JP3761142B2 - 火災感知器 - Google Patents
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Description
【産業上の利用分野】
本発明は、火災に基づき発生する一酸化炭素および煙を検出することにより火災と判別する火災感知器に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来の火災感知器としては、検出原理が火災による炎が放出する熱、煙または放射光を対象とするものが広く用いられている。このような要素の内、放射光は炎が起こってから発生し、さらに炎による熱気流が大きくならないと熱を検出することができないのに対して、煙はそれらよりも早い段階で発生することとされている。さらに、火災の初期段階において発生する要素として、焦げ臭も注目されている。しかし、焦げ臭は、他の排ガス等に含まれる窒素酸化物の出力を排除する必要があり、さらに、燃焼物の材質により異なるとともに、発炎状態では減少し、火災の成長後には検出しづらいという不具合もある。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
そのため、従来から実用されている熱感知器、煙感知器および炎感知器の個別の火災判別以外に、これらを一体的に複合させたいわゆるマルチセンサというタイプの火災感知器が提案されている。このような複合判別においては、従来から実用されている技術の流れから熱および煙の複合型が広く用いられている。このような複合的な火災判別は、それぞれの誤報要因を排除でき火災判別の信頼性を確保する上では有効であるが、熱の出力変化は上記の如く煙の発生に比べて遅く、初期火災を効率よく報知するには不利である。また、炎も煙に比べて遅いことから、これらとは別な一般的には利用されていなくとも煙に劣らない火災の初期に発生する要素を利用して、火災を確実に把握することを検討する必要がある。
【0004】
火災の初期に発生するものとして、燃焼生成物としてのCO(一酸化炭素)が知られている。このCOは、炎が完全燃焼でない限り発生し続けるとともに、火災において完全燃焼は起こり得ない。
【0005】
本発明は、COを利用して火災を早期に判別することを可能とすることを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
上記の点に鑑み、本発明は、火災に基づく物理量の変化を検出する検出部と、該検出部からの検出出力に基づいて火災情報を得る処理部と、該処理部からの火災情報を信号出力する出力部と、を有する火災感知器において、前記検出部は、火災に基づく一酸化炭素を検出する一酸化炭素検出素子と煙を検出する煙検出素子とを備えるとともに、前記処理部は、前記検出部からの一酸化炭素検出出力および煙検出出力に基づいて演算される一酸化炭素検出出力および煙検出出力の積が所定の判別レベルを超えるときに火災と判別するものであって、かつ、一酸化炭素検出出力または煙検出出力の一方のみが誤報源によって単独で上昇する場合として設定される異常警報レベルを超えるとともに他方が変化していないととらえる最低レベルを超えないときに、異常報知を行うものであって、前記判別レベルは、一酸化炭素検出出力または煙検出出力の一方のみで火災を判別するレベルよりも低いレベルの一酸化炭素検出出力および煙検出出力の積であり、かつ、一方のみが誤報源によって単独で上昇する場合として設定される異常警報レベルは、前記一方のみで火災を判別するレベルよりも高いレベルであることを特徴とするものである。
【0008】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の一実施形態について説明する。図1は、本発明を利用する煙とCO(一酸化炭素)を複合させた火災感知器の概略構成を示し、また、図2は、図1に用いられるCO検出素子の概略を回路的に示したものである。図1において、1は2つの端子を無極性化するダイオードブリッジ、2はダイオードブリッジ1を介して2つの端子に供給される電源電圧から所定の電圧を出力する定電圧回路、3はCO検出素子4および煙検出素子6からの出力に基づいて火災を判別する判別回路、5は判別回路3からの火災出力に基づいてインピーダンス変化を伴うスイッチング動作を行う出力回路である。ダイオードブリッジ1に接続される2つの端子には、図示しない火災受信機からの信号線が接続され、出力回路5のスイッチング動作は、ダイオードブリッジ1を介して2つの端子間、すなわち信号線間を略短絡状態とし、図示しない火災受信機は、信号線間の短絡状態を検出することで火災感知器からの火災信号を受信することになる。
【0009】
煙検出素子6は、LED等の発光素子61を備えた発光回路62と、発光回路62に瞬時に大きな発光電流を供給するための充電回路63と、発光素子61からの発光に基づき煙粒子による乱反射光を受光するフォトダイオード等の受光素子64を備えた受光回路65と、受光回路65の受光出力を増幅する増幅回路66と、からなり、いわゆる光電式の煙検出部の構成をとっている。この受光素子64には、発光素子61の発光時にのみ出力を生じ、発光素子61は、判別回路3から充電回路63への起動信号による放電によって発光する。
【0010】
図2は、図1に示されるCO検出素子4である。COガスに応答する作用極41と対極42の双方を電解質43に密封し、ガルバニ電池式の構造をとっている。詳細に示さないが、合成樹脂製のホルダ内に、窓にガス透過性隔膜を介して作用極41が配置され、多孔質のテフロン樹脂(撥水性)に白金等を電極として焼き付けたガス透過性隔膜によって、作用極41に、選択的に拡散してきたCOガスを酸化し、これに対して対極42では還元反応が行われる。このとき作用極41および対極42間に電池電流が発生し、その電流はCO濃度に比例する。なお、44および45はオペアンプ、46は増幅抵抗、47は出力端子である。
【0011】
このようなCO検出素子4は、電極および感ガス材料の消耗という避けられない点があるが、常温作動型、外部からの電圧印加が不要という点から、製作並びに使用が容易であり、改善により長期の使用が可能となっている。
【0012】
そして、図1のような火災感知器を監視区域の天井面等の設置面に設けておく。そして、火災が発生すると、火災の燃焼によってCOが発生し、発生したCOは煙とともに熱気流などに基づいて拡散し、設置された火災感知器に到達することになる。
【0013】
このような火災感知器を利用する処理動作を表すフローチャートについて、図3に示す。なお、この処理動作は、図1における判別回路3に格納され、詳細に示さないマイコン等によって実行される。
【0014】
図3において、火災感知器が電源投入等によって起動されると、まず、立ち上がり時の初期処理を行って(S1)、煙およびCOのサンプリング動作を行う(S2、S3)。このサンプリング動作では、煙検出素子6および図2に示されるようなCO検出素子4の出力をAD変換等行ってデジタル的な煙検出値DsおよびCO検出値Dcとして取り込む。
【0015】
つぎに、これらを用いて火災判別を行うため、検出値Ds、Dcの積を演算して火災判別値Sとの比較を行う(S4)。ここで、この火災判別値Sの設定について説明すると、一般的に火災の初期状態を検出するには煙濃度5%/m(減光率換算、以降、単に%で表す)程度であり、この煙濃度5%発生時のCO濃度を発明者が鋭意実験を重ねて検討したところ、一般的に15ppm程度と設定される。このCO濃度のレベルは、実験から煙のレベルにほぼ比例して発生し、レベルが上昇することが判明した。しかし、所定の煙のレベルに対するCOのレベルは、燃焼物によって異なるとともに燃焼状態によっても変化することが判明した。その結果から火災の特徴を鑑み上記レベルを決定しており、木材、衣類、紙等、燃焼物にはセルロース系が多く、それらの燃焼の初期状態を想定している。さらに、これまでは検出要素が単一の場合の初期火災を判別するレベルであり、煙およびCOの双方を検出して複合的に判別する場合には、火災の確度が向上するので、単一の場合よりもレベルの低いときの組合せで火災とすることができる。そこで、この実施形態での火災判別値Sとしては、煙3%とCO10ppmとの検出時として、その積30(表面上の数値)を設定することができる。
【0016】
この火災判別値Sは、詳細に示さないがマイコンに固定的に格納されていてよいが、書換可能とされてよく、図示しない受信機からの命令や図示しない設定器を用いて火災判別値S自体やその調整値を書き込むようにしてもよい。これによって、火災感知器の設置状況等、現場に応じた設定を行うことができる。そして、例えば火災判別値S=30と設定するときに、煙3%でCO10ppmの組合せ以外に、煙1%でCO30ppm、煙10%でCO3ppmのような検出値Ds、Dcの積が30となるときに火災と判断されることになる。したがって、それらの発生比率が想定と異なっても、早期検出が可能である。
【0017】
また、この動作には組み込まないが、煙またはCO、いずれかのレベルが単独で上昇するときには、何等かの警報を発するべきであるが、通常煙10%またはCO15ppm程度で火災警報を行うことから、単独でそのレベルを超えるときにも同様の火災警報を行ってもよい。しかし、一方のみが上昇して他方は変化しない場合には、その一方の要素の誤報源による上昇とも考えられる。その点からは、一方として煙が20%またはCOが50ppmを越えるにも係わらず他方が上昇しない場合には、何等かの環境異常として異常警報を行うことが好ましい。このような、異常警報レベルを設定する場合に、他方が変化していないととらえるレベルについては、火災判別値S=30を鑑み、CO1.5ppm未満または煙0.6%未満の場合とすべきである。
【0018】
そして、ステップS4において検出値Ds、Dcの積が火災判別値Sを越えない場合には、所定時間tの待ち時間を経て(S8)、ステップS2のサンプリング動作に戻る。したがって、火災の発生していない通常状態では、ステップS2、S3、S4、S6までの動作を繰り返している状態となる。この所定時間tは火災検出の妨げとならず間欠的に処理動作を行うタイミングとして、例えば3秒に設定されるが、蓄積動作等がなければ1秒等短く、また、蓄積時間との対比で5秒から10秒程度であってもよい。
【0019】
ステップS4において、検出値Ds、Dcの積が火災判別値Sを越える場合に、火災判別値Sを越える場合を数えるための回数cに1を加えて(S9)、その回数cが所定の蓄積時間となる定数Cに達したかどうかを判別する(S10)。この回数cが定数Cに達していないと、上昇傾向を判別するため、図示しない書換可能なメモリに検出値Ds、Dcを前回の検出値Bs、Bcとして格納した後(S11、S12)、待ち時間(S8)に移る。
【0020】
この所定の蓄積時間のための定数Cは、ステップS8の待ち時間の所定時間tとの関係で蓄積時間を設定しており、例えば5回とすることによって蓄積時間は3秒×5回の15秒ということになる。通常、蓄積時間は約10秒から60秒以下とされている。
【0021】
火災発生時には、この回数cが積み重ねられ、5回を数えると回数cは定数Cに達し(S10)、その場合には、検出値Ds、Dcの上昇傾向にあることを確認する。すなわち、現在の検出値Ds、Dcがその前回の検出値Bs、Bcを越えている場合に、煙およびCOが上昇していると判別する(S13、S14)。すなわち、火災発生時には、火災が成長するので前回の検出値よりも現在の検出値が大きくなる。例えば火災に至らない炎によって煙やCOのレベルが上昇するときに、その誤報源が排除されるとそれらのレベルは低下する。このように、一旦上昇したレベルが減少傾向にあるときには火災と判断しないことを目的としている。したがって、このステップS13、S14において、検出値Ds、Dcが上昇傾向にないときには、待ち時間(S6)に移る。ここで、上昇傾向は、検出値Ds、Dcの積を格納して比較してもよいことはもちろんである。なお、回数cは前回の検出値Bs、Bcとともに、ステップS4のNOにより、クリアされることになる(S5、S6、S7)。
【0022】
ステップS13、S14において、検出値Ds、Dcが上昇傾向にあるときには、火災と判断して火災出力を行い(S15)、図1の出力回路5にスイッチング動作を行わせる。そして、火災と判断した場合には火災感知器は出力状態を維持し、とくに動作は行わない。なお、システムに応じて、図示しない受信機からの要望により何等かの動作を行うようにしてもよい。
【0023】
このような火災判別において、蓄積動作は、必ずしも連続的に火災と判断できる状況が続く必要がなく、蓄積状態をクリアする判別を設定するなど、継続的な火災判別が行われていればよく、また、上昇傾向についても、前回のサンプリングからのレベル上昇でなくとも、全体的なレベル上昇や起点のレベルに対する傾向など火災の成長か縮小かを区別できればよい。それ以外の各種動作においても、図3では全体として概略的に示しているが、細かく表現しても同様の処理が行えればよく、また、付加的に設定動作や点検動作などが含まれても、差し障りはない。
【0024】
上記実施形態では、判別回路3からの火災出力に基づいて出力回路5がスイッチング動作のよって図示しない火災受信機に火災信号を出力するようにしているが、いわゆる信号伝送を行うシステムの場合、出力回路5はスイッチング動作ではなく、コード信号による火災信号を伝送出力することになる。また、出力回路5において音響鳴動を行ってもよく、その場合、設置区域にいる人に火災に対する注意を即座に喚起することができる。さらに、音響や音声以外に、火災灯などを用いた発光表示や文字情報等のディスプレイ表示などであってもよく、これを組み合わせてよいことはもちろんである。
【0025】
また、上記実施形態の火災感知器において、判別回路3が検出値Ds、Dcの積をレベル化して出力回路5からアナログ値として出力させ、図示しない火災受信機がそのアナログ値を受信するときに、受信機において上記のような火災判別を行って、システム全体で火災感知器を構成してもよい。上記ガルバニ電池式のCO検出素子4を用いる場合にはCO濃度と検出出力との関係が直線的であり、アナログレベルとしては利用しやすい。なお、上記実施形態にガルバニ電池式以外の金属酸化物半導体素子、光学式素子または電気化学式(定電位電解)素子のいずれかであってもよく、たとえば金属酸化物半導体素子を用いる場合には、CO濃度と検出出力との関係は直線性を示さないので、補正処理を必要とし、さらには、NOx等の干渉ガスの影響を防止する手段、選択性の付与などが必要になる。
【0026】
以上のように、本発明は、火災に基づく物理量の変化を検出する検出部と、該検出部からの検出出力に基づいて火災情報を得る処理部(判別回路3)と、該処理部からの火災情報を信号出力する出力部(出力回路5)と、を有する火災感知器において、前記検出部は、火災に基づく一酸化炭素を検出する一酸化炭素検出素子(CO検出素子4)と煙を検出する煙検出素子6とを備えるとともに、前記処理部は、前記検出部からの一酸化炭素検出出力および煙検出出力に基づいて演算される一酸化炭素検出出力および煙検出出力の積が所定の判別レベルを超えるときに火災と判別するものであって、かつ、一酸化炭素検出出力または煙検出出力の一方のみが誤報源によって単独で上昇する場合として設定される異常警報レベルを超えるとともに他方が変化していないととらえる最低レベルを超えないときに、異常報知を行うものであって、前記判別レベルは、一酸化炭素検出出力または煙検出出力の一方のみで火災を判別するレベルよりも低いレベルの一酸化炭素検出出力および煙検出出力の積であり、かつ、一方のみが誤報源によって単独で上昇する場合として設定される異常警報レベルは、前記一方のみで火災を判別するレベルよりも高いレベルであるので、煙または一酸化炭素を単一に検出する場合に比べて、火災の初期状態を迅速に検出するとともに、湯気や埃による誤報を発生しない火災判別が可能であり、さらに、一方が高いレベルを超えるとともに、他方のレベルが変化しないときに何らかの環境異常として異常報知を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明を利用した一実施形態を示す概略図。
【図2】図1のCO検出素子を示す概略図。
【図3】図1の動作を示すフローチャート。
【符号の説明】
3 判別回路
4 CO検出素子
5 出力回路
6 煙検出素子
Claims (1)
- 火災に基づく物理量の変化を検出する検出部と、該検出部からの検出出力に基づいて火災情報を得る処理部と、該処理部からの火災情報を信号出力する出力部と、を有する火災感知器において、
前記検出部は、火災に基づく一酸化炭素を検出する一酸化炭素検出素子と煙を検出する煙検出素子とを備えるとともに、前記処理部は、前記検出部からの一酸化炭素検出出力および煙検出出力に基づいて演算される一酸化炭素検出出力および煙検出出力の積が所定の判別レベルを超えるときに火災と判別するものであって、かつ、一酸化炭素検出出力または煙検出出力の一方のみが誤報源によって単独で上昇する場合として設定される異常警報レベルを超えるとともに他方が変化していないととらえる最低レベルを超えないときに、異常報知を行うものであって、
前記判別レベルは、一酸化炭素検出出力または煙検出出力の一方のみで火災を判別するレベルよりも低いレベルの一酸化炭素検出出力および煙検出出力の積であり、かつ、一方のみが誤報源によって単独で上昇する場合として設定される異常警報レベルは、前記一方のみで火災を判別するレベルよりも高いレベルであることを特徴とする火災感知器。
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