JP4393723B2 - 人工関節摩擦摩耗試験機 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、人工関節摩擦摩耗試験機、特に、現実使用時の人工関節の動作を再現し、その摩擦、摩耗状態の試験を容易に行うことができる人工関節摩擦摩耗試験機の改良に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、人工関節に関する研究が進み、その実用化も順次行われている。人工関節とは、生体関節の損傷時等に、生体関節に代えて生体に埋め込む、人工物であり、生体に埋め込んでも拒絶反応等を起こさない材質、例えばチタン等の金属材料やポリエチレン等の樹脂材料で実際の関節を模して形成される。
【0003】
例えば、膝関節では、脛骨と大腿骨が膝関節によって接続されており、脛骨側がカップ形状を呈し、大腿骨側がボール形状を呈している。そして、ボール形状側がカップ形状側に填り込み、両者の係合面が相対的に摺動することにより、脛骨が大腿骨に対して曲がり、歩行や着席、正座等の動作を行うことができるようになっている。また、股関節においても、臼蓋骨側がカップ形状を呈し、骨頭側(大腿骨側)がボール形状を呈し、両者の相対的摺動により大腿骨の運動を実現している。
【0004】
前述したような人工関節は、低摩耗性の材料によって制作されているが、生体が本来持つ生体関節と比較すると、その摩耗スピードは10倍以上早い。そのため、人工関節を使用する前に、人工関節の摺動面の摩擦や摩耗に関する十分な検討、評価を行う必要がある。また、人工関節を埋め込む生体の体格や骨組織、筋組織等も個々に異なるため、使用に適した条件下での評価が必要になる。
【0005】
従来の人工関節の摩擦摩耗試験機は、人工関節を構成するカップ状部材(第1ピース)とボール状部材(第2ピース)とを一定の付勢力で接触させた状態で両者を相対移動させて、加速度的に摩擦試験や摩耗試験を行うものであった。例えば、図6には、股関節用の摩擦摩耗試験機100が示されている。この摩擦摩耗試験機100は、上部支持アーム102により人工関節のカップ側(第1ピース104)を支持し、股関節の臼蓋骨と骨頭との接合角度に基づく所定角度傾けた回転台106上に人工関節のボール側(第2ピース108)を固定している。そして、第2ピース108側を回転させることにより第1ピース104と第2ピース108との相対運動を実現し、摩擦及び摩耗の試験を行っている。
【0006】
また、図7には、膝関節用の摩擦摩耗試験機110の一例が示されている。摩擦摩耗試験機110の場合、上部支持アーム112に膝人工関節のボール側(第2ピース114)を支持し、下部傾斜台116上にカップ側(第1ピース118)を支持している。上部支持アーム112を上下に動作させることにより、下部傾斜台116が傾斜し、膝関節の屈曲状態を再現している。また、上部支持アーム112を所定角度回転させることにより、膝関節の捻り動作等も再現可能としている。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
生体関節の場合、靱帯等の軟部組織により制限を受けるものの、おおむね6自由度(3直交方向の変位及び3回転軸の回転)の運動を許容することができる。従って、人工関節においても、6自由度の運動が可能に構成されている。
【0008】
しかし、従来の人工関節の摩擦摩耗試験機は、人工関節の代表的な動作軸に関する動きを抽出して試験を行っている場合が多い。例えば、図6に示す股関節用の摩擦摩耗試験機100では、実際の股関節形状が球に近いこともあり、本来揺動を伴う動作であるべき股関節の動きを回転運動のみで代表して置き換えていた。すなわち、実際の関節動作とは異なる条件で、異なる動作に基づいて、人工関節の摩耗、摩擦評価を行っているのが現状であり、十分な評価が行われていないという問題がある。
【0009】
また、図7に示す膝関節用の摩擦摩耗試験機110では、比較的膝関節の動作に近い状態を再現可能であるが、可動範囲が実際の膝関節の可動範囲まで再現できなかったり、現実に膝関節が複雑に行う複合動作を再現できない等、完全な人工関節のシミュレーションが行われていないという問題がある。
【0010】
さらに、従来の代表動作軸抽出型の摩擦摩耗試験機においては、第1ピースと第2ピースとを付勢する付勢手段(例えばシリンダ等)の軸上に配置した歪みゲージ等の出力により人工関節に作用する力(摩擦力)を測定していたが、現実に、人工関節に作用する力は、6軸方向全てに作用しているため、人工関節に作用する圧力を正確に測定できていないという問題があった。
【0011】
また、各摩擦摩耗試験機は、人工関節毎の代表動作軸を抽出した専用機になるため、人工関節の摩擦摩耗試験の効率が低下すると共に、経済的にも不利であった。
【0012】
本発明は、上記課題に鑑みなされたものであり、現実使用時の各人工関節の動作を再現し、その時に生じる摩擦、摩耗状態の試験を容易かつ高精度に行うことのできる汎用型の人工関節摩擦摩耗試験機を提供することを目的とする。
【0013】
【課題を解決するための手段】
上記のような目的を達成するために、本発明は、ボール状部材と、当該ボール状部材と係合するカップ状部材とからなる人工関節の関節動作状態を再現して、関節部分の摩擦及び摩耗状態の試験を行う人工関節摩擦摩耗試験機であって、人工関節を構成するボール状部材またはカップ状部材の内のカップ状部材を第1ピースとして支持し、3直交方向の変位モーション及び3回転軸の回転モーションを含む6自由度モーションを第1ピースに付与可能な6自由度モーション機構と、人工関節を構成する他方の部材を第2ピースとして支持し、6自由度モーション機構の動作により任意の方向に変位する第1ピースに対して、第2ピースが所定圧力で接触するように加圧するサーボ加圧機構と、前記6自由度モーション機構とサーボ加圧機構とを制御して、前記第1ピースと第2ピースとを所定接触条件下で接触させつつ、両者間で6自由度相対運動を行わせる制御部と、前記第1ピースまたは第2ピースの少なくとも一方に対して、前記サーボ加圧機構による加圧方向に対して交差する方向の軸周りの回転モーションを付加することにより、前記第1ピースと第2ピースとの間に、前記6自由度モーション機構によって付与される回転モーション範囲以上のさらなる回転を生じさせ得る付加回転機構とを含み、前記制御部は、前記付加回転機構を併せて制御することを特徴とする。
【0014】
ここで、人工関節とは、膝関節、股関節、肘関節等、任意の関節を生体が拒絶反応を示さない金属や樹脂等で模したものであり、関節毎に形状は異なるが、ボール状部材とカップ状部材との組み合わせにより構成される。また、6自由度モーション機構とは、例えば独立駆動可能な伸縮アクチュエータにより構成され、3直交方向の変位モーション、すなわち前後、左右、上下の動きと、3回転軸の回転モーション、すなわちロール、ピッチ、ヨーの動きを各伸縮アクチュエータの組み合わせ動作により実現する3次元空間で、動作対象を任意の方向、任意の角度に動かすことのできる機構である。なお、伸縮アクチュエータの駆動源は、油圧、空圧、モータ等任意の駆動源でよく、所定のプログラムに従って制御部により制御される。また、サーボ加圧機構は、任意の方向に変位する第1ピースに対して、第2ピースを所定圧力で接触させる。すなわち、前記第1ピースと第2ピースとの接触圧力状態を常に所定の値に維持するようにサーボ制御が行われる。また、第1ピースと第2ピースとを所定接触条件下で接触させるとは、例えば、膝関節で歩行状態を再現しようとした場合、膝をのばした状態と膝を曲げた状態とでは、膝関節にかかる重量が変化する。この重量変化を関節の動作に応じて変化させながら第1ピースと第2ピースとを接触させることを意味している。
【0015】
この構成によれば、6自由度モーション機構により第1ピースに任意のモーションを付与できる。その結果、第1ピースと第2ピースとの任意の相対運動を実現し、現実の関節の6自由度動作を再現することができる。また、6自由度モーションを適宜選択することにより関節の種類に応じた関節動作を同一の試験機により実現することができる。
【0016】
上記のような目的を達成するために、本発明は、上記構成において、前記サーボ加圧機構は、空圧駆動であることを特徴とするとさらによい
【0017】
サーボ加圧機構を空圧駆動で動作させることにより、第1ピースに対する第2ピースの加圧動作は、空気の圧縮及び圧縮からの復帰の動作範囲内において、自動追従とすることができる。例えば、第1ピースと第2ピースの相対位置関係に摩耗や6自由度モーション機構の制御誤差やサーボ加圧機構の制御タイミングのずれ等により変位が生じた場合、その変位分を空気によるクッション作用により第1ピースと第2ピースの接触を適正状態に迅速に制御することができる。
【0018】
上記のような目的を達成するために、本発明は、上記構成において、前記第1ピースまたは第2ピースの少なくとも一方に対して、前記サーボ加圧機構による加圧方向に対して交差する方向の軸周りの回転モーションを付加することにより、前記第1ピースと第2ピースとの間に、前記6自由度モーション機構によって付与される回転モーション範囲以上のさらなる回転を生じさせ得る付加回転機構とを含み、前記制御部は、付加回転機構を併せて制御することを特徴とする。
【0019】
6自由度モーション機構を例えば伸縮アクチュエータの組み合わせ動作により実現する場合、その動作範囲、特に回転モーションは、伸縮アクチュエータの伸縮量により制限を受ける。しかし、膝関節等では、正座をするような場合を想定して、例えば140°の屈曲状態の再現も必要になる。そこで、接触する第1ピースまたは第2ピースの一方を他方に対して、強制的に回転させることにより、人工関節の大角度の屈曲も容易に再現している。
【0020】
上記のような目的を達成するために、本発明は、上記構成において、前記6自由度モーション機構が支持する第1ピースの下面側に、当該第1ピースが受ける圧力を負荷力作用点の6方向の力としてモニタする6軸力センサを有することを特徴とする。
【0021】
ここで、6軸力センサとは、例えば、6軸の歪みゲージで構成される。この構成によれば、負荷力作用点の6方向の力の計測ができる。つまり、6軸の力をセンシングすることで、予め計測しておいた人工関節形状より接触点を求め、垂直力と摩擦力に分力することができ、人工関節の任意の姿勢における摺動面の状態を正確に把握モニタすることが可能になる。
【0022】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の好適な実施の形態(以下、実施形態という)を図面に基づき説明する。
【0023】
図1には、本実施形態の人工関節摩耗摩擦試験機10の概略構成が示されている。人工関節摩耗摩擦試験機10は、試験機構本体部12と、当該試験機構本体部12に搭載された各アクチュエータやセンサの制御及び各種設定や演算、測定等を行う制御部14、試験機構本体部12の動作状態やその設定、センサによる検出値やその値から算出された情報等の表示を行うモニタ16及び、人工関節の試験に関する条件設定や各アクチュエータの動作設定等を行う入力部18等で構成されている。もちろん、制御部14、モニタ16、入力部18等をパーソナルコンピュータ等で一体構成にしてもよいし、試験機構本体部12に適宜組み込む構成としてもよい。
【0024】
図2(a)〜(c)には、人工関節摩耗摩擦試験機10で摩擦摩耗試験を行う人工関節の一例として膝の人工関節を脛骨20側及び大腿骨22側に装着した状態の使用概念図が示されている。図2(a)は、膝を伸ばした状態、図2(b)は、膝を僅かに曲げた状態、図2(c)は、膝を約90°曲げた状態が示されている。膝用の人工関節の場合、脛骨20側にカップ状部材である第1ピース24がビス24a等により固定され、大腿骨22側にボール状部材である第2ピース26がビス26a等により固定される。この第1ピース24や第2ピース26は、生体から拒絶反応を受けず、また、低摩耗性の金属や樹脂等で形成されている。例えば、第1ピース24はポリエチレンで形成され、第2ピース26はチタンで形成される。そして、膝用の人工関節は第1ピース24及び第2ピース26とが互いに摺動することにより膝の屈曲動作をスムーズに実現する。
【0025】
本実施形態の人工関節摩耗摩擦試験機10で試験を行う場合、第1ピース24及び第2ピース26のそれぞれの摺動面(接触面)を露出させた状態で、それぞれの専用ホルダに納められ、人工関節摩耗摩擦試験機10にセットされることになる。
【0026】
図3には、試験機構本体部12の正面図、図4には、試験機構本体部12の側面図の詳細が示されている。試験機構本体部12は、大別して、下部の6自由度モーション機構28、上部のサーボ加圧機構30、中間部の付加回転機構32とで構成されている。本実施形態の場合、6自由度モーション機構28が専用ホルダ34に納められた第1ピース24を支持し、サーボ加圧機構30が専用ホルダ36に納められた第2ピース26を支持している。
【0027】
図3、図4に示すように、6自由度モーション機構28は、固定ベース38上に配置された独立駆動可能な伸縮アクチュエータ40(図3、図4は図の簡略化のため伸縮アクチュエータ40は1台のみ図示し、他は、中心線のみで表現している)と、各伸縮アクチュエータ40により支持される可動ベース42で構成されている。なお、各伸縮アクチュエータ40は、固定ベース38及び可動ベース42に対してナックルジョイント40a等の接続手段によりフリーの状態で接続されている。そして、各伸縮アクチュエータ40の伸縮動作の組み合わせにより、可動ベース42を3直交方向の変位モーション、すなわち、左右方向(X軸方向)、前後方向(Y軸方向)、上下方向(Z軸方向)、及び3回転軸の回転モーション、すなわち、ロール(θX)、ピッチ(θY)、ヨー(θZ)の6自由度モーションで任意の方向に移動させている。各伸縮アクチュエータ40は、例えば油圧シリンダで構成され、制御部14からの制御に基づき所定の駆動パターンで動作する。なお、各伸縮アクチュエータ40は、図5に示すように、略V字状に配置している。この場合、伸縮アクチュエータ40が固定ベース38上で形成するピッチサークル38aより可動ベース42上で形成するピッチサークル42aの方を小さくすることにより、安定的かつ正確な6自由度モーションを実現することができる。また、実質的に6本にシリンダにより可動ベース42を支持するリンク機構を構成することになるので、リンクとしての高剛性を確保することができる。その結果、後述するように、サーボ加圧機構30により加圧された時でも、試験機としての撓みを良好に防止することが可能であり、摩擦力検出時や各種制御時の誤差を確実に排除することができる。
【0028】
6自由度モーション機構28の可動ベース42上には、6軸力センサ44が配置されている。この6軸力センサ44は、6軸の歪みゲージで構成され、その上面に、前述した専用ホルダ34に収納された第1ピース24が積載される。その結果、人工関節の任意の姿勢における摺動面の垂直力と接線力を正確に把握し、モニタすることが可能になる。
【0029】
このように、第1ピース24は、6自由度モーション機構28の動作により、3直交方向の変位モーション及び3回転軸の回転モーションを含む6自由度モーションで任意の方向に運動することができる。
【0030】
一方、6自由度モーション機構28が配置されるガントリーフレーム46の上部プレート48からは、サーボ加圧機構30が吊り下げられている。本実施形態において、サーボ加圧機構30は、空圧駆動の空圧シリンダ50で構成されることが好ましい。この空圧シリンダ50は一端(シリンダ側)が上部プレート48に、ナックルジョイント52等の変位自在な継ぎ手により支持され、他端(ロッド50a側)が可動フレーム54に接続されている。この可動フレーム54は、図4に示すように、ガントリーフレーム46に固定されたリニアガイド56によりZ軸方向(図中上下方向)に移動自在に支持されている。さらに、この可動フレーム54には、第2ピース26を納めた専用ホルダ36を支持する支持ブロック58が設けられている。本実施形態の場合、支持ブロック58は、可動フレーム54に固定されたブラケット58aに回動自在にシャフト58bが支持される構成になっている。このシャフト58bに前記専用ホルダ36が固定されている。従って、空圧シリンダ50が伸張動作を行うことにより、可動フレーム54と共に、専用ホルダ36が下降する。つまり、図4に示すように、専用ホルダ36に摺動面を露出させた状態で収納されている第2ピース26は、同様に摺動面を露出させた状態で専用ホルダ34に収納されている第1ピース24に付勢される。この時、空圧シリンダ50は、6自由度モーション機構28と共に制御部14により制御され、6自由度モーション機構28の動作により任意の方向に変位する第1ピース24に対して、第2ピース26が所定圧力で接触するように加圧する。つまり、例えば、膝関節で歩行状態を再現しようとした場合、膝をのばした状態と膝を曲げた状態とでは、膝関節にかかる重量が変化するが、その重量変化を関節の動作に応じて変化させながら第1ピースと第2ピースとを接触させることが可能になる。
【0031】
ここで、サーボ加圧機構30に空圧シリンダ50を使用する場合、例えば、第1ピース24や第2ピース26に摩耗が生じた場合や、制御部14の制御に誤差が生じた場合、第1ピース24と第2ピース26との間に隙間が生じる。この様な場合、第1ピース24と第2ピース26との摺動動作がスムーズに行われなかったり、両者が周期的に衝突し合うノッキングを起こしたりする。その結果、第1ピース24と第2ピース26とが互いに大きな衝撃を受け、破損したり、変形したりしてしまう場合がある。この時、サーボ加圧機構30の駆動源として油圧シリンダやモータを使用した場合、加圧制御量に遊びがなので、ノッキング等が発生した場合、大きな負荷荷重が接触面にかかり、大きな衝撃力となり破損や変形の可能性が高くなる。一方、空圧シリンダ50を使用する場合、空気の圧縮および圧縮からの復帰動作により第1ピース24や第2ピース26に摩耗が生じた場合や、制御部14の制御に誤差が生じ、第1ピース24と第2ピース26との間に隙間が生じるような場合でも、空気のクッション作用により速やかにその隙間を埋める方向に追従動作を行い、前述のような破損や変形を未然に確実に防止することができる。
【0032】
本実施形態においては、前記可動フレーム54は、図3に示すように、X軸方向に変位動作を行い専用ホルダ36、つまり第2ピース26にθYの回転モーションを発生させる付加回転機構32が配置されている。この付加回転機構32は、油圧シリンダ、空圧シリンダ、モータ等任意の駆動源で構成され、制御部14により6自由度モーション機構28やサーボ加圧機構30等と共に連動動作する。本実施形態の場合、付加回転機構32は、空圧シリンダ60で構成され、可動フレーム54には、ナックルジョイント62等の可動支持手段によって支持され、ロッド60aには、リンクプレート64が回動自在に設けられている。そして、このリンクプレート64が前記シャフト58bに固定されている。従って、空圧シリンダ60が伸縮動作を行うことにより、リンクプレート64を回転駆動し、シャフト58bをθY方向に回転させる。その結果、専用フォルダ36、つまり第2ピース26を第1ピース24に対して大きく回転させることができる。このθY方向の回転モーションにより、6自由度モーション機構28で変位可能な人工関節の角度(例えば、図2(b)の角度)よりさらに大きな角度、つまり、図2(c)で示すような、90°や、さらに大きな角度(例えば、140°)に人工関節を屈曲させることができる。なお、股関節のように動作角度があまり大きくない人工関節の試験を行う場合には、6自由度モーション機28による6自由度動作のみで、所望の動作角度が得られるので、付加回転機構32は使用する必要はない。従って、付加回転機構32は、可動フレーム54に対して容易に着脱できる構造にしたり、可動フレーム54上で、非使用位置に固定できる構造にすることが好ましい。このように、6自由度モーション機構28、サーボ加圧機構30、付加回転機構32との組み合わせにより、第1ピース24と第2ピース26との相対運動を任意のパターンに従って実現することが可能になり、様々な動きを行う人工関節の現実動作の実現が可能になり、人工関節摩耗摩擦試験機10の汎用性を向上することができる。
【0033】
次に、上述のように構成される人工関節摩耗摩擦試験機10の試験方法について説明する。本実施形態の人工関節摩耗摩擦試験機10は、人工関節が実際に生体に装着された状態を再現して摩擦、摩耗試験を行うことができる。この場合、まず、第1ピース24の摺動面を露出させた状態で専用ホルダ34にビス等で固定する。同様に、第2ピース26の摺動面を露出させた状態で専用ホルダ36にビス等で固定する。そして、図3、図4に示すように、専用ホルダ34を6自由度モーション機構28にセットし、専用ホルダ36をサーボ加圧機構30にセットする。また、膝関節等屈曲角度の大きな人工関節を試験する時には、付加回転機構32を使用可能状態にセットする。
【0034】
ところで、実際に、人工関節を生体に装着して使用する場合、人工関節は体液等の潤滑液に相当するものの中で動作することになる。従って、人工関節の正確な摩耗、摩擦を観察するために、本実施形態では、専用ホルダ34,36に生理食塩水等の潤滑液を保持できる構造を付加し、常時第1ピース24と第2ピース26との接触面やその周囲に潤滑液が供給できる構造になっている。なお、潤滑液の供給手段は、適宜選択可能であり、専用ホルダ34,36の周囲にカップを配置したり、専用ホルダ34,36自体に保持空間を設けたりすることができる。また、ノズル等を用いて供給してもよい。
【0035】
そして、制御部14に対して、入力部18等を介して、所望の関節動作パターンを入力し、関節動作の再現を開始する。試験を行う場合、6自由度モーション機構28は、制御部14の制御により所定のプログラムにより、6自由度動作を行い、第1ピース24を第2ピース26に対して相対移動させる。一方、サーボ加圧機構30も制御部14により、第2ピース26を第1ピース24に所定圧力で押圧するように制御される。この時、サーボ加圧機構30の空圧シリンダ50は、可動フレーム54や付加回転機構32等の試験機自体の重量が第1ピース24に付加されないように、当該重量を相殺するように、可動フレーム54や付加回転機構32等を引き上げ制御しながら、実際に人工関節の動作に応じた荷重のみが発生するように制御される。例えば、膝関節が延びた状態と、屈曲した状態では、膝関節にかかる荷重は、大きく変化する。従って、歩行状態の荷重パターンを正確に制限するように、空圧シリンダ50が制御される。
【0036】
本実施形態の人工関節摩耗摩擦試験機10では、例えば、6自由度モーション機構28の3回転軸の回転モーション、すなわち、ロール(θX)、ピッチ(θY)、ヨー(θZ)の動作により、単純に、第1ピース24が第2ピース26に対して回転する動作を再現できる他、3直交方向の変位モーション、すなわち、左右方向(X軸方向)、前後方向(Y軸方向)、上下方向(Z軸方向)により、第1ピース24が第2ピース26に対してスライドする動作も再現できる。このスライド動作は、現実の生体関節が靱帯等の軟組織によって保持され、外力に応じて、スライド可能であることを考慮したものである。また、前述したように、付加回転機構32を動作させることにより、第2ピース26を第1ピース24に対して大きく回転させることが可能であり、人工関節の大きな屈曲状態の再現も可能である。これらの回転動作やスライド動作、大きな屈曲動作の再現を制御部14の制御により連続的に行うことにより、人工関節の摩擦、摩耗試験及び耐久試験を容易かつ高精度で行うことができる。なお、回転動作やスライド動作、大きな屈曲動作の再現時に人工関節が受ける圧力変化は、6軸力センサ44により検出され、制御部14で解析されモニタ16上に表示される。この時、前述したように、空圧シリンダ50により、試験機自体の重量は相殺されている。また、6自由度モーション機構28が6台の伸縮アクチュエータ40で構成され、高い機械剛性を有しているので、試験機構造及び試験機器動作に基づく、負荷変動(撓みや捻れ等)が十分に排除することができるので、6軸力センサ44は人工関節に作用する力を正確に検出することができる。
【0037】
なお、人工関節の動作試験、すなわち、第1ピース24と第2ピース26との接触状態等の観察を行う場合、図3、図4に示すように、6自由度モーション機構28及びサーボ加圧機構30は、上下分離配置され、第1ピース24と第2ピース26との接触部周辺には、僅かなリンク等の構成部材が存在するのみの開放空間を形成しているので、第1ピース24と第2ピース26との接触部の観察を容易に行うことができる。なお、この場合、前述した潤滑液の供給が必要ない場合が多いので、第1ピース24と第2ピース26の周辺に供給手段が存在する場合には、これを着脱自在な構成にすることが望ましい。また、本実施形態では、カップ状部材を第1ピースとして、6自由度モーション機構28に支持し、ボール状部材を第2ピースとして、サーボ加圧機構30に支持する構成を示したが、カップ状部材とポール状部材を逆に支持する構成にしてもよい。また、本実施形態では、付加回転機構32でサーボ加圧機構30に支持された専用ホルダを回転させる構成を示したが、6自由度モーション機構28側が支持する専用ホルダを回転させる構成としてもよいし、必要に応じて、両方を回転させる構成としてもよい。
【0038】
本実施形態においては、人工関節の一例として、膝関節、股関節等を例示したが、6自由度モーション機構28及びサーボ加圧機構30、付加回転機構32の協働により、任意の関節動作の再現が可能であり、同一構成の試験機により任意の人工関節の試験が可能であり、本実施形態と同様な効果を得ることができる。また、図3、図4に示した試験機構造は、一例であり、上述した6自由度モーション機構28、びサーボ加圧機構30、付加回転機構32等と同等に動作が可能であれば、その機構構造は適宜選択可能であり、本実施形態と同様な効果を得ることができる。
【0039】
【発明の効果】
本発明によれば、6自由度モーション機構により第1ピースに任意の6自由度モーションを付与できる。また、サーボ加圧機構により第2ピースを第1ピースに対して所定接触条件下で接触さる。その結果、第1ピースと第2ピースとが現実使用状態と同じ状態で接触し、かつ任意の相対運動を実現し、現実の関節の6自由度動作を再現し摩擦摩耗試験を行うことができる。また、6自由度モーションを適宜選択することにより関節の種類に応じた関節動作を同一の試験機により実現することが可能になり、試験機の汎用性を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の実施形態に係る人工関節摩耗摩擦試験機の概略構成を説明する説明図である。
【図2】 本発明の実施形態に係る人工関節摩耗摩擦試験機で摩擦摩耗試験を行う人工関節の一例として示した膝関節であり、関節を伸ばした状態、僅かに曲げた状態、大きく屈曲させた状態を説明する説明図である。
【図3】 本発明の実施形態に係る人工関節摩耗摩擦試験機の試験機構本体部の正面図の詳細を示す説明図である。
【図4】 本発明の実施形態に係る人工関節摩耗摩擦試験機の試験機構本体部の側面図の詳細を示す説明図である。
【図5】 本発明の実施形態に係る人工関節摩耗摩擦試験機の6自由度モーション機構の伸縮アクチュエータの配置状態を説明する説明図である。
【図6】 従来の股関節用の摩擦摩耗試験機の概略構成を説明する説明図である。
【図7】 従来の膝関節用の摩擦摩耗試験機の概略構成を説明する説明図である。
【符号の説明】
10 人工関節摩耗摩擦試験機、12 試験機構本体部、14 制御部、16モニタ、18 入力部、24 第1ピース(カップ状部材)、26 第2ピース(ボール状部材)、28 6自由度モーション機構、30 サーボ加圧機構、32 付加回転機構、34,36 専用ホルダ、40 伸縮アクチュエータ、44 6軸力センサ、50,60 空圧シリンダ、54 可動フレーム。

Claims (3)

  1. ボール状部材と、当該ボール状部材と係合するカップ状部材とからなる人工関節の関節動作状態を再現して、関節部分の摩擦及び摩耗状態の試験を行う人工関節摩擦摩耗試験機であって、
    人工関節を構成するボール状部材またはカップ状部材のいずれか一方を第1ピースとして支持し、3直交方向の変位モーション及び3回転軸の回転モーションを含む6自由度モーションを第1ピースに付与可能な6自由度モーション機構と、
    人工関節を構成する他方の部材を第2ピースとして支持し、6自由度モーション機構の動作により任意の方向に変位する第1ピースに対して、第2ピースが所定圧力で接触するように加圧するサーボ加圧機構と、
    前記6自由度モーション機構とサーボ加圧機構とを制御して、前記第1ピースと第2ピースとを所定接触条件下で接触させつつ、両者間で6自由度相対運動を行わせる制御部と、
    前記第1ピースまたは第2ピースの少なくとも一方に対して、前記サーボ加圧機構による加圧方向に対して交差する方向の軸周りの回転モーションを付加することにより、前記第1ピースと第2ピースとの間に、前記6自由度モーション機構によって付与される回転モーション範囲以上のさらなる回転を生じさせ得る付加回転機構とを含み、
    前記制御部は、前記付加回転機構を併せて制御すること
    を特徴とする人工関節摩擦摩耗試験機。
  2. 請求項1記載の試験機において、前記サーボ加圧機構は、空圧駆動であることを特徴とする人工関節摩擦摩耗試験機。
  3. 請求項1又は請求項2のいずれかに記載の試験機において、前記6自由度モーション機構が支持する第1ピースの下面側に、当該第1ピースが受ける圧力を負荷力作用点の6方向の力としてモニタする6軸力センサを有することを特徴とする人工関節摩擦摩耗試験機。
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