JP4392136B2 - 炭化室への石炭装入方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、石炭をコークス炉の炭化室に装入する際、装入口から放出されるガスの異常燃焼による設備の破損を防止する炭化室への石炭装入方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、コークス炉には、コークス炉上を走行する石炭装入車が設けられており、炭化室へ石炭装入車から石炭が装入されている。
この場合、装入車に取付けられた固定シュートを炭化室の装入口に位置を合わせて、固定シュートの外側をスライドして下降するスライドシュートを炭化室の装入口の内側に挿入し、石炭装入車に設けた石炭を切り出すテーブルフィーダを作動させることにより、切り出された石炭が固定シュート及びスライドシュート内を通過して、炭化室内に装入される。
この石炭の装入中、あるいは石炭の装入を終了してスライドシュートを上昇させる時に、炭化室の装入口とスライドシュートとの隙間から石炭粉や炭化室内のガス(可燃ガス)等が外に飛び出して作業環境を阻害するため、固定シュートを囲むように集塵フードを設け、この集塵フードを移動可能な石炭装入車に固定している。更に、集塵フードをダクトを介して集塵機に連結し、集塵フード内を負圧に吸引することが行われている。
集塵フードから吸引された石炭粉や可燃ガスは、メインダクトを通して地上に据え付けた集塵機に送られて処理される。
【0003】
集塵の際、石炭粉のみならず、着火したコークス粉や石炭粉等を吸引する可能性があり、集塵フードの基端や集塵ダクト等に散水装置を備えて散水し、火災のもとになる着火したコークス粉や石炭粉等の消火を行っている。
しかし、最近、乾留エネルギーの節減を図るため、石炭を予め乾燥して石炭中の水分を低減して炭化室に装入したり、石炭を乾燥して微粉を一旦分離し、分離された微粉にタール等のバインダーを添加して固めたものを再び残りの石炭と混合して装入することが行われている。
この乾燥された含水分量の少ない石炭を炭化室に装入した場合、集塵ダクト等の内部で異常燃焼が生じ、集塵ダクトの損傷、設備破損等の設備事故が生じて操業の休止等を招く場合がある。
【0004】
この対策として、特公昭59−8317号公報に記載されているように、固定シュートを囲むように設けた集塵フードを装入車に取付け、吸引された石炭粉の一部をダクト内で燃焼させ、集塵された気体中の粉塵濃度を2g/m3 以下にしてバックフィルタ等の集塵の負荷を軽減することが行われている。
更に、特開平4−346810号公報に記載されているように、炭化室の装入口と装入車の固定シュートの隙間から洩れた未燃ガスを固定シュートを囲った集塵フードで集め、この可燃ガスを装入車の上部に設けた燃焼室で燃焼してから冷却器に導き、冷却器で燃焼排ガスに気体と水を混合したミストを噴射して冷却してから集塵機で集塵することにより、可燃ガスの燃焼による異常燃焼の防止と集塵するガスの温度の上昇を抑制することが行われている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、特公昭59−8317号公報に記載さた方法は、固定シュートを囲む集塵フードに吸引された石炭粉の一部を燃焼させるため、石炭粉の燃焼により、燃焼後の排ガスの温度が高くなり過ぎ、集塵機の集塵効率が低下する。
しかも、石炭粉の燃焼によって排ガス温度が高くなり、集塵ダクトやバックフィルタ等が損傷したり、これ等の寿命が低下する等の問題がある。
更に、特開平4−346810号公報に記載された方法では、装入口と装入車のスライドシュートの隙間から洩れた可燃ガスを集塵フードに集めて、装入車の上部に設けた燃焼室で燃焼するため、放冷によって可燃ガスの温度が低くなり、集塵した可燃ガスに添加しても容易に燃焼せず、可燃焼のガスが下流側のダクトや集塵機に流れ込み、何かの火種によって、異常燃焼等が発生し、ダクトや集塵機等の設備が損傷したり、破損して操業の支障を招き、安定した操業が阻害される等の問題がある。
【0006】
本発明はかかる事情に鑑みてなされたもので、石炭を炭化室に装入した際に発生する可燃ガスを集塵フード内で燃焼させ、異常燃焼を抑制し、集塵ダクトや集塵機等の設備等の損傷を防止することができる炭化室への石炭装入方法を提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
前記目的に沿う本発明に係る炭化室への石炭装入方法は、石炭装入車の固定シュートをコークス炉の炭化室の装入口に位置合わせし前記固定シュートに取付けたスライドシュートを前記装入口内に下降させて、前記石炭装入車から切り出された石炭を前記固定シュートと前記スライドシュートを介して前記炭化室に装入し、前記スライドシュートから外に洩れる前記炭化室からのガスを前記固定シュートを囲んで配置した集塵フードで捕捉して換気する石炭装入方法において、前記集塵フードの内部温度を600℃以上に維持する。
この方法により、石炭の装入口とスライドシュートの隙間から放出された微粉の石炭とガス(可燃ガス)が通過する集塵フード内の雰囲気温度を高くするので、捕捉した可燃ガスを強制的に集塵フード内で燃焼することができる。
なお、集塵フードの内部の温度が600℃未満では、集塵フード内での可燃ガス燃焼が不十分になり、水素濃度の高いガスが集塵ダクト内に流入し、異常燃焼が発生する。
【0008】
本発明に係る炭化室への石炭装入方法において、前記集塵フード内で捕捉したガスをガスバーナーによって加熱することが好ましい。
集塵フード内を通過する可燃ガスを加熱するので、可燃ガスが集塵フード内を通過中に燃焼し易くなり、集塵ダクトや集塵機内での異常燃焼を防止できる。
【0009】
更に、本発明に係る炭化室への石炭装入方法において、前記集塵フード内に着火装置を備え、該着火装置により集塵したガスに点火して燃焼しても良い。
これにより、常に火種を確保することができ、集塵フード内を通過する可燃ガスに直接点火して燃焼することができる。
【0010】
【発明の実施の形態】
続いて、添付した図面を参照しつつ、本発明を具体化した実施の形態につき説明し、本発明の理解に供する。
図1は本発明の一実施の形態に係る炭化室への石炭装入方法に適用される石炭装入装置の全体図、図2は湿炭と乾燥炭の装入開始後の可燃ガス中の水素濃度を表すグラフ、図3は改善前と改善後の石炭の装入開始後の経過時間と可燃ガス中の水素濃度との関係を表すグラフである。
図1に示すように、本発明の一実施の形態に係る炭化室への石炭装入方法に用いられる石炭装入装置10は、コークス炉11の上面に敷設された軌条14上を車輪15を介して走行し、コークス炉11の炭化室12に石炭を装入する石炭装入車16を有している。
石炭装入車16は、貯炭ホッパ17と、貯炭ホッパ17に貯蔵された石炭を切り出す図示しない駆動源に接続したテーブルフィーダ18と、テーブルフィーダ18から切り出された石炭を炭化室12の装入口13に案内する筒状の固定シュート19を有している。
固定シュート19には、その外側をスライドして昇降するスライドシュート20が設けられており、スライドシュート20のフランジ23は、油圧シリンダー21のロッド22に連結している。
そして、固定シュート19及びスライドシュート20を囲む集塵フード24が固定シュート19に取付けられ、集塵フード24に連結した集塵ダクト25は、コークス炉11の側端に固定配置された主集塵ダクト26に連結され、図示しない集塵機に連結している。
更に、集塵フード24内には、電源27に連通した着火装置の一例である点火装置28と、燃焼ガスの供給管29に連通したガスバーナー30を備えている。
【0011】
次に、本発明の一実施の形態に係る炭化室への石炭装入方法について石炭装入装置10を用いて説明する。
コークスの製造に用いる石炭は、7〜12重量%の水分を含んでおり、この水分によって、石炭を炭化室12に装入して乾留する際、乾留に使用する熱量が増加してコークスの製造コストが高くなるため、一旦、石炭を図示しない乾燥装置を用いて乾燥した乾燥炭を貯炭ホッパ17に貯蔵している。
そして、コークス炉11の上面に敷設された軌条14上を車輪15を介して石炭装入車16を走行させ、石炭装入車16に取付けた固定シュート19を炭化室12の装入口13の位置に合わせる。
固定シュート19と装入口13を位置合わせした後、油圧シリンダー21を作動し、油圧シリンダー21のロッド22を押し出して固定シュート19の外側に設けたスライドシュート20を下降させ、スライドシュート20の先端を装入口13に挿入する。
石炭装入車16の貯炭ホッパ17の下方に設けたテーブルフィーダ18を回転させ、貯炭ホッパ17内の乾燥炭を、前記した固定シュート19及びスライドシュート20を介して炭化室12に装入する。
この乾燥炭を装入する際の炭化室12内は、乾燥炭の装入により飛散した石炭の微粉が存在し、しかも、石炭を乾留したコークスを押し出した直後であり、内部の雰囲気温度が800〜900℃であるため、乾燥炭に含まれる揮発分が気化したガスの一例である可燃ガスが混在している。
図2は炭化室12から放出される装入口13近傍の雰囲気中の可燃ガスに含まれる水素(H)濃度(水素体積%)を乾燥炭と湿炭について調査した結果であり、水分が6重量%以下である乾燥炭(○)の場合、炭化室12に乾燥炭を装入開始してから20秒を経過時点で、乾燥炭の温度が上昇して乾燥炭中の揮発分が気化し、炭化室12内の雰囲気中における可燃ガス中の水素濃度が急激に増加する。この可燃ガスは、装入口13とスライドシュート20の隙間から集塵フード24に吸引され、集塵フード24から集塵ダクト25へと流れる。
この可燃ガスが集塵ダクト25の下流側に流下する際、着火した微粉の石炭等の火種によって、集塵ダクト25や主集塵ダクト26の内部で異常燃焼を生じ、ダクト等の設備の損傷を招く。
【0012】
従って、例えばCOG(コークス炉ガス)を燃焼ガスの供給管29から供給し、集塵フード24の内部に備えた加熱用のガスバーナー30によってCOGを燃焼させて集塵フード24内の雰囲気温度を600℃以上にすることにより、集塵フード24内を通過中に、可燃ガス中の水素の自発的な燃焼を促進し、更に、ガスバーナー30の火炎を火種とし、可燃ガス中の水素を即座に燃焼させることができる。
そして、集塵フード24内の可燃ガス中の水素濃度を低減することができ、可燃ガスの組成を水素濃度が1体積%以下の組成(異常燃焼を生じない組成)にすることができ、可燃ガスが集塵ダクト25の下流側に流下する際、集塵ダクト25や主集塵ダクト26の内部で着火した微粉の石炭等の火種によって、異常燃焼が起きることがなくなり、ダクト等の設備の損傷を防止することができる。
しかも、炭化室12の装入口13からの熱気をそのまま利用することができ、集塵フード24内の雰囲気温度を容易に高めることができる。
更に、炭化室12に乾燥炭を装入することができるので、乾留されたコークスのDI強度(ドラムインデックス)、熱間強度等の品質が高められ、しかも、石炭の乾留に使用する乾留熱量を大幅に減少することができる。
集塵フード24の内部の雰囲気温度の上限は、高い程可燃ガス中の水素の燃焼が促進されるが、あまり高くなりすぎると、熱によって、スライドシュート20の損耗を招くので、800℃以下にすることが好ましい。
【0013】
なお、集塵フード24内は、集塵機により吸引されているため、偏流が生じたり、内部の流速が10m/秒と速くなり、火炎の伝燔速度以上になることがあるため、ガスバーナー30の火炎では、十分に燃焼しない場合があるので、吸引される可燃ガス中の水素を確実に燃焼させるには、火種を形成するとより好ましい。しかし、着火した乾燥炭やコークスを火種にする場合では、常に安定した火種を供給できない。従って、例えば、パルスィグナイター等の点火装置28を集塵フード24内の上方に設けておき、この点火装置28に電源27から通電し、点火装置28の先端に火花を連続して形成し、集塵フード24内を通過中の可燃ガスに含まれる水素に点火することで、安定して水素を燃焼させるこができる。
この点火装置28は、集塵フード24に複数設け、集塵フード24の可燃ガスの偏流が生じる部位と、集塵フード24の可燃ガスの流速が火炎の伝燔速度以上になる部位の水素を確実に燃焼させることができる。
【0014】
このように、ガスバーナー30の火炎や点火装置28により集塵フード24内で水素を燃焼した可燃ガスは、異常燃焼を起こさない組成に処理され、集塵ダクト25及びコークス炉11の側端に固定配置された主集塵ダクト26を通過し、集塵機により集塵処理が行われる。
【0015】
【実施例】
次に、本発明の係る炭化室への石炭装入方法の実施例について説明する。
石炭装入車の固定シュートの外側に設けたスライドシュートを下降させ、5重量%の水分を含む石炭を炭化室に装入する際、ガスバーナーにCOGを供給して燃焼させ、集塵フード内を加熱して雰囲気温度を610℃に維持し、スライドシュートと装入口の隙間から漏れた可燃ガスを集塵フード内に吸引してから集塵ダクト、主集塵ダクトを経由して集塵機により集塵処理を行った。その結果を図3(○印)に示す。
本発明の炭化室への石炭装入方法(改善後)では、可燃ガス中の水素濃度を常に1重量%未満にでき、集塵フード内で可燃ガス中の水素が良く燃焼しており、集塵ダクトや主集塵ダクト等での異常燃焼の発生が無かった。
更に、集塵フード内に、ガスバーナーと点火装置を配置し、点火装置の先端に火花を連続して形成して可燃ガス中の水素の燃焼を促進した場合についても実施したが、可燃ガス中の水素濃度を安定して1重量%未満にすることができた。そして、乾燥炭の乾留熱量を大幅に低減することができ、コークスの品質も向上した。
これに対し、石炭中の水分が5重量%の乾燥炭を用い、ガスバーナーによる加熱を行わず、集塵フード内の雰囲気温度を100℃未満にした従来の方法(図中▲印で示す改善前)では、石炭の装入を開始してから装入終了の間で、可燃ガス中の水素濃度が1.1〜4.9重量%に高くなった。
そして、この燃焼後の可燃ガスを処理する集塵ダクトや主集塵ダクト、集塵機での異常燃焼が発生した。
【0016】
以上、本発明の実施の形態を説明したが、本発明は、上記した形態に限定されるものでなく、要旨を逸脱しない条件の変更等は全て本発明の適用範囲である。
例えば、集塵フード内を加熱する加熱装置は、ガスバーナーの他に、電気コイルを用いて抵抗加熱することもできる。
更に、集塵フード内の雰囲気温度を高める方法としては、スライドシュートの直径を小さくし、装入口との隙間を大きくすることにより、炭化室から放出される熱気を積極的に集塵フード内に取り込むこともできる。
【0017】
【発明の効果】
請求項1〜3記載の炭化室への石炭装入方法においては、集塵フードの内部温度を600℃以上に維持するので、乾燥炭を炭化室に装入した際に発生する可燃ガスに含まれる水素を集塵フードで燃焼させ、異常燃焼を抑制し、集塵ダクトや集塵機等の設備等の損傷を防止することができる。
【0018】
特に、請求項2記載の炭化室への石炭装入方法においては、集塵フード内で捕捉した未燃ガスを加熱するガスバーナーを備えているので、可燃ガスを集塵フード内を通過中に燃焼させることができ、安定して集塵ダクトや集塵機内での異常燃焼を防止できる。
【0019】
請求項3記載の炭化室への石炭装入方法においては、集塵フード内を通過する可燃ガスに着火装置により直接点火するので、可燃ガスに含まれる水素を確実に燃焼することができ、乾燥炭の増使用が可能になる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施の形態に係る炭化室への石炭装入方法に適用される石炭装入装置の全体図である。
【図2】湿炭と乾燥炭の装入開始後の可燃ガス中の水素濃度を表すグラフである。
【図3】改善前と改善後の石炭の装入開始後の経過時間と可燃ガス中の水素濃度の関係を表すグラフである。
【符号の説明】
10:石炭装入装置、11:コークス炉、12:炭化室、13:装入口、14:軌条、15:車輪、16:石炭装入車、17:貯炭ホッパ、18:テーブルフィーダ、19:固定シュート、20:スライドシュート、21:油圧シリンダー、22:ロッド、23:フランジ、24:集塵フード、25:集塵ダクト、26:主集塵ダクト、27:電源、28:点火装置、29:燃焼ガスの供給管、30:ガスバーナー
Claims (3)
- 石炭装入車の固定シュートをコークス炉の炭化室の装入口に位置合わせし前記固定シュートに取付けたスライドシュートを前記装入口内に下降させて、前記石炭装入車から切り出された石炭を前記固定シュートとスライドシュートを介して前記炭化室に装入し、前記スライドシュートから外に洩れる前記炭化室からのガスを前記固定シュートを囲んで配置した集塵フードで捕捉して換気する石炭装入方法において、
前記集塵フードの内部温度を600℃以上に維持することを特徴とする炭化室への石炭装入方法。 - 請求項1記載の炭化室への石炭装入方法において、前記集塵フード内で捕捉したガスをガスバーナーによって加熱することを特徴とする炭化室への石炭装入方法。
- 請求項1又は2記載の炭化室への石炭装入方法において、前記集塵フード内に着火装置を備え、該着火装置により集塵したガスに点火して燃焼することを特徴とする炭化室への石炭装入方法。
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