発明の実施の形態1.
以下、本発明に従う第一の実施の形態について詳説する。図1は、本発明に従う光ピックアップの一例を示したものである。概説すると、3波長レーザ100は、HD−DVD用の光源(波長λ=405nm)、DVD用の光源(λ=655nm)、CD用の光源(λ=790nm)を備える。3波長レーザ100から出射されたレーザ光101は、それぞれ一定の発散角を有する発散光であり、偏光ビームスプリッタ102を通過して、コリメータレンズ103によって略平行光に変換される。その平行光が本発明の特徴であるレンズモジュール104に供給されて、光ディスク109の情報記録面に回折限界近くまで集光される。光ディスク109の情報記録面で反射されたレーザビームはさらにレンズモジュール104を通じて偏光ビームスプリッタ102に供給されて、偏光ビームスプリッタ102によって反射された後、検出器110によって光電変換される。光ディスク装置は、この光電変換によって得られる電気信号に基づいてフォーカスサーボ信号、トラックサーボ信号、及び再生信号などを生成する。なお、HD−DVD用、DVD用、CD用の光ディスクの透明基板厚は、それぞれ0.6mm、0.6mm、1.2mmである。
次に、本発明の特徴であるレンズモジュール104について詳細に説明する。本実施の形態で示したレンズモジュール104は、制限開口105と、位相補償板106と、1/4波長板107と、集光レンズ108からなる。フォーカスサーボ時、及びトラッキングサーボ時には、レンズモジュール104が一体となって図示されないアクチュエータにより動作する。
制限開口105は、従来から用いられている素子であり、レンズモジュール104の実効開口数を決定する。すなわち、光ディスク109がHD−DVDである場合は、レンズモジュール104の実効開口数が約0.65となるように制限開口105が動作し、光ディスク109がDVDである場合は、レンズモジュール104の実効開口数が約0.60となるように制限開口105が動作し、光ディスク109がCDである場合は、レンズモジュール104の実効開口数が約0.44となるように制限開口105が動作する。制限開口105としては、例えば特開平9−54977公報記載の波長選択フィルタを用いればよい。
位相補償板106は、集光レンズ108により低減しきれない波面収差成分を低減するように補償するものであり、本実施の形態においては光ディスクがCDである場合のみその動作をするような素子である。その詳細は後述する。
1/4波長板107は、レーザ光の直線偏光を円偏光に変換するための素子である。 集光レンズ108は、レーザビームを光ディスク109の情報記録面に集光する役割を果たす素子であり、図2に示したようにその片面は不連続な非球面形状を有する。この不連続な非球面形状は、HD−DVDとDVDの記録あるいは再生時の波面収差を極力抑えるように決定される。その具体的な決定法については、先に出願されている特開2004−127510公報に記載されている。
図8、図9、図10は、図1中に示したレンズモジュール104とディスク109のレンズデータであり、図8はHD−DVD、図9はDVD、図10はCDの場合に相当する。本実施の形態の位相補償板106としては、後で述べるように液晶収差補正素子を用いるので、その材質はガラス相当とした。なお、集光レンズ108の材質はプラスチック相当とし、ディスク109の透明基板はポリカーボネイト(PC)とした。これら材質の波長ごとの屈折率は、図8、図9、図10に示したとおりである。また、「AIR」とは面と面との間が空気で満たされていることを意味する。
図1に示したようにレンズモジュール104には1/4波長板107をも含むが、1/4波長板107は、単に光の偏光面を操作する機能のみを有する平板素子であり、レンズモジュール104を構成する他の光学素子の面形状を決定するにあたって影響を及ぼすものではないため、図8、図9、図10の各レンズデータにおいては簡便のためにその記載を省略した。
図11、図12、図13は、集光レンズ108の非球面形状を数式で表現したものである。一般的に、図29に表した座標系において、レンズの非球面の形状は、いわゆるサグzの表現で下記数1のように表される。なお、c=1/Rである。
この数1のパラメータを用いて、集光レンズ108の物体側の面を表記すると、図11、図12、図13で示したようになる。すなわち、図2に示したように集光レンズ108の物体側の面は不連続な非球面形状を有するので、その不連続な非球面形状を構成する領域ごとにその非球面形状が表記される。図11、図12、図13中の「領域の範囲」とは各領域において数1で表される非球面形状が有効なレンズ半径(単位はmm)を表す。また、図11、図12、図13中の「B」は光軸上のサグ量(単位はmm)を表す。連続な非球面形状からなる像側の面は図13で表される。なお、図11、図12、図13で表される各パラメータの値はHD−DVDとDVDの記録あるいは再生時の波面収差を極力小さく抑えるように決定された結果である。
図11、図12、図13に示すように、集光レンズ108の物体側の面は10個の輪帯状の領域からなり、光軸を含む領域からレンズ外側方向へ数えて7番目までの領域は、HD−DVDとDVDの記録再生時において共に使用する領域であることから、以下、HD−DVD/DVD共通使用領域と呼び、また8番目から10番目までの領域は、HD−DVDでのみ使用する領域であることから、以下、HD−DVD専用使用領域と呼ぶことにする。
図14には、図11、図12、図13に示した各非球面部において、第1区間の概略の光路長を基準とした時にHD−DVD/DVD共通使用領域とHD−DVD専用使用領域に相当する第2〜10区間の概略光路長が、それぞれ概略で波長λの何倍ずれているかが示されている。
図14よりわかるように、第2〜10区間が波長405nmのHD−DVDに対しては2mλの差、波長655nmのDVD及び波長790nmのCDに対してはmλの差(mは整数)となっている。これは、短い方の波長λ1が380〜430nmの間に、長い方の波長λ2が波長630〜680nmの間にあり、λ3が波長790nm付近にあるので、上記した概略光路長の差の関係を満足しやすいためである。
不連続な非球面形状の最適化を行った場合のHD−DVDの波面収差分布の計算結果を図3に、DVDにおける波面収差分布の計算結果を図4に示す。図3と図4は共に情報記録面上で生じている波面収差を光線追跡により集光レンズ108の瞳面での波面収差に換算したものであり、横軸は集光レンズの半径で規格化した集光レンズの規格化半径を示す。HD−DVDにおける波面収差のrms値は0.034、DVDにおける波面収差のrms値は0.035となり、いずれの場合も光ディスクの情報記録面に回折限界近くまでレーザビームを集光することができる。
一方で、CDの波面収差分布の同様の計算結果は図5の実線に示したようになる。かかる波面収差のrms値は0.177であり、HD−DVDとDVDの場合と比べると格段に大きく、CDの場合にはディスクの情報記録面に回折限界近くまでレーザビームを集光することができない。これは、集光レンズ108の不連続な非球面形状が、あくまでもHD−DVDとDVDの記録あるいは再生時の波面収差を極力抑えるように決定されたに過ぎず、CDの波面収差に関してはなんら考慮されていないからである。しかしながら、集光レンズ108の面形状によって波面収差を制御できる波長の数は最大2個までであり、2種類以上の波長に対して波面収差を低減するためにはさらに別な手段を用いる必要がある。なお、図5の実線で示した波面収差分布が不連続点を含むのは、集光レンズ108の片面にHD−DVDとDVDの記録あるいは再生時の波面収差を極力抑えるための不連続な非球面形状があるためである。
位相補償板106は、CDの記録あるいは再生時に集光レンズ108により低減しきれない図5の実線で示した波面収差成分を低減する役割を果たす。すなわち位相補償板106は、その透過するレーザビームに図5中の破線で示した位相差と逆符号の位相差を与え、結果として図7に示したような波面収差となるような動作をする。以下、位相補償板106の動作について説明する。
位相補償板106の例を図2に示した。位相補償板106は複数の同心円状の位相補正要素からなり、各位相補正要素ではそれぞれレーザビームに与える位相差量が異なる。図2に示したように同心円状の位相補正要素を位相補償板106の中心のほうからp1、p2、・・・、pnとし、その各外延をb1、b2、・・・、bnとすると、本実施の形態では、各位相補正要素で与える位相差を、p1=0λ、p2=−0.12λ、p3=−0.24λ、p4=−0.36λ、p5=−0.48λ、p6=−0.36λ、p7=−0.24λ、p8=−0.12λ、p9=0λとした場合、各位相補正要素の外延は、CDの記録あるいは再生時における制限開口105の半径で規格化した規格化半径でいうと、b1=0.204、b2=0.262、b3=0.363、b4=0.507、b5=0.549、b6=0.601、b7=0.651、b8=0.674、b9=1となる(図5、図6参照)。
図7は、CDの記録あるいは再生時に集光レンズ108により低減しきれない図5の実線で示した波面収差成分を位相補償板106を用いて低減した場合の波面収差の計算結果を示す。補償前の波面収差のrms値が0.177であったのに対して、補償後の波面収差のrms値が0.040であり、大幅に改善されているのがわかる。今回、各位相補正要素で与える位相差を、−0.12λの倍数としたが、例えば−0.10λの倍数とすれば、さらに波面収差のrms値を低減することが可能である。ただし、位相補償板106をさらに多くの各位相補正要素で構成しなければならない。さらには、今回、各位相補正要素で与える位相差を、ある値の倍数としたが、必ずしも各位相補正要素で与える位相差をある値の倍数にしなければならないわけではない。例えば、各位相補正要素の外延b1、b2、・・・、bnを集光レンズ108の不連続点a1、a2、・・・、am(図2参照)と極力一致しないように設定する方法もある。かかる場合、位相補償板106と、集光レンズ108との位置ずれに対しても許容度が増す点で有利である。
また、位相補償板106は、光ディスクがCDの場合のみ、上記位相差を発生するものでなければならない。HD−DVDとDVDについては、集光レンズ108の不連続な非球面形状によって波面収差が小さくなるように設計されているからであって、かかる場合、位相補償板106は逆に波面収差を増大させてしまう。したがって、位相補償板106は機械的に光路中に抜き差しできるか、または電気的に動作させるかさせないかを制御できるものでなければならない。この後者の例としては、特開平10−269611公報記載の液晶収差補正素子を用いればよい。
なお、集光レンズ108に1つの波長に対してのみ波面収差を低減させるような作用を持たせ、他の2つの波長について低減しきれない波面収差については、2つの波長各々について波面収差を補償するように最適化された上記位相補償板106を2つ用いる方法も考えられる。しかし、位相補償板は有限の透過率を有するので、2つ用いた場合には、1つを用いる場合よりも透過率の面で不利となる。
発明の実施の形態2.
以下、本発明に従う第二の実施の形態について詳説する。第一の実施の形態では、位相補償板として機械的に光路中に抜き差しできるか、または電気的に動作させるかさせないかを制御できる素子が必要であり、その例として液晶補償板を位相補償板として用いている。一方、本第二の実施の形態では、位相補償板を機械的に光路中に抜き差ししたり、あるいは電気的な動作制御をする必要はなく、また、第一の実施の形態に比べて本発明のレンズモジュールの構成が非常に簡単になるという特徴を有する。
図15は、本発明に従う光ピックアップの一例を示したものである。概説すると、3波長レーザ100は、HD−DVD用の光源(波長λ=405nm)、DVD用の光源(λ=655nm)、CD用の光源(λ=790nm)を備える。3波長レーザ100から出射されたレーザ光101は、それぞれ一定の発散角を有する発散光であり、偏光ビームスプリッタ102を通過して、コリメータレンズ103によって略平行光に変換される。その平行光は、1/4波長板125によってレーザ光101の直線偏光が円偏光となるようにされた後、本発明の特徴であるレンズモジュール120に供給されて、光ディスク109の情報記録面に回折限界近くまで集光される。光ディスク109の情報記録面で反射されたレーザビームはさらにレンズモジュール120を通じて、1/4波長板125によって光の偏光が円偏光から入射光の偏光面に対して90度回転した直線偏光となるようにされる。その後、偏光ビームスプリッタ102に供給されて、偏光ビームスプリッタ102によって反射された後、検出器110によって光電変換される。光ディスク装置は、この光電変換によって得られる電気信号に基づいてフォーカスサーボ信号、トラックサーボ信号、及び再生信号などを生成する。なお、HD−DVD用、DVD用、CD用の光ディスクの透明基板厚は、それぞれ0.6mm、0.6mm、1.2mmである。
次に、本発明の特徴であるレンズモジュール120について詳細に説明する。本実施の形態で示したレンズモジュール120は、制限開口121と、位相補償板122と、集光レンズ123からなる。フォーカスサーボ時、及びトラッキングサーボ時には、レンズモジュール120が一体となって図示されないアクチュエータにより動作する。
なお、第一の実施の形態と異なり、1/4波長板125はレンズモジュール120には含まれない。これは、第一の実施の形態で位相補償板106として用いた液晶収差補正素子は偏光特性を有するがゆえに1/4波長板107を位相補償板106の後段に配置する必要があるのに対して、第二の実施の形態で位相補償板122として用いる素子は、偏光特性を有さず、1/4波長板125の光路上の配置位置は位相補償板122では制限されない。一方、レンズモジュール120は一体となって図示されないアクチュエータにより動作するため、レンズモジュール120は小型かつ軽量のほうが、フォーカスサーボ、及びトラッキングサーボの特性が向上する。そのため、第二の実施の形態では、1/4波長板125は、レンズモジュール120の外で、かつレンズモジュール120よりも前段に配置し、第一の実施の形態に比べてレンズモジュール120の構成の簡素化も図っている。
制限開口121は、レンズモジュール104の実効開口数NAを決定する。ただし、第一の実施の形態と異なり、制限開口121は、その開口が可動ではなく固定の物を用い、その開口径は、光ディスク109がHD−DVDである場合の実効開口数NA=約0.65となるように定められる。具体的には、開口径=2×NA×レンズ焦点距離の関係から、レンズ焦点距離=3.102mmであるから、制限開口121の開口径=4.032mmとなる。
一方、光ディスク109がDVDである場合、あるいはCDである場合には、第一の実施の形態で述べたように、一般的には各々所定の開口径に変える必要があるから、その開口制御の手法が問題となる。この問題を解決するために、まず光ディスク109がDVDである場合には、レンズモジュール120の実効開口数NAが約0.629となるように設計する。そうすると、レンズ焦点距離=3.205mmとの関係で、HD−DVDで必要となる制限開口121の開口径=4.032mmと同じとなる。したがって、開口径=4.032mmである固定開口の制限開口121をHD−DVDとDVDとで併用できるので、DVDである場合には開口制御は問題とならない。一方、光ディスク109がCDである場合は、後で詳説する位相補償板122にCD用の開口制限の機能をも併せ持たせ、この開口制御の問題を解決する。CDの場合の開口制御については位相補償板122の説明で詳しく述べる。
位相補償板122は、集光レンズ123により低減しきれないCDの波面収差成分を低減するように補償するものであり、本実施の形態では、第一の実施の形態とは異なり位相補償板122を機械的に光路中に抜き差ししたり、あるいは電気的な動作制御をする必要はなく、光ディスク109がHD−DVD、DVD、CDのいずれであっても、光路中に固定して据え置いて用いればよい。ここでは概略を述べるにとどめ、その詳細はCDの場合の開口制御と共に後述する。
集光レンズ123は、レーザビームを光ディスク109の情報記録面に集光する役割を果たす素子であり、図28に示したようにその片面は不連続な非球面形状を有する。この不連続な非球面形状は、HD−DVDとDVDの記録あるいは再生時の波面収差を極力小さく抑えるように決定される。
図20、図21、図22は、図15中に示したレンズモジュール120とディスク109のレンズデータであり、図20はHD−DVD、図21はDVD、図22はCDの場合に相当する。本実施の形態における位相補償板122の材質はプラスチック相当とし、集光レンズ123の材質はプラスチック相当とし、ディスク109の透明基板はポリカーボネイト(PC)とした。これら材質の波長ごとの屈折率は、図20、図21、図22に示したとおりである。また、「AIR」とは面と面との間が空気で満たされていることを意味する。
図23、図24、図25は、集光レンズ123の非球面形状を数式で表現したものである。数1のパラメータを用いて、集光レンズ123の物体側の面を表記すると、図23、図24、図25で示したようになる。すなわち、図28に示したように集光レンズ123の物体側の面は不連続な非球面形状を有するので、その不連続な非球面形状を構成する領域ごとにその非球面形状が表記される。図23、図24、図25中の「領域の範囲」とは各領域において数1で表される非球面形状が有効なレンズ半径(単位はmm)を表す。また、図23、図24、図25中の「B」は光軸上のサグ量(単位はmm)を表す。連続な非球面形状からなる像側の面は図25で表される。なお、図23、図24、図25で表される各パラメータの値はHD−DVDとDVDの記録あるいは再生時の波面収差を極力小さく抑えるように決定された結果である。
図23、図24、図25に示すように、集光レンズ123の物体側の面は9個の輪帯状の領域からなり、第二の実施の形態では、すべての領域は、HD−DVDとDVDの記録再生時において共に使用する領域であることから、全てHD−DVD/DVD共通使用領域となる。
図26には、図23、図24、図25に示した各非球面部において、第1区間の概略の光路長を基準とした時にHD−DVD/DVD共通使用領域に相当する第2〜9区間の概略光路長が、それぞれ概略で波長λの何倍ずれているかが示されている。
図26よりわかるように、第2〜9区間が波長405nmのHD−DVDに対しては2mλの差、波長655nmのDVD及び波長790nmのCDに対してはmλの差(mは整数)となっている。これは、短い方の波長λ1が380〜430nmの間に、長い方の波長λ2が波長630〜680nmの間にあり、λ3が波長790nm付近にあるので、上記した概略光路長の差の関係を満足しやすいためである。
位相補償板122は、図28に示したように光軸を中心とする輪帯構造を有し、各輪帯ごとで光に与える位相差が異なることを特徴とする。この効果は、輪帯ごとに光軸方向へのそれぞれ異なった深さDを与えて、階段状の輪帯構造を位相補償板122に設けることにより実現できる。ただし、λ1=405nmの波長光を基準光とし、その基準光に対応する位相補償板122の材料の屈折率n1との関係に基づいて、輪帯深さDは、D=α×λ1/(n1−1)の式を満足するように定める。前式中のαは整数である。これは、λ1=405nmの基準光が、ある輪帯を通過する場合としない場合とで、実質的な波面の位相がずれないように輪帯深さDを設定するものである。即ち、この式を満足する位相補償板122は、HD−DVDの波長光に対して不感となる。
さらに、深さDにより生じるDVDの波長λ2での位相差Δφ2は、φ2=D/λ2、φ2'=n2・D/λ2としたとき、次の通り表わすことができる。
Δφ2=φ2−φ2'
=(n2−1)D/λ2
=α(λ1/λ2)(n2−1)/(n1−1)
このΔφ2の値が整数に近くなるようにαを選ぶと、位相補償板122はDVDの波長光に対して不感に近い状態になる。
また、深さDにより生じるCDの波長λ3での位相差Δφ3は、次の通り表わすことができる。
Δφ3=φ3−φ3'
=(n3−1)D/λ3
=α(λ1/λ3)(n3−1)/(n1−1)
このとき、CDの波長光に対しては、位相差は位相補償板122で補償することができるため、Δφ3は整数近くである必要はなく、経験上次式を満たすことが望まれる。
Δφ3≦0.20
これらの条件をそれぞれ満足するように、パラメータ値を変えて計算を繰り返し、最適な値を求める。本実施の形態では、整数αは、10の倍数、即ち10、20、30・・・がこれらの条件を満足することが確認された。
さらに深さDは、λ2=655nmの波長とその対応する位相補償板122の材料の屈折率n2との関係から、λ2=655nmの波長の光が、ある輪帯を通過する場合としない場合とで、できるだけ波面の位相がずれないように設定される。
上記条件下、本実施の形態においては、整数αは、10の倍数となるように設定した。なお、整数αは、前記λ1、n1、λ2、n2の関係によって決まる値であるから、使用する光源の波長やレンズ材料等によっては必ずしも10の倍数に限るものではなく、また、本実施の形態においても、10の倍数以外にも例えば20の倍数とすることもできる。なお、深さDは、λ2=655nmの波長を基準光として設定してもよい。
本実施の形態においては、整数αは、10の倍数から選択することになるが、各輪帯ごとの具体的な整数αの値は、上記条件を満たす範囲で、最終的に、上記集光レンズ123に対してCDで用いる波長λ3=790nmのレーザ光を平行光で入射させた場合に、CDの記録あるいは再生時の波面収差を極力小さく抑えるように決定される。
なお、上述の例では、D=α×λ1/(n1−1)の式において、αを整数としたが、これに限らない。図47、図48は、それぞれαが10と20の場合において、α=10、20を中心としてその前後の値としたときに位相ずれの値をプロットしたものである。図47に示されるように、α=10の場合に位相ずれ(Errorλn)の値が0.1未満であることを条件とすると、αの値が9.9〜10.1がこの条件を満足することがわかった。また、図48に示されるように、α=20の場合に位相ずれ(Errorλn)の値が0.1未満であることを条件とすると、αの値が19.94〜20.1がこの条件を満足することがわかった。概ねαの値は整数値±10%であれば、位相ずれを所望の範囲内に抑制できる。
図27は、上記手法によって最適化された位相補償板122の構造を示す図である。輪帯数は18であり、各輪帯の深さDは、図27に示すとおりである。ただし、位相補償板122は、図27に示すように、光軸を含む輪帯から数えて17番目までの輪帯まで(b17=1.5162mm)で、CDの記録あるいは再生時の波面収差を極力小さく抑えるようにし、その外側の18番目の輪帯においては、CDの記録あるいは再生時の波面収差があえて大きくなるようにその面形状と輪帯の深さDを定める。18番目の輪帯は、CDの記録あるいは再生時の開口制限の機能を持たせるためである。本実施の形態においては、18番目の輪帯のDを0とした。なお、位相補償板122の各輪帯を構成する面は、光軸に対して垂直な平面とした。
以上のように最適化された図15の光学系において、HD−DVDの波面収差分布の計算結果を図16に、DVDにおける波面収差分布の計算結果を図17に示す。図16と図17は共に情報記録面上で生じている波面収差を光線追跡により集光レンズ123の瞳面での波面収差に換算したものであり、横軸は集光レンズの半径で規格化した集光レンズの規格化半径を示す。HD−DVDにおける波面収差のrms値は0.036、DVDにおける波面収差のrms値は0.034となり、いずれの場合も光ディスクの情報記録面に回折限界近くまでレーザビームを集光することができる。
図19は、CDにおける瞳面での波面収差分布の計算結果を示す。一方、図18は、17番目の輪帯に相当する部分までを抜き出した、CDにおける瞳面での波面収差分布の計算結果を示す。図18と図19から位相補償板122の17番目の輪帯に相当する範囲内では、おおむね良好な波面収差特性を示しているが、一番外側の18番目の輪帯に相当する範囲では波面収差が大きくなっていることがわかる。これは、先に述べたように位相補償板122は、図27に示すように、光軸を含む輪帯から数えて17番目までの輪帯までで、CDの記録あるいは再生時の波面収差を極力抑えるように設計されるのに対して、その外側の18番目の輪帯の設計においては、CDの記録あるいは再生時の波面収差が大きくなるようにその面形状と深さDを定めたからである。この場合、波面収差が大きくなる18番目の輪帯に相当する領域を通過したCDで用いる波長λ3=790nmのレーザ光は、その収差が大きいために、いわゆるフレア光となって拡散するので、光ディスク109の情報記録面に回折限界近くまで集光されない。一方、光軸を含む輪帯から数えて17番目までの輪帯までを通過したCDで用いる波長λ3=790nmのレーザ光は、その収差が十分小さいので、光ディスク109の情報記録面に回折限界近くまで集光される。
具体的には、図18に基づいて、ディスク109上にスポットを形成するのに寄与する17番目の輪帯(b17=1.5162mm、図28参照)に相当する部分までの波面収差を計算すると、そのrms値は0.031となる。すなわちCDにおいては、位相補償板122の一番外側の18番目の輪帯は開口制限の役割を果たし、1から17番目の輪帯を通過した光によって光ディスクの情報記録面に回折限界近くまでレーザビームを集光することができる。かかる場合、CD実効開口径=2×b17=3.032mmとレンズ焦点距離=3.226mmの関係から、CDのNAは0.47となる。
このように、位相補償板122の一番外側の18番目の輪帯はCDのときには開口制限の役割を果たすことがわかる。
一方、位相補償板122の輪帯構造は、18番目の輪帯をも含め、λ1=405nmの波長の光については、位相補償板122の輪帯構造により位相差が生じないように、またλ2=655nmの波長の光については、位相補償板122の輪帯構造によりできるだけ位相差が生じないように最適化されていることは、先に述べたとおりである。そのため、λ1=405nmの波長の光、及びλ2=655nmの波長の光において、位相補償板122をそのまま用いたとしても、HD−DVDやCDの記録あるいは再生時の波面収差を顕著に増大させるものではない。
具体的には、HD−DVDの波面収差分布の計算結果は図16に、DVDにおける波面収差分布の計算結果は図17に示すが、これらの結果は、位相補償板122をも含めた結果であり、集光レンズ123の瞳面の全面で十分に小さい波面収差値が得られていることを示すものである。
すなわち、一番外側の18番目の輪帯も含め位相補償板122の全ての輪帯は、λ1=405nmの波長の光、及びλ2=655nmの波長の光に対して開口制限のような働きをせず、位相補償板122の一番外側の輪帯は、CDのときにのみ開口制限の役割を果たすことになる。
なお、CDのときにのみ開口制限として機能する位相補償板122の一番外側の輪帯については、そのフレア特性を向上させるために、複数の輪帯で構成してもよい。
このように、第二の実施の形態に従えば、(1)各ディスクに対応した可変開口を用いる必要はなく、(2)位相補償板についても、それを機械的に光路中に抜き差ししたり、あるいは電気的な動作制御をする必要はなく、(3)1/4波長板は静的な位相板よりも前段に配置できるのでレンズモジュールと一体化する必要はなく、第一の実施の形態に比べて本発明のレンズモジュールの構成が非常に簡単になるといった利点を有する。
なお、上記第一の実施の形態及び第二の実施の形態は、超高密度記録対応の光ディスクとしてHD−DVDを考慮したものであるが、ブルーレイを考えた場合でも、同様に設計することにより実現することができる。ただし、かかる場合は、必要とする実効開口数の関係から集光レンズ上にブルーレイ専用使用領域が必ず存在するため、ブルーレイ専用使用領域にDVDの開口制限機能を持たせることが有効である。この場合、第二の実施の形態で述べたように位相補償板にCDの開口制限機能を持たせることにより、可変の制限開口を用いる必要がなくなるからである。なお、専用使用領域にDVDの開口制限機能を設ける手法については、DVDの波長のみフレア光として拡散させる作用を持つ構造を設けるなど、従来の設計手法に従って実現可能である。
発明の実施の形態3.
以下、本発明に従う第三の実施の形態について詳説する。上記第一及び第二の実施の形態においては、集光レンズの物体側の面は不連続な非球面形状を有していた。これは、前述したようにHD−DVDとDVDの記録あるいは再生時の波面収差を極力小さく抑える目的で設けられた形状である。一方、本第三の実施の形態における集光レンズの物体側と像側の面は、連続な非球面形状を有しており、位相補償板の片面にHD−DVDとDVDの記録あるいは再生時の波面収差を極力小さく抑える目的で不連続な非球面形状を設け、もう一方の面には、CDの記録あるいは再生時の波面収差を極力小さく抑える目的で、光軸を中心とする輪帯構造を設け、各輪帯ごとで光に与える位相差が異なるようにする。
本第三の実施の形態は、集光レンズの面に不連続な非球面形状を形成することが困難な場合において特に有効である。例えば、ブルーレイの記録あるいは再生においては、位相補償板と集光レンズからなるレンズモジュールの実効開口数は、約0.85程度の値を必要とする。かかる場合、レンズ曲率の観点などから、集光レンズの材質にはできるだけ屈折率の大きい材料を用いることが望ましく、ガラス系の材料が好適である。しかし、ガラス系の材料は屈折率は大きいが、融点が一般的に600度以上と高いため、その温度に耐えうるレンズ成型の金型として、金型表面に微細構造を刻むことが難しい超硬の金型を必要とする。すなわち、屈折率の大きいガラス系の材料をレンズの材質として用いる場合には、集光レンズの面に不連続な非球面形状を形成することが困難となる。
そこで、本第三の実施の形態では、ブルーレイの記録あるいは再生において、不連続な非球面形状を形成することが困難なガラスレンズを用いる場合について説明する。
図15は、本発明に従う光ピックアップの一例を示したものである。概説すると、3波長レーザ100は、ブルーレイ用の光源(波長λ=405nm)、DVD用の光源(λ=655nm)、CD用の光源(λ=790nm)を備える。3波長レーザ100から出射されたレーザ光101は、それぞれ一定の発散角を有する発散光であり、偏光ビームスプリッタ102を通過して、コリメータレンズ103によって略平行光に変換される。その平行光は、1/4波長板125によってレーザ光101の直線偏光が円偏光となるようにされた後、本発明の特徴であるレンズモジュール120に供給されて、光ディスク109の情報記録面に回折限界近くまで集光される。光ディスク109の情報記録面で反射されたレーザビームはさらにレンズモジュール120を通じて、1/4波長板125によって光の偏光が円偏光から入射光の偏光面に対して90度回転した直線偏光となるようにされる。その後、偏光ビームスプリッタ102に供給されて、偏光ビームスプリッタ102によって反射された後、検出器110によって光電変換される。光ディスク装置は、この光電変換によって得られる電気信号に基づいてフォーカスサーボ信号、トラックサーボ信号、及び再生信号などを生成する。なお、ブルーレイ用、DVD用、CD用の光ディスクの透明基板厚は、それぞれ0.1mm、0.6mm、1.2mmである。
次に、本発明の特徴であるレンズモジュール120について詳細に説明する。本実施の形態で示したレンズモジュール120は、制限開口121と、位相補償板122と、集光レンズ123からなる。フォーカスサーボ時、及びトラッキングサーボ時には、レンズモジュール120が一体となって図示されないアクチュエータにより動作する。
なお、第一の実施の形態と異なり、1/4波長板125がレンズモジュール120には含まれないことは、第二の実施の形態と同様である。これは、第三の実施の形態で位相補償板122として用いる素子は、第二の実施の形態と同様に偏光特性を有さず、1/4波長板125の光路上の配置位置は位相補償板122では制限されないからである。これにより、第一の実施の形態に比べてレンズモジュール120の構成の簡素化も図れる。
制限開口121は、レンズモジュール104の実効開口数NAを決定する。ただし、第一の実施の形態と異なり、制限開口121は、その開口が可動ではなく固定の物を用い、その開口径は、光ディスク109がブルーレイである場合の実効開口数NA=約0.85となるように定められる。具体的には、開口径=2×NA×レンズ焦点距離の関係から、レンズ焦点距離=2.06mmであるから、制限開口121の開口径=3.5mmとなる。
一方、光ディスク109がDVDである場合、あるいはCDである場合には、第一の実施の形態で述べたように、一般的には各々所定の開口径に変える必要があるから、その開口制御の手法が問題となる。この問題を解決するために、位相補償板122にDVD用の開口制限機能とCD用の開口制限の機能を併せ持たせ、この開口制御の問題を解決する。開口制御については位相補償板122の説明で詳しく述べる。
位相補償板122は、ブルーレイ、DVD、CDの波面収差成分を低減するように補償するものであり、本実施の形態では、第一の実施の形態とは異なり位相補償板122を機械的に光路中に抜き差ししたり、あるいは電気的な動作制御をする必要はなく、光ディスク109がブルーレイ、DVD、CDのいずれであっても、光路中に固定して据え置いて用いればよい。ここでは概略を述べるにとどめ、その詳細はDVDとCDの場合の開口制御と共に後述する。
集光レンズ123は、レーザビームを光ディスク109の情報記録面に集光する役割を果たす素子であり、図46に示したようにその両面は連続な非球面形状を有する。
図34、図35、図36は、図15中に示したレンズモジュール120とディスク109のレンズデータであり、図34はブルーレイ、図35はDVD、図36はCDの場合に相当する。本実施の形態における位相補償板122の材質はプラスチック相当とし、集光レンズ108の材質はガラス相当とし、ディスク109の透明基板はポリカーボネイト(PC)とした。これら材質の波長ごとの屈折率は、図34、図35、図36に示したとおりである。また、「AIR」とは面と面との間が空気で満たされていることを意味する。なお、ブルーレイ用の光ディスクの透明基板厚は、2層記録媒体を考慮して0.0875mmとした。
図37、図38、図39、図40、図41、図42は、位相補償板122の非球面形状を数式で表現したものである。数1のパラメータを用いて、位相補償板122の物体側の面を表記すると、図37、図38、図39、図40、図41、図42で示したようになる。位相補償板122の物体側の面は31個の輪帯状の領域からなり、第三の実施の形態では、図42で表される最外周の輪帯領域のみブルーレイ専用使用領域となり、その内側の図37、図38、図39、図40、図41で表される領域は、ブルーレイとDVDの記録再生時において共に使用する領域であることから、ブルーレイ/DVD共通使用領域となる。図46に示したように位相補償板122の物体側の面は不連続な非球面形状を有するので、その不連続な非球面形状を構成する領域ごとにその非球面形状が表記される。図37、図38、図39、図40、図41、図42中の「領域の範囲」とは各領域において数1で表される非球面形状が有効なレンズ半径(単位はmm)を表す。また、図37、図38、図39、図40、図41、図42中の「B」は光軸上のサグ量(単位はmm)を表す。
図37、図38、図39、図40、図41で表されるブルーレイ/DVD共通使用領域の各パラメータの値はブルーレイとDVDの記録あるいは再生時の波面収差を極力小さく抑えるように決定された結果である。一方、図42で表されるブルーレイ専用使用領域の各パラメータの値は、ブルーレイの記録あるいは再生時の波面収差を極力小さく抑えるように決定された結果であり、DVDやCDの記録あるいは再生時の波面収差があえて大きくなるように設計されている。ブルーレイ専用使用領域の輪帯は、DVDの記録あるいは再生時の開口制限の機能を持たせるためである。
図43には、図37、図38、図39、図40、図41、図42に示した各非球面部において、第1区間の概略の光路長を基準とした時にブルーレイ/DVD共通使用領域及びブルーレイ専用使用領域に相当する第2〜31区間の概略光路長が、それぞれ概略で波長λの何倍ずれているかが示されている。
図43よりわかるように、第2〜31区間が波長405nmのブルーレイに対しては2mλの差、波長655nmのDVD及び波長790nmのCDに対してはmλの差(mは整数)となっている。これは、短い方の波長λ1が380〜430nmの間に、長い方の波長λ2が波長630〜680nmの間にあり、λ3が波長790nm付近にあるので、上記した概略光路長の差の関係を満足しやすいためである。
位相補償板122のもう一方の面は、図46に示したように光軸を中心とする輪帯構造を有し、各輪帯ごとで光に与える位相差が異なることを特徴とする。この効果は、輪帯ごとに光軸方向へのそれぞれ異なった深さDを与えて、階段状の輪帯構造を位相補償板122に設けることにより実現できる。ただし、λ1=405nmの波長光を基準光とし、その基準光に対応する位相補償板122の材料の屈折率n1との関係に基づいて、輪帯深さDは、D=α×λ1/(n1−1)の式を満足するように定める。前式中のαは整数である。これは、λ1=405nmの基準光が、ある輪帯を通過する場合としない場合とで、実質的な波面の位相がずれないように輪帯深さDを設定するものである。
さらに深さDは、λ2=655nmの波長とその対応する位相補償板122の材料の屈折率n2との関係から、λ2=655nmの波長の光が、ある輪帯を通過する場合としない場合とで、できるだけ波面の位相がずれないように設定される。
上記条件下、本実施の形態においては、整数αは、10の倍数となるように設定した。なお、整数αは、前記λ1、n1、λ2、n2の関係によって決まる値であるから、使用する光源の波長やレンズ材料等によっては必ずしも10の倍数に限るものではなく、また、本実施の形態においても、10の倍数以外にも例えば20の倍数とすることもできる。なお、深さDは、λ2=655nmの波長を基準光として設定してもよい。
本実施の形態においては、整数αは、10の倍数から選択することになるが、各輪帯ごとの具体的な整数αの値は、上記条件を満たす範囲で、最終的に、上記集光レンズ123に対してCDで用いる波長λ3=790nmのレーザ光を平行光で入射させた場合に、CDの記録あるいは再生時の波面収差を極力小さく抑えるように決定される。
なお、整数αの決定については、発明の実施の形態2において説明したと同様にして行なうことができ、その説明を省略する。また、αは、発明の実施の形態2において説明したと同様に、整数に限られるものではない。
図44は、上記手法によって最適化された位相補償板122の構造を示す図である。輪帯数は24であり、各輪帯の深さDは、図44に示すとおりである。ただし、位相補償板122は、図44に示すように、光軸を含む輪帯から数えて23番目までの輪帯まで(b17=1.118119mm)で、CDの記録あるいは再生時の波面収差を極力小さく抑えるようにし、その外側の24番目の輪帯においては、CDの記録あるいは再生時の波面収差があえて大きくなるようにその面形状と輪帯の深さDを定める。24番目の輪帯は、CDの記録あるいは再生時の開口制限の機能を持たせるためである。本実施の形態においては、24番目の輪帯のDを0とした。なお、位相補償板122の各輪帯を構成する面は、光軸に対して垂直な平面とした。
図45は、集光レンズ123の非球面形状を数式で表現したものである。先に説明したように、集光レンズ123を構成する面は、連続な非球面形状からなる。
以上のように最適化された図15の光学系において、ブルーレイの波面収差分布の計算結果を図30に、DVDにおける波面収差分布の計算結果を図31に示す。図30と図31は共に情報記録面上で生じている波面収差を光線追跡により集光レンズ123の瞳面での波面収差に換算したものであり、横軸は集光レンズの半径で規格化した集光レンズの規格化半径を示す。ブルーレイにおける波面収差のrms値は0.034、DVDにおける波面収差のrms値は0.036となり、いずれの場合も光ディスクの情報記録面に回折限界近くまでレーザビームを集光することができる。なお、DVDの場合において一番外側のブルーレイ専用使用領域に相当する範囲では波面収差が大きくなっている。これは、前述したようにブルーレイ/DVD共通使用領域はブルーレイとDVDの記録あるいは再生時の波面収差を極力小さく抑えるように決定された結果であるのに対して、ブルーレイ専用使用領域の各パラメータの値は、ブルーレイの記録あるいは再生時の波面収差を極力小さく抑えるが、DVDやCDの記録あるいは再生時の波面収差があえて大きくなるように設計されているからである。ブルーレイ専用使用領域の輪帯は、DVDの記録あるいは再生時の開口制限の機能を持たせるためである。
図33は、CDにおける瞳面での波面収差分布の計算結果を示す。一方、図32は、23番目の輪帯に相当する部分までを抜き出した、CDにおける瞳面での波面収差分布の計算結果を示す。図32と図33から位相補償板122の23番目の輪帯に相当する範囲内では、おおむね良好な波面収差特性を示しているが、一番外側の24番目の輪帯に相当する範囲では波面収差が大きくなっていることがわかる。これは、先に述べたように位相補償板122は、図44に示すように、光軸を含む輪帯から数えて23番目までの輪帯までで、CDの記録あるいは再生時の波面収差を極力抑えるように設計されるのに対して、その外側の24番目の輪帯の設計においては、CDの記録あるいは再生時の波面収差が大きくなるようにその面形状と深さDを定めたからである。この場合、波面収差が大きくなる24番目の輪帯に相当する領域を通過したCDで用いる波長λ3=790nmのレーザ光は、その収差が大きいために、いわゆるフレア光となって拡散するので、光ディスク109の情報記録面に回折限界近くまで集光されない。一方、光軸を含む輪帯から数えて23番目までの輪帯までを通過したCDで用いる波長λ3=790nmのレーザ光は、その収差が十分小さいので、光ディスク109の情報記録面に回折限界近くまで集光される。
具体的には、図32に基づいて、ディスク109上にスポットを形成するのに寄与する23番目の輪帯(b23=1.118119mm、図44参照)に相当する部分までの波面収差を計算すると、そのrms値は0.041となる。すなわちCDにおいては、位相補償板122の一番外側の24番目の輪帯は開口制限の役割を果たし、1から23番目の輪帯を通過した光によって光ディスクの情報記録面に回折限界近くまでレーザビームを集光することができる。かかる場合、CD実効開口径=2b17=2.236mmとレンズ焦点距離=2.29283mmの関係から、CDのNAは0.51となる。
このように、位相補償板122の一番外側の24番目の輪帯はCDのときには開口制限の役割を果たすことがわかる。
一方、位相補償板122の輪帯構造は、24番目の輪帯をも含め、λ1=405nmの波長の光については、位相補償板122の輪帯構造により位相差が生じないように、またλ2=655nmの波長の光については、位相補償板122の輪帯構造によりできるだけ位相差が生じないように最適化されていることは、先に述べたとおりである。そのため、λ1=405nmの波長の光、及びλ2=655nmの波長の光において、位相補償板122をそのまま用いたとしても、ブルーレイやCDの記録あるいは再生時の波面収差を顕著に増大させるものではない。
具体的には、ブルーレイの波面収差分布の計算結果は図30に、DVDにおける波面収差分布の計算結果は図31に示すが、これらの結果は、位相補償板122をも含めた結果であり、集光レンズ123の瞳面の全面で十分に小さい波面収差値が得られていることを示すものである。
すなわち、一番外側の24番目の輪帯も含め位相補償板122の全ての輪帯は、λ1=405nmの波長の光、及びλ2=655nmの波長の光に対して開口制限のような働きをせず、位相補償板122の一番外側の輪帯は、CDのときにのみ開口制限の役割を果たすことになる。
なお、CDのときにのみ開口制限として機能する位相補償板122の一番外側の輪帯については、そのフレア特性を向上させるために、複数の輪帯で構成してもよい。
このように、第三の実施の形態に従えば、(1)各ディスクに対応した可変開口を用いる必要はなく、(2)位相補償板についても、それを機械的に光路中に抜き差ししたり、あるいは電気的な動作制御をする必要はなく、(3)1/4波長板は静的な位相板よりも前段に配置できるのでレンズモジュールと一体化する必要はなく、第一の実施の形態に比べて本発明のレンズモジュールの構成が非常に簡単になるといった利点を有し、かつ集光レンズに不連続な形状を形成する必要がないので、集光レンズの材質として高い屈折率を有するガラス系の材料を用いることができる点に特徴を有する。
なお、図46に示した位相補償板122では、一枚の位相補償板の両面のそれぞれに、不連続な非球面形状と輪帯構造を設けるようにしたが、2枚の位相補償板の一方の位相補償板に不連続な非球面形状を設け、他方の位相補償板に輪帯構造を設けるようにしてもよい。