以下、好適な実施の形態について、図面を参照しつつ説明する。
本発明の第1の実施の形態の光学系は、基本的には両面非球面の単玉レンズであり、一方の非球面上には回折輪帯(輪帯状の回折面)を設けてある。一般に非球面屈折面では、ある主波長光に対して球面収差を補正した場合、主波長光より短い波長光に対しては球面収差がアンダー(補正不足)となる。これとは逆に、回折面を有するレンズれある回折レンズでは、ある主波長光で球面収差を補正した場合、主波長光より短い波長で球面収差をオーバー(補正過剰)とすることが可能である。従って、屈折による非球面レンズの非球面係数と、回折レンズの位相差関数の係数を適当に選んで、屈折パワーと回折パワーとを組み合わせることにより、異なる2波長光の両方で、球面収差を良好に補正することが可能である。
また、一般に、回折輪帯のピッチは、後述の実施例で詳述する位相差関数若しくは光路差関数を使って定義される。具体的には、位相差関数ΦBは単位をラジアンとして以下の〔数1〕で表され、光路差関数Φbは単位をmmとして〔数2〕で表わされる。
これら2つの表現方法は、単位が異なるが、回折輪帯のピッチを表わす意味では同等である。即ち、主波長λ(単位mm)に対し、位相差関数の係数Bに、λ/2πを掛ければ光路差関数の係数bに換算でき、また逆に光路差関数の係数bに、2π/λを掛ければ位相差関数の係数Bに換算できる。
今、説明を簡単にする為、1次回折光を用いる回折レンズについて述べることにすると、光路差関数なら、関数値が主波長λの整数倍を超える毎に輪帯が刻まれ、位相差関数なら、関数値が2πの整数倍を超える毎に輪帯が刻まれることになる。
例えば、屈折パワーのない円筒状の両平面の物体側面に回折輪帯を刻んだレンズを想定し、主波長を0.5μ=0.0005mm、光路差関数の2次係数(2乗項)を−0.05(位相差関数の2次係数に換算すると−628.3)、他の次数の係数を全て零とすると、第1輪帯の半径はh=0.1mmであり、第2輪帯の半径はh=0.141mmということになる。また、この回折レンズの焦点距離fについては、光路差関数の2次係数b2=−0.05に対して、f=−1/(2・b2)=10mmとなることが知られている。
今、上記の定義を基にした場合、位相差関数若しくは光路差関数の2次係数を零でない値とすることにより、光軸に近い、いわゆる近軸領域での色収差を補正することができる。また、位相差関数若しくは光路差関数の2次以外の係数、例えば、4次係数、6次係数、8次係数、10次係数等を零でない値とすることにより、2波長間での球面収差を制御することができる。尚、ここで、制御するということは、2波長間で、球面収差の差を極めて小さくすることもできるし、光学的仕様に必要な差を設けることも可能であるということを意味する。
上記の具体的な適用としては、波長の違う2光源からのコリメート光(平行光)を同時に対物レンズに入射させ、光ディスク上に結像させるときは、まず、位相差関数若しくは光路差関数の2次係数を使って近軸の軸上色収差を補正するとともに、位相差関数若しくは光路差関数の4次以降の係数を使って球面収差の2波長間での差を許容内になるよう小さくするのがよい。
また、別の例として、波長の違う2光源からの光を一つの対物レンズを使い、一方の波長の光に対しては、t1の厚み(透明基板の厚み)のディスクに対して収差が補正されるようにし、もう一方の波長の光に対しては、t2の厚みのディスクに対して収差が補正されるようにする仕様の場合について考えてみる。この場合、主に位相差関数若しくは光路差関数の4次以降の係数を使うことにより、球面収差の2波長間での差を設け、それぞれの厚みに対しては、それぞれの波長で球面収差が補正されるようにすることができる。また、いずれの場合にも屈折面は球面であるよりも非球面であるほうが、2波長間での収差補正をし易い。
上記の非球面屈折面は、異なる波長に対してはそれぞれ屈折力が異なり、集光点が異なるので、それぞれの集光点をそれぞれ基板厚の異なる光ディスクに対応させることができる。この場合、短い方の光源波長は700nm以下であり、長い方の光源波長は600nm以上であり、その波長差が80nm以上であることが好ましい。また、その波長差が400nm以下であることがより好ましく、更に好ましくは、その波長差が100nm以上200nm以下である、そして、回折面は、異なる2波長光に対し、ほぼその中間の波長で回折効率が最大であることが望ましいが、どちらか一方の波長で最大の回折効率を有するものであってもよい。
上記球面収差の補正と同一の作用を利用することにより、光学面上に回折輪帯レンズを設け、異なる2波長の光源の各々に対して、ある1つの同次数の回折光により軸上色収差を補正することができる。すなわち、異なる2波長の光源の光に対する軸上色収差を±λ/(2NA2)の範囲に補正することができる。ただし、λは2波長のうち長いほうの波長、NAは長いほうの波長に対応する像側開口数とする。
また、上記異なる2波長の光源の波長差が80nm以上であり、対物レンズの硝材のアッベ数をνdとしたとき、
νd > 50 ・・・(1)
を満足することが望ましい。上記条件(1)は、異なる2波長の光源に対して軸上色収差を補正した場合に、2次スペクトルを小さくするための条件である。
次に、薄肉単玉レンズの一方の面に回折面が設けられている場合に、単玉レンズ全体を、回折レリーフを外したベースとなる屈折レンズと回折面との合成と考えてこの合成レンズの色収差について検討する。ある波長λx と波長λy (λx <λy )とでの色消し条件は次式となる。
fR ・νR +fD ・νD =0
ただし、fR 、fD :それぞれ屈折レンズ、回折面の焦点距離
νR 、νD :それぞれ屈折レンズ、回折面のアッベ数で、次式で定まる。
νR =(n0−1)/(nx −ny )
νD =λ0/(λx −λy )
ただし、n0:基準波長での屈折率、λ0:基準波長
このとき、ある波長λz に対する色収差δfは次式となる。
δf=f(θR −θD )/(νR −νD ) ・・・(2)
ただし、θR 、θD :それぞれ屈折レンズ、回折面の部分分散比で次式で定まる。
θR =(nx −nz )/(nx −ny )
θD =(λx −λz )/(λx −λy )
ただし、nz :波長λz での屈折率
例として、λ0=λx =635nm、λy =780nm、λz =650nmとし、ベースとなる屈折レンズの硝材をホーヤ社BSC7(νd=64.2)としてみると、
νR=134.5, νD=−4.38, θR=0.128, θD=0.103
となり、δf=0.18×10-3fとなる。
また、ベースとなる屈折レンズの硝材をホーヤ社E−FD1(νd=29.5)に変えてみると、
νR=70.5, θR=0.136 となり、 δf=0.44×10-3fとなる。
このように式(2)においては、右辺分母(νR −νD )は|νD|が|νR|より十分小さいため、屈折レンズの硝材を変えることによる色収差δfの変化にとっては、屈折レンズのアッベ数νRの変化が支配的である。一方、θR とθD とは波長によってのみ定まり、右辺分子(θR −θD )は、その変化の寄与が右辺分母(νR −νD )に比べて小さい。
上記により、回折面を有するレンズにおいては、2次スペクトルδfを小さく抑えるには、屈折レンズの材料としてアッベ数νRの大きい材料を選ぶことが有効であることがわかる。条件式(1)は光源の波長変化などに対応できるよう、2次スペクトルを抑えるのに有効な限界を示す。
また、回折面を使用せずに、2種類の材料の屈折レンズを貼合わせて色消しを行う場合は、それぞれの材料について、θR =a+b・νR +△θR (a,bは定数)と表したとき、△θR は小さく、異常分散性が無いならば2次スペクトルδfは2つの屈折レンズのアッベ数νR にはよらない。したがって、式(1)は回折光学系に特有の条件であることがわかる。
本実施の形態の回折レンズを簡易に製造するためには、対物レンズをプラスチック材料で構成することが望ましい。条件式(1)を満たすプラスチック材料としては、アクリル系、ポリオレフィン系が用いられるが、耐湿性、耐熱性などから、ポリオレフィン系が好ましい。
次に、本発明の第2の実施の形態の対物レンズおよびこれを備えた光ピックアップ装置の構成を具体的に説明する。
図48に、本実施の形態の光ピックアップ装置の概略構成図を示す。光ピックアップ装置により情報記録および/または再生する光情報記録媒体である光ディスク20は、透明基板の厚さt1の第1光ディスク(例えばDVD)及び第2光ディスク(例えば青色レーザ使用次世代高密度光ディスク)と、t1とは異なる透明基板の厚さt2を有する第3光ディスク(例えばCD)の3種であるとして説明する。ここでは、透明基板の厚さt1=0.6mm、t2=1.2mmである。
図示の光ピックアップ装置は、光源として第1光源である第1半導体レーザ11(波長λ1=610nm〜670nm)と、第2光源である青色レーザ12(波長λ2=400nm〜440nm)と、第3光源である第2半導体レーザ13(波長λ3=740nm〜870nm)とを有しているとともに、光学系の一部として対物レンズ1を有している。第1光源、第2光源及び第3光源は、情報を記録および/または再生する光ディスクに応じて選択使用される。
第1半導体レーザ11、青色レーザ12あるいは第2半導体レーザ13から出射された発散光束は、ビームスプリッタ19および絞り3を介し、光ディスク20の透明基板21を透過して、対物レンズ1によってそれぞれの情報記録面22上に集光され、スポットを形成する。
各レーザからの入射光は、情報記録面22上の情報ピットによって変調された反射光となり、ビームスプリッタ18、トーリックレンズ29を介して共通の光検出器30に入射し、その出力信号を用いて、光ディスク20に記録された情報の読み取り信号、合焦検出信号やトラック検出信号が得られる。
また、光路内に設けられている絞り3は、この例においては固定の開口数(NA0.65)を有する絞りであり、余分な機構を必要とせず、低コスト化を実現できるものである。なお、第3光ディスクの記録および/または再生時には不要光(NA0.45以上)を除去できるように、絞り3の開口数を可変としてもよい。
対物レンズ1の光学面に実使用開口の外側の一部の光束を遮蔽するように輪帯状のフィルターを一体に形成することで、実使用開口の外側のフレア光を安価な構成で容易に除去することも可能である。
本実施の形態のように有限共役型の光学系を用いる場合には、集光性能を維持するため、光源と集光光学系との関係を一定に保つ必要があり、合焦やトラッキングのための移動は、光源11、12、13と対物レンズ1とを1つのユニットとして行うことが望ましい。
次に、本発明の第3の実施の形態の対物レンズおよびこれを含む光ピックアップ装置の構成を具体的に説明する。
図49に、本実施の形態の光ピックアップ装置の概略構成図を示す。図49の光ピックアップ装置はレーザー、光検出器およびホログラムをユニット化したレーザ/検出器集積ユニット40を用いた例であり、図48と同じ構成要素は同じ符号で示す。この光ピックアップ装置においては、第1半導体レーザ11、青色レーザ12、第1の光検出手段31、第2の光検出手段32、ホログラムビームスプリッタ23がレーザ/検出器集積ユニット40としてユニット化されている。
第1光ディスクを再生する場合、第1半導体レーザ11から出射された光束は、ホログラムビームスプリッタ23を透過し、絞り3によって絞られ、対物レンズ1により第1光ディスク20の透明基板21を介して情報記録面22に集光される。そして、情報記録面22で情報ピットにより変調されて反射した光束は、再び対物レンズ1、絞り3を介してホログラムビームスプリッタ23のディスク側の面で回折され、第1半導体レーザ11に対応した第1の光検出器31上へ入射する。そして、第1の光検出器31の出力信号を用いて、第1光ディスク20に記録された情報の読み取り信号、合焦検出信号やトラック検出信号が得られる。
第2光ディスクを再生する場合、青色レーザ12から出射された光束は、ホログラムビームスプリッタ23のレーザ側の面で回折され、上記の第1半導体レーザ11からの光束と同じ光路を取る。すなわち、このホログラムビームスプリッタ23の半導体レーザ側の面は、光合成手段としての機能を果たす。さらに絞り3、対物レンズ1を介して第2光ディスク20の透明基板21を介して情報記録面22に集光される。そして、情報記録面22で情報ピットにより変調されて反射した光束は、再び対物レンズ1、絞り3を介して、ホログラムビームスプリッタ23のディスク側の面で回折されて青色レーザ12対応した第2の光検出器32上へ入射する。そして、第2の光検出器32の出力信号を用いて、第2光ディスク20に記録された情報の読み取り信号、合焦検出信号やトラック検出信号が得られる。
さらに、第3光ディスクを再生する場合、第2半導体レーザ13、第3の光検出手段33、およびホログラムビームスプリッタ24がユニット化されたレーザ/検出器集積ユニット41が使用される。第2半導体レーザ13から出射された光束は、ホログラムビームスプリッタ24を透過し、出射光の合成手段であるビームスプリッタ19で反射し、絞り3によって絞られ、対物レンズ1により光ディスク20の透明基板21を介して情報記録面22に集光される。そして、情報記録面22で情報ピットにより変調されて反射した光束は、再び対物レンズ1、絞り3、ビームスプリッタ19を介してホログラムビームスプリッタ24で回折されて第3の光検出器33上へ入射する。そして、第3の光検出機33の出力信号を用いて、第3光ディスク20に記録された情報の読み取り信号、合焦検出信号やトラック検出信号が得られる。
第2および第3の実施の形態の光ピックアップ装置においては、対物レンズ1の非球面屈折面に光軸4と同心の輪帯状回折面が構成されている。一般に非球面屈折面だけで対物レンズを構成すると、ある波長λaに対して球面収差を補正した場合、λaよりも短い波長λbに対しては球面収差がアンダーとなる。一方回折面を使用すると、ある波長λaに対して球面収差を補正した場合、λaよりも短い波長λbに対しては球面収差がオーバーとなる。従って、屈折面による非球面光学設計と、回折面の位相差関数の係数を適当に選んで、屈折パワーと回折パワーとを組み合わせることにより、異なる波長間での球面収差を補正することが可能となる。また、非球面屈折面では、波長が異なると屈折力も変化し集光位置も異なる。よって、非球面屈折面を適当に設計することで、異なる波長に対しても各透明基板21の情報記録面22に集光させることができる。
また、第2および第3の実施の形態の対物レンズ1では、非球面屈折面と輪帯状回折面の位相差関数とを適当に設計することで、第1半導体レーザ11、青色レーザ12あるいは第2半導体レーザ13から出射した各光束に対して、光ディスク20の透明基板21厚さの違いにより発生する球面収差を補正している。さらに、輪帯状回折面において、輪帯の位置を表す位相差関数が、冪級数の4乗以降の項の係数を用いると球面収差の色収差を補正することが可能となる。なお、第3光ディスク(CD)については実使用上の開口はNA0.45であり、第3光ディスクではNA0.45以内で球面収差を補正し、NA0.45より外側の領域の球面収差をフレアとしている。これらの補正により各光ディスク20に対して、情報記録面22上の集光スポットの収差が回折限界(0.07λrms)とほぼ同程度あるいはそれ以下になっている。
上記のような第2および第3の実施の形態の光ピックアップ装置は、例えばCD、CD−R、CD−RW、CD−Video、CD−ROM、DVD、DVD−ROM、DVD−RAM、DVD−R、DVD−RW、MD等の、任意の異なる2つまたはそれ以上の複数の光情報記録媒体に対して、コンパチブルなプレーヤ、またはドライブ等、あるいはそれらを組み込んだAV機器、パソコン、その他の情報端末等、の音声および/または画像の記録、および/または、音声および/または画像の再生装置に搭載することができる。
次に、本発明の第4の実施の形態の対物レンズおよびこれを含む光ピックアップ装置の構成を具体的に説明する。
図67は本実施の形態の光ピックアップ装置10の概略構成図である。図67においては、第2および第3の実施の形態と共通の部材については同じ符号を用いることがある。
図67において光ピックアップ装置10は、光情報記録媒体である複数の光ディスク20を記録/再生するものである。以下、この複数の光ディスク20は、透明基板の厚さt1の第1光ディスク(DVD)および第2光ディスク(青色レーザ使用次世代高密度光ディスク)と、t1とは異なる透明基板の厚さt2を有する第3光ディスク(CD)として説明する。ここでは、透明基板の厚さt1=0.6mm、t2=1.2mmである。
光ピックアップ装置10は、光源として第1光源である第1半導体レーザ11(波長λ1=610nm〜670nm)と第2光源である青色レーザ12(波長λ2=400nm〜440nm)及び第3光源である第2半導体レーザ13(波長λ3=740nm〜870nm)とを有している。これら第1光源、第2光源及び第3光源は、記録/再生する光ディスクに応じて排他的に使用される。
集光光学系5は、第1半導体レーザ11、青色レーザ12あるいは第2半導体レーザ13から出射された光束を、光ディスク20の透明基板21を介して、それぞれの情報記録面22上に集光させ、スポットを形成する手段である。本実施の形態では、集光光学系5として、光源から出射された光束を平行光(略平行でよい)に変換するコリメータレンズ2と、コリメータレンズ2によって平行光とされた光束を集光させる対物レンズ1とを有している。
対物レンズ1の両面には、光軸4と同心の輪帯状回折面が構成されている。一般に非球面屈折面だけで集光光学系5を構成すると、ある波長λaに対して球面収差を補正した場合、λaよりも短い波長λbに対しては球面収差がアンダーとなる。一方、回折面を使用すると、ある波長λaに対して球面収差を補正した場合、λaよりも短い波長λbに対しては球面収差がオーバーとなる。従って、屈折面による非球面光学設計と、回折面の位相関数の係数を適当に選んで、屈折パワーと回折パワーとを組み合わせることにより、異なる波長間での球面収差を補正することが可能となる。また非球面屈折面では、波長が異なると屈折力も変化し集光位置も異なる。よって、非球面屈折面を適当に設計することで、異なる波長に対しても各透明基板の情報記録面22に集光させることができる。
上記の輪帯状回折面では、第1半導体レーザ11、青色レーザ12あるいは第2半導体レーザ13から出射した各光束に対して1次回折光を利用して収差補正を行っている。同次数の回折光を対応させると、異なる次数の回折光を対応させる場合に比べて光量損出が少なく、さらに、高次の回折光を対応させるよりも、1次回折光を用いると光量損出が少ない。したがって、本実施の形態の対物レンズ1は、DVD−RAMなどの高密度な情報を記録する光ディスクに情報を記録する光ピックアップ装置において有効となる。また、回折面は、異なる3つの波長光に対し、その中間の波長で回折効率が最大であることが望ましいが、両端の波長で最大の回折効率を有するものであってもよい。
また、非球面屈折面と輪帯状回折面の位相差関数とを適当に設計することで、第1半導体レーザ11、青色レーザ12あるいは第2半導体レーザ13から出射した各光束に対して、光ディスク20の透明基板21厚さの違いにより発生する球面収差を補正している。
さらに、対物レンズ1に形成された輪帯の位置を表す位相差関数において、冪級数の4乗以降の項の係数を用いると球面収差の色収差を補正することが可能となる。なお、第3光ディスク(CD)については実使用上の開口はNA0.45であり、NA0.45以内で球面収差を補正し、NA0.45より外側の領域の球面収差をフレアとしている。NA0.45以内の領域を通過する光束が情報記録面で光スポットを形成し、NA0.45の外側を通るフレア光は、悪影響を与えないように情報記録面で光スポットから間隔を隔てたところを通る。これらの補正により各光ディスク20に対して、情報記録面22上の集光スポットの収差が回折限界(0.07λrms)とほぼ同程度あるいはそれ以下になっている。
本実施の形態では、光路内に設けられた絞り3は固定の開口数(NA0.65)を有しており、余分な機構を必要とせず、低コスト化を実現できるものである。なお、第3光ディスクの記録/再生時には不要光(NA0.45以上)を除去できるように、絞り3の開口数を可変としてもよい。また、ビームスプリッタ6、7は、各レーザ光の光軸を合わせるためのものである。光検出器(図示せず)は、周知のように、各光源ごとにそれぞれ設けても良く、1つの光検出器で3つの光源11、12、13に対応する反射光を受光するようにしても良い。
次に、本発明の第5の実施の形態の対物レンズについて説明する。
本実施の形態では、対物レンズの輪帯状回折面において、輪帯の位置を表す位相差関数が冪級数の2乗の項の係数を用いる点のみにおいて、上述した第4の実施の形態の対物レンズと異なっており、これによって軸上色収差をも補正することが可能となっている。また、本実施の形態の対物レンズによると、第4の実施の形態と同様に各光ディスク20に対して、情報記録面22上の集光スポットの収差が回折限界(0.07λrms)とほぼ同程度あるいはそれ以下となっている。
次に、本発明の第6の実施の形態の光ピックアップ装置について説明する。
本実施の形態の光ピックアップ装置では、第1光ディスク(例えばDVD)と第2光ディスク(例えば、青色レーザ使用次世代高密度光ディスク)に対しては、光源から射出された光束をカップリングレンズによって平行光とし、第3光ディスク(例えばCD)に対しては、光源から射出された光束をカップリングレンズによって発散光とし、それぞれ対物レンズによって集光させる。第1および第2光ディスクの透明基板21の厚さは0.6mmであり、第3光ディスクの透明基板21の厚さは1.2mmである。
本実施の形態では、第1光ディスクと第2光ディスクとの両方の球面収差を回折面の効果により回折限界以内に補正し、また、第3光ディスクに対しては第1および第2光ディスクよりディスク厚が大きいことによって生じる球面収差を主として対物レンズに発散光束が入射することによって生じる球面収差によって打ち消し、第3光ディスクの記録/再生に必要な所定の開口数NA、例えばNA0.5或いはNA0.45以下における球面収差を回折限界以内に補正するようにしている。
従って、λ1、λ2、λ3(λ1<λ2<λ3)の各波長に対応する光情報記録媒体に対して、記録/再生を行うのに必要な所定の開口数をNA1、NA2、NA3とするとき、それぞれの波長に対して、NA1の範囲で波面収差のRMSを0.07λ1以下、NA2の範囲で0.07λ2以下、NA3の範囲で0.07λ2以下に補正することができる。
また、第3光ディスクに対しては、所定の開口数NAよりも大きい開口数NAの光束によってビームスポット径が小さくなり過ぎることは好ましくない。そのため、第4の実施の形態と同様に必要な開口数よりも大きな開口数では球面収差をフレアとすることが好ましい。
上記のような異なる波長光の3光源を有する第4〜第6の実施の形態の光ピックアップ装置は、例えばCD、CD−R、CD−RW、CD−Video、CD−ROM、DVD、DVD−ROM、DVD−RAM、DVD−R、DVD−RW、MD等の、任意の異なる2つ以上の複数の光情報記録媒体に対して、コンパチブルなプレーヤ、またはドライブ等、あるいはそれらを組み込んだAV機器、パソコン、その他の情報端末等、の音声および/または画像の記録、および/または、音声および/または画像の再生装置に搭載することができる。
以下、本発明の対物レンズについての実施例について説明する。
〈実施例1〜8〉
実施例1〜8の対物レンズは、第1の実施の形態に係る対物レンズの具体例であり、次の〔数3〕で表される非球面形状を屈折面に有している。
ただし、Zは光軸方向の軸、hは光軸と垂直方向の軸(光軸からの高さ:光の進行方向を正とする)、R0は近軸曲率半径、κは円錐係数、Aは非球面係数、2iは非球面のべき数である。また、実施例1〜3、6〜8では回折面が単位をラジアンとした位相差関数ΦBとして〔数1〕で表され、同様に実施例4,5では回折面が単位をmmとした光路差関数Φbとして〔数2〕で表わされる。
図1に、実施例1の対物レンズである回折光学レンズ(回折面を有する対物レンズ)の光路図を示す。また、図2に、実施例1の回折光学レンズについてのλ=635nmに対する開口数0.60までの球面収差図を示す。また、図3および図4に、実施例1の回折光学レンズについての波長λ=780nmに対する開口数0.45および0.60までの球面収差図をそれぞれ示す。なお、図1の回折光学レンズは、レンズ全面にブレーズド型の同心円状の輪帯回折部を有しているが、図面において回折部のレリーフ形状は省略されている。また、以降の多くの図面においても、回折部のレリーフ形状は省略されている。
実施例1の回折光学レンズによると、図2に示すように、波長λ=635nmに対してはNA0.60までの全開口がほぼ無収差である。また、図3に示すように、波長λ=780nmに対しては、実使用範囲であるNA0.45までがほぼ無収差である。その外側のNA0.45〜0.60の部分については、図4に示すように球面収差は大きくアンダーとされ、フレアとなっている。これによって、波長λ=780nmについて、適正なスポット径を得ることが可能となっている。
図5、図6に、実施例1の回折光学レンズについてのλ=635nmおよび波長λ=780nmに対する波面収差図をそれぞれ示す。これらの図から分かるように、実施例1の回折光学レンズによると、いずれの波長に対しても、光軸上ではほぼ無収差となり、像高0.03mmにおいても、実用上無収差に近いレベルとなっている。
以下、実施例1のレンズデータを示す。〔表1〕中、Rは曲率半径、dは面間隔、nは主波長での屈折率、νはアッベ数を示す。
実施例1
光源波長λ1=635nmのとき
焦点距離f1=3.34 開口数NA1=0.60 無限仕様
光源波長λ2=780nmのとき
焦点距離f2=3.36 開口数NA2=0.45 無限仕様
本実施例は、λ1の光束において+1次回折光を他の次数の回折光に比して多く発生させ、λ2の光束においても、+1次回折光を他の次数の回折光に比して多く発生させる。
λ1に対する+1次回折光の回折効率を100%とすれば、λ2に対する回折効率は84%となる。また、λ2に対する+1次回折光の回折効率を100%とすれば、λ1に対する回折効率は89%となる。
非球面係数
非球面1 非球面2
κ =−0.17021 κ =−11.653
A4 =−0.0032315 A4 = 0.038456
A6 =−0.00058160 A6 = −0.020800
A8 =−4.6316×10
-5 A8 = 0.0078648
A10=−3.79858×10
-5 A10= −0.0019431
A12=−6.0308×10
-6 A12= 0.00024343
回折面係数
B2 =−96.766
B4 = −2.9950
B6 = 2.1306
B8 = −0.12614
B10= −0.095285
(実施例2、実施例3)
次に、実施例2、実施例3について説明する。図7および図8に、実施例2の対物レンズである回折光学レンズのλ=405nmおよび635nmに対する光路図をそれぞれ示す。また、図9および図10に、実施例2の回折光学レンズについてのλ=405nmおよび635nmに対する開口数0.60までの球面収差図をそれぞれ示す。また、図11および図12に、実施例2の回折光学レンズについての波長λ=405nmおよび635nmに対する波面収差図をそれぞれ示す。
また、図13および図14に、実施例3の対物レンズである回折光学レンズのλ=405nmおよび635nmに対する光路図をそれぞれ示す。また、図15および図16に、実施例3の回折光学レンズについてのλ=405nmおよび635nmに対する開口数0.60までの球面収差図をそれぞれ示す。また、図17および図18に、実施例3の回折光学レンズについての波長λ=405nmおよび635nmに対する波面収差図をそれぞれ示す。
実施例2、3においては、波長λ=405nmおよび波長λ=635nmに対し、基板厚は共に0.6mm、NAは0.60であり、波面収差は光軸上はほぼ無収差、像高0.03mmにおいても、実用上無収差に近いレベルとなっている。
以下、実施例2、3のレンズデータを示す。
実施例2
光源波長λ1=405nmのとき
焦点距離f1=3.23 開口数NA1=0.60 無限仕様
光源波長λ2=635nmのとき
焦点距離f2=3.34 開口数NA2=0.60 無限仕様
本実施例は、λ1の光束において+1次回折光を他の次数の回折光に比して多く発生させ、λ2の光束においても、+1次回折光を他の次数の回折光に比して多く発生させる。
非球面係数
非球面1 非球面2
κ =−0.15079 κ =−3.8288
A4 =−0.0021230 A4 = 0.036962
A6 =−0.00076528 A6 =−0.020858
A8 =−8.84957×10
-5 A8 = 0.0079732
A10=−3.49803×10
-5 A10=−0.0018713
A12=−2.38916×10
-6 A12= 0.00022504
回折面係数
B2 = 0.0
B4 =−6.7169
B6 = 2.0791
B8 =−0.31970
B10= 0.00016708
実施例3
光源波長λ1=405nmのとき
焦点距離f1=3.31 開口数NA1=0.60 無限仕様
光源波長λ2=635nmのとき
焦点距離f2=3.34 開口数NA2=0.60 無限仕様
本実施例は、λ1の光束において+1次回折光を他の次数の回折光に比して多く発生させ、λ2の光束においても、+1次回折光を他の次数の回折光に比して多く発生させる。
非球面係数
非球面1 非球面2
κ =−0.19029 κ = 6.4430
A4 = 0.00030538 A4 = 0.037045
A6 =−0.0010619 A6 =−0.021474
A8 =−7.5747×10
-5 A8 = 0.0078175
A10=−6.7599×10
-5 A10=−0.0016064
A12=−3.3788×10
-6 A12= 0.00014332
回折面係数
B2 =−96.766
B4 = −2.9950
B6 = −0.25560
B8 = −0.08789
B10= 0.014562
(実施例4、実施例5)
次に、色収差補正を行った実施例4、実施例5について説明する。図19に、実施例4の対物レンズである回折光学レンズの光路図をそれぞれ示す。また、図20に、実施例4の回折光学レンズについてのλ=635nm、650nmおよび780nmに対する開口数0.50までの球面収差図をそれぞれ示す。また、図21に、実施例5の対物レンズである回折光学レンズの光路図をそれぞれ示す。また、図22に、実施例5の回折光学レンズについてのλ=635nm、650nmおよび780nmに対する開口数0.50までの球面収差図をそれぞれ示す。
図20および図22から分かるように、実施例4、5の回折光学レンズによると、波長λ=635nm、波長λ=780nmに対しては、ほぼ完全に色によるずれは補正され、波長λ=650nmに対しても、実用上全く問題はない程度に補正されている。
以下、実施例4、5のレンズデータを示す。
実施例4
光源波長λ1=635nmのとき
焦点距離f1=3.40 開口数NA1=0.50 無限仕様
光源波長λ2=780nmのとき
焦点距離f2=3.41 開口数NA2=0.50 無限仕様
本実施例は、λ1の光束において+1次回折光を他の次数の回折光に比して多く発生させ、λ2の光束においても、+1次回折光を他の次数の回折光に比して多く発生させる。
非球面係数
非球面1 非球面2
κ =−0.53245 κ = 7.3988
A4 = 0.24033×10
-2 A4 = 0.90408×10
-2
A6 =−0.91472×10
-3 A6 =−0.18704×10
-2
A8 = 0.15590×10
-4 A8 =−0.47368×10
-3
A10=−0.11131×10
-3 A10= 0.16891×10
-3
回折面係数
b2 =−0.36764×10-2
b4 =−0.91727×10-4
b6 =−0.34903×10-4
b8 = 0.77485×10-5
b10=−0.15750×10-5
実施例5
光源波長λ1=635nmのとき
焦点距離f1=3.40 開口数NA1=0.50 無限仕様
光源波長λ2=780nmのとき
焦点距離f2=3.40 開口数NA2=0.50 無限仕様
本実施例は、λ1の光束において+1次回折光を他の次数の回折光に比して多く発生させ、λ2の光束においても、+1次回折光を他の次数の回折光に比して多く発生させる。
非球面係数
非球面1 非球面2
κ =−0.17006 κ =−40.782
A4 =−0.30563×10
-2 A4 = 0.73447×10
-2
A6 =−0.45199×10
-3 A6 = 0.85177×10
-3
A8 = 0.58811×10
-5 A8 = −0.82795×10
-3
A10=−0.13002×10
-4 A10= 0.23029×10
-3
回折面係数
b2 =−0.74461×10-2
b4 = 0.11193×10-2
b6 =−0.85257×10-3
b8 = 0.50517×10-3
b10=−0.11242×10-3
(実施例6〜8)
次に、実施例6〜8について説明する。図23、図30および図37に、実施例6〜8の対物レンズである回折光学レンズのλ=650nmに対する光路図をそれぞれ示す。また、図24、図31および図38に、実施例6〜8の回折光学レンズのλ=780nm(NA=0.5)に対する光路図をそれぞれ示す。また、図25、図32および図39に、実施例6〜8の回折光学レンズについてのλ=650±10nmに対する開口数0.60までの球面収差図をそれぞれ示す。また、図26、図33および図40に、実施例6〜8の回折光学レンズについてのλ=780±10nmに対する開口数0.50までの球面収差図をそれぞれ示す。また、図27、図34および図41に、実施例6〜8の回折光学レンズについてのλ=780nmに対する開口数0.60までの球面収差図をそれぞれ示す。
また、図28、図35および図42に、実施例6〜8の回折光学レンズについてのλ=650nmに対する波面収差rms図をそれぞれ示す。また、図29、図36および図43に、実施例6〜8の回折光学レンズについてのλ=780nmに対する波面収差rms図をそれぞれ示す。また、図44、図45および図46に、実施例6〜8の回折光学レンズについての回折輪帯数と光軸からの高さとの関係を示すグラフをそれぞれ示す。ここで、回折輪帯数は、位相差関数を2πで割った値として定義される。
実施例6〜8では、球面収差図に示されたとおり、波長λ=650nmに対してはNA0.60までの全開口がほぼ無収差となっている。また、波長λ=780nmに対しては、実使用範囲であるNA0.50までがほぼ無収差となっているが、その外側のNA0.50〜0.60の部分については球面収差が大きく、フレアとなっている。これによって、波長λ=780nmについて、適正なスポット径を得ることが可能となっている。
以下、実施例6〜8のレンズデータを示す。〔表6〕〜〔表8〕、更に〔表15〕〜〔表18〕中、STOは絞り、IMAは像面を表しており、絞りを含めた形で表現している。また、OBJは、物点(光源)を表しており、以下の各表においても同じである。
実施例6
光源波長λ=650nmのとき
焦点距離f=3.33 像側開口数NA=0.60 無限仕様
光源波長λ=780nmのとき
焦点距離f=3.37 像側開口数NA=0.50(NA=0.60) 無限仕様
w(780nmの光束の結像面での13.5%強度のビーム径)=1.20μm
本実施例は、図44に見るように、λ1の光束においても、λ2の光束においても、光軸からの高さが有効径のおよそ半分以下の中心部では、−1次回折光を他の次数の回折光に比して多く発生させ、光軸からの高さが有効径のおよそ半分以上の周辺部では、+1次回折光を他の次数の回折光に比して多く発生させる。ただし、本実施例において、輪帯ピッチを整数倍して、±1次回折光ではなく、高次の同次回折光を発生させるようにしてもよい。
また、本実施例において、図27に示されるように、第2の光情報記録媒体では、NA1=0.6のとき、球面収差は+29μmであり、NA2=0.5のとき、球面収差は+1μmである。
また、本実施例において、開口数(NA)0.4における回折部のピッチは14μmである。
非球面係数
非球面1 非球面2
κ=−1.07952 κ=−3.452929
A4 =0.51919725×10
-2 A4 =0.15591292×10
-1
A6 =0.10988861×10
-2 A6 =−0.44528738×10
-2
A8 =−0.44386519×10
-3 A8 =0.65423404×10
-3
A10=5.4053137×10
-5 A10=−4.7679992×10
-5
回折面係数
B2 =29.443104
B4 =−14.403683
B6 =3.9425951
B8 =−2.1471955
B10=0.31859248
実施例7
光源波長λ=650nmのとき
焦点距離f=3.33 像側開口数NA=0.60 無限仕様
光源波長λ=780nmのとき
焦点距離f=3.37 像側開口数NA=0.50(NA=0.60) 有限仕様
本実施例は、図45に見るように、λ1の光束においても、λ2の光束においても、全面的に、+1次回折光を他の次数の回折光に比して多く発生させる。ただし、本実施例において、輪帯ピッチを整数倍して、+1次回折光ではなく、高次の同次回折光を発生させるようにしてもよい。
非球面係数
非球面1 非球面2
κ=−1.801329 κ=−8.871647
A4 =0.1615422×10
-1 A4 =0.1492511×10
-1
A6 =−0.4937969×10
-3 A6 =−0.4447445×10
-2
A8 =0.11038322×10
-3 A8 =0.60067143×10
-3
A10=−2.1823306×10
-5 A10=−3.4684206×10
-5
回折面係数
B2 =−17.150237
B4 =−4.1227045
B6 =1.1902249
B8 =−0.26202222
B10=0.018845315
実施例8
光源波長λ=650nmのとき
焦点距離f=3.33 像側開口数NA=0.60 無限仕様
光源波長λ=780nmのとき
焦点距離f=3.35 像側開口数NA=0.50(NA=0.60) 無限仕様
w(780nmの光束の結像面での13.5%強度のビーム径)=1.27μm
本実施例は、図46に見るように、λ1の光束においても、λ2の光束においても、ごく周辺部のみ−1次回折光を他の次数の回折光に比して多く発生させ、他は+1次回折光を他の次数の回折光に比して多く発生させる。ただし、本実施例において、輪帯ピッチを整数倍して、±1次回折光ではなく、高次の同次回折光を発生させるようにしてもよい。
また、本実施例において、図41に示されるように、第2の光情報記録媒体では、NA1=0.6のとき、球面収差は+68μmであり、NA2=0.5のとき、球面収差は+9μmである。
また、本実施例において、開口数(NA)0.4におけるピッチは61μmである。
非球面係数
非球面1 非球面2
κ=−1.2532 κ=−9.151362
A4 =0.1007×10
-1 A4 =0.133327×10-1
A6 =−0.85849×10
-3 A6 =−0.378682×10
-2
A8 =−1.5773×10
-5 A8 =0.3001×10
-3
A10=3.2855×10
-5 A10=4.02221×10
6
回折面係数
B2 =3.4251×10-21
B4 =0.0763977
B6 =−5.5386
B8 =0.05938
B10=0.2224
ここで、実施例6〜8に基づいて、レンズに入射する半導体レーザの波長の変動要因について考察する。半導体レーザの波長の個体ばらつきは、±2から3nm程度、多モード発振の幅が±2nm程度、書き込み時のモードホップが2nm程度と考えられる。これらの要因による半導体レーザの波長変動に伴う、レンズの球面収差の変動を考慮した場合について説明する。
つまり、異なる2波長の光源に対し、光ディスクの透明基板の厚みがそれぞれで異なる場合、実施例6に関するデータから理解されるように、異なる2波長の光源からの無限光(平行光束)に対して無収差に補正したレンズでは、1つの光源での波長10nm程度の変化に対し、球面収差変動が比較的大きい。実施例6では、650nmの波長においては波面収差が0.001λrmsであるが、640nmおよび660nmの波長においては、波面収差が0.035λrms程度に劣化する。もちろん、レーザの波長がよく管理された光学系に対しては、実施例6も十分実用に供することができる。これに対し、実施例7のレンズのように、どちらか一方の光源からの無限光に対してほぼ無収差で、もう一方の波長の光源からの有限光(非平行光束)に対してほぼ無収差に補正したレンズでは、1つの光源の波長10nm程度の変化に対し、球面収差変動を極めて小さく抑えることが可能となる。
次に、本実施の形態の回折光学系(回折光学レンズを有する光学系)の性能の温度変化について考察する。まず、半導体レーザの波長は、温度が30℃上昇すると6nm程度伸びる傾向がある。これに対し、回折光学系がプラスチックレンズで構成されている場合、30℃温度が上昇すると、屈折率が0.003ないし0.004程度減少する傾向がある。実施例6のような、2つの波長のどちらの無限光に対しても無収差に補正したレンズでは、半導体レーザの波長の温度変化による要因とプラスチックレンズの屈折率の温度変化による要因とが補償効果を起こし、温度変化に極めて強い光学系を作り出すことができる。また、実施例6において、素材がガラスである場合も、温度変化に対し許容幅のある光学系にすることは可能である。また、実施例7においても、実施例6には及ばないものの、30℃の温度変化で、波面収差の劣化は0.035λrms程度であり、実用上充分な温度補償ができている。
上述の温度変化の補償効果について更に説明する。波長の異なる2つの光源により、透明基板の厚さが異なる2種類の光情報記録媒体の記録及び/または再生する場合において、回折パターンを有する対物レンズを用いることにより、それぞれの光ディスクの情報記録面に必要とされる開口数ないしそれ以上の開口数においても波面収差のrms値がそれぞれの波長の0.07以下とすることができるので、専用の対物レンズと同等の結像特性を得ることができる。低価格でコンパクトな光ピックアップ装置とするために、光源には半導体レーザが用いられ、対物レンズにはプラスチックレンズが用いられることが多い。
レンズ用のプラスチック材料には種々のものがあるが、屈折率の温度変化や線膨張係数がガラスに比べて大きい。特に、屈折率の温度変化がレンズの諸特性に影響を及ぼす。25℃近傍の屈折率の温度変化としては、光ピックアップの光学素子として用いられるプラスチック材料では、−0.0002/℃ないし−0.00005/℃である。さらに、低複屈折材料は−0.0001/℃のものが多い。また、レンズ用の熱硬化性プラスチックはさらに温度変化に対して屈折率の変化が大きく、上記範囲を外れるものもある。
半導体レーザに関しても、現在の技術で製作されるものについては、発振波長に温度依存性があり、25℃近傍の発振波長の温度変化は、0.05nm/℃ないし0.5nm/℃である。
光情報記録媒体の情報を再生または光情報記録媒体に情報を記録するための光束の波面収差が温度により変化しrms値が波長の0.07以上となると光ピックアップ装置としての特性を維持することが困難であり、特に、より高密度の光情報媒体において波面収差の温度変化について留意する必要がある。プラスチックレンズの温度変化による波面収差の変化では焦点ズレと球面収差の変化の双方が起こっているが、前者は光ピックアップ装置において焦点制御を行うので、後者が重要である。ここで、プラスチック材料は温度変化ΔT(℃)があったときの屈折率の変化量をΔnとしたときに、
−0.0002/℃<Δn/ΔT<−0.00005/℃
の関係を満たし、半導体レーザは、温度変化ΔTがあったときの発振波長の変化量をΔλ1としたときに、
0.05nm/℃<Δλ1/ΔT<0.5nm/℃
の関係を満たすと、プラスチックレンズの屈折率の温度変化による波面収差の変動と、半導体レーザ光源の波長の温度変化とによる波面収差の変動とが打ち消しあう方向に作用し、補償効果を得ることができる。
また、環境温度変化が△T(℃)あったときに、波面収差の3次の球面収差成分の変化量を△WSA3(λrms)とすると、これは対物レンズを通過する光束の対物レンズの光情報媒体側の開口数(NA)の4乗に比例し、プラスチックレンズの焦点距離f(mm)に比例し、波面収差を波長単位で評価しているので光源の波長λ(mm)に反比例する。したがって、次式が成立する。
△WSA3=k・(NA)4・f・△T/λ (a1)
ここで、kは対物レンズの種類に依存する量である。
ちなみに、プラスチック製の両面非球面対物レンズで、焦点距離3.36mm、光情報媒体側の開口数が0.6で入射光束が平行光の場合に最適化されているものが、MOC/GRIN'97 Techical Digest C5 p40-p43、"The Temperature characteristics of a new optical system with quasi-finite conjugate plastic objective for high density optical disk use"に記載されているが、この文献の中のグラフから、30℃の温度変化でWSA3が0.045λrmsだけ変化しており、DVD用途であることから、波長は、λ=650nmと考えられる。以上のデータを式(a1)に代入すると、k=2.2×10-6が得られる。また、温度変化による波長変化の影響に関しては記載がないが、発振波長の温度変化が小さい場合、回折を使用しない対物レンズについては、温度による屈折率変化の影響のほうが大きい。
DVDについて記録及び/または再生する光ピックアッブ装置に関しては、kが上記値以下であることが必要となる。透明基板の厚さが異なる2種類の光情報記録媒体の記録及び/または再生する場合に、回折パターンを有する対物レンズにおいて、温度変化による波長変化の影響も無視することはできなくなる。特にkに関し、焦点距離、プラスチック材料の屈折率の温度変化、透明基板の厚さの差、二つの光源の発振波長の差等によりkの値は異なるが、実施例6においては、半導体レーザの波長の温度変化による要因とプラスチックレンズの屈折率の温度変化による要因とが補償効果を起こし、対物レンズがプラスチックレンズであっても温度変化による波面収差の変化は少なくシミュレーションによると、
k=2.2×10-6/℃、k=0.4×10-6/℃
となる。
kとしては、0.3<k<2.2の範囲を取ることができる。したがって、式(a1)より、
k=ΔWSA3・λ/{f・(NA1)4・ΔT(NA)} (a2)
であるから、
0.3×10-6/℃<ΔWSA3・λ/{f・(NA1)4・ΔT}<
2.2×10-6/℃ (a3)
となる。式(a3)において、kの値が上限を越えると、温度変化により光ピックアップ装置としての特牲を維持することが困難となり易く、また、下限を越えると、温度変化に対しての変動は少ないが、波長たけが変化した場合において光ピックアップ装置としての特性を維持することが困難となり易い。
また、実施例8においては、実施例6と比較して、一方の波長、即ち、780nmの波長の性能を許容範囲内でやや悪くすることにより、もう一方の波長、即ち、650nmの波長近傍±10nmでの球面収差変動を小さくすることができる。実施例6においては、波長640nm若しくは660nmでの波面収差は0.035λrms程度であるが、実施例8においては、波長640nm若しくは660nmでの波面収差は0.020λrms程度に向上させることができる。この二つの要因はトレードオフの関係があるが、バランスを保つことが重要であり、0.07λrmsを超えると、レンズ性能が悪化し、光ディスク用光学系として用いることは困難となってくる。
次に、実施例6に基づいて、波長変化に対する、マージナル光線の球面収差の変化量と軸上色収差の変化量との関係について説明する。実施例6のように透明基板の厚さが薄い方の情報記録媒体には短い方の波長の光束を使用し、透明基板の厚さが厚い方の情報記録媒体には長い方の波長の光束を使用する一つの光ピックアップ装置で、それら光束に使用される対物レンズでは、回折面の作用によって、或る波長に対して波長が長くなった場合に球面収差をアンダー側に変位させることで、透明基板厚の差によって生じる球面収差を補正することができる。
この対物レンズにおいて、少なくとも一方の光源の使用波長の微小な変化に対する、マージナル光線の球面収差の変化量と軸上色収差の変化量とを、それぞれ△SA、△CAとすれば、
−1<△SA/△CA<−0.2
を満たすことが望ましい。この式は使用波長が変化した時の、マージナル光線の球面収差の変化量と軸上色収差の変化量との比を示し、この条件式の下限を上回ることで、回折輪帯の間隔を大きくでき、回折効率の高い回折面が製造し易く、条件式の上限を下回ることで、回折面が負で大きな屈折力を持つことを抑制でき、また軸上色収差の波長変化が過大にならず、モードポップ等の波長変化に対して焦点位置の変動を抑えることができる。なお、波長の微小な変化とは、10nm以下程度の変化を意味する。実施例6では図25に見るように、波長650nmにおいて△SA/△CAの値は−0.7である。
ここで、回折パワーとレンズ形状との関係について説明する。図47に、回折パワーとレンズ形状との関係を模式的に示す。図47(a)は回折パワーがすべての部分で正のレンズ形状を示す図であり、図47(b)は回折パワーがすべての部分で負のレンズ形状を示す図である。実施例6のレンズは、図47(c)に示すように、回折パワーが光軸付近では負のパワーであり、途中で正のパワーに切り替わるように設計されている。これにより、回折輪帯のピッチが細かくなりすぎないようにすることができる。また、実施例8のように、レンズの周辺部付近で回折パワーが、正のパワーから負のパワーに切り替わるように設計することにより、2波長間で、良好な収差を得ることもできる。図47(d)のように、例えば、回折パワーが光軸付近では正のパワーであり、途中で負のパワーに切り替わるようにできる。
図47(c)では、回折面はブレーズ化された複数の回折輪帯を有し、光軸に近い側の回折輪帯ではその段差部が光軸から離れた側に位置し、光軸から離れた側の回折輪帯ではその段差部が光軸に近い側に位置している。また、図47(d)では、回折面はブレーズ化された複数の回折輪帯を有し、光軸に近い側の回折輪帯ではその段差部が光軸に近い側に位置し、光軸から離れた側の回折輪帯ではその段差部が光軸から離れた側に位置している。
〈実施例9、10〉
実施例9、10の対物レンズは、上述した〔数3〕で表される非球面形状を屈折面に有しており、実施例9は2光源対応の有限共役型、実施例10は、第2の実施の形態に係る対物レンズの具体例であり、3光源対応の有限共役型である。また、実施例9、10では回折面が単位をラジアンとした位相差関数ΦBとして上述の〔数1〕で表される。
図50および図51に、実施例9の対物レンズのλ=650nmおよびλ=780nmにおける光路図を示す。また、図52に、実施例9の対物レンズについてのλ=650nmに対する開口数0.60までの球面収差図を示す。また、図53および図54に、実施例9の対物レンズについての波長λ=780nmに対する開口数0.45および0.60までの球面収差図をそれぞれ示す。また、図55、図56に、実施例9の対物レンズについてのλ=650nmおよび波長λ=780nmに対する波面収差図をそれぞれ示す。
図57〜図59に、実施例10の対物レンズのλ=650nm、λ=400nmおよびλ=780nmにおける光路図を示す。また、図61、図61に、実施例10の対物レンズについてのλ=650nmおよびλ=400nmに対する開口数0.65までの球面収差図を示す。また、図62および図63に、実施例10の対物レンズについての波長λ=780nmに対する開口数0.45および0.65までの球面収差図をそれぞれ示す。また、図64〜図66に、実施例10の対物レンズについてのλ=650nm、λ=400nmおよび波長λ=780nmに対する波面収差図をそれぞれ示す。
実施例9、10の対物レンズによると、何れの実施例でも、780nm波長光に対しては、実使用上のNA0.45を超える光束では大きな球面収差を生じ、フレアとして情報の記録および/または再生には寄与しない。
以下、実施例9、10のレンズデータを示す。〔表9〕、〔表10〕中、rはレンズの曲率半径、dは面間隔、nは各波長での屈折率、νはアッベ数を示す。また、参考として、d線(λ=587.6nm)での屈折率と、νd(アッベ数)を記す。また、面No.の数字は、絞りを含めて表示しており、また、本実施例では、便宜上、光ディスクの透明基板に相当する部分の前後2か所に空気間隔を分けて表現している。
実施例9
f=3.33 像側 NA 0.60 倍率 -0.194 (波長λ=650nmのとき)
f=3.35 像側 NA 0.45(NA 0.60) 倍率 -0.195 (波長λ=780nmのとき)
非球面1 κ =-0.1295292 回折面1 B2 = 0
A4 =-0.0045445253 B4 =-7.6489594
A6 =-0.0011967305 B6 = 0.9933123
A8 =-0.00011777995 B8 =-0.28305522
A10=-5.3843777×10
-5 B10= 0.011289605
A12=-9.0807729×10
-6
非球面2 κ =-5.161871
A4 = 0.019003845
A6 =-0.010002187
A8 = 0.004087239
A10=-0.00085994626
A12= 7.5491556×10-5
実施例10
f=3.31 像側 NA 0.65 倍率 -0.203 (波長λ=650nmのとき)
f=3.14 像側 NA 0.65 倍率 -0.190 (波長λ=400nmのとき)
f=3.34 像側 NA 0.45(NA 0.65) 倍率 -0.205 (波長λ=780nmのとき)
非球面1 κ =-0.08796008 回折面1 B2 = 0
A4 =-0.010351744 B4 =-61.351934
A6 = 0.0015514472 B6 = 5.9668445
A8 =-0.00043894535 B8 = -1.2923244
A10= 5.481801×10
-5 B10= 0.041773541
A12=-4.2588508×10
-6
非球面2 κ =-302.6352 回折面2 B2 = 0
A4 = 0.002 B4 = 341.19136
A6 = -0.0014 B6 =-124.16233
A8 = 0.0042 B8 = 49.877242
A10= -0.0022 B10= -5.9599182
A12= 0.0004
なお、上記実施例10の対物レンズの具体例は、第3の実施の形態にも同様に適用できる。
〈実施例11〜14〉
実施例11〜14の対物レンズは、上述した〔数3〕で表される非球面形状を屈折面に有しており、また、実施例11〜13では回折面が単位をラジアンとした位相差関数ΦBとして上述の〔数1〕で表され。実施例14では回折面が単位をmmとした光路差関数Φbとして上述の〔数2〕で表わされる。
これら実施例11〜14の対物レンズ特性を得るに当たって、第1光ディスク(DVD)用の光源波長を650nm、第2光ディスク(青色レーザ使用次世代高密度光ディスク)用の光源波長を400nmとし、第1および第2光ディスクの透明基板厚さt1は共にt1=0.6mmである。また、t1とは異なる透明基板の厚さt2=1.2mmを有する第3光ディスク(CD)用の光源波長は780nmとした。また、光源波長400nm、650nm、780nmに対応する開口数NAとして、0.65、0.65、0.5をそれぞれ想定している。
(実施例11)
実施例11は、第4の実施の形態に係わる対物レンズの具体例であり、対物レンズには平行光が入射するように構成されている。この実施例では、回折面の位相差関数の係数に2乗項が含まれず(B2=0)、2乗項以外の項の係数だけを使用している。
図68〜図70に、実施例11の対物レンズのλ=650nm、λ=400nmおよびλ=780nmにおける光路図を示す。また、図71および図72に、実施例11の対物レンズについてのλ=650nmおよびλ=400nmに対する開口数0.65までの球面収差図を示す。また、図73および図74に、実施例11の対物レンズについての波長λ=780nmに対する開口数0.45および0.65までの球面収差図をそれぞれ示す。また、図75〜図77に、実施例11の対物レンズについてのλ=650nm、λ=400nmおよびλ=780nmに対する波面収差図をそれぞれ示す。
以下、実施例11のレンズデータを示す。〔表11〕中、rはレンズの曲率半径、dは面間隔、nは各波長での屈折率を示す。また、面No.の数字は、絞りを含めて表示している。
実施例11
f=3.33 像側 NA 0.65 (波長λ=650nmのとき)
f=3.15 像側 NA 0.65 (波長λ=400nmのとき)
f=3.37 像側 NA 0.45(NA 0.65) (波長λ=780nmのとき)
非球面1 κ =-0.1847301 回折面1 B2 = 0
A4 =-0.0090859227 B4 =-69.824562
A6 = 0.0016821871 B6 = 0.35641549
A8 =-0.00071180761 B8 = 0.6877372
A10= 0.00012406905 B10= -0.18333885
A12=-1.4004589×10
-5
非球面2 κ =-186.4056 回折面2 B2 = 0
A4 = 0.002 B4 = 745.72117
A6 = -0.0014 B6 =-334.75078
A8 = 0.0042 B8 = 81.232224
A10= -0.0022 B10= -5.3410176
A12= 0.0004
実施例11(および後述する実施例12)のような対物レンズと3つの光源とを有する光ピックアップ装置において、非球面係数及び位相差関数の係数を適当に設計することで、透明基板厚さの違いにより発生する球面収差及び波長の違いにより発生する球面収差の色収差を各ディスクともに補正することが可能である。また、図74から明らかなように、第3光ディスクでは実使用上の開口数NA0.45の外側をフレアとしている。
(実施例12)
また、実施例12の対物レンズは、有限距離からの発散光が入射するように構成されている。この実施例では、回折面の位相差関数の係数に2乗項が含まれず(B2=0)、2乗項以外の項の係数だけを使用している。
図78〜図80に、実施例12の対物レンズのλ=650nm、λ=400nmおよびλ=780nmにおける光路図を示す。また、図81および図82に、実施例12の対物レンズについてのλ=650nmおよびλ=400nmに対する開口数0.65までの球面収差図を示す。また、図83および図84に、実施例12の対物レンズについての波長λ=780nmに対する開口数0.45および0.65までの球面収差図をそれぞれ示す。また、図85〜図87に、実施例12の対物レンズについてのλ=650nm、λ=400nmおよびλ=780nmに対する波面収差図をそれぞれ示す。
以下、実施例12のレンズデータを示す。
実施例12
f=3.31 像側 NA 0.65 倍率 -0.203 (波長λ=650nmのとき)
f=3.14 像側 NA 0.65 倍率 -0.190 (波長λ=400nmのとき)
f=3.34 像側 NA 0.45(NA 0.65) 倍率 -0.205 (波長λ=780nmのとき)
非球面1 κ =-0.08796008 回折面1 B2 = 0
A4 =-0.010351744 B4 =-61.351934
A6 = 0.0015514472 B6 = 5.9668445
A8 =-0.00043894535 B8 = -1.2923244
A10= 5.481801×10
-5 B10= 0.041773541
A12=-4.2588508×10
-6
非球面2 κ =-302.6352 回折面2 B2 = 0
A4 = 0.002 B4 = 341.19136
A6 = -0.0014 B6 =-124.16233
A8 = 0.0042 B8 = 49.877242
A10= -0.0022 B10= -5.9599182
A12= 0.0004
実施例12のような対物レンズと3つの光源とを有する光ピックアップ装置において、透明基板厚さの違いにより発生する球面収差及び波長の違いにより発生する球面収差の色収差について各ディスクともに補正することが可能である。また、図84から明らかなように、第3光ディスクでは実使用上の開口数NA0.45の外側をフレアとしている。
(実施例13)
また、実施例13の対物レンズは、第4の実施の形態に係わる対物レンズの他の具体例であり、無限距離からの平行光が入射するように構成されている。この実施例では、回折面の位相差関数の係数として2乗項および2乗項以外の項が使用されている。
図88〜図90に、実施例13の対物レンズのλ=650nm、λ=400nmおよびλ=780nmにおける光路図を示す。また、図91および図92に、実施例13の対物レンズについてのλ=650nmおよびλ=400nmに対する開口数0.60までの球面収差図を示す。また、図93および図94に、実施例13の対物レンズについての波長λ=780nmに対する開口数0.45および0.60までの球面収差図をそれぞれ示す。また、図95〜図97に、実施例13の対物レンズについてのλ=650nm、λ=400nmおよびλ=780nmに対する波面収差図をそれぞれ示す。
以下、実施例13のレンズデータを示す。
実施例13
f=3.31 像側 NA 0.60 (波長λ=650nmのとき)
f=3.14 像側 NA 0.60 (波長λ=400nmのとき)
f=3.34 像側 NA 0.45(NA 0.60) (波長λ=780nmのとき)
非球面1 κ =-0.3363369 回折面1 B2 =-177.66083
A4 =-0.0025421455 B4 = -46.296284
A6 =-0.0010660122 B6 = -6.8014831
A8 = 4.7189743×10
-5 B8 = 1.6606499
A10= 1.5406396×10
-6 B10= -0.39075825
A12=-7.0004876×10
-6
非球面2 κ =43.44262 回折面2 B2 = 241.52445
A4 = 0.002 B4 = 402.41974
A6 =-0.0014 B6 =-191.87213
A8 = 0.0042 B8 = 64.779696
A10=-0.0022 B10= -8.6741764
A12= 0.0004
本実施例では、回折面の位相差関数の係数として2乗項および2乗項以外の項が使用されているために、透明基板厚さの違いにより発生する球面収差及び波長の違いにより発生する球面収差の色収差と軸上色収差について各ディスクともに補正することが可能となっている。また、図94から明らかなように、第3光ディスクでは実使用上の開口数NA0.45の外側をフレアとしている。
(実施例14)
実施例14の対物レンズは、第6の実施の形態に係わる対物レンズの具体例であり、無限距離から波長400nmと650nmの平行光が入射し、有限距離から波長780nmの発散光が入射するように構成されている。この実施例では、回折面の光路差関数の係数として2乗項および2乗項以外の項が使用されている。
図98に、実施例14の対物レンズのλ=400nmにおける光路図を示す。また、図99および図101に、実施例14の対物レンズについてのλ=400nm±10nm、λ=650nm±10nmおよびλ=780nm±10nmに対する開口数0.65までの球面収差図を示す。
以下、実施例14のレンズデータを示す。
実施例14
f= 像側 NA 0.65 (波長λ=650nmのとき)
f= 像側 NA 0.65 (波長λ=400nmのとき)
f= 像側 NA 0.45(NA 0.65) (波長λ=780nmのとき)
非球面1 κ =-2.0080 回折面 b2 =-0.51589×10-3
A4 = 0.18168×10
-1 b4 =-0.24502×10
-3
A6 =-0.91791×10
-3 b6 = 0.49557×10
-4
A8 = 0.16455×10
-3 b8 =-0.14497×10
-4
A10=-0.11115×10
-4
非球面2 κ =3.1831
A4 = 0.14442×10-1
A6 = -0.17506×10-2
A8 = 0.21593×10-4
A10= 0.12534×10-4
なお、本発明は上記実施例に限定されるものではない。回折を対物レンズの両面に形成したが、光ピックアップ装置の光学系内の光学素子のある一面に設けてもよい。また輪帯状回折面をレンズ面全体に形成したが、部分的に回折面を形成しても良い。さらに、青色レーザ使用次世代高密度光ディスクとして、光源波長400nm、透明基板の厚さ0.6mmと仮定して光学設計を進めたが、これ以外の仕様である光ディスクに関しても本発明は適用が可能である。
次に、本発明の第7の実施の形態について説明する。
図117は、本実施の形態の対物レンズ及びこれを含む光ピックアップ装置の概略構成である。図117のように、第1の半導体レーザ111と第2の半導体レーザ112が光源としてユニット化されている。コリメータ13と対物レンズ16との間にビームスプリッタ120が配置され、コリメータ13でほぼ平行にされた光がビームスプリッタ120を通過し対物レンズ16へ向かう。また、情報記録面22から反射した光束が光路変更手段としてのビームスプリッタ120で光検出器30に向かうように光路を変える。対物レンズ16はその外周にフランジ部16aを有し、このフランジ部16aにより対物レンズ16を光ピックアップ装置に容易に取り付けることができる。また、フランジ部16aは対物レンズ16の光軸に対し略垂直方向に延びた面を有するから、更に精度の高い取付が容易にできる。
第1の光ディスクを再生する場合、第1半導体レーザ111から出射された光束は、コリメータ13を透過し平行光束となる。さらにビームスプリッタ120を経て絞り17によって絞られ、対物レンズ16により第1の光ディスク20の透明基板21を介して情報記録面22に集光される。そして、情報記録面22で情報ピットにより変調されて反射した光束は、再び対物レンズ16、絞り17を介して、ビームスプリッタ120で反射され、シリンドリカルレンズ180により非点収差が与えられ、凹レンズ50を経て、光検出器30上ヘ入射し、光検出器30から出カされる信号を用いて、第1の光ディスク20に記録された情報の読み取り信号が得られる。
また、光検出器30上でのスポットの形状変化、位置変化による光量変化を検出して、合焦検出やトラック検出を行う。この検出に基づいて2次元アクチュエータ150が第1の半導体レーザ111からの光束を第1の光ディスク20の情報記録面22上に結像するように対物レンズ16を移動させるとともに、第1の半導体レ―ザ111からの光束を所定のトラックに結像するように対物レンズ16を移動させる。
次に、第2の光ディスクを再生する場合、第2の半導体レーザ112から出射された光束は、コリメータ13を透過し平行光束となる。さらにビームスプリッタ120を経て絞り17によって絞られ、対物レンズ16により第2の光ディスク20の透明基板21を介して情報記録面22に集光される。そして、情報記録面22で情報ピットにより変調されて反射した光束は、再び対物レンズ16、絞り17を介して、ビームスプリッタ120で反射され、シリンドリカルレンズ180により非点収差が与えられ、凹レンズ50を経て、光検出器30上ヘ入射し、光検出器30から出力される信号を用いて、第2の光ディスク20に記録された情報の読み取り信号が得られる。また、光検出器30上でのスポットの形状変化、位置変化による光量変化を検出して、合焦検出やトラック検出を行う。この検出に基づいて2次元アクチュエータ15か第1の半導体レーザ112からの光束を第2光ディスク20の情報記録面22上に結像するように対物レンズ16を移動させるとともに、第2の半導体レーサ112からの光束を所定のトラックに結像するように対物レンズ16を移動させる。
対物レンズ(回折レンズ)16は、第1の光ディスク、第2の光ディスクの記録及び/または再生に必要な開口数のうち大きい方の開口数(最大開口数)まで、それぞれの半導体レーザからの入射光に対して、それぞれの波長(λ)に対して0.07λrms以下であるように設計されている。このため、それぞれの光束の結像面上の波面収差は、0.07λrms以下となっている。従って、結像面上及び検出器30上でどちらの光ディスクの記録及び/または再生時にフレアがなく、合焦誤差検出やトラック誤差検出の特性が良好となる。
なお、第1の光ディスクをDVD(光源波長650nm)、第2の光ディスクをCD(光源波長780nm)とするケースや、第1の光ディスクを次世代高密度光ディスク(光源波長400nm)、第2の光ディスクをDVD(光源波長650nm)のケースが想定されるが、特に、それぞれの光ディスクの必要開口数に大きな差がある場合には、上記のような場合には、必要なスポット径に比較してスポットが小さすぎる場合もある。このときは本明細書の他の箇所で説明している開口制限手段を導入し、所望のスポット径とすればよい。
以下、第7の実施の形態に係わる対物レンズの具体例として、球面収差補正レンズの実施例15、16,17,18を説明する。各実施例で波面収差が、最大開口数に対し0.07λrms以下に補正されている。なお、以下において像側とは光情報記録媒体側の意味である。
〈実施例15〉
図118に、実施例15の対物レンズである回折光学レンズ(回折面を有する対物レンズ)の光路図を示す。また、図119に、実施例15の回折光学レンズについての波長(λ)=640,650,660nmに対する開口数0.60までの球面収差図を示す。また、図120は光情報記録媒体の透明基板が図118より厚い場合の実施例15の回折光学レンズの光路図を示す。図121に、図120の場合の回折光学レンズについての波長λ=770,780,790nmに対する開口数0.60までの球面収差図をそれぞれ示す。
実施例15の回折光学レンズによると、図119に示すように、波長λ=650nmに対してはNA0.60までの全開口がほぼ無収差である。また、図120、図121に示すように、透明基板が厚い場合で、波長λ=780nmに対しては、NA0.60までがほぼ無収差である。なお、λ=780nmのときの所定開口数は0.45である。
以上のように、実施例15では、実施例1,6,8と比べて、光情報記録媒体の透明基板が厚く波長が780nmの場合の球面収差を透明基板がこれよりも薄く波長が650nmの場合と同じ開口数(NA0.60)まで補正できる。
以下、実施例15のレンズデータを示す。
光源波長λ=650nmのとき
焦点距離f=3.33 像側開口数 NA=0.60 無限仕様(平行光束入射)
光源波長λ=780nmのとき
焦点距離f=3.38 像側開口数 NA=0.60 無限仕様
非球面係数
非球面1
K=−1.0358
A
4=4.8632×10
-3
A
6=5.3832×10
-4
A
8=−1.5773×10
-4
A
10=3.8683×10
-7
非球面2
K=−9.256352
A4=1.5887×10-2
A6=−5.97422×10-3
A8=1.11613×10-3
A10=−9.39682×10-5
回折面係数(基準波長650nm)
b2=6.000×10-3
b4=−1.317×10-3
b6=1.5274×10-4
b8=−6.5757×10-5
b10=6.221×10-6
〈実施例16〉
図122に、実施例16の対物レンズである回折光学レンズ(回折面を有する対物レンズ)の光路図を示す。また、図123に、実施例16の回折光学レンズについての波長(λ)=640,650,660nmに対する開口数0.60までの球面収差図を示す。また、図124は光情報記録媒体の透明基板が図122より厚い場合の実施例16の回折光学レンズの光路図を示す。図125に、図124の場合の回折光学レンズについての波長λ=770,780,790nmに対する開口数0.60までの球面収差図をそれぞれ示す。
実施例16の回折光学レンズによると、図123に示すように、波長λ=650nmに対してはNA0.60までの全開口がほぼ無収差である。また、図124、図125に示すように、透明基板が厚い場合で、波長λ=780nmに対しては、NA0.60までがほぼ無収差である。なお、λ=780nmのときの所定開口数は0.45である。
以上のように、実施例16では、実施例1,6,8と比べて、光情報記録媒体の透明基板が厚く波長が780nmの場合の球面収差を透明基板がこれよりも薄く波長が650nmの場合と同じ開口数(NA0.60)まで補正できる。なお、実施例15,16では、透明基板の厚さの差による球面収差をNA0.6まで補正するために、回折による球面収差の補正作用が強いことが必要であるが、このため輪帯ピッチが狭くなるが、回折の近軸パワーを負にしてピッチの減少を緩和している。
以下、実施例16のレンズデータを示す。
光源波長λ=650nmのとき
焦点距離f=3.33 像側開口数 NA=0.60 無限仕様
光源波長λ=780nmのとき
焦点距離f=3.36 像側開口数 NA=0.60 無限仕様
非球面係数
非球面1
K=−1.1331
A
4=4.5375×10
-3
A
6=1.2964×10
-3
A
8=−3.6164×10
-4
A
10=2.0765×10
-5
非球面2
K=−4.356298
A4=1.57427×10-2
A6=−4.91198×10-3
A8=7.72605×10-4
A10=−5.75456×10-5
回折面係数(基準波長650nm)
b2=2.1665×10-3
b4=−2.0272×10-3
b6=5.5178×10-4
b8=−1.8391×10-4
b10=1.8148×10-5
〈実施例17〉
図126に、実施例17の対物レンズである回折光学レンズ(回折面を有する対物レンズ)の光路図を示す。また、図127に、実施例17の回折光学レンズについての波長(λ)=640,650,660nmに対する開口数0.60までの球面収差図を示す。また、図128は光情報記録媒体の透明基板が図126より厚い場合の実施例17の回折光学レンズの光路図を示す。図129に、図128の場合の回折光学レンズについての波長λ=770,780,790nmに対する開口数0.60までの球面収差図をそれぞれ示す。
実施例17の回折光学レンズによると、図127に示すように、波長λ=650nmに対してはNA0.60までの全開口がほぼ無収差である。また、図128、図129に示すように、透明基板が厚い場合で、波長λ=780nmに対しては、NA0.60までがほぼ無収差である。なお、λ=780nmのときの所定開口数は0.45である。また、実施例15〜17は軸上色収差が異なり、また、輪帯ピッチも変わっている。
以上のように、実施例17では、実施例1,6,8と比べて、光情報記録媒体の透明基板が厚く波長が780nmの場合の球面収差を透明基板がこれよりも薄く波長が650nmの場合と同じ開口数(NA0.60)まで補正できる。
以下、実施例17のレンズデータを示す。
光源波長λ=650nmのとき
焦点距離f=3.33 像側開口数 NA=0.60 無限仕様
光源波長λ=780nmのとき
焦点距離f=3.34 像側開口数 NA=0.60 無限仕様
非球面係数
非球面1
K=−1.0751
A
4=5.0732×10
-3
A
6=4.3722×10
-4
A
8=−1.4774×10
-4
A
10=9.6694×10
-7
非球面2
K=−10.41411
A4=1.59463×10-2
A6=−6.02963×10-3
A8=1.11268×10-3
A10=−9.3151×10-5
回折面係数(基準波長650nm)
b2=−2.000×10-3
b4=−1.4462×10-3
b6=1.1331×10-4
b8=−6.6211×10-5
b10=6.8220×10-6
〈実施例18〉
図130に、実施例18の対物レンズである回折光学レンズ(回折面を有する対物レンズ)の光路図を示す。また、図131に、実施例18の回折光学レンズについての波長(λ)=390,400,410nmに対する開口数0.70までの球面収差図を示す。また、図132は光情報記録媒体の透明基板が図130より厚い場合の実施例18の回折光学レンズの光路図を示す。図133に、図132の場合の回折光学レンズについての波長λ=640,650,660nmに対する開口数0.70までの球面収差図をそれぞれ示す。
実施例18の回折光学レンズによると、図131に示すように、波長λ=400nmに対してはNA0.70までの全開口がほぼ無収差である。また、図132、図133に示すように、透明基板が厚い場合で、波長λ=650nmに対しては、NA0.70までがほぼ無収差である。
以上のように、実施例17では、実施例1,6,8と比べて、光情報記録媒体の透明基板が厚く波長が650nmの場合の球面収差を透明基板がこれよりも薄く波長が400nmの場合と同じ開口数(NA0.70)まで補正できる。
以下、実施例18のレンズデータを示す。
光源波長λ=400nmのとき
焦点距離f=3.33 像側開口数 NA=0.70 無限仕様
光源波長λ=650nmのとき
焦点距離f=3.43 像側開口数 NA=0.70 無限仕様
非球面係数
非球面1
K=0.0
A
4=−7.9616×10
-4
A
6=−5.7265×10
-4
A
8=8.3209×10
-5
A
10=−4.1599×10
-5
非球面2
K=0.0
A4=3.11131×10-2
A6=−1.18548×10-2
A8=1.63937×10-3
A10=−6.60514×10-5
回折面係数(基準波長400nm)
b2=−1.4046×10-3
b4=−8.6959×10-4
b6=2.3488×10-4
b8=−5.2455×10-5
b10=3.6385×10-6
次に、上述の実施例1〜3,14〜18の各回折光学レンズの複数の輪帯のピッチについて説明する。複数の輪帯は光軸を中心としたほぼ同心円状に形成されており、レンズの像側の最大開口数に対応する輪帯のピッチPf(mm)、最大開口数の1/2の開口数に対応する輪帯のピッチPh(mm)、及び((Ph/Pf)−2)の各値を表19に示す。
本発明者らの更なる検討によれば、上述の式(b1)が成立すると、即ち、この式の下限以上であると、高次の球面収差を補正する回折の作用が弱まることがなく、従って、透明基板の厚さが異なることによって生じる2波長間の球面収差の差を回折の作用で補正でき、また、上限以下であると、回折輪帯のピッチが過小となる箇所が生じ難くなり、回折効率の高いレンズを製造することが可能となることが判明した。
また、上記関係式は、次の式(b2)が好ましく、式(b3)が更に好ましい。
0.8≦|(Ph/Pf)−2|≦6.0 (b2)
1.2≦|(Ph/Pf)−2|≦2.0 (b3)
次に、本発明の第8の実施の形態について説明する。
波長650nmの光源を使ってのDVDの記録再生に必要な対物レンズの光情報記録媒体側の必要開口数NA1は0.6程度であり、波長780nmの光源を使ってのCDの再生に必要な対物レンズの光情報記録媒体側の必要開口数NA2は0.45程度(記録のときは0.5程度)である。したがって、上述の収差補正のための回折パターンは、開口数NA1までは必須ではない。
さらに、光軸近傍は焦点深度が深く、球面収差量も少ないので、回折パターンは必須ではない。
必要最低限の部分に回折パターンを形成し、残りの部分を屈折面とすることで、金型加工時のツールの損傷、成形時の離型性の向上、CD側で必要以上に集光スポットが絞られることに起因するディスクの厚みに誤差があるときや、ディスクが傾いたときの性能劣化を防ぐことができる。
このためには、対物レンズの回折パターンは光軸に対して回転対称であり、前記第1の光源からの光束の前記対物レンズの回折パターンの最も光軸から離れた円周からの+1次回折光は、光情報記録媒体の開口数がNAH1の光束に変換され、前記第1の光源からの光束の前記対物レンズの回折パターンの最も光軸側の円周からの+1次回折光は、光情報記録媒体側の開口数がNAL1の光束に変換されるとき、下記の条件を満足すれば良い。
NAH1 < NA1
0 ≦ NAL1 ≦ NA2
第1の光情報記録媒体がDVDで、第1の光源の波長λ1が650nm、第2の光情報記録媒体がCDで第2の光源の波長λ2か780nmの場合、
NAH1は0.43から0.55
NAL1は0.10から0.40
であることが好ましい。
回折パターンを有する部分についての対物レンズの光学設計は、第1の光源から対物レンズに入射する光束の+1次回折光がほぼ無収差の集光スポットとなるように行われる。
一方、回折パターンのない部分についての対物レンズの光学設計は、第1の光源から対物レンズに入射する光束がほぼ無収差の集光スポットとなるように行われる。
両者の集光位置は、ほぼ一致する必要がある。さらに、それぞれの光束の位相も揃っていることが重要である。なお、位相に関しては、kを小さな整数としたとき、2kπずれていても、設計波長での集光特性は殆ど変わらないが、|k|の絶対値が大きくなると、波長変動に弱くなってしまう。|k|は1〜10であることが好ましい。
このとき、第2の光源からの光束のうち、対物レンズの回折パターンの最も光軸から離れた円周からの+1次回折光は光情報記録媒体側の開口数がNAH2の光束に変換され、同時に回折パターンの最も光軸側の円周からの+1次回折光は、光情報記録媒体側の開口数がNAL2の光束に変換され、
第2光情報記録媒体の記録再生が可能となるようなスポットを、第2の光源からの光束のうち、対物レンズを通ったときの開口数がNAH2以下の光束を利用して光情報記録媒体の情報記録面上に形成するように、回折パターンを有する部分からの光束と、回折パターンのない部分からの光束との集光位置と位相差が最適となるように、対物レンズを通った光束の球面収差の設定がなされている。
実際には、前記第1の光源からの光束のうち、対物レンズを通ったときの開口数がNA1以下の光束が第1光情報記録媒体の透明基板を介した最良像点における波面収差が0.07λrms以下であり、かつ、前記第2の光源からの光束のうち、対物レンズを通ったときの開口数がNAH2以下の光束が第2光情報記録媒体の透明基板を介した最良像点における波面収差が0.07λrms以下であることが望ましい。
なお、特に、第1の光源からの光束のうち、対物レンズを通ったときの開口数がNA1以下の光束が、第1光情報記録媒体の透明基板を介した最良像点における波面収差の球面収差成分は0.05λrms以下であることが望ましい。
第1の光源と対物レンズの間および第2の光源と対物レンズの間に少なくとも一つのコリメータを含み、第1の光源から対物レンズに入射する光束および第2の光源から対物レンズに入射する光束が、それぞれ平行光であるような光ピックアップ装置とすることで、ピックアップの調整が容易となる。
また、第1の光源からの光束と第2の光源からの光束に対してコリメータを共通にすることで、光ピックアップ装置のコストダウンを図ることができる。
なお、第1の光源と第2の光源が別のパッケージである場合、コリメータに対してそれぞれの光源の位置を対物レンズに入射する光束がそれぞれ平行光となるように設定すれば良い。
また、第1の光源と第2の光源とが同じパッケージである場合、それぞれの光源の位置の光軸方向の差を適切に設定して、対物レンズへの入射光がそれぞれ平行光となるようにしても良いし、その調整ができない場合、コリメータの色収差が最適化されたものを用いて対物レンズへの入射光がそれぞれ平行光になるようにしても良い。
さらに、対物レンズに入射する光束が、収束光束であっても発散光束であっても良く、特に第1の光源から対物レンズに入射する光束よりも第2の光源から対物レンズに入射する光束をより発散度の強いものとすることによって、発散度の差によるアンダーの球面収差が発生し、回折パターンで補正する球面収差量を減らすことができる。
図114は、開口数NAH2、NAL2が同じであり、近軸色収差を補正しない場合とした場合(ΔfB=0)に、第2光源からの光束について、第2光情報記録媒体(CD)の透明基板を通過した光束の球面収差を表す模式図である。
NAH2以下の第2光情報記録媒体の再生に寄与する光束の収束位置は、回折パターンによって補正されていない場合、B点にあるが、回折パターンによって補正され、ΔfBをほぼ0にされてA点に収束する。しかし、NAH2より外側では回折パターンによって補正されず、その収差は屈折面のみによる収差曲線Sを示すことになる。
図から明らかなように、光束の収束点とNAH2における球面収差の跳びは、近軸色収差の補正量ΔfBだけ大きくなり、NAH2からNA1までのフレア成分が収束する位置は、NAH2以下の第2光情報記録媒体の再生に寄与する光束の収束位置と大きく離れるため、光検出器上においてフレア成分の影響が小さくなる。
また、λ1とλ2で近軸色収差を補正することで、λ1近傍とλ2近傍においても、近軸色収差は小さくなり、光情報記録媒体への情報記録時に、レーザのパワー変動で発振波長が変化しても、焦点ずれが起きにくくなり、高速記録が可能となる。
前述のようにNAH2からNA1までのフレア成分の収束位置とNAH2以下の光束の収束位置とを離れたものとするためには、前記の回折パターンの外側に、第2の回折パターンを配設し、第1光源からの光束に対しては第2の回折パターンの+1次回折光が前記の収束位置に集光され、第2光源からの光束は第2の回折パターンでは回折されずに透過するように第2の回折パターンを設計することによって、図115に示す収差補正状況にすることができる。
すなわち、同図(a)は第1光源からの光束の収差補正状況を示し、NAH1以上においても以下においても、比較的大きく設定された屈折面による収差は、+1次回折光の補正効果により、無収差で収束位置に集光されている。しかし、同図(b)のように、第2光源からの光束は、NAH2より外側の回折パターン部分を通過する光束では、回折作用を受けない0次光となるので、その収差補正状況は回折パターンによる補正を受けない収差がそのまま表れるため、NAH2における球面収差の跳びが大きくなり、フレア成分の収束位置と情報の再生に寄与する光束の収束位置が大きく離れるため、光検出器上においてフレア成分の影響が小さくなる。
また、この第2の回折パターンでは、第1の光源からの光束は回折されず、第2の光源からの光束は、主に−1次回折光となるように第2の回折パターンを設計しても良い。これにより、図113で見るように、NAH2からNA1までの光束の、回折による球面収差をよりオーバーにすることによって、第2の光源について、対物レンズを通ったときの開口数がNAH2以下の光束の第2光情報記録媒体の透明基板を通ったときの球面収差は良好に補正され、一方、NAH2より外側の光束のオーバーの球面収差を大きくすることが出来る。その結果、図116(b)に見るように、NAH2における球面収差の跳びが大きくなり、フレア成分の収束位置と情報の再生に寄与する光束の収束位置が大きく離れるため、光検出器上においてフレア成分の影響が小さくなる。
同様に、光源から対物レンズまでの光路中に第1光源からの光束は透過し、第2光源の光束のうち、前記第1の回折パターンの光軸とは反対側の領域を通過する光束を透過させない開口制限手段を設け、光検出器上へ到達するフレア成分を減ずることで、その影響を小さくすることができる。
この開口制限手段は、第1の光源からの出射光束と、第2光源からの出射光束とを光合波手段により合波した後の光路中に、第1光源からの光束は透過し、第2光源の光束のうち、前記第1の回折パターンの光軸とは反対側の領域を通過する光束を反射または吸収する輪帯フィルターを配設すれば良い。
このようなフィルターには、例えば多層膜を利用したダイクロイックフィルターを利用することができる。勿論、対物レンズのいずれかの面に、上述のフィルター効果を持たせることもできる。
また、この開口制限手段は、第1光源からの光束は透過し、第2光源の光束のうち、前記回折パターンの光軸とは反対側の領域を通過する光束を回折させる輪帯フィルターであっても良い。
以下、図面を参照して本発明の第8の実施の形態にかかるる第1〜第7の光ピックアップ装置を具体的に説明する。
図102に示す第1の光ピックアップ装置は、第1の光ディスクの再生用の第1光源である半導体レーザ111と、第2の光ディスク再生用の半導体レーザ112とを有している。
まず第1の光ディスクを再生する場合、第1半導体レーザ111からビームを出射し、出射された光束は、両半導体レーザ111、112からの出射光の合成手段であるビームスプリッタ190を透過し、偏光ビームスプリッタ120、コリメータ130、1/4波長版14を透過して円偏光の平行光束となる。この光束は絞り170によって絞られ、対物レンズ160により第1の光ディスク200の透明基板210を介して情報記録面220に集光される。
そして情報記録面220で情報ビットにより変調されて反射した光束は、再び対物レンズ160、絞り170、1/4波長板140、コリメータ130を透過して、偏光ビームスプリッタ120に入射し、ここで反射してシリンドリカルレンズ18により非点収差が与えられ、光検出器300上へ入射し、その出力信号を用いて、第1の光ディスク200に記録された情報の読み取り信号が得られる。
また、光検出器300上でのスポットの形状変化、位置変化による光量変化を検出して、合焦検出やトラック検出を行う。この検出に基づいて2次元アクチュエータ150が第1の半導体レーザ111からの光束を第1の光ディスク200の記録面220上に結像するように対物レンズ160を移動させると共に、半導体レーザ111からの光束を所定のトラックに結像するように対物レンズ160を移動させる。
第2の光ディスクを再生する場合、第2半導体レーザ112からビームを出射し、出射された光束は、光合成手段であるビームスプリッタ190で反射され、上記第1半導体111からの光束と同様、偏光ビームスプリッタ120、コリメータ130、1/4波長板140、絞り170、対物レンズ160を介して第2の光ディスク200の透明基板210を介して情報記録面220に集光される。
そして、情報記録面220で情報ピットにより変調されて反射した光束は、再び対物レンズ160、絞り170、1/4波長板140、コリメータ130、偏光ビームスプリッタ120、シリンドリカルレンズ180を介して、光検出器300上へ入射し、その出力信号を用いて、第2の光ディスク200に記録された情報の読み取り信号が得られる。
また、第1の光ディスクの場合と同様、光検出器300上でのスポットの形状変化、位置変化による光量変化を検出して、合焦検出やトラック検出を行い、2次元アクチュエータ150により、合焦、トラッキングのために対物レンズ160を移動させる。
図103の第2の光ピックアップ装置は、記録再生用の光学系に適した構成であるが、再生の場合について説明する。なお、以下の実施例において、図102の光ピックアップ装置と同一部材は同一符号で示す。
第1の光ディスクを再生する場合、第1半導体レーザ111からビームを出射し、出射された光束は、偏光ビームスプリッタ121で反射され、コリメータ131、1/4波長板141を透過して円偏光の平行光となる。さらに、光合成手段であるビームスプリッタ190を透過し、絞り170によって絞られ、対物レンズ160により第1の光ディスク200の透明基板210を介して情報記録面220に集光される。
そして情報記録面220で情報ビットにより変調されて反射した光束は、再び対物レンズ160、絞り170を介して、さらにビームスプリッタ190、1/4波長板141、コリメータ131を透過して、偏光ビームスプリッタ121に入射し、ここを透過して非点収差が与えられ、光検出器301上へ入射し、その出力信号を用いて、第1の光ディスク200に情報記録された情報の読み取り信号が得られる。
また、光検出器301上でのスポットの形状変化、位置変化による光量変化を検出して、合焦検出やトラック検出を行う。この検出に基づいて2次元アクチュエータ150が第1の半導体レーザ111からの光束を第2の光ディスク200の記録面220上に結像するように対物レンズ160を移動させると共に、半導体レーザ111からの光束を所定のトラックに結像するように対物レンズ160を移動させる。
第2の光ディスクを再生する場合、第2半導体レーザ112からビームを出射し、出射された光束は、偏光ビームスプリッタ122で反射され、コリメータ132、1/4波長板142を透過して円偏光の平行光となる。さらに、光合成手段であるビームスプリッタ190で反射され、絞り170、対物レンズ160により第2の光ディスク200の透明基板210を介して情報記録面220に集光される。
そして情報記録面220で情報ビットにより変調されて反射した光束は、再び対物レンズ160、絞り170を介してビームスプリッタ190で反射され、1/4波長板142、コリメータ132を透過して、偏光ビームスプリッタ122に入射し、ここを透過して非点収差が与えられ、光検出器302上へ入射し、その出力信号を用いて、第2の光ディスク200に情報記録された情報の読み取り信号が得られる。
また、光検出器302上でのスポットの形状変化、位置変化による光量変化を検出して、合焦検出やトラック検出を行う。この検出に基づいて2次元アクチュエータ150が第2の半導体レーザ112からの光束を第1の光ディスク200の記録面220上に結像するように対物レンズ160を移動させると共に、半導体レーザ112からの光束を所定のトラックに結像するように対物レンズ160を移動させることは同様である。
図104の第3の光ピックアップ装置は、記録再生用の光学系に適した構成であるが、再生の場合について説明する。
第1の光ディスクを再生する場合、第1半導体レーザ111からビームを出射し、発散光束の発散度を小さくするカップリングリングレンズ60、光合成手段であるビームスプリッタ190、ビームスプリッタ120を透過し、さらにコリメータ130、1/4波長板140を透過して円偏光の平行光となる。さらに、絞り170によって絞られ、対物レンズ160により第1の光ディスク200の透明基板210を介して情報記録面220に集光される。
そして情報記録面220で情報ビットにより変調されて反射した光束は、再び対物レンズ160、絞り170を介して、1/4波長板140、コリメータ130を透過して、ビームスプリッタ120に入射し、ここで反射され、シリンドリカルレンズ180で非点収差が与えられ、凹レンズ50を介して光検出器301上へ入射し、その出力信号を用いて、第1の光ディスク200に情報記録された情報の読み取り信号が得られる。
また、光検出器301上でのスポットの形状変化、位置変化による光量変化を検出して、合焦検出やトラック検出を行う。この検出に基づいて2次元アクチュエータ150が第1の半導体レーザ111からの光束を第1光ディスク200の記録面220上に結像するように対物レンズ160を移動させると共に、半導体レーザ111からの光束を所定のトラックに結像するように対物レンズ160を移動させる。
第2の光ディスクを再生するための第2半導体レーザ112は、レーザ/検出器集積ユニット400に光検出器302およびホログラム230とユニット化されている。「ユニット」あるいは「ユニット化」とは、ユニット化されている部材や手段が一体となって光ピックアップ装置に組込ができるようになっていることを意味し、装置の組立て時には1部品として組付けることができる上タイトされている。
第2半導体レーザ112から出射された光束は、ホログラム230を透過し、光合成手段であるビームスプリッタ190で反射され、ビームスプリッタ120、コリメータ130、1/4波長板140を透過し平行光束となる。さらに絞り170、対物レンズ160を介して第2の光ディスク200の透明基板210を介して情報記録面220に集光される。
そして、情報記録面220で情報ピットにより変調されて反射した光束は、再び対物レンズ160、絞り170を介し、1/4波長板140、コリメータ130、ビームスプリッタ120を透過し、ビームスプリッタ190で反射され、ホログラム230で回折されて光検出器302上へ入射し、その出力信号を用いて、第2光ディスク200に記録された情報の読み取り信号が得られる。
また、光検出器302上でのスポットの形状変化、位置変化による光量変化を検出して、合焦検出やトラック検出を行い、2次元アクチュエータ150により、合焦、トラッキングのために対物レンズ160を移動させる。
図105の第4の光ピックアップ装置においては、第1の光ディスクを再生する場合、第1半導体レーザ111は、レーザ/検出器集積ユニット410に光検出器301およびホログラム231とユニット化され、第1半導体レーザ111から出射された光束は、ホログラム231を透過し、光合成手段であるビームスプリッタ190、コリメータ130を透過し平行光束となる。さらに絞り170によって絞られ、対物レンズ160により第1の光ディスク200の透明基板210を介して情報記録面220に集光される。
そして、情報記録面220で情報ピットにより変調されて反射した光束は、再び対物レンズ160、絞り170を介して、コリメータ130、ビームスプリッタ190を透過し、ホログラム231で回折されて光検出器301上へ入射し、その出力信号を用いて、第1光ディスク200に記録された情報の読み取り信号が得られる。
また、光検出器302上でのスポットの形状変化、位置変化による光量変化を検出して、合焦検出やトラック検出を行い、2次元アクチュエータ150により、合焦、トラッキングのために対物レンズ160を移動させる。
第2の光ディスクを再生する場合、第2半導体レーザ112は、レーザ/検出器集積ユニット42に光検出器302およびホログラム232とユニット化され、第2半導体レーザ112から出射された光束は、ホログラム232を透過し、光合成手段であるビームスプリッタ190で反射され、コリメータ130を透過して平行光束となる。さらに絞り170、対物レンズ160を介して第2の光ディスク200の透明基板210を介して情報記録面220に集光される。
そして、情報記録面220で情報ピットにより変調されて反射した光束は、再び対物レンズ160、絞り170を介して、コリメータ130を透過し、ビームスプリッタ190で反射され、ホログラム232で回折されて光検出器302上へ入射し、その出力信号を用いて、第2光ディスク200に記録された情報の読み取り信号が得られる。
また、光検出器302上でのスポットの形状変化、位置変化による光量変化を検出して、合焦検出やトラック検出を行い、この検出に基づいて2次元アクチュエータ150により、合焦、トラッキングのために対物レンズ160を移動させる。
図106の第5の光ピックアップ装置においては、第1半導体レーザ111、第2半導体レーザ112、光検出手段30、ホログラム230がレーザ/検出器集積ユニット430としてユニット化されている。
第1の光ディスクを再生する場合、第1半導体レーザ111から出射された光束は、ホログラム230、コリメータ130を透過し平行光束となる。さらに絞り170によって絞られ、対物レンズ160により第1の光ディスク200の透明基板210を介して情報記録面220に集光される。
そして、情報記録面220で情報ピットにより変調されて反射した光束は、再び対物レンズ160、絞り170を介して、コリメータ130を透過し、ホログラム230で回折されて光検出器300上へ入射し、その出力信号を用いて、第1光ディスク200に記録された情報の読み取り信号が得られる。
また、光検出器300上でのスポットの形状変化、位置変化による光量変化を検出して、合焦検出やトラック検出を行い、2次元アクチュエータ150により、合焦、トラッキングのために対物レンズ160を移動させる。
第2の光ディスクを再生する場合、第2半導体レーザ112から出射された光束は、ホログラム230、コリメータ130を透過してほぼ平行光束となる。さらに絞り170、対物レンズ160を介して第2の光ディスク200の透明基板210を介して情報記録面220に集光される。
そして、情報記録面220で情報ピットにより変調されて反射した光束は、再び対物レンズ160、絞り170を介して、コリメータ130を透過し、ホログラム230で回折されて光検出器300上へ入射し、その出力信号を用いて、第2の光ディスク200に記録された情報の読み取り信号が得られる。
また、光検出器300上でのスポットの形状変化、位置変化による光量変化を検出して、合焦検出やトラック検出を行い、この検出に基づいて2次元アクチュエータ150により、合焦、トラッキングのために対物レンズ160を移動させる。
図107の第6の光ピックアップ装置においては、第1半導体レーザ111、第2半導体レーザ112、第1の光検出手段301、第2の光検出手段302、ホログラム230がレーザ/検出器集積ユニット430としてユニット化されている。
第1の光ディスクを再生する場合、第1半導体レーザ111から出射された光束は、ホログラム230のディスク側の面、コリメータ130を透過し平行光束となる。さらに絞り170によって絞られ、対物レンズ160により第1の光ディスク200の透明基板210を介して情報記録面220に集光される。
そして、情報記録面220で情報ピットにより変調されて反射した光束は、再び対物レンズ160、絞り170を介して、コリメータ130を透過し、ホログラム230のディスク側の面で回折され、第1の光源に対応した光検出器301上へ入射し、その出力信号を用いて、第1の光ディスク200に記録された情報の読み取り信号が得られる。
また、光検出器301上でのスポットの形状変化、位置変化による光量変化を検出して、合焦検出やトラック検出を行い、2次元アクチュエータ150により、合焦、トラッキングのために対物レンズ160を移動させる。
第2の光ディスクを再生する場合、第2半導体レーザ112から出射された光束は、ホログラム230の半導体レーザ側の面で回折され、、コリメータ130を透過してほぼ平行光束となる。このホログラムの半導体レーザ側の面は、光合成手段としての機能を果たす。さらに絞り170、対物レンズ160を介して第2の光ディスク200の透明基板210を介して情報記録面220に集光される。
そして、情報記録面220で情報ピットにより変調されて反射した光束は、再び対物レンズ160、絞り170を介して、コリメータ130を透過し、ホログラム230のディスク側の面で回折されて第2の光源対応した光検出器302上へ入射し、その出力信号を用いて、第2の光ディスク200に記録された情報の読み取り信号が得られる。
また、光検出器302上でのスポットの形状変化、位置変化による光量変化を検出して、合焦検出やトラック検出を行い、この検出に基づいて2次元アクチュエータ150により、合焦、トラッキングのために対物レンズ160を移動させる。
図108の第7の光ピックアップ装置は、記録再生用の光学系に適した構成であるが、再生の場合について説明する。
第1の光ディスクを再生する場合、第1半導体レーザ111からビームを出射し、発散光束の発散度を小さくするカップリングリングレンズ60、光合成手段であるビームスプリッタ190、ビームスプリッタ120を透過し、さらにコリメータ130、1/4波長板140を透過して円偏光の平行光となる。さらに、絞り170によって絞られ、対物レンズ160により第1の光ディスク200の透明基板210を介して情報記録面220に集光される。
そして情報記録面220で情報ビットにより変調されて反射した光束は、再び対物レンズ160、絞り170を介して、1/4波長板140、コリメータ130を透過して、ビームスプリッタ120に入射し、ここで反射され、シリンドリカルレンズ180で非点収差が与えられ、凹レンズ50を介して光検出器301上へ入射し、その出力信号を用いて、第1の光ディスク200に情報記録された情報の読み取り信号が得られる。
また、光検出器301上でのスポットの形状変化、位置変化による光量変化を検出して、合焦検出やトラック検出を行う。この検出に基づいて2次元アクチュエータ150が第1の半導体レーザ111からの光束を第1光ディスク200の記録面220上に結像するように対物レンズ160を移動させると共に、半導体レーザ111からの光束を所定のトラックに結像するように対物レンズ160を移動させる。
第2の光ディスクを再生するための第2半導体レーザ112は、レーザ/検出器集積ユニット400に光検出器302およびホログラム230とユニット化されている。
第2半導体レーザ112から出射された光束は、ホログラム230を透過し、光合成手段であるビームスプリッタ190で反射され、ビームスプリッタ120、コリメータ130、1/4波長板140を透過し平行光束となる。さらに絞り170、対物レンズ160を介して第2の光ディスク200の透明基板210を介して情報記録面220に集光される。
そして、情報記録面220で情報ピットにより変調されて反射した光束は、再び対物レンズ160、絞り170を介し、1/4波長板140、コリメータ130、ビームスプリッタ120を透過し、ビームスプリッタ190で反射され、ホログラム230で回折されて光検出器302上へ入射し、その出力信号を用いて、第2光ディスク200に記録された情報の読み取り信号が得られる。
また、光検出器302上でのスポットの形状変化、位置変化による光量変化を検出して、合焦検出やトラック検出を行い、2次元アクチュエータ150により、合焦、トラッキングのために対物レンズ160を移動させる。
透明基板の厚さt1が第1の光ディスクとほぼ同じで、波長λ1の第1の光源で記録再生するために必要な前記対物レンズの光情報記録媒体側の必要開口数NAも第1の光ディスクと同程度の第3のSuper RENS方式のディスクを記録再生する場合について説明する。
Super RENS方式のディスクは、現在精力的に検討が進められているもので、その構成の1例を図109に示す。その記録再生は近接場光学に基づき、再生信号としては反射光を利用する方式と透過光を利用する方式があり、本実施例の構成は透過光を利用して再生信号を得る方式を示す。
Super RENS方式の第3のディスクを記録再生する場合には、第1半導体レーザ111からビームを出射し、発散光束の発散度を小さくするカップリングレンズ60、光合成手段であるビームスプリッタ190、ビームスプリッタ120を透過し、さらにコリメータ130、1/4波長板140を透過し平行光束となる。さらに絞り170によって絞られ、対物レンズ160により第1の光ディスク200の透明基板210、第1の保護膜240を介して非線形光学膜250に集光される。非線形光学膜250には、微小な開口が形成され、第2の保護膜260を介して情報記録層上の情報記録面220にエネルギーが伝達される。そして、情報記録面220で情報ピットにより変調されて透過した光は、第3の保護膜270を透過し、対物レンズとは反対側の集光レンズ90で集められ、光検出器305に到達し、その出力信号により、第3の光ディスク200に情報記録された情報の読み取り信号が得られる。
一方、非線形光学膜250から反射された光束は、再び対物レンズ160、絞り170を介して、1/4波長板140、コリメータ130を透過して、ビームスプリッタ120に入射し、ここで反射され、シリンドリカルレンズ180で非点収差が与えられ、凹レンズ50を介して光検出器301上へに入射する。光検出器301上でのスポットの形状変化、位置変化による光量変化を検出して、合焦検出やトラック検出を行う。この検出に基づいて2次元アクチュエータ150が第1の半導体レーザ111からの光束を第1の光ディスク200の非線形光学膜250上に結像する用に対物レンズ160を移動させると共に、半導体レーザ111からの光束を所定のトラックに結像するように対物レンズ160を移動させる。
前述の光ピックアップ装置の対物レンズとして、第1の光源から無収差の平行光束が入射し、DVDの透明基板を通して無収差のスポットを形成するように設計された専用対物レンズを使って、対物レンズに第2の光源から無収差の平行光が入射し、CDの透明基板を通ってスポットを形成した場合、
(1)対物レンズの屈折率の波長依存性
(2)光情報記録媒体の透明基板厚みの差
(3)透明基板屈折率の波長依存性
により球面収差が発生するが、(2)によるものがほとんどであることは既に述べた。
この(2)の要因による球面収差は、CDの記録再生に必要な開口数NA2において、ほぼ|t2−t1|および(NA2)4に比例する。図110は、対物レンズに波長λ1=650nmの平行光束が入射したときにDVDの透明基板を通して無収差となるように設計された専用レンズについて、透明基板がCDの厚さで、波長λ2=780nmの光源を使用したときの、対物レンズから出射する光束の開口数を0.45としたときの結像倍率M2と波面収差との関係を示したものである。結像倍率M2が0の場合は、DVDと同様、対物レンズに平行光束が入射する。
図示のように、M2=0のときは、約0.13λrmsの球面収差が発生し、回折限界性能のマレシャルの限界0.07λrmsより大きい。従って、何らかの手段によりDVD、CD双方とも波面収差がマレシャルの限界以下となるように球面収差を設定する必要が生じる。
この対物レンズにおいて、結像倍率を負にして行くと、対物レンズで負の球面収差が発生し、M≒−0.06のとき極小値となり、マレシャル限界内の値になる。このように、結像倍率によって、補正しなければならない球面収差量は異なり、図示の例においては、M≒−0.06のときはあえて他の手段によって球面収差を補正する必要はない。また、CD−Rの情報記録に必要なNAが0.5のときは、さらに補正する球面収差は大きくなる。
次に、上述の各光ピックアップ装置において、好ましいコリメート調整手段について説明する。説明を簡単にするために、コリメータと対物レンズからなる集光光学系を使用した光ピックアップ装置について考察する。コリメータと光源の距離は、コリメータの光軸上の焦点位置に光源を配置することで所望の平行光がコリメータより出射する。コリメータのバックフォーカス、半導体レーザの取り付け位置と発光点との間隔、コリメータや半導体レーザをマウントする光ピックアップ装置のハウジングの製造バラツキが小さく押さえられているため、半導体レーザとコリメータの間隔を調整しなくても、実用上間題ない精度の平行光が得られる。
ところで、波長の異なる2つの光源により、透明基板の厚さが異なる2種類の光情報記録媒体の記録及び/または再生する場合において、回折パターンを有する対物レンズを用い、さらにそれぞれの光源に対して0でない同じ次数の回折光を利用する場合において、レーザの発振波長の変動により球面収差の変動が既存の両面非球面対物レンズと比較して大きい。特に、実施例6のような対物レンズでは、650nmの波長においては波面収差が0.001λmsであるが波長が±10nm変化すると0.035λrms程度に劣化する。このとき発生するのは球面収差である。半導体レーザには発振波長の個体差があり、光ピックアップ装置に個体差の大きい半導体レーザを適用すると、回折パターンを有する対物レンズの球面収差の規格が厳しくなるといった問題が生じる。
光ピックアップ装置に用いられる対物レンズでは、入射光束が平行光から発散光になると負の3次球面収差が増加し、平行光束から収束光になると正の3次球面収差が増加するのであるが、対物レンズヘの入射光束の発散度を変えることで、3次の球面収差をコントロールすることができる。実施例6のような対物レンズにおいては、半導体レーザの発振波長の個体差で発生する球面収差の主成分は3次の球面収差であることから、対物レンズヘの入射光束の発散度を変えることにより、集光光学系全体の3次の球面収差を設計値通りにすることができる。
なお、集光光学系にコリメータ等のカップリングレンズがあれば、これを光軸方向に動かすことで、対物レンズの3次の球面収差をコントロールすることができる。また、コリメータ等のカップリングレンズがある場合は、半導体レーザを光軸方向に動かすことで同様に目的が達成される。もちろん、コリメータ等のカップリングレンズがある場合も、半導体レーザを光軸方向に動かしてもよい。
〈実施例19〉
以下、第8の実施の形態に係わる対物レンズの具体例として、球面収差補正レンズの実施例19を図111及び表20,表21に示す。
表20中、riは屈折面の曲率半径、di、di’は面間隔、ni、ni’は主波長での屈折率を示す。また、面形状式を次の〔数4〕に示す。
但し、Xは光軸方向の軸、hは光軸と垂直方向の軸、光の進行方向を正とし、rは近軸曲率半径、κは円錐形数、Ajは非球面係数、Pj(Pi≧3)は非球面べき数である。
また、回折面は光路差関数として数1に示す通りである。単位はmmとして表している。
di,niは、第1光情報記録媒体(t1=0.6mm)のときの値
di’,ni’は、第2光情報記録媒体(t2=1.2mm)のときの値
上記実施例のレンズ断面図を図111に、その球面収差を図112に示す。図111において、第2面S2の光軸を含む部分S2dは回折パターンを有し、その外側の部分S2rは非球面屈折面である。図112(a)は波長635nm、第1光情報記録媒体(t1=0.6mm)での球面収差図で十分に収差補正されている。同図(b)は波長780nm、第2光情報記録媒体(t2=1.2mm)での球面収差図であり、第1分割面S2dを通る光束は回折の効果により球面収差が補正されており、第2分割面S2rを通る光束はフレア光となり絞りと同様の効果になっている。
上記実施例のレンズは、NAH2=0.5とし、NAL2=0の対物レンズである。このレンズの回折パターン部分は、光軸を中心とした輪帯上のパターンとなり、そのステップ数は13程度となる。また、回折パターン部の最も光軸から離れた円周部分と屈折面との境界は、約21μmの段差を持っている。
NAH2=0.45とした場合においては、回折パターンのステップ数は9程度で、上記段差量は13μm程度である。段差量、回折パターンのステップ数は、ほぼNAH2の4乗に比例する。
この例のようにNAL2=0の場合には、補正する球面収差に比例して回折パターンのステップ数が増加してしまう。
本発明の対物レンズにおいては、回折パターンの光軸方向の深さは2μm以下でも良好な効果を得ることができるが、やはり回折パターンのステップ数が多いと、金型加工、成形が難しくなるので、できるだけステップ数が少ないことが望ましい。
これは、(1)CDの結像倍率をDVDの結像倍率よりやや小さくし、補正すべき球面収差量をあらかじめ小さくする。好ましくは、mCD(CDの記録・再生時の倍率)-mDVD(DVDの記録・再生時の倍率)が、-1/15〜0であることが好ましい、(2)深度の深い開口数の小さい部分には回折パターンを設けない、等によって達成できる。
例えば、DVDの結像倍率を0、CDの結像倍率を−0.03とすれば補正すべき球面収差は半分になるので、CD−R対応のため、NAH2を0.5としても、ステップ数は7程度で、段差量も11μm程度となる。
段差量が小さい場合、段差S2sの形状は回折パターン部S2dから屈折面部S2rへ滑らかに移行するものであっても良い。
また、DVDの結像倍率、CDの結像倍率とも0の場合においては、例えばNAL2=0.36とすれば、開口数がNAL2以下の光束の波面収差の残留球面収差成分WSA(NAL2)は約0.053λrmsである。これに最適な回折パターンを付けることで、DVDの波面収差をほぼ0にに保ちながらNAH2までの波面収差のRMS値を小さくすることができる。
開口数がNAH2以下の光束の波面収差の残留球面収差成分WSA(NAH2)は、以下の式で近似できる。
WSA(NAH2)=(NAL2/NAH2)2×WSA(NAL2)
よって、NAH2=0.45のとき、上記値は0.034λrms、NAH2=0.5のとき0.027λrmsとなり、マレシャルの限界値より十分小さい。
このとき、NAL2以下ではオーバーの球面収差が発生しているため、NAL2からNAH2までの球面収差を0とするのではなく、NAL2以下の光束のベストフォーカスにほぼ一致するようにすれば良い。このベストフォーカス位置は近軸焦点よりオーバーな位置であるため、回折パターンで補正する球面収差量は小さくてすむ。また、NAL2以下の光束に対しては、回折パターンは不要である。この二つの効果で、NAH2=0.5のとき、回折パターンのステップ数は約6、NAH2=0.45のときは回折パターンのステップ数は4ですむ。
勿論、CDの結像倍率をDVDの結像倍率より小さくすることで、回折パターンをさらに少なくでき、最低2ステップあれば、DVDとCDの互換再生が可能となる。
ところで、透明基板厚が0.1mmの高密度光情報記録媒体が提案されている。この記録再生には青色半導体レーザを使用し、2枚玉の対物レンズを用い、NA1として0.85が必要とされている。一方において、CD−RWは透明基板厚が1.2mmで波長780なのの光源を用い、NA2は0.55とされている。この互換光学系では、DVD、CD−R(NAH2=0.5)の場合と比較して、NA2が大きく、t1−t2も大きいため、球面収差の補正量も2.7倍大きい。そのため、回折パターンのステップ数も35程度になる。
さらに、近軸の色収差を補正するには、回折パターンのステップ数が増加する。またNA1まで近軸色収差を含めて補正するとなると、数百のステップ数になる。このような場合、回折パターンを複数の光学面に施すことも可能である。
また、必要に応じて、NAL2からNAH2までのある部分を屈折面としても良い。
さらに、t1>t2である場合には、発生する球面収差の符号が逆になるので、−1次光を利用することになる。
同様に、DVDとCDの場合も、対物レンズのCDの結像倍率がDVDの結像倍率よりかなり小さくなり、アンダーの球面収差が残る場合も、同様に−1次光を利用することになる。
なお、現在重要関心事であるDVDとCDについて、記録または波長の異なる2つのレーザを使って単一の対物レンズで実施する例について示した。既に説明したとおり、第1の光源の波長をλ1とし、第2の光源の波長をλ2(λ2>λ1)とした場合、t1<t2である場合は+1次回折光を利用し、t1>t2である場合は−1次回折光を利用した第1の回折パターンを導入するのであるが、DVD(第1の光源を利用)とCD(第2の光源を利用)の場合は前者である。
ところで、青色半導体レーザ、SHGレーザ等、近年様々な波長の光源が実用化され、今後とも多くの新しい光情報記録媒体が登場すると思われる。この場合、光情報記録媒体の記録密度から必要となるスポットサイズが決まるが、記録または記録再生に必要なNAは、使用する光源の波長によって変化する。このため、光情報記録媒体の透明基板の厚さ、必要NAが2つの光情報記録媒体にたいして、以下の4つに分類される。
(1) t1<t2, NA1>NA2
(2) t1<t2, NA1<NA2
(3) t1>t2, NA1>NA2
(4) t1>t2, NA1<NA2
以上の説明においては、特に(1)のケースについて使用する第1の回折パターンのそれぞれの光源に対する回折次数、第1の回折パターンの範囲(NAH1,NAL1,NAH2,NAL2)、回折パターン部と透過部が同一位置に集光する必要のある光源の種類とNA範囲、各光源に対しての球面収差を設定するNAの範囲、各光源に対して波面収差が0.07λrms以下である必要性があるNAの範囲、第2の回折パターンのそれぞれの光源に対する回折次数と第1の回折パターンと同一位置に集光させる必要性、開口制限を導入する場合の、どちらの光源からの光束を制限するかの条件等について詳述したが、(2)(3)(4)の場合については、(1)の詳述から容易に遂行しえるので、詳細な説明は省略した。
また、レンズの製作時には、回折パターンを刻んだ金型により、プラスチック材料やガラス材料を一体成形することも可能であり、ガラスないしプラスチックの母材に紫外線硬化樹脂等により、本発明の回折パターンを含む光学面を形成しても良い。さらに、コーティングや、直接加工により製作しても良い。
上述のように、本発明の効果を持つ光学面は、対物レンズとは別の光学素子に設け、該光学素子を対物レンズの光源側ないしは光情報記録媒体側に配設しても良い。勿論、コリメータや光合成手段の第一の光源からの光束と第2の光源からの光束とが共に通過する光学面に配設しても良い。しかし、トラッキング等で対物レンズが動く際に、回折パターンの光軸と対物レンズの光軸とが相対的に移動するため、トラッキングの量が制限される。
また、説明の都合上、回折パターンは光学軸に対して同心円状としたが、これに制限されるものではない。
以上の実施例1〜19に具体的に示した対物レンズは、いずれも単レンズからなる例を挙げたが、対物レンズが複数のレンズから構成されたものでもよく、その少なくとも1つの面に本発明の回折面を有する場合も本発明に含まれるものである。
本発明において、特定次数の回折光を選択的に発生するとは、所定の波長の光に対して、特定次数の回折光の回折効率がその特定次数以外の他の次数のそれぞれの回折光の回折効率よりも高いことをいうことは上述のとおりであるが、互いに異なる2つの波長のそれぞれの光に対して、その特定次数の回折光の回折効率が他の次数のそれぞれの回折光の回折効率よりも10%以上高い効率であることが好ましく、30%以上高い効率であることが更に好ましく、また、その特定次数の回折光の回折効率が50%以上であることが好ましく、更に好ましくは70%以上であることが、光量損失が少なく、実用上も好ましい。
また、本発明の回折面は、以上の実施の形態およびレンズの具体的な実施例にも示されたように、その回折面があることによって、互いに異なる少なくとも2つの波長の選択的に発生された特定次数の回折光がそれぞれ焦点を結ぶに際して、その回折面が無い場合すなわちその回折面のレリーフを包絡した面をシュミレーション等により想定した場合に比較して球面収差が改善されることが望ましい。
また、更に、本発明において、互いに異なる少なくとも2つの波長のそれぞれの光(波長λ)に対して、それぞれ選択的に発生する特定次数の回折光は、その結像面上での波面収差が0.07λrms以下であることが、実用上で有効な所望のスポットを得るうえで好ましい。なお、上述した実施の態様は本発明の技術的思想及び範囲から逸脱しないで当業者により変更が可能である。