JP4389467B2 - 穴加工方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は穴加工方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、ワークの穴加工にあたり、荒加工と仕上げ加工とを別々の穴加工工具で行うのが一般的である。
【0003】
また、図18に示すように、1つの工具に荒刃101と仕上げ刃102とを保持した穴加工工具100を用い、ワークに対して荒刃101と仕上げ刃102とで同時に穴加工を行う穴加工技術が提供されている。穴加工工具200の軸芯Pから荒刃101の刃先までの距離はr60に設定されている。穴加工工具200の軸芯Pから仕上げ刃102の刃先までの距離はr65に設定されている。この場合、1つの工具に荒刃101と仕上げ刃102とを保持しているため、加工能率の向上を図り得、生産性の向上を図り得る。
【0004】
また図19に模式的に示すように、互いに対向する荒刃201,201と互いに対向する仕上げ刃202とを保持した穴加工工具200を用い、ワークに対して荒刃201と仕上げ刃202とで同時にワーク400の穴加工を行う穴加工技術が提供されている。荒刃201は荒加工面301を形成し、仕上げ刃202は仕上げ加工面302を形成する。仕上げ加工面302の径は荒加工面301の径よりも大きい。
【0005】
また特許文献1に開示されているように、同様の機能を有する2個の刃を対向させて工具に保持したボーリングバーが知られている。このものでは、2個のチップ取付板を半径方向に移動可能となるように取り付けている。このものでは、軸芯から刃の刃先までの距離が等しく設定されるため、2個の刃は同一の機能を有するものである。
【0006】
【特許文献1】
特開平05−057509号公報
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
上記したように荒加工と仕上げ加工とを別々の穴加工工具で行う従来技術によれば、一つの穴に複数の穴加工工具を個別に進入させる必要があり、加工に時間がかかり、高能率加工には限界がある。
【0008】
また図18に示す技術によれば、穴加工工具100は1個の荒刃101と1個の仕上げ刃102とを保持するため、高能率加工には有利である。しかしながら仕上げ刃102の取り代は荒刃101の取り代に比較してかなり小さいため、穴加工時における仕上げ刃102の切削抵抗と荒刃101の切削抵抗との差が大きく異なり、穴加工時における切削抵抗のバランスが悪い。このため穴加工時に工具の芯ずれ、工具の撓みが発生する不具合がある。更に図18に示す技術によれば、仕上げ刃102の取り代と荒刃101の取り代とを仮に同一とした場合、仕上げ刃102の刃先と荒刃101の刃先とを結ぶ直線の方向における求心性が得られるものの、当該直線の方向に対して直交する方向における求心性がほとんど得られず、このため加工した穴の真円度や円筒度の精度が充分に得られない不具合がある。
【0009】
更に、図19(軸芯Pに対して軸直角方向の断面相当図)において模式的に示す技術によれば、荒刃201の刃先同士を結ぶ直線の方向(矢印M1方向)における求心性が得られると共に、仕上げ刃202の刃先同士を結ぶ直線の方向(矢印M2方向)における求心性が得られ、このため加工した穴の真円度や円筒度の精度が良好である。
【0010】
しかしながら、図19に示す従来技術によれば、穴加工が終了してワークの穴から穴加工工具200を引き抜くときに、リトラクト操作できない。このため穴加工工具200の軸芯Pから刃先までが距離が大きい仕上げ刃201の刃先と穴の仕上げ加工面302とが接触して擦れたままの状態で、穴加工工具200をワーク400の穴から引き抜くことになり、この結果、仕上げ刃202の刃先が仕上げ加工面302に擦れ、穴の仕上げ加工面302に傷がつくおそれがある。
【0011】
更に前記した特許文献1に係る技術によれば、穴加工が終了してワークの穴から穴加工工具を引き抜くときに、リトラクト操作できない。このため穴加工工具を穴から引き抜くと、刃の刃先と穴の加工面とが接触して擦れたままの状態で、穴加工工具をワークの穴から引き抜くことになり、穴の加工面に傷がつくおそれがある。
【0012】
本発明は上記した実情に鑑みてなされたものであり、高能率加工に有利であり、更に、穴加工工具の軸芯のぶれ、撓みを抑制でき、しかも、穴加工が終了してワークの穴から穴加工工具を引き抜くとき、ワークの穴の加工面に傷がつくおそれを抑制できる穴加工方法を提供することを課題とするにある。
【0013】
【課題を解決するための手段】
(1)第1様相の本発明に係る穴加工方法は、軸芯をもつ軸状部と、軸状部に設けられ軸芯を中心とする周方向において間隔を隔てて並設された少なくとも3個の刃からなる刃群とを具備すると共に、刃群を構成する刃は、荒加工面を形成する荒加工用の第1刃、第1刃よりも後方に設けられ中仕上げ加工面を形成する中仕上げ加工用の第2刃、第2刃よりも後方に設けられ仕上げ加工面を形成する仕上げ加工用の第3刃から形成されていると共に、リトラクト操作可能に設定されている穴加工工具を用意する工程と、
穴加工工具を用いてワークの穴加工を行う穴加工工程とを順に実施する穴加工方法において、
穴加工工程では、
第1刃の取り代をa1、第2刃の取り代をa2、第3刃の取り代をa3とし、相対表示でa3を1としたとき、第1刃の取り代a1は0.2〜2.1、第2刃の取り代a2は0.2〜2.1に設定され、
穴加工工程後に実施されるリトラクト操作は、
(i)穴加工工具をこれの軸芯に沿って、これの進入方向と逆方向に、少なくとも、1回転当たりの送り量を超え、且つ、第1刃の刃先から前記第2刃の刃先までの軸芯方向の距離を超える距離を後退させて引き抜いて、微量引き抜き操作を行い、(ii)次に、半径方向において第1刃が仕上げ加工面に接近するように、第1刃で形成された荒加工面と第3刃で形成された仕上げ加工面との間の径方向距離未満だけ、第1刃に対する半径方向に穴加工工具を第1刃、第2刃および第3刃と共に変位させて、第1刃の刃先と荒加工面との非接触状態を確保しつつ、第2刃の刃先と中仕上げ加工面との非接触状態および第3刃の刃先と仕上げ加工面との非接触状態を確保して行われ、
リトラクト操作の後、第1刃、第2刃および第3刃の前記非接触状態を維持しつつ、穴加工工具をワークの穴から引き抜き方向に引き抜くことを特徴とするものである。
【0014】
第1様相の本発明によれば、軸状部に設けられた刃群は、軸状部の軸芯を中心とする周方向において間隔を隔てて並設された少なくとも3個の刃からなる。このため、ワークを穴加工する際に、軸芯に対して軸直角方向の断面において刃が互いに対向するように設けられている2枚刃の穴加工工具と異なり、刃の求心性が高まる。故にワークを穴加工する際に、穴加工工具の芯ずれ、撓みが抑制され、加工した穴の真円度や円筒度が向上する。
【0015】
また第1様相の本発明によれば、刃群とを具備する穴加工工具の刃群を構成する刃のうち少なくとも3個の刃は、軸状部の軸芯からの距離が異なり切削機能が異なるように設定されているため、穴加工工具をワークに対して進入させて穴加工を行うとき、ワークへの進入回数を低減でき、高能率加工が図られる。
【0016】
更に第1様相の本発明によれば、穴加工工具はリトラクト操作可能に設定されているため、ワークの穴加工が終了してワークの穴から穴加工工具を引き抜くときに、穴加工工具の刃群を構成する刃と穴の加工面とを非接触にでき、穴の加工面に傷がつくことが抑えられる。
【0017】
第1様相の本発明によれば、第1刃の取り代をa1とし、第2刃の取り代をa2、第3刃の取り代をa3とし、相対表示でa3を1としたとき、第1荒刃の取り代a1は0.2〜2.1、第2刃の取り代a2は0.2〜2.1に設定されているため、第1刃〜第3刃の切削抵抗のバランスが確保される。従って、刃の求心性が高まる。故にワークを穴加工する際に、穴加工工具の芯ずれ、撓みが抑制され、加工した穴の真円度や円筒度が向上する。
【0018】
(2)第2様相の本発明に係る穴加工方法は、軸芯をもつ軸状部と、軸状部に設けられ軸芯を中心とする周方向において間隔を隔てて並設された少なくとも3個の刃からなる刃群とを具備すると共に、刃群を構成する刃は、荒加工面を形成する荒加工用の第1刃、第1刃よりも後方に設けられ中仕上げ加工面を形成する中仕上げ加工用の第2刃、第2刃よりも後方に設けられ仕上げ加工面を形成する仕上げ加工用の第3刃から形成されていると共に、リトラクト操作可能に設定されている穴加工工具を用意する工程と、
穴加工工具を用いてワークの穴加工を行う穴加工工程とを順に実施する穴加工方法において、
穴加工工程では、
第1刃の取り代をa1、第2刃の取り代をa2、第3刃の取り代をa3とし、相対表示で、a1+a2+a3=1としたとき、
a1は0.22〜0.46、a2は0.22〜0.46、a3は0.18〜0.52に設定され、
穴加工工程後に実施される前記リトラクト操作は、
(i)穴加工工具をこれの軸芯に沿って、これの進入方向と逆方向に、少なくとも、1回転当たりの送り量を超え、且つ、第1刃の刃先から前記第2刃の刃先までの軸芯方向の距離を超える距離を後退させて引き抜いて、微量引き抜き操作を行い、(ii)次に、半径方向において第1刃が仕上げ加工面に接近するように、第1刃で形成された荒加工面と第3刃で形成された仕上げ加工面との間の径方向距離未満だけ、第1刃に対する半径方向に穴加工工具を第1刃、第2刃および第3刃と共に変位させて、第1刃の刃先と荒加工面との非接触状態を確保しつつ、第2刃の刃先と中仕上げ加工面との非接触状態および第3刃の刃先と仕上げ加工面との非接触状態を確保して行われ、
リトラクト操作の後、第1刃、第2刃および第3刃の非接触状態を維持しつつ、穴加工工具をワークの穴から引き抜き方向に引き抜くことを特徴とするものである。
【0019】
第2様相の本発明によれば、軸状部に設けられた刃群は、軸状部の軸芯を中心とする周方向において間隔を隔てて並設された少なくとも3個の刃からなる。このため、ワークを穴加工する際に、軸芯に対して軸直角方向の断面において刃が互いに対向するように設けられている2枚刃の穴加工工具と異なり、刃の求心性が高まる。故にワークを穴加工する際に、穴加工工具の芯ずれ、撓みが抑制され、加工した穴の真円度や円筒度が向上する。
【0020】
また第2様相の本発明によれば、刃群とを具備する穴加工工具の刃群を構成する刃のうち少なくとも3個の刃は、軸状部の軸芯からの距離が異なり切削機能が異なるように設定されているため、穴加工工具をワークに対して進入させて穴加工を行うとき、ワークへの進入回数を低減でき、高能率加工が図られる。
【0021】
更に第2様相の本発明によれば、穴加工工具はリトラクト操作可能に設定されているため、ワークの穴加工が終了してワークの穴から穴加工工具を引き抜くときに、穴加工工具の刃群を構成する刃と穴の加工面とを非接触にでき、穴の加工面に傷がつくことが抑えられる。
【0022】
第2様相の本発明によれば、第1刃の取り代をa1、第2刃の取り代をa2、第3刃の取り代をa3とし、相対表示で、a1+a2+a3=1としたとき、a1は0.22〜0.46、a2は0.22〜0.46、a3は0.18〜0.52に設定されているため、第1刃〜第3刃の切削抵抗のバランスが確保される。従って、刃の求心性が高まる。故にワークを穴加工する際に、穴加工工具の芯ずれ、撓みが抑制され、加工した穴の真円度や円筒度が向上する。
【0023】
【発明の実施の形態】
穴加工工具は、軸芯をもつ軸状部と、軸状部に設けられ軸芯を中心とする周方向において間隔を隔てて並設された少なくとも3個の刃からなる刃群とを具備する。この場合、刃群を構成する刃は、互いに軸状部の軸芯からの距離が異なり切削機能が異なるように設定されている荒加工用の第1刃、中仕上げ加工用の第2刃、仕上げ加工用の第3刃から形成されている。
【0024】
荒加工用の第1刃の刃先は軸状部の軸芯からの距離がr1とされており、中仕上げ加工用の第2刃の刃先は軸状部の軸芯からの距離がr2とされており、仕上げ加工用の第3刃の刃先は軸状部の軸芯からの距離がr3とされている。この場合、r1<r2<r3の関係に設定されている。
【0025】
刃群を構成する刃のうち、相対的に荒加工を行う第1刃は軸状部に設けられており、相対的に仕上げ加工を行う刃は、軸状部の軸芯ののびる方向において、相対的に荒加工を行う第1刃よりも後方に設けられている。従って、軸状部の先端側から後方にかけて、相対的に荒加工を行う第1刃、相対的に中仕上げ加工を行う中仕上げ加工用の第2刃、相対的に仕上げ加工を行う仕上げ加工用の第3刃が順に設けられている。
【0026】
軸状部の軸芯まわりの周方向における第1刃、第2刃、第3刃の位相によっても相違するものの、第1刃の取り代をa1、第2刃の取り代をa2、第3刃の取り代をa3とし、相対表示でa3を1としたとき、第1刃の取り代a1は0.2〜2.1、第2刃の取り代a2は0.2〜2.1に設定されていることができる。なお、各刃の取り代の値は、上記した範囲内において、軸芯を中心とする円周方向における各刃の間隔に応じて、それぞれの刃の切削抵抗がバランシングするように設定することができる。
【0027】
これにより第1刃、第2刃、第3刃が切削加工を行うとき、第1刃、第2刃、第3刃の切削抵抗の均衡化(バランシング)の向上を図り得る。
【0028】
穴加工工具の設計では、第1刃の取り代、第2刃の取り代、第3刃の取り代を合計を1として相対表示し、各刃の取り代についての配分が行われることがある。この配分に従い、第1刃の取り代をa1、第2刃の取り代をa2、第3刃の取り代をa3とし、相対表示で、a1+a2+a3=1としたとき、a1は0.22〜0.46、a2は0.22〜0.46、a3は0.18〜0.52に設定されていることができる。なお、各刃の取り代の値は、上記した範囲内において、軸芯を中心とする円周方向における各刃の間隔に応じて、それぞれの刃の切削抵抗がバランシングするように設定することができる。
【0029】
これにより第1刃、第2刃、第3刃が切削加工を行うとき、第1刃、第2刃、第3刃の切削抵抗の均衡化(バランシング)の向上を図り得る。
【0030】
ワークに予め形成されている粗形穴に穴加工を施す形態でも良く、あるいは、粗形穴が形成されていないワークに穴加工を施す形態でも良い。
【0031】
本発明方法で用いられる穴加工工具は、ワークに対して穴加工できるものであれば良く、穴創成用の工具、ボーリング工具、リーマ工具、面取りの加工を含む複工具等を例示することができる。
【0032】
【実施例】
以下、本発明の第1実施例について図1〜図11を参照して説明する。本実施例に係る穴加工工具1は、図1及び図2に示すように、軸芯Pをもつ円柱形状の軸状部10と、軸状部10の先端側に設けられ軸芯Pを中心とする周方向において間隔を隔てて並設された第1刃11、第2刃12、第3刃13からなる刃群14とを具備する。図1において矢印S方向は、穴加工時における軸状部10の回転方向を示す。図2において、矢印T1方向は、穴加工時における軸状部10の進入方向を示す。矢印T2方向は、穴加工後における軸状部10の引き抜き方向を示す。
【0033】
第1刃11、第2刃12、第3刃13は、軸芯Pを中心とする周方向において均等間隔(120度間隔)、または、ほぼ均等間隔(ほぼ120度間隔)に配置されている。なお第1刃11、第2刃12、第3刃13は、軸状部10と一体的に形成されていても良いし、別体の刃を軸状部10に取り付けて形成しても良い。 図3は、刃群14を構成する第1刃11、第2刃12、第3刃13の並設関係を示すために、第1刃11、第2刃12、第3刃13をそれぞれ周方向に移動させてまとめた状態を模式的に示す。
【0034】
刃群14を構成する第1刃11、第2刃12、第3刃13は、共に軸状部10の先端側に保持されているため、軸状部10は第1刃11、第2刃12、第3刃13に共通されている。従って軸状部10の1回転当たりの送り量がf[mm/rev]であれば、第1刃11の送り量、第2刃12の送り量、第3刃13の送り量は共にf[mm/rev]である。
【0035】
図3に示すように、第1刃11、第2刃12、第3刃13は、それぞれ、軸状部10の半径方向において軸状部10の軸芯Pからの距離がそれぞれ異なり切削機能が異なるように設定されている。すなわち、図3に示すように、第1刃11についてはその刃先と軸芯Pとの距離がr1とされ、第2刃12についてはその刃先と軸芯Pとの距離がr2とされ、第3刃13についてはその刃先と軸芯Pとの距離がr3とされている。r1<r2<r3の関係に設定されている。なお、図3に示すように、軸芯Pに沿った方向において、第1刃11の刃先と第2刃12の刃先との距離はΔLとして示される。
【0036】
図3に示すように、刃群14を構成する第1刃11、第2刃12、第3刃13のうち、相対的に荒加工を行う刃は、軸状部10の先端側に設けられている。相対的に仕上げ加工を行う刃は、軸状部10の軸芯Pののびる方向において、相対的に荒加工を行う刃よりも後方に設けられている。従って、先方側の第1刃11は相対的に荒加工を行う荒刃であり、第2刃12は相対的に中仕上げ加工を行う中仕上げ刃であり、第3刃13は相対的に仕上げ加工を行う仕上げ刃である。
【0037】
穴加工工具1がワークに対して切削加工を行って穴加工するにあたり、図3に示すように、ワークに対する第1刃11の取り代をa1、第2刃12の取り代をa2、第3刃13の取り代をa3とすると、ワークの総取り代はa1+a2+a3として示される。また第1刃11〜第3刃13は軸状部10に設けられているため、第1刃11の送り量、第2刃12の送り量、第3刃13の送り量は、共にf[mm/rev]として示される。図6の(e)に基づけば、第1刃11の切削抵抗はk×a1×fとして表される。第2刃12の切削抵抗はk×a2×fとして表される。第3刃13の切削抵抗はk×a3×fで表される。ここでkは定数である。
【0038】
本実施例によれば、基本的には、切削抵抗のバランスを図るように、つまり、k×a1×f=k×a2×f=k×a3×fの関係、k×a1×f≒k×a2×f≒k×a3×fの関係を満足するように、第1刃11の取り代a1、第2刃12の取り代a2、第3刃13の取り代a3が設定されている。
【0039】
上記した関係を満足すれば、ワークに対して穴加工を行うとき、第1刃11、第2刃12、第3刃13の切削抵抗のバランシングが良好で均衡化が図られることになる。これにより第1刃11、第2刃12、第3刃13によりワークの穴加工を行うとき、穴加工工具1の軸芯Pのぶれを抑制するに有利となり、ワークの穴を高精度で加工できる。
【0040】
これについて図4〜図8を参照して説明を加える。図4に示すように、軸芯Pを中心とする周方向において間隔を隔てて並設された第1刃11、第2刃12、第3刃13の位相が均等(120度間隔)である場合における切削抵抗の均衡化について説明する。図4に示すように、第3刃13の刃先と軸芯Pとを結ぶと共に延長するように延長線P3をひいたとき、延長線P3と第1刃11の刃先との角度をθ1とし、延長線P3と第2刃12の刃先との角度をθ2とする。ここで、第1刃11の刃先と第3刃13の刃先との角度は、180度−θ1で表される。第2刃12の刃先と第3刃13の刃先との角度は、180度−θ2で表される。
【0041】
図4において、第1刃11の切削抵抗をベクトルF1として示し、第2刃12の切削抵抗をベクトルF2として示し、第3刃13の切削抵抗をベクトルF3として示す。図4に示すように、第1刃11の切削抵抗のベクトルF1は、主分力のベクトルF1Cと背分力のベクトルF1tとに分けられる。第2刃12の切削抵抗のベクトルF2は、主分力のベクトルF2Cと背分力のベクトルF2tとに分けられる。第3刃13の切削抵抗のベクトルF3は、主分力のベクトルF3Cと背分力のベクトルF3tとに分けられる。
【0042】
図5に記載したように、第1刃11、第2刃12、第3刃13の切削抵抗のバランシングが良好で均衡化を図るための設計条件としては、主分力のバランシングと、背分力のバランシングとを考慮する必要がある。即ち、図5の(a)に示すように、主分力のベクトルF1Cと主分力のベクトルF2Cと主分力ベクトルF3Cとの総和が0とすることが好ましい。また、図5の(b)に示すように、背分力のベクトルF1tと背分力のベクトルF2tと背分力ベクトルF3tとの総和が0とすることが好ましい。
【0043】
ここで、背分力と主分力との比は各刃11〜13においてほぼ等しいと考えられるため、図5の(c)に示すように、各切削抵抗の主分力のバランシングのみを考えれば良い。
【0044】
切削抵抗に関する主分力F1c、主分力F2c、主分力F3cのベクトルをそれぞれ平行移動させて、x座標、y座標の原点に各ベクトルを始点を合わせると、図5の(d)に示すベクトル図が得られる。
【0045】
図6に記載したように、各刃11〜13の切削抵抗は、基本的には各刃11〜13の切粉断面積に比例するため、図6の(e)に示すようになる。なお、図6の(e)においてkは定数である。
【0046】
よって、図5の(d)に示すベクトル図を考慮すると、y方向のバランシング条件は図6の[1]式で示されると共に、x方向のバランシング条件は図6の[2]の式で示される。[1]の式を変形すれば、図6の[3]の式が求められる。なお図6〜図8で使用されている丸付き数字を明細書では[ ]として示す。
【0047】
更に図6に記載したように、[3]の式を[2]の式に代入して(f)(g)が得られる。これを求めると、第1刃11の取り代a1について[4]の式が得られる。
【0048】
図7に記載したように、[4]の式を[1]の式に代入すれば、(h)が求められ、更に、第2刃12の取り代a2について[5]の式が求められる。
【0049】
前記した[4][5]の式により、第1刃11、第2刃12、第3刃13の切削抵抗のバランシングを良好に向上させる条件は、基本的には、次の[4]の式,[5]の式で表される。
【0050】
a1=[sinθ2/sin(θ1+θ2)]×a3…[4]
a2=[sinθ1/sin(θ1+θ2)]×a3…[5]
故に、軸芯Pの回りで第1刃11、第2刃12、第3刃13が120度間隔で配置されている場合には、角度θ1,θ2が60度となる。上記した[4]の式、[5]の式を考慮すれば、第1刃11、第2刃12、第3刃13が120度間隔で配置されている場合には、穴加工工具1の切削抵抗のバランシングを良好に向上させ、穴加工工具1の軸芯Pのずれを抑制するためには、基本的には、第1刃11の取り代a1=1、第2刃12の取り代a2=1、第3刃13の取り代a3=1とすることが好ましい。
【0051】
ここで、a3を1と相対表示した場合におけるバランシングを向上させる実用的な条件は、下記に示す関係式[4]’,[5]’として表される。
【0052】
a1=[sinθ2/sin(θ1+θ2)]×a3 ×k1…[4]’
a2=[sinθ1/sin(θ1+θ2)]×a3 ×k2…[5]’
ここで、定数k1及び定数k2は0.8〜1.2(1を含む)、殊に0.9〜1.1を採用することが好ましい。
【0053】
また、穴加工工具1による穴加工設計にあたり、前記したように、刃群14を構成する第1刃11、第2刃12、第3刃13の総取り代を1と相対表示し、第1刃11、第2刃12、第3刃13の各刃の切削配分を設定することが一般的に行われている。即ち、a1+a2+a3=1と相対表示し、第1刃11、第2刃12、第3刃13の各刃の切削配分を設定することが一般的に行われている。ここで、角度θ1,θ2が60度であり、軸芯Pの回りで第1刃11、第2刃12、第3刃13が120度間隔で配置されている穴加工工具1によれば、穴加工工具1のバランシングを図り、穴加工工具1の軸芯Pのずれを抑制するためには、上記した[4]の式、[5]の式によれば、第1刃11の取り代a1=1、第2刃12の取り代a2=1、第3刃13の取り代a3=1となる。
【0054】
そして相対表示で、a1+a2+a3=1と仮定すれば、第1刃11、第2刃12、第3刃13の各刃の切削配分としては、基本的には、a1は0.33(1/3)、a2は0.33(1/3)、a3は0.33(1/3)に設定されることになる。換言すれば、第3刃13の取り代a3である仕上げ取り代は、第1刃11の取り代a1である荒取り代、第2刃12の取り代a2である中仕上げ取り代と実質的に同一である。
【0055】
このように第1刃11の取り代a1、第2刃12の取り代a2、第3刃13の取り代a3を設定すれば、穴加工工具1の切削抵抗のバランシングを満足させ、穴加工工具1の軸芯Pのずれの抑制を図り得、ワークの穴加工を高精度で行うことができる。
【0056】
a1+a2+a3=1とした場合におけるバランシングを満足させる条件は、a1、a2、a3は基本的には、図8に示すように導き出され、[6],[7],[8]の式として表される。
a1=sinθ2/[sinθ1+sinθ2+sin(θ1+θ2)]…[6]
a2=sinθ1/[sinθ1+sinθ2+sin(θ1+θ2)]…[7]
a3=sin(θ1+θ2)/[sinθ1+sinθ2+sin(θ1+θ2)]…[8]
従って、a1+a2+a3=1とした場合におけるバランシングを満足させる実用的な条件は、定数を考慮すれば、次の[6]’,[7]’,[8]’の式として表される。
a1={sinθ2/[sinθ1+sinθ2+sin(θ1+θ2)]}×k3…[6]’
a2={sinθ1/[sinθ1+sinθ2+sin(θ1+θ2)]}×k4…[7]’
a3={sin(θ1+θ2)/[sinθ1+sinθ2+sin(θ1+θ2)]}×k5…[8]’
ここで、定数k3、定数k4、定数k5は0.8〜1.2(1を含む)、殊に0.9〜1.1を採用することが好ましい。
【0057】
ところで、事情により角度θ1,θ2を変化させ、軸状部10の軸芯Pの回りで第1刃11、第2刃12、第3刃13が120度間隔で配置されていないことがある。例えば、面取り用の別刃15(図9参照)が軸状部10の後端側に保持されている場合において、第1刃11、第2刃12、第3刃13の位相を設定するにあたり、別刃15の位相を考慮するためである。あるいは、他の事情により第1刃11、第2刃12、第3刃13を周方向において不均等配置することもある。
【0058】
上記したように角度θ1,θ2を変化させると共に軸芯Pの回りで第1刃11、第2刃12、第3刃13が120度の均等間隔で配置されてない場合には、穴加工工具1のバランシングを図り、穴加工工具1の軸芯Pのずれを抑制するためには、上記した[4],[5]の式、あるいは、[6]、[7]、[8]の式に基づいて、第1刃11の取り代a1、第2刃12の取り代a2、第3刃13の取り代a3を調整する必要がある。
【0059】
表1は、前記した角度θ1,θ2を変化させたときにおいて、穴加工工具1の切削抵抗のバランシングを向上させ、穴加工工具1の軸芯Pのずれを抑制するにあたり、第1刃11の取り代a1、第2刃12の取り代a2、第3刃13の取り代a3とし、相対表示でa3を1としたとき、a1の相対表示値、a2の相対表示値、a3の相対表示値を示す。
【0060】
表1のNo.1〜No.5に示す結果によれば、角度θ1,θ2を変化させたとき、穴加工工具1の切削抵抗のバランシングを図り、穴加工工具1の軸芯Pのずれを抑制するためには、相対表示でa3を1としたとき、角度θ1,θ2の大きさにもよるが、a1は0.2〜2.1、殊に0.5〜2.0に設定することができ、a2は0.2〜2.1、殊に0.5〜2.0に設定することができる。
【0061】
なお、表1のNo.1に示すように、第3刃13の取り代a3である仕上げ取り代が、第1刃11の取り代a1である荒取り代、第2刃12の取り代a2である中仕上げ取り代と実質的に同一である形態にも対応することができる。
【0062】
あるいは、表1のNo.4に示すように、第3刃13の取り代a3である仕上げ取り代が、第1刃11の取り代a1である荒取り代、第2刃12の取り代a2である中仕上げ取り代よりも小さい形態にも対応することができる。
【0063】
あるいは、表1のNo.2及びNo.5に示すように、第2刃12の取り代a2である中仕上げ取り代が、第1刃11の取り代a1である荒取り代、第3刃13の取り代a3ある仕上げ取り代よりも小さい形態にも対応することができる。
【0064】
あるいは、表1のNo.2、No.3及びNo.5に示すように、第3刃13の取り代a3である仕上げ取り代が、第1刃11の取り代a1である荒取り代、第2刃12の取り代a2である中仕上げ取り代よりも大きい形態にも対応することができる。
【0065】
更に、表1は、a1+a2+a3=1と相対表示したとき、a1の相対表示値、a2の相対表示値、a3の相対表示値についても示す。更に、a1+a2+a3=1としたとき、表1に示す結果を考慮すれば、a1は0.22〜0.46、a2は0.22〜0.46、a3は0.18〜0.52に設定することができる。また、a1は0.24〜0.44、a2は0.24〜0.44、a3は0.19〜0.51に設定することができる。
【0066】
【表1】
【0067】
なお、表1において、第3刃13の取り代a3を仕上げ取り代として固定しているが、これに限らず、第3刃13の取り代a3を必ずしも仕上げ取り代として固定する必要はなく、場合によっては、第1刃11の取り代a1を仕上げ取り代としても良い。また、第2刃12の取り代a2を仕上げ取り代としても良い。
【0068】
図9は、面取り用の別刃15を軸状部10の後端側に保持した穴加工工具1のバランシングを満足させる形態を示す。この場合、図9に示すように、面取り用の別刃15の位相は第1刃11の位相と第2刃12の位相との間となるため、θ1を75度、θ2を75度とする。この場合、バランシングを満足させる条件については、第3刃13の取り代a3を1と相対表示したとき、a1:a2:a3=1.93:1.93:1となる。またa1+a2+a3=1と相対表示したときには、a1:a2:a3=0.40:0.40:0.20となる。
【0069】
図10は、θ1を75度、θ2を60度とした場合において、バランシングを満足させる条件を示す。この場合、バランシングを満足させる条件については、第3刃13の取り代a3を1と相対表示したとき、a1:a2:a3=1.22:1.37:1となる。またa1+a2+a3=1としたとき、a1:a2:a3=0.34:0.38:0.28となる。
【0070】
図11は、穴加工終了後において、理解の容易化のため第1刃11、第2刃12、第3刃13の刃先の位置を強調して示す。図11に示すように、第1刃11は荒刃であり、ワーク400の穴の荒加工面501を加工する。第2刃12は中仕上げ刃であり、ワーク400の穴の中仕上げ加工面502を加工する。第3刃13は仕上げ刃であり、ワーク400の穴の仕上げ面503を加工する。
【0071】
ワークの穴の荒加工面501の半径は前記したr1に相当する。ワークの穴の中仕上げ加工面502の半径は前記したr2に相当する。ワークの穴の仕上げ加工面503の半径は前記したr3(r3>r2>r1)に相当する。
【0072】
ワークの穴加工を終了したときには、ワーク400の穴から穴加工工具1を進入方向と逆方向(図2に示す矢印T2方向)に後退させて引き抜く操作を行う。ワーク400の穴加工を終了した時点では、仕上げ刃である第3刃13はワーク400の穴の仕上げ加工面503に接触している。
【0073】
このため穴加工工具1をワークの穴から離脱させるべく、軸芯Pに沿ってそのまま引き抜くとき、軸芯Pからの距離が最も大きい第3刃13の刃先がワークの穴加工した仕上げ加工面503と擦り続ける。このためワークの穴の仕上げ加工面503が第3刃13の刃先により傷が付けられるおそれがある。
【0074】
この点本実施例によれば、穴加工を終了した後に、穴加工工具1を軸芯Pに沿って、これの進入方向と逆方向(図2に示す矢印T2方向)に微量(図3に示すΔLを越える距離)後退させて引き抜いて、微量引き抜き操作を行なう。この結果、図3から理解できるように、荒刃である第1刃11の刃先は荒加工面501から離脱する。なお、ΔLの2倍を越える距離後退させても良い。
【0075】
その後、図11に示すように、穴加工工具1をこれの半径方向(図11に示す矢印A1方向に沿って)に変位させるリトラクト操作を行なう。このようにリトラクト操作を行う結果、最も径が大きい仕上げ刃である第3刃13の刃先を、ワークの穴の仕上げ加工面503から離脱させ、第3刃13の刃先とワークの穴の仕上げ加工面503とを非接触にさせる。上記のようにリトラクト操作を行う結果、第2刃12の刃先を中仕上げ加工面502から離脱させ、第2刃12の刃先と中仕上げ加工面502とを非接触にさせる。
【0076】
上記したように穴加工工具1をこれの半径方向(図11に示す矢印A1方向に沿って)に変位させるリトラクト操作させるときに、穴加工工具1を半径方向に変位させるリトラクト量は、基本的には、荒加工面501と仕上げ加工面503との間の距離D未満(図11参照)となる。図3によれば、リトラクト量に対応する距離Dは、基本的には、第2刃12の取り代a2と第3刃13の取り代a3との和に相当するものと推察される。
【0077】
その後、第3刃13の刃先と仕上げ加工面503とを非接触とさせたままの状態で、更に、第2刃12の刃先と中仕上げ加工面502とを非接触とさせたままの状態で、穴加工工具1を穴から引き抜き方向(図2に示す矢印T2方向)に後退ざて引き抜くことができる。
【0078】
上記したようにリトラクト操作が可能であるため、径が最も大きい第3刃13の刃先と仕上げ加工面503とを非接触とすることができ、第2刃12の刃先と中仕上げ加工面502とを非接触とすることができ、穴加工工具1を穴から矢印T2方向に非接触状態で引き抜くことができる。このため、第3刃13の刃先がワークの穴加工した仕上げ加工面503と擦ることが抑制され、第2刃12の刃先がワークの穴加工した中仕上げ加工面502と擦ることが抑制される。ひいては、仕上げ加工面503、中仕上げ加工面502に傷が付けられることを抑制できる。
【0079】
以上説明したように本実施例によれば、軸状部10の先端側に設けられた刃群14は、軸状部10の軸芯Pを中心とする周方向において間隔を隔てて並設された第1刃11,第2刃12,第3刃13からなる。このため、ワークを穴加工する際に、軸芯Pに対して軸直角方向の断面において刃が互いに対向するように設けられている2枚刃の穴加工工具と異なり、ワークを穴加工する際に、穴加工工具1の芯ずれ、撓みが抑制され、加工した穴の真円度や円筒度が向上する。
【0080】
また本実施例によれば、刃群14を構成する刃11,12,13は、軸状部10の軸芯Pからの距離が異なり切削機能が異なるように設定されているため、穴加工工具1をワークに対して進入させて穴加工を行うとき、荒加工、中仕上げ加工、仕上げ加工をまとめて行うことができ、従って、ワークへの進入回数を低減でき、高能率加工が図られる。
【0081】
(第2実施例)
図12〜図15は第2実施例を示す。第2実施例は前記した第1実施例と基本的には同様の構成、作用効果を有する。第2実施例は図3〜図11を準用することができる。以下、相違する部分を中心として説明する。本実施例の穴加工工具1Cは、軸芯Pをもつ軸状部10と、軸状部10に設けられ軸芯Pを中心とする周方向において間隔を隔てて並設された荒加工用の第1刃11、中仕上げ加工用の第2刃12、仕上げ加工用の第3刃13からなる刃群14とをもつ。
【0082】
第1刃11、第2刃12、第3刃13は、前記した第1実施例と同様であり、軸状部10の軸芯Pからの距離がそれぞれ異なり切削機能が異なるように設定されている。第1実施例と同様に、図3に示すように、第1刃11についてはその刃先と軸芯Pとの距離がr1とされている。第2刃12についてはその刃先と軸芯Pとの距離がr2とされている。第3刃13についてはその刃先と軸芯Pとの距離がr3とされている。r1<r2<r3の関係に設定されている。従って、本実施例においても、第1刃11の取り代a1、第2刃12の取り代a2、第3刃13の取り代a3の関係は、第1実施例を準用することができる。
【0083】
更に本実施例の穴加工工具1Cは、図12に示すように、刃群14よりも先方に位置するように軸状部10の先端側に設けられた先行粗加工用刃群64を有する。図14に示すように、先行粗加工用刃群64は、軸芯Pを中心とする周方向において120度間隔に均等間隔を介して並設された3個の先行粗加工用刃61,62,63からなる。先行粗加工用刃61,62,63の取り代は、基本的には同一である。
【0084】
先行粗加工用刃61,62,63は、軸状部10の半径方向において軸状部10の軸芯Pからの距離がそれぞれ同一であり、基本的には切削機能が同一とされている。従って先行粗加工用刃61,62,63は、荒加工よりも粗い加工を行ない、粗形穴形成用として設定されている。
【0085】
図15に示すように、各先行粗加工用刃61の刃先と軸芯Pとの距離は同一であり、r0(r0<r1<r2<r3)とされている。このため先行粗加工用刃61,62,63の切削抵抗は基本的には同一であり、先行粗加工用刃61,62,63の切削抵抗のバランスが図られるため、軸状部10の撓みが抑制される。
【0086】
本実施例の穴加工工具1Cによれば、刃群14よりも先方に位置する先行粗加工用刃群64によりワークに粗形穴を形成する。
【0087】
更に、先行粗加工用刃群64よりも後方に配置された刃群14の荒加工用の第1刃11により荒加工を施し、中仕上げ加工用の第2刃12により中仕上げ加工を施し、仕上げ加工用の第3刃13により仕上げ加工を施し、その粗形穴に対して穴加工を施すことができる。
【0088】
本実施例においても、第1実施例と同様に、穴加工終了後において穴加工工具1Cを後退させた後に半径方向(図11に示す矢印A1方向)に変位させれば、リトラクト操作可能に設定されている。
【0089】
なお本実施例によれば、先行粗加工用刃61,62,63は軸状部10と一体的に形成されていても、別体のものを軸状部10に取り付けることにしても良い。
【0090】
(適用例)
図16は、第1実施例をボーリング工具に適用したものであり、軸状部10の軸芯Pの回りの周方向において第1刃11、第2刃12、第3刃13を均等配置した適用例を示す。70はクランパ、71は台座、72は押さえ具を示す。図17は、第1実施例を面取りの加工を含む穴加工工具に適用したものであり、面取り用の別刃15を軸状部10の後端側に保持した穴加工工具1でワークの穴について穴加工を行う適用例を示す。
【0091】
(その他)
上記した実施例によれば、刃群14は3つの刃である第1刃11、第2刃12、第3刃13から形成されているが、これに限らず、場合によっては、刃群14は3つの刃である第1刃11、第2刃12、第3刃13の他に第4刃を軸状部10の先端側に設けても良い。その他、本発明は上記した実施例のみに限定されるものではなく、要旨を逸脱しない範囲内で適宜変更して実施できるものである。
【0092】
【発明の効果】
本発明によれば、穴加工工程後に実施されるリトラクト操作は、(i)穴加工工具をこれの軸芯に沿って、これの進入方向と逆方向に、少なくとも、1回転当たりの送り量を超え、且つ、第1刃の刃先から前記第2刃の刃先までの軸芯方向の距離を超える距離を後退させて引き抜いて、微量引き抜き操作を行い、(ii)次に、半径方向において第1刃が仕上げ加工面に接近するように、第1刃で形成された荒加工面と第3刃で形成された仕上げ加工面との間の径方向距離未満だけ、第1刃に対する半径方向に穴加工工具を第1刃、第2刃および第3刃と共に変位させて、第1刃の刃先と荒加工面との非接触状態を確保しつつ、第2刃の刃先と中仕上げ加工面との非接触状態および第3刃の刃先と仕上げ加工面との非接触状態を確保して行われる。そして、リトラクト操作の後、第1刃、第2刃および第3刃の前記非接触状態を維持しつつ、穴加工工具をワークの穴から引き抜き方向に引き抜く。このような本願発明によれば、穴加工の高能率加工に有利であり、更に、穴加工工具の軸芯Pのずれ、撓みを抑制でき、しかも、穴加工が終了してワークの穴から穴加工工具を引き抜くとき、ワークの穴の加工面に傷がつくおそれを抑制できる穴加工工具を用いた穴加工方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】第1刃、第2刃、第3刃の形態を示す加工工具を模式的に示す構成図である。
【図2】穴加工工具の側面の先端を模式的に示す構成図である。
【図3】穴加工工具の先端に設けられている第1刃、第2刃、第3刃を模式的に示す構成図である。
【図4】第1刃、第2刃、第3刃の切削抵抗と角度θ1,θ2との関係を模式的に示す構成図である。
【図5】第1刃、第2刃、第3刃の切削抵抗のバランシング条件を説明するための図である。
【図6】第1刃、第2刃、第3刃の切削抵抗のバランシング条件を説明するための図である。
【図7】第1刃、第2刃、第3刃の切削抵抗のバランシング条件を説明するための図である。
【図8】第1刃、第2刃、第3刃の切削抵抗のバランシング条件を説明するための図である。
【図9】第1刃、第2刃、第3刃の切削抵抗と角度θ1,θ2との関係を模式的に示す構成図である。
【図10】第1刃、第2刃、第3刃の切削抵抗と角度θ1,θ2との関係を模式的に示す構成図である。
【図11】第1刃、第2刃、第3刃でワークを穴加工していると共にリトラクト操作を示す構成図である。
【図12】穴加工工具の側面の先端を模式的に示す構成図である。
【図13】第1刃、第2刃、第3刃の形態を示す加工工具を模式的に示す構成図である。
【図14】先行粗加工用刃の形態を示す加工工具を模式的に示す構成図である。
【図15】先行粗加工用刃と第1刃〜第3刃との関係を示す構成図である。
【図16】適用例を示し、ボーリング工具に適用した構成図である。
【図17】適用例を示し、面取りの加工を含む穴加工工具に適用した構成図である。
【図18】従来技術に係る穴加工工具を示す構成図である。
【図19】他の従来技術に係る穴加工工具を示す構成図である。
【符号の説明】
図中、1は穴加工工具、10は軸状部、11は第1刃、12は第2刃、13は第3刃、14は刃群、64は先行粗加工用刃群、61,62,63は先行粗加工用刃を示す。
Claims (2)
- 軸芯をもつ軸状部と、前記軸状部に設けられ軸芯を中心とする周方向において間隔を隔てて並設された少なくとも3個の刃からなる刃群とを具備すると共に、前記刃群を構成する刃は、荒加工面を形成する荒加工用の第1刃、前記第1刃よりも後方に設けられ中仕上げ加工面を形成する中仕上げ加工用の第2刃、前記第2刃よりも後方に設けられ仕上げ加工面を形成する仕上げ加工用の第3刃から形成されていると共に、リトラクト操作可能に設定されている穴加工工具を用意する工程と、
前記穴加工工具を用いてワークの穴加工を行う穴加工工程とを順に実施する穴加工方法において、
前記穴加工工程では、前記第1刃の取り代をa1、前記第2刃の取り代をa2、前記第3刃の取り代をa3とし、相対表示でa3を1としたとき、前記第1刃の取り代a1は0.2〜2.1、前記第2刃の取り代a2は0.2〜2.1に設定され、
前記穴加工工程後に実施される前記リトラクト操作は、
前記穴加工工具をこれの軸芯に沿って、これの進入方向と逆方向に、少なくとも、1回転当たりの送り量を超え、且つ、前記第1刃の刃先から前記第2刃の刃先までの軸芯方向の距離を超える距離を後退させて引き抜いて、微量引き抜き操作を行い、次に、半径方向において前記第1刃が前記仕上げ加工面に接近するように、前記第1刃で形成された前記荒加工面と前記第3刃で形成された前記仕上げ加工面との間の径方向距離未満だけ、前記第1刃に対する半径方向に前記穴加工工具を前記第1刃、前記第2刃および前記第3刃と共に変位させて、前記第1刃の刃先と前記荒加工面との非接触状態を確保しつつ、前記第2刃の刃先と前記中仕上げ加工面との非接触状態および前記第3刃の刃先と前記仕上げ加工面との非接触状態を確保して行われ、
前記リトラクト操作の後、前記第1刃、前記第2刃および前記第3刃の前記非接触状態を維持しつつ、前記穴加工工具を前記ワークの前記穴から引き抜き方向に引き抜くことを特徴とする穴加工方法。 - 軸芯をもつ軸状部と、前記軸状部に設けられ軸芯を中心とする周方向において間隔を隔てて並設された少なくとも3個の刃からなる刃群とを具備すると共に、前記刃群を構成する刃は、荒加工面を形成する荒加工用の第1刃、前記第1刃よりも後方に設けられ中仕上げ加工面を形成する中仕上げ加工用の第2刃、前記第2刃よりも後方に設けられ仕上げ加工面を形成する仕上げ加工用の第3刃から形成されていると共に、リトラクト操作可能に設定されている穴加工工具を用意する工程と、
前記穴加工工具を用いてワークの穴加工を行う穴加工工程とを順に実施する穴加工方法において、
前記穴加工工程では、
前記第1刃の取り代をa1、前記第2刃の取り代をa2、前記第3刃の取り代をa3とし、相対表示で、a1+a2+a3=1としたとき、a1は0.22〜0.46、a2は0.22〜0.46、a3は0.18〜0.52に設定され、
前記穴加工工程後に実施される前記リトラクト操作は、
前記穴加工工具をこれの軸芯に沿って、これの進入方向と逆方向に、少なくとも、1回転当たりの送り量を超え、且つ、前記第1刃の刃先から前記第2刃の刃先までの軸芯方向の距離を超える距離を後退させて引き抜いて、微量引き抜き操作を行い、次に、半径方向において前記第1刃が前記仕上げ加工面に接近するように、前記第1刃で形成された前記荒加工面と前記第3刃で形成された前記仕上げ加工面との間の径方向距離未満だけ、前記第1刃に対する半径方向に前記穴加工工具を前記第1刃、前記第2刃および前記第3刃と共に変位させて、前記第1刃の刃先と前記荒加工面との非接触状態を確保しつつ、前記第2刃の刃先と前記中仕上げ加工面との非接触状態および前記第3刃の刃先と前記仕上げ加工面との非接触状態を確保して行われ、
前記リトラクト操作の後、前記第1刃、前記第2刃および前記第3刃の前記非接触状態を維持しつつ、前記穴加工工具を前記ワークの前記穴から引き抜き方向に引き抜くことを特徴とする穴加工方法。
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