JP4390342B2 - 分割ケースのシール構造 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、複数に分割されたケースを流体管にフランジパッキンと円弧状パッキンで水密に被覆する分割ケースのシール構造に関する。
【0002】
【従来の技術】
水道管等の流体管が破損して漏水しているのを補修する場合に使用される補修カバーや、埋設されている流体管に分岐管を接続する場合に使用される割T字管は、流体管の周囲を被覆する複数に分割されたケースと、該ケースを流体管に水密に設置する複数の円弧状パッキンとから構成されるのが一般的である。
【0003】
流体管の補修をおこなう部材として、図9に示すような補修カバーが知られている。この従来の補修カバーAは、流体管Gの外周部から互いに連結、分解可能なボルト孔を形成したフランジCが設けてある三つのケースBと、その内面に形成されたパッキン収納凹部Eに装着されるパッキンDとからなる。
【0004】
パッキンDは、流体管Gの外周面に圧接する円弧状のシール部D1と、接続される相手のフランジCのフランジシール部D2に圧接する板状のフランジシール部D2とが一体に成形されている。
【0005】
前記ケースBを流体管Gの外周に被覆し、対向するフランジC、Cをボルト・ナットFによって締め付けると、円弧状のシール部D1は水道本管Gの外周面に圧接し、シール部D2、D2は、互いに圧接することにより、補修カバーAは水密性を保持して流体管Gに装着される。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
従来の補修カバー等における分割ケースのフランジ部を止水するパッキンは、板状に形成されているので、所定の水密性を得るためにパッキンを突き合わせて圧縮するには大きな力を必要とするため、フランジをボルト・ナットで高トルクを与えて締め付ける必要があった。また、土圧等によって流体管やケースが変形したときや、締結してあるフランジが少しでも開いたときにはフランジ部より漏水するという問題があった。
【0007】
本発明が解決しようとする課題は、上記問題を解決するためになされたもので、フランジを接合するときのボルトの締付トルクが小さく、流体管やケースの多少の変形時の漏水を防止しうるようにした分割ケースのシール構造を提供する点にある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するために、本発明の分割ケースのシール構造は、対向するフランジを連結して、流体管の周囲を被覆する複数に分割されていると共に、管軸方向両端に円弧状パッキン溝と、前記フランジの一方に第1パッキン溝および前記フランジの他方に第2パッキン溝がそれぞれ形成され、前記円弧状パッキン溝の両端部で前記フランジの対向面に収容凹部が形成されたケースと、前記円弧状パッキン溝に嵌合され、前記ケースを流体管に水密に設置する一対の円弧状パッキンと、前記第1パッキン溝および第2パッキン溝に収められ、前記フランジ同士を水密にするフランジパッキンと、からなり、
前記一対の円弧状パッキンは、前記フランジの収容凹部に嵌合され、対向する円弧状パッキンに当接する第1接合部と第2接合部を有し、それぞれの円弧状パッキンの第1接合部と第2接合部を前記フランジパッキンに連絡させて一体形成され、
対向する少なくとも一方のフランジパッキンは、他方のフランジパッキンの方向に突き出た凸状部が板状の基部に形成され、前記他方のフランジパッキンは、断面がほぼ円形に形成されており、
対向するフランジを連結して前記フランジパッキン同士を圧接し、一方のフランジパッキンの基部の凸状部および他方のフランジパッキンを圧縮して水密にすることを特徴としている。
本発明によれば、板状の基部に、対向するフランジパッキンの方向に突き出た凸状部が設けられているので、分割ケースを流体管に取り付ける際に板状の基部に設けられた凸状部を圧縮することにより所定の水密性を得ることができ、フランジを接合するときのボルトの締付トルクを小さくすることができる。
また、フランジパッキンの圧縮率を大きく設定できるようになるので水密性が良くなり、ケースやフランジの多少の変形や移動に対しても漏水を防止することができる。
【0009】
また、他方のフランジパッキンの断面がほぼ円形に形成されているので、小さい圧縮力で所定の水密性を得るための圧縮変形を与えることができ、フランジを接合するときのボルトの締付トルクを小さくすることができる。
また、凸状部と断面円形部の2箇所で止水することができるようになるので水密性が向上する。
【0011】
また、フランジパッキンは、フランジに形成された第1パッキン溝および第2パッキン溝に収められているので、フランジパッキンは、フランジにおける取り付け位置が一定し、圧縮されたときやケースに対する内圧や外圧が働いた場合に移動することがないので安定した水密性能が発揮されるようになる。また、ケースにフランジパッキンを取り付ける作業が容易となり、作業性が向上する。
【0012】
前記フランジパッキンは、前記第1パッキン溝および第2パッキン溝に固定されているのが好ましい。
このようにすると、第1パッキン溝および第2パッキン溝にフランジパッキンが固定されているので圧縮時や内圧、外圧が働いた場合の移動が確実に防止されるので安定した水密性能を発揮することができる。
【0013】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施例を図面に基づいて説明する。
【0014】
図1ないし図5は、本発明の実施例を示すもので、水道本管(流体管)に不断水状態で分岐管を接続する際に使用される割T字管(ケース)に適用したものである。
【0015】
図1、図2において、流体管8の外周面に、ケース1が水密性を保持して装着されている。ケース1は、径方向に2分割可能な第1ケース1aと第2ケース1bとからなり、第1ケース1aには、図示されていない分岐管を接続するフランジが端部に設けられた分岐筒部1cが外方向に突出して連接されている。
【0016】
ケース1の内径は、流体管8の外径とほぼ同じに形成されており、流体管8が軟質合成樹脂管の場合には、ケース1を外周に密着させて流体管8の変形を防止することができる。流体管8がダクタイル鋳鉄管や鋼管の場合には、流体管8の外周とケースの内周とに空間を形成して取り付けるようにしてもよい。
【0017】
第1ケース1aと第2ケース1bとの長手方向の両側の対向端縁には、フランジ2、2が外向きに連設され、各フランジ2には4個ずつの貫通孔2aが上下に整合するように形成されている。
【0018】
また、各ケース1a,1bには、その管軸方向両端部に円弧状パッキン溝4が形成され、フランジ2の一方には第1パッキン溝5(取付凹溝部)が、他方には第2パッキン溝6(取付凹溝部)が形成されて、パッキン3が取り付けられている。円弧状パッキン溝4の両端部でフランジ2の対向面には、後述するパッキン3の第1接合部3d、第2接合部3eが管軸方向に移動しないように嵌合される収容凹部7が形成されている。
【0019】
第1パッキン溝5、第2パッキン溝6の幅は、取り付けられる第1フランジパッキン3b、第2フランジパッキン3cの幅よりも広く形成されており、フランジパッキン3b、3cが圧縮されたときに、変形しやすくするための空間が形成されている。
【0020】
パッキン3は、図3に示す流体管8とケース1をシールする円弧状パッキン3aと、フランジ同士をシールする凸状部3hが形成された第1フランジパッキン3bと、断面円形の第2フランジパッキン3cとにより形成され、一対の円弧状パッキン3a、3aの第1接合部3d、3d同士を第1フランジパッキン3bが連絡し、第2接合部3e同士を第2フランジパッキン3cが連絡するように一体に形成されている。
【0021】
円弧状パッキン3aの両端部には、対向する円弧状パッキン3aに当接する平面部3f、3fを有する第1接合部3dと第2接合部3eが設けられている。第1接合部3dと第2接合部3eの平面部3f、3fは、図4に示すように突き合わせたときに流体管側が接触し、外周部分では距離が開くように角度をもって形成されている。
【0022】
第1フランジパッキン3bの断面は、管軸直角方向に長い長方形の基部3gと、基部3gの流体管8側の端部に設けられた三角形の凸状部3hとにより形成されている。(図5(a))
【0023】
第2フランジパッキン3cの断面は、略円形に形成され(図5(b))、第1ケース1aと第2ケース1bとを合わせたときに対向する第1フランジパッキン3bの基部3gに当接する位置に形成されている。(図6)
【0024】
第1フランジパッキン3bは一方のフランジ2に形成された第1パッキン溝5に取り付けられ、第2フランジパッキン3cは他方のフランジ2に形成された第2パッキン溝6に取り付けられる。第1フランジパッキン3bは、接着剤により接着固定しても良く、また、基部3gに係合片を突出さて、第1パッキン溝5に形成した係合凹溝に前記係合片を嵌合させて移動不可に取り付けてもよい。
【0025】
本実施例のケース1は次のように使用される。
【0026】
パッキン3を装着した第1ケース1a、第2ケース1bを流体管8の外周に被覆し、ボルト・ナット9を貫通孔3aに挿通させて締め付けてケース1を流体管8に設置する。次に、分岐筒部1cの端部に設けられたフランジに仕切弁を取り付けて、一般に知られている不断水分岐穿孔工事を行ない、分岐管を接続して不断水分岐工事を終了する。
【0027】
第1ケース1a、第2ケース1bをボルト・ナット9で締結したときに、第1接合部3dと第2接合部3eとが突き合わせられて圧接され、円弧状パッキンの端部が流体管側から接触し流体管方向に押し出されるように突出した変形を起こして円弧状パッキン3a,3aが流体管8の外周面に圧接される。また、第1ケース1aの第1フランジパッキン3bと第2ケース1bの第2フランジパッキン3cが当接し、第1ケース1aの第2フランジパッキン3cと第2ケース1bの第1フランジパッキン3bが当接しそれぞれが圧接することにより、ケース1に囲まれた空間の水密性が確保される。
【0028】
第1フランジパッキン3bは、図6に示すように基部3gの高さが第1パッキン溝部5の深さより小さく設けられているので凸状部3hのみがフランジ2によって圧縮されてフランジ締付のトルクが小さくなる。
【0029】
図7は、本発明の参考例を示すもので、(a)は、第1フランジパッキン3bに半円形の凸状部3hが設けられ、第2フランジパッキン3cに前記凸状部3hが嵌合する凹状部3iが設けられたもので、(b)は、第1フランジパッキン3bに半円形の凸状部3hが2個並んで設けられ、第2フランジパッキン3cに前記凸状部3h、3hが嵌合する凹状部3iが2箇所設けられたものである。
【0030】
本参考例のパッキン3は本発明の実施例とほぼ同様に一対の円弧状パッキン3aと、第1フランジパッキン3bと、第2フランジパッキン3cとにより構成されている。第1フランジパッキン3bの断面は、管軸直角方向に長い長方形の基部3gと、基部3gに突設された半円形の凸状部3hとにより形成されている。第2フランジパッキン3cの断面は、管軸直角方向に長い長方形の基部3gに、前記第1フランジパッキン3bの半円形の凸状部3hが嵌合される半円形の凹状部3iが形成されている。凹状部3iの深さは、凸状部3hの高さより浅く設けられている。(図7)
【0031】
ケース1a、1bを流体管8に被覆し、ボルト・ナット9で締結すると、第1フランジパッキン3bと、第2フランジパッキン3cとが突き合わされて圧接される。このとき、凸状部3hが凹状部3iに嵌合して押しつぶされるように変形するので、凹状部3iにしっかり密着し水密性が保たれる。また、フランジパッキン同士の相対移動が防止されるのでケースの変形に対しても漏水を防止できる。
【0032】
図8は、本発明の他の参考例を示すもので、第1フランジパッキン3b、第2フランジパッキン3c双方に凸状部3hと凹状部3iとが設けられたものである。
【0033】
第1フランジパッキン3bの基部3gの流体管8側には、半円形の凸状部3hが突設され、外側に第2フランジパッキン3cに設けられた凸状部3hが嵌合する凹状部3iが設けられている。
【0034】
第2フランジパッキン3bの基部3gの流体管8側には、第1フランジパッキン3bの凸状部3hが嵌合される凹状部3iが設けら、外側には半円形の凸状部3hが突設されている。
【0035】
フランジパッキン3b、3cの凹状部3iの深さは、凸状部3hの高さより浅く設けられている。
【0036】
ケース1a、1bを流体管8に被覆し、ボルト・ナット9で締結すると、第1第1フランジパッキン3bと、第2フランジパッキン3cとが突き合わされて圧接される。すると、フランジパッキン3b、3cそれぞれの凸状部3hが対向する凹状部3iに嵌合して押しつぶされるように変形するので、凹状部3iにしっかり密着し水密性が保たれる、また、フランジパッキン同士の相対移動が防止されるのでケースの変形に対しても漏水を防止できる。
【0037】
以上、本発明の実施例を図面により説明してきたが、本発明の具体的な構成はこれに限定されるものではない。
【0038】
実施例では、不断水で分岐管を接続する場合に使用される割T字管を示したが、破損した流体管の漏水を防止する補修ケースに使用してもよく、不断水でバルブを設置する場合に流体管に被覆するケースに使用してもよい。
【0039】
また、実施例では、凸状部の断面形状は三角形であったが半円形や台形であってもよい。
【0040】
【発明の効果】
本発明によれば、板状の基部に、対向するフランジパッキンの方向に突き出た凸状部が設けられているので、分割ケースを流体管に取り付ける際に板状の基部に設けられた凸状部だけを圧縮することにより所定の水密性を得ることができ、フランジを接合するときのボルトの締付トルクを小さくすることができる。
また、フランジパッキンの圧縮率を大きく設定できるようになるので水密性が良くなり、ケースやフランジの多少の変形や移動に対しても漏水を防止することができる。
【0041】
また、フランジパッキンの断面がほぼ円形に形成されているので、小さい圧縮力で所定の水密性を得るための圧縮変形を与えることができ、フランジを接合するときのボルトの締付トルクを小さくすることができる。
また、凸状部と断面円形部の2箇所で止水することができるようになるので水密性が向上する。
【0043】
また、フランジパッキンは、フランジにおける取り付け位置が一定し、圧縮されたときや、ケースに対する内圧や外圧が働いた場合に移動することがないので安定した水密性能が発揮されるようになる。また、ケースにフランジパッキンを取り付ける作業が容易となり、作業性が向上する。
【0044】
請求項2の発明によれば、第1パッキン溝および第2パッキン溝にフランジパッキンが固定されているので圧縮時や内圧、外圧が働いた場合の移動が確実に防止されるので安定した水密性能を発揮することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の実施例を示す一部切欠正面図である。
【図2】 図1のI―I線に沿う断面図である。
【図3】 パッキンの正面図である。
【図4】 同じく、側面図である。
【図5】 同じく、(a)は図3II−II線に沿う断面図、(b)は図3のIII−III線に沿う断面図である。
【図6】 フランジパッキンの部分拡大断面図である。
【図7】 本発明の参考例を示す拡大断面図である。
【図8】 本発明の他の参考例を示す拡大断面図である。
【図9】 従来例における、(a)は正面図、(b)は中央断面図、(c)はパッキンの斜視図である。
【符号の説明】
1 ケース
1a 第1ケース
1b 第2ケース
1c 分岐筒部
2 フランジ
2a 貫通孔
3 パッキン
3a 円弧状パッキン
3b 第1フランジパッキン
3c 第2フランジパッキン
3d 第1接合部
3e 第2接合部
3f 平面部
3g 基部
3h 凸状部
3i 凹状部
4 円弧状パッキン溝
5 第1パッキン溝(取付凹溝部)
6 第2パッキン溝(取付凹溝部)
7 収容凹部
8 流体管
9 ボルト・ナット
Claims (2)
- 対向するフランジを連結して、流体管の周囲を被覆する複数に分割されていると共に、管軸方向両端に円弧状パッキン溝と、前記フランジの一方に第1パッキン溝および前記フランジの他方に第2パッキン溝がそれぞれ形成され、前記円弧状パッキン溝の両端部で前記フランジの対向面に収容凹部が形成されたケースと、前記円弧状パッキン溝に嵌合され、前記ケースを流体管に水密に設置する一対の円弧状パッキンと、前記第1パッキン溝および第2パッキン溝に収められ、前記フランジ同士を水密にするフランジパッキンと、からなり、
前記一対の円弧状パッキンは、前記フランジの収容凹部に嵌合され、対向する円弧状パッキンに当接する第1接合部と第2接合部を有し、それぞれの円弧状パッキンの第1接合部と第2接合部を前記フランジパッキンに連絡させて一体形成され、
対向する少なくとも一方のフランジパッキンは、他方のフランジパッキンの方向に突き出た凸状部が板状の基部に形成され、前記他方のフランジパッキンは、断面がほぼ円形に形成されており、
対向するフランジを連結して前記フランジパッキン同士を圧接し、一方のフランジパッキンの基部の凸状部および他方のフランジパッキンを圧縮して水密にすることを特徴とする分割ケースのシール構造。 - 前記フランジパッキンは、前記第1パッキン溝および第2パッキン溝に固定されている請求項1に記載の分割ケースのシール構造。
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