JP4393171B2 - クロマチン機能調節因子 - Google Patents

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Description

本発明は,ヒストンをリン酸化する酵素活性(NHK活性)を有するタンパク質およびこのタンパク質をコードする遺伝子,ならびにこれらのタンパク質および遺伝子の応用に関する。
クロマチンとよばれるDNA高次構造は,遺伝情報を真核細胞の核内に折りたたみ,さらに遺伝子を正確に発現させるために巧妙に調節されている。クロマチン構造の最小単位はヌクレオソームで,2つのヒストンH2A, H2Bの2量体と,1つのヒストンH3, H4の4量体で構成されるコアヒストン8量体からなり,その回りを146bpのDNAが1.75回転,左巻きに巻いている (Ito T, Nucleosome assembly and remodeling. Curr Top Microbiol Immunol 2003, 274:1-22.) 。ヌクレオソーム構造は細胞増殖や遺伝子発現調節の際に,再構築を起すことが知られている。ヌクレオソームの再構築には,再構築因子と呼ばれる一群のタンパク質に加えて,タンパク質キナーゼ,ヒストンアセチル化酵素,脱アセチル化酵素やメチル化酵素がヒストンのリン酸化,アセチル化,メチル化の状態を変化させることで寄与すると考えられている。ヒストンのリン酸化については,これまでにCdk1/Cyclin BによるヒストンH1のリン酸化やAurora-BキナーゼによるヒストンH3のリン酸化,あるいはATMによるヒストンH2AXのリン酸化が報告されている。Aurora-BキナーゼによるヒストンH3のリン酸化は細胞周期のM期における染色体凝集に,ATMによるヒストンH2AXのリン酸化はアポトーシスの誘導に関与している。その他にもヒストンH2BやH4のリン酸化がアポトーシスの際に更新するという報告もある。これらは,細胞増殖にヒストンのリン酸化状態が深く関わっていることを示している。
本発明に関連する先行技術文献情報としては以下のものがある。
WO98/29552
本発明は,クロマチン機能の調節に関与する新規な因子を提供することを目的とする。
本発明者らは,ヌクレオソーム中のヒストンをリン酸化する酵素(Nucleosomal Histone Kinase)をショウジョウバエより見出し,NHK-1と命名した。NHK-1はショウジョウバエヒストンH2A のC末端119番目のトレオニンをクロマチン構造依存的にリン酸化する新規の因子である。さらに,このリン酸化部位は種間で保存され,酵母を用いた実験によりこの部位が細胞増殖に重要な役割を果たすこと,およびヒト癌組織においてこの部位が高率にリン酸化されていることが明らかとなった。
1つの観点においては,本発明は,配列番号1に記載のアミノ酸配列からなるタンパク質を提供する。本発明はまた,配列番号1に記載のアミノ酸配列において1もしくは複数のアミノ酸が置換,欠失,挿入および/もしくは付加したアミノ酸配列からなり,ヒストンH2Aをリン酸化する活性を有するタンパク質を提供する。本発明はまた,配列番号2に記載の塩基配列からなるDNAと高ストリンジェンシー条件下でハイブリダイズするDNAによりコードされるタンパク質であって,ヒストンH2Aをリン酸化する活性を有するタンパク質を提供する。
別の観点においては,本発明は,上述の本発明のタンパク質をコードするDNAを提供する。好ましくは,このDNAは配列番号2に記載の塩基配列を有する。本発明はまた,本発明のDNAと70%以上の同一性を有し,かつヒストンH2Aをリン酸化する活性を有するタンパク質をコードするDNAを提供する。
さらに別の観点においては,本発明は,上述の本発明のDNAが挿入されたベクター,ならびに上述の本発明のDNAを発現可能に保持する形質転換体を提供する。本発明はまた,この形質転換体を培養する工程を含む,本発明のタンパク質を製造する方法を提供する。
別の観点においては,本発明は,上述の本発明のDNAと高ストリンジェンシー条件下でハイブリダイズし,少なくとも15ヌクレオチドの鎖長を有するDNAを提供する。
さらに別の観点においては,本発明は,上述の本発明のタンパク質に結合する抗体を提供する。好ましくは,この抗体はヒストンH2Aのリン酸化ペプチドに結合し,リン酸化部位は,ショウジョウバエヒストンH2Aの119Thr, 哺乳動物ヒストンH2Aの120Thr,ツメガエルヒストンH2Aの120Thr,線虫ヒストンH2Aの121Thr,酵母ヒストンH2Aの121Serからなる群より選択される。
また別の観点においては,本発明は,上述の本発明のタンパク質に結合する化合物をスクリーニングする方法を提供する。この方法は,(a)前記タンパク質と被検化合物とを接触させる工程,および(b)前記タンパク質に結合する活性を有する化合物を選択する工程を含む。
さらに別の観点においては,本発明は,上述の本発明のタンパク質の活性を促進または阻害する化合物をスクリーニングする方法を提供する。この方法は,(a)被検化合物の存在下または非存在下で前記タンパク質とヒストンH2Aとを接触させる工程,(b)前記タンパク質のキナーゼ活性を測定する工程,および(c)被検化合物の存在下および非存在下におけるキナーゼ活性を比較することにより,キナーゼ活性を促進または阻害する化合物を選択する工程を含む。
別の観点においては,本発明は,上述の本発明のタンパク質を含む,該タンパク質に結合する化合物または該タンパク質の活性を促進もしくは阻害する化合物をスクリーニングするためのキットを提供する。また別の観点においては,本発明は,上述の本発明のタンパク質のキナーゼ活性を阻害する化合物を含有する医薬組成物,および細胞内において上述の本発明のDNAの発現を阻害する化合物を含有する医薬組成物を提供する。好ましくは,この医薬組成物は抗癌剤である。
本発明は,第一に,クロマチン機能及び細胞増殖の調節に関与するショウジョウバエ由来の新規なタンパク質に関する。本発明のタンパク質に含まれる「NHK-1」と命名されたショウジョウバエ由来のタンパク質のアミノ酸配列(配列番号1)を図1に,該タンパク質をコードするcDNAの配列(配列番号2)を図2に示す。
本発明のタンパク質は,遊離のヒストンはリン酸化しないがクロマチン構造をとったヒストンH2Aのみをリン酸化する。リン酸化部位はショウジョウバエヒストンH2AのC末端119Thrであった。このリン酸化部位は種間で保存され,図5に示されるように,ショウジョウバエ119Thrは哺乳動物120Thr,ツメガエル120Thr,線虫121Thr,酵母121Serに相当する。
さらに,ショウジョウバエNHK-1アミノ酸配列との相同性より,Human vaccinia related kinase1(VRK-1), mouse VRK-1 (GenBankAAH16676), Xenopus VRK (GenBank AAH41230), C.elegans VRK(2G213)などがNHK-1ホモログである可能性がある。NHK-1とヒトVRK-1またはマウスVRK-1はそれぞれ39.1%,38.1%のアミノ酸が一致している。VRK-1はヒト胎児肝臓において特異的に発現している遺伝子として同定されたものであり,ワクシニアウイルスのB1R Ser/Thr タンパク質キナーゼと相同性を持つリン酸化酵素である(WO98/29552)。しかし,この酵素がヒストンをリン酸化する機能すなわちNHK活性を有することは知られていなかった。
本発明のタンパク質NHK-1は,当業者に公知の方法により,遺伝子組換え技術を用いて調整することが可能である。組換えタンパク質であれば,例えば,本発明のタンパク質をコードするDNA(例えば,配列番号2に記載の塩基配列を有するDNA)を適切な発現ベクターに組み込み,これを宿主細胞に導入して得た形質転換体から精製するなどの方法により調整することが可能である。また,天然のタンパク質であれば,例えば,調整した組み換えタンパク質を小動物に免疫することにより得た抗体を固定したカラムを調整し,本発明のタンパク質の発現する組織もしくは細胞の抽出物に対し該カラムを用いたアフィニティークロマトグラフィーを行うなどの方法により調整することが可能である。
また,本発明は,「NHK-1」タンパク質と機能的に同等なタンパク質に関する。このようなタンパク質を単離するための方法としては,タンパク質中のアミノ酸に変異を導入する方法が当業者にはよく知られている。当業者に公知のアミノ酸を改変する方法としては,例えば,文献「新細胞工学実験プロトコール 東京大学医科学研究所 制癌研究部編 p241-248」に記載の方法が挙げられる。また,市販の「QuickChange Site-Directed Mutagenesis Kit」(ストラタジーン社製)を利用して,配列番号1に示された「NHK-1」タンパク質において,その機能に影響を与えないアミノ酸を適時置換することにより,「NHK-1」タンパク質と機能的に同等なタンパク質を単離することは通常行いうる事である。また,アミノ酸の変異は自然界においても生じることもある。このように「NHK-1」タンパク質(配列番号1)中のアミノ酸配列において1もしくは複数のアミノ酸が置換,欠失,挿入および/もしくは付加されたアミノ酸配列を有し,「NHK-1」タンパク質と機能的に同等なタンパク質も本発明のタンパク質に含まれる。
ここで「機能的に同等」とは,タンパク質が天然型の「NHK-1」タンパク質と同等のキナーゼ活性を有すること,すなわちショウジョウバエヒストンH2Aの119Thrもしくは他の種のヒストンH2A中のこのトレオニンに相当するアミノ酸をリン酸化する活性を有することを指す。本発明において「キナーゼ活性」とは,リン酸基(-PO3H2)を基質タンパク質のセリン,スレオニンあるいはチロシン残基に転移させ,リン酸化タンパク質を生ずる活性を指す。タンパク質のキナーゼ活性は当該技術分野においてよく知られる方法のいずれかを用いて検出することができる。例えば,γ32P-ATPの存在下にキナーゼと基質とを反応させた後,SDSゲル電気泳動,スピンクロマトグラフィー等により未反応ATPを分離し,イメージングプレートまたはガンマカウンター等を用いて放射性活性を検出することにより測定することができる。「NHK-1」タンパク質と機能的に同様なタンパク質において変異するアミノ酸の数は,「NHK-1」タンパク質と同等のキナーゼ活性を保持する限り特に制限はない。通常,50アミノ酸以内であり,好ましくは20アミノ酸以内であり,さらに好ましくは10アミノ酸以内であり,さらに好ましくは5アミノ酸以内である。また,変異部位は,「NHK-1」タンパク質と同等のキナーゼ活性を保持する限り,いかなる部位でも良い。
また,機能的に同等なタンパク質を単離するための他の方法としては,ハイブリダイゼーション技術(例えば,Sambrook, J et al., Molecular Cloning 2nd ed.9.47-98, 58, Cold Spring Harbor Lab. Press, 1989参照)を利用する方法が当業者には知られている。即ち,当業者であれば,「NHK-1」タンパク質をコードするDNA(配列番号2)もしくはその一部を基に,ヒト以外の哺乳動物からこれと相同性の高いDNAを単離して,該DNAから「NHK-1」タンパク質と機能的に同等なタンパク質を得ることも通常行いうることである。このように「NHK-1」タンパク質をコードするDNAとハイブリダイズするDNAがコードするタンパク質であって,「NHK-1」タンパク質と機能的に同等なタンパク質もまた本発明のタンパク質に含まれる。機能的に同等なタンパク質を単離するための生物としては,ヒト以外に,例えば,マウス,ラット,イヌ,ウサギ,サルなどの哺乳動物が挙げられる。これらヒト以外の哺乳動物由来のタンパク質は,例えば,医薬品開発などのための動物モデル系の開発に有用である。機能的に同様なタンパク質をコードするDNAを単離するための高ストリンジェンシーのハイブリダイゼーション条件は,例えば,10%ホルムアミド,5%SSPE, 1xデンハルト溶液,1xサケ精子DNAの条件であり,さらに好ましい条件(さらに高ストリンジェントな条件)としては,25%ホルムアミド,5xSSPE, 1xデンハルト溶液,1xサケ精子DNAの条件である。但し,ハイブリダイゼーションのストリンジェンシーに影響する要素としては上記ホルムアミド濃度以外にも複数考えられ,当業者であればこれら要素を適宜選択することで同様のストリンジェンシーを実現することが可能である。又,ハイブリダイゼーションにかえて,「NHK-1」タンパク質をコードするDNA(配列番号2)の一部をプライマーに用いる遺伝子増幅法,例えば,PCR法を利用して単離することも可能である。
これらハイブリダイゼーション技術または遺伝子増幅技術により単離される「NHK-1」タンパク質と機能的に同等なタンパク質をコードする哺乳類動物由来のDNAは,通常,配列番号2に記載のショウジョウバエ由来の「NHK-1」タンパク質をコードするDNAと高い相同性を有する。高い相同性とは,少なくとも70%以上,好ましくは80%以上,さらに好ましくは90%以上,さらに好ましくは95%以上の配列の同一性を指す。相同性の算出には,例えば文献(Proc.Natl.Acad.Sci.USA 80:726,1983)に記載の方法を用いることができる。
別の態様においては,本発明は,上記発明のタンパク質をコードするDNAに関する。本発明のDNAとしては,本発明のタンパク質をコードしうるものであれば特に制限はなく,cDNA,ゲノムDNA,化学合成DNAなどが含まれる。本発明のDNAは,当業者に通常利用される方法,例えば,配列番号2に開示された塩基配列の一部もしくは全部をプローブとして利用するcDNAライブラリーやゲノムライブラリーのスクリーニング,あるいは塩基配列の一部もしくは全部をテンプレートとして利用するPCR法により単離することが可能である。
本発明のDNAは,例えば,上記本発明のタンパク質を組み換えタンパク質として量産する目的に利用しうる。組み換えタンパク質の製造においては,本発明のタンパク質をコードするDNA(例えば,配列番号2に記載のDNA)を適当な発現ベクターに挿入し,該ベクターを適当な細胞に導入して得た形質転換体を培養し,発現させたタンパク質を精製する。組み換えタンパク質の生産に用いる宿主―ベクター系としては,当業者に公知の多くの系を用いることが可能である。宿主細胞としては,特に制限されないが,例えば,大腸菌,酵母,動物細胞,昆虫細胞などが挙げられる。細胞内で組み換えタンパク質を発現させるためのベクターは,宿主細胞に応じて変えられるが,例えば,大腸菌であればpGEX(ファルマシア社製),pET(ノバーゲン社製)が好適に用いられ,動物細胞であればpcDNA3.1(インビトロゲン社製)が好適に用いられ,昆虫細胞であればBac-to-Bac baculovirus expression system(ギブコBRL社製)が好適に用いられる。細胞へのベクターの導入は,当業者に公知の方法,例えば,電気的穿孔法,リン酸カルシウム法,リポフェクション法,DEAEデキストラン法などの方法で行うことが可能である。形質転換体の培養,および形質転換体に発現させた組み換えタンパク質の分離,精製は,常法により行うことが可能である。ベクターとしては,例えば,pGEX(ファルマシア社製)を用いた場合にはグルタチオンセファロースアフィニティークロマトグラフィーにより,またpET(ノバーゲン社製)を用いた場合にはニッケルアガロースアフィニティークロマトグラフィーにより発現させた組み換えタンパク質(融合タンパク質)を容易に精製することができる。
また,本発明のDNAは,遺伝子治療への応用も考えられる。本発明のDNAは,細胞増殖の調節に関与しているため,特に癌などの増殖性疾患などが遺伝子治療の主な対象疾患である。本発明のDNAを遺伝子治療目的で利用する場合には,本発明のDNAをヒト体内で発現させるためのベクターに組み込み,例えば,レトロウィルス法,リポソーム法,アデノウィルス法などを用いて,in vivoまたはex vivo投与することにより体内に導入する。
別の態様においては,本発明のタンパク質に結合する抗体およびリン酸化ヒストン H2Aすなわちショウジョウバエ119Thr, 哺乳動物120Thr,ツメガエル120Thr,線虫121Thr,酵母121Serのリン酸化に対する部位特異的な抗体に関する。NHK1のキナーゼ活性により生ずるリン酸化ヒストンH2A,すなわち図5の矢印で示される,ショウジョウバエ119Thr, 哺乳動物120Thr,ツメガエル120Thr,線虫121Thrまたは酵母121Serの部分にリン酸化を導入したペプチドに対してそれぞれ特異性を有する抗体を作製することにより,NHK-1のキナーゼ活性を検出することおよび阻害することが可能である。本発明の抗体の形態には,特に制限はなく,ポリクローナル抗体およびモノクローナル抗体が含まれる。また,キメラ抗体,ヒト型抗体,およびヒト抗体などの抗体を含む。さらに,完全な形態の抗体のみならず,Fab断片,F(ab')2断片,シングルチェインscFvなどを含む。本発明の抗体は当業者に公知の方法で作製することができる。ポリクローナル抗体であれば,例えば,本発明のタンパク質または図5の矢印で示した部分のリン酸化ペプチドをウサギなどに注入し,硫安沈殿によりイムノグロブリン画分を精製するなど公知の方法で調整することが可能である。また,モノクローナル抗体であれば,例えば,本発明のタンパク質または図5の矢印で示した部分のリン酸化ペプチドで免疫されたマウスの脾細胞を用いて骨髄腫細胞とのハイブリドーマを調整し,培養液中に分泌されるモノクローナル抗体を得て,さらに腹腔内に注入して大量のモノクローナル抗体を得るなどの方法で調整することが可能である。これにより調整された抗体は,本発明のタンパク質のアフィニティー精製や検出のために用いられる他,本発明のタンパク質の発現異常などに起因する癌などの細胞増殖性疾患の診断や抗体治療などに応用することも可能である。抗体治療に用いる場合には,免疫原性の観点から,ヒト化抗体もしくはヒト抗体であることが好ましい。
また,本発明は,本発明のタンパク質をコードするDNAと特異的にハイブリダイズし,少なくとも15ヌクレオチドの鎖長を有するDNAに関する。ここで「特異的にハイブリダイズする」とは,通常のハイブリダイゼーション条件下,好ましくは高ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下で,他のタンパク質をコードするDNAとクロスハイブリダイゼーションが有意に生じないことを指す。このようなDNAは,本発明のタンパク質をコードするDNAを検出,単離するためのプローブとして,また増幅するためのプライマーとして利用可能である。
別の態様においては,本発明は,上述の本発明のタンパク質に結合する化合物をスクリーニングする方法を提供する。本発明のスクリーニング方法は,(a)前記タンパク質と被検化合物とを接触させる工程,および(b)前記タンパク質に結合する活性を有する化合物を選択する工程を含む。スクリーニングに用いる被検試料としては,例えば,精製タンパク質(抗体を含む),遺伝子ライブラリーの発現産物,合成ペプチドのライブラリー,細胞抽出液,細胞培養上清,合成低分子化合物のライブラリーなどが挙げられるが,これらに制限されない。
本発明のタンパク質に結合する活性を有する化合物を選択する方法としては,当業者に公知の多くの方法を用いることができる。本発明のタンパク質を用いてこれに結合する化合物を同定する方法としては,例えば,以下の方法が当業者によく知られている。本発明のタンパク質と結合するタンパク質は,例えば,「ウェストウェスタンブロッテイング法」(Skolnik EY, Margolis B, Mohammadi M, Lowenstein E, Fischer R, Drepps A, Ullrich A, and Schlessinger J (1991) Cloning of PI3 kinase-associated p85 utilizing a novel method for expression/cloning target proteins for receptor tyrosine kinase. Cell 65, 83-90)により同定することが可能である。簡単には,本発明のタンパク質と結合するタンパク質を発現していることが予想される細胞から,ファージベクター(λgt11, ZAPなど)を用いたcDNAライブラリーを作製し,これをLB-アガロース上で発現させ,発現させたタンパク質をフィルターに固定する。次に,本発明のタンパク質をビオチンラベルするか,あるいはGSTタンパク質との融合タンパク質として精製し,これを上記フィルターと反応させ,ストレプトアビジン,あるいは抗GST抗体により,本発明のタンパク質に結合するタンパク質を発現しているプラークを検出する。また,本発明のタンパク質に結合するタンパク質は,「twoハイブリッドシステム」(「MATCHMAKER Two-Hybrid System」,「Mammalian MATCHMAKER Two-Hybrid Assay Kit」,「MACHMAKER One-Hybrid System」(いずれもクロンテック社製)「HybriZAP Two-Hybrid Vector System」(ストラタジーン社製),「Dalton S, and Treisman R (1992) Characterization of SAP-1, a protein recruited by serum response factor to the c-fos serum response element. Cell 68, 597-612」)等の,当該技術分野において知られる種々の方法のいずれかを利用して同定することも可能である。Twoハイブリッドシステムにおいては,まず,本発明のタンパク質をSRF結合領域またはGAL4結合領域と融合させて酵母細胞の中で発現させ,本発明のタンパク質と結合するタンパク質を発現していることが予想される細胞より,VP16またはGAL4転写活性化領域と融合する形で発現するようなcDNAライブラリーを作製し,これを上記酵母細胞に導入する。次いで,検出された陽性クローンからライブラリー由来cDNAを単離する(酵母細胞内で本発明のタンパク質と結合するタンパク質が発現すると,両者の結合によりレポーター遺伝子が活性化され,陽性のクローンが確認できる)。さらに,単離したcDNAを大腸菌などに導入し,これにより発現させたタンパク質を精製することにより,該cDNAがコードするタンパク質を得ることができる。
さらに,本発明のタンパク質を固定したアフィニティーカラムに,本発明のタンパク質と結合するタンパク質を発現していることが予想される細胞の培養上清もしくは細胞抽出物をのせ,カラムに特異的に結合するタンパク質を精製することにより調整することも可能である。さらに,得られたタンパク質のアミノ酸配列を分析し,それを基にオリゴDNAを合成し,該DNAをプローブとしてcDNAライブラリーをスクリーニングすることにより,本発明のタンパク質と結合するタンパク質をコードするDNAを得ることも可能である。
以上のようにして同定された,本発明のタンパク質に結合する化合物は,本発明のタンパク質の活性を促進または阻害するための薬剤の候補となる。また,本発明のタンパク質に結合する細胞内タンパク質は,生体内において本発明のタンパク質の細胞増殖の調節機能,より具体的にはキナーゼ活性に密接に関連していると考えられる。このため本発明のタンパク質に結合する細胞内タンパク質が得られれば,この両者の結合を阻害する化合物をスクリーニングすることにより,癌などの細胞の異常増殖に起因する疾患に対する医薬品開発を行うことが可能となる。
また,本発明は,本発明のタンパク質の活性を促進または阻害する化合物をスクリーニングする方法に関する。本発明のスクリーニング方法は,(a)被検化合物の存在下または非存在下で前記タンパク質とヒストンH2Aとを接触させる工程,(b)前記タンパク質のキナーゼ活性を測定する工程,および(c)被検化合物の存在下および非存在下におけるキナーゼ活性を比較することにより,キナーゼ活性を促進または阻害する化合物を選択する工程を含む。スクリーニングに用いる被検化合物としては特に制限はなく,例えば,合成低分子化合物のライブラリー,精製タンパク質(抗体を含む),遺伝子ライブラリーの発現産物,合成ペプチドのライブラリー,細胞抽出液,細胞培養上清などを用いることが可能である。スクリーニングは,例えば,以下のように行うことができる。被検化合物,本発明のタンパク質,基質,およびリンが放射標識されているATPを含む緩衝液を調製する。適当な時間,リン酸化酵素と基質との反応を行わせた後,キナーゼ活性の検出を行う。キナーゼ活性を,基質に結合したリンの放射活性を検出することにより測定する。放射活性の検出は,反応液を電気泳動(SDS-PAGE)にて分離し,ゲルを乾燥した後,オートラジオグラフィーにてリン酸化された基質のバンドを検出することにより行うことができる。ヌクレオソーム中のヒストンH2Aショウジョウバエ119Thr, 哺乳動物120Thr,ツメガエル120Thr,線虫121Thr,酵母121Serがリン酸化されることを,この特異的な残基のリン酸化に対する抗体を用いてウエスタンブロット法にて確認することができる。一方,対照として,被検化合物を添加せずに同様にキナーゼ活性の検出を行う。次いで,対照と比較して,有意なキナーゼ活性の増加もしくは低下をもたらした化合物を選択する。これにより同定される,有意なキナーゼ活性の増加をもたらした化合物は,本発明のタンパク質の促進剤の,また有意なキナーゼ活性の低下をもたらした化合物は,本発明のタンパク質の阻害剤の候補となり,癌などの細胞増殖の調節異常または糖代謝などに起因する疾患に対する医薬品開発を行うことが可能となる。
癌細胞においてNHK-1遺伝子の発現を阻害する薬剤は,例えば,癌細胞株に,候補化合物を接触させ,次いで,NHK-1遺伝子の発現を検出し,該遺伝子の発現を候補化合物を接触させていない対照と比較して低下させる化合物を選択することにより,同定することが可能である。NHK-1遺伝子の発現の検出は,転写産物レベルであれば,例えば,ノーザンブロッティング法などの公知の方法により,翻訳産物レベルであれば,例えば,ウェスタンブロッティング法などの公知の方法により行なうことが可能である。また,NHK-1遺伝子のプロモーターの下流に連結されたレポーター遺伝子を含むベクターを細胞に導入し,レポーター活性を指標にNHK-1遺伝子の発現を検出してもよい。
本発明は,本発明のタンパク質のキナーゼ活性を阻害する化合物を含有する医薬組成物および本発明のタンパク質の発現を阻害する化合物を含有する医薬組成物,好ましくは抗癌剤である医薬組成物を包含する。
本発明のスクリーニング方法を用いて得られる化合物をヒトや哺乳動物,例えばマウス,ラット,モルモット,ウサギ,ニワトリ,ネコ,イヌ,ヒツジ,ブタ,ウシ,サル,マントヒヒ,チンパンジーの医薬として使用する場合には,単離された化合物自体を直接患者あるいは患畜に投与する以外に,公知の製剤学的方法により製剤化して投与を行うことも可能である。例えば,必要に応じて糖衣を施した錠剤,カプセル剤,エリキシル剤,マイクロカプセル剤として経口的に,あるいは水もしくはそれ以外の薬学的に許容し得る液との無菌性溶液,又は懸濁液剤の注射剤の形で非経口的に使用できる。例えば,薬理学上許容される担体もしくは媒体,具体的には,滅菌水や生理食塩水,植物油,乳化剤,懸濁剤,界面活性剤,安定剤,薬味剤,賦形剤,ベヒクル,防腐剤,結合剤などと適宜組み合わせて,一般に認められた製薬実施に要求される単位用量形態で混和することによって製剤化することができる。これら製剤における有効成分量は,指示された範囲の適当な用量の投与を可能とする量である。
錠剤,カプセル剤に混和することができる添加剤としては,例えばゼラチン,コーンスターチ,トラガントガム,アラビアゴムのような結合剤,結晶性セルロースのような賦形剤,コーンスターチ,ゼラチン,アルギン酸のような膨化剤,ステアリン酸マグネシウムのような潤滑剤,ショ糖,乳糖またはサッカリンのような甘味剤,ペパーミント又はチェリーのような香味剤が用いられる。調剤単位形態がカプセルである場合には,上記の材料にさらに油脂のような液状担体を含有することができる。注射のための無菌組成物は注射用蒸留水のようなべヒクルを用いて通常の製剤実施に従って処方することができる。
注射用の水溶液としては,例えば生理食塩水,ブドウ糖やその他の補助薬を含む等張液,例えばD-ソルビトール,D-マンノース,D-マンニトール,塩化ナトリウムが挙げられ,適当な溶解補助剤,例えばアルコール,具体的にはエタノール,ポリアルコール,例えばプロピレングリコール,ポリエチレングリコール,非イオン性界面活性剤,例えばポリソルベート80(TM),HCO-50と併用してもよい。
油性液としてはゴマ油,大豆油があげられ,溶解補助剤として安息香酸ベンジル,ベンジルアルコールと併用してもよい。また,緩衝剤,例えばリン酸塩緩衝剤,酢酸ナトリウム緩衝剤,無痛化剤,例えば,塩酸プロカイン,安定剤,例えばベンジルアルコール,フェノール,酸化膨化剤と配合してもよい。調製された注射液は通常,適当なアンプルに充填させる。
患者への投与は,例えば,動脈内注射,静脈内注射,皮下注射などのほか,鼻腔内的,経気管支的,筋内的,経皮的,または経口的に当業者に公知の方法により行いうる。投与量は,患者の体重や年齢,投与方法などにより変動するが,当業者であれば適当な投与量を適宜選択することが可能である。また,該化合物がタンパク質である場合には,このタンパク質をコードするDNAを遺伝子治療用ベクターに組込み,遺伝子治療を行うことも考えられる。投与量,投与方法は,患者の体重や年齢,症状などにより変動するが,当業者であれば適宜選択することが可能である。
例えば,上記化合物の投与量は,症状により差異はあるが,経口投与の場合,一般的に成人(体重60kgとして)においては,1日あたり約0.1〜100mg,好ましくは約1.0から50mg,より好ましくは約1.0から20mgである。
非経口的に投与する場合は,その1回投与量は投与対象,対象臓器,症状,投与方法によっても異なるが,例えば注射剤の形では通常成人(体重60kgとして)においては,1日あたり約0.01から30mg,好ましくは約0.1から20mg,より好ましくは約0.1から10mg程度を静脈注射により投与するのが好都合である。他の動物の場合も,体重60Kg当たりに換算した量,あるいは体表面積あたりに換算した量を投与することができる。
以下,本発明を実施例により具体的に説明するが,本発明はこれらの実施例に制限されるものではない。
「NHK-1」タンパク質の同定
核抽出液をカラムクロマトグラフィーにより分画して,各々のフラクションを用いてリン酸化の評価を行なった。NHK活性の評価はγ32P-ATPの存在下に,基質であるヌクレオソームと各々のフラクションを反応させた後,SDSゲルを泳動し,乾燥させた後,イメージングプレートで放射性活性を検出した。図3に示されるように,カラムクロマトグラフィーを組み合わせてクロマチン特異的なリン酸化酵素活性をモニターしながらタンパク質を精製した。図中,星印で示したバンドがリン酸化酵素活性と一致したバンドである。このバンドを切り出し,エドマン分解法によりアミノ酸配列を同定し,新規酵素であるNHK-1を得た。NHK-1をコードする遺伝子のクローニングはPCR法により行なった。すなわちショウジョウバエゲノム情報に基づきPCRプライマーを合成し,PCR増幅した後, pETベクターにサブクローニングした。
NHK-1によるヒストンH2Aのリン酸化
ヒストンまたは塩透析法により作成したクロマチンとNHK-1を混合し,19kBqのγ32P-ATP存在下に30℃で2時間反応させた。結果を図4に示す。NHK-1は遊離のヒストンH2Aはリン酸化しないがクロマチン構造をとったヒストンH2Aのみをリン酸化することがわかった。
「NHK-1」タンパク質によるヒストンH2Aリン酸化部位の同定
精製したNHK-1と,基質であるヌクレオソームとを,γ32P-ATPの存在下に反応させた後,SDSゲルを泳動し,放射線活性のあるバンドを検出した。さらに,このバンドを切り出してトリプシンで消化した後,HPLCでフラグメントを回収し,エドマン分解法によりリン酸化されたフラグメントを同定した。図5において,矢先で示される部位がNHK-1によるリン酸化部位であり,このリン酸化部位は種間で保存されている。
抗リン酸化ヒストンH2A抗体の作製
ヒストンH2AのC末端ショウジョウバエ119Thr, 哺乳動物120Thr,酵母121Serのリン酸化型,非リン酸化型ペプチドをそれぞれ合成し,ウサギに注入して免疫した後,血清からペプチドを用いて抗体を精製した。まず非リン酸化ペプチド型で血清から抗体を沈澱させ,リン酸化型ペプチドで抗体を精製することにより,リン酸化型ペプチドのみ反応する抗体が得られた。ヒストンH2AのC末端ショウジョウバエ119Thr,リン酸化型ペプチドのみと反応する抗体を用いたNHK活性の検出を図6に示す。
ショウジョウバエ胚の免疫染色
ヒストンH2AのC末端ショウジョウバエ119Thr,リン酸化型のみと反応する抗体を蛍光標識して,ショウジョウバエ胚の免疫染色を行った。DNAはDAPI (4',6-ジアミジノ-2-フェニルインドール) 染色で可視化した。リン酸化ヒストンH2Aに対する抗体は,S期の細胞の核に結合しなかったが,M期の細胞の核に結合した。このことから,分裂期クロマチンが特異的にリン酸化されていることがわかる。
正常上皮と癌細胞を用いたヒストンH2A 120番目のトレオニンのリン酸化の検討
ヒト癌細胞と正常上皮細胞をリン酸化ヒストンH2Aに対する抗体で免疫組織染色したところ,9症例の乳癌細胞,4症例の肺癌細胞,1症例の胸腺腫,8症例の胃癌,11症例の大腸癌において癌組織にクロマチンの濃染像を認めた。図7にその一例を示す。陽性細胞は褐色に染色され,陰性細胞は対比染色であるヘマトキシリンで青色に染色される。正常上皮ではリン酸化ヒストンH2Aに対する抗体で染色される細胞核は少ないが,癌組織ではリン酸化ヒストンH2Aに対する抗体で染色される細胞が高率に存在した。陽性細胞を全細胞数で除した百分率PSI(Positive Cell Index)を指標とすると,正常上皮ではリン酸化ヒストンH2Aに対する抗体で染色される細胞核のPSIは1%以下であるのに比較して,癌細胞の核はPSI15%以上で高率にリン酸化ヒストンH2Aに対する抗体で染色された。これらの結果は,リン酸化ヒストンH2Aに対する抗体を用いることにより,ヒト癌細胞と正常上皮細胞とを明確に区別しうることを示す。
酵母でのヒストンH2A変異体の作製と変異体の増殖活性測定
ヒストンH2Aにおける120番目のトレオニンのリン酸化の機能を明らかにするため,酵母ヒストンH2AのNHK-1によるリン酸化部位に相当するアミノ酸121SerをAspまたはGluに置換した。市販の「QuickChange Site-Directed Mutagenesis Kit」(ストラタジーン社製)を利用して,酵母ヒストンH2AのC末端121SerをGluまたはAspに変異させたcDNAを作成し,プラスミッドシャッフルにより変異体のヒストンH2Aを酵母に導入した。ヒストンH2Aの121SerがGluまたはAspに変異をうけた酵母を変異のないものと比較して増殖曲線を調べた。結果を図8に示す。これらの変異株では細胞増殖が著しく低下していることがわかった。
酵母ヒストンH2A変異体の遺伝子発現解析
ヒストンH2Aの121SerがGluまたはAspに変異をうけた酵母と変異のない酵母からそれぞれRNAを抽出しマイクロアレイ解析を行った。表1に示すように,このような変異株では,糖新生,鉄代謝,アミノ酸代謝に関わる遺伝子の発現が低下していることがわかった。これらの結果は, NHK-1が糖代謝酵素,鉄代謝関連タンパク質,アミノ酸代謝酵素の発現抑制を介して細胞増殖に機能し,この機能においてヒストンH2Aにおける120番目のトレオニンのリン酸化が重要な役割を担っていることを意味する。このようなヒストンH2Aにおける120番目のトレオニンのリン酸化と細胞増殖との関係は,NHK-1に影響することによりヒストンH2Aにおける120番目のトレオニンのリン酸化を調節する化合物が,癌などの細胞増殖の異常に関連する疾患の診断や治療へ応用しうることを示唆する。
Figure 0004393171
本発明により,ヒトヒストンH2AのC末端120番目のトレオニンが癌細胞の増殖と関連し,酵母の相同部位に変異を導入することで細胞増殖が抑制されることを見い出した。すなわちこのリン酸化部位を制御することにより癌細胞の増殖を抑制することが期待できる。さらに本発明によりクロマチン構造特異的にヒストンをリン酸化する酵素活性(NHK活性)を有する真核生物由来のタンパク質および遺伝子が提供された。これら細胞増殖に関連したリン酸化部位の同定とその部位に特異的なリン酸化酵素の同定により癌などの増殖性疾患の診断や治療のための新たな医薬品の開発が可能となった。また,本発明のタンパク質をコードする遺伝子は,上記疾患の遺伝子治療への応用が期待される。また,本発明により,本発明のタンパク質を製造するための宿主―ベクター系が提供され,これにより本発明のタンパク質の量産が可能となった。さらに,本発明により,発明のタンパク質がコードするDNAに特異的にハイブリダイズするオリゴヌクレオチドや本発明のタンパク質に結合する抗体が提供され,これにより本発明のタンパク質やその遺伝子の検出や単離などを容易に行うことが可能となった。さらに,本発明により,本発明のタンパク質に結合する化合物および該タンパク質の活性を促進若しくは阻害する化合物をスクリーニングする方法が提供された。これにより単離される化合物は,上記疾患の診断や治療のための医薬品候補化合物として有用である。特に,本発明のタンパク質の活性や発現を阻害する化合物は,抗癌剤としての利用が期待される。
図1は,NHK-1のアミノ酸配列(配列番号1)を示した図である。アミノ酸配列は1文字表記で表され,アミノ酸のギャップはハイフンで表される。 図2は,NHK-1 cDNAのヌクレオチド配列(配列番号2)を示す。 図3は,NHK-1タンパク質の精製方法を示す。 図4は,NHK-1によるヒストンH2Aのリン酸化を示す。 図5は,NHK-1によるヒストンH2Aのリン酸化部位を示す。 ヒストンH2AのC末端ショウジョウバエ119Thrリン酸化型のみと反応する抗体を用いたNHK活性の検出を示す。 図7は,リン酸化ヒストンH2Aに対する抗体によるヒト癌細胞と正常上皮細胞の免疫組織染色を示す。 図8は,酵母ヒストンH2A変異株の増殖曲線を示す。

Claims (7)

  1. 配列番号1に記載のアミノ酸配列からなるタンパク質を含む、クロマチン構造をとったヒストンH2Aのリン酸化剤
  2. 生体外またはヒトを除く動物において、配列番号1に記載のアミノ酸配列からなるタンパク質を用いて、クロマチン構造をとったヒストンH2Aをリン酸化する方法
  3. 配列番号2に記載の塩基配列からなるDNAと高ストリンジェンシー条件下でハイブリダイズするDNAによりコードされるタンパク質であって,クロマチン構造をとったヒストンH2Aをリン酸化する活性を有するタンパク質を含む、クロマチン構造をとったヒストンH2Aのリン酸化剤
  4. 生体外またはヒトを除く動物において、配列番号2に記載の塩基配列からなるDNAと高ストリンジェンシー条件下でハイブリダイズするDNAによりコードされるタンパク質であって,クロマチン構造をとったヒストンH2Aをリン酸化する活性を有するタンパク質を用いて、クロマチン構造をとったヒストンH2Aをリン酸化する方法
  5. 配列番号1に記載のアミノ酸配列において1もしくは複数のアミノ酸が置換,欠失,挿入および/もしくは付加したアミノ酸配列からなり,かつクロマチン構造をとったヒストンH2Aをリン酸化する活性を有するタンパク質を含む、クロマチン構造をとったヒストンH2Aのリン酸化剤
  6. 生体外またはヒトを除く動物において、配列番号1に記載のアミノ酸配列において1もしくは複数のアミノ酸が置換,欠失,挿入および/もしくは付加したアミノ酸配列からなり,かつクロマチン構造をとったヒストンH2Aをリン酸化する活性を有するタンパク質を用いて、クロマチン構造をとったヒストンH2Aをリン酸化する方法
  7. 配列番号1に記載のアミノ酸配列からなるタンパク質、
    配列番号2に記載の塩基配列からなるDNAと高ストリンジェンシー条件下でハイブリダイズするDNAによりコードされるタンパク質であって,クロマチン構造をとったヒストンH2Aをリン酸化する活性を有するタンパク質、および
    配列番号1に記載のアミノ酸配列において1もしくは複数のアミノ酸が置換,欠失,挿入および/もしくは付加したアミノ酸配列からなり,かつクロマチン構造をとったヒストンH2Aをリン酸化する活性を有するタンパク質、
    からなる群より選択されるタンパク質の活性を促進または阻害する化合物をスクリーニングする方法であって,
    (a)被検化合物の存在下または非存在下で前記タンパク質とクロマチン構造をとったヒストンH2Aとを接触させる工程,
    (b)前記タンパク質のキナーゼ活性を測定する工程,および
    (c)被検化合物の存在下および非存在下におけるキナーゼ活性を比較することにより,キナーゼ活性を促進または阻害する化合物を選択する工程,
    を含む方法。
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