検出感度の選択性を最適化するように、加熱温度及び直列接続した検出レンジを決める抵抗の抵抗値を設定し、煙センサとして動作させる。
【0012】
本願発明者の考察によれば、燻焼火災時の煙に対し金属酸化物半導体の加熱温度及び直列接続した検出レンジを決める抵抗の抵抗値を設定することで、半導体煙検出素子の火災の煙に対する検出感度の選択性が最も最適化することができた。
【0013】
半導体煙検出素子は、煙濃度0[%/m]の時の抵抗値をRo、煙接触時の抵抗値をRsとした場合、煙濃度3[%/m]乃至15[%/m]の範囲で抵抗比Ro/Rsが例えば10乃至100程度の範囲で変化するように、金属酸化物半導体の加熱温度及び直列接続した検出レンジを決める抵抗の抵抗値を設定する。
【0014】
これによって火災による煙が接触したときの金属酸化物半導体の抵抗比Ro/Rsの変化が、火災と判断すべき煙濃度3[%/m]乃至15[%/m]と直接対応関係をもち、金属酸化物半導体の抵抗比Ro/Rsを煙濃度とみなして火災を判断することができる。
【0015】
また半導体煙検出素子は、水素に対する検出感度の選択性が高く、COガス、アルコール及び水蒸気等の水素以外に対する検出感度の選択性が低くなるように金属酸化物半導体の加熱温度及び直列接続した検出レンジを決める抵抗の抵抗値を設定する。
【0016】
半導体煙検出素子は、特に煙濃度10[%/m]付近より低い煙濃度で水素のみに検出感度の選択性をもつように、金属酸化物半導体の加熱温度及び直列接続した検出レンジを決める抵抗の抵抗値を設定することが望ましい。
【0017】
煙判定部は、半導体煙検出素子の煙濃度0[%/m]の時の抵抗値をRo、煙接触時の抵抗値をRsとした場合、抵抗比Ro/Rsまたは抵抗値Rsが所定の煙濃度に対応した所定閾値を越えた時に火災と判定する。
【0018】
また煙判定部は、半導体煙検出素子の煙濃度0[%/m]の時の抵抗値をRo、煙接触時の抵抗値をRsとした場合、抵抗比Ro/Rsまたは抵抗値Rsの単位時間当りの変化率が所定の閾値を越えた時に火災と判定するようにしてもよい。煙センサは、前記金属酸化物半導体の温度補償を行う温度補償回路を備することが望ましい。
【0019】
本発明は、また、本発明の煙センサに、更に、火災による熱を検出する熱検出素子と、熱検出素子の検出信号に基づいて火災を判定する熱判定部を設けて煙熱複合センサとすることを特徴とする。金属酸化物半導体を検出素子に使用した本発明の煙センサは、燻焼火災による煙に対しては良好な煙検出ができるが、煙の発生が少ない着炎火災については検出感度が低くなることから、熱検出素子による火災判定を付加することで、あらゆるタイプの火災に対し安定した検出感度をもつ煙熱複合センサを提供する。
【0020】
このように煙と熱を検出する複合型とした場合には、煙判定部又は熱判定部のいずれか一方による火災判定出力が得られた時に火災検出信号を送出する。また半導体煙検出素子の検出信号と熱検出素子の検出信号を加算し、この加算信号が所定の閾値を越えた時、また加算信号の単位時間当りの変化率が所定の閾値を越えた時に火災と判定するようにしてもよい。
【0021】
【発明の実施の形態】
図1は本発明の煙センサの基本的な実施形態の回路ブロック図である。
【0022】
図1において、本発明の煙センサは、半導体煙検出素子1、煙判定回路2、定電圧回路3及び発報出力回路4で構成される。定電圧回路3は火災受信機から引き出された電源兼用信号線に接続される端子L,Cに対する電源電圧の供給を受け、半導体煙検出素子1及び煙判定回路2に定電圧化した電源電圧を供給する。
【0023】
半導体煙検出素子1は、感応体としてヒータにより所定温度に加熱された金属酸化物半導体を備え、火災による煙が接触したときに変化する抵抗値に応じた検出信号を出力する。煙判定回路2は、半導体煙検出素子1からの検出信号に基づいて煙濃度を判断して火災を判定し、火災を判定すると発報出力回路4を作動し、端子L,C間を低インピーダンスに短絡して火災受信機に対し発報信号を出力させる。
【0024】
図2は、図1の半導体煙検出素子1の回路構成である。半導体検出素子1は、素子本体5に感応体6とヒータ8を備えている。ヒータ8は、図1の低電圧回路3からの電源電圧を受ける端子10a、10間に接続され、可変抵抗9によってヒータコイル8に加える電源電圧を設定している。
【0025】
このため、ヒータコイル8には可変抵抗9で決まる所定の電流が流れ、これによって感応体6の加熱温度を設定している。感応体6としては金属酸化物半導体が使用され、煙が接触すると抵抗値が減少する。感応体6には温度補償抵抗を直列接続する温度補償回路7が設けられ、周囲温度の変動による感応体6の検出感度の変動を補償すると同時に検出レンジを設定している。
【0026】
温度補償回路としては、金属酸化物半導体と同じ温度特性を持つサーミスタやダイオード、或いは同じ金属酸化物半導体で煙が吸着しないようにコーティングしたもの等が用いられる。
【0027】
尚、ヒータ8には、常時電圧を印加せずに、消費電力を抑えるためにパルス状に電圧を印加するようにしても良い。
【0028】
図3は、図2の半導体煙検出素子1の具体例である。図3の半導体煙検出素子1は、樹脂成形されたベース11の上部に装着したステンレス等で作られた金属カバー13の内部に感応体6とヒータ8を装着しており、ベース11の下部には接続用のピン12が取り出されている。
【0029】
図4は図3の感応体6の一例である。感応体6はセラミック絶縁チューブ14の表面に向かい合う電極15,16を形成し、電極15,16からは外部にリード線17,18が引き出されている。この電極15,16の間にはSnO2 焼結体を用いた金属酸化物半導体19を設けている。更にセラミック絶縁チューブ14の内部にはヒータコイル8が配置され、金属酸化物半導体19を所定温度に加熱している。
【0030】
図5は図3の感応体6の他の実施形態である。この図5の感応体6にあっては、セラミック基板等の絶縁性基板28の表面に、間に金属酸化物半導体20を介して一対の電極21,22を形成し、電極21,22からは、それぞれリード線23,24が引き出されている。絶縁性基板28の反対側の面にはヒータ25が形成され、リード線26,27が両端の電極部分から引き出されている。
【0031】
この図4,図5の感応体6に用いた金属酸化物半導体19,20としては、n型酸化物半導体が用いられる。このn型酸化物半導体は、通常、ヒータにより100℃〜500℃の加熱状態で還元性ガスの接触を受けると、導電度が変化する。即ち還元性ガスが存在しない大気中の定常監視状態にあっては、酸素がn型酸化物半導体の表面に負イオンを吸着している。
【0032】
この状態で還元性ガスが存在すると、n型酸化物半導体の表面で還元性ガスと吸着酸素による酸化反応が起こる。この酸化反応によって、吸着酸素に捕捉されていた電子がn型酸化物半導体へ移行し、n型酸化物半導体の導電率が増加、即ち抵抗値が減少することになる。
【0033】
したがって、還元性のガスがない正常な大気中、即ち煙濃度ゼロにおける抵抗値Roから、還元性ガスを含む煙の存在する下での抵抗値Rsへの変化によって、還元性ガスを含む煙を検出することができる。
【0034】
ここでn型酸化物半導体としては、酸化スズ系SnO2、酸化亜鉛系ZnO、酸化タングステン系WO3が主なものであるが、これ以外に酸化チタン系TiO2、酸化鉄系α−Fe23、酸化コバルト系CoO、酸化インジウム系In23等もある。
【0035】
また一般に、n型酸化物半導体のみでは還元性ガスに対する検出感度及びガスの種類に対する選択性が不十分であることから、検出しようとする還元性ガスの種類に対応したガス検出感度及び選択性を改善するために白金Pt、パラジウムPd等の触媒をn型酸化物半導体の中に添加したり、あるいは表面の触媒層形成等の形で使用される。同時に、触媒に加えてn型酸化物半導体の加熱温度が還元性ガスの種類に対する検出感度と選択性を決める重要な要因となっている。
【0036】
図6は、本発明の半導体煙検出素子1における煙濃度[%/m]に対する図2の感応体6の抵抗比Ro/Rsの測定結果の一例である。この図6の煙濃度に対する抵抗比Ro/Rsの関係は図4に示す構造の感応体6を使用しており、金属酸化物半導体14としては触媒として白金Ptを添加した酸化スズSnO2を使用した場合である。尚、この測定にあっては線香を燃やした場合の煙を使用したものである。
【0037】
またヒータ8による感応体6の加熱温度としては、還元性ガスに対する検出感度を持つ約100℃〜500℃の範囲について、各種の温度範囲を設定して測定を行ったところ、図6の煙濃度と抵抗比の関係は、最も低い100℃付近の使用温度とした場合に良好な特性が得られることが判明した。
【0038】
図6の煙濃度に対する感応体6の抵抗比Ro/Rsの関係にあっては、火災と判定すべき煙濃度範囲として、通常使用される3〜15[%/m]の煙濃度の範囲をとり、これに対し抵抗比Ro/Rsが約10〜100の範囲で変化する特性が確認されている。
【0039】
図7は、図6の煙濃度に対する抵抗比の測定と同じヒータコイル8による加熱条件において、本発明の煙センサにおける水素、一酸化炭素及びエタノールのそれぞれのガス濃度[ppm]に対する感応体6の抵抗比Ro/Rsの関係を示している。
【0040】
図7において、まず水素はガス濃度10〜1000ppmの変化に対し、抵抗比Ro/Rsが略6〜70の範囲で増加している。一方、一酸化炭素COとアルコール、具体的にはエタノールについては、ガス濃度200ppm以下では抵抗比Ro/Rsは略1と殆ど検出感度がなく、200ppmを越えると徐々に選択性の低い検出感度が見られる。しかし、水素に比べるとその検出レベルは十分の一以下に抑えられている。
【0041】
火災の煙に含まれるガス成分としては、一般的にCO、CO2、HCN、HCl、NOx等の無機化合物、メタン、エタン等の飽和炭化水素、エチレン、アセチレン等の不飽和炭化水素、ベンゼン、トルエン等の芳香属炭化水素、アルコール類、アルデヒド類、ニトリル等の有機化合物が含まれる。
【0042】
そして本発明の煙センサにあっては、図7の特性から明らかなように、火災と判定すべき3〜15[%/m]の煙濃度範囲について、水素に高い選択性をもたせ、一酸化炭素CO及びエタノールについては、煙濃度の高い側で低い選択性をもたせた結果として、火災の煙に含まれる複数種類の還元性ガスに対する全体的な検出特性として、図6の煙濃度3〜15[%/m]に対する抵抗比Ro/Rs=約10〜100の検出特性を得ている。
【0043】
図8は、図6の煙濃度に対する抵抗比Ro/Rsの検出特性をもつ本発明の煙センサを用いてISOで定められたタイプ番号TF1〜TF6の火災試験を行ったときの経過時間に対する抵抗比Ro/Rsの変化を示している。ここでISOのタイプ番号TF1〜TF6の火災試験は、次表のように定められている。
【0044】
【表1】
Figure 0004394224
【0045】
図8(A)(D)(E)(F)のTF1,TF4,TF5,TF6のそれぞれの着炎燃焼にあっては、本発明の煙センサの抵抗比Ro/Rsは煙センサとして使用可能な有意な変化は得られていない。これに対し図8(B)(C)の燻焼火災であるTF2,TF3にあっては、時間の経過に対し煙センサとして十分な検出感度を持つ抵抗比Ro/Rsの変化が得られている。
【0046】
図9は、本発明の煙センサによる図8の火災試験TF1〜TF6と同時に、従来の散乱光式煙感知器によって煙濃度[%/m]の変化を測定した結果である。
【0047】
図9(A)(D)(E)(F)の着炎燃焼であるTF1,TF4,TF5,TF6にあっては、アルコール着炎燃焼のTF6を除き他の3つの着炎燃焼TF1,TF4,TF5では、火災検出に必要な煙濃度の下限である3[%/m]を越える煙濃度の検出が行われている。
【0048】
一方、図9(B)(C)の燻焼でなるTF2,TF3にあっては、時間の経過に応じた煙濃度の増加に略対応した検出結果が得られている。特に図9(B)と図8(B)のTF2を対比して見ると、図8(B)の本発明の煙センサによる抵抗比Ro/Rsの変化と図9の従来の散乱光式煙感知器による煙濃度の時間変化は、略線形的(比例的)な対応関係にあることが分かる。
【0049】
また図8(C)の本発明の煙センサによるTF3の抵抗比Ro/Rsの変化は、図9(C)の従来の散乱光式煙感知器のTF3における煙濃度の変化と比べると、より高感度の検出が行われることが分かる。
【0050】
この図8の本発明による煙センサのTF1〜TF6の試験結果と図9の散乱光式煙感知器による煙濃度のTF1〜TF6の試験結果の対比から、本発明の煙センサはTF2,TF3の燻焼による煙に対し、図6に示したような煙濃度に対し十分な検出感度の選択性を持った抵抗比Ro/Rsの変化が得られることが確認できた。
【0051】
図10は、非火災報の原因となる水蒸気に対する本発明の煙センサの検出特性を従来の散乱光式煙感知器と共に示している。図10(A)は水蒸気に対する本発明の煙センサの抵抗比Ro/Rsの時間変化であり、水蒸気を受けても殆ど抵抗比Ro/Rsは煙濃度ゼロを示す1付近にとどまっている。
【0052】
これに対し図10(B)の従来の散乱光式煙感知器にあっては、水蒸気の流入に対し火災判断に必要な下限の煙濃度3[%/m]を越える検出値の変化を生じている。この図10(A)(B)の試験結果から、従来の散乱光式煙感知器では調理場等で発生した湯気による水蒸気を受けると非火災報を出していたものが、本発明の煙センサにあっては水蒸気に対し検出感度を殆ど持たず、水蒸気のある調理場等に設置しても非火災報を出すことを確実に防止できる。
【0053】
図11は、火災以外の原因で発生する雑ガスの主成分であるアルコールに対する本発明の煙センサの検出特性であり、本発明の煙センサはアルコールに対し殆ど検出感度をもたず、従って日常的に使用している化粧品、整髪料等の揮発成分であるアルコールを受けても非火災報を生ずることはない。
【0054】
図12は、図1の煙判定回路2の判定機能の説明図である。図12(A)は半導体煙検出素子1の検出結果として得られる抵抗比Ro/Rsの変化に対し、図6の煙濃度に対する抵抗比Ro/Rsの特性に従って所定の煙濃度例えば3[%/m]に対応する抵抗比Ro/Rs=約7を閾値THとして設定する。煙判定回路2は、検出された抵抗比Ro/Rsが閾値THを越えた時刻toで火災を判定し、発報出力回路4を作動して発報信号を火災受信機に送出する。
【0055】
また図12(B)のように、煙判定回路2は半導体煙検出素子1から得られる検出値としての抵抗比Ro/Rsに単位時間Δtの変化率Δ(Ro/Rs)を求め、この変化率Δ(Ro/Rs)が所定の閾値以上即ち変化率が所定値以上となったとき火災と判断し、同じく発報出力回路4を作動して発報信号を火災受信機に送出するようにしてもよい。
【0056】
尚、検出値として抵抗比Ro/Rsではなく、抵抗値Rsそのものを使用して、所定の煙濃度に対応する閾値と比較して火災判定したり、単位時間当りの変化率が所定変化率以上か比較して火災判断しても良い。
【0057】
図13は、本発明の煙センサを煙熱複合センサに応用した実施形態の回路ブロック図であり、この実施形態は図1の半導体煙検出素子1による火災検出に加え、熱検出素子を用いて火災を判断する複合型の煙熱センサとしたことを特徴とする。
【0058】
図13において、半導体煙検出素子1、煙判定回路2、定電圧回路3、発報出力回路4は、図1の実施形態と同じであり、これに加えて新たに熱検出素子30及び熱判定回路31を設けている。熱検出素子30は図14に示すようにサーミスタ32と抵抗33の直列回路で接続され、端子34a,34c間に定電圧回路3からの規定の電源電圧を加え、サーミスタ32と抵抗33の接続点を端子34bより熱検出信号として熱判定回路31に出力している。
【0059】
発報出力回路4は、この実施形態にあっては、煙判定回路2からの判定信号または熱判定回路31からの判定信号のいずれかを受けたときに、端子L,C間を低インピーダンスに短絡し、火災受信機に対し発報信号を出力する。
【0060】
図1に示した本発明の半導体煙検出素子1を用いた煙センサにあっては、図8(B)(C)の燻焼の火災試験TF2,TF3に対しては十分な検出感度を持つが、図8(A)(D)(E)(F)の着炎火災のTF1,TF4,TF5,TF6については、火災と判定すべき煙濃度に対する検出感度が十分に得られない。そこで、この着炎火災に対する検出感度の不足部分を、図13にあっては熱検出素子30を付加することで補っている。
【0061】
図15(A)は、図13の複合型の本発明の火災試験TF1〜TF6に対する火災検出性能としてのクラスを表わしている。この火災検出のためのクラスは、クラスNに属する場合は火災として検出不可能であり、クラスA,B,Cであれば火災として検出可能であり、クラスAほど火災検出性能が高い。
【0062】
図15(A)は、図13の半導体煙検出素子1による検出性能であり、TF2,TF3はクラスAの検出性能が得られるものの、TF1,TF4,TF5,TF6にあってはクラスNの検出性能であることがわかる。一方、図13の熱検出素子30に基づく検出性能にあっては、図15(B)に示すようにTF1がクラスA、TF2,TF3がクラスN、TF4がクラスB、TF5,TF6がクラスAの検出性能となっている。
【0063】
その結果、半導体煙検出素子1と熱検出素子30の両方の検出性能によって、図15(C)のようにTF1〜TF6の全てについて火災判定可能なクラスA〜Bの検出性能が実現できる。
【0064】
図15(D)は、従来の散乱光式煙感知器におけるTF1〜TF6の検出性能であり、TF1,TF2,TF3,TF4,TF5については、クラスC,B,A,A,Bの検出性能が得られているが、アルコール着炎燃焼であるTF6についてはクラスNとなって検出不可能となっている。
【0065】
このため、図15(A)の検出性能を実現する図13の複合型のセンサの方が、図15(B)の従来の散乱光式煙感知器に比べ、より高い火災検出性能を達成することができる。即ち、燻焼火災に対する半導体煙検出素子1による検出性能に、熱検出素子30による着炎火災に対する検出機能を加え合わせることで、全ての火災種別に対し確実に火災として検出する煙熱複合センサが実現できる。
【0066】
図16は、図13と同じ複合型のセンサの他の実施形態である。この実施形態にあっては、加算回路35によって半導体煙検出素子1の検出結果と熱検出素子30の検出結果を加算し、この加算結果を火災判定回路36で比較判断して火災か否か判定するようにしたことを特徴とする。
【0067】
即ち、半導体煙検出素子1の検出信号をC1、熱検出素子30の検出信号をC2とすると、加算回路35は
C=C1+C2
を求めて火災判定回路36に出力し、火災判定回路36は加算信号Cが所定の閾値THを越えた時、あるいは加算信号Cの単位時間当たりの変化量が所定の閾値を越えたとき、火災と判断し、発報出力回路4を作動して火災受信機に対し発報信号を出力する。
【0068】
また加算回路35で加算する半導体煙検出素子1及び熱検出素子30からの検出信号C1,C2としては、検出値のみならず、検出値の微分で得られる単位時間当たりの変化率同士の加算でもよいし、検出信号C1,C2のいずれか一方が検出値、他方が変化率の加算であってもよい。
【0069】
また、煙熱複合センサを構成する場合に、同一基板上に、チップ化して煙検出素子及び熱検出素子の全部又は一部を実装配置したり、1つのエレメントパッケージ内に煙検出素子及び熱検出素子を収納することで、センサ自体を更に小型化することができる。
【0070】
図17は、図1の半導体煙検出素子の温度補償の他の実施形態であり、図2の実施形態では、半導体煙検出素子1の感応体(金属酸化物半導体)6に対し直列に温度補償回路7として温度補償抵抗を接続して温度補償を行っていたが、この実施形態では、煙判定回路2で温度補償を行う。
【0071】
半導体煙検出素子1の感応体6と分圧抵抗R1により分圧された検出電圧は、煙判定回路2の比較器38のプラス入力端子に入力される。比較器38のマイナス入力端子には、抵抗R2と抵抗R3により分圧された基準電圧が加えられている。検出電圧が基準電圧を越えると、比較器38は発報出力回路4へ比較信号を出力する。
【0072】
抵抗R2と並列には温度補償回路を構成するサーミスタRthが接続される。このサーミスタRthは、金属酸化物半導体を用いた感応体6と同じ温度特性を持つ。この実施形態にあっても、温度補償回路を構成するものは、サーミスタ以外にもダイオード等が適用できる。
【0073】
尚、上記の実施形態は、半導体煙検出素子で検出された抵抗比Ro/Rsまたは抵抗値Rsが所定の閾値を越えたとき、あるいはその変化率が所定の閾値を越えたとき、火災受信機に対し発報信号を送出するいわゆるオン、オフ型の煙センサを例にとるものであったが、半導体煙検出素子1からの抵抗比Ro/Rs又は抵抗値Rsを示すアナログ信号から火災を判断するいわゆるアナログ煙センサとしてもよい。
【0074】
このアナログ煙センサにあっては、火災受信機からの呼出しに対し検出したアナログ信号を火災受信機に送って火災を判断してもよいし、センサ側に設けたCPU等の火災判断回路でアナログ検出信号から火災を判断し、判断結果を火災受信機に送るようにしてもよい。
【0075】
また、商用電源や電池の電源供給により単独で動作し、火災判定時内蔵するブザー等の音響機器で警報したり、LED等の表示機器で表示したりするよう構成しても良い。
【0076】
【発明の効果】
以上説明してきたように本発明によれば、半導体煙検出素子を用いて火災による煙に応じた検出信号から火災を判断するようにしたことで、従来の散乱光式煙感知器のような光学的な煙検出構造を持たないことから、水蒸気が流入しても検出信号が得られず、調理場等に設置した場合にも非火災報を確実に防止できる。
【0077】
また、煙検出のための素子が半導体煙検出素子であり、検出素子は極めて小さなチップ部品となり、更に従来の散乱光式煙感知器のような外部からの光を遮ると同時に煙を流入させる暗箱が不要となり、煙感知器とした場合に大幅な小型化が可能である。
【0078】
また半導体煙検出素子単体として用いた本発明の煙センサにあっては、燻焼火災で発生する煙に対し良好な検出感度が得られ、着炎火災に至る火災の燻焼段階で確実に火災を早期に発見して警報することができる。
【0079】
また発煙火災に対し検出感度が補償される熱検出素子と組み合わせた複合型とすることで、燻焼火災、着炎火災の全ての火災種別に対し十分な検出感度を持ったセンサを実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明による煙センサの実施形態のブロック図
【図2】図1の半導体煙検出素子の回路図
【図3】図1の半導体煙検出素子の構造説明図
【図4】図3の感応体の実施形態の説明図
【図5】図3の感応体の他の実施形態の説明図
【図6】図2の半導体煙検出素子の煙濃度に対する抵抗比Ro/Rsの特性図
【図7】図2の半導体煙検出素子の水素、COガス、アルコールに対する抵抗比Ro/Rsの特性図
【図8】本発明の煙センサのIS0火災試験のクラスTF1〜TF6に対する検出結果の説明図
【図9】従来の散乱光式煙感知器のIS0火災試験のクラスTF1〜TF6に対する検出結果の説明図
【図10】水蒸気に対する本発明の煙センサと従来の散乱光式煙感知器の検出結果の説明図
【図11】アルコールに対する本発明の煙センサの検出結果の説明図
【図12】図1の煙判定回路による火災判定の説明図
【図13】半導体煙検出素子に熱検出素子を組み合わせた煙熱複合センサのブロック図
【図14】図13の熱検出素子の回路図
【図15】図13の煙熱複合センサと従来の散乱光式煙感知器のIS0火災試験のクラスTF1〜TF6における検出性能の説明図
【図16】半導体煙検出素子に熱検出素子を組み合わせた煙熱複合センサの他の実施形態のブロック図
【図17】煙判定回路で温度補償を行う図1の半導体煙検出素子の温度補償の他の実施形態の回路図
【符号の説明】
1:半導体煙検出素子
2:煙判定回路
3:定電圧回路
4:発報出力回路
5:素子本体
6:感応体
7:温度補償回路
8:ヒータコイル
9:ヒータ電流調整抵抗
10a,10b,10c,10d:端子
11:ベース
12:ピン
13:カバー
19,20:金属酸化物半導体
15,16:電極
17,18:リード線
21,22:電極
23,24:リード
25:ヒータ
26,27:ヒータリード
28:絶縁性基板
30:熱検出素子
31:熱判定回路
32:サーミスタ
35:加算回路
36:火災判定回路
38:比較器

Claims (15)

  1. 所定温度に加熱された金属酸化物半導体に火災による煙が接触した際の抵抗値の変化に応じた検出信号を出力する半導体煙検出素子と、
    前記半導体煙検出素子による前記煙に含まれた水素の検出信号から燻焼火災に相当する煙濃度を判断して火災を判定する煙判定部と、
    を備えたことを特徴とする煙センサ。
  2. 請求項記載の煙センサに於いて、前記煙判定部は、予め設定された燻焼火災の煙濃度に対応する前記半導体検出素子の検出信号の閾値に基づいて火災を判定することを特徴とする煙センサ。
  3. 請求項記載の煙センサに於いて、前記半導体検出素子の検出信号の閾値は、水素による前記半導体検出素子の検出信号と燻焼火災の煙濃度との相関に基づいて定めることを特徴とする煙センサ。
  4. 請求項記載の煙センサに於いて、前記半導体検出素子の検出信号の閾値は、前記半導体検出素子が水素以外のガスに感度を有さない煙濃度領域に設けることを特徴とする煙センサ。
  5. 請求項1記載の煙センサに於いて、前記半導体煙検出素子は、火災の煙に対する検出感度の選択性が高くなるように、前記金属酸化物半導体の加熱温度及び直列接続した検出レンジを決める抵抗の抵抗値を設定したことを特徴とする煙センサ。
  6. 請求項1記載の煙センサに於いて、前記半導体煙検出素子は、燻焼火災時の煙に対する検出感度の選択性が高くなるように、前記金属酸化物半導体の加熱温度及び直列接続した検出レンジを決める抵抗の抵抗値を設定したことを特徴とする煙センサ。
  7. 請求項1記載の煙センサに於いて、前記半導体煙検出素子は、煙濃度0[%/m]の時の抵抗値をRo、煙接触時の抵抗値をRsとした場合、煙濃度3[%/m]乃至15[%/m]の範囲で抵抗比Ro/Rsが10乃至100程度の範囲で変化するように、前記金属酸化物半導体の加熱温度及び直列接続した検出レンジを決める抵抗の抵抗値を設定したことを特徴とする煙センサ。
  8. 請求項1記載の煙センサに於いて、前記半導体煙検出素子は、煙濃度3[%/m]乃至15[%/m]の範囲で、水素に対する検出感度の選択性が高く、COガス、アルコール、水蒸気等の水素以外に対する検出感度の選択性が低くなるように、前記金属酸化物半導体の加熱温度及び直列接続した検出レンジを決める抵抗の抵抗値を設定したことを特徴とする煙センサ。
  9. 請求項記載の煙センサに於いて、前記半導体煙検出素子は、煙濃度10[%/m]付近より低い煙渡度で水素のみに検出感度の選択性をもつように、前記金属酸化物半導体の加熱温度及び直列接続した検出レンジを決める抵抗の抵抗値を設定したことを特徴とする煙センサ。
  10. 請求項1記載の煙センサに於いて、前記煙判定部は、前記半導体煙検出素子の煙濃度0[%/m]の時の抵抗値をRo、煙接触時の抵抗値をRsとした場合、抵抗比Ro/Rsまたは抵抗値Rsが所定の煙濃度に対応した所定閾値を越えた時に火災と判定することを特徴とする煙センサ。
  11. 請求項1記載の煙センサに於いて、前記煙判定部は、前記半導体煙検出素子の煙濃度0[%/m]の時の抵抗値をRo、煙接触時の抵抗値をRsとした場合、抵抗比Ro/Rsまたは抵抗値Rsの単位時間当りの変化率が所定の閾値を越えた時に火災と判定することを特徴とする煙センサ。
  12. 請求項1記載の煙センサに於いて、前記金属酸化物半導体の温度補償を行う温度補償回路を備えたことを特徴とする煙センサ。
  13. 所定温度に加熱された金属酸化物半導体に火災による煙が接触した際の抵抗値の変化に応じた検出信号を出力する半導体煙検出素子と、
    火災による熱の変化に応じた検出信号を出力する熱検出素子と、
    前記半導体煙検出素子による前記煙に含まれた水素の検出信号から燻焼火災に相当する煙濃度を判断して火災を判断する煙判定部と、
    前記熱検出素子の検出信号に基づいて火災を判定する熱判定部と、
    を設けたことを特徴とする熱複合煙センサ。
  14. 請求項13記載の煙熱複合センサに於いて、前記煙判定部又は熱判定部のいずれか一方による火災判定出力が得られた時に火災検出信号を送出することを特徴とする煙熱複合センサ。
  15. 請求項13記載の煙熱複合センサに於いて、前記半導体煙検出素子の検出信号と前記熱検出素子の検出信号を加算し出力する加算部と、前記加算部から出力される加算信号が所定の閾値を越えた時、または加算信号の単位時間当りの変化率が所定の閾値を越えた時に火災と判定する火災判定部とを設けたことを特徴とする煙熱複合センサ。
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