JP4394112B2 - 連結式蔓植物栽培用容器およびそれを用いる蔓植物の栽培方法 - Google Patents
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Description
土壌が露出してない地表に面している壁面は、植物の栽培が非常に難しい場所である。壁面を緑化するための植物としては、蔓植物が適している。しかし、蔓植物を栽培するための土壌の確保が問題である。
特許文献2は、構造物の外側壁の外側に外側壁と一体に構成する蔓性植物用のポットを開示している。構造物の外側壁には蔓性植物の登攀補助材を設け、ポットの最下層には貯水槽を設ける。貯水槽下部のメッシュ底板の上に土壌流出防止兼保水材が敷設されている。そして、土壌流出防止兼保水材の上に蔓性植物苗と土壌が入れられ、土壌の上面にはメッシュ固定板が配置されている。
特許文献4は、一側面に開口を有する土壌容器となる壁面緑化用植生コンテナを開示している。コンテナ内周面は、透水性不織布からなる吸水・保水シートで覆われている。導水体が、容器の開口を通して外部の給水システムからの水分を不織布に導く。さらに通気筒と苗を植え込む開口を設けたコンテナ上蓋とを有している。コンテナは、ガイドレール状のフレームで支持して、壁面に取り付ける。
壁面に接している場所において、土壌を入れる容器を設置する空間を充分に確保することは難しい。土壌を入れる容器の奥行き(容器の正面から壁面までの距離)は、最大でも500mm程度であることが要求される場合が多い。そのため、容器に入れることができる土壌の量は、大幅に制約される。
植物の栽培において、土壌には水を含めた各種養分を確保する機能や根が伸長するための空間としての機能がある。また、土壌の量が少ないと、植物の根が環境の変化による影響を受けやすくなる。
特許文献1〜4には、土壌が少ないとの問題およびその解決策については、ほとんど述べられていない。
また、本発明の目的は、屋外の壁面から500mmまでの狭い空間を利用して、蔓植物を栽培し、壁面を緑化する方法を提供することでもある。
また、本発明は、土壌が露出してない地表に接している屋外の壁面において蔓植物を栽培する方法であって、上記連結式蔓植物栽培用容器を側面で複数連結し、容器の背面を壁面に密着させ、容器内の土壌充填用空間に土壌を充填し、土壌の上で蔓植物を栽培し、栽培用開口から蔓植物を壁面に沿って成長させる蔓植物の栽培方法も提供する。
土壌充填用空間の背面以外の面も吸水性シートで覆ってもよいが、背面を優先して(重点的に)吸水性シートで覆う。容器内で使用する吸収性シートの面積当たり70%以上(好ましくは80%以上、最も好ましくは90%以上)を、背面を覆うために使用する。
壁面では、壁面に沿って流れる雨水の量が非常に多い。本発明に従う栽培用容器を壁面に密着させると、上面の大きな栽培用開口から壁面を流れる雨水を容器内に誘導できる。そして、容器の背面内側を覆う吸水性シートによって余分な水を吸収し、土壌の保水量の不足を補う。壁面での植物栽培では容器の容量に制限があるため、本発明では吸水性シートを最も有効に利用できる(壁面を流れる雨水を最も有効に吸収できる)容器の背面内側を優先して利用する。
本発明の容器を利用すると、環境にもよるが、水やりを行わず自然の雨水を利用して蔓植物を栽培することも可能になる。
本発明では、容器を連結し、連結部(連結するための側面)に大きな開口を設けているため、容器毎に栽培する蔓植物が土壌を共有できる。保水機能以外の土壌の機能が不足する問題は、蔓植物が土壌を共有することにより、解決することができる。
図1に示す容器(1)は、奥行きの外寸(d)が300mm、幅の外寸(w)が1000mm、そして高さの外寸(h)が900mmである。
本発明に従う容器は、奥行きの外寸(d)が100乃至500mmである。奥行きの外寸(d)は、150乃至450mmであることが好ましく、200乃至400mmであることがさらに好ましく、250乃至350mmであることが最も好ましい。
本発明に従う容器は、幅の外寸(w)および高さの外寸(h)がそれぞれ奥行きの外寸(d)の2.5倍乃至5倍である。
図1に示す容器(1)の側面には、隣接する容器と土壌を共有するための連結用開口(11)が設けられている。図1に示す容器の連結用開口(11)は、幅(w1)が150mm、そして高さ(h1)が550mmである。図1に示す容器の連結用開口(11)の大きさ(150mm×550mm)は、側面の面積(300mm×900mm)の30.6%である。
本発明に従う容器は、少なくとも一方の側面にその面積の10乃至90%の大きさを有する連結用開口が設けられている。連結用開口の大きさは、側面の面積の15乃至80%であることが好ましく、20乃至60%であることがさらに好ましく、25乃至40%であることが最も好ましい。
本発明に従う容器の容器上端から連結用開口(11)の上端までの距離(d1)は、10乃至300mmであることが好ましく、20乃至200mmであることがさらに好ましく、50乃至150mmであることが最も好ましい。
本発明に従う容器の連結用開口(11)の周囲にゴムパッキンを取り付ける場合、ゴムパッキンの厚さは、1乃至7mmであることが好ましく、1.5乃至5mmであることがさらに好ましく、2乃至4mmであることが最も好ましい。ゴムパッキンの幅は、10乃至70mmであることが好ましく、15乃至50mmであることがさらに好ましく、20乃至40mmであることが最も好ましい。
本発明に従う容器の側面にボルト用開口(13)を設ける場合、開口の数は2乃至12であることが好ましく、3乃至10であることがさらに好ましく、4乃至8であることが最も好ましい。ボルトの直径は、4乃至16mmであることが好ましく、5乃至14mmmであることがさらに好ましく、6乃至12mmであることが最も好ましい。ボルトの長さは、10乃至50mmであることが好ましく、15乃至40mmであることがさらに好ましく、20乃至30mmであることが最も好ましい。
本発明では、2個以上の容器を連結して使用する。連結して使用する容器の数は、2個乃至20個であることが好ましく、3個乃至10個であることがさらに好ましい。2個の容器を連結する場合、一方の側面のみに連結用開口が設けられている容器を2個準備すればよい。3個以上の容器を連結する場合、中間の容器は、両側面に連結用開口を設ける。
図2に示す容器(1)は、図1に示す容器(1)と同じ容器であり、奥行き(d)が300mm、幅(w)が1000mm、そして高さ(h)が900mmである。
図2に示す容器(1)は、厚さ(t)が5mmの樹脂板により構成されている。
本発明に従う容器を構成する板の厚さは、0.5乃至20mmであることが好ましく、1乃至15mmであることがさらに好ましく、2乃至10mmであることが最も好ましい。
本発明に従う容器では、上面にその面積の55%以上の大きさを有する栽培用開口を設ける。栽培用開口は、上面の面積の60%以上であることが好ましく、65%以上であることがさらに好ましく、70%以上であることが最も好ましい。
本発明に従う容器の内側に補強板を取り付ける場合、補強板の厚さは、0.2乃至15mmであることが好ましく、0.5乃至10mmであることがさらに好ましく、1乃至7mmであることが最も好ましい。
本発明に従う容器の内側に補強板を取り付ける場合、補強板の大きさは、背面または正面の面積の3〜100%であることが好ましく、5〜70%であることがさらに好ましく、7〜50%であることが最も好ましい。側面にも補強板を取り付けてもよい。
本発明に従う容器は、容器の底から20乃至100mmの高さで容器内部の空間が水透過性の材料(例、ネット)により上部が土壌充填用空間、そして下部が貯水用空間として仕切られている。仕切りの高さは、30乃至90mmが好ましく、40乃至80mmがさらに好ましく、50乃至70mmが最も好ましい。
図2に示すブロック(24)の大きさは、縦が100mm、幅が40mm、高さが60mmである。ブロックの高さは、上部を土壌充填用空間、下部を貯水用空間として仕切る高さに相当する。
本発明に従う容器において、ブロック(24)を用いて水透過性の材料を用いて支える場合、ブロックの縦および幅の寸法は、10乃至400mmであることが好ましく、15乃至300mmであることがさらに好ましく、20乃至200mmであることが最も好ましい。ブロック(24)としては、プラスチック発泡体のブロックが用いられる。
本発明に従う容器は、容器の底から20乃至100mmの高さの位置のいずれかの面に溢流孔が設けられている。溢流孔は、側面または背面に設けることが好ましく、背面に設けることがさらに好ましい。溢流孔の位置は、容器の底から30乃至90mmが好ましく、40乃至80mmがさらに好ましく、50乃至75mmが最も好ましい。
溢流孔の直径は、10乃至40mmであることが好ましく、15乃至30mmであることがさらに好ましく、20乃至25mmであることが最も好ましい。
溢流孔の数について、特に制限はない。
吸水用パイプの直径は、20乃至150mmであることが好ましく、25乃至100mmであることがさらに好ましく、30乃至70mmであることが最も好ましい。
吸水用パイプの内部には、吸水性材料を充填することが好ましい。吸水性材料としては、繊維(例、ガラス繊維)が好ましく用いられる。吸水用パイプの数について、特に制限はない。
本発明に従う容器は、土壌充填用空間の背面内側の面積の55%以上が吸水性シートで覆われている。土壌充填用空間の背面内側の面積のうち、吸水性シートで覆う部分は、70%以上であることが好ましく、80%以上であることがさらに好ましく、90%以上であることが最も好ましい。
吸水性シートの厚さは、5乃至50mmであることが好ましく、10乃至40mmであることがさらに好ましく、15乃至30mmであることが最も好ましい。
図3に示す容器(1)は、寸法を含め図1および図2で説明した容器と同じである。容器(1)の背面と正面の内側には、補強板(22)が取り付けられている。容器(1)は、容器の底から一定の高さでネット(23)により仕切られている。ネット(23)は、ブロック(24)を用いて支える。容器(1)は、土壌充填用空間の背面内側が全て吸水性シート(27)で覆われている。
土壌改良用の粒状資材(34)の上には、土壌(35)を入れる。土壌は、水持ちが良く、かつ排水性に優れていることが望ましい。一般に蔓植物の栽培に用いられている培養土を使用すればよい。必要に応じて、複数の培養土(例、黒土、パーライト、ピートモス)を混合して用いてもよい。土壌の上部には粒状緩効性肥料、下部には成型固形肥料を用いることが好ましい。肥料の使用量は、上部および下部ともに、0.5〜15kg/m3であることが好ましく、1〜10kg/m3であることがさらに好ましく、2〜6kg/m3であることが最も好ましい。
容器は、接着剤(36)により、護岸(31)の壁面に接着する。そして、培養土(35)で蔓植物(37)を培養する。容器の上面は、マルチング資材(38)で覆う。護岸(31)の壁面は、蔓植物(37)の登攀用ネット(39)で覆う。登攀用ネット(39)としては、ジュート繊維からなる緑化用マットを用いることができる。
本発明に従う栽培用容器には、非常に高い強度が要求される。その要求を満足するため、強度が高い樹脂板で栽培用容器を構成することが好ましい。樹脂は、ポリエステル樹脂、フェノール樹脂、アミノ樹脂、シリコーン樹脂およびエポキシ樹脂が好ましく、ポリエステル樹脂、フェノール樹脂およびエポキシ樹脂がさらに好ましい。
強化剤を用いて樹脂をさらに強化することが好ましい。強化剤としては、一般に、不活性繊維状材料が用いられる。強化剤の例には、ガラス繊維、ジュート、サイザル麻、フロック、グラファイト、硼素繊維、炭素繊維、セラミック繊維、ホィスカーを含む。ガラス繊維が特に好ましい。
樹脂の合板を用いて、容器を強化してもよい。ただし、本発明では容器の奥行きに制限がある(奥行きの外寸:100〜500mm)状況を想定しているため、あまり厚い板で容器を構成すると、容器に入れることができる土壌の量がさらに減少する。そのため、図2で説明したように、容器を構成する樹脂板のみで必要な強度を得るのではなく、補強板を用いて容器の強度を補強することが好ましい。補強板の材質は、容器を構成する樹脂板と同様である。
吸水性シートは、可能な限り高い吸水性を有することが好ましい。乾燥時の体積当たり60%以上の吸水性を有することが好ましく、70%以上の吸水性を有することがさらに好ましく、80%以上の吸水性を有することが最も好ましい。シートの面積当たり保水量は、5L/m2以上であることが好ましく、10L/m2以上であることがさらに好ましく、15L/m2以上であることが最も好ましい。
吸水性シートは、発泡プラスチックからなることが好ましい。プラスチックとしては、ポリウレタンおよびポリスチレンが好ましく、ポリウレタンが特に好ましい。
吸水性シートは、温度の上昇に伴って水を放出する感温性吸排水性樹脂を含むことが好ましい。感温性吸排水性樹脂は、植物栽培における土壌の水分調整材として市販されている。本発明では、感温性吸排水性樹脂を、水の利用において最も有効な壁面側に設置する吸水性シートにおいて利用することができる。
蔓植物は、他の物にまきついたり付着したりしながら伸びていく植物である。なるべく乾燥に強い蔓植物を栽培することが好ましい。
本発明の容器での栽培に適した蔓植物の例には、ナツヅタ(落葉)、オオイタビカズラ(常緑)、テイカカズラ(常緑)、ノウゼンカズラ(落葉)およびヘデラ・ヘリックス(常緑)が含まれる。複数の蔓植物を混植してもよい。落葉植物と常緑植物とを混植することが好ましい。蔓植物と他の植物とを混植することもできる。
(1)ナツヅタ、オオイタビカズラ、テイカカズラ
ナツヅタが早期に成長し、オオイタビカズラ、テイカカズラが追って成長し、常緑壁面を作る。秋には、ナツヅタが紅葉する。
2〜3年程度で完成し、その後は年々緑が濃くなる。
(2)オオイタビカズラ、テイカカズラ、ノウゼンカズラ
テイカカズラ、オオイタビカズラの緑の壁面が作られ、夏期にはノウゼンカズラの花が咲く。
2〜3年程度で完成し、緑の中の美しい花が見られる。
テイカカズラの緑の壁面が作られ、夏期はノウゼンカズラの花、秋はナツヅタの紅葉が見られる。
2〜3年程度で完成し、紅葉と花が見られる。
(4)ノウゼンカズラ、ナツヅタ、ヘデラ・ヘリックス
ナツヅタが早期に成長し、ヘデラ・ヘリックスが追って成長する。2〜3年程度で成長し、濃い緑の中の美しい花が見られる。
蔓植物の栽培の間隔は、容器の幅方向において、10〜50cm間隔が好ましく、15〜40cm間隔がさらに好ましく、20〜30cm間隔が最も好ましい。
図1および図2に示す容器を四個連結して、図3に示すように護岸(高さ:2600mm)に設置した。中央の二個は、両側面に連結用開口を設けた容器を用い、両端の二個は一方の側面のみに連結用開口が設けた容器を用いた。
図3に示すように、土壌改良用の粒状資材として黒曜石パーライトを土壌充填用空間の底部に入れ、その上の土壌として、黒土:パーライト:ピートモス(容量比=7:2:1)からなる混合土を入れた。土壌の上部には粒状緩効性肥料(グリーンマップ同等品)を4kg/m3加え、下部には成型固形肥料(サンフォレスト同等品)を4kg/m3加えた。
かん水は行わず、自然の雨水だけで蔓植物が生長し、護岸の壁面を緑化することができた。
実施例1と同様に容器を用い、25cm間隔で、テイカカズラ、ノウゼンカズラおよびナツヅタを混植した。
かん水は行わず、自然の雨水だけで蔓植物が生長し、護岸の壁面を緑化することができた。
w 容器の幅の外寸
h 容器の高さの外寸
w1 連結用開口の幅
h1 連結用開口の高さ
d1 容器上端から連結用開口の上端までの距離
d2 容器上端から連結用開口の下端までの距離
t 樹脂板の厚さ
h2 容器を仕切る高さ
1 蔓植物栽培用容器
11 連結用開口
12 ゴムパッキン
13 ボルト用開口
21、22 補強板
23 ネット
24、32 ブロック
25 溢流孔
26 吸水用パイプ
27 吸水性シート
31 護岸
33 支持板
34 土壌改良用粒状資材
35 土壌
36 接着剤
37 蔓植物
38 マルチング資材
39 登攀用ネット
Claims (3)
- 奥行きの外寸が100乃至500mmであり、幅および高さの外寸がそれぞれ奥行きの外寸の2.5乃至5倍であり、正面、背面、底面、上面および二つの側面からなる略直方体の形状を有する連結式蔓植物栽培用容器であって、容器の底から20乃至100mmの高さで容器内部の空間が水透過性の材料により上部が土壌充填用空間、そして下部が貯水用空間として仕切られており、容器の底から20乃至100mmの高さの位置のいずれかの面に溢流孔が設けられており、少なくとも一方の側面にその面積の10乃至90%の大きさを有する連結用開口が設けられており、上面にその面積の55%以上の大きさを有する栽培用開口が設けられており、土壌充填用空間の背面内側の面積の55%以上が吸水性シートで覆われており、そして、容器内で使用する吸水性シートの面積当たり70%以上を、背面を覆うために使用していることを特徴とする連結式蔓植物栽培用容器。
- 吸水性シートが、温度の上昇に伴って水を放出する感温性吸排水性樹脂を含む請求項1に記載の連結式蔓植物栽培用容器。
- 土壌が露出してない地表に接している屋外の壁面において蔓植物を栽培する方法であって、請求項1に記載の連結式蔓植物栽培用容器を側面で複数連結し、容器の背面を壁面に密着させ、容器内の土壌充填用空間に土壌を充填し、土壌の上で蔓植物を栽培し、栽培用開口から蔓植物を壁面に沿って成長させる蔓植物の栽培方法。
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