日本の地上デジタルテレビ放送(ISDB−T)では、携帯機器向けに1セグメント(430kHz)のみを用いた放送が行われる。地上デジタルテレビ放送の受信機能をIC(Integrated Circuit:集積回路)化して、バッテリ駆動の携帯端末に組み込むには、受信用チューナの低消費電力化、小型化、妨害波耐性、及び低歪化が重要な課題となる。
イメージ抑圧型の低域中間周波数(Low IF)方式受信装置等では、90度位相器及びミキサ回路は、それぞれ最も重要なブロックの一つである。
従来のイメージ抑圧型受信機におけるイメージ抑圧ブロック100は、図14に示すように、クロックを基準として90度位相が異なるI信号及びQ信号を実現する90度位相器101と、IミキサI_MIX及びQミキサQ_MIXからなるミキサ回路102と、希望波を通過させ、妨害波であるイメージ波を抑圧する機能を有するポリフェーズフィルタ(PPF:Poly Phase Filter)103とを有している。
上記90度位相器101は、図示しない局部発振器にて生成した局部発振信号を入力し、その入力信号から互いに位相が90°異なるローカル信号LO(Local)_I信号とローカル信号LO_Q信号とを生成すると共に、ローカル信号LO_IをIミキサI_MIXに供給し、LO_Q信号をQミキサQ_MIXにそれぞれローカル信号(局部発振信号)として供給する。
上記ミキサ回路102におけるIミキサI_MIX及びQミキサQ_MIXは、いずれも受信信号である高周波信号RF(Rapid Frequency)に各ローカル信号LO_I及びローカル信号LO_Qを乗算して周波数変換し、乗算結果としてそれぞれ中間周波数信号IF(Intermediate Frequency)_I及び中間周波数信号IF_Qを生成する。
以下に、イメージ波の抑圧、つまりイメージリジェクションの原理を、図15に基づいて簡単に説明する。
同図に示すように、希望波RFD(ここではローカル信号LOよりも上側の周波数とする)をアンテナから受信する際、ローカル信号LOと希望波RFDとの乗算結果から生成する中間周波数信号IFの他に、ローカル信号LOの周波数を中心として鏡像の位置関係にあるイメージ信号としての妨害波RFUとローカル信号LOとの乗算結果からも中間周波数信号IFが生成し、受信特性が劣化する。このような受信障害を、「イメージ妨害」と呼ぶ。また、妨害波RFUに対する希望波RFDの比を、イメージリジェクション比:IMRR(Image Rejection Ratio)と呼ぶ。
図14において、ローカル信号LO_Iの位相の方がローカル信号LO_Qよりも、90度進むと仮定すると、ローカル信号LO_I及びローカル信号LO_Qは、式(1)、式(2)のように表すことができる。
LO_I=cosωLOt (1)
LO_Q=sinωLOt (2)
ここで、ωLOはローカル信号LOの角周波数とする(なお、振幅は考慮しない。)。
RF信号を、
RF=sinωRFt
とすると乗算機能を有するミキサ回路102の出力は、以下の式(3)、式(4)のようになる(なお、周波数の和成分及び係数等は省略する。)。
IF_I=sinωRFt×cosωLOt→sin(ωRF−ωLO)t
=−sin(ωLO−ωRF)t (3)
IF_Q=sinωRFt×sinωLOt→cos(ωRF−ωLO)t
=cos(ωLO−ωRF)t (4)
前記図14に示すポリフェーズフィルタ(PPF)103は、一方が他方よりも90°進んでいれば、そのまま出力し、逆に90°遅れていれば減衰させるものとする。
図11に示したローカル信号LOと希望波RFDとの関係が成り立つ時(ωRF>ωLO)、式(3)及び式(4)の真中より、中間周波数信号IF_Qが通過でき、中間周波数信号IF_I成分は減衰する。
一方、上記のように、中間周波数信号IF_Qが通過できるようなポリフェーズフィルタ(PPF)103との接続関係が成り立つ時、妨害波RFUに関してはローカル信号LOとの関係(ωLO>ωRF)により、式(3)及び式(4)の右部から中間周波数信号IF_Qの方が90°進んでいるが、ポリフェーズフィルタ(PPF)103の接続が逆であるので、イメージ信号である妨害波RFUは通過できずに減衰する。
上記のようなイメージリジェクションを実現するために用いられるミキサ回路102の回路構成は従来から種々提案されているが、前記図14に示すように、2個の独立したギルバート乗算器(ミキサ)I_MIX・Q_MIXを用いるのが一般的である。詳細なイメージリジェクションミキサ110の回路構成は、図16のように示される。なお、このように、イメージ抑圧を目的としたミキサを、イメージリジェクションミキサと呼ぶ。
ここで、I(Q)信号を扱うギルバート乗算器(ミキサ)I_MIX(Q_MIX)において、以後、トランスコンダクタ部をGm_I(Gm_Q)、スイッチ部をSW_I(SW_Q)と呼ぶ。同様に、高周波信号RF及びその反転信号をRF及びRFB、ローカル信号LO及びその反転信号をLO_I(LO_Q)及びLO_IB(LO_QB)、中間周波数信号IF及びその反転信号をIF_I(IF_Q)及びIF_IB(IF_QB)と呼ぶ。
一方、イメージリジェクション比(IMRR)は、振幅誤差Aと位相誤差δとを用いて式(5)式のように表すことができる。
イメージリジェクション比(IMRR)の値は、振幅と位相とが所定の条件を満足している必要があり、図14に示すように、90度位相器101にて略制限される。すなわち、振幅が等しく、かつ位相がI−Q−IB−QBの順に90度シフトした関係であるとイメージ信号を良好に除去できる。しかしながら、90度位相器101は、非常にレイアウト依存性が強く、振幅と位相との関係が理想状態から崩れてしまう傾向にあり(位相誤差δが3°以上等)、イメージリジェクション比(IMRR)を著しく低下させる。
上記のような問題を解決するために、ローカル信号LO間の干渉を利用してローカル信号LOによる位相誤差を抑圧できるミキサ回路として特許文献1及び非特許文献1が提案されている。
上記特許文献1に記載のイメージリジェクションミキサ120の回路構成を、図17に基づいて説明する。なお、同図において、図16に示すイメージリジェクションミキサ110と同一符号の部材は説明を省略する。
まず、上記イメージリジェクションミキサ120が、図16に示すイメージリジェクションミキサ110と最も大きく異なるのは、トランスコンダクタ部Gmが、トランスコンダクタ部Gm_I、及びトランスコンダクタ部Gm_Qの各トランスコンダクタ部Gmを共通化してなっている点にある。
歪の原因は、トランスコンダクタ部Gm(電圧−電流変換部)が主であるため、従来のミキサにおけるIとQとで各2つ、計4つのトランジスタを2つで共有することによるスイッチング特性の改善、低歪化の効果は大きい。
イメージリジェクションミキサの中でIQ信号を一つの回路で同時に扱うイメージリジェクションミキサ120をIQ直交ミキサと呼び、図16に示した2つの独立したギルバートミキサ(Gilbert mixer)を有するイメージリジェクションミキサ110と区別する。
IQ直交ミキサは、ローカル信号LOのIQ位相誤差を補償する効果がある。補償回路を追加することなくイメージリジェクション比(IMRR)を改善できる。受信機の低コスト、小型化、低消費電力化、高性能化に関する要求は非常に高くなってきている。90度位相器101で制限されるイメージリジェクション比(IMRR)の劣化を補償することができる。
上記イメージリジェクションミキサ120においては、高周波信号RFがHighの時、トランジスタT1がONとなり、トランジスタT3・T4・T7・T8のいずれかに電流2ISSを供給する。例えば、仮に、ローカル信号LO_IがHighの時には、トランジスタT3のみONとなり、全ての電流2ISSが、トランジスタT3を流れる。この時、ノード電位121は上昇し、トランジスタT7・T8は、ベース・エミッタ間電圧(Vbe)が降下し、強くOFFとなる。
上記のような動作を、ノード電位121・122を起点に、ローカル信号LO_I→ローカル信号LO_Q→ローカル反転信号LO_IB→ローカル反転信号LO_QB→ローカル信号LO_Iというように、位相が90度ずれて繰り返すことにより、IQ干渉が起こり、I信号とQ信号との直交性が改善される。
ここで、図16及び図17に示すイメージリジェクションミキサ110・120のスイッチ部におけるI・Q信号による電流の時間応答について説明する。
まず、イメージリジェクションミキサ110では、図17に示すように、電流源がIとQで完全に独立しており、図18(b)に示すように、スイッチ部に流れる最大電流はISSで制限される。
電圧電流変換利得をgmとすると、イメージリジェクションミキサ110・120の電圧電流変換利得gmはそれぞれ式(6)、式(7)のようになる。
ここで、式(8)は、熱電位VTを表し、26mVの値を持つ。つまり、バイポーラトランジスタの電圧電流変換利得gmは、動作電流で決まり、図18(a)に示すように、IQ直交ミキサの方が、2倍得した電圧電流変換利得gmを持つことができるため、スイッチ部に流れる最大電流は2×ISSで制限されるので、電圧利得CGでは3dB改善する。
共通化した電圧電流変換利得gm値をgmCで表すと、IQ直交ミキサにおける電圧利得CGは式(9)、式(10)のようになる。
トランスコンダクタ部Gmのプロセスばらつきは、出力の振幅ばらつきに比例する。また、トランスコンダクタ部Gmのミスマッチによる誤差は、イメージリジェクション比(IMRR)性能を劣化させる。
また、非線形性(歪)は、トランスコンダクタ部Gmの歪が主である。差動対をなすトランジスタの線形性は、ベース・エミッタ(ゲート・ソース)間電圧やプロセス・パラメータ、エミッタ長(チャネル長)等に依存する。IQ直交ミキサからなるイメージリジェクションミキサ120は、これらのプロセスばらつきを完全に補償することができる。
式(9)及び式(10)から分かるように、トランスコンダクタ部Gmが共通化されているので、IとQとの利得ばらつきが低減する。また、出力負荷R3〜R6は、従来と数が等しいため、出力負荷に起因するノイズの増加は無い。
一方、位相に関して、イメージリジェクションミキサ110では、I及びQの処理が独立しており、イメージリジェクションミキサ120のようなIQ信号干渉は起こらないため、ローカル信号LO_Iとローカル信号LO_Qとの間の位相誤差は、そのまま中間周波数信号IFに現れる。
なお、特許文献2の図1では、図示しないが、動作マージンを拡大するために、トランスコンダクタ部とスイッチ部を独立に最適化させ、バイパスキャパシタで接続する構成を用いた直交ミキサ回路が開示されている。
また、前記特許文献1のFig.5には、図19に示すように、本発明のベースとなる電流源を削除したイメージリジェクションミキサ130の構成が示されている。このイメージリジェクションミキサ130では、電流源を取り去ることにより、動作マージンが拡大し、より低消費電力で線形性の向上が期待できる。
さらに、その他の従来技術として、特許文献3のFIG.3には、図20に示すように、本発明のベースとなる電流源を削除したフィードバックを備えた能動無線周波数ミキサ回路140が記載されており、この能動無線周波数ミキサ回路140によって、動作マージンを拡大することができ、より低消費電力で線形性の向上が期待できる。
しかしながら、上記従来の特許文献1で開示されている図19に示したIQ直交ミキサ
であるイメージリジェクションミキサ130では、動作電流を決めるための回路構成が示されていない。理想的には高周波信号RF及び高周波反転信号RFBのDC電位によって動作電流が決まるが、抵抗分割等でバイアスを生成すると、抵抗値のばらつきにより容易に設計値と異なる動作電流が流れる。バイポーラトランジスタT1・T2の電圧電流変換利得gmの値は、式(6)及び式(7)に示したように、動作電流で決まるため、式(9)及び式(10)で示した電圧利得CGが大きくばらつく可能性がある。
また、特許文献2で開示されている図示しない直交ミキサ回路では、電流源を構成するタンクのインダクタや新たにバイパスキャパシタ等、素子数が増えチップ面積を圧迫する。
また、特許文献3で開示されている図20に示した能動無線周波数ミキサ回路140を二つ用意しても、IQ相互干渉のメリットを活かせず、イメージリジェクション比(IMRR)の向上のために、図14に示した90度位相器101の振幅及び位相誤差を低減すべく補償回路が必要となり、チップ面積の拡大、消費電力の増加を招く。さらに、トランジスタT1・T2のエミッタ端子に抵抗ではなくインダクタ(ボンディングワイヤーに起因する)のみを考慮しており、電流源をなすトランジスタT1・T2のコレクタ抵抗に周波数ピーク特性が現れる。さらに、トランジスタT1・T2のベースに広範囲(数百MHz)の受信信号を受けると、反射係数が負帰還となるインダクタによって周波数ピーク特性が現れる。また、抵抗R15・R16によって動作電流を決めているため、抵抗や電源電圧ばらつきによって回路の動作電流が大きく変化してしまう。
本発明は、上記従来の問題点に鑑みなされたものであって、その目的は、IQ相互干渉効果により位相の90度異なる中間周波数を形成するトランスコンダクタ部を共通化したミキサに関して、電流源を取り去ることによって、動作マージンを拡大し、かつ電流源特性を向上させ、所望の動作電流を安定して供給し、トランスコンダクタ部を自己バイアスし得るミキサ回路を提供することにある。
本発明のミキサ回路は、上記課題を解決するために、電流源の動作電流を基に、外部から入力する受信信号をトランスコンダクタ部で増幅した後、第1及び第2のスイッチ段に分配し、第1及び第2の局部発振信号と上記受信信号との積を上記第1及び第2のスイッチ部と第1〜4の出力負荷との4つの接続部から互いに位相の異なる第1〜4の中間周波数信号を生成する周波数変換機能を有するミキサ回路において、上記トランスコンダクタ部のトランジスタを電流源トランジスタとして利用すると共に、上記電流源トランジスタとして利用した第1及び第2のトランジスタに、第1及び第2の抵抗をそれぞれ備え、前記第1及び第2のトランジスタをバイアスすべく、ダイオード接続された第3及び第4のトランジスタと第3及び第4の抵抗とをそれぞれ備え、上記第1のトランジスタと第3のトランジスタは、第1の電流源カレントミラーを形成し、上記第2のトランジスタと第4のトランジスタは、第2の電流源カレントミラーを形成し、上記第1の抵抗は、上記第1のトランジスタのエミッタとグランドとの間に接続されており、上記第2の抵抗は、上記第2のトランジスタのエミッタと上記グランドとの間に接続されており、上記第3の抵抗は、上記第3のトランジスタのエミッタと上記グランドとの間に接続されており、上記第4の抵抗は、上記第4のトランジスタのエミッタと上記グランドとの間に接続されていることを特徴としている。
上記の発明によれば、電流源かつトランスコンダクタ部となる第1及び第2のトランジスタT1・T2の出力インピーダンスが向上し、電流源特性が向上する。また、動作電流で決まる電圧電流変換利得gmにより、直接、出力インピーダンス向上に利用することができる。さらに、電流源出力部にIQスイッチ部が接続されるため、IQ各スイッチ部に一定の動作電流を供給する。したがって、出力インピーダンスの向上による電流源特性の安定化は重要となる。
ここで、トランスコンダクタ部かつ電流源となるトランジスタに負帰還抵抗を付けたことによる出力インピーダンスは、式(11)のようになる。
ただし、rC1及びrC2は、図1中のトランジスタT1・T2のコレクタ端子における出力インピーダンスである。
この結果、負帰還抵抗R1・R2の挿入により、出力インピーダンスが向上し、電源電圧やスイッチ部が変動しても、それに対するカレントミラー電流の変動が低減し、定電流特性が改善される。
したがって、IQ相互干渉効果により位相の90度異なる中間周波数を形成するトランスコンダクタ部を共通化したミキサに関して、電流源を取り去ることによって、動作マージンを拡大し、かつ電流源特性を向上させ、所望の動作電流を安定して供給し、トランスコンダクタ部を自己バイアスし得るミキサ回路を提供することができる。
また、本発明の参考に係るミキサ回路は、上記記載のミキサ回路において、前記第1及び第2のトランジスタをバイアスすべく、ダイオード接続された第3及び第4のトランジスタと第3及び第4の抵抗とをそれぞれ備え、上記第2のトランジスタと第4のトランジスタは、第2の電流源カレントミラーを形成し、上記第3の抵抗は、上記第3のトランジスタのエミッタと上記グランドとの間に接続されており、上記第4の抵抗は、上記第4のトランジスタのエミッタと上記グランドとの間に接続されていることを特徴としている。
上記の発明によれば、ダイオード接続された第3及び第4のトランジスタに流れる電流を基に、前記トランスコンダクタ部の電流を任意に調整することが可能となる。
また、電流源トランジスタである第1及び第2のトランジスタをバイアスする、ダイオード接続された第3及び第4のトランジスタと共に、第3及び第4の抵抗をそれぞれ有し、第1及び第2の電流源カレントミラーを形成する。
したがって、抵抗によるトランスコンダクタ部の出力インピーダンスを向上しつつ、カレントミラーを実現できる。
また、本発明のミキサ回路は、上記記載のミキサ回路において、前記第1(又は第2)及び第3(又は第4)のトランジスタのトランジスタのサイズ比を変えると共に、上記第1(又は第2)及び第3(又は第4)の抵抗の比を変えることにより、カレントミラー比を調整することを特徴としている。
上記の発明によれば、抵抗によるトランスコンダクタ部の出力インピーダンスを向上しつつ、任意のカレントミラー比を実現できる。すなわち、例えば、カレントミラー比を1:nとした場合、カレントミラーを形成するトランジスタのサイズ比は1:n、抵抗サイズ比はn:1となる(nは整数)。
また、本発明のミキサ回路は、上記記載のミキサ回路において、前記第1及び第2の電流源カレントミラーのバイアス電圧供給部に、受信信号とその反転信号とを、容量を介して与えることを特徴としている。
上記の発明によれば、従来のような受信信号によるトランスコンダクタ部のエミッタ端子の電圧変動に起因する電流源特性の劣化を回避することができる。
また、本発明のミキサ回路は、上記記載のミキサ回路において、前記ダイオード接続された第1及び第2のトランジスタに、第1及び第2の等しい電流を供給することを特徴としている。
上記の発明によれば、電源電圧ばらつきに依存しない、定電流を流し込むことにより回路の動作電流が安定し、中間周波数信号IFの出力における振幅ばらつき等を回避できる。
また、本発明のミキサ回路は、上記記載のミキサ回路において、前記第1及び第2の等しい電流を、前記ダイオード接続された第1及び第2のトランジスタにそれぞれ供給することにより、自己バイアス電圧を生成することを特徴としている。
上記の発明によれば、バイアス回路を必要としないためコンパクトであり、上記電源電圧に依存しない電流を絶えず供給することによって、一定のバイアスを保つことができる。
また、本発明のミキサ回路は、上記記載のミキサ回路において、前記第1〜4の出力負荷と並列に容量が備えられていることを特徴としている。
上記の発明によれば、I及びQの各出力される中間周波数信号IFにおけるコモンモードノイズを低減することができる。
また、本発明のミキサ回路は、上記記載のミキサ回路において、前記第1〜2及び第3〜4の中間周波数信号の各配線間に高調波抑制容量が挿入されていることを特徴としている。
上記の発明によれば、前記4つの出力負荷と、I(Q)信号及びその反転信号IB(QB)間に挿入した高調波抑制容量により、LPF(ローパスフィルター)を形成するため所望のIF帯域よりも十分大きい周波数の妨害波を抑制することができる。
また、本発明のミキサ回路は、上記記載のミキサ回路において、前記第1及び第2の抵抗と前記第1及び第2のトランジスタとの接続部間に、第5の抵抗が備えられていることを特徴としている。
上記の発明によれば、カレントミラー構成、トランスコンダクタ部の抵抗による電流源特性の改善を維持したまま、電流源のないトランスコンダクタ差動対を形成できる。したがって、電圧利得及び線形性の性能を上記第5の抵抗により調整可能となる。
また、本発明のミキサ回路は、上記記載のミキサ回路において、前記第3のトランジスタのコレクタと前記第3のトランジスタのベースとの間に第6の負帰還抵抗が接続され、前記第4のトランジスタのコレクタと前記第4のトランジスタのベースとの間に第7の負帰還抵抗が接続されていることを特徴としている。
上記の発明によれば、ダイオード接続により回路構成上ベース・コレクタ端子間に負帰還が働くが、第6及び第7の負帰還抵抗により負帰還をより強化することが可能となる。
また、高周波信号RFの受信信号に対してLPFとして負帰還が働くため、より歪を低減できる。
また、本発明のミキサ回路は、上記記載のミキサ回路において、前記第1(又は第2)及び第3(又は第4)の抵抗の比を実現すべく、前記第1(又は第2)の抵抗を、カレントミラー比nに対応させ、基準となる前記第3(又は第4)の抵抗を複数並列接続することにより、1/nのサイズとなる抵抗を実現することを特徴としている。
上記の発明によれば、ミキサ回路のレイアウトに関して、カレントミラー精度を決定する抵抗は、等しいサイズの抵抗で群化して実現することになり、抵抗のばらつきが略一様となる。
また、本発明の参考に係るミキサ回路は、上記記載のミキサ回路において、前記第3又は第4の抵抗の大きさ、かつカレントミラー比nの数に相当する前記第1及び2を構成する並列抵抗を、上記第3と第4の抵抗及びダミー抵抗を中心に構え、交互かつ左右対称配置することを特徴としている。
上記の発明によれば、ミキサ回路のレイアウトに関して、カレントミラー精度を決定する抵抗は、全て等しいサイズの抵抗で群化して実現することになり、抵抗のばらつきが略一様となる。
また、本発明の参考に係るミキサ回路は、上記記載のミキサ回路において、前記ダイオード接続されたトランジスタ部の第3と第4の抵抗の間に、ダミー抵抗の挟み込み配置及び、前記連続配置した抵抗の両端にさらにダミー抵抗を配置することを特徴としている。
上記の発明によれば、特許文献1で開示されている図19に示した電流源を削除したイメージリジェクションミキサ130の対称性に関して、中心線にダミーを配置することによって、抵抗の連続配置を中心から対称性良く、かつ製造ばらつきを低減するダミーで挟まれた抵抗レイアウトが可能となる。
また、本発明のミキサ回路は、上記記載のミキサ回路において、前記第5の抵抗のサイズを2分割し、直列に接続して元のサイズを実現することを特徴としている。
上記の発明によれば、特許文献1で開示されている図19に示した電流源を削除したイメージリジェクションミキサ130の対称性に関して、抵抗を偶数個(ここでは2個)に分割することによって、中心から対称性の良い抵抗レイアウトが可能となる。
また、本発明のミキサ回路は、上記記載のミキサ回路において、前記第1及び第2のスイッチ部と前記トランスコンダクタ部との接続部に第3及び第4の電流源が付加されていることを特徴としている。
上記の発明によれば、I、Q信号を扱うスイッチ部及びトランスコンダクタ部のDC動作電流をそれぞれ最適化できる。
本発明ミキサ回路は、以上のように、トランスコンダクタ部のトランジスタを電流源トランジスタとして利用すると共に、上記電流源トランジスタとして利用した第1及び第2のトランジスタに、第1及び第2の抵抗をそれぞれ備え、前記第1及び第2のトランジスタをバイアスすべく、ダイオード接続された第3及び第4のトランジスタと第3及び第4の抵抗とをそれぞれ備え、上記第1のトランジスタと第3のトランジスタは、第1の電流源カレントミラーを形成し、上記第2のトランジスタと第4のトランジスタは、第2の電流源カレントミラーを形成し、上記第1の抵抗は、上記第1のトランジスタのエミッタとグランドとの間に接続されており、上記第2の抵抗は、上記第2のトランジスタのエミッタと上記グランドとの間に接続されており、上記第3の抵抗は、上記第3のトランジスタのエミッタと上記グランドとの間に接続されており、上記第4の抵抗は、上記第4のトランジスタのエミッタと上記グランドとの間に接続されているものである。
それゆえ、ローカル信号LO間の干渉を利用してローカル信号LOにおける位相ずれを補正する従来のIQ直交ミキサにおいて、電流源を取り除き、負帰還抵抗を多用することにより、低歪、低ノイズ、低消費電力を実現している。
したがって、IQ相互干渉効果により位相の90度異なる中間周波数を形成するトランスコンダクタ部を共通化したミキサに関して、電流源を取り去ることによって、動作マージンを拡大し、かつ電流源特性を向上させ、所望の動作電流を安定して供給し、トランスコンダクタ部を自己バイアスし得るミキサ回路を提供するという効果を奏する。
また、これにより、低消費電力で安定した位相誤差圧縮を可能とするミキサ回路を実現することができるという効果を奏する。
〔実施の形態1〕
本発明の一実施形態について図1ないし図11に基づいて説明すれば、以下の通りである。なお、図1において、前記従来の図19と同一の部材については、同一の符号を記載し、その説明を省略する。
本実施の形態のミキサ回路としてのIQ直交ミキサ回路20は、図1に示すように、前記図20に示す従来の電流源を除去したIQ直交ミキサであるイメージリジェクションミキサ130に、図21に示す従来の電流源を除去したフィードバックを備えた能動無線周波数ミキサ回路140のカレントミラーバイアス形成法及びRF受信入力手段を組み合わせたものがベースである。
また、本実施の形態では、さらに、エミッタ端子に接続する第1及び第2の抵抗としての抵抗R1・R2並びに第3及び第4の抵抗としての抵抗R8・R9により回路の低歪化を実現している。
また、トランスコンダクタ部Gmの第1及び第2のトランジスタとしてのトランジスタT1・T2は、回路上最も電圧電流変換利得gmが高く、トランジスタT1(T2)の電圧電流変換利得gmと負帰還抵抗R1(R2)とによる相乗効果によって、ノード21・22から電流源トランジスタであるトランジスタT1・T2を見た出力インピーダンスが向上するため、電流源特性が改善しスイッチ部がIQ相互干渉効果を十分に発揮できる。
さらに、T11(T12):T1(T2)=1:nのカレントミラーを形成する場合、トランジスタサイズ及び抵抗サイズはそれぞれ式(12)及び式(13)のようになる。
T11_s(T12_s):T1_s(T2_s)=1:n (12)
R8_s(R9_s):R1_s(R2_s)=1:1/n (13)
ここで、T*_s、 R*_sは、トランジスタT及び抵抗Rのサイズを意味している。
また、本実施の形態において、R1_s(R2_s)の1/n抵抗は、R8_s(R9_s)と等しいサイズの抵抗をn本並列接続することによって、レイアウト的に、カレントミラー精度を向上する工夫をしている。
さらに、第1及び第2の電流源としての定電流源I1・I2を電源電圧に依存しないP−TAT(Proportional To Absolute Temperature)等から供給することによって、カレントミラー電位の安定及びスイッチ部のDC動作電流のばらつきを回避し所望の電流値で動作させる。また、温度に比例した電流を供給できるため、温度の上昇による利得の低下を補う効果を有する。
さらにまた、受信信号としての高周波信号RF(Rapid Frequency)は、カレントミラーバイアスノードに供給することにより、レイアウト的に配線交差回数が減り、前記図17に示すイメージリジェクションミキサ110におけるトランジスタT1a・T2aのエミッタ端子の電圧変動による電流源特性の劣化を回避できる構成となっている。
さらに、抵抗R7の挿入により、トランジスタT1−抵抗R7−トランジスタT2の差動対が形成され、抵抗R7のサイズ調整により、電圧利得CG・線形性の配分調整が可能となる。
また、負帰還抵抗R10・R11の挿入により、負帰還量が向上し、高周波信号RFに対する低歪化、及び定電流源I1・I2へのリークを低減する。
さらに、容量としてのキャパシタC3〜C6の挿入により、コモンモードノイズ耐性を向上すると共に、キャパシタC7・C8の挿入により不要な高調波を減衰させる。
次に、従来技術のイメージリジェクションブロックの構成(図14)に対する、本実施の形態のイメージリジェクションブロックの構成を図2に示す。
本実施の形態のイメージ抑圧型受信機に備えられたイメージ抑圧ブロック10は、前記図14に示すような2つの独立したミキサではなく、図2に示すように、一つのイメージリジェクションミキサ12を備えた簡単な構成となる。したがって、素子数が削減されるので、さらにLSIの小型化が可能となる。また、トランスコンダクタ部Gmの共通化により、歪耐性やばらつき耐性が飛躍的に向上する。
本実施の形態のIQ直交ミキサ回路20では、図1に示すように、定電流源I1・I2は電流にて供給されるので、レイアウト等の人的要因によるばらつき発生は低減できる。この結果、トランスコンダクタ部GmのトランジスタT1・T2には、等しいDC動作電流が流れる。
ここで、図1のスイッチ部SW_I(又はスイッチ部SW_Q)を概念化して示す図3に示すように、何らかの要因で誤差電流ΔIuが含まれていたと仮定する。なお、各スイッチSW1・SW2は、図4(a)(b)に示すように、各ON時間は、それぞれ時間T1・T2となるタイミングでON・OFFするものとする。
図3において、1周期では、電流Iout1・Iout2は以下の式(14)、式(15)で表される。
ここで、T1=T2が成り立つとき、式(16)が成り立つ。
つまり、図4(a)に示すように、ローカル信号LOのデューティ(duty)比が50%であれば、電流Iout1とIout2とは等しくなる。一方、ローカル信号LOのデューティ(duty)比が、図4(b)に示すように、50%以上(T1>T2)になった場合、式(14)、及び式(15)から、誤差電流ΔIuは分割されるため、ばらつきが軽減される。
本実施の形態における電流Iout1・Iout2は、図1に示すスイッチ部SW_I及びスイッチ部SW_Qで同様の振る舞いをするため、I及びQのばらつきの傾向が等しくなる。
従来の図17で示した独立する2つのミキサ構成では、トランスコンダクタ部Gmの独立したばらつきによりIとQとのばらつき方が異なる。
次いで、本実施の形態の負帰還抵抗の配置手段の一例について説明する。
まず、図1におけるトランスコンダクタ部Gmの左側のカレントミラー部を簡略化した図5に示すように、トランジスタT11はダイオード接続をしており、トランジスタT1はトランスコンダクタンス部を兼ねている。ここでは、抵抗を簡単のためRin1、 Rout2とし、そのサイズをそれぞれRs_in1、及びRs_out1とする。
図6に示すように、抵抗サイズRs_out1は、カレントミラー比に応じて抵抗サイズRs_in1を並列接続して実現する。ここでは、カレントミラー比(n=4)の場合を示し、
Rs_out1=(1/4)*Rs_in1
を満たすべく、4つの抵抗サイズRs_in1を並列接続している。
次いで、本実施の形態における図1のカレントミラーを形成するための抵抗R1・R2・R8・R9の配置例は、図7に示すように、前記図6で示した抵抗サイズRs_out1及び抵抗サイズRs_out2に代えて、それぞれ4つの抵抗サイズRs_in1及び抵抗サイズRs_in2からなっている。同図に示すように、抵抗a1・a2(又は抵抗b1・b2)に接続する抵抗が、図1に示すように、トランジスタT11・T12(又はトランジスタT1・T2)に接続する。また、最も中心及び両サイドには、ダミー抵抗を配置している。ダミー抵抗の両端には、ショートして電位Vdが与えられる。本実施の形態では、ダミー抵抗製造工程における抵抗特性の劣化を回避し、左右対称構造を実現する配置となっている。
ここで、定電流源I1・I2の有無による前記図17で示した従来IQ直交ミキサであるイメージリジェクションミキサ120と、本実施の形態におけるIQ直交ミキサ回路20との電圧利得(Gain)及び線形性(IIP3)特性の比較を図8に示す。
同図によって、本実施の形態のIQ直交ミキサ回路20は、電圧利得(Gain)及び線形性(IIP3)のいずれも、従来のイメージリジェクションミキサ120を上回る特性を有することが分る。これは、定電流源I1・I2の除去による動作マージンの拡大と抵抗を多用することによる低歪化とが実現できたことによる。
電圧利得(Gain)及び線形性(IIP3)の各性能を満たす電流値が、本実施の形態のIQ直交ミキサ回路20では3.1mAのとき、従来のイメージリジェクションミキサ120では、4mA以上必要となる。したがって、低消費電力が実現できていることが分る。
次に、IQ相互干渉効果について、図9に基づいて説明する。なお、同図に示すIQ直交ミキサ回路30は、図1に示す本実施の形態のIQ直交ミキサ回路20を前記図14のイメージ抑圧ブロック100のように表現したものであり、特許文献3による図20の独立したミキサを2つ用いたものである。
上記独立したミキサ構成のIQ直交ミキサ回路30は、図10に示すように、IミキサとQミキサとにおいて、それぞれ電流量Issでスイッチを動作させるのに対し、前記IQ直交ミキサ回路20は、電流量2*Issをスイッチ部SW_Iとスイッチ部SW_Qとで切り替えて共用(IQ相互干渉)するため、スイッチ動作として3dB改善できることが分っている。
図10に示すデータは、抵抗R7a・R7bを調整し、電圧利得(Gain)をIQ直交ミキサ回路20と等しくなるように設定しているため、本実施の形態のIQ直交ミキサ回路20の方が、線形性(IIP3)において3dBuV程度改善できていることが分る。
一方、IQ相互干渉を利用する従来のイメージリジェクションミキサ120と本実施の形態のIQ直交ミキサ回路20及びIQ直交ミキサ回路30との比較においては、図11に示すように、独立した2つのミキサを利用するIQ直交ミキサ回路30の構成では、I_MIX、とQ_MIXとが完全に独立してミキシングするため、ローカル信号LOの位相誤差がそのまま出力IF信号の位相誤差となる。
一方、IQ相互干渉を利用する従来のイメージリジェクションミキサ120及び本実施の形態のIQ直交ミキサ回路20では、十分なLO強度があれば、5度の位相誤差を1.3度程度に圧縮する効果がある。また、従来のイメージリジェクションミキサ120と本実施の形態のIQ直交ミキサ回路20とにおける位相誤差圧縮性能は等しい。
このように、本実施の形態のIQ直交ミキサ回路20は、イメージリジェクション機能を有するLow−IF方式等の受信装置等に好適に用いられ、入力信号である高周波信号RFと、ローカル信号LOを乗算して周波数変換し、乗算結果として中間周波数信号IFを生成するに当たり、低消費電力、低歪、低ノイズ、素子数削減、配線の簡略化、電流源特性の改善、IQ直交ミキサ増幅特性の改善、IQ相互干渉を用いた位相誤差圧縮の向上、そして、イメージリジェクション比(IMRR)の改善を実現することができる。
また、本実施の形態では、ローカル信号LO間の干渉を利用して、ローカル信号LOにおける位相ずれを補正する従来のIQ直交ミキサにおいて、電流源を取り除き、抵抗を多用することによって、低歪、低ノイズ、低消費電力を実現している。
さらに、本実施の形態では、電流源を取り除くことにより、トランスコンダクタ部Gmが電流源トランジスタとしての役割を担うが、一般に、トランスコンダクタ部Gmのトランジスタの電圧電流変換利得gmがミキサ回路の中で最も大きいことを最大限利用し、抵抗と電圧電流変換利得gmとによる出力インピーダンス向上で電流源特性を安定化、低歪化、IQ相互干渉特性の改善を実現することができる。
また、本実施の形態では、スイッチ部とトランスコンダクタ部Gm(兼電流源カレントミラー部)に大別でき、抵抗により低歪を実現した状態で所望のカレントミラー比を実現できる。また、トランスコンダクタ部Gmは、カレントミラーを形成しているため、自己バイアス生成が可能であり、従来のバイアスと異なり、安定したDC動作電流をスイッチ部に供給することができる。
さらに、本実施の形態では、カレントミラーバイアスノードに、キャパシタ(容量)を介して高周波信号RFを供給する構成としているため、従来のように高周波信号RFによるトランスコンダクタ部Gmのエミッタ端子の電圧変動に起因する電流源特性の劣化を回避することができる。また、最もGND電位に近いノードをRF入力端とするので、他配線と交差回数の少ないレイアウトが容易になる。
また、本実施の形態では、電源電圧依存性の無いP−TAT電流を2つのダイオード接続トランジスタに供給するため、カレントミラーバイアス及びスイッチ部のDC動作電流を一定にでき、IF出力における振幅ばらつき等を回避できるほか、温度変化による利得の劣化を補償することができる。
さらに、本実施の形態では、第1〜4の出力負荷と並列にキャパシタ(容量)を具備し、さらに第1〜2及び第3〜4のIF出力信号配線間に高調波抑制キャパシタ(容量)を挿入することによって、I及びQの各出力IF信号におけるコモンモードノイズの低減、所望のIF帯域よりも十分大きい周波数の妨害波(高調波)を抑制することができる。
また、本実施の形態では、第1及び第2の抵抗と第1及び第2の電流源トランジスタの接続部間に、第5の抵抗を有することによって、電流源のないトランスコンダクタ差動対を形成し、電圧利得及び線形性の比率が第5の負帰還抵抗により調整可能となる。
さらに、本実施の形態では、第1及び第2のスイッチ部とトランスコンダクタ部Gmの接続部に第3及び第4の電流源を付加することによって、I、Q信号を扱うスイッチ部及びトランスコンダクタ部GmのDC動作電流をそれぞれ最適化できるため、IQ相互干渉による位相誤差圧縮効果をさらに高めることができる。
また、本実施の形態では、抵抗のレイアウト的な配置を考慮することによって、カレントミラーの精度を高め、抵抗のばらつきを略一様にできる。
これらにより、低消費電力で安定した位相誤差圧縮を可能とするIQ直交ミキサ回路20・30を実現することができる。
〔実施の形態2〕
本発明の他の実施の形態について図12及び図13に基づいて説明すれば、以下の通りである。なお、本実施の形態において説明すること以外の構成は、前記実施の形態1と同じである。また、説明の便宜上、前記の実施の形態1の図面に示した部材と同一の機能を有する部材については、同一の符号を付し、その説明を省略する。
本実施の形態のIQ直交ミキサ回路40は、図12に示すように、前記実施の形態1のIQ直交ミキサ回路30の構成に加えて、新たに第3及び第4の電流源としての定電流源I3・I4を追加したものとなっている。この改良は、前記特許文献4で開示されている図21に示すミキサ回路150にて用いているカレントパス(Current path)技術をIQ直交ミキサ回路30に応用したものである。
本実施の形態では、この定電流源I3・I4により、トランスコンダクタ部Gmとスイッチ部SW_I及びスイッチ部SW_QのDC動作電流を独立して最適化できる。スイッチ部SW_I及びスイッチ部SW_Qの電流を調整することによって、スイッチング特性が改善し、IQ相互干渉効果が高まる。
その効果は、図13に示すように、定電流源I3・I4に流れる電流量を、CP1=+α(uA)、CP0=0、CP2=−α(uA)の時のローカル信号LOの位相誤差(LO_I−LO_Q)に対する出力である中間周波数信号IFの位相誤差(IF_Q−IF_I)を示すと、CP1=+α(uA)の時、最も位相圧縮率が大きいことが分かる。
これは、スイッチ部SW_I及びスイッチ部SW_Qの電流が減少することによって、ON・OFF特性が改善したため、IQ相互干渉が顕著になるためである。
同様の効果を、ローカル信号LOの振幅を大きくすることによって、確認できる。つまり、ローカル信号LOの振幅を大きくする代わりに、カレントパスにて電流調整をすることによって、同様の位相圧縮率の改善を図ることが可能となる。
したがって、本実施の形態によるIQ直交ミキサ回路40によれば、ローカル信号LOにおける位相ずれを補正することによって、中間周波数信号IFの位相ずれを大幅に縮小し、かつ低消費電力・低歪化・素子数削減を実現することにより、高精度のイメージ抑圧を行う受信機を実現することができる。
なお、本実施の形態におけるIQ直交ミキサ回路40のトランジスタは、バイポーラトランジスタに限定されない。例えば、MOSトランジスタでも構成が可能である。しかしながら、MOSトランジスタの電圧電流変換利得gmが、バイポーラに比べ1/5〜1/10と低いため、バイポーラと同様の効果を得るためには、負帰還抵抗を5倍から10倍となってしまうことに留意する必要がある。
このように、本実施の形態のIQ直交ミキサ回路40では、第1及び第2のスイッチ部とトランスコンダクタ部Gmとの接続部に第3及び第4の電流源としての定電流源I3・I4が付加されている。
したがって、I・Q信号を扱うスイッチ部及びトランスコンダクタ部GmのDC動作電流をそれぞれ最適化できる。
なお、本発明は、上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。