JP4062742B6 - 対物レンズ、光ピックアップ装置、及び記録・再生装置 - Google Patents

対物レンズ、光ピックアップ装置、及び記録・再生装置 Download PDF

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本発明は、規格(記録密度)の異なる3種類の光情報記録媒体について情報の記録及び再生の少なくとも一方を行うことのできる光ピックアップ装置、この光ピックアップ装置に用いることのできる対物レンズ、及びこの光ピックアップ装置を用いた記録・再生装置に関するものである。
従来、光ディスクは、CD(コンパクトディスク)またはDVD(デジタルバーサタイルディスク)で知られているように、音楽情報、映像情報の蓄積またはコンピューターデータの保存といった、デジタルデータの保存に広く使われている。そのような中で、近年、情報化社会の到来とともに、これらの光ディスクの大容量化が強く求められている。
光ディスクにおいて、単位面積あたりの記録容量(記録密度)を向上するためには、光ピックアップ光学系から得られるスポット径を小さくすることで実現できる。このスポットの最小径は、周知のように、λ/NA(ただし、λは光源の波長、NAは光学系の開口数)に比例するので、スポット径を小さくするためには、光ピックアップ装置で使用される光源の短波長化、及び光学系において光情報記録媒体に対向して配置される対物レンズの高開口数化が有効である。
このうち、光源の短波長化に関しては、波長400nm程度の光を発生する青紫色半導体レーザやSHG青紫色レーザの研究が進展を見せており実用化が近いといえる。この短波長光源を使用すると、DVDと同じNA0.65の対物レンズを使用した場合でも、DVDと同じ直径l2cmの光ディスクに対して、15GB程度の情報の記録が可能となる。
また、対物レンズの高開口数化に関しては、2つのレンズを組み合わせることで、NA0.85の高開口数化を実現する対物レンズの研究が進んでいる。上述の短波長光源とNA0.85の高開口数対物レンズを組み合わせて使用することで、直径12cmの光ディスクに対して、25GB程度の情報の記録が可能となり、より一層の高密度化が達成できる。
このような背景のもと、DVDをより高密度化した光ディスク(以下、本明細書では、「高密度DVD」、と呼ぶ。)を記録/再生するための光ピックアップシステムの研究開発が進んでいるが、この光ピックアップシステムにおいては、高密度DVD及びDVD及びCDといった規格(記録密度)の異なる3種類の光ディスクをコンパチブルに記録/再生することが求められる。
コンパチビィリティーを達成する手段として、それぞれの光ディスクの規格に対応した対物レンズを機械的に切り替えたり、それぞれの光ディスクの規格に対応した光ピックアップ装置を搭載することが考えられるが、この場合、対物レンズの切替機構や複数の光ピックアップ装置が必要となるので、光ピックアップシステムの大型化、部品点数の増大、製造コストの上昇等が招来される。従って、DVD及びCDとのコンパチビィリティーが求められる高密度DVD用の光ピックアップシステムにおいて、光ピックアップシステムの小型化、部品点数の削減、コストダウンを図る上で、もっとも好ましいのは、規格の異なる3種類の光ディスクに対して、共通の対物レンズを用いて記録/再生を行うようにすることであるといえる。
ここで、規格の異なる3種類の光ディスクに対して、共通の対物レンズを用いて記録/再生を行う光ピックアップシステムを実現するにあたっての課題を以下に述べる。
CDを記録/再生する場合の、対物レンズとCDとの距離(作動距離)の確保
これは、対物レンズの開口数をDVD(NA0.6乃至0.65)よりも更に高めることによって顕在化する課題である。高密度DVDにおいて、対物レンズが高開口数化された場合には、保護基板(透明基板あるいは保護層ともいう)厚さがDVDと同じ0.6mmのままでは、光ディスクのスキュー(傾きや反り)によって発生するコマ収差が大きくなるので、保護基板厚さを0.6mmよりも小さくして、光ディスクのスキューに対するマージンを確保する必要がある。このような高密度DVD用の高開口数対物レンズとして、2枚のレンズから構成された対物レンズが特開平10−123410号公報に記載されている。
ところが、2群構成の対物レンズは、従来の1群構成の対物レンズに比べて、作動距離が短くなるので、CDを記録/再生する場合の十分な作動距離を確保することが非常に困難となる。CDはNA0.45乃至0.5と、高密度DVDやDVDに比べて開口数が小さいために、保護基板厚さの製造誤差に対する公差がそれほど厳しくないので保護基板厚さの個体差によるばらつきが大きい。従って、CDと対物レンズとの衝突によるデータの破損を防ぐためには、CDを記録/再生する場合の作動距離を十分確保しておく必要があり、この観点から、規格の異なる3種類の光ディスクに対して、共通の対物レンズを用いて記録/再生を行う光ピックアップシステムにおいては、2群構成の対物レンズは好ましくないといえる。
特開2001−195769公報
特開平10−123410号公報
そこで、本発明は、上述の各課題を解決し、高密度DVD、DVD、CDの規格の異なる3種類の光ディスクの相互互換を共通の対物レンズを使用して達成する光ピックアップ装置であって、CDの作動距離が十分に確保された光ピックアップ装置を提案することを目的とする。
また、上述の光ピックアップ装置に用いることのできる対物レンズを提供することを目的とする。更に、上述の光ピックアップ装置を用いて3種類の規格の異なる光情報記録媒体について情報の記録及び/または再生を行うことのできる記録・再生装置を提供することを目的とする。
上記目的を達成するために、本発明による対物レンズは、波長λ1の第1光源からの第1光束を用いて厚さt1の第1保護基板を有する第1光情報記録媒体に対する情報の再生及び/または記録を行い、波長λ2(λ1<λ2)の第2光源からの第2光束を用いて厚さt2(t2>t1)の第2保護基板を有する第2光情報記録媒体に対する情報の再生及び/または記録を行い、波長λ3(λ2<λ3)の第3光源からの第3光束を用いて厚さt3(t3>t2)の第3保護基板を有する第3光情報記録媒体に対する情報の再生及び/または記録を行い、かつ、前記第1光情報記録媒体乃至前記第3光情報記録媒体に対する情報の再生及び/または記録について、共通の対物レンズを用いる光ピックアップ装置用の対物レンズであって、前記対物レンズは単レンズであって、前記対物レンズの入射瞳面を、光軸近傍から外側に向かって順に、第1光束領域、第2光束領域、第3光束領域、の輪帯状の3つの光束領域に分割したとき、前記第1光束領域に入射した前記第1乃至第3光束は、それぞれ前記第1乃至第3光情報記録媒体の各情報記録面上に回折限界内となる状態で集光し、かつ、前記第2光束領域に入射した前記第1及び第2光束は、それぞれ前記第1及び第2光情報記録媒体の各情報記録面上に回折限界内となる状態で集光するが、前記第2光束領域に入射した前記第3光束は、前記第3光情報記録媒体の情報記録面上での集光に寄与せず、かつ、前記第3光束領域に入射した前記第1光束は、前記第1光情報記録媒体の情報記録面上に回折限界内となる状態で集光するが、前記第3光束領域に入射した前記第2及び第3光束は、それぞれ前記第2及び3光情報記録媒体の各情報記録面上での集光に寄与せず、次式を満たすことを特徴とする。
0.7<d/f1<1.5
2.8<F1<5.8
fB3>0.2
但し、f1(mm)は、前記波長λ1における前記対物レンズの焦点距離を表し、d(mm)は、前記対物レンズの中心厚さを表し、F1(mm)は、前記対物レンズに入射する前記波長λ1の前記第1光束の径を表し、fB3(mm)は、前記第光情報記録媒体に対する情報の再生及び/または記録を行う場合の作動距離を表す。
この対物レンズによれば、3つの光領域を有し3種類の異なる光情報記録媒体について情報の記録及び/または再生を行う光ピックアップ装置であって、CDの作動距離が十分に確保された光ピックアップ装置に適用できる対物レンズを提供できる。
また、これにより、第2光情報記録媒体及び第3光情報記録媒体に対する情報の再生、及び/または、記録を行う場合に、各情報記録媒体上での集光スポットの大きさが必要以上に小さくなりすぎないので、ディスクスキューで発生するコマ収差を小さくすることができ、十分なディスクスキューマージンを得ることができる。また、必要開口数以上の領域を通過した、集光に寄与しない不要光を光検出器が検出するのを防ぐことができるので、良好なフォーカシング特性やトラッキング特性を得ることができる。
また、簡易な構造で、自動的に開口切替えを行うことができるので、特別な開口切替手段を設ける必要がなく、コスト上有利である。
また、前記第1光束を用いて、前記第1光情報記録媒体に対する情報の再生及び/または記録を行う際の前記対物レンズの所定の像側開口数をNA1、前記第2光束を用いて、前記第2光情報記録媒体に対する情報の再生及び/または記録を行う際の前記対物レンズの所定の像側開口数をNA2(NA2<NA1)、前記第3光束を用いて、前記第3光情報記録媒体に対する情報の再生及び/または記録を行う際の前記対物レンズの所定の像側開口数をNA3(NA3<NA2)、とするとき、次式を満たすことが好ましい。
NA2=N2・SINθ2
NA3=N3・SINθ3
ただし、
SINθ2:前記第2光束領域の最周辺を通過した前記第2光束のマージナル光線の、前記対物レンズ最終面からの、光軸を基準として測った出射角θ2(deg)の絶対値の正弦
SINθ3:前記第1光束領域の最周辺を通過した前記第3光束のマージナル光線の、前記対物レンズ最終面からの、光軸を基準として測った出射角θ3(deg)の絶対値の正弦
N2:前記対物レンズの像側空間の前記波長λ2における屈折率
N3:前記対物レンズの像側空間の前記波長λ3における屈折率
この場合、前記第1乃至第3光領域のうち、少なくとも1つの光領域には、同心円状の複数の輪帯からなる回折構造が形成されることが好ましい。
また、前記第i光領域に形成された前記回折構造に、前記第1光束が入射した場合に発生する前記第1光束の回折光のうち、最大の回折光量を有する回折光の回折次数をni1、前記第i光領域に形成された前記回折構造に、前記第2光束が入射した場合に発生する前記第2光束の回折光のうち、最大の回折光量を有する回折光の回折次数をni2、としたとき、次式を満たすことが好ましい。
|ni1|>|ni2|(ただし、iは、1または2または3)
この場合、前記第i光領域に形成された前記回折構造に、前記第1光束が入射した場合に発生する前記第1光束の回折光のうち、最大の回折光量を有する回折光の回折次数をni1、前記第i光領域に形成された前記回折構造に、前記第3光束が入射した場合に発生する前記第2光束の回折光のうち、最大の回折光量を有する回折光の回折次数をni3、としたとき、次式を満たすことが好ましい。
|ni1|>|ni3|(ただし、iは、1または2または3)
また、前記第2及び第3光領域には、それぞれ同心円状の複数の輪帯からなる回折構造が形成され、前記第2光領域に形成された前記回折構造に、前記第1光束が入射した場合に発生する前記第1光束の回折光のうち、最大の回折光量を有する回折光の回折次数をn21、前記第3光領域に形成された前記回折構造に、前記第1光束が入射した場合に発生する前記第1光束の回折光のうち、最大の回折光量を有する回折光の回折次数をn31、としたとき、次式を満たすことが好ましい。
|n31|>|n21|
この場合、前記第2光領域に形成された前記回折構造は、前記回折次数n21と波長λB2で最適化され、かつ、前記第3光領域に形成された前記回折構造は、前記回折次数n31と波長λB3で最適化され、次式を満たすことが好ましい。
λB2≠λB3
また、上述の回折構造が形成された対物レンズにおいて次式を満たすことが好ましい。340nm<λB<440nm
但し、λBは、前記対物レンズの前記回折構造のブレーズ化波長を表す
また、上述の対物レンズは次式を満たすことが好ましい。
380nm<λ1<420nm
630nm<λ2<670nm
760nm<λ3<800nm
前記対物レンズはプラスチック材料から形成されるか、または、ガラス材料か
ら形成される。
また、本発明によるもう1つの対物レンズは、波長λ1の第1光源からの第1光束を用いて厚さt1の第1保護基板を有する第1光情報記録媒体に対する情報の再生及び/または記録を行い、波長λ2(λ1<λ2)の第2光源からの第2光束を用いて厚さt2(t2>t1)の第2保護基板を有する第2光情報記録媒体に対する情報の再生及び/または記録を行い、波長λ3(λ2<λ3)の第3光源からの第3光束を用いて厚さt3(t3>t2)の第3保護基板を有する第3光情報記録媒体に対する情報の再生及び/または記録を行い、かつ、前記第1光情報記録媒体乃至前記第3光情報記録媒体に対する情報の再生及び/または記録について、共通の対物レンズを用いる光ピックアップ装置用の対物レンズであって、前記対物レンズは単レンズであって、前記対物レンズの入射瞳面を、光軸近傍から外側に向かって順に、第1光束領域、第2光束領域、第3光束領域、の輪帯状の3つの光束領域に分割したとき、前記第1光束領域に入射した前記第1乃至第3光束は、それぞれ前記第1乃至第3光情報記録媒体の各情報記録面上に回折限界内となる状態で集光し、かつ、前記第2光束領域に入射した前記第1及び第2光束は、それぞれ前記第1及び第2光情報記録媒体の各情報記録面上に回折限界内となる状態で集光するが、前記第2光束領域に入射した前記第3光束は、前記第3光情報記録媒体の情報記録面上での集光に寄与せず、かつ、前記第3光束領域に入射した前記第1光束は、前記第1光情報記録媒体の情報記録面上に回折限界内となる状態で集光するが、前記第3光束領域に入射した前記第2及び第3光束は、それぞれ前記第2及び第3光情報記録媒体の各情報記録面上での集光に寄与せず、次式を満たすことを特徴とする。
0.7<d/f1<1.5
2.8<F1<5.8
但し、f1(mm)は、前記波長λ1における前記対物レンズの焦点距離を表し、d(mm)は、前記対物レンズの中心厚さを表し、F1(mm)は、前記対物レンズに入射する前記波長λ1の前記第1光束の径を表す。
また、本発明による光ピックアップ装置は、波長λ1の第1光源からの第1光束を用いて厚さt1の第1保護基板を有する第1光情報記録媒体に対する情報の再生及び/または記録を行い、波長λ2(λ1<λ2)の第2光源からの第2光束を用いて厚さt2(t2>t1)の第2保護基板を有する第2光情報記録媒体に対する情報の再生及び/または記録を行い、波長λ3(λ2<λ3)の第3光源からの第3光束を用いて厚さt3(t3>t2)の第3保護基板を有する第3光情報記録媒体に対する情報の再生及び/または記録を行い、かつ、前記第1光情報記録媒体乃至前記第3光情報記録媒体に対する情報の再生及び/または記録について、共通の対物レンズを用いる光ピックアップ装置であって、上述の対物レンズを備えたことを特徴とする。
上述の光ピックアップ装置において次式を満たすことが好ましい。
m3<0
但し、m3は、前記第3光情報記録媒体に対する情報の再生及び/または記録を行う場合の前記対物レンズの結像倍率を表す。
この場合、さらに次式を満たすことが好ましい。
−0.25<m3<−0.05
また、次式を満たすことが好ましい。
m2<0
但し、m2は、前記第2光情報記録媒体に対する情報の再生及び/または記録を行う場合の前記対物レンズの結像倍率を表す。
この場合、さらに次式を満たすことが好ましい。
−0.20<m2<−0.02
上述のように、保護基板厚の異なる3種類の光情報記録媒体のうち、保護基板厚の大きい第2光情報記録媒体及び/または第3光情報記録媒体に対して情報の再生及び/または記録を行う場合に、対物レンズを、発散光束が入射する有限仕様とすると、作動距離を十分に確保することができる。
また、本発明による記録・再生装置は、上述のいずれかの光ピックアップ装置を搭載し、音声及び/または画像を記録し、及び/または、音声及び/または画像を再生可能なように構成できる。例えば、上述の本発明による各光ピックアップ装置は、例えば、次世代のより高密度な第1光情報記録媒体と、DVD、DVD-ROM、DVD-RAM、DVD-R、DVD-RW、DVD+RWD等の第2光情報記録媒体と、CD、CD-R、CD-RW、CD-Video、CD-ROM等の第3光情報記録媒体と、に対してコンパチブルなプレーヤーまたはドライブ等、あるいはそれらを組み込んだAV機器、パソコン、その他の情報端末等の音声および/または画像の記録装置および/または再生装置に搭載することができる。
次に、好ましい光ピックアップ装置の光学系について図1乃至図8により説明する。なお、図1乃至図8は各光ピックアップ装置を概念的に示す図であり、図1乃至図8では光ピックアップ装置の光学系を構成する各素子の位置を概念的に示すために各素子が分離して示されているが、実際には同一の素子が2つ又は2つ以上の素子の機能を有する場合がある。
好ましい光ピックアップ装置の光学系では、図1乃至図4のように、第1光源乃至第3光源からの各光束が通過する共通の光路に基板厚差補正手段を配置する。
即ち、図1の光ピックアップ装置は、第1光源1乃至第3光源3からの各光束が通過する共通の光路に第1保護基板乃至第3保護基板のうち少なくとも2つの保護基板の厚さの違いに起因して変化する球面収差を補正するための基板厚差補正手段7と、第1光情報記録媒体が有する第1保護基板の厚み誤差に起因して変化する球面収差を補正するための基板厚誤差補正手段6と、第1光源1の微少な波長変化に起因する色収差を補正するための色収差補正手段5と、を有し、第1光源1,第2光源2及び第3光源3からの各光束は共通の対物レンズ8により第1光情報記録媒体乃至第3光情報記録媒体のそれぞれの情報記録面上に集光される。なお、各光源からの発散光束は光路合成手段9aにより光路が合成された後、カップリングレンズ4aにより発散角が変換されて、対物レンズ8にむかう。
また、図2の光ピックアップ装置は、第1光源1乃至第3光源3からの各光束が通過する共通の光路に、基板厚差補正手段7と、基板厚誤差補正手段6と、を配置し、第1光源1からの光束のみが通過する光路に、第1光源1の微少な波長変化に起因する色収差を補正するための色収差補正手段5を配置し、第1光源1,第2光源2及び第3光源3からの各光束は共通の対物レンズ8により第1光情報記録媒体乃至前記第3光情報記録媒体のそれぞれの情報記録面上に集光される。カップリングレンズ4bにより発散角が変換された第1光源1からの光束と、カップリングレンズ4cにより発散角が変換された第2光源2及び第3光源3からの光束は、光路合成手段9aにより光路が合成された後、対物レンズ8にむかうが、以下の図3乃至図7の光ピックアップ装置でも同様である。
また、図3のピックアップ装置は、第1光源1乃至第3光源3からの各光束が通過する共通の光路に色収差補正手段5と基板厚差補正手段7とを配置し、第1光源1からの光束のみが通過する光路に第1保護基板の厚み誤差に起因して変化する球面収差を補正するための基板厚誤差補正手段6を配置し、第1光源1,第2光源2及び第3光源3からの各光束は共通の対物レンズ8により第1光情報記録媒体乃至第3光情報記録媒体のそれぞれの情報記録面上に集光される。
また、図4の光ピックアップ装置は、第1光源1乃至第3光源3からの各光束が通過する共通の光路に基板厚差補正手段7を配置し、第1光源1からの光束のみが通過する光路に第1光源1の微少な波長変化に起因する色収差を補正するための色収差補正手段5と、第1保護基板の厚み誤差に起因して変化する球面収差を補正するための基板厚誤差補正手段6とを配置し、第1光源1,第2光源2及び第3光源3からの各光束は共通の対物レンズ8により第1光情報記録媒体乃至第3光情報記録媒体のそれぞれの情報記録面上に集光される。
また、図5の光ピックアップ装置は、第1光源1乃至第3光源3からの各光束が通過する共通の光路に色収差補正手段5を配置し、第2光源2及び第3光源3からの各光束のみが通過する共通の光路に第1保護基板乃至第3保護基板のうち少なくとも2つの保護基板の厚さの違いに起因して変化する球面収差を補正するための基板厚差補正手段7を配置し、第1光源1からの光束のみが通過する光路に第1の保護基板の厚み誤差に起因して変化する球面収差を補正するための基板厚誤差補正手段6を配置し、第1光源1,第2光源2及び第3光源3からの各光束は共通の対物レンズ8により第1光情報記録媒体乃至第3光情報記録媒体のそれぞれの情報記録面上に集光される。
また、図6の光ピックアップ装置は、第1光源1乃至第3光源3からの各光束が通過する共通の光路に基板厚誤差補正手段6を配置し、第2光源2及び第3光源3からの各光束のみが通過する共通の光路に第1保護基板乃至第3保護基板のうち少なくとも2つの保護基板の厚さの違いに起因して変化する球面収差を補正するための基板厚差補正手段7を配置し、第1光源1からの光束のみが通過する光路に第1光源の微少な波長変化に起因する色収差を補正するための色収差補正手段5を配置し、第1光源1,第2光源2及び第3光源3からの各光束は共通の対物レンズ8により第1光情報記録媒体乃至第3光情報記録媒体のそれぞれの情報記録面上に集光される。
また、図7の光ピックアップ装置は、第2光源2及び第3光源3からの各光束のみが通過する共通の光路に第1保護基板乃至第3保護基板のうち少なくとも2つの保護基板の厚さの違いに起因して変化する球面収差を補正するための基板厚差補正手段7を配置し、第1光源1からの光束のみが通過する光路に第1光源1の微少な波長変化に起因して変化する色収差を補正するための色収差補正手段5と、第1の保護基板厚の厚み誤差に起因して変化する球面収差を補正するための基板厚誤差補正手段6とを配置し、第1光源1,第2光源2及び第3光源3からの各光束は共通の対物レンズ8により第1光情報記録媒体乃至第3光情報記録媒体のそれぞれの情報記録面上に集光される。
また、好ましい光ピックアップ装置の光学系では、図8のように、第2光源からの光束のみが通過する光路に、第1保護基板及び第2保護基板の厚さの違いに起因して変化する球面収差を補正するための基板厚差補正手段7aを配置し、さらに、第3光源からの光束のみが通過する光路に、第1保護基板及び第3保護基板の厚さの違いに起因して変化する球面収差を補正するための基板厚差補正手段7bを配置する。
即ち、図8の光ピックアップ装置は、第1光源1からの光束のみが通過する光路に色収差補正手段5と基板厚誤差補正手段6とを配置し、第2光源2からの光束のみが通過する光路に第1保護基板及び第2保護基板の厚さの違いに起因して変化する球面収差を補正するための基板厚差補正手段7aを配置し、第3光源3からの光束のみが通過する光路に、第1保護基板及び第3保護基板の厚さの違いに起因して変化する球面収差を補正するための基板厚差補正手段7bを配置する。カップリングレンズ4bで発散角が変換された第1光源1からの光束と、カップリングレンズ4dで発散角が変換された第2光源2からの光束は、光路合成手段9bにより光路が合成されて、カップリングレンズ4eで発散角が変換された第3光源3からの光束は、光路合成手段9cにより第1光源1及び第2光源2からの光束と光路が合成される。第1光源1,第2光源2及び第3光源3からの各光束は共通の対物レンズ8により第1光情報記録媒体乃至第3光情報記録媒体のそれぞれの情報記録面上に集光される。
なお、図1乃至図8の光ピックアップ装置では、各光源からの発散光束の発散角を、カップリングレンズ4aまたはカップリングレンズ4bまたはカップリングレンズ4cまたはカップリングレンズ4dを用いて変換する構成としたが、かかるカップリングレンズは本発明による光ピックアップ装置の光学系には含まれない場合もある。また、図1乃至図7の光ピックアップ装置では、図面の簡略化のために第2光源と第3光源を同一の記号を用いて表しているが、実際の光ピックアップ装置では、第2光源と第3光源は別体の光源である場合もある。さらに、図1乃至図8の光ピックアップ装置では、第1光情報記録媒体乃至第3光情報記録媒体を同一の記号10を用いて表しているが、実際の光ピックアップ装置では各光情報記録媒体は当然別々である。さらに、図1乃至図8の光ピックアップ装置では、対物レンズ8を駆動するためのアクチュエータや1/4波長板、光情報記録媒体10からの反射光束を検出するための光検出器等は省略されているが、実際の光ピックアップ装置ではこれらを有する。
上述の光ピックアップ装置において、前記第1光情報記録媒体乃至前記第3光情報記録媒体に対する情報の再生及び/または記録を行うのに必要な前記対物レンズの所定の像側開口数をそれぞれNA1、NA2、NA3としたとき、前記第1光源の波長λ1、前記第2光源の波長λ2、前記第3光源の波長λ3、前記第1保護基板の厚さt1、前記第2保護基板の厚さt2、前記第3保護基板の厚さt3、及び、前記対物レンズの所定の像側開口数NA1、NA2、NA3が次式を満たすことが好ましい。
350nm<λ1<550nm
600nm<λ2<700nm
700nm<λ3<850nm
0.0mm≦t1<0.3mm
0.5mm<t2<0.7mm
1.0mm<t3<1.3mm
0.99>NA1≧0.80
0.80>NA2≧0.55
0.55>NA3≧0.40
なお、本明細書中において、「基板厚誤差補正手段6、及び/または、基板厚差補正手段7によって球面収差を(良好に)補正する」とは、少なくとも、基板厚誤差補正手段6、及び/または、基板厚差補正手段7と対物レンズとから構成される光学系を通過した光束が、各光情報記録媒体に対して情報の再生、及び/または、記録を行うのに必要な対物レンズの所定の各像側開口数内で、各情報記録媒体の情報記録面上に、λを光源の波長としたとき、波面収差が0.07λrms以下(より好ましくは0.05λrms以下)の状態で、集光されるように球面収差を補正することを指す。
本発明の光ピックアップ装置によれば、規格(記録密度)の異なる例えば高密度DVD、DVD、CDのような3種類の光ディスクの相互互換を共通の対物レンズを使用して達成できる光ピックアップ装置を提供できる。また、CDのような保護基板厚の厚い光ディスクに対する作動距離が十分に確保された光ピックアップ装置を提供できる。
また、上述の光ピックアップ装置に用いることのできる対物レンズを提供できる。
更に、上述の光ピックアップ装置を用いて規格(記録密度)の異なる3種類の光情報記録媒体について情報の記録及び/または再生を行うことのできる記録・再生装置を提供できる。
以下、本発明による第1〜第7の実施の形態について図面を用いて説明する。
〈第1の実施の形態〉
図9は第1の実施の形態による第1の光ピックアップ装置を概略的に示す図である。図9に示すように、第1の光ピックアップ装置は、保護基板厚さが小さい第1の光ディスクの記録/再生用の第1光源である半導体レーザ11と、保護基板厚さが大きい第2の光ディスク記録/再生用の第2光源である半導体レーザ12と、保護基板厚さがさらに大きい第3の光ディスク記録/再生用の第3光源である半導体レーザ13とを有している。
第1の光ディスクとしては、例えば、0.1mmの保護基板(透明基板)を有するDVDをより高密度化した光ディスク(高密度DVD)を用いることができ、第2の光ディスクとしては、0.6mmの保護基板を有するDVD、DVD−ROM、DVD−RAM、DVD−R、DVD−RW、DVD+RW等の各種DVDを用いることができ、第3の光ディスクとしては、1.2mmの保護基板を有するCD、CD−R、CD−RW、CD−Video、CD−ROM等の各種CDを用いることができる。
また、第1光源11としては、400nm程度の波長の光を発生するGaN系青紫色半導体レーザや青紫色SHGレーザ等を用いることができ、第2光源12としては、650nm程度の波長の光を発生する赤色半導体レーザを用いることができ、第3光源13としては、780nm程度の波長の光を発生する赤外半導体レーザを用いることができる。かかる第1乃至第3の光源11〜13は、情報の記録/再生を行う光ディスクの種類によって選択的に使用される。
第1の光ピックアップ装置は、所定の像側開口数内で回折限界内となるように、第1乃至第3の半導体レーザ11乃至13からの光束を、第1乃至第3の光ディスクのそれぞれの情報記録面91,92,93上に集光させることができる対物レンズ14を有する。
対物レンズ14は第1乃至第3の半導体レーザ11〜13からの光束を第1乃至第3の光ディスクのそれぞれの情報記録面91,92,93上に集光させるための対物レンズとしての機能に加えて、基板厚差補正手段としての機能も有する。即ち対物レンズ14の光源側の面14a上には、同心円上の複数の輪帯からなる回折構造が形成されており、半導体レーザ11からの光束を、第1の光ディスクを記録/再生する際に必要な像側開口数NA1内で、回折限界内となる状態で保護基板を介して第1の光ディスクの情報記録面91上に集光させることができ、半導体レーザ12からの光束を、第2の光ディスクを記録/再生する際に必要な像側開口数NA2内で、回折限界内となる状態で保護基板を介して第2の光ディスクの情報記録面92上に集光させることができ、半導体レーザ13からの光束を、第3の光ディスクを記録/再生する際に必要な像側開口数NA3内で、回折限界内となる状態で保護基板を介して第3の光ディスクの情報記録面93上に集光させることができる。第1の光ディスクを記録/再生する際に必要な像側開口数NA1として例えば0.85程度、第2の光ディスクを記録/再生する際に必要な像側開口数NA2として、0.60程度、第3の光ディスクを記録/再生する際に必要な像側開口数NA3として、0.45程度とすることができる。
また、第1の光ピックアップ装置は、半導体レーザ11のモードホッピング等の単色性の悪さに起因して、主に対物レンズ14で発生する色収差を補正するための色収差補正手段としての色収差補正用素子18を偏光ビームスプリッタ15と対物レンズ14との間に有する。高性能で簡易な構造の色収差補正素子として、複数の輪帯からなる回折構造を有する回折素子が知られているが、従来の回折素子を用いて、半導体レーザ11の波長(たとえば、400nm)近傍の光に対して、対物レンズ14で発生する色収差の補正を行った場合、半導体レーザ12の波長(たとえば、650nm)や半導体レーザ13の波長(たとえば、780nm)の光に対しては、色収差が補正過剰になり過ぎてしまうという問題があり、半導体レーザ11乃至13からの光束の共通の光路中に配置される色収差補正用素子としては好ましくない。
そこで、本発明者らは、第1の光ピックアップ装置に用いて好ましい色収差補正用素子18として、図10に示すような多層回折素子を提案する。図10(a)の多層回折素子は、アッベ数の異なる2つの光学材料から形成された光学素子aと光学素子bとを貼り合わせた構造を有し、光学素子aと光学素子bの貼り合わせ面側には、複数の輪帯からなる回折構造が形成されている。光学素子a及び光学素子bの光学材料として、図10(b)に示すように、半導体レーザ12の波長(たとえば、650nm)から半導体レーザ13の波長(たとえば、780nm)にかけての波長領域においてはほとんど屈折率差がなく、半導体レーザ11の波長(たとえば、400nm)近傍の波長領域では、所定の屈折率差Δnを有するような屈折率−波長特性をもつ光学材料を選ぶとよい。これにより、半導体レーザ11の波長近傍の光のみが、光学素子aと光学素子bとの屈折率差Δnの影響により、貼り合わせ面の回折構造の作用を受けて回折するようにすることができるので、屈折率差Δnに対して、回折構造の形状を適切に設計することにより、半導体レーザ11の波長近傍のみの光に対して、対物レンズ14の色収差の補正を行うようにすればよく、半導体レーザ11から出射された光束は、色収差補正用素子18を経ることによってほとんど色収差なく第1の光ディスクの情報記録面91上に集光される。
さらに、第1の光ピックアップ装置は、第1の光ディスクに対して情報を記録/再生する場合に、光ディスクの保護基板厚さの製造誤差、対物レンズ14等の集光光学系を構成する光学素子の製造誤差、半導体レーザ11の製造誤差による波長の変化、及び温度変化や湿度変化による対物レンズ等の集光光学系を構成する光学素子の形状変化や屈折率変化による球面収差の変化を補正する基板厚誤差補正手段としての球面収差補正素子として、1軸アクチュエータ21によって光軸方向に変移されるコリメータ16を偏光ビームスプリッタ15と対物レンズ14との間に有する。
第1の光ディスクの情報記録面91上の集光スポットの球面収差の変化が図示しない光検出器によって検出された場合は、1軸アクチュエータ21によりコリメータ16を所定量変移させて、対物レンズ14に入射する光束の発散角を変化させることで、かかる球面収差の変化を補正する。集光スポットの球面収差が補正過剰(オーバー)方向に変化した場合は、コリメータ16を対物レンズ14から離れる方向に変移させ、集光スポットの球面収差が補正不足(アンダー)方向に変化した場合は、コリメータ16を対物レンズ14に近づく方向に変移させる。これにより、第1の光ディスクの情報記録面91上の集光スポットは、常に球面収差が良好に補正された状態を保つことができる。
第1の光ディスクを記録/再生する場合、半導体レーザ11からビームを出射し、出射された光束は、半導体レーザ11乃至13からの出射光の合成手段である偏光ビームスプリッタ15、コリメータ16、色収差補正用素子18を透過し、対物レンズ14により第1の光ディスクの保護基板を介して情報記録面91に集光される。このとき、対物レンズ14は、像側開口数NA1内で回折限界内となるように、半導体レーザ11からの光束を集光させるので、高密度な次世代の光ディスクである第1の光ディスクを記録/再生することができる。
そして、情報記録面91で情報ビットにより変調されて反射した光束は、再び対物レンズ14、色収差補正用素子18、コリメータ16を透過して図示しない光検出系に向かう。光検出系の光検出器上でのスポットの形状変化、位置変化による光量変化を検出して、合焦検出やトラック検出を行う。この検出に基づいて2軸アクチュエータ22が半導体レーザ11からの光束を第1の光ディスクの情報記録面91上に結像するように対物レンズ14を光軸方向に変移させると共に、半導体レーザ11からの光束を所定のトラックに結像するように対物レンズ14を光軸に垂直な方向に変移させる。
また、第2の光ディスクを記録/再生する場合、半導体レーザ12からビームを出射し、出射された光束は、半導体レーザ12及び13からの出射光の合成手段である偏光ビームスプリッタ17及び偏光ビームスプリッタ15で反射され、さらに、上記半導体レーザ11からの光束と同様、コリメータ16、色収差補正用素子18を透過し、対物レンズ14により第2の光ディスクの保護基板を介して情報記録面92に集光される。このとき、対物レンズ14は、像側開口数NA2内で回折限界内となるように、半導体レーザ12からの光束を集光させるので、第2の光ディスクを記録/再生することができる。
そして、情報記録面92で情報ビットにより変調されて反射した光束は、再び対物レンズ14、色収差補正用素子18、コリメータ16を透過して図示しない光検出系に向かう。第1の光ディスクの場合と同様、光検出系の光検出器上でのスポットの形状変化、位置変化による光量変化を検出して、合焦検出やトラック検出を行う。この検出に基づいて2軸アクチュエータ22が半導体レーザ12からの光束を第2の光ディスクの情報記録面92上に結像するように対物レンズ14を光軸方向に変移させると共に、半導体レーザ12からの光束を所定のトラックに結像するように対物レンズ14を光軸に垂直な方向に変移させる。
また、第3の光ディスクを記録/再生する場合、半導体レーザ13からビームを出射し、出射された光束は、偏光ビームスプリッタ17を透過し、偏光ビームスプリッタ15で反射され、さらに、上記半導体レーザ11からの光束と同様、コリメータ16、色収差補正用素子18を透過し、対物レンズ14により第3の光ディスクの保護基板を介して情報記録面93に集光される。このとき、対物レンズ14は、像側開口数NA3内で回折限界内となるように、半導体レーザ13からの光束を集光させるので、第3の光ディスクを記録/再生することができる。
そして、情報記録面93で情報ビットにより変調されて反射した光束は、再び対物レンズ14、色収差補正用素子18、コリメータ16を透過して図示しない光検出系に向かう。第1の光ディスクの場合と同様、光検出系の光検出器上でのスポットの形状変化、位置変化による光量変化を検出して、合焦検出やトラック検出を行う。この検出に基づいて2軸アクチュエータ22が半導体レーザ13からの光束を第3の光ディスクの情報記録面93上に結像するように対物レンズ14を光軸方向に変移させると共に、半導体レーザ13からの光束を所定のトラックに結像するように対物レンズ14を光軸に垂直な方向に変移させる。
なお、本実施の形態の光ピックアップ装置では、光源と対物レンズとの間の光路中に配置される1/4波長板は省略されているが、実際の光ピックアップ装置では、1/4波長板が光源と対物レンズとの間の光路中に配置される場合がある。以降の実施の形態の光ピックアップ装置でも、1/4波長板は省略する。
本実施の形態の対物レンズ14において、第2の光ディスクを記録/再生する場合に、像側開口数NA2からNA1の領域を通過した半導体レーザ12からの光束が、第2の光ディスクの情報記録面92上でフレアとなるように回折構造14aと、回折構造14aが形成される光学面の非球面形状とを決定すると、NA1とNA2との開口切替を自動的に行うことができ、特別な開口切替手段を設ける必要がないのでコスト上有利である。
さらに、第3の光ディスクを記録/再生する場合に、像側開口数NA3からNA1の領域を通過した半導体レーザ13からの光束が、第3の光ディスクの情報記録面93上でフレアとなるように回折構造14aと、回折構造14aが形成される光学面の非球面形状とを決定すると、NA1とNA2とNA3との開口切替を自動的に行うことができるのでより好ましい。かかる場合には、回折構造14aは基板厚差補正手段としての機能と、開口切替手段としての機能を備えることになる。
このように、像側開口数NA2からNA1の領域を通過した半導体レーザ12からの光束と、像側開口数NA3からNA1の領域を通過した半導体レーザ13からの光束とが、それぞれ第2の光ディスクの情報記録面92上、第3の光ディスクの情報記録面93上でフレアとなるようにする場合、像側開口数NA2からNA1に対応する領域を通過した波長λ2の光束は、像側開口数NA1内で、第2の光ディスクの情報記録面上において、波面収差が0.20λ2rmsより大きい状態であり、かつ、像側開口数NA3からNA1に対応する領域を通過した波長λ3の光束は、像側開口数NA1内で、第3の光ディスクの情報記録面上において、波面収差が0.20λ3rmsより大きい状態となるように回折構造14aが決定される。これにより、必要な像側開口数内の領域を通過した光束のスポットと、必要な像側開口数内より外側を通過した光束のフレアとが十分に分離され、光検出器の受光部における良好な信号検出特性が得られる。
また、上述のように、対物レンズ14において、第2及び第3の光ディスクを記録/再生する場合に必要な像側開口数以上の光束をフレア成分としない場合には、本実施の形態の光ピックアップ装置は、上述した形態とは別の形態の開口切替手段を有することが好ましい。このような開口切替手段として、後述の図17,図18のような輪帯フィルタを用いることができる。また、NA1とNA2とNA3とに対応した絞りをそれぞれ、第1の光ディスク、第2の光ディスク、第3の光ディスクを記録/再生する際に機械的に切り替えるようにしてもよい。
また、このような開口切替手段として、互いに対向する透明電極との間に配置された液晶層と1/4波長板とを備え、透明電極のうち少なくとも一方が光軸を中心とする複数の輪帯状の電圧印加部に分割されており、かかる電圧印加部のうち少なくとも1つの電圧印加部に電圧を印加することで、液晶層の液晶分子の配向状態を輪帯状に変化させることのできる素子を用いてもよい。かかる素子を用いると、対物レンズ14のNA2からNA1の領域とNA2内の領域に対応する光束の偏光面をそれぞれ独立に変化させたり、対物レンズ14のNA3からNA1の領域とNA3内の領域に対応する光束の偏光面をそれぞれ独立に変化させることができるので、第1乃至第3の光ディスクに対する開口切替手段として機能させることができる。
また、本実施の形態では、対物レンズ14の少なくとも1つの面14a上に形成した、同心円上の複数の輪帯からなる基板厚差補正手段としての回折構造の作用により、所定の像側開口数内で回折限界内となるように、半導体レーザ11乃至13からの光束を、第1乃至第3の光ディスクのそれぞれの情報記録面91乃至93上に集光させることができるようにしたが、上記の回折構造は、対物レンズとは別に配設された光学素子の光学面上に設けてもよい。
上述のように、対物レンズとは別に配設された光学素子の光学面上に基板厚差補正手段としての回折構造を設ける場合において、第2及び第3の光ディスクを記録/再生する場合に必要な像側開口数以上の光束をフレア成分として、かかる回折構造に開口切替手段としての機能も持たせる場合には、かかる回折構造が設けられた光学素子と対物レンズとが一体となってトッラキング駆動されることが好ましい。これにより良好なトラッキング特性を得ることができる。
また、所定の像側開口数内で回折限界内となるように、波長の異なる複数の光源からの光束を、保護基板の厚さの異なる複数の光ディスクの情報記録面上に集光させることができる対物レンズとして本出願人による特開平11−96585公報や特開2001−229567公報に記載の対物レンズを用いてもよい。
また、第1の光ピックアップ装置では、対物レンズ14の少なくとも1つの面14a上に形成した回折構造の回折作用によって所定の像側開口数内で回折限界内となるように、半導体レーザ11乃至13からの光束を、第1乃至第3の光ディスクのそれぞれの情報記録面91乃至93上に集光できるようにしたが、以下に、本実施の形態に用いることのできる、別の形態の対物レンズの例を説明する。
即ち、対物レンズの少なくとも1つの面上に形成した回折構造の回折作用によって、半導体レーザ11及び12からの光束を、それぞれ、第1の光ディスク及び第2の光ディスクの情報記録面92上に、それぞれ,開口数NA1及びNA2内で回折限界内となるように集光できるようにし、第3の光ディスクに対しては、対物レンズに半導体レーザ13からの発散光束を入射させることで、保護基板厚さの違いに起因する球面収差の変化を、開口数NA3内で回折限界内となるように補正する。この場合、光ピックアップ装置は、第3の光ディスクに対して情報の記録/再生を行う際の開口切替手段を有することが好ましく、このような開口切替手段として後述の図17,図19のような輪帯フィルタを用いることができる。
また、球面収差の変化を補正する基板厚誤差補正手段として、後述される屈折率分布可変材料層を有し、電場または磁場または温度を印加することにより屈折率分布可変材料層の屈折率分布を変化させることのできる素子や、構成レンズの少なくとも1つが光軸方向に変移可能とされたビームエキスパンダを用いてもよい。
また、本実施の形態の基板厚誤差補正手段としてのコリメータ16は、1群構成としたが、複数のレンズから構成されるようにしてもよい。このように複数のレンズから構成された基板厚誤差補正手段としてのコリメータとして、本出願人による特願2000−392333号にあるようなコリメータがある。
また、本実施の形態では、偏光ビームスプリッタ15から対物レンズ14にいたる半導体レーザ12からの光束の経路は省略している。同様に、偏光ビームスプリッタ15から対物レンズ14にいたる半導体レーザ13からの光束の経路は省略している。以降の実施の形態でも同様である。
また、本実施の形態では、対物レンズのフォーカシング誤差及び/またはトラッキング誤差を検出するための光検出手段、及び、情報記録面91上の集光スポットの球面収差の変化を検出するための光検出手段は省略されているが、実際の光ピックアップ装置は、かかる光検出手段を有する。以降の実施の形態例においても同様に光検出手段は省略する。
次に、図11により図9の光ピックアップ装置の変形例である第2の光ピックアップ装置を説明する。図11に示すように、第2の光ピックアップ装置は、図9における基板厚誤差補正手段としてのコリメータと色収差補正手段とが一体化された一体化素子20を有し、この一体化素子20は図9と同様に1軸アクチュエータ21により光軸方向に変移されるようになっている。さらに同一の基板上に形成された半導体レーザ12と半導体レーザ13が同一のケース19内に収納されてユニット化されている。図11の構成によれば、一体化素子20及びユニット化された半導体レーザにより光ピックアップ装置の部品点数を低減することができるので、よりコストダウンを図ることができる。
なお、図11の第2の光ピックアップ装置では、半導体レーザ12と半導体レーザ13がユニット化されているが、半導体レーザ11と半導体レーザ12をユニット化してもよく、半導体レーザ11と半導体レーザ13をユニット化してもよい。また、半導体レーザ11と半導体レーザ12と半導体レーザ13をユニット化することでよりいっそうのコストダウン及び省スペース化が図れる。
〈第2の実施の形態〉
図12は第2の実施の形態による第3の光ピックアップ装置を概略的に示す図である。
図12に示すように、第3の光ピックアップ装置は、図9の第1の光ピックアップ装置と同様に、3種類の記録密度の異なる光ディスクに対して情報の記録/再生が可能な光ピックアップ装置である。
第3の光ピックアップ装置は、所定の像側開口数内で回折限界内となるように、半導体レーザ11乃至13からの各光束を第1乃至第3の光ディスクのそれぞれの情報記録面上に集光させることができる対物レンズ14を有する。対物レンズ14としては、第1の光ピックアップ装置に用いた対物レンズと同様の対物レンズを用いることができるので、詳細な説明は割愛する。
また、第3の光ピックアップ装置は、半導体レーザ11と、半導体レーザ11乃至13からの光束の光路合成手段である偏光ビームスプリッタ15との間の光路中に、半導体レーザ11のモードホッピング等の単色性の悪さに起因して、主に対物レンズ14で発生する色収差を補正するための色収差補正手段としてのコリメータ29を有する。コリメータ29の少なくとも1つの面上には同心円状の複数の輪帯からなる回折構造が形成されており、半導体レーザ11から射出される光の波長が、長くなる方向に変化した場合に、コリメータ29のバックフォーカスが短くなる方向に変化するような波長特性を有する。さらに、コリメータ29の波長変化に対する焦点距離の二乗で規格化したバックフォーカスの変化量の絶対値は、同じ量の波長変化に対する対物レンズ14の焦点距離の二乗で規格化したバックフォーカスの変化量の絶対値と略一致するので、半導体レーザ11から出射された光束は、コリメータ29と対物レンズ14を経ることによってほとんど色収差なく第1の光ディスクの情報記録面91上に集光される。このような波長特性を有するコリメータとして、本出願人による特願2001−248819号にあるようなコリメータを用いることができる。
また、第3の光ピックアップ装置に用いるのに好ましい色収差補正手段としてのコリメータ29として、相対的にアッベ数の大きい正レンズと、相対的にアッベ数の小さい負レンズとを貼り合わせたコリメータを用いることができる。このようなダブレット構造を有するコリメータとして、本出願人による特願2000−262372号にあるようなコリメータを用いることができる。
また、第3の光ピックアップ装置では、コリメータに回折構造を形成して対物レンズ14で発生する色収差を補正したが、半導体レーザ11と偏光ビームスプリッタ15との間に、コリメータとは別に配置された、少なくとも1面に回折構造が形成された色収差補正手段としての色収差補正素子を用いてもよい。平行光中に配置することのできる色収差補正素子として、本出願人による特願2001−210659号にあるような色収差補正素子を用いることができる。半導体レーザ11から射出される楕円状の光束の整形するためのビーム整形プリズムペアを光路中に配置する場合は、かかる平行光中に配置することのできる色収差補正素子を用いるのが好ましい。
また、第3の光ピックアップ装置は、第1の光ディスクに対して情報を記録/再生する場合に、光ディスクの保護基板厚さの製造誤差、対物レンズ等の集光光学系を構成する光学素子の製造誤差、半導体レーザ11の製造誤差による波長の変化、及び温度変化や湿度変化による対物レンズ等の集光光学系を構成する光学素子の形状変化や屈折率変化による球面収差の変化を補正する基板厚誤差補正手段として屈折率分布可変素子23を偏光ビームスプリッタ15と対物レンズ14との間に配置している。
屈折率分布可変素子23は、一対のガラス基板24a、24bに保持された互いに対向する一対の透明電極25a、25bとの間に配置された液晶層26を有し、透明電極25a、25bに駆動電源27から電圧を印加することで液晶層26の液晶分子の配向状態を電気的に制御し、液晶層26内の屈折率分布を変化させることができるように構成されている。
透明電極25a、25bの少なくとも一方は光軸を中心とした複数の輪帯状の電圧印加部に分割されており、これら複数の輪帯状の電圧印加部の少なくとも1つに所定の電圧を印加することで、液晶層26の屈折率分布を光軸を中心として輪帯状に変化させることができる。第1の光ディスクの情報記録面91上の集光スポットの球面収差の変化が図示しない光検出器によって検出された場合は、電源27により、電圧印加部に所定の電圧を印加することで、液晶層26の屈折率分布を光軸を中心とする輪帯状に変化させ、屈折率分布可変素子23を透過する波面に対し所定の光路差を付加し、かかる球面収差の変化を補正する。これにより、第1の光ディスクの情報記録面91上の集光スポットは、常に球面収差が良好に補正された状態を保つことができる。
上述の説明では、屈折率分布可変素子23として上述したような形態の屈折率分布可変素子を用いたが、本実施の形態の光ピックアップ装置に用いることのできる屈折率分布可変素子は、光軸を中心として回転対称状に屈折率分布を変化させることのできるものであればよく、上述の形態に限るものではない。
また、第3の光ピックアップ装置に用いることのできる基板厚誤差補正手段として、構成レンズの少なくとも1つが光軸方向に変移可能とされたビームエキスパンダを用いてもよい。
次に、図13により図12の光ピックアップ装置の変形例である第4の光ピックアップ装置を説明する。図13に示すように、第4の光ピックアップ装置においては、半導体レーザ12と半導体レーザ13が図11と同様にユニット化されているので、光ピックアップ装置の部品点数の低減によりコストダウンが図れる。
第4の光ピックアップ装置は、開口数NA1内で回折限界内となるように、半導体レーザ11の光束を、第1の光ディスクの情報記録面91上に集光させることができる対物レンズ34を有する。第1の光ディスク専用の対物レンズである対物レンズ34を用いて、半導体レーザ12からの光を用いて第2の光ディスクを記録/再生しようとすると、保護基板厚さの違いにより補正過剰(オーバー)方向に球面収差が変化するが、第4の光ピックアップ装置では、補正過剰方向に変化した球面収差を、基板厚差補正手段としての機能も備えた屈折率分布可変素子23により、開口数NA2内で回折限界内となるように補正することで第2の光ディスクに対する記録/再生を可能としている。
更に、半導体レーザ13からの光を用いて第3の光ディスクを記録/再生する場合も同様に、保護基板厚さの違いにより補正過剰(オーバー)方向に変化した球面収差を、屈折率分布可変素子23により、開口数NA3内で回折限界内となるように補正する。
また、第4の光ピックアップ装置は、NA1とNA2とNA3との開口切替手段として、図13の対物レンズ34の光源側の光学面34aに波長選択性のある後述の図17、図18のような輪帯フィルタを形成している。これにより、自動的に開口をNA1とNA2とNA3とに切り替えることができる。かかる波長選択性のある輪帯フィルタにより、第2の光ディスク及び第3の光ディスクに対する情報の記録/再生を行う場合は、必要開口数以上の光束を遮断することで光ディスクの情報記録面上で所望のスポット径を得ることができる。
また、開口切替手段として、NA1とNA2とNA3とに対応した絞りをそれぞれ、第1の光ディスク、第2の光ディスク、第3の光ディスクを再生する際に機械的に切り替える手段を用いてよく、更に、第1の実施の形態で説明したような液晶を用いた開口切替素子を用いてもよい。
また、かかる開口切替手段は、対物レンズ34と一体となってトラッキングを行うのが好ましく、これにより良好なトラッキング特性が得られる。図13では、対物レンズ34の光学面34aに設けているので、このトラックキング特性が向上する。
また、図13の光ピックアップ装置において、対物レンズ34は、1つのレンズ群から構成された単レンズであって、波長λ1における焦点距離をf1(mm)、中心厚さをd(mm)、対物レンズ14に入射する波長λ1の光束の径をΦ1(mm)、第1の光ディスクに対する情報の記録/再生を行う場合の作動距離をfB1(mm)としたとき、
0.7<d/f1<1.5 (2)
2.8<Φ1<5.8 (3)
fB1>0.5 (4)
を満足するように構成されている。
高密度DVD用の高NA対物レンズとして、特開平10−123410号公報にあるような2つのレンズ群から構成される対物レンズが提案されているが、保護基板厚に1.1mmの違いがある、高密度DVDとCDとの相互互換を共通の対物レンズで行う場合には、対物レンズを、作動距離が確保しやすい単レンズ構成とするのが好ましい。このとき、上記(2)乃至(4)式を満たすことが特に好ましく、これにより、CDの作動距離を十分に確保することができる。この結果、DVDや高密度DVDのように、光ディスクの保護基板厚さの製造公差が比較的厳しく抑えられておらず、保護基板厚さの個体差によるばらつきが大きいCDを記録/再生する場合でもCDと対物レンズとの衝突の可能性を十分小さくすることができる。
〈第3の実施の形態〉
図14は第3の実施の形態による第5の光ピックアップ装置を概略的に示す図である。
図14に示すように、第5の光ピックアップ装置は、図9の第1の光ピックアップ装置と同様に、3種類の記録密度の異なる光ディスクに対して情報の記録/再生が可能な光ピックアップ装置である。
第5の光ピックアップ装置は、所定の像側開口数内で回折限界内となるように、半導体レーザ11乃至13からの光束を、第1乃至第3の光ディスクのそれぞれの情報記録面91乃至93上に集光させることができる対物レンズ14を有する。対物レンズ14としては、第1の光ピックアップ装置に用いた対物レンズと同様の対物レンズを用いることができるので、詳細な説明は割愛する。
さらに、第5の光ピックアップ装置は、半導体レーザ11と、半導体レーザ11乃至13からの光束の光路合成手段である偏光ビームスプリッタ15との間の光路中に、第1の光ディスクに対して情報を記録/再生する場合に、光ディスクの保護基板厚さの製造誤差、対物レンズ等の集光光学系を構成する光学素子の製造誤差、半導体レーザ11の製造誤差による波長の変化、及び温度変化や湿度変化による対物レンズ等の集光光学系を構成する光学素子の形状変化や屈折率変化、による球面収差の変化を補正する基板厚誤差補正手段としてビームエキスパンダ33を配置している。
このビームエキスパンダ33は、負レンズ32と正レンズ31とから構成され、負レンズ32が1軸アクチュエータ21によって光軸方向に変移されるようになっている。負レンズ32には半導体レーザ11からの光束がコリメータ30で平行にされて入射する。
第1の光ディスクの情報記録面91上の集光スポットの球面収差の変化が図示しない光検出器によって検出された場合は、1軸アクチュエータ21により負レンズ32を所定量変移させて、対物レンズ14に入射する光束の発散角を変化させることで、かかる球面収差の変化を補正する。集光スポットの球面収差が補正過剰(オーバー)方向に変化した場合は、負レンズ32を正レンズ31に近づく方向に変移させ、集光スポットの球面収差が補正不足(アンダー)方向に変化した場合は、負レンズ32を正レンズ33から離れる方向に変移させる。これにより、第1の光ディスクの情報記録面91上の集光スポットは、常に球面収差が良好に補正された状態を保つことができる。
なお、第5の光ピックアップ装置では、負レンズ32を光軸方向に変移させるようにしたが、正レンズ31を光軸方向に変移させるようにしてもよく、また負レンズ32と正レンズ31の両方を光軸方向に変移させるようにしてもよい。
また、第5の光ピックアップ装置では、基板厚誤差補正手段として、負レンズ32を光軸方向に変移させるようにしたビームエキスパンダ33を用いたが、第1の光ピックアップ装置と同様に、光軸方向に変移させるようにしたコリメータを用いてもよいし、第3の光ピックアップ装置と同様に、屈折率分布可変素子を用いてもよい。いずれの場合でも、第1の光ディスクの情報記録面91上の集光スポットは、常に球面収差が良好に補正された状態を保つことができる。
さらに、第5の光ピックアップ装置では、ビームエキスパンダ33は基板厚誤差補正手段として機能に加えて、色収差補正手段としての機能も備える。すなわち、ビームエキスパンダ33の正レンズ31の光ディスク側の面31a上に同心円状の複数の輪帯からなる回折構造が形成されており、半導体レーザ11から射出される光の波長が、長くなる方向に変化した場合に、ビームエキスパンダ33のパワーが大きくなるような波長特性を有するので、半導体レーザ11から出射された光束は、ビームエキスパンダ33と対物レンズ14を経ることによってほとんど色収差なく第1の光ディスクの情報記録面91上に集光される。
第5の光ピックアップ装置に用いるのが好ましいビームエキスパンダとして本出願人による特願2000−330009号にあるようなビームエキスパンダを用いることができる。
第5の光ピックアップ装置では、ビームエキスパンダ33の正レンズ31の少なくとも1面上に回折構造を形成することで、対物レンズ14で発生する色収差を補償したが、負レンズ32の少なくとも1面上に回折構造を形成してもよく、負レンズ32と正レンズ31の両方に回折構造を形成してもよい。
また、第5の光ピックアップ装置では、ビームエキスパンダ33の正レンズ31の少なくとも1面上に回折構造を形成することで、対物レンズ14で発生する色収差を補償したが、半導体レーザ11のモードホッピング等の単色性の悪さに起因して、主に対物レンズ14で発生する色収差を補正するための色収差補正手段として、特願2001−248819号や特願2000−262372号にあるようなコリメータを用いることができる。
さらに、本出願人による特願2001−210659号にあるような色収差補正素子を用いることができる。
次に、図15により図14の光ピックアップ装置の変形例である第6の光ピックアップ装置を説明する。図15に示すように、第6の光ピックアップ装置では、半導体レーザ11と、半導体レーザ11乃至13からの出射光の合成手段である偏光ビームスプリッタ15との間の光路中に、第1の光ディスクに対して情報を記録/再生する場合に、光ディスクの保護基板厚さの製造誤差、対物レンズ等の集光光学系を構成する光学素子の製造誤差、半導体レーザ11の製造誤差による波長の変化、及び温度変化や湿度変化による対物レンズ等の集光光学系を構成する光学素子の形状変化や屈折率変化による球面収差の変化を補正する基板厚誤差補正手段として、1軸アクチュエータ21により光軸方向に変移されるようにしたコリメータ39を備える。これにより、第1の光ディスクの情報記録面91上の集光スポットは、常に球面収差が良好に補正された状態を保つことができる。
また、第6の光ピックアップ装置では、コリメータ39は基板厚誤差補正手段としての機能に加えて、色収差補正手段としての機能も備える。即ち半導体レーザ11のモードホッピング等の単色性の悪さに起因して、主に対物レンズ14で発生する色収差を補正するためにコリメータ39の光ディスク側の面39a上に同心円状の複数の輪帯からなる回折構造を形成した。これにより、コリメータ39は半導体レーザ11から射出される光の波長が、長くなる方向に変化した場合に、コリメータ39のバックフォーカスが短くなる方向に変化するような波長特性を有するので、半導体レーザ11から射出された光束は、コリメータ39及び対物レンズ14を透過することでほとんど色収差なく第1の光ディスクの情報記録面91上に集光される。
〈第4の実施の形態〉
図16は第4の実施の形態による第7の光ピックアップ装置を概略的に示す図である。
図16に示すように、第5の光ピックアップ装置は、図9の第1の光ピックアップ装置と同様に、3種類の記録密度の異なる光ディスクに対して情報の記録/再生が可能な光ピックアップ装置である。
本実施の形態の第7の光ピックアップ装置は、開口数NA1内で回折限界内となるように、半導体レーザ11の光束を、第1の光ディスクの情報記録面91上に集光させることができる対物レンズ34を有する。
第7の光ピックアップ装置では、半導体レーザ11と、半導体レーザ11乃至13からの光束の光路合成手段である偏光ビームスプリッタ15との間の光路中に、第1の光ディスクに対して情報を記録/再生する場合に、光ディスクの保護基板厚さの製造誤差、対物レンズ等の集光光学系を構成する光学素子の製造誤差、半導体レーザ11の製造誤差による波長の変化、及び温度変化や湿度変化による対物レンズ等の集光光学系を構成する光学素子の形状変化や屈折率変化による球面収差の変化を補正する基板厚誤差補正手段として、1軸アクチュエータ21により光軸方向に変移されるようにしたコリメータ39を備える。これにより、第1の光ディスクの情報記録面91上の集光スポットは、常に球面収差が良好に補正された状態を保つことができる。
また、第7の光ピックアップ装置では、コリメータ39は基板厚誤差補正手段としての機能に加えて、色収差補正手段としての機能も備える。すなわち半導体レーザ11のモードホッピング等の単色性の悪さに起因して、主に対物レンズ34で発生する色収差を補正するためにコリメータ39の光ディスク側の面39a上に同心円状の複数の輪帯からなる回折構造を形成した。これにより、コリメータ39は半導体レーザ11から射出される光の波長が、長くなる方向に変化した場合に、コリメータ39のバックフォーカスが短くなる方向に変化するような波長特性を有するので、半導体レーザ11から射出された光束は、コリメータ39及び対物レンズ34を透過することでほとんど色収差なく第1の光ディスクの情報記録面91上に集光される。
第7の光ピックアップ装置では、半導体レーザ12と偏光ビームスプリッタ15との間の光路中であって、半導体レーザ12からの光束と半導体レーザ13からの光束との共通光路中に、光ディスク側の面35a上に同心円状の複数の輪帯からなる回折構造が形成された基板厚差補正手段としての回折光学素子35を備える。
第1の光ディスク専用の対物レンズである対物レンズ34を用いて、半導体レーザ12からの光を用いて第2の光ディスクを記録/再生しようとすると、保護基板厚さの違いにより補正過剰(オーバー)方向に球面収差が変化する。同様に、対物レンズ34を用いて、半導体レーザ13からの光を用いて第3の光ディスクを記録/再生しようとすると、保護基板厚さの違いにより補正過剰(オーバー)方向に球面収差が変化する。第7の光ピックアップ装置では、補正過剰方向に変化した球面収差を、回折光学素子35の回折作用によって、半導体レーザ12からの光束を、第2の光ディスクを記録/再生する際に必要な像側開口数NA2内で回折限界内となるように補正し、さらに半導体レーザ13からの光束を、第3の光ディスクを記録/再生する際に必要な像側開口数NA3内で回折限界内となるように補正するので、第1の光ディスク専用の対物レンズ34を用いて、保護基板厚さの異なる第2の光ディスク及び第3の光ディスクに対する情報の記録/再生が可能である。
図16の光ピックアップ装置において、回折光学素子35の回折構造35aは、半導体レーザ12からの波長λ2の光が入射したときに発生する回折光のうち、最大の回折光量を有する回折光の次数n2と、半導体レーザ13からの波長λ3の光が入射したときに発生する回折光のうち、最大の回折光量を有する回折光の次数n3とが同一となるように最適化され、その最適化波長は、λ2とλ3との中間の波長である。これにより、第2の光ディスクと第3の光ディスクの使用波長領域において、それぞれ高い回折効率を得ることができる。
例えば、回折構造35aを、
680nm<λB<740nm
を満足する波長λBと回折次数1とで最適化すると、半導体レーザ12からの波長650nmの光と、半導体レーザ13からの波長780nmの光と、が回折構造35aに入射したときに発生する、それぞれの光の1次回折光の回折効率をともに95%以上とすることができる。
また、図16の光ピックアップ装置のように、基板厚差補正手段としての回折光学素子35を、半導体レーザ12及び13からの光束は通過するが、半導体レーザ11からの光束は通過しない光路に配置して、半導体レーザ12及び13からの光束の同一次数の回折光を、それぞれ、第2の光ディスク及び第3の光ディスクに対する記録/再生に使用するようにすると、半導体レーザ12からの光束の波長λ2と半導体レーザ13からの光束の波長λ3との中間の波長と、回折次数2で回折構造35aを最適化した場合でも、波長λ2の光と、波長λ3の光とで、ともに高い回折効率を確保できる。このように、回折次数2で回折構造35aを最適化することで、回折次数1で最適化する場合に比して、隣合う回折輪帯の間隔を2倍に広げることができるので、回折輪帯形状の製造誤差による回折効率の低下が小さい回折光学素子35を実現できる。
例えば、n2=n3=1、λB=710nmで回折構造35aを最適化した場合、それぞれの光ディスクの使用波長領域での回折効率は、
第2の光ディスク(DVD、波長650nm) :97.2%
第3の光ディスク(CD、波長780nm) :97.3%
であるのに対し、n2=n3=2、λB=710nmで回折構造35aを最適化した場合でも、
第2の光ディスク(DVD、波長650nm) :89.3%
第3の光ディスク(CD、波長780nm) :89.8%
と、それぞれの光ディスクの使用波長領域で十分な回折効率を確保できる。
また、第7の光ピックアップ装置では、NA1とNA2とNA3との開口切替手段として、対物レンズ34の光源側の光学面34aに後述の図17,図18のような輪帯フィルタが形成されている。また、開口切替手段として、NA1とNA2とNA3とに対応した絞りをそれぞれ、第1の光ディスク、第2の光ディスク、第3の光ディスクを再生する際に機械的に切り替えるようにしてもよい。また、開口切替手段として第1の実施の形態で説明したような液晶を用いた開口切替素子を用いることができる。
また、図16の光ピックアップ装置において、対物レンズ34は、1つのレンズ群から構成された単レンズであって、波長λ1における焦点距離をf1(mm)、中心厚さをd(mm)、対物レンズ14に入射する波長λ1の光束の径をΦ1(mm)、第1の光ディスクに対する情報の記録/再生を行う場合の作動距離をfB1(mm)としたとき、
0.7<d/f1<1.5 (2)
2.8<Φ1<5.8 (3)
fB3>0.5 (4)
を満足するように構成されている。
高密度DVD用の高NA対物レンズとして、特開平10−123410にあるような2つのレンズ群から構成される対物レンズが提案されているが、保護基板厚に1.1mmの違いがある、高密度DVDとCDとの相互互換を共通の対物レンズで行う場合には、対物レンズを、作動距離が確保しやすい単レンズ構成とするのが好ましい。このとき、上記(2)乃至(4)式を満たすことが特に好ましく、これにより、CDの作動距離を十分に確保することができる。この結果、DVDや高密度DVDのように、光ディスクの保護基板厚さの製造公差が比較的厳しく抑えられておらず、保護基板厚さの個体差によるばらつきが大きいCDを記録/再生する場合でもCDと対物レンズとの衝突の可能性を十分小さくすることができる。
図9、11、12、14、15の光ピックアップ装置において、対物レンズ14の回折構造14aは、
340nm<λB<440nm (A)
を満足する波長(以下、λBを最適化波長、または製造波長、またはブレーズ化波長とよぶ)と、回折次数2で最適化されているので、半導体レーザ11からの波長400nmの光が入射した場合には、2次回折光が他のいずれの次数の回折光よりも大きな光量を有するよう発生し、対物レンズ14は、その2次回折光を第1の光ディスクの情報記録面上に集光する。
このとき、対物レンズ14の回折構造14aに、半導体レーザ12からの波長650nmの光が入射した場合に、1次回折光が他のいずれの次数の回折光よりも大きな光量を有するように発生し、対物レンズ14は、その1次回折光を第2の光ディスクの情報記録面上に集光するとともに、対物レンズ14の回折構造14aに、半導体レーザ13からの波長780nmの光が入射した場合に、1次回折光が他のいずれの次数の回折光よりも大きな光量を有するように発生し、対物レンズ14は、その1次回折光を第3の光ディスクの情報記録面上に集光する。
このように、(A)式を満足する波長と回折次数2で、回折構造14aを最適化することで、第1の光ディスクに対する情報の記録/再生に使用する回折光の次数と、第2の光ディスク、及び第3の光ディスクに対する情報の記録/再生に使用する回折光の次数とを異なるようにし、かつ、第1の光ディスクに対する情報の記録/再生に使用する回折光の次数が、第2の光ディスク、及び第3の光ディスクに対する情報の記録/再生に使用する回折光の次数よりも大きくなるようにすると、それぞれの光ディスクの使用波長領域において、それぞれ高い回折効率を得ることができる。
対物レンズ14の回折構造14aを決定する場合には、少なくとも、回折構造14aで発生する半導体レーザ11からの光束の回折光のうち、最大の回折光量を有する次数の回折光の回折効率が70%より大きくなるように、回折構造14aを最適化するのが好ましい。より好ましくは、回折構造14aで発生する半導体レーザ11乃至13からのそれぞれの光束の回折光のうち、最大の回折光量を有する次数の回折光の回折効率がすべて70%より大きくなるように、回折構造14aが最適化されることである。
以下に具体例を示す。ある製造波長λB、回折次数nで最適化された理想的なブレーズ構造が形成された回折レンズを考えると、この回折レンズのある波長λでの回折効率η(λ)は、波長λBにおけるレンズ材料の屈折率と、波長λにおけるレンズ材料の屈折率がほとんど変わらないと仮定すると、次式数1で表される。
Figure 0004062742
図60は、ある製造波長λB、回折次数1で最適化されたブレーズ構造で発生する、波長405nmの光の1次回折光と、波長650nmの光の1次回折光と、波長780nmの光の1次回折光との回折効率の製造波長に対する依存性を表す図である。
図60から、特開2001−195769公報に記載の光ピックアップ装置のように、対物レンズ14の回折構造14aで発生する半導体レーザ11乃至13からの光の同一次数の回折光を、それぞれの光ディスクへの記録/再生再生に使用する場合には、それぞれの光ディスクの使用波長領域で高い回折効率を得ることはできないことがわかる。
図61は、340nm≦λB≦450nmを満足する製造波長と、回折次数2で最適化されたブレーズ構造で発生する波長405nmの光の2次回折光と、波長650nmの光の1次回折光と、波長780nmの光の1次回折光との回折効率の製造波長に対する依存性を表す図である。
図61から、第1の光ディスクへの記録/再生に半導体レーザ11からの光の2次回折光を、第2及び第3の光ディスクへの記録/再生に、それぞれ半導体レーザ12及び半導体レーザ13からの光の1次回折光を利用する場合には、350nmから420nmの間の波長を製造波長に設定した場合に、それぞれの光ディスクの使用波長領域で高い回折効率を得ることができることがわかる。特に、360nmから400nmの間の波長を製造波長に設定すると、それぞれの光ディスクの使用波長領域で80%以上という高い回折効率を得ることができるので好ましい。
次に、対物レンズ14の回折構造14aのブレーズ構造の最適化の方法として好ましい別の例を説明する。
図62は、390nm≦λB≦440nmを満足する製造波長と、回折次数6で最適化されたブレーズ構造で発生する波長405nmの光の6次回折光と、波長650nmの光の4次回折光と、波長780nmの光の3次回折光との回折効率の製造波長に対する依存性を表す図である。
図62から、第1の光ディスクへの記録/再生に半導体レーザ11からの光の6次回折光を、第2の光ディスクへの記録/再生に半導体レーザ12からの光の4次回折光を、第3の光ディスクへの記録/再生に半導体レーザ13からの光の3次回折光を利用する場合には、405nmから425nmの間の波長を製造波長に設定した場合に、それぞれの光ディスクの使用波長領域で高い回折効率を得ることができることがわかる。特に、410nmから420nmの間の波長を製造波長に設定すると、それぞれの光ディスクの使用波長領域で80%以上という高い回折効率を得ることができるので好ましい。
なお、上述した、それぞれの光ディスクの使用波長領域で高い回折効率を得るために好ましい製造波長の範囲は、半導体レーザ11乃至13から発振される光の波長がそれぞれ、
380nm<λ1<420nm
630nm<λ2<670nm
760nm<λ3<800nm
を満たす場合に適用可能である。
半導体レーザ11乃至13からの光束のすべての光束が通過する共通の光路に、基板厚差補正手段を配置すると、図9、11、12、14、15の光ピックアップ装置のように、対物レンズと、基板厚差補正手段としての回折構造とを一体化できるので、光ピックアップ光学系の光学素子の数を削減でき、コストの観点上好ましい。
さらに、上述したように、開口数NA2より外側の領域を通過する半導体レーザ12からの光束と、開口数NA3より外側の領域を通過する半導体レーザ13からの光束と、がフレアとなるように、対物レンズの光学面上に形成した基板厚差補正手段としての回折構造を決定することで、この回折構造に開口切替手段としての機能も持たせることができるので、光ピックアップ光学系の光学素子の数をさらに、削減でき、コストの観点上より好ましい。
また、図9、11、12、14、15の光ピックアップ装置において、対物レンズ14は、1つのレンズ群から構成された単レンズであって、波長λ1における焦点距離をf1(mm)、中心厚さをd(mm)、対物レンズ14に入射する波長λ1の光束の径をΦ1(mm)、第3の光ディスクに対する情報の記録/再生を行う場合の作動距離をfB3(mm)としたとき、
0.7<d/f1<1.5 (2)
2.8<Φ1<5.8 (3)
fB3>0.2 (4)
を満足するように構成されている。
高密度DVD用の高NA対物レンズとして、特開平10−123410にあるような2つのレンズ群から構成される対物レンズが提案されているが、保護基板厚に1.1mmの違いがある、高密度DVDとCDとの相互互換を共通の対物レンズで行う場合には、対物レンズを、作動距離が確保しやすい単レンズ構成とするのが好ましい。このとき、上記(2)、(3)式を満たすことが特に好ましく、これにより、CDの作動距離を(4)式を満たすように十分に確保することができる。CDの作動距離が(4)式を満たしていれば、DVDや高密度DVDのように、光ディスクの保護基板厚さの製造公差が比較的厳しく抑えられておらず、保護基板厚さの個体差によるばらつきが大きいCDを記録/再生する場合でもCDと対物レンズとの衝突の可能性を十分小さくすることができる。
また、図9、11、12、14、15の光ピックアップ装置において、対物レンズ14は、さらに、第3の光ディスクに対する情報の再生及び/または記録を行う場合の結像倍率m3が
m3<0 (5)
を満たすように構成されている。これにより、CDの作動距離の確保が容易になる。
このとき、
−0.25<m3<−0.05 (6)
を満たすのが特に好ましく、CDの作動距離を十分に確保しつつ、第1乃至第3の光ディスクの保護基板の厚さの違いに起因して変化する球面収差補正を良好に行うことができる。
図9、11、12、14、15の光ピックアップ装置において、対物レンズ14は、さらに、第2の光ディスクに対する情報の再生及び/または記録を行う場合の結像倍率m2が
m2<0 (7)
を満たすように構成されている。これにより、DVDの作動距離の確保も容易になる。
このとき、
−0.20<m2<−0.02 (8)
を満たすのが特に好ましく、DVDの作動距離を十分に確保しつつ、第1乃至第3の光ディスクの保護基板の厚さの違いに起因して変化する球面収差補正を良好に行うことができる。
次に、第3の実施の形態による第8の光ピックアップ装置について説明する。図63は第3の実施の形態による第8の光ピックアップ装置を概略的に示す図であって、図9、11、12、14、15の光ピックアップ装置における対物レンズ14の基板厚差補正手段としての機能と、光ディスクの情報記録面上に光源からの光束を集光させるための集光レンズとしての機能を、それぞれ独立した光学素子に分離している。
第8の光ピックアップ装置の対物レンズ100は、半導体レーザ11乃至13からの光束を、それぞれ、第1乃至第3の光ディスクの情報記録面上に集光させるための集光レンズとしての機能を有する屈折型レンズ100aと、屈折型レンズ100aの光束入射面側に配置された、同心円状の複数の輪帯からなる回折構造を有する基板厚差補正手段としての機能を有する回折光学素子100bとを組合わせた複合型対物レンズである。屈折型レンズ100aと回折光学素子100bとは、フランジ部100cによって光軸と同軸に一体化され、2次元アクチュエータ22によって、一体となってトラッキング駆動やフォーカシング駆動される。
屈折型レンズ100aは、1つのレンズ群から構成された単レンズであって、波長λ1における複合型対物レンズ100の焦点距離をf1(mm)、波長λ1における屈折型レンズ100aの中心厚さをd(mm)、複合型対物レンズ100に入射する波長λ1の光束の径をΦ1(mm)、第3の光ディスクに対する情報の記録/再生を行う場合の作動距離をfB3(mm)としたとき、
0.7<d/f1<1.5 (9)
2.8<Φ1<5.8 (10)
fB3>0.2 (11)
を満足するように構成されている。
屈折型レンズ100aとして、少なくとも波長λ1の領域で収差が補正された非球面レンズを用いることができる。
また、回折光学素子100bの回折構造100dは、第1の光ディスクに対する情報の記録/再生に使用する回折光の次数と、第2の光ディスク、及び第3の光ディスクに対する情報の記録/再生に使用する回折光の次数とを異なるようにし、かつ、第1の光ディスクに対する情報の記録/再生に使用する回折光の次数が、第2の光ディスク、及び第3の光ディスクに対する情報の記録/再生に使用する回折光の次数よりも大きくなるように決定されている。
回折光学素子100bの回折構造100dの最適化の方法は、図9、11、12、14、15の光ピックアップ装置における対物レンズ14の回折構造14aのブレーズ構造の最適化の方法と同様なので、説明は割愛する。
さらに、回折光学素子100bの回折構造100dは、波長λB、前記回折次数n1で最適化された複数の輪帯の各位置を、
Φb=n1・(b2・h2+b4・h4+b6・h6+・・・)
により定義される光路差関数で表す場合に(ここで、hは光軸からの高さ(mm)、b2、b4、b6、・・・はそれぞれ2次、4次、6次、・・・の光路差関数係数(回折面係数ともいう)、n1は回折構造100dに半導体レーザ11からの波長λ1の光束が入射した場合に発生する回折光のうち、最大の回折光量を有する回折光の回折次数である)、
PD=Σ(−2・n1・b2
により定義される回折構造のみのパワー(mm-1)が
0.5×10-2<PD<5.0×10-2
を満たすような正のパワーを有するのが好ましく、これにより半導体レーザ11のモードホップによる屈折型レンズ100aの結像位置の移動が小さく抑えることができる。すなわち、回折光学素子100bは、基板厚差補正手段としての機能に加えて、色収差補正手段としての機能も備えている。
第8の光ピックアップ装置の対物レンズ100のように、対物レンズにおける基板厚差補正手段としての機能と、集光レンズとしての機能を、それぞれ独立した光学素子に分離することで、図9、11、12、14、15の光ピックアップ装置における対物レンズ14のように、屈折レンズの光学面上に、回折構造を一体形成する場合に比べ、回折光学素子100bとを作りやすくすることができる。
具体的には、回折光学素子100bの回折構造100dは、平面上あるいは、曲率半径の大きい面上に形成されたブレーズ構造とすると良い。ブレーズ構造を平面上あるいは、曲率半径の大きい面上に形成することで、電子ビーム描画法により高精度にブレーズ構造を作製できるので、ブレーズ構造の形状誤差による回折効率の低下の小さい回折光学素子が得られる。この場合、ブレーズ構造が形成された面とは反対側の光学面を非球面とすると、さらに高性能な回折光学素子を得ることができる。
さらに、第8の光ピックアップ装置は、第1の光ディスクに対して情報を記録/再生する場合に、光ディスクの透明基板厚さの製造誤差、対物レンズ100等の集光光学系を構成する光学素子の製造誤差、半導体レーザ11の製造誤差による波長の変化、温度変化や湿度変化による対物レンズ等の集光光学系を構成する光学素子の形状変化や屈折率変化、による球面収差の変化を補正する基板厚誤差補正手段として、1軸アクチュエータ21によって光軸方向に変移されるコリメータ16を有する。
〈第5の実施の形態〉
図64は第5の実施の形態による第9の光ピックアップ装置を概略的に示す図である。
第9の光ピックアップ装置における、対物レンズ34は、半導体レーザ11の波長領域で収差最小となるように設計された、第1の光ディスク専用の非球面対物レンズである。
対物レンズ34を使用して、半導体レーザ12により第2の光ディスクを記録/再生しようとすると、保護基板厚さの違いにより補正過剰方向に球面収差が変化するが、第9の光ピックアップ装置では、半導体レーザ12からの光だけが通過する光路である、半導体レーザ12と偏光ビームスプリッタ15との間の光路中に、上述の補正過剰方向に変化した球面収差を良好に補正し、対物レンズ34を使用して、半導体レーザ12により第2の光ディスクを記録/再生できるようにするための第1基板厚差補正手段である、カップリングレンズ110を備える。
カップリングレンズ110の光学面上には、同芯円状の複数の輪帯からなる回折構造110aが形成されており、この回折構造は、入射する光の波長が長くなる方向に変化した場合に、球面収差が補正不足方向に変化するような球面収差特性を有する。
さらに、回折構造110aは、半導体レーザ12の波長に一致する波長で最適化されているので、良好な回折効率を得ることができる。
同様に、対物レンズ34を使用して、半導体レーザ13により第3の光ディスクを記録/再生しようとすると、保護基板厚さの違いにより補正過剰方向に球面収差が変化するが、第9の光ピックアップ装置では、半導体レーザ13からの光だけが通過する光路である、半導体レーザ13と偏光ビームスプリッタ17との間の光路中に、上述の補正過剰方向に変化した球面収差を良好に補正し、対物レンズ34を使用して、半導体レーザ13により第3の光ディスクを記録/再生できるようにするための第2基板厚差補正手段である、カップリングレンズ111を備える。
カップリングレンズ111の光学面上には、同芯円状の複数の輪帯からなる回折構造111aが形成されており、この回折構造は、入射する光の波長が長くなる方向に変化した場合に、球面収差が補正不足方向に変化するような球面収差特性を有する。
さらに、回折構造111aは、半導体レーザ13の波長に一致する波長で最適化されているので、良好な回折効率を得ることができる。
また、第9の光ピックアップ装置では、対物レンズ34の光学面上には、NA1とNA2とNA3との開口切替手段として、図17に示すような輪帯フィルタが形成されており、この輪帯フィルタは、図18にあるような波長特性を有するので、情報の記録/再生を行う光ディスクの種類に応じて自動的に開口が切替わるので、光ピックアップ装置の構造を簡略化でき、コストを大幅に低減することができる。
さらに、第9の光ピックアップ装置は、第1の光ディスクに対して情報を記録/再生する場合に、光ディスクの透明基板厚さの製造誤差、対物レンズ34等の集光光学系を構成する光学素子の製造誤差、半導体レーザ11の製造誤差による波長の変化、温度変化や湿度変化による対物レンズ等の集光光学系を構成する光学素子の形状変化や屈折率変化、による球面収差の変化を補正する基板厚誤差補正手段として、1軸アクチュエータ21によって光軸方向に変移されるコリメータ39を有する。
また、コリメータ39は基板厚誤差補正手段としての機能に加えて、色収差補正手段としての機能も備える。すなわち、コリメータ39の光学面上には、同芯円状の複数の輪帯からなる回折構造39aが形成されており、回折構造39aは入射する光の波長が長くなる方向に変化した場合に、コリメータ39のバックフォーカスが短くなる方向に変化するような波長特性を有するので、コリメータ39と対物レンズ34を通過した、半導体レーザ11からの光束は、第1の光ディスクの情報記録面91上にほとんど色収差なく集光される。
〈第6の実施の形態〉
図91は、本実施の形態の対物レンズOBJ1を示す概略図であり、図91(A)は正面図、(B)は側面図、(C)は側面を一部拡大した図である。この対物レンズOBJ1は、例えば、青紫色半導体レーザのような短波長光源を使用する高密度DVD等の高密度光ディスクと、赤色半導体レーザを使用するDVD、DVD−ROM、DVD−RAM、DVD−R、DVD−RW、DVD+RW等のDVD規格の光ディスクと、赤外半導体レーザを使用するCD、CD−R、CD−RW、CD−Video、CD−ROM等のCD規格の光ディスクとに対して共通の対物レンズでコンパチブルに記録/再生するための光ピックアップ装置に適用され、光源から発したレーザ光を光ディスクの情報記録面上に集光させる機能を有している。
対物レンズOBJ1は、非球面である2つの光学面S1、S2を有する単レンズであり、一方の光学面S1上に図91(A)に示したように光軸を中心とした輪帯状の回折構造が形成されている。この回折構造は、図91(C)に示したように、フレネルレンズのように各輪帯の境界に光軸方向に段差Δを持つ。輪帯に入射したレーザ光は、その輪帯の光軸に垂直な方向の幅(本明細書では、かかる輪帯の光軸に垂直な方向の幅を「輪帯ピッチ」と呼ぶ。)と、その輪帯の光軸方向の段差量とによって決定される方向に回折する。
対物レンズOBJ1をプラスチックレンズとすると、軽量にすることができるので対物レンズOBJ1を駆動するアクチュエータへの負担を軽減でき、フォーカスエラーやトッラキングエラーに対する対物レンズOBJ1の追従を高速に行うことができる。
さらに、プラスチックレンズは、所望の金型を精度良く製作することで、射出成形により高精度に量産することが可能であるので、対物レンズOBJ1の高性能化や低コスト化を図ることが可能となる。また、プラスチック材料は粘性が低いので、微細な構造である回折構造を高精度に転写することができ、形状誤差による回折効率の低下の小さい対物レンズを得ることができる。
一方、対物レンズOBJ1をガラスレンズとすると、温度変化による屈折率変化の影響を受けにくくなるので、高密度光ディスクに対して記録/再生中にアクチュエータから放熱等によりピックアップ装置の温度が上昇しても、その集光性能が劣化することはない。
また、ガラス材料は、一般的に400nm程度の短波長のレーザ光に対して透過率や耐光性が高いので、高密度光ディスク用の対物レンズとして信頼性の高いレンズを得ることができる。対物レンズOBJ1をガラスレンズとする場合には、ガラス転移点Tgが400℃以下であるガラス材料を使用して、金型を用いた成型法で作製するのが好ましい。これにより、通常のガラス材料よりも低い温度での成形が可能となるので、成形時間の短縮や金型の長寿命化等に関して有利となり、結果として対物レンズ1の低コスト化を実現できる。このようなガラス材料として、住田光学ガラス社製のPG375(商品名)やPG325(商品名)等がある。
図92は、この対物レンズOBJ1を使用した光ピックアッフ装置PU1を示す概略図である。透明基板の厚さの異なる3種類の光ディスクは、透明基板が最も薄く記録密度が最も大きい、高密度DVDである第1光ディスクD1と、透明基板が0.6mmであるDVD規格の第2の光ディスクD2と、透明基板が1.2mmであるCD規格の第3の光ディスクD3である。
光ピックアップ装置PU1は、第1の光ディスクD1の記録/再生用の光を発生する第1の光源である半導体レーザLD1と、第2の光ディスクD2の記録・再生用の光を発生する第2の光源である半導体レーザLD2と、第3の光ディスクD3の記録・再生用の光を発生する第3の光源である半導体レーザLD3、の3種類の半導体レーザを備えており、これらの半導体レーザは、情報を記録/再生する光ディスクに応じて選択的に発光される。
半導体レーザLD1は、波長400nm程度のレーザ光を発生するGaN系青紫色レーザである。また、波長400nm程度のレーザ光を発生する光源として、上記のGaN系青紫色レーザのほかに、2次高調波を利用したSHG青紫色レーザを使用してもよい。半導体レーザLD2は、波長650nm程度のレーザ光を発生する赤色半導体レーザであり、半導体レーザLD3は、波長780nm程度のレーザ光を射出する赤外半導体レーザである。
対物レンズOBJ1は、半導体レーザLD1から射出されコリメートレンズCLを介した平行光束を第1の光ディスクD1の透明基板を介して情報記録面Dr1上に、第1の開口数(NA1)内で回折限界内となるように集光し、半導体レーザLD2から射出された発散光束を第2の光ディスクD2の透明基板を介して情報記録面Dr2上に、第2の開口数(NA2)内で回折限界内となるように集光し、半導体レーザLD3から射出された発散光束を第3の光ディスクD3の透明基板を介して情報記録面Dr3上に、第3の開口数(NA3)内で回折限界内となるように集光するレンズであって、NA1は0.80以上とされ、NA2は0.60乃至0.70とされ、NA3は0.45乃至0.55とされている。
このように、第2の光ディスクD2及び第3の光ディスクD3に対して情報の記録/再生を行う際に、対物レンズ1に対して、半導体レーザLD2及び半導体レーザLD3から射出された発散光束を入射するようにすると、透明基板の厚い第2の光ディスクD2及び第3の光ディスクD3に対して十分な作動距離を確保できる。
対物レンズOBJ1の光源側の光学面2上に形成された回折構造は、図91(A)に示すように、光軸から周辺に向かって第1の光ディスクD1乃至第3の光ディスクD3のすべての光ディスクに対して記録/再生を行うのに使用されるNA3内に対応した共通領域と、第1の光ディスクD1及び第2の光ディスクD2に対して記録/再生を行うのに使用されるNA3〜NA2に対応した第1の周辺領域と、第1の光ディスクD1に対して記録/再生を行うのに使用されるNA2〜NA1に対応した第2の周辺領域とに分割されている。
共通領域に形成された回折構造は、
350nm<λB<420nm
を満たす波長λBの光が入射した場合に、2次回折光が理論上100%の回折効率で発生するように最適化されている。このように決定された回折構造に、半導体レーザLD1から射出された光束が入射した場合、2次回折光が最大の回折光量を有するように発生し、対物レンズ1はこの2次回折光を、第1の光ディスクD1の記録/再生用のビームとしてその情報記録面Dr1上に集光する。また、半導体レーザLD2から射出された光束が入射した場合、1次回折光が最大の回折光量を有するように発生し、対物レンズ1はこの1次回折光を、第2の光ディスクD2の記録/再生用のビームとしてその情報記録面Dr2上に集光する。また、半導体レーザLD3から射出された光束が入射した場合、1次回折光が最大の回折光量を有するように発生し、対物レンズ1はこの1次回折光を、第3の光ディスクD3の記録/再生用のビームとしてその情報記録面Dr3上に集光する。
このように、共通領域に形成された回折構造で発生する最大の回折光量を有する回折光の次数を、
|n2|=INT(λ1・|n1|/λ2)
|n3|=INT(λ1・|n1|/λ3)
|n1|>|n2|≧|n3|
|INT(λ1・|n1|/λ2)−(λ1・|n1|/λ2)│<0.4
|INT(λ1・|n1|/λ3)−(λ1・|n1|/λ3)│<0.4
(ただし、n1は0、±1以外の整数であり、INT(λ1・│n1│/λ2)はλ1・|n1|/λ2を四捨五入して得られる整数であり、INT(λ1・|n1|/λ3)はλ1・|n1|/λ3を四捨五入して得られる整数である。)
を満たすように決定することで、半導体レーザLD1乃至LD3のレーザ光に対して、それぞれn1次回折光、n2次回折光、n3次回折光の回折効率を高いものとすることができる。
例えば、半導体レーザLD1、LD2、LD3の波長がそれぞれ405nm、650nm、780nmである場合、λBとして波長375nmを選択すると、それぞれの光ディスクの記録/再生用のビームの回折効率は、
405nmの2次回折光の回折効率:93.0%
650nmの1次回折光の回折効率:92.5%
780nmの1次回折光の回折効率:99.5%
となる。
NA3〜NA2に対応した第1の周辺領域に形成された回折構造も、共通領域に形成された回折構造と同様に、
350nm<λB<420nm
を満たす波長λBの光が入射した場合に、2次回折光が理論上100%の回折効率で発生するように最適化されている。
また、第2の周辺領域に形成された回折構造で発生する回折光は、第1の光ディスクD1に対して記録/再生を行うのに使用され、第2の光ディスクD2及び第3の光ディスクD3に対して記録/再生を行うのには使用されないので、第2の周辺領域においては、半導体レーザLD1から射出される光束の回折効率が重要となる。従って、第2の周辺領域に形成された回折構造に半導体レーザLD2と同じ波長の光が入射すると、2次回折光が理論上100%の回折効率で発生するように最適化した。
また、共通領域に形成された回折構造は、
405nm<λB<425nm
を満たす波長λBの光が入射した場合に、6次回折光が理論上100%の回折効率で発生するように最適化しても良い。このように決定された回折構造に、半導体レーザLD1から射出された光束が入射した場合、6次回折光が最大の回折光量を有するように発生し、半導体レーザLD2から射出された光束が入射した場合、4次回折光が最大の回折光量を有するように発生し、半導体レーザLD3から射出された光束が入射した場合、3次回折光が最大の回折光量を有するように発生する。
例えば、半導体レーザLD1、LD2、LD3の波長がそれぞれ405nm、650nm、780nmである場合、λBとして波長415nmを選択すると、それぞれの光ディスクの記録/再生用のビームの回折効率は、
405nmの6次回折光の回折効率;93.0%
650nmの4次回折光の回折効率:90.9%
780nmの3次回折光の回折効率;88.4%
となる。
また、共通領域に形成された回折構造は、
390nm<λB<420nm
を満たす波長λBの光が入射した場合に、8次回折光が理論上100%の回折効率で発生するように最適化しても良い。このように決定された回折構造に、半導体レーザLD1から射出された光束が入射した場合、8次回折光が最大の回折光量を有するように発生し、半導体レーザLD2から射出された光束が入射した場合、5次回折光が最大の回折光量を有するように発生し、半導体レーザLD3から射出された光束が入射した場合、4次回折光が最大の回折光量を有するように発生する。
例えば、半導体レーザLD1、LD2、LD3の波長がそれぞれ405nm、650nm、780nmである場合、λBとして波長405nmを選択すると、それぞれの光ディスクの記録/再生用のビームの回折効率は、
405nmの8次回折光の回折効率:100%
650nmの5次回折光の回折効率:99.9%
780nmの4次回折光の回折効率:92.5%
となる。
また、第1及び第2の周辺領域に形成された回折構造は、第1及び第2の周辺領域を通過して第3の光ディスクD3の情報記録面Dr3上に到達する半導体レーザLD3から射出された光束に対して大きな球面収差が付加されるように決定されており、第1の周辺領域を通過する半導体レーザLD3から射出された光束は、第3の光ディスクD3の記録/再生に使用されるスポットの形成に寄与しないフレア成分となる。
同様に、第2の周辺領域に形成された回折構造は、第2の周辺領域を通過して第2の光ディスクD2の情報記録面上に到達する半導体レーザLD2から射出された光束に対して大きな球面収差が付加されるように決定されており、第2の周辺領域を通過する半導体レーザLD2から射出された光束は、第2の光ディスクD2の記録/再生に使用されるスポットの形成に寄与しないフレア成分となる。
このように第2の光ディスクD2及び第3の光ディスクD3に対して記録/再生を行うのに使用される開口数より周辺の領域を通過する光束に対して、故意に大きな球面収差を付加してフレア成分とすると、自動的に開口切替が行われるので、NA2及びNA3に対応する絞りを別途設ける必要がなく光ピックアップ装置の構造が簡単になり好ましい。すなわち、対物レンズOBJ1の光学面S1上に形成された回折構造は、基板厚差補正手段としての機能と、開口切替手段としての機能を有している。
また、対物レンズOBJ1では、第1の光ディスクD1の記録/再生用のビームとして、共通領域、第1の周辺領域、及び第2の周辺領域のそれぞれの領域で互いに同じ次数の回折光を利用するようにしたが、それぞれの領域で互いに異なる次数の回折光を利用するようにしてもよい。
例えば、共通領域と第1の周辺領域では、半導体レーザLD1から射出された光束に対して2次回折光が最大の回折光量を有するように、その回折構造を決定し、第2の周辺領域では、半導体レーザLD1から射出された光束に対して4次回折光が最大の回折光量を有するように、その回折構造を決定すると、2次回折光を利用する場合に比して、第2の周辺領域における回折構造の隣り合う輪帯の間隔を広げることができ、輪帯の形状誤差による回折効率の低下を防ぐことができる。このとき、第2の周辺領域に形成された回折構造の隣り合う輪帯どうしの光路差は、半導体レーザLD2から射出された光束に対しては、波長の2.5倍であるので、半導体レーザLD2から射出された光束が第2の周辺領域に形成された回折構造に入射する場合、2次回折光と、2次回折光よりも大きな角度で回折する3次回折光とが同程度の回折光量で発生する。従って、第2の周辺領域を通過する半導体レーザLD2から射出された光束によるフレア成分が、2次回折光によるフレア成分と3次回折光によるフレア成分とに分離されるとともに、それぞれの次数の回折光によるフレア成分強度を小さくすることができるので、光検出器PD2での信号の検出エラーを抑えることが可能となる。
また、共通領域と第1の周辺領域では、半導体レーザLD1から射出された光束に対して2次回折光が最大の回折光量を有するように、その回折構造を決定し、第2の周辺領域では、半導体レーザLD1から射出された光束に対して3次回折光が最大の回折光量を有するように、その回折構造を決定すると、第2の周辺領域に形成された回折構造の隣り合う輪帯どうしの光路差は、半導体レーザLD3から射出された光束に対しては、波長の1.5倍であるので、半導体レーザLD3から射出された光束が第2の周辺領域に形成された回折構造に入射する場合、1次回折光と、1次回折光よりも大きな角度で回折する2次回折光とが同程度の回折光量で発生する。従って、第2の周辺側域を通過する半導体レーザLD2から射出された光束によるフレア成分が、1次回折光によるフレア成分と2次回折
光によるフレア成分とに分離されるとともに、それぞれの次数の回折光によるフレア成分強度を小さくすることができるので、光検出器PD2での信号の検出エラーを抑えることが可能となる。
第1の光ディスクD1に対して情報/記録の再生を行う場合、半導体レーザLD1から出射された発散光束は、偏光ビームスプリッタBS1を透過した後、コリメートレンズCLによって平行光束とされ、偏光ビームスプリッタBS2、偏光ビームスプリッタBS3、および、図示しない絞りを通過した後、対物レンズOBJ1によって第1の光ディスクD1の透明基板を介して情報記録面Dr1上に集光されるスポットとなる。対物レンズ1は、その周辺に配置されたアクチュエータACによってフォーカス制御及びトラッキング制御される。
そして、情報記録面Dr1で情報ピットにより変調された反射光束は、再び対物レンズOBJ1、絞り、偏光ビームスプリッタBS3、偏光ビームスプリッタBS2、を通過した後、コリメートレンズCLによって収斂光束とされ、偏光ビームスプリッタBS1によって反射され、シリンドリカルレンズCY1及び凹レンズN1を経ることによって非点収差が与えられ、光検出器PD1に収束する。そして、光検出器PD1の出力信号を用いて第1の光ディスクD1に対して情報の記録/再生を行うことができる。
第2の光ディスクD2に対して情報の記録/再生を行う場合、半導体レーザLD2から出射された発散光束は、偏光ビームスプリッタBS4を透過した後、偏光ビームスプリッタBS2によって反射され、偏光ビームスプリッタBS3、および、図示しない絞りを通過した後、対物レンズOBJ1によって第2の光ディスクD2の透明基板を介して情報記録面Dr2上に集光されるスポットとなる。
そして、情報記録面Dr2で情報ピットにより変調された反射光束は、再び対物レンズOBJ1、絞り、偏光ビームスプリッタBS3、を通過した後、偏光ビームスプリッタBS2によって反射された後、偏光ビームスプリッタBS4によって反射され、シリンドリカルレンズCY2及び凹レンズN2を経ることによって非点収差が与えられ、光検出器PD2に収束する。そして、光検出器PD2の出力信号を用いて第2の光ディスクD2に対して情報の記録/再生を行うことができる。
第3の光ディスクD3に対して情報の記録/再生を行う場合、半導体レーザLD3から出射された発散光束は、偏光ビームスプリッタBS5を透過した後、偏光ビームスプリッタBS3によって反射され、図示しない絞りを通過した後、対物レンズOBJ1によって第3の光ディスクD3の透明基板を介して情報記録面Dr3上に集光されるスポットとなる。
そして、情報記録面Dr3で情報ピットにより変調された反射光束は、再び対物レンズOBJ1、絞り、を通過した後、偏光ビームスプリッタBS3、および、偏光ビームスプリッタBS5によって反射された後、シリンドリカルレンズCY3及び凹レンズN3を経ることによって非点収差が与えられ、光検出器PD3に収束する。そして、光検出器PD3の出力信号を用いて第3の光ディスクD3に対して情報の記録/再生を行うことができる。
また、光ピックアップ装置PU1は、半導体レーザLD1と対物レンズOBJ1との間、半導体レーザLD2と対物レンズOBJ1との間、及び半導体レーザLD3と対物レンズOBJ1との間の、それぞれの光路中に図示しない1/4波長板を備える。
〈第7の実施の形態〉
図93は、本実施の形態の対物レンズOBJ2を示す概略図であり、図93(A)は正面図、(B)は側面図、(C)は側面を一部拡大した図である。この対物レンズOBJ1は、例えば、青紫色半導体レーザのような短波長光源を使用する高密度DVD等の高密度光ディスクと、赤色半導体レーザを使用するDVD、DVD−ROM、DVD−RAM、DVD−R、DVD−RW、DVD+RW等のDVD規格の光ディスクと、赤外半導体レーザを使用するCD、CD−R、CD−RW、CD−Video、CD−ROM等のCD規格の光ディスクとに対して共通の対物レンズでコンパチブルに記録/再生するための光ピックアップ装置に適用され、光源から発したレーザ光を光ディスクの情報記録面上に集光させる機能を有している。
対物レンズOBJ2は、非球面である2つの光学面S3、S4を有する光源から発したレーザ光をそれぞれの光ディスクの情報記録面上に集光させるための集光レンズとしての第1の光学素子L1と、2つの光学面S1、S2を有する基板厚差補正手段としての第2の光学素子L2とから構成された複合型対物レンズであり、非球面である第2の光学素子L2の光学面S1上に図93(A)に示したように光軸を中心とした輪帯状の回折構造が形成されている。この回折構造は、図93(C)に示したように、フレネルレンズのように各輪帯の境界に光軸方向に段差Δを持つ。輪帯に入射したレーザ光は、その輪帯ピッチと、その輪帯の光軸方向の段差量とによって決定される方向に回折する。
第1の光学素子L1と第2の光学素子L2は当接部Mによって嵌合されている。当接部Mは金型を用いた成型法により光学面と一体成形されることで、その形状を高精度に作製することが可能であり、第1の光学素子L1と第2の光学素子L2との間の光軸に垂直な方向の位置決めや光軸方向の位置決めを高精度に行うことができる。
対物レンズOBJ2は、赤色半導体レーザから射出された発散光束をDVDの情報記録面上に集光し、赤外半導体レーザから射出された発散光束をCDの情報記録面上に集光する。このように対物レンズに対して発散光束が入射する場合、トッラキングエラーにより発生するコマ収差が問題となる。これは、トラッキングエラーにより半導体レーザの発光点に対して対物レンズが偏芯すると、発光点が対物レンズに対して軸外物点となるからである。従って、発散光束を入射させて使用する対物レンズの設計においては、良好なトラッキング特性を得るために、軸外特性(像高特性)のコマ収差を補正しておく必要がある。しかるに、対物レンズに対して発散光束が入射する場合には、平行光束を入射する場合に比して、軸外特性のコマ収差の発生量は大きくなる傾向がある。そこで、対物レンズOBJ2では、第1の光学素子L1と第2の光学素子L2とから構成される複合型対物レンズとすることで、設計自由度(光学面の数)を増やし、DVDやCDの軸外特性のコマ収差を良好に補正したので、DVDやCDの記録/再生時に良好なトラッキング特性を得ることができる。
ところで、高密度光ディスクのように対物レンズの開口数が0.85程度に設定された場合、光学面(特に、光源側の光学面)の曲率半径が小さくなる。このような曲率半径の小さい光学面に輪帯構造を設けようとすると、輪帯ピッチが非常に小さくなってしまう(数μ程度。)
光学素子を成形するために用いられる金型は、SPDT(Single-Point Diamond Turning)と呼ばれる微小径のダイヤモンドバイトで切削する方法で作製されている。しかし、SPDTによる金型加工においては、光学面上にピッチが数μm程度の輪帯構造のごとき微細形状を形成する場合、ダイヤモンドバイトの先端形状が金型に転写されることで発生する位相不整合部分によるレーザ光の利用効率低下が問題となる。また、フォトリソグラフィとエッチングとを繰り返し適用するバイナリオプティクス作成技術や電子ビーム描画技術は、高精度に微細形状を形成するのに適した光学素子の作製法であるが、高密度光ディスク用の対物レンズのように、曲率半径が小さい光学面上に微細形状を有する光学素子を作製した例や、光学素子を射出成形するために用いる金型を作製した例は報告されていない。
さらに、将来、SPDTによる金型加工において、位相不整合部分によるレーザビームの利用効率低下が問題とならない程度に、先端形状の小さいダイヤモンドバイトを使用することで、高精度に微細形状の作成が技術的に可能となったり、バイナリオプティクス作成技術や電子ビーム描画技術により、曲率半径が小さい光学面上に微細形状を有する光学素子の作製や、光学素子を射出成形するために用いる金型の作製が技術的に可能となった場合でも、曲率半径が小さい光学面上にピッチが数μ程度の輪帯構造を設けると、輪帯構造の段差部分による影の影響が大きくなるためにレーザ光の利用効率が低下するという課題が残る。
そこで、対物レンズOBJ2では、第1の光学素子L1の近軸パワーP1(mm-1)と、第2の光学素子L2の近軸パワーP2(mm-1)とを、
|P1/P2|≦0.2
を満足するように設定している。光学面S1上に回折構造が形成された第2の光学素子L2の曲率半径を大きく設定することで、輪帯構造の段差部分での影の影響によるレーザ光の利用効率低下を小さくするとともに、第1の光学素子L1の第2の光学素子L2側の光学面S3の曲率半径を小さく設定することで、対物レンズOBJ2の高開口数化を図った。
さらに、第2の光学素子L2の近軸パワーに対する第1の光学素子L1の近軸パワーの比を大きく設定することで、光束の集光作用をもっぱら第1の光学素子L1に持たせたので、対物レンズOBJ2の光ディスク側の光学面S4をマージナル光線が通過する高さが大きく、対物レンズOBJ1のように、対物レンズを単レンズ構成とする場合と同程度の作動距離を確保している。
さらに、第2の光学素子L2の近軸パワーP2は、第2の光学素子L2を透過して第1の光学素子L1に入射する光束のマージナル光線が収斂光線となるように決定されている。これにより、光学面3Sの有効径が小さくなるので第1の光学素子L1の外径を小さくすることができ、それに伴い第2の光学素子L2の外径も小さくできるので、対物レンズOBJ2の小型化に有利である。
光学面S1上に形成された回折構造は、対物レンズOBJ1の光学面S1上に形成された回折構造と同様の考え方により決定されているので、ここでは、その詳細な説明は省略する。
図94は、この対物レンズOBJ2を使用した光ピックアップ装置PU2を示す概略図である。光ピックアップ装置PU2は、対物レンズが複合型対物レンズである対物レンズOBJ2となっている以外は、光ピックアップ装置PU1と同様であるので、ここでは、光ピックアップ装置PU2に関する詳細な説明は省略する。
なお、本発明の実施の形態例に用いることのできる対物レンズとしては、1枚のレンズから構成される対物レンズのほかに、2枚以上の複数のレンズから構成される対物レンズも含まれる。
次に、本発明を実施例1乃至実施例14により更に具体的に説明する。各実施例のレンズにおける非球面は光軸方向をX軸、光軸に垂直な方向の高さをh、屈折面の曲率半径をrとするとき次式の数2で表す。但し、κを円すい係数、A2iを非球面係数とする。
Figure 0004062742
また、各実施例における回折面は光路差関数Φbとして次式の数3により表すことができる。ここで、hは光軸に垂直な高さであり、b2iは光路差関数の係数であり、nは回折面で発生する回折光のうち、最大の回折光量を有する回折光の次数である。
Figure 0004062742
なお、以下の表または図では、10のべき乗の表現にE(またはe)を用いて、例えば、E−02(=10-2)のように表す場合がある。
〈実施例1〉
実施例1は、上述の図9,図11,図12,図14,図15の各光ピックアップ装置に適用することのできる対物レンズであって、記録密度の異なる3種類の光ディスクに対して情報の記録/再生が可能である。実施例1の対物レンズ特性を得るに当たって、第1の光ディスク(高密度DVD)用の第1の光源の波長λ1を405nm、第2の光ディスク(DVD)用の第2の光源の波長λ2を650nm、第3の光ディスク用(CD)の第3の光源の波長λ3を780nmとし、第1の光ディスクの保護基板厚さt1は0.1mm、第2の光ディスクの保護基板厚さt2は0.6mm、第3の光ディスクの保護基板厚さt3は1.2mmとした。また、第1乃至第3の光ディスクに対して情報の記録/再生を行うのに必要な対物レンズの像側開口数NA1、NA2、NA3として、それぞれ0.85、0.65、0.50を想定している。
図20乃至図22に、実施例1の対物レンズのλ1=405nm、λ2=650nm、λ3=780nmにおける光路図を示す。実施例1の対物レンズは、光源側の非球面上に同心円状の複数の輪帯からなる回折構造を有しているが、本明細書中の光路図においては、回折構造は省略されている。実施例1の対物レンズの回折構造及び非球面形状は、波長λ1乃至λ3の光束の1次回折光がそれぞれ第1乃至第3の光ディスクの情報記録面上に良好な波面を形成するように決定される。また、実施例1の対物レンズは、λ1=405nmでは無限仕様とし、λ2=650nm、及びλ3=780nmでは有限仕様とした。このように、λ2=650nm、及びλ3=780nmで有限仕様とし、第1の光ディスクに比して保護基板厚さの大きい第2、第3の光ディスクに対して発散光束を入射するようにすると、作動距離(対物レンズ最終面と、光ディスクの光束入射面との間隔)を十分に確保できるとともに、回折構造が補正しなくてはならない、異なる種類の光ディスクの保護基板厚さの違いに起因して発生する球面収差量を軽減することができるので、隣り合う輪帯の間隔を広げることができ、輪帯形状の製造誤差による回折効率の低下を緩和することができる。
図23に実施例1の対物レンズのλ1=405nmに対する開口数0.85までの球面収差図を示す。また、図24にλ2=650nmに対する開口数0.65までの球面収差図を示す。また、図25にλ3=780nmに対する開口数0.50までの球面収差図を示す。図23乃至図25の球面収差図より明らかなように、回折構造の作用と結像倍率の違いとを利用することで、3種類の光ディスクの保護基板厚さの違いにより発生する球面収差を、それぞれの光ディスクに対して情報の記録/再生を行うのに必要な像側開口数内で良好に補正している。なお、実施例1の対物レンズの波面収差は、
λ1=405nm、NA1 0.85、t1=0.1mmのとき、0.007λ1 rms
λ2=650nm、NA2 0.65、t2=0.6mmのとき、0.003λ2 rms
λ3=780nm、NA3 0.50、t3=1.2mmのとき、0.002λ3 rms
である。
また、図26にλ2=650nmに対する別の球面収差図を示す。図26は、λ1=405nmとNA1 0.85との組み合わせで決定される絞り径と等しい光束径のλ2=650nmの光を入射させた場合の、実施例1の対物レンズの球面収差図である。図26の球面収差図から理解されるように、実施例1の対物レンズは、λ2=650nm、t2=0.6mmの組み合わせに対して、NA2 0.65までの光束をほぼ無収差で第2の光ディスクの情報記録面上に集光させ、NA2 0.65より外側を通過する光束は、大きな球面収差(以下、「フレア」と呼ぶ)を発生させることで、第2の光ディスクの情報記録面92上に集光しないようにしている。
また、図27にλ3=780nmに対する別の球面収差図を示す。図27は、λ1=405nmとNA1 0.85との組み合わせで決定される絞り径と等しい光束径のλ3=780nmの光を入射させた場合の、実施例1の対物レンズの球面収差図である。図27の球面収差図から理解されるように、実施例1の対物レンズは、λ3=780nm、t3=1.2mmの組み合わせに対して、NA3 0.50までの光束をほぼ無収差で第3の光ディスクの情報記録面93上に集光させ、NA3 0.50より外側を通過する光束は、フレアを発生させることで、第3の光ディスクの情報記録面93上に集光しないようにしている。
このように、第2及び第3の光ディスクに対して情報の記録/再生を行う際に、必要開口数より外側の領域を通過する光束をフレアとすると、光ディスクの情報記録面上のスポットが必要以上に小さくならないので、光ディスクの保護基板がが光軸に対して傾いた(以下、「ディスクスキュー」と呼ぶ)場合に発生するコマ収差を小さくすることができ、ディスクスキューに対するマージンを確保できる。さらに、記録密度の異なる光ディスクに対応した開口切替手段を設ける必要がないので、構造が簡単になり好ましい。
なお、実施例1の対物レンズでは、第1の光ディスク(高密度DVD)として、保護基板厚さt1を0.1mm、光源の波長を405nm、像側開口数を0.85と仮定して光学設計を進めたが、これ以外の仕様である光ディスクに対しても本発明は適用が可能である。
また、第2の光ディスク(DVD)に対する像側開口数を0.65、第3の光ディスク(CD)に対する像側開口数を0.50として光学設計を進めたが、これ以外の仕様である光ディスクに対しても本発明は適用が可能である。
また、本明細書において、「球面収差を(良好に)補正する」、「波面収差を(良好に)補正する」とは、光源から射出された光束が、光ディスクの情報記録面上に、その光ディスクに対して情報の記録/再生を行うのに必要な対物レンズの所定の像側開口数内で、波面収差が回折限界内(λを光源の波長としたとき、0.07λrms以下、より好ましくは0.05λrms以下、)の状態で集光するように収差を補正することを指す。
表1に実施例1の対物レンズのレンズデータを示す。表中、f1、f2、f3はそれぞれ、波長λ1、λ2、λ3における対物レンズの焦点距離、m1、m2、m3はそれぞれ、波長λ1、λ2、λ3における対物レンズの結像倍率、r(mm)は曲率半径、d(mm)は面間隔、Nλ1、Nλ2、Nλ3はそれぞれ、波長λ1、λ2、λ3における屈折率、νdはd線におけるアッベ数を表すが、以降の実施例2乃至14のレンズデータにおいても同様である。
Figure 0004062742
また、実施例1の対物レンズの光源側の非球面上に形成された回折構造は、波長λ1、回折次数1で最適化されているが、波長λ1以外の波長や、1以外の回折次数で、この回折構造を最適化してもよい。いずれの場合でも、若干の設計変更で本発明の光ピックアップ装置に適用可能な対物レンズとすることができる。
〈実施例2〉
実施例2は、上述の図12の光ピックアップ装置に適用することのできる集光光学系であって、記録密度の異なる3種類の光ディスクに対して、情報の記録/再生が可能である。第1の光ディスク(高密度DVD)として、保護基板厚さt1を0.1mm、光源の波長λ1を405nm、像側開口数NA1を0.85とし、第2の光ディスク(DVD)として、保護基板厚さt2を0.6mm、光源の波長λ2を650nm、像側開口数NA2を0.65とし、第3の光ディスク(CD)として、保護基板厚さt3を1.2mm、光源の波長λ3を780nm、像側開口数NA3を0.50とした。
図28に実施例2の集光光学系のλ1=405nmにおける光路図を示す。実施例2の集光光学系のコリメータ(図12のコリメータ29に対応する。)は、光ディスク側の非球面上に形成した同心円状の複数の輪帯からなる回折構造の作用により、第1の光源から射出される光の波長が405nmから長波長側に変化した場合に、コリメータのバックフォーカスが短くなるような波長特性を有する。第1の光源から射出される光の波長が405nmから長波長側に変化した場合の、コリメータのバックフォーカスの変化量の符号を、同じ量の波長変化に対する対物レンズのバックフォーカスの変化量の符号と逆符合とし、さらに、コリメータの焦点距離の二乗で規格化したバックフォーカスの変化量の絶対値を、同じ量の波長変化に対する対物レンズの焦点距離の二乗で規格化したバックフォーカスの変化量の絶対値とほぼ同じとしたので、第1の光源から射出される光の波長が変化した場合の対物レンズの焦点位置の変化を補償することができる。
図29に実施例2の集光光学系の対物レンズのλ1=405nm±10nmに対する開口数0.85までの球面収差図を示す。また、図30に実施例2の集光光学系のコリメータと対物レンズとの合成系のλ1=405nm±10nmに対する開口数0.85までの球面収差図を示す。図29の球面収差図に示すように、実施例2の対物レンズは基準波長405nmから+10nm波長が変化すると、近軸焦点位置が0.005mm変化するが、上述したような波長特性を有するコリメータと組み合わせることで、図30の球面収差図にあるように、基準波長405nmから+10nm波長が変化した場合の近軸焦点位置の変化量を0.002mmと小さくすることができる。
なお、青紫色半導体レーザのモードホッピングによる波長変化量を+1nmと仮定すると、実施例2の対物レンズのみの系でのモードホッピング時の波面収差のデフォーカス成分は、0.160λrmsと回折限界を超えてしまうが、実施例2の集光光学系のコリメータと対物レンズとの合成系でのモードホッピング時の波面収差のデフォーカス成分は、0.001λrms以下であり、波長変化による対物レンズの最良像面位置の変化が良好に補償されていることがわかる。
さらに、実施例2の集光光学系は、第1の光ディスクに対して情報を記録/再生する場合に、光ディスクの保護基板厚さの製造誤差、対物レンズやコリメータ等の集光光学系を構成する光学素子の製造誤差、光源の製造誤差による波長の変化、及び温度変化や湿度変化による対物レンズやコリメータ等の集光光学系を構成する光学素子の形状変化や屈折率変化による球面収差の変化を補正する基板厚誤差補正手段としての屈折率分布可変素子(図12の屈折率分布可変素子23に対応する。)を有する。
このような屈折率分布可変素子としては、屈折率分布可変材料層を有し、電場または磁場または温度を印加することにより屈折率分布可変材料層の屈折率分布を変化させることのできる素子があげられる。具体的には、屈折率分布可変材料層は液晶層であって、液晶層は互いに対向する透明電極との間に配置され、かかる透明電極に電圧を印加することで液晶層の液晶分子の配向状態を電気的に制御することで液晶層内の屈折率分布を変化させることができる素子や、屈折率分布可変材料層は電気光学材料層であって、電気光学材料層は互いに対向する透明電極との間に配置され、透明電極に電圧を印加することで電気光学材料層の屈折率を電気的に制御することで電気光学材料層内の屈折率分布を変化させることができる素子等がある。
実施例2では、このような屈折率分布可変材料層の光軸に垂直な方向に沿った屈折率分布N(λ,h)を、hを光軸からの高さ(mm)、N0(λ)を屈折率分布可変材料層の光軸上の波長λにおける屈折率、A2iを屈折率分布関数係数として、
N(λ,h)=N0(λ)+ΣA2i・h2i (B)
で表現される屈折率分布関数で表す。
表2に、光源の製造誤差による基準波長(405nm)に対する±10nmの波長誤差、基準温度(25℃)に対する±30℃の温度変化によるプラスチックレンズの屈折率変化、第1の光ディスクの基準保護基板厚さ(0.1mm)に対する±0.02mmの製造誤差、により集光光学系で発生する球面収差の変化を、屈折率分布可変材料層の屈折率分布を変化させることで補正した結果を示す。プラスチックレンズはガラスレンズに比べて温度変化による屈折率変化が大きいので、温度変化時は、プラスチックレンズの屈折率変化のみを考慮し、その変化量は、-10×10-5/℃である。
Figure 0004062742
なお、実施例2の集光光学系において、プラスチックレンズはコリメータである。また、温度変化時の光源の波長変化量を+0.05nm/℃とした。表2から、いずれの場合も、良好に波面収差が補正されており、0.85という高い開口数を必要とする第1の光ディスクに対して情報を記録/再生する場合でも常に集光状態の良好なスポットを得ることができる。
また、表2において、補正前の波面収差は、波長誤差、あるいは温度変化による波長変化及び屈折率変化、あるいは保護基板厚さの誤差を与えた場合に、屈折率分布可変材料層の屈折率分布を変化させる前、すなわち屈折率分布可変材料層の屈折率が一様にN0(λ)であるときの集光光学系全系の波面収差を意味し、補正後の波面収差は、波長誤差、あるいは温度変化による波長変化及び屈折率変化、あるいは保護基板厚さの誤差を与えた場合に、屈折率分布可変材料層に、2次の屈折率分布関数係数A2とN0(λ)を用いて上記(B)式で表現される屈折率分布を与えたときの集光光学系全系の波面収差を意味する。
図31及び図32に実施例2の集光光学系の対物レンズのλ2=650nm、λ3=780nmにおける光路図を示す。また、図33にλ2=650nmに対する開口数0.65までの球面収差図を示す。また、図34にλ3=780nmに対する開口数0.50までの球面収差図を示す。実施例2の集光光学系の対物レンズは、光源側の非球面上に同心円状の輪帯回折構造を有しており、この回折構造の作用と結像倍率の違いとを利用することで、3種類の光ディスクの保護基板厚さの違いにより発生する球面収差を、それぞれの光ディスクに対して情報の記録/再生を行うのに必要な像側開口数内で良好に補正している。実施例2の集光光学系の対物レンズは実施例1の対物レンズと同じ対物レンズであるので、詳細な説明は割愛する。
また、実施例2の集光光学系では、第1の光ディスクに対して情報の記録/再生を行う場合にのみ、屈折率分布可変材料層の光軸に垂直な方向に沿った屈折率分布を変化させて球面収差の変化を補正したが、第2の光ディスクあるいは第3の光ディスクに対して情報の記録/再生を行う場合においても、屈折率分布可変材料層の屈折率分布を変化させて球面収差の変化を補正してもよい。
また、実施例2の光路図では、実際の光ピックアップ装置において、光源と対物レンズとの間の光路中に配置される偏光ビームスプリッタは省略している。実施例2の集光光学系において、光源と対物レンズとの間の非平行光束中に偏光ビームスプリッタが配置されると球面収差が発生するが、光源の位置を光軸方向に所定量移動することで、発生した球面収差を補正することができる。以降の実施例においても同様に、光源と対物レンズとの間の光路中に配置される偏光ビームスプリッタは省略する。
表3に実施例2の集光光学系の、λ1=405nmに対するレンズデータを示す。実施例2の集光光学系のコリメータの光ディスク側の非球面上に形成した回折構造は、波長λ1、回折次数1で最適化されている。
Figure 0004062742
また、かかる回折構造を2次以上の回折次数で最適化すると、金型の加工時間の短縮やコリメータの透過光量の向上という点で有利となる。例えば、回折次数2で最適化すると回折輪帯数が1/2、隣り合う回折輪帯の間隔が2倍となる。この場合は、表3のレンズデータにおける第2面の回折面係数を1/2倍した値を用いて、前述の数3で表される光路差関数の値(ただしn=2)が最適化波長(この場合はλ1)の2倍かわる毎に回折輪帯を形成する。
表4に実施例2の集光光学系の、λ2=650nm及びλ3=780nmに対するレンズデータを示す。
Figure 0004062742
〈実施例3〉
実施例3は、図13の光ピックアップ装置に適用することのできる集光光学系であって、記録密度の異なる3種類の光ディスクに対して、情報の記録/再生が可能である。第1の光ディスク(高密度DVD)として、保護基板厚さt1を0.1mm、光源の波長λ1を405nm、像側開口数NA1を0.85とし、第2の光ディスク(DVD)として、保護基板厚さt2を0.6mm、光源の波長λ2を650nm、像側開口数NA2を0.65とし、第3の光ディスク(CD)として、保護基板厚さt3を1.2mm、光源の波長λ3を780nm、像側開口数NA3を0.50とした。
図35に実施例3の集光光学系のλ1=405nmにおける光路図を示す。また、図36に実施例3の集光光学系のλ1=405nm±10nmに対する開口数0.85までの球面収差図を示す。実施例3のコリメータは、実施例2の集光光学系のコリメータと同様に、光ディスク側の非球面上に形成した同心円状の複数の輪帯からなる回折構造の作用により、第1の光源から射出される光の波長が405nmから長波長側に変化した場合に、コリメータのバックフォーカスが短くなるような波長特性を有し、第1の光源から射出される光の波長が変化した場合の対物レンズの焦点位置の変化を補償している。実施例3の対物レンズのみの系でのモードホッピング時の波面収差のデフォーカス成分が、0.201λrmsであるのに対し、実施例3の集光光学系のコリメータと対物レンズとの合成系でのモードホッピング時の波面収差のデフォーカス成分は、0.003λrmsであり、波長変化による対物レンズの最良像面位置の変化が良好に補償されていることがわかる。
さらに、実施例3の集光光学系は、実施例2の集光光学系と同様に、第1の光ディスクに対して情報を記録/再生する場合に、光ディスクの保護基板厚さの製造誤差、対物レンズやコリメータ等の集光光学系を構成する光学素子の製造誤差、光源の製造誤差による波長の変化、及び温度変化や湿度変化による対物レンズやコリメータ等の集光光学系を構成する光学素子の形状変化や屈折率変化による球面収差の変化を補正する基板厚差補正手段としての屈折率分布可変素子を有する。
表5に、光源の製造誤差による基準波長(405nm)に対する±10nmの波長の変化、基準温度(25℃)に対する±30℃の温度変化によるプラスチックレンズの屈折率変化、第1の光ディスクの基準保護基板厚さ(0.1mm)に対する±0.02mmの製造誤差、により集光光学系で発生する球面収差の変化を、屈折率分布可変素子の屈折率分布可変材料層の屈折率分布を変化させることで補正した結果を示す。
Figure 0004062742
実施例2と同様に、温度変化時は、プラスチックレンズの屈折率変化のみを考慮し、その変化量は、-10×10-5/℃である。なお、実施例3の集光光学系において、プラスチックレンズはコリメータと対物レンズである。また、温度変化時の光源の波長変化量を+0.05nm/℃とした。なお、屈折率分布可変材料層の光軸に垂直な方向に沿った屈折率分布は、実施例2と同様に(B)式で表される。表5から、いずれの場合も、良好に波面収差が補正されており、0.85という高い開口数を必要とする第1の光ディスクに対して情報を記録/再生する場合でも常に集光状態の良好なスポットを得ることができる。
図37に実施例3の集光光学系のλ2=650nmにおける光路図を示す。また、図38に実施例3の集光光学系のλ3=780nmにおける光路図を示す。また、また、図39にλ2=650nmに対する開口数0.65までの球面収差図を示す。また、図40にλ3=780nmに対する開口数0.50までの球面収差図を示す。実施例3の集光光学系の対物レンズは、第1の光ディスク専用の対物レンズであって、λ1=405nm、NA1 0.85、t1=0.1mm、結像倍率m1=0の組み合わせで無収差となるように収差補正された屈折レンズである。
したがって、実施例3の集光光学系の対物レンズで、第1の光ディスクに比して保護基板厚さの大きい第2の光ディスク及び第3の光ディスクに対して情報の記録/再生を行おうとすると、補正過剰方向に球面収差が変化する。そこで、屈折率分布可変素子により補正過剰方向に変化した球面収差を補正することで、第1の光ディスク専用の対物レンズを用いて、第2の光ディスク及び第3の光ディスクに対して情報の記録/再生を行えるようにした。
さらに、第2の光ディスク及び第3の光ディスクに対して情報の記録/再生を行う際に、対物レンズに対し発散光束を入射させることで、十分な作動距離を確保した。表6に、保護基板厚さの違いにより変化した球面収差を補正した結果を示す。屈折率分布可変材料層の光軸に垂直な方向に沿った屈折率分布は、実施例2と同様に(B)式で表される。また、5次以上の高次球面収差を良好に補正するために、2次の屈折率分布係数に加えて4次の屈折率分布係数を使用した。
Figure 0004062742
表6から、保護基板厚さの違いにより変化した球面収差は良好に補正され、第1の光ディスク専用の対物レンズを用いて、第2の光ディスク及び第3の光ディスクに対する情報の記録/再生が可能であることがわかる。
また、対物レンズの光学面上には、開口切替手段として波長選択性のあるフィルタが形成されている。すなわち、図18に示すように、NA3内に対応する共通領域にはフィルタCが形成されており、NA3からNA2に対応する第1の周辺領域にはフィルタBが形成されており、NA2からNA1に対応する第2の周辺領域にはフィルタAが形成されている。かかる波長選択性のある輪帯フィルタにより、第2の光ディスク及び第3の光ディスクに対する情報の記録/再生を行う場合は、必要開口数以上の光束を遮断することにより、開口切り替えを自動的に行うことができる。
表7に実施例3の集光光学系のλ1=405nmに対応するレンズデータを示す。実施例3の集光光学系のコリメータの光ディスク側の非球面上に形成した回折構造は、波長λ1、回折次数1で最適化されている。
Figure 0004062742
表8に実施例3の集光光学系の、λ2=650nm及びλ3=780nmに対するレンズデータを示す。
Figure 0004062742
〈実施例4〉
実施例4は、図14の光ピックアップ装置に適用することのできる集光光学系であって、記録密度の異なる3種類の光ディスクに対して、情報の記録/再生が可能である。第1の光ディスク(高密度DVD)として、保護基板厚さt1を0.1mm、光源の波長λ1を405nm、像側開口数NA1を0.85とし、第2の光ディスク(DVD)として、保護基板厚さt2を0.6mm、光源の波長λ2を650nm、像側開口数NA2を0.65とし、第3の光ディスク(CD)として、保護基板厚さt3を1.2mm、光源の波長λ3を780nm、像側開口数NA3を0.50とした。
図41に実施例4の集光光学系のλ1=405nmにおける光路図を示す。また、図42に実施例4の集光光学系のλ1=405nm±10nmに対する開口数0.85までの球面収差図を示す。実施例4の集光光学系では、ビームエキスパンダを構成する正レンズの両面上に形成した同心円状の複数の輪帯からなる回折構造の作用により、第1の光源から射出される光の波長が405nmから長波長側に変化した場合に、ビームエキスパンダのパワーが大きくなるような波長特性をビームエキスパンダに持たせることで、第1の光源から射出される光の波長が変化した場合の対物レンズの焦点位置の変化を補償している。実施例4の対物レンズのみの系でのモードホッピング時の波面収差のデフォーカス成分が、0.160λrmsであるのに対し、実施例4の集光光学系のビームエキスパンダと対物レンズとの合成系でのモードホッピング時の波面収差のデフォーカス成分は、0.007λrmsであり、波長変化による対物レンズの最良像面位置の変化が良好に補償されていることがわかる。
さらに、実施例4の集光光学系が具備するビームエキスパンダは、負レンズ(図14の負レンズ32に対応する。)が光軸方向に変位可能となっており、第1の光ディスクに対して情報を記録/再生する場合に、光ディスクの保護基板厚さの製造誤差、対物レンズやコリメータ等の集光光学系を構成する光学素子の製造誤差、光源の製造誤差による波長の変化、温度変化や湿度変化による対物レンズやコリメータ等の集光光学系を構成する光学素子の形状変化や屈折率変化、による球面収差の変化を補正するための基板厚誤差補正手段としての機能も備えている。負レンズを変移させるためのアクチュエータとしては、ボイスコイル型のアクチュエータやピエゾアクチュエータを用いることができる。また、実施例4では、ビームエキスパンダの負レンズを変移可能としたが、変移可能とするのは、正レンズでもよく、また、負レンズと正レンズの両方でもよい。
表9に、光源の製造誤差による基準波長(405nm)に対する±10nmの波長の変化、基準温度(25℃)に対する±30℃の温度変化によるプラスチックレンズの屈折率変化、第1の光ディスクの基準保護基板厚さ(0.1mm)に対する±0.02mmの製造誤差、により集光光学系で発生する球面収差の変化を、ビームエキスパンダの負レンズを光軸方向に沿って変移させることで補正した結果を示す。
Figure 0004062742
温度変化時は、プラスチックレンズ、及びコリメータの光ディスク側の面上に形成された樹脂層の屈折率変化のみを考慮し、その変化量は、-10×10-5/℃である。なお、実施例4の集光光学系において、プラスチックレンズはビームエキスパンダの負レンズと正レンズである。また、温度変化時の光源の波長変化量を+0.05nm/℃とした。表9から、いずれの場合も、良好に波面収差が補正されており、0.85という高い開口数を必要とする第1の光ディスクに対して情報を記録/再生する場合でも常に集光状態の良好なスポットを得ることができる。
なお、表9において、d5、d7は、それぞれ後述する表10における可変間隔d5、d7に相当する。d5及びd7の初期値は、それぞれ3.000mm、2.000mmである。
図43及び図44に実施例4の集光光学系の対物レンズのλ2=650nm、λ3=780nmにおける光路図を示す。また、図45にλ2=650nmに対する開口数0.65までの球面収差図を示す。また、図46にλ3=780nmに対する開口数0.50までの球面収差図を示す。実施例4の集光光学系の対物レンズは、光源側の非球面上に同心円状の輪帯回折構造を有しており、この回折構造の作用と結像倍率の違いとを利用することで、3種類の光ディスクの保護基板厚さの違いにより発生する球面収差を、それぞれの光ディスクに対して情報の記録/再生を行うのに必要な像側開口数内で良好に補正している。実施例4の集光光学系の対物レンズは実施例1の対物レンズと同じ対物レンズであるので、詳細な説明は割愛する。
表10に実施例4の集光光学系のλ1=405nmに対するレンズデータを示す。実施例4の集光光学系のビームエキスパンダの両面上に形成した回折構造は、波長λ1、回折次数1で最適化されている。
Figure 0004062742
表11に実施例4の集光光学系の、λ2=650nm及びλ3=780nmに対するレンズデータを示す。
Figure 0004062742
〈実施例5〉
実施例5は、図15の光ピックアップ装置に適用することのできる集光光学系であって、記録密度の異なる3種類の光ディスクに対して、情報の記録/再生が可能である。第1の光ディスク(高密度DVD)として、保護基板厚さt1を0.1mm、光源の波長λ1を405nm、像側開口数NA1を0.85とし、第2の光ディスク(DVD)として、保護基板厚さt2を0.6mm、光源の波長λ2を650nm、像側開口数NA2を0.65とし、第3の光ディスク(CD)として、保護基板厚さt3を1.2mm、光源の波長λ3を780nm、像側開口数NA3を0.50とした。
図47乃至図49に実施例5の集光光学系のλ1=405nm、λ2=650nm、λ3=780nmにおける光路図をそれぞれ示す。また、図50に実施例5の集光光学系のλ1=405nm±10nmに対する開口数0.85までの球面収差図を示す。また、図51にλ2=650nmに対する開口数0.65までの球面収差図を示す。また、図52にλ3=780nmに対する開口数0.50までの球面収差図を示す。また、図53にλ1=405nmとNA1 0.85との組み合わせで決定される絞り径と等しい光束径のλ2=650nmの光を入射させた場合の球面収差図を示す。
実施例5の集光光学系の対物レンズは光源側の非球面上に同心円状の複数の輪帯からなる回折構造を有しており、この回折構造の作用と結像倍率の違いとを利用することで、第1の光ディスクと第2の光ディスクの保護基板厚さの違いにより発生する球面収差を、それぞれの光ディスクに対して情報の記録/再生を行うのに必要な像側開口数内で良好に補正している。また、実施例5の対物レンズの回折構造及び非球面形状は波長λ1乃至λ3の光束の1次回折光がそれぞれ第1乃至第3の光ディスクの情報記録面上に良好な波面を形成するように決定されている。
また、図53の球面収差図からわかるように、第2の光ディスクに対して情報の記録/再生を行う際に、必要開口数より外側の領域を通過する光束をフレアとしているので、第2の光ディスクに対して情報の記録/再生を行う際の開口切替手段は不要である。
また、実施例5の集光光学系では、λ3=780nmの発散光束を対物レンズに入射させ、像側開口数0.50以下における球面収差を補正することで、第3の光ディスクに対して情報の記録/再生を行う。
さらに、実施例5の集光光学系対物レンズの光学面上には、第3の光ディスクに対して情報の記録/再生を行う際の開口切替手段である波長選択性のあるフィルタが形成されている。第3の光ディスクに対する情報の記録/再生を行う場合は、必要開口数以上の光束を、波長選択性のある輪帯フィルタによって遮断する。これにより、開口切り替えを自動的に行うことができる。具体的には、波長選択性のある輪帯フィルタとして、図19に示すようにNA3内に対応する共通領域にはフィルタEが形成されており、NA3からNA2に対応する第1の周辺領域とNA2からNA1に対応する第2の周辺領域にはフィルタDが形成されている。
なお、実施例5の集光光学系の対物レンズの波面収差は、
λ1=405nm、NA1 0.85、t1=0.1mmのとき、0.007λ1 rms
λ2=650nm、NA2 0.65、t2=0.6mmのとき、0.002λ2 rms
λ3=780nm、NA3 0.50、t3=1.2mmのとき、0.005λ3 rms
である。
実施例5の集光光学系のコリメータは、実施例2の集光光学系のコリメータと同様に光ディスク側の非球面上に形成した同心円状の複数の輪帯からなる回折構造の作用により、第1の光源から射出される光の波長が405nmから長波長側に変化した場合に、コリメータのバックフォーカスが短くなるような波長特性を有し、第1の光源から射出される光の波長が変化した場合の対物レンズの焦点位置の変化を補償している。実施例5の対物レンズのみの系でのモードホッピング時の波面収差のデフォーカス成分が、0.163λrmsであるのに対し、実施例5の集光光学系のコリメータと対物レンズとの合成系でのモードホッピング時の波面収差のデフォーカス成分は、0.001λrmsであり、波長変化による対物レンズの最良像面位置の変化が良好に補償されていることがわかる。
さらに、実施例5の集光光学系が具備するコリメータは光軸方向に変位可能となっており、第1の光ディスクに対して情報を記録/再生する場合に、光ディスクの保護基板厚さの製造誤差、対物レンズやコリメータ等の集光光学系を構成する光学素子の製造誤差、光源の製造誤差による波長の変化、及び温度変化や湿度変化による対物レンズやコリメータ等の集光光学系を構成する光学素子の形状変化や屈折率変化による球面収差の変化を補正するための基板厚誤差補正手段としての機能も備えている。コリメータを変移させるためのアクチュエータとしては、ボイスコイル型のアクチュエータやピエゾアクチュエータを用いることができる。
表12に、光源の製造誤差による基準波長(405nm)に対する±10nmの波長の変化、基準温度(25℃)に対する±30℃の温度変化によるプラスチックレンズの屈折率変化、第1の光ディスクの基準保護基板厚さ(0.1mm)に対する±0.02mmの製造誤差、により集光光学系で発生する球面収差の変化を、コリメータを光軸方向に沿って変移させることで補正した結果を示す。
Figure 0004062742
温度変化時は、プラスチックレンズの屈折率変化のみを考慮し、その変化量は、-10×10-5/℃である。なお、実施例5の集光光学系において、プラスチックレンズはコリメータである。また、温度変化時の光源の波長変化量を+0.05nm/℃とした。表12から、いずれの場合も、良好に波面収差が補正されており、0.85という高い開口数を必要とする第1の光ディスクに対して情報を記録/再生する場合でも常に集光状態の良好なスポットを得ることができる。
なお、表12において、d0、d2は、それぞれ後述する表13における可変間隔d0、d2に相当する。d0及びd2の初期値は、それぞれ9.847mm、15.000mmである。
表13に実施例5の対物レンズのλ1=405nmに対するレンズデータを示す。実施例5の集光光学系のコリメータの光ディスク側の非球面上に形成した回折構造は、波長λ1、回折次数1で最適化されている。
Figure 0004062742
表14に実施例5の集光光学系の、λ2=650nm及びλ3=780nmに対するレンズデータを示す。
Figure 0004062742
実施例5の対物レンズの光源側の非球面上に形成した回折構造は、波長λ1、回折次数1で最適化されているが、波長λ1以外の波長や1以外の回折次数でこの回折構造を最適化してもよい。いずれの場合でも、若干の設計変更で本発明の光ピックアップ装置に適用可能な集光光学系を構成することができる。
〈実施例6〉
実施例6は、図16の光ピックアップ装置に適用することのできる集光光学系であって、記録密度の異なる3種類の光ディスクに対して、情報の記録/再生が可能である。第1の光ディスク(高密度DVD)として、保護基板厚さt1を0.1mm、光源の波長λ1を405nm、像側開口数NA1を0.85とし、第2の光ディスク(DVD)として、保護基板厚さt2を0.6mm、光源の波長λ2を650nm、像側開口数NA2を0.65とし、第3の光ディスク(CD)として、保護基板厚さt3を1.2mm、光源の波長λ3を780nm、像側開口数NA3を0.50とした。
図54に実施例6の集光光学系のλ1=405nmにおける光路図を示す。また、図55に実施例6の集光光学系の対物レンズのλ1=405nm±10nmに対する開口数0.85までの球面収差図を示す。
実施例6のコリメータは、実施例2の集光光学系のコリメータと同様に、光ディスク側の非球面上に形成した同心円状の複数の輪帯からなる回折構造の作用により、第1の光源から射出される光の波長が405nmから長波長側に変化した場合に、コリメータのバックフォーカスが短くなるような波長特性を有し、第1の光源から射出される光の波長が変化した場合の対物レンズの焦点位置の変化を補償している。
実施例6の対物レンズのみの系でのモードホッピング時の波面収差のデフォーカス成分が、0.201λrmsであるのに対し、実施例6の集光光学系のコリメータと対物レンズとの合成系でのモードホッピング時の波面収差のデフォーカス成分は、0.003λrmsであり、波長変化による対物レンズの最良像面位置の変化が良好に補償されていることがわかる。
さらに、実施例6の集光光学系が具備するコリメータは光軸方向に変位可能となっており、第1の光ディスクに対して情報を記録/再生する場合に、光ディスクの保護基板厚さの製造誤差、対物レンズやコリメータ等の集光光学系を構成する光学素子の製造誤差、光源の製造誤差による波長の変化、及び温度変化や湿度変化による対物レンズやコリメータ等の集光光学系を構成する光学素子の形状変化や屈折率変化による球面収差の変化を補正するための基板厚誤差補正手段としての機能も備える。コリメータを変移させるためのアクチュエータとしては、ボイスコイル型のアクチュエータやピエゾアクチュエータを用いることができる。
表15に、光源の製造誤差による基準波長(405nm)に対する±10nmの波長の変化、基準温度(25℃)に対する±30℃の温度変化によるプラスチックレンズの屈折率変化、第1の光ディスクの基準保護基板厚さ(0.1mm)に対する±0.02mmの製造誤差、により集光光学系で発生する球面収差の変化を、コリメータを光軸方向に沿って変移させることで補正した結果を示す。
Figure 0004062742
温度変化時は、プラスチックレンズの屈折率変化のみを考慮し、その変化量は、-10×10-5/℃である。なお、実施例6の集光光学系において、プラスチックレンズはコリメータ及び対物レンズである。また、温度変化時の光源の波長変化量を+0.05nm/℃とした。
表15から、いずれの場合も、良好に波面収差が補正されていることが分かり、0.85という高い開口数を必要とする第1の光ディスクに対して情報を記録/再生する場合でも常に集光状態の良好なスポットを得ることができる。
なお、表15において、d0、d2は、それぞれ後述する表16における可変間隔d0、d2に相当する。d0及びd2の初期値は、それぞれ16.185mm、13.000mmである。
図56に実施例6の集光光学系のλ2=650nmにおける光路図を示す。また、図57に実施例6の集光光学系のλ3=780nmにおける光路図を示す。また、図58にλ2=650nmに対する開口数0.65までの球面収差図を示す。また、図59にλ3=780nmに対する開口数0.50までの球面収差図を示す。
実施例6の集光光学系の対物レンズは、第1の光ディスク専用の対物レンズであって、λ1=405nm、NA1 0.85、t1=0.1mm、結像倍率m=0の組み合わせで無収差となるように収差補正された屈折レンズである。したがって、実施例6の集光光学系の対物レンズで、第1の光ディスクに比して保護基板厚さの大きい第2の光ディスク及び第3の光ディスクに対して情報の記録/再生を行おうとすると、補正過剰方向に球面収差が変化する。そこで、カップリングレンズの光ディスク側の非球面上に同心円状の複数の輪帯からなる回折構造を形成し、回折構造の作用によって、補正過剰方向に変化した球面収差を第2の光ディスク及び第3の光ディスクに対して情報の記録/再生を行うのに必要な像側開口数内で良好に補正することで、第1の光ディスク専用の対物レンズを用いて、第2の光ディスク及び第3の光ディスクに対して情報の記録/再生を行えるようにした。
また、対物レンズの光学面上には、開口切替手段である波長選択性のあるフィルタが形成されている。第2、及び第3の光ディスクに対する情報の記録/再生を行う場合は、必要開口数以上の光束を、波長選択性のある輪帯フィルタによって遮断する。これにより、開口切り替えを自動的に行うことができる。波長選択性のある輪帯フィルタとしては実施例3と同様の輪帯フィルタを用いることができる。
表16に実施例6の集光光学系のλ1=405nmに対するレンズデータを示す。実施例6の集光光学系のコリメータの光ディスク側の非球面上に形成された回折構造は、波長λ1、回折次数1で最適化されている。
Figure 0004062742
表17に実施例6の集光光学系の、λ2=650nm及びλ3=780nmに対するレンズデータを示す。
Figure 0004062742
また、本実施例の集光光学系において、カップリングレンズの光ディスク側の面(表17で第2面)の非球面上に、表18で示すような、輪帯状の回折構造が形成されている。
表18において、「始点高さ」は、その輪帯の始点の光軸からの距離、「終点高さ」は、その輪帯の終点の光軸からの距離を表し、有効径内での輪帯数は36本である。
Figure 0004062742
表18の回折輪帯構造は、波長730nm、回折次数1で回折効率が理論的に100%となるように最適化されている。この回折構造に、第2の光ディスクの使用波長である波長650nmの光が入射した場合と、第3の光ディスクの使用波長である波長780nmの光が入射した場合に、1次回折光が最大の回折光量を有するように発生する。
波長730nm、回折次数1で回折構造を最適化することにより、
DVD(波長650nm) : 95.1%
CD(波長780nm) : 96.7%
と、それぞれの光ディスクの使用波長領域での回折効率を得ることができる。
〈実施例7〉
本実施例の対物レンズは、上述した第6の実施の形態における対物レンズOBJ1として好適なプラスチック単レンズである。本実施例の対物レンズ特性を得るに当たって、第1の光ディスク(高密度DVD)用の第1光源の波長λ1を405nm、第2の光ディスク(DVD)用の第2光源の波長をλ2を650nm、第3光ディスク用(CD)の第3光源の波長λ3を780nmとし、第1の光ディスクの透明基板厚さt1は0.1mm、第2の光ディスクの透明基板厚さt2は0.6mm、第3の光ディスクの透明基板厚さt3は1.2mmとした。また、第1乃至第3の光ディスクに対して情報の記録/再生を行うのに必要な対物レンズの像側開口数NA1、NA2、NA3として、それぞれ0.85、0.65、0.50を想定している。
図65乃至図67に、本実施例の対物レンズのλ1=405nm、λ2=650nm、λ3=780nmにおける光路図を示す。また、図68に本実施例の対物レンズのλ1=405nmに対する開口数0.85までの球面収差図を示す。また、図69にλ1=405nmとNA1 0.85との組み合わせで決定される絞り径と等しい光束径のλ2=650nmの光を入射させた場合の球面収差図を示す。さらに、図70にλ1=405nmとNA2 0.85との組み合わせで決定される絞り径と等しい光束径のλ3=780nmの光を入射させた場合の球面収差図を示す。
本実施例の対物レンズでは、光源側の非球面(S1)上に形成した回折構造(図示せず)の作用と結像倍率の違いとを利用することで、3種類の光ディスクの透明基板厚さの違いにより発生する球面収差を、それぞれの光ディスクに対して情報の記録/再生を行うのに必要な像側開口数内で良好に補正している。なお、本実施例の対物レンズの、所定の像側開口数内における波面収差は、
λ1=405nm、NA1 0.85、t1=0.1mmのとき、0.008λ1rmsλ2=650nm、NA2 0.65、t2=0.6mmのとき、0.003λ2rmsλ3=780nm、NA3 0.50、t3=1.2mmのとき、0.005λ3rmsである。
また、本実施例の対物レンズでは、NA2 0.65より外側を通過する、波長650nmの光束を第2の光ディスクの情報記録面上に集光しないようにフレアとし、さらに、NA3 0.50より外側を通過する光束を第3の光ディスクの情報記録面上に集光しないようにフレアとしているので、スポットが必要以上に絞られることがなく、第2及び第3の光ディスクのディスクスキューに対する十分なマージンを確保でき、さらに、それぞれの光ディスクに対応して、自動的に開口切り替えが行われるので、別途、開口切替手段を設ける必要がなく、光ピックアップの構造を簡単にすることができる。
なお、本実施例の対物レンズでは、第1の光ディスク(高密度DVD)として、透明基板厚さt1を0.1mm、光源の波長を405nm、像側開口数を0.85と仮定して光学設計を進めたが、これ以外の仕様である光ディスクに対しても本発明は適用が可能である。
また、第2の光ディスク(DVD)に対する像側開口数を0.65、第3の光ディスク(CD)に対する像側開口数を0.50として光学設計を進めたが、これ以外の仕様である光ディスクに対しても本発明は適用が可能である。
表19に本実施例の対物レンズのレンズデータを示す。
Figure 0004062742
本実施例の対物レンズは、光源側の非球面(表19で第1面)上に、表20で示すような、輪帯状の回折構造が形成されている。表20において、「始点高さ」は、その輪帯の始点の光軸からの距離、「終点高さ」は、その輪帯の終点の光軸からの距離を表し、有効径内での輪帯数は83本である。
Figure 0004062742
表20の回折輪帯構造は、波長380nm、回折次数2で回折効率が理論的に100%となるように最適化されている。この回折構造に、第1の光ディスク(高密度DVD)の使用波長である波長405nmの光が入射した場合、2次回折光が最大の回折光量を有するように発生し、第2の光ディスク(DVD)の使用波長である波長650nmの光が入射した場合と、第3の光ディスク(CD)の使用波長である波長780nmの光が入射した場合には、1次回折光が最大の回折光量を有するように発生する。
波長380nm、回折次数2で回折構造を最適化することにより、
高密度DVD(波長405nm) : 95.1%
DVD(波長650nm) : 90.9%
CD(波長780nm) : 99.8%
と、それぞれの光ディスクの使用波長領域での回折効率を得ることができる。
〈実施例8〉
本実施例の対物レンズは、上述した第6の実施の形態における対物レンズOBJ1として好適なガラス単レンズである。本実施例の対物レンズ特性を得るに当たって、第1の光ディスク(高密度DVD)用の第1光源の波長λ1を405nm、第2の光ディスク(DVD)用の第2光源の波長をλ2を650nm、第3光ディスク用(CD)の第3光源の波長λ3を780nmとし、第1の光ディスクの透明基板厚さt1は0.1mm、第2の光ディスクの透明基板厚さt2は0.6mm、第3の光ディスクの透明基板厚さt3は1.2mmとした。また、第1乃至第3の光ディスクに対して情報の記録/再生を行うのに必要な対物レンズの像側開口数NA1、NA2、NA3として、それぞれ0.85、0.65、0.50を想定している。
図71乃至図73に、本実施例の対物レンズのλ1=405nm、λ2=650nm、λ3=780nmにおける光路図を示す。また、図74に本実施例の対物レンズのλ1=405nmに対する開口数0.85までの球面収差図を示す。また、図75にλ1=405nmとNA1 0.85との組み合わせで決定される絞り径と等しい光束径のλ2=650nmの光を入射させた場合の球面収差図を示す。さらに、図76にλ1=405nmとNA2 0.85との組み合わせで決定される絞り径と等しい光束径のλ3=780nmの光を入射させた場合の球面収差図を示す。
本実施例の対物レンズでは、光源側の非球面(S1)上に形成した回折構造(図示せず)の作用と結像倍率の違いとを利用することで、3種類の光ディスクの透明基板厚さの違いにより発生する球面収差を、それぞれの光ディスクに対して情報の記録/再生を行うのに必要な像側開口数内で良好に補正している。なお、本実施例の対物レンズの、所定の像側開口数内における波面収差は、
λ1=405nm、NA1 0.85、t1=0.1mmのとき、0.008λ1rmsλ2=650nm、NA2 0.65、t2=0.6mmのとき、0.005λ2rmsλ3=780nm、NA3 0.50、t3=1.2mmのとき、0.005λ3rmsである。
また、本実施例の対物レンズでは、NA2 0.65より外側を通過する、波長650nmの光束を第2の光ディスクの情報記録面上に集光しないようにフレアとし、さらに、NA3 0.50より外側を通過する光束を第3の光ディスクの情報記録面上に集光しないようにフレアとしているので、スポットが必要以上に絞られることがなく、第2及び第3の光ディスクのディスクスキューに対する十分なマージンを確保でき、さらに、それぞれの光ディスクに対応して、自動的に開口が切り替えが行われるので、別途、開口切替手段を設ける必要がなく、光ピックアップの構造を簡単にすることができる。
なお、本実施例の対物レンズでは、第1の光ディスク(高密度DVD)として、透明基板厚さt1を0.1mm、光源の波長を405nm、像側開口数を0.85と仮定して光学設計を進めたが、これ以外の仕様である光ディスクに対しても本発明は適用が可能である。
また、第2の光ディスク(DVD)に対する像側開口数を0.65、第3の光ディスク(CD)に対する像側開口数を0.50として光学設計を進めたが、これ以外の仕様である光ディスクに対しても本発明は適用が可能である。
表21に本実施例の対物レンズのレンズデータを示す。
Figure 0004062742
本実施例の対物レンズは、光源側の非球面(表21で第1面)上に、表22で示すような、輪帯状の回折構造が形成されている。表22において、「始点高さ」は、その輪帯の始点の光軸からの距離、「終点高さ」は、その輪帯の終点の光軸からの距離を表し、有効径内での輪帯数は30本である。
Figure 0004062742
表22の回折輪帯構造は、波長415nm、回折次数6で回折効率が理論的に100%となるように最適化されている。この回折構造に、第1の光ディスク(高密度DVD)の使用波長である波長405nmの光が入射した場合には、6次回折光が最大の回折光量を有するように発生し、第2の光ディスク(DVD)の使用波長である波長650nmの光が入射した場合には、4次回折光が最大の回折光量を有するように発生し、第3の光ディスク(CD)の使用波長である波長780nmの光が入射した場合には、3次回折光が最大の回折光量を有するように発生する。
波長415nm、回折次数6で回折構造を最適化することにより、
高密度DVD(波長405nm) : 93.0%
DVD(波長650nm) : 90.9%
CD(波長780nm) : 88.4%
と、それぞれの光ディスクの使用波長領域での回折効率を得ることができる。
〈実施例9〉
本実施例の対物レンズは、上述した第7の実施の形態における対物レンズOBJ2として好適な対物レンズである。本実施例の対物レンズ特性を得るに当たって、第1の光ディスク(高密度DVD)用の第1光源の波長λ1を405nm、第2の光ディスク(DVD)用の第2光源の波長をλ2を650nm、第3光ディスク用(CD)の第3光源の波長λ3を780nmとし、第1の光ディスクの透明基板厚さt1は0.1mm、第2の光ディスクの透明基板厚さt2は0.6mm、第3の光ディスクの透明基板厚さt3は1.2mmとした。また、第1乃至第3の光ディスクに対して情報の記録/再生を行うのに必要な対物レンズの像側開口数NA1、NA2、NA3として、それぞれ0.85、0.60、0.50を想定している。
図77乃至図79に、本実施例の対物レンズのλ1=405nm、λ2=650nm、λ3=780nmにおける光路図を示す。また、図80に本実施例の対物レンズのλ1=405nmに対する開口数0.85までの球面収差図を示す。また、図81にλ1=405nmとNA1 0.85との組み合わせで決定される絞り径と等しい光束径のλ2=650nmの光を入射させた場合の球面収差図を示す。さらに、図82にλ1=405nmとNA2 0.85との組み合わせで決定される絞り径と等しい光束径のλ3=780nmの光を入射させた場合の球面収差図を示す。
本実施例の対物レンズは、両面が非球面とされた第1の光学素子L1としてのプラスチックレンズと、このプラスチックレンズの光束入射面側に配置された第2の光学素子L2としてのプラスチックレンズとから構成される複合型対物レンズであって、第2の光学素子L2の第1の光学素子L1側の光学面上に形成した回折構造(図示せず)の作用と結像倍率の違いとを利用することで、3種類の光ディスクの透明基板厚さの違いにより発生する球面収差を、それぞれの光ディスクに対して情報の記録/再生を行うのに必要な像側開口数内で良好に補正している。なお、本実施例の対物レンズの、所定の像側開口数内における波面収差は、
λ1=405nm、NA1 0.85、t1=0.1mmのとき、0.004λ1 rms
λ2=650nm、NA2 0.60、t2=0.6mmのとき、0.001λ2 rms
λ3=780nm、NA3 0.50、t3=1.2mmのとき、0.002λ3 rms
である。
また、本実施例の対物レンズの第2の光学素子L2は、基板厚差補正手段としての機能に加えて開口切替手段としての機能も有する。すなわち、NA2 0.65より外側を通過する、波長650nmの光束を第2の光ディスクの情報記録面上に集光しないようにフレアとし、さらに、NA3 0.50より外側を通過する光束を第3の光ディスクの情報記録面上に集光しないようにフレアとしているので、スポットが必要以上に絞られることがなく、第2及び第3の光ディスクのディスクスキューに対する十分なマージンを確保でき、さらに、それぞれの光ディスクに対応して、自動的に開口切り替えが行われるので、別途、開口切替手段を設ける必要がなく、光ピックアップの構造を簡単にすることができる。
なお、本実施例の対物レンズでは、第1の光ディスク(高密度DVD)として、透明基板厚さt1を0.1mm、光源の波長を405nm、像側開口数を0.85と仮定して光学設計を進めたが、これ以外の仕様である光ディスクに対しても本発明は適用が可能である。
また、第2の光ディスク(DVD)に対する像側開口数を0.65、第3の光ディスク(CD)に対する像側開口数を0.50として光学設計を進めたが、これ以外の仕様である光ディスクに対しても本発明は適用が可能である。
表23に本実施例の対物レンズのレンズデータを示す。
Figure 0004062742
本実施例の対物レンズは、第2の光学素子L2の光ディスク側の平面(表23で第2面)上に、表24で示すような、輪帯状の回折構造が形成されている。表24において、「始点高さ」は、その輪帯の始点の光軸からの距離、「終点高さ」は、その輪帯の終点の光軸からの距離を表し、有効径内での輪帯数は130本である。
Figure 0004062742
表24の回折輪帯構造は、波長375nm、回折次数2で回折効率が理論的に100%となるように最適化されている。この回折構造に、第1の光ディスク(高密度DVD)の使用波長である波長405nmの光が入射した場合、2次回折光が最大の回折光量を有するように発生し、第2の光ディスク(DVD)の使用波長である波長650nmの光が入射した場合と、第3の光ディスク(CD)の使用波長である波長780nmの光が入射した場合には、1次回折光が最大の回折光量を有するように発生する。
波長375nm、回折次数2で回折構造を最適化することにより、
高密度DVD(波長405nm) : 93.0%
DVD(波長650nm) : 92.5%
CD(波長780nm) : 99.5%
と、それぞれの光ディスクの使用波長領域での回折効率を得ることができる。
また、回折構造を形成する光学面が平面なので、本実施例の対物レンズの第2の光学素子L2の回折構造は、電子ビーム描画法による作製が可能であり、隣り合う輪帯間隔の最小値が、6ミクロンと小さい回折構造であっても高精度に作製でき、回折構造の形状誤差による回折効率の低下の小さい素子を実現できる。電子ビーム描画法による微細な回折構造の作製法に関しては、「OPTICS DESIGN 光設計研究グループ機関誌 No.20 2000.2.25 p26−p31」に記載されている。
〈実施例10〉
本実施例の対物レンズは、上述した第6の実施の形態における対物レンズOBJ1として好適なプラスチック単レンズである。本実施例の対物レンズ特性を得るに当たって、第1の光ディスク(高密度DVD)用の第1光源の波長λ1を405nm、第2の光ディスク(DVD)用の第2光源の波長をλ2を655nm、第3光ディスク用(CD)の第3光源の波長λ3を785nmとし、第1の光ディスクの透明基板厚さt1は0.1mm、第2の光ディスクの透明基板厚さt2は0.6mm、第3の光ディスクの透明基板厚さt3は1.2mmとした。また、第1乃至第3の光ディスクに対して情報の記録/再生を行うのに必要な対物レンズの像側開口数NA1、NA2、NA3として、それぞれ0.85、0.60、0.45を想定している。
図83乃至図85に、本実施例の対物レンズのλ1=405nm、λ2=655nm、λ3=785nmにおける光路図を示す。また、図86に本実施例の対物レンズのλ1=405nmに対する開口数0.85までの球面収差図を示す。また、図87にλ1=405nmとNA1 0.85との組み合わせで決定される絞り径と等しい光束径のλ2=655nmの光を入射させた場合の球面収差図を示す。さらに、図88にλ3=785nmに対する開口数0.45までの球面収差図を示す。
本実施例の対物レンズでは、光源側の非球面(S1)上に形成した回折構造(図示せず)の作用により、第1の光ディスクと第2の光ディスクの透明基板厚さの違いにより発生する球面収差を、第1の光ディスクと第2の光ディスクとのそれぞれの光ディスクに対して情報の記録/再生を行うのに必要な像側開口数内で良好に補正している。また、第3の光ディスク似対しては、発散光である波長λ3の光束を対物レンズに入射させることで、第1光ディスクと第3の光ディスクとの透明基板厚さの違いにより発生する球面収差を、第3の光ディスクに対して情報の記録/再生を行うのに必要な像側開口数内で良好に補正している。なお、本実施例の対物レンズの、所定の像側開口数内における波面収差は、
λ1=405nm、NA1 0.85、t1=0.1mmのとき、0.004λ1 rms
λ2=655nm、NA2 0.60、t2=0.6mmのとき、0.007λ2 rms
λ3=785nm、NA3 0.45、t3=1.2mmのとき、0.005λ3 rms
である。
また、本実施例の対物レンズでは、NA2 0.60より外側を通過する、波長655nmの光束を第2の光ディスクの情報記録面上に集光しないようにフレアとしているので、スポットが必要以上に絞られることがなく、第2の光ディスクのディスクスキューに対する十分なマージンを確保でき、さらに、第2の光ディスクに対応して、自動的に開口切り替えが行われるので、別途、開口切替手段を設ける必要がなく、光ピックアップの構造を簡単にすることができる。
そして、対物レンズの光学面上には、第3の光ディスクに対し情報の記録/再生を行う際に必要な開口切替手段である波長選択性のあるフィルタが形成されている。第3の光ディスクに対する情報の記録/再生を行う場合は、必要開口数以上の光束を、波長選択性のある輪帯フィルタによって遮断する。これにより、自動的に開口切り替えを行うことができる。波長選択性のある輪帯フィルタとして、図17に示す対物レンズにおいて、反射率が図89に示すような波長依存性を有するフィルタを対物レンズの光学面上に輪帯状に形成したものがあげられる。
なお、本実施例の対物レンズでは、第1の光ディスク(高密度DVD)として、透明基板厚さt1を0.1mm、光源の波長を405nm、像側開口数を0.85と仮定して光学設計を進めたが、これ以外の仕様である光ディスクに対しても本発明は適用が可能である。
また、第2の光ディスク(DVD)に対する像側開口数を0.60、第3の光ディスク(CD)に対する像側開口数を0.45として光学設計を進めたが、これ以外の仕様である光ディスクに対しても本発明は適用が可能である。
表25に本実施例の対物レンズのレンズデータを示す。
Figure 0004062742
本実施例の対物レンズは、光源側の非球面(S1)上に、表26で示すような、輪帯状の回折構造が形成されている。表26において、「始点高さ」は、その輪帯の始点の光軸からの距離、「終点高さ」は、その輪帯の終点の光軸からの距離を表し、有効径内での輪帯数は101本である。
Figure 0004062742
表26の回折輪帯構造は、hを光軸からの高さを表すとしたときに、0≦h≦1.59を満たす領域の回折構造(表26において、輪帯番号1〜63)は、波長380nm、回折次数2で回折効率が理論的に100%となるように最適化されている。この回折構造に、第1の光ディスク(高密度DVD)の使用波長である波長405nmの光が入射した場合には、2次回折光が最大の回折光量を有するように発生し、第2の光ディスク(DVD)の使用波長である波長655nmの光が入射した場合と、第3の光ディスク(CD)の使用波長である波長785nmの光が入射した場合には、1次回折光が最大の回折光量を有するように発生する。
一方、h>1.59を満たす領域の回折構造(表26において、輪帯番号64〜101)は、波長405nm、回折次数3で回折効率が理論的に100%となるように最適化されている。この回折構造に、第1の光ディスク(高密度DVD)の使用波長である波長405nmの光が入射した場合には、3次回折光が最大の回折光量を有するように発生し、第2の光ディスク(DVD)の使用波長である波長655nmの光が入射した場合には、2次回折光が最大の回折光量を有するように発生する。
上記のように、回折構造の最適化波長と回折次数を設定することにより、
0≦h≦1.59の領域では、
高密度DVD(波長405nm) : 95.1%
DVD(波長655nm) : 93.3%
CD(波長785nm) : 99.7%
h>1.59の領域では、
高密度DVD(波長405nm) : 100 %
DVD(波長655nm) : 91.8%
と、それぞれの光ディスクの使用波長領域での回折効率を得ることができる。
また、上記のように、h>1.59を満たす領域の回折構造を、波長405nm、回折次数3で最適化することで、第2の光ディスクに対する情報の記録/再生を行う場合に、NA2より外側(すなわち、光源側の非球面のh>1.59を満たす領域)を通過した光束の球面収差の最大値が約70μmと、フレアの外径を大きくすることができたので、光検出器の受光部における良好な信号検出特性が得られる。
〈実施例11〉
表27にレンズデータを示す実施例11は、上述した第6の実施の形態における対物レンズOBJ1として好適なプラスチック単レンズであり、第1面(S1)上に輪帯状の回折構造が形成されている。
Figure 0004062742
本実施例の対物レンズでは、第1の光ディスクD1、第2の光ディスクD2、第3の光ディスクD3に対する仕様をそれぞれ
NA1=0.85、λ1=405nm、t1=0.1mm、m1=0
NA2=0.65、λ2=650nm、t2≡0.6mm、m2=−0.03
NA3=0.50、λ3=780nm、t3=1.2mm、m3=−0.14
と想定している。
NA3内に対応する共通領域及びNA3〜NA2内に対応する第1の周辺領域に形成された回折構造の最適化波長λBと最適化次数nBは、それぞれλB=415nm、nB=6であり、NA2〜NA1内に対応する第2の周辺領域に形成された回折構造の最適化波長λBと最適化次数nBは、それぞれλB=405nm、nB=8である。
従って、共通領域及び第1の周辺領域では、半導体レーザLD1から射出された405nmのレーザ光に対して6次回折光、半導体レーザLD2から射出された650nmのレーザ光に対して4次回折光、半導体レーザLD3から射出された780nmのレーザ光に対して3次回折光がそれぞれ最大の回折光量を有するように発生し、第2の周辺領域では、半導体レーザLD1から射出された405nmのレーザ光に対して8次回折光、半導体レーザLD2から射出された650nmのレーザ光に対して5次回折光、半導体レーザLD3から射出された780nmのレーザ光に対して4次回折光がそれぞれ最大の回折光量を有するように発生する。
このように決定された回折構造に対して、λ1より5nm長い波長410nmのレーザ光が入射すると図95(A)に示す球面収差図(色収差図)からわかるように、本実施例の対物レンズの球面収差は補正不足方向に変化する。そこで本実施例の対物レンズでは、入射する光束の波長が長くなるとバックフォーカスが長くなる方向に変化するような軸上色収差の波長依存性を持たせることで、λ1より5nm長い波長410nmのレーザ光が入射した際のバックフォーカスの変化量ΔCAと、前記波長λ1より5nm長い波長410nmのレーザ光が入射した際のNA1に対応するマージナル光線の変化量ΔSAとが
−1<ΔCA/ΔSA<0
なる関係を満たすようにしたので、半導体レーザLD1がモードホップを起こしても最良像点位置の変化を小さく抑えられたレンズとなっている。ここで、バックフォーカスの変化量ΔCAは、図95(A)の405nm、410nmのグラフの下端の移動幅で示され、マージナル光線の変化量ΔSAは、405nmのグラフをその下端が410nmのグラフの下端に重なる位置まで平行移動させた際のグラフの上端と、410nmのグラフの上端との幅により示される。
ところで、対物レンズOBJ1において、回折構造の近軸パワーPDを大きく設定すると、波長λ1近傍の軸上色収差を良好に補正することができるので、半導体レーザLD1のモードホップに対して集光性能の劣化の少ないレンズとすることができるが、波長λ1近傍の軸上色収差を完全に補正してしまうと、波長λ2から波長λ3の波長領域の軸上色収差が補正過剰となりすぎてしまい、半導体レーザLD2や半導体レーザLD3のモードホップに対して集光性能の劣化が大きくなり、第2の光ディスクや第3の光ディスクに対する情報の記録が正確に行えなくなる恐れがある。
そこで、本実施例の対物レンズでは、回折構造の近軸パワーPDを
−5.0×10-2<PD<2.0×10-2
を満たすように設定することで、半導体レーザLD2や半導体レーザLD3のモードホップに対して集光性能の劣化が大きくなりすぎないようにした。
また、図95(B)、(C)に示す球面収差図からわかるように、第2の周辺領域を通過する半導体レーザLD2から射出された650nmのレーザ光は、第2の光ディスクD2の情報記録面上でフレア成分となり、第1の周辺領域及び第2の周辺領域を通過する半導体レーザLD3から射出された780nmのレーザ光は、第3の光ディスクD3の情報記録面上でフレア成分となるので、NA2及びNA3に対する開口切り替えが自動的に行われる。
〈実施例12〉
表28にレンズデータを示す実施例12は、上述した第6の実施の形態における対物レンズOBJ1として好適なプラスチック単レンズであり、第1面(S1)上に輪帯状の回折構造が形成されている。
Figure 0004062742
本実施例の対物レンズでは、第1の光ディスクD1、第2の光ディスクD2、第3の光ディスクD3に対する仕様をそれぞれ
NA1=0.85、λ1=405nm、t1=0.1mm、m1=0
NA2=0.65、λ2=650nm、t2=0.6mm、m2=−0.02
NA3=0.50、λ3=780nm、t3=1.2mm、m3=−0.15
と想定している。
NA3内に対応する共通領域及びNA3〜NA2内に対応する第1の周辺領域に形成された回折構造の最適化波長λBと最適化次数nBは、それぞれλB=380nm、nB=2であり、NA2〜NA1内に対応する第2の周辺領域に形成された回折構造の最適化波長λBと最適化次数nBは、それぞれλB=405nm、nB=2である。
従って、それぞれの領域に形成された回折構造では、半導体レーザLD1から射出された405nmのレーザ光に対して2次回折光、半導体レーザLD2から射出された650nmのレーザ光に対して1次回折光、半導体レーザLD3から射出された780nmのレーザ光に対して1次回折光がそれぞれ最大の回折光量を有するように発生する。
上述の回折構造に対して、λ1より5nm長い波長410nm及び5nm短い波長410nmのレーザ光が入射したときの球面収差図(色収差図)を図96(A)に示す。
さらに、本実施例の対物レンズでは、回折構造の近軸パワーPDを
0.5×10-2<PD<5.0×10-2
を満たすように設定することで、半導体レーザLD2や半導体レーザLD3のモードホップに対して集光性能の劣化が大きくなりすぎないようにした。
また、図96(B)、(C)に示す球面収差図からわかるように、第2の周辺領域を通過する半導体レーザLD2から射出された650nmのレーザ光は、第2の光ディスクD2の情報記録面上でフレア成分となり、第1の周辺領域及び第2の周辺領域を通過する半導体レーザLD3から射出された780nmのレーザ光は、第3の光ディスクD3の情報記録面上でフレア成分となるので、NA2及びNA3に対する開口切り替えが自動的に行われる。
〈実施例13〉
表29にレンズデータを示す実施例13は、上述した第7の実施の形態における対物レンズOBJ2として好適な複合型対物レンズであり、両方の光学面が非球面とされた第1の光学素子L1としてのガラスレンズと、非球面とされた光源側の光学面上に輪帯状の回折構造が形成された第2の光学素子L2としてのプラスチックレンズから構成されている。
Figure 0004062742
本実施例の対物レンズでは、第1の光ディスクD1、第2の光ディスクD2、第3の光ディスクD3に対する仕様をそれぞれ
NA1=0.85、λ1=405nm、t1=0.1mm、m1=0
NA2=0.65、λ2=655nm、t2=0.6mm、m2=−0.04
NA3=0.50、λ3=785nm、t3=1.2mm、m3=−0.14
と想定している。
NA3内に対応する共通領域、NA3〜NA2内に対応する第1の周辺領域、及びNA2〜NA1内に対応する第2の周辺領域に形成された回折構造の最適化波長λBと最適化次数nBは、それぞれλB=380nm、nB=2である。
従って、それぞれの領域に形成された回折構造では、半導体レーザLD1から射出された405nmのレーザ光に対して2次回折光、半導体レーザLD2から射出された655nmのレーザ光に対して1次回折光、半導体レーザLD3から射出された785nmのレーザ光に対して1次回折光がそれぞれ最大の回折光量を有するように発生する。
このように決定された回折構造に対して、λ1より5nm長い波長410nmのレーザ光が入射すると図97(A)に示す球面収差図(色収差図)からわかるように、本実施例の対物レンズの球面収差は補正過剰方向に変化する。そこで本実施例の対物レンズでは入射する光束の波長が長くなるとバックフォーカスが短くなる方向に変化するような軸上色収差の波長依存性を持たせることで、λ1より5nm長い波長410nmのレーザ光が入射した際のバックフォーカスの変化量ΔCAと、前記波長λ1より5nm長い波長410nmのレーザ光が入射した際のNA1に対応するマージナル光線の変化量ΔSAとが
−1<ΔCA/ΔSA<0
なる関係を満たすようにしたので、半導体レーザLD1がモードホップを起こしても最良像点位置の変化を小さく抑えられたレンズとなっている。
さらに、本実施例の対物レンズでは、回折構造の近軸パワーPDを
0.5×10-2<PD<5.0×10-2
を満たすように設定することで、半導体レーザLD2や半導体レーザLD3のモードホップに対して集光性能の劣化が大きくなりすぎないようにした。
また、図97(B)、(C)に示す球面収差図からわかるように、第2の周辺領域を通過する半導体レーザLD2から射出された655nmのレーザ光は、第2の光ディスクD2の情報記録面上でフレア成分となり、第1の周辺領域及び第2の周辺領域を通過する半導体レーザLD3から射出された785nmのレーザ光は、第3の光ディスクD3の情報記録面上でフレア成分となるので、NA2及びNA3に対する開口切り替えが自動的に行われる。
〈実施例14〉
表30にレンズデータを示す実施例14は、上述した第7の実施の形態における対物レンズOBJ2として好適な複合型対物レンズであり、両方の光学面が非球面とされた第1の光学素子L1としてのプラスチックレンズと、非球面とされた両方の光学面上に輪帯状の回折構造が形成された第2の光学素子L2としてのプラスチックレンズから構成されている。
Figure 0004062742
本実施例の対物レンズでは、第1の光ディスクD1、第2の光ディスクD2、第3の光ディスクD3に対する仕様をそれぞれ
NA1=0.85、λ1=405nm、t1=0.1mm、m1=0
NA2=0.65、λ2=650nm、t2=0.6mm、m2=−0.11
NA3=0.50、λ3=780nm、t3=1.2mm、m3=−0.20
と想定している。
NA3内に対応する共通領域及びNA3〜NA2内に対応する第1の周辺領域に形成された回折構造の最適化波長λBと最適化次数nBは、それぞれλB=380nm、nB=2であり、NA2〜NA1内に対応する第2の周辺領域に形成された回折構造の最適化波長λBと最適化次数nBは、それぞれλB=405nm、nB=3である。
従って、共通領域及び第1の周辺領域では、半導体レーザLD1から射出された405nmのレーザ光に対して2次回折光、半導体レーザLD2から射出された650nmのレーザ光に対して1次回折光、半導体レーザLD3から射出された780nmのレーザ光に対して1次回折光がそれぞれ最大の回折光量を有するように発生し、第2の周辺領域では、半導体レーザLD1から射出された405nmのレーザ光に対して3次回折光、半導体レーザLD2から射出された650nmのレーザ光に対して2次回折光、半導体レーザLD3から射出された780nmのレーザ光に対して2次回折光がそれぞれ最大の回折光量を有するように発生する。
上述の回折構造に対して、λ1、λ1より5nm長い波長410nm及び5nm短い波長400nmのレーザ光が入射したときの球面収差図(色収差図)を図98(A)に示す。
さらに、本実施例の対物レンズでは、第2の光ディスクに対して記録/再生をする際の結像倍率m2、第3の光ディスクに対して記録/再生をする際の結像倍率m3に対して、回折構造の近軸パワーPDを
0.5×10-2<PD<5.0×10-2
を満たすように適切に設定することで、半導体レーザLD2や半導体レーザLD3のモードホップに対して集光性能の劣化が大きくなりすぎないようにした。
また、本実施例の対物レンズの第2の光学素子L2は、基板厚差補正手段としての機能に加えて、開口切替手段としての機能も有する。すなわち、図98(B)、(C)に示す球面収差図からわかるように、第2の周辺領域を通過する半導体レーザLD2から射出された650nmのレーザ光は、第2の光ディスクD2の情報記録面上でフレア成分となり、第1の周辺領域及び第2の周辺領域を通過する半導体レーザLD3から射出された780nmのレーザ光は、第3の光ディスクD3の情報記録面上でフレア成分となるので、NA2及びNA3に対する開口切り替えが自動的に行われる。
ところで、光ピックアップ装置において、対物レンズはトラッキングエラーにより半導体レーザの発光点に対し0.2mm程度偏芯する。これは、対物レンズに発散光束を入射させる場合、発光点が対物レンズに対して0.2mmの物体高をもつ軸外物点となることに相当する。本実施例の対物レンズの0.2mmの物体高に対する波面収差は、第2の光ディスクに対しては、0.025λ2rms、第3の光ディスクに対しては、0.033λ3rmsであり、対物レンズ発散光束を入射させて使用する第2の光ディスクや第3の光ディスクに対して良好なトラッキング特性を得ることができる。
〈実施例15〉
表31にレンズデータを示す実施例15は、上述した第7の実施の形態における対物レンズOBJ2として好適な複合型対物レンズであり、両方の光学面が非球面とされた第1の光学素子L1としてのプラスチックレンズと、両方の光学面が非球面とされ、光源側の非球面上に輪帯状の回折構造が形成された第2の光学素子L2としてのプラスチックレンズから構成されている。
Figure 0004062742
本実施例の対物レンズでは、第1の光ディスクD1、第2の光ディスクD2、第3の光ディスクD3に対する仕様をそれぞれ
NA1=0.87、λ1=408nm、t1=0.1mm、m1=0
NA2=0.67、λ2=658nm、t2=0.6mm、m2=−0.12
NA3=0.51、λ3=785nm、t3=1.2mm、m3=−0.20
と想定している。
NA3内に対応する共通領域及びNA3〜NA2内に対応する第1の周辺領域に形成された回折構造の最適化波長λBと最適化次数nBは、それぞれλB=408nm、nB=8であり、NA2〜NA1内に対応する第2の周辺領域に形成された回折構造の最適化波長λBと最適化次数nBは、それぞれλB=408nm、nB=6である。
従って、共通領域及び第1の周辺領域では、半導体レーザLD1から射出された408nmのレーザ光に対して8次回折光、半導体レーザLD2から射出された658nmのレーザ光に対して5次回折光、半導体レーザLD3から射出された785nmのレーザ光に対して4次回折光がそれぞれ最大の回折光量を有するように発生し、第2の周辺領域では、半導体レーザLD1から射出された408nmのレーザ光に対して6次回折光、半導体レーザLD2から射出された658nmのレーザ光に対して4次回折光、半導体レーザLD3から射出された785nmのレーザ光に対して3次回折光がそれぞれ最大の回折光量を有するように発生する。
図99(A)に403nm、408nm及び413nmの各レーザ光が入射したときの球面収差図(色収差図)を示す。また、本実施例の対物レンズの第2の光学素子L2は、基板厚差補正手段としての機能に加えて開口切替手段としての機能も有する。すなわち、図99(B)、(C)に示す球面収差図からわかるように、第2の周辺領域を通過する半導体レーザLD2から射出された658nmのレーザ光は、第2の光ディスクD2の情報記録面上でフレア成分となり、第1の周辺領域及び第2の周辺領域を通過する半導体レーザLD3から射出された788nmのレーザ光は、第3の光ディスクD3の情報記録面上でフレア成分となるので、NA2及びNA3に対する開口切り替えが自動的に行われる。
なお、本明細書において、回折構造が形成された面(回折面)とは、光学素子の表面に、レリーフを設けて、入射光束を回折させる作用を持たせる面のことをいい、同一光学面に回折を生じる領域と生じない領域がある場合は、回折を生じる領域をいう。また、回折構造または回折パターンとは、この回折を生じる領域のことをいう。レリーフの形状としては、例えば、光学素子の表面に、光軸を中心として略同心円状の輪帯として形成され、光軸を含む平面でその断面をみれば、各輪帯は鋸歯状(かかる場合に、レリーフを特に「ブレーズ」とよぶ。)、あるいは階段状のような形状が知られているが、そのような形状を含むものである。
一般に、回折面からは、0次回折光、±1次回折光、±2次回折光、・・・、と無数の次数の回折光が生じるが、例えば、上記のような子午断面が鋸歯状となるブレーズ、あるいは階段状の形状を持つ回折面の場合は、特定の次数の回折効率を他の次数の回折効率よりも高くしたり、場合によっては、特定の1つの次数(例えば、+1次回折光)の回折効率をほぼ100%とするように、このブレーズの形状または階段状の形状を設定することができる。本発明において、「回折構造が波長λB、回折次数nで最適化されている」とは、波長λBの光が入射したときに、回折次数nの回折光の回折効率が理論的に100%となるように、ブレーズの形状あるいは階段状の形状を設定することを指す(このとき、波長λBを製造波長または最適化波長とよび、回折次数nを最適化次数とよぶ)。別の言い方をすると、次のように説明することができる。「回折構造が波長λB、回折次数nで最適化されている」とは、実際に、光学素子上に形成されたブレーズあるいは階段状の回折構造において、輪帯の光軸方向の段差量を、Δd(μm)、回折構造に入射する光の波長のうち最も短い波長(すなわち、本明細書中において、第1光源が発生するλ1の光の波長)における、回折構造の屈折率をNλminとすると、Δd、Nλminと、最適化波長λB(nm)、回折次数nとの間に次の関係が成り立つことである。
λB(nm)=Δd×(Nλmin−1)/(n×10-3
上式において、nは、次式により算出される。
n=INT(Y)
Y=Δd×(Nλmin−1)/(λmin×10-3
ただし、INT(Y)は、Yを四捨五入して得られる整数である。
ここで、実際のブレーズまたは階段状の回折構造が製造誤差による形状誤差を有する場合には、図90のように、ブレーズまたは階段状の回折構造の理想形状を近似的に求めた場合の光軸方向の段差量をΔdとする。
また、本明細書において、「対物レンズ」とは、光情報記録媒体(光ディスク)の情報記録面に情報の記録、及び/または、情報記録面の情報を再生するための光学系に含まれる光学素子うち、光情報記録媒体と対向する位置に配置され、光源からの光束を光情報記録媒体の情報記録面上に集光させるための光学素子を指す。
そして、「1つのレンズ群から構成される対物レンズ」とは、光情報記録媒体と対向する位置に配置された光学素子であって、1つの群(1枚の光学素子から構成される場合も、複数の光学素子が接合されている場合も含む)から構成された、光源からの光束を光情報記録媒体の情報記録面上に集光させるための光学素子を指す。
また、本明細書において、「光学素子」と「レンズ」は同義である。
また、対物レンズが複数の光学素子(あるいは、レンズ群)から構成される場合は、光情報記録媒体と対向する位置に配置された光学素子と、鏡枠やフランジ等で一体とされた複数の光学素子の集合を本明細書での定義による対物レンズと呼ぶ。
また、本明細書において、透明基板厚の異なる3種類の光情報記録媒体に対する情報の再生及び/または記録について、1つのレンズ群から構成される「共通の対物レンズを用いる」とは、それぞれの光情報記録媒体に対する情報の再生及び/または記録を行う場合に、光情報記録媒体に対向する位置に配置され、光源からの光束を光情報記録媒体の情報記録面上に集光させるための光学素子が、同一の光学素子であることを指し、この同一の光学素子を「共通の対物レンズ」と定義する。
そして、ある特定の透明基板厚を有する光情報記録媒体に対する情報の再生及び/または記録を行う場合にのみ、光源と光情報記録媒体との間の光路中に挿入されたり、光学素子としての機能が働く光学素子は、上記の共通の対物レンズには含まれないものとする。
また、本明細書において、「保護基板」、及び「透明基板」、及び「保護層」とは、光情報記録媒体の情報記録面を保護するために、情報記録面の光束入射面側に形成された光学的に透明な平行平板を指し、光源から射出された光束は、対物レンズによって、上記の平行平板を介して光情報記録媒体の情報記録面上に集光される。そして、本明細書において、「保護基板厚(さ)」とは、上記の平行平板の厚さを指し、DVD規格の光情報記録媒体では、保護基板厚は0.6mm、CD規格の光情報記録媒体では、保護基板厚は1.2mmであるが、本明細書において、高密度DVD(第1光情報記録媒体、または、第1(の)光ディスク)には、明細書中で一例としてあげた、0.1mmの保護基板厚を有する光情報記録媒体の他に、保護基板厚がゼロ、すなわち、平行平板を有さないものや、DVD規格の光情報記録媒体と同じ0.6mmの保護基板厚を有するものも含まれる。
また、本明細書において、光情報記録媒体が同一の光束入射面側に複数の情報記録層を有する、いわゆる、多層ディスクである場合、「保護基板」には、上記の複数の情報記録層のうち、最も光束入射面に近い情報記録層の光束入射面側に形成された平行平板の他に、上記の複数の情報記録層間に形成された、中間層も含まれる。
また、本明細書において、「基板厚差補正手段」とは、情報を記録及び/または再生する光情報記録媒体を、異なる透明基板厚を有する光情報記録媒体に交換したときに(例えば、CDからDVDへの交換や、高密度DVDからCDへの交換等)、規格の異なる光情報記録媒体の保護基板厚の違いにより、情報記録面上でのスポットの波面収差の球面収差成分が変化して、0.07λrms(ただし、λは波長である)より大きくなってしまったのを、情報を記録及び/または再生できるように、その光情報記録媒体に対して情報の記録及び/または再生を行うのに必要な対物レンズの所定の像側開口数内で0.07λrms以下、より好ましくは、0.05λrms以下となるように、球面収差成分を補正することができる光学素子を指す。
また、本明細書において、「基板厚誤差補正手段」とは、ある特定の規格の光情報記録媒体において、光情報記録媒体の製造誤差により、保護基板の厚さが均一でなく、場所によって違いがあったり、製造メーカーや製造機器の違いにより、保護基板の厚さに、個体差があったりすることに起因して、球面収差が発生し、情報記録面上でのスポットの波面収差が、0.07λrms(ただし、λは波長である)より大きくなってしまったのを、情報を記録及び/または再生できるように、その光情報記録媒体に対して情報の記録及び/または再生を行うのに必要な対物レンズの所定の像側開口数内で0.07λrms以下、より好ましくは、0.05λrms以下となるように、球面収差成分を補正することができる光学素子を指す。
また、本明細書において、「色収差補正手段」とは、ある特定の規格の光情報記録媒体に対し情報の記録及び/または再生を行うのに使用する光源において、製造誤差や温度変化や湿度変化等の環境変化や、出力の変化等により、出射される光の波長の単色性が悪い場合に、対物レンズで発生する色収差を補正することのできる光学素子を指し、具体的には、前記光学素子が、光源と対物レンズとの間の光路中に配置されない場合の、±1nmの波長変化に対する対物レンズのピント移動量をA、前記光学素子が、光源と対物レンズとの間の光路中に配置された場合の、同じ量の波長変化に対する対物レンズのピント移動量をBとしたとき、
|A|>|B|
を満たすことのできる光学素子を指す。
また、本明細書において、光情報記録媒体の情報記録面上に「良好な波面を形成する」とは、波長をλとした場合に、波面収差が0.07λ以下、より好ましくは、0.05λ以下の状態で集光することを指す。
また、本明細書における「フレア」は以下のように定義される。第i光情報記録媒体(i=1または2または3)に対し情報の記録及び/または再生を行う際の、波長をλi、対物レンズの像側開口数をNAiとする。第j光情報記録媒体(j=2または3)に対する情報の記録及び/または再生を行う際に、次の2つの条件のいずれか(より好ましくは両方)が満たされるときに、NAjより外側を通過し、第j光情報記録媒体の情報記録面に到達した光束を「フレア」とする。
第1の条件は、NA1とλ1から決定される絞りすべてを通過した波長λjの光束のうちNAjより外側を通過する光束の情報記録面上における球面収差の最大値が10μmより大きく、かつ、NAj内における球面収差が5μmより小さい場合、である。
第2の条件は、NA1とλ1から決定される絞りすべてを通過した波長λjの光束の情報記録面上における波面収差が0.07λjより大きく、かつ、NAj以内で、情報記録面上における波面収差が0.07λjより小さい場合、である。
上記第1の条件及び/または第2の条件において、球面収差は、NAjにおいて連続していても良いし、NAjにおいて不連続であっても良い。
また、本明細書において、情報の記録および再生とは、上記のような光情報記録媒体の情報記録面上に情報を記録すること、情報記録面上に記録された情報を再生することをいう。本発明の対物レンズ及び光ピックアップ装置及び集光光学系は、記録だけあるいは再生だけを行うために用いられるものであってもよいし、記録および再生の両方を行うために用いられるものであってもよい。また、ある光情報記録媒体に対しては記録を行い、別の光情報記録媒体に対しては再生を行うために用いられるものであってもよいし、ある光情報記録媒体に対しては記録または再生を行い、別の光情報記録媒体に対しては記録および再生を行うために用いられるものであってもよい。なお、ここでいう再生とは、単に情報を読み取ることを含むものである。
また、本明細書において、第1保護基板厚乃至第3保種基板厚のすべてがすべて同じ値である場合、すなわち、第1光情報記録媒体乃至第3光情報記録媒体のすべてが同じ厚さの保護基板を有している場合は、本発明の課題がなく、本発明の技術的範囲には属さないものとする。
本発明による光ピックアップ装置を概念的に示す図である。 本発明による別の光ピックアップ装置を概念的に示す図である。 本発明による更に別の光ピックアップ装置を概念的に示す図である。 本発明による更に別の光ピックアップ装置を概念的に示す図である。 本発明による更に別の光ピックアップ装置を概念的に示す図である。 本発明による更に別の光ピックアップ装置を概念的に示す図である。 本発明による更に別の光ピックアップ装置を概念的に示す図である。 本発明による更に別の光ピックアップ装置を概念的に示す図である。 第1の実施の形態による第1の光ピックアップ装置を概略的に示す図である。 図9の第1の光ピックアップ装置に用いられる色収差補正用素子である多層回折素子の側断面図(a)及び多層回折素子の作用を説明するために波長と屈折率との関係を示す図(b)である。 第1の実施の形態による第2の光ピックアップ装置を概略的に示す図である。 第2の実施の形態による第3の光ピックアップ装置を概略的に示す図である。 第2の実施の形態による第4の光ピックアップ装置を概略的に示す図である。 第3の実施の形態による第5の光ピックアップ装置を概略的に示す図である。 第3の実施の形態による第6の光ピックアップ装置を概略的に示す図である。 第4の実施の形態による第7の光ピックアップ装置を概略的に示す図である。 各実施の形態及び各実施例で用いることのできる開口切替手段として対物レンズに設けた輪帯フィルタを説明するための図である。 図17の輪帯フィルタの作用を説明するための図である。 図17の別の輪帯フィルタの作用を説明するための図である。 実施例1の対物レンズのλ1=405nmにおける光路図である。 実施例1の対物レンズのλ2=650nmにおける光路図である。 実施例1の対物レンズのλ3=780nmにおける光路図である。 実施例1の対物レンズのλ1=405nmに対する開口数0.85までの球面収差図である。 実施例1の対物レンズのλ2=650nmに対する開口数0.65までの球面収差図である。 実施例1の対物レンズのλ3=780nmに対する開口数0.50までの球面収差図である。 実施例1の対物レンズのλ2=650nmに対する別の球面収差図である。 実施例1の対物レンズのλ3=780nmに対する別の球面収差図である。 実施例2の集光光学系のλ1=405nmにおける光路図である。 実施例2の集光光学系の対物レンズのλ1=405nm±10nmに対する開口数0.85までの球面収差図である。 実施例2の集光光学系のコリメータと対物レンズとの合成系のλ1=405nm±10nmに対する開口数0.85までの球面収差図である。 実施例2の集光光学系の対物レンズのλ2=650nmにおける光路図である。 実施例2の集光光学系の対物レンズのλ3=780nmにおける光路図である。 実施例2の集光光学系の対物レンズのλ2=650nmに対する開口数0.65までの球面収差図である。 実施例2の集光光学系の対物レンズのλ3=780nmに対する開口数0.50までの球面収差図である。 実施例3の集光光学系のλ1=405nmにおける光路図である。 実施例3の集光光学系のλ1=405nm±10nmに対する開口数0.85までの球面収差図である。 実施例3の集光光学系のλ2=650nmにおける光路図である。 実施例3の集光光学系のλ3=780nmにおける光路図である。 実施例3の集光光学系のλ2=650nmに対する開口数0.65までの球面収差図である。 実施例3の集光光学系のλ3=780nmに対する開口数0.50までの球面収差図である。 実施例4の集光光学系のλ1=405nmにおける光路図である。 実施例4の集光光学系のλ1=405nm±10nmに対する開口数0.85までの球面収差図である。 実施例4の集光光学系の対物レンズのλ2=650nmにおける光路図である。 実施例4の集光光学系の対物レンズのλ3=780nmにおける光路図である。 実施例4の集光光学系のλ2=650nmに対する開口数0.65までの球面収差図である。 実施例4の集光光学系のλ3=780nmに対する開口数0.50までの球面収差図である。 実施例5の集光光学系のλ1=405nmにおける光路図である。 実施例5の集光光学系のλ2=650nmにおける光路図である。 実施例5の集光光学系のλ3=780nmにおける光路図である。 実施例5の集光光学系のλ1=405nm±10nmに対する開口数0.85までの球面収差図である。 実施例5の集光光学系のλ2=650nmに対する開口数0.65までの球面収差図である。 実施例5の集光光学系のλ3=780nmに対する開口数0.50までの球面収差図である。 実施例5の集光光学系においてλ1=405nmとNA1 0.85との組み合わせで決定される絞り径と等しい光束径のλ2=650nmの光を入射させた場合の球面収差図である。 実施例6の集光光学系のλ1=405nmにおける光路図である。 実施例6の集光光学系の対物レンズのλ1=405nm±10nmに対する開口数0.85までの球面収差図である。 実施例6の集光光学系のλ2=650nmにおける光路図である。 実施例6の集光光学系のλ3=780nmにおける光路図である。 実施例6の集光光学系のλ2=650nmに対する開口数0.65までの球面収差図である。 実施例6の集光光学系のλ3=780nmに対する開口数0.50までの球面収差図である。 製造波長λB、回折次数1で最適化されたブレーズ構造で発生する波長405nmの光の1次回折光と、波長650nmの光の1次回折光と、波長780nmの光の1次回折光との回折効率の製造波長に対する依存性を表す図である。 340nm≦λB≦450nmを満足する製造波長λBと回折次数2で最適化されたブレーズ構造で発生する波長405nmの光の2次回折光と、波長650nmの光の1次回折光と、波長780nmの光の1次回折光との回折効率の製造波長に対する依存性を表す図である。 390nm≦λB≦440nmを満足する製造波長λBと回折次数6で最適化されたブレーズ構造で発生する 波長405nmの光の6次回折光と、波長650nmの光の4次回折光と、波長780nmの光の3次回折光との回折効率の製造波長に対する依存性を表す図である。回折効率の製造波長に対する依存性を表す図である。 第3の実施の形態による第8の光ピックアップ装置を概略的に示す図である。 第5の実施の形態による第9の光ピックアップ装置を概略的に示す図である。 実施例7の対物レンズのλ1=405nmにおける光路図である。 実施例7の対物レンズのλ2=650nmにおける光路図である。 実施例7の対物レンズのλ3=780nmにおける光路図である。 実施例7の対物レンズのλ1=405nmに対する開口数0.85までの球面収差図である。 実施例7の対物レンズのλ1=405nmとNA1 0.85との組み合わせで決定される絞り径と等しい光束径のλ2=650nmの光を入射させた場合の球面収差図である。 実施例7の対物レンズのλ1=405nmとNA2 0.85との組み合わせで決定される絞り径と等しい光束径のλ3=780nmの光を入射させた場合の球面収差図である。 実施例8の対物レンズのλ1=405nmにおける光路図である。 実施例8の対物レンズのλ2=650nmにおける光路図である。 実施例8の対物レンズのλ3=780nmにおける光路図である。 実施例8の対物レンズのλ1=405nmに対する開口数0.85までの球面収差図である。 実施例8の対物レンズのλ1=405nmとNA1 0.85との組み合わせで決定される絞り径と等しい光束径のλ2=650nmの光を入射させた場合の球面収差図である。 実施例8の対物レンズのλ1=405nmとNA2 0.85との組み合わせで決定される絞り径と等しい光束径のλ3=780nmの光を入射させた場合の球面収差図である。 実施例9の対物レンズのλ1=405nmにおける光路図である。 実施例9の対物レンズのλ2=650nmにおける光路図である。 実施例9の対物レンズのλ3=780nmにおける光路図である。 実施例9の対物レンズのλ1=405nmに対する開口数0.85までの球面収差図である。 実施例9の対物レンズのλ1=405nmとNA1 0.85との組み合わせで決定される絞り径と等しい光束径のλ2=650nmの光を入射させた場合の球面収差図である。 実施例9の対物レンズのλ1=405nmとNA2 0.85との組み合わせで決定される絞り径と等しい光束径のλ3=780nmの光を入射させた場合の球面収差図である。 実施例10の対物レンズのλ1=405nmにおける光路図である。 実施例10の対物レンズのλ2=655nmにおける光路図である。 実施例10の対物レンズのλ3=785nmにおける光路図である。 実施例10の対物レンズのλ1=405nmに対する開口数0.85までの球面収差図である。 実施例10の対物レンズのλ1=405nmとNA1 0.85との組み合わせで決定される絞り径と等しい光束径のλ2=655nmの光を入射させた場合の球面収差図である。 実施例10の対物レンズのλ3=785nmに対する開口数0.45までの球面収差図である。 図17に示す対物レンズに形成した輪帯状フィルタの反射率と波長依存性を表す図である。 ブレーズの理想形状を近似的に求めた場合の光軸方向の段差量Δdを説明するための図である。 第6の実施の形態における対物レンズOBJ1を示す概略図であり、(A)は正面図、(B)は側面図、(C)は側面を一部拡大した図である。 図91の対物レンズOBJ1を使用した第6の実施の形態による光ピックアッフ装置PU1を示す概略図である。 第7の実施の形態における対物レンズOBJ2を示す概略図であり、(A)は正面図、(B)は側面図、(C)は側面を一部拡大した図である。 図93の対物レンズOBJ2を使用した第7の実施の形態による光ピックアッフ装置PU2を示す概略図である。 実施例11における波長がそれぞれ405nm(A)、650nm(B)、780nm(C)の場合の球面収差図(色収差図)である。 実施例12における波長がそれぞれ405nm(A)、650nm(B)、780nm(C)の場合の球面収差図(色収差図)である。 実施例13における波長がそれぞれ405nm(A)、650nm(B)、780nm(C)の場合の球面収差図(色収差図)である。 実施例14における波長がそれぞれ405nm(A)、650nm(B)、780nm(C)の場合の球面収差図(色収差図)である。 実施例15における波長がそれぞれ408nm(A)、658nm(B)、785nm(C)の場合の球面収差図(色収差図)である。
符号の説明
1 第1光源
2 第2光源
3 第3光源
5 色収差補正手段
6 基板厚誤差補正手段
7 基板厚差補正手段
8 対物レンズ
11 第1の半導体レーザ
12 第2の半導体レーザ
13 第3の半導体レーザ
14 対物レンズ
15,17 偏光ビームスプリッタ
16 コリメータ
18 色収差補正用素子、多層回折素子
19 第1の半導体レーザ11と第2の半導体レーザ12の筐体
20 多層回折素子とコリメータとを一体化した素子
21 1軸アクチュエータ
22 2軸アクチュエータ
23 屈折率分布可変素子
25a、25b 一対の透明電極
26 液晶層
27 駆動電源
29、35 コリメータ
31 正レンズ
32 負レンズ
33 ビームエキスパンダ
34 対物レンズ
41 NA3内に対応する共通領域
42 NA3からNA2に対応する第1の周辺領域
43 NA2からNA1に対応する第2の周辺領域
91 第1の光ディスクの情報記録面
92 第2の光ディスクの情報記録面
93 第3の光ディスクの情報記録面

Claims (20)

  1. 波長λ1の第1光源からの第1光束を用いて厚さt1の第1保護基板を有する第1光情報記録媒体に対する情報の再生及び/または記録を行い、波長λ2(λ1<λ2)の第2光源からの第2光束を用いて厚さt2(t2>t1)の第2保護基板を有する第2光情報記録媒体に対する情報の再生及び/または記録を行い、波長λ3(λ2<λ3)の第3光源からの第3光束を用いて厚さt3(t3>t2)の第3保護基板を有する第3光情報記録媒体に対する情報の再生及び/または記録を行い、かつ、前記第1光情報記録媒体乃至前記第3光情報記録媒体に対する情報の再生及び/または記録について、共通の対物レンズを用いる光ピックアップ装置用の対物レンズであって、
    前記対物レンズは単レンズであって、
    前記対物レンズの入射瞳面を、光軸近傍から外側に向かって順に、第1光束領域、第2光束領域、第3光束領域、の輪帯状の3つの光束領域に分割したとき、
    前記第1光束領域に入射した前記第1乃至第3光束は、それぞれ前記第1乃至第3光情報記録媒体の各情報記録面上に回折限界内となる状態で集光し
    かつ、前記第2光束領域に入射した前記第1及び第2光束は、それぞれ前記第1及び第2光情報記録媒体の各情報記録面上に回折限界内となる状態で集光するが、前記第2光束領域に入射した前記第3光束は、前記第3光情報記録媒体の情報記録面上での集光に寄与せず
    かつ、前記第3光束領域に入射した前記第1光束は、前記第1光情報記録媒体の情報記録面上に回折限界内となる状態で集光するが、前記第3光束領域に入射した前記第2及び第3光束は、それぞれ前記第2及び3光情報記録媒体の各情報記録面上での集光に寄与せず
    次式を満たすことを特徴とする対物レンズ。
    0.7<d/f1<1.5
    2.8<F1<5.8
    fB3>0.2
    但し、f1(mm)は、前記波長λ1における前記対物レンズの焦点距離を表し、d(mm)は、前記対物レンズの中心厚さを表し、F1(mm)は、前記対物レンズに入射する前記波長λ1の前記第1光束の径を表し、fB3(mm)は、前記第光情報記録媒体に対する情報の再生及び/または記録を行う場合の作動距離を表す。
  2. 前記第1光束を用いて、前記第1光情報記録媒体に対する情報の再生及び/または記録を行う際の前記対物レンズの所定の像側開口数をNA1、
    前記第2光束を用いて、前記第2光情報記録媒体に対する情報の再生及び/または記録を行う際の前記対物レンズの所定の像側開口数をNA2(NA2<NA1)、
    前記第3光束を用いて、前記第3光情報記録媒体に対する情報の再生及び/または記録を行う際の前記対物レンズの所定の像側開口数をNA3(NA3<NA2)、とするとき、
    次式を満たすことを特徴とする請求項1に記載の対物レンズ。
    NA2=N2・SINθ2
    NA3=N3・SINθ3
    ただし、
    SINθ2:前記第2光束領域の最周辺を通過した前記第2光束のマージナル光線の、前記対物レンズ最終面からの、光軸を基準として測った出射角θ2(deg)の絶対値の正弦
    SINθ3:前記第1光束領域の最周辺を通過した前記第3光束のマージナル光線の、前記対物レンズ最終面からの、光軸を基準として測った出射角θ3(deg)の絶対値の正弦
    N2:前記対物レンズの像側空間の前記波長λ2における屈折率
    N3:前記対物レンズの像側空間の前記波長λ3における屈折率
  3. 前記第1乃至第3光束領域のうち、少なくとも1つの光束領域には、同心円状の複数の輪帯からなる回折構造が形成されたことを特徴とする請求項1又は2に記載の対物レンズ。
  4. 前記第i光束領域に形成された前記回折構造に、前記第1光束が入射した場合に発生する前記第1光束の回折光のうち、最大の回折光量を有する回折光の回折次数をni1、
    前記第i光束領域に形成された前記回折構造に、前記第2光束が入射した場合に発生する前記第2光束の回折光のうち、最大の回折光量を有する回折光の回折次数をni2、としたとき、次式を満たすことを特徴とする請求項3に記載の対物レンズ。
    |ni1|>|ni2|(ただし、iは、1または2または3)
  5. 前記第i光束領域に形成された前記回折構造に、前記第1光束が入射した場合に発生する前記第1光束の回折光のうち、最大の回折光量を有する回折光の回折次数をni1、
    前記第i光束領域に形成された前記回折構造に、前記第3光束が入射した場合に発生する前記第3光束の回折光のうち、最大の回折光量を有する回折光の回折次数をni3、としたとき、次式を満たすことを特徴とする請求項4に記載の対物レンズ。
    |ni1|>|ni3|(ただし、iは、1または2または3)
  6. 前記第2及び第3光束領域には、それぞれ同心円状の複数の輪帯からなる回折構造が形成され、
    前記第2光束領域に形成された前記回折構造に、前記第1光束が入射した場合に発生する前記第1光束の回折光のうち、最大の回折光量を有する回折光の回折次数をn21、
    前記第3光束領域に形成された前記回折構造に、前記第1光束が入射した場合に発生する前記第1光束の回折光のうち、最大の回折光量を有する回折光の回折次数をn31、としたとき、次式を満たすことを特徴とする請求項3乃至5のいずれか1項に記載の対物レンズ。
    |n31|>|n21|
  7. 前記第2光束領域に形成された前記回折構造は、前記回折次数n21と波長λB2で最適化され、かつ、前記第3光束領域に形成された前記回折構造は、前記回折次数n31と波長λB3で最適化され、次式を満たすことを特徴とする請求項6に記載の対物レンズ。
    λB2≠λB3
  8. 次式を満たすことを特徴とする請求項3乃至7のいずれか1項に記載の対物レンズ。
    340nm<λB<440nm
    但し、λBは、前記対物レンズの前記回折構造のブレーズ化波長を表す。
  9. 次式を満たすことを特徴とする請求項1乃至8のいずれか1項に記載の対物レンズ。
    380nm<λ1<420nm
    630nm<λ2<670nm
    760nm<λ3<800nm
  10. 前記対物レンズは、プラスチック材料から形成されたことを特徴とする請求項1乃至9のいずれか1項に記載の対物レンズ
  11. 前記対物レンズは、ガラス材料から形成されたことを特徴とする請求項1乃至9のいずれか1項に記載の対物レンズ
  12. 波長λ1の第1光源からの第1光束を用いて厚さt1の第1保護基板を有する第1光情報記録媒体に対する情報の再生及び/または記録を行い、波長λ2(λ1<λ2)の第2光源からの第2光束を用いて厚さt2(t2>t1)の第2保護基板を有する第2光情報記録媒体に対する情報の再生及び/または記録を行い、波長λ3(λ2<λ3)の第3光源からの第3光束を用いて厚さt3(t3>t2)の第3保護基板を有する第3光情報記録媒体に対する情報の再生及び/または記録を行い、かつ、前記第1光情報記録媒体乃至前記第3光情報記録媒体に対する情報の再生及び/または記録について、共通の対物レンズを用いる光ピックアップ装置用の対物レンズであって、
    前記対物レンズは単レンズであって、
    前記対物レンズの入射瞳面を、光軸近傍から外側に向かって順に、第1光束領域、第2光束領域、第3光束領域、の輪帯状の3つの光束領域に分割したとき、
    前記第1光束領域に入射した前記第1乃至第3光束は、それぞれ前記第1乃至第3光情報記録媒体の各情報記録面上に回折限界内となる状態で集光し
    かつ、前記第2光束領域に入射した前記第1及び第2光束は、それぞれ前記第1及び第2光情報記録媒体の各情報記録面上に回折限界内となる状態で集光するが、前記第2光束領域に入射した前記第3光束は、前記第3光情報記録媒体の情報記録面上での集光に寄与せず
    かつ、前記第3光束領域に入射した前記第1光束は、前記第1光情報記録媒体の情報記録面上に回折限界内となる状態で集光するが、前記第3光束領域に入射した前記第2及び第3光束は、それぞれ前記第2及び3光情報記録媒体の各情報記録面上での集光に寄与せず
    次式を満たすことを特徴とする対物レンズ。
    0.7<d/f1<1.5
    2.8<F1<5.8
    但し、f1(mm)は、前記波長λ1における前記対物レンズの焦点距離を表し、d(mm)は、前記対物レンズの中心厚さを表し、F1(mm)は、前記対物レンズに入射する前記波長λ1の前記第1光束の径を表す。
  13. 前記対物レンズは、プラスチック材料から形成されたことを特徴とする請求項12に記載の対物レンズ
  14. 前記対物レンズは、ガラス材料から形成されたことを特徴とする請求項12に記載の対物レンズ
  15. 波長λ1の第1光源からの第1光束を用いて厚さt1の第1保護基板を有する第1光情報記録媒体に対する情報の再生及び/または記録を行い、波長λ2(λ1<λ2)の第2光源からの第2光束を用いて厚さt2(t2>t1)の第2保護基板を有する第2光情報記録媒体に対する情報の再生及び/または記録を行い、波長λ3(λ2<λ3)の第3光源からの第3光束を用いて厚さt3(t3>t2)の第3保護基板を有する第3光情報記録媒体に対する情報の再生及び/または記録を行い、かつ、前記第1光情報記録媒体乃至前記第3光情報記録媒体に対する情報の再生及び/または記録について、共通の対物レンズを用いる光ピックアップ装置であって、請求項1乃至14のいずれか1項に記載の対物レンズを備えたことを特徴とする光ピックアップ装置。
  16. 次式を満たすことを特徴とする請求項15に記載の光ピックアップ装置。
    m3<0
    但し、m3は、前記第3光情報記録媒体に対する情報の再生及び/または記録を行う場合の前記対物レンズの結像倍率を表す。
  17. 次式を満たすことを特徴とする請求項16に記載の光ピックアップ装置。
    −0.25<m3<−0.05
  18. 次式を満たすことを特徴とする請求項15乃至17のいずれか1項に記載の光ピックアップ装置。
    m2<0
    但し、m2は、前記第2光情報記録媒体に対する情報の再生及び/または記録を行う場合の前記対物レンズの結像倍率を表す。
  19. 次式を満たすことを特徴とする請求項18に記載の光ピックアップ装置。
    −0.20<m2<−0.02
  20. 請求項15乃至19のいずれか1項に記載の光ピックアップ装置を搭載したことを特徴とする、音声及び/または画像の記録装置、及び/または、音声及び/または画像の再生装置。
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