JP4388779B2 - マラリア原虫の検出方法、検出装置、およびその試薬キット - Google Patents

マラリア原虫の検出方法、検出装置、およびその試薬キット Download PDF

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Description

本発明は、マラリア原虫の検出方法、検出装置及びその試薬キットに関し、より詳細には、試料中の赤血球を2段階で溶血させることにより、マラリア原虫をフローサイトメータで正確かつ簡便に弁別するマラリア原虫の検出方法、検出装置、およびその試薬キットに関する。
マラリアは熱帯・亜熱帯地方に広く分布する寄生虫感染症である。WHOの統計によれば世界人口の40%以上が居住する地域がマラリア汚染地域であり、年間3〜5億人程度が罹患し、そのうち、死亡者は150〜300万人に至ると推定されている。
マラリアはハマダラカと呼ばれる蚊によって媒介される。マラリア原虫をもつハマダラカに吸血されると、ハマダラカの唾液とともに原虫が血液中に注入される。原虫は肝細胞内に進入し、そこで増殖し、再び血液中に放出される。このときの原虫の形態はメロゾイト(分裂小体:merozoite)と呼ばれ、血液中に放出されると直ちに赤血球内に侵入し、その形態を変化させながら発育していく。この形態変化は生活環と呼ばれ、生活環の各段階(ステージ)で、リングフォーム(輪状体:ring form)、トロポゾイト(栄養体:tropozoite)、シゾント(分裂体:schizonte)と呼ばれる。シゾントまで発育した原虫は赤血球を破壊し、再びメロゾイトとなって血液中に放出される。放出されたメロゾイトは赤血球に侵入し、再び生活環を繰り返して増殖を繰り返す。マラリア原虫はこのサイクルを繰り返すことによって増殖し、血液中の赤血球を破壊し続ける。なお、メロゾイトの一部は赤血球に感染することなく、ガメサイト(生殖母体:gametocyte)と呼ばれる形態に分化する。ガメトサイトは、ハマダラカの吸血により、さらなる感染の母体となる。
マラリアの診断に用いられる測定方法として、従来から最も多用されている方法は、血液塗抹標本をギムザ染色や核酸染色性蛍光色素等で染色し、光学顕微鏡又は蛍光顕微鏡等を用いて目視により顕微鏡で観察する方法である。
しかし、この方法は、塗抹標本の作成、固定、染色など煩雑な工程を必要とし、それらの処理のために長時間を要する。また、マラリア原虫の検出、同定が目視によって行われるため、正確な検出、同定には観察者の熟練を要する。さらに、検査されるマラリア患者の検体には感染率の低いものも含まれるため、高感度検出を実現するためには多数の赤血球を長時間かけて観察する必要がある。このようなことから、測定結果はしばしば正確性を欠くとともに、検体の前処理と測定に長時間を要し、多数の検体を処理することは困難であった。
近年、顕微鏡検査に代わる方法としてDNAプローブ法、間接蛍光抗体法、間接赤血球凝集法等が開発されているが、これらの方法も操作が煩雑であったり、測定に長時間を要したり、高価である等の欠点を有している。
これらの欠点を解決する方法として、フローサイトメトリによるマラリア原虫の測定方法が開発されている。この方法は、マラリア原虫を核酸染色性色素で染色し、フローサイトメータで測定するものである。この方法では、ほとんどの場合、測定は自動化されており、顕微鏡検査に比較して誤差は極めて少ない。また、測定時間は数十秒〜数分と短時間であり、多数の検体を一度に処理するができ、迅速かつ簡便な測定法である(例えば、非特許文献1〜4参照)。
しかし、スキャッタグラム上で、網状赤血球がマラリア感染赤血球の出現位置と重なることがあり、マラリア感染赤血球の測定を妨害して測定誤差を引き起こすとともに、測定感度を低下させることが指摘されている。
この欠点を解決するために、赤血球を、ホルムアルデヒド、エチレングリコールを含む溶血剤により溶血し、マラリア原虫を遊離した後に染色してフローサイトメータで測定する方法(例えば、非特許文献5参照)や赤血球のみを遠心分離で分離し、化学物質又は超音波で溶血した後、計数する方法がある(特許文献1参照)。
しかし、これらの方法でも、遠心分離操作等を必要とし、操作が煩雑で、長時間かかるという問題がある。
また、界面活性剤で赤血球を溶血させ、遊離したマラリア原虫に蛍光染色を混合し、蛍光染色されたマラリア原虫を含む血液試料をフローサイトメータで測定し、前方散乱光強度及び側方蛍光強度を得てスキャッタグラムを作成し、スキャッタグラム上で各種血球、デブリス(溶血した赤血球の残骸)及びマラリア原虫を弁別、検出する方法がある(非特許文献6及び特許文献2参照)。この方法によれば、培養マラリアを生活環の各ステージごとに、高感度に検出することができる。
J. M. Whaunら、Cytometry, 4, 117, 1983 J. W. Jacobberger、Cytometry, 5, 589, 1984 J. D. Hare、J. Histochem. Cytochem. 34. 2. 215, 1986 A. E. Biancoら、Experi. Parasitol. 62, 275, 1986 P. H. Vienenら、Cytometry, 14, 276, 1993 英国特許GB第2270752号公報 A.Saito-Itoら、Parasitol. Int., 50(4), 249, 2001 特開平11−75892号公報
上述したA.Saito-Itoらの論文(Parasitol.Int.)及び特開平11−75892号公報に記載された測定方法では、実際のマラリア感染患者の検体を測定した結果が示されていないため、実際のマラリア感染患者の診断への応用可能性は未知数である。
本発明は、上記課題に鑑みなされたものであり、網状赤血球の影響を排除して、正確かつ高精度にマラリア原虫を検出することができるマラリア原虫の検出方法、検出装置、およびその試薬キットを提供することを目的とする。
本発明者らは、A.Saito-Itoらの論文(Parasitol.Int.)及び特開平11−75892号公報に記載された測定方法を、実際のマラリア感染患者の血液の測定に利用した場合、依然として十分に溶血されない網状赤血球が存在し、その影響によりバックグラウンドが大きくなり、正確な測定ができない検体があることを見出し、マラリア感染患者の血液の測定方法について鋭意研究を行った結果、さらに、赤血球の溶血処理を2段階で行うことにより、網状赤血球の影響を最大限に排除することができ、正確かつ高精度にマラリア原虫を検出することができることを見出し、本発明の完成に至った。
すなわち、本発明によれば、検体中の赤血球を溶血してマラリア原虫を遊離させ、遊離したマラリア原虫を蛍光色素で染色して測定用試料を調製し、該測定用試料から光学的情報を検出し、得られた光学的情報に基づいてマラリア原虫を弁別するマラリア原虫の検出方法であって、
前記溶血を、第1の界面活性剤を含む第1の溶血剤で検体を処理し、処理された検体を、第1の界面活性剤よりも溶血力の強い第2の界面活性剤を含む第2の溶血剤で処理することにより行うマラリア原虫の検出方法が提供される。
また、本発明によれば、第1の界面活性剤を含有する第1の溶血剤と、第1の界面活性剤よりも溶血力の強い第2の界面活性剤を含有する第2の溶血剤と、蛍光色素とからなるマラリア原虫検出用の試薬キットが提供される。
また、本発明によれば、第1の界面活性剤を含む第1の溶血剤でマラリア原虫を含む試料を処理し、第1の溶血剤で処理された試料を第1の界面活性剤よりも溶血力の強い第2の界面活性剤を含む第2の溶血剤で処理し、第2溶血剤で処理された試料を蛍光色素で染色することにより得られた測定試料を収容するチャンバと、
測定試料の蛍光情報を測定するフローサイトメータと、
前記蛍光情報に基づいてマラリア原虫を弁別する制御部と、
を備えるマラリア原虫の検出装置が提供される。
本発明によれば、遠心分離等の煩雑な操作を行うことなく、試料中のマラリア原虫を、迅速かつ特異的に検出することができる。
特に、試料に対して溶血剤を少なくとも2段階以上で添加することにより、赤血球や網状赤血球を十分に溶血させ、かつマラリア原虫には測定に影響するダメージを与えないよう処理することで、試料中のマラリア原虫を正確に測定することができる。
本発明においては、まず、検体中の赤血球を溶血してマラリア原虫を遊離させる。
検体としては、マラリアに感染した赤血球を含むものであり、臨床分野で得られる血液試料(例えば、末梢血等)のほか、試験的に培養された培養液等であってもよい。なお、試料は、マラリア原虫に感染しているものであれば、その程度は特に限定されず、例えば、10%以上の感染率のもの、0.01%以下の感染率のものも含まれる。試料は抗凝固剤等により処理されたものでもよい。抗凝固剤としては、特に限定されないが、例えば、EDTA、ヘパリン、クエン酸又はクエン酸塩等を使用することができる。
溶血は、まず、検体を第1の界面活性剤を含有する第1の溶血剤で処理し、次いで、得られた検体を第2の界面活性剤を含有する第2の溶血剤で処理することにより行う。
第1の溶血剤に含まれる第1の界面活性剤は、マラリア原虫に対して、測定に影響するようなダメージを与えない程度に試料を処理することができる界面活性剤であればよく、検体中に含まれる赤血球及びマラリア原虫の量、つまり、感染率及び希釈濃度等を考慮して選択することができる。好ましくは、赤血球の溶血作用のさほど強くないものが挙げられる。つまり、第1の溶血剤による処理では、検体中の赤血球、ことに網状赤血球が十分に溶血されなくてもよい。また、第1の溶血剤で所望の作用を示すのであれば、その中に含まれる界面活性剤は、単一の界面活性剤を単独で用いてもよいし、種々の種類の界面活性剤の2以上を混合して用いてもよい。
具体的には、非イオン性、アニオン性及びカチオン性界面活性剤等が挙げられる。
例えば、非イオン性界面活性剤としては、一般式
1‐R2−(CH2CH2O)n‐H
(式中、R1は炭素数10〜22のアルキル、アルケニル、アルキニル基、R2は−O−、−(C64)−O−又は−COO−、nは8〜120の整数である)
で表されるポリオキシエチレン系非イオン性界面活性剤が好ましい。
炭素数10〜22のアルキル基としては、直鎖又は分岐のものが挙げられ、例えば、デシル、ラウリル、ミリスチル、パルミチル、ステアリル、イコシル等が挙げられる。炭素数10〜22のアルケニル基としては、上記アルキル基の任意の位置に1以上の二重結合を有するもの、炭素数10〜22のアルキニル基としては、上記アルキル基の任意の位置に1以上の三重結合を有するものが挙げられる。
例えば、ポリオキシエチレン(n)アルキルフェニルエーテルが挙げられる。さらに具体的には、ポリオキシエチレン(40)ノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレン(100)ノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレン(10)ラウリルエーテル等が挙げられる。
非イオン性界面活性剤の濃度は、用いる界面活性剤の種類によって適宜調整することができる。過剰な界面活性剤の濃度はマラリア原虫にダメージを与え、原虫が発する散乱光及び/又は蛍光強度が減少し、溶解した赤血球のデブリスの影響を受けるため、好ましくない。例えば、ポリオキシエチレン(40)ノニルフェニルエーテルを用いた場合には、処理時の検体を含む全液量に対して、0.1〜20mg/L程度、ポリオキシエチレン(100)ノニルフェニルエーテルの場合には、0.1〜30mg/L程度が適当である。
アニオン性界面活性剤は、一般式
1‐R2−(CH2CH2O)n‐X
(式中、R1、R2、nは上記定義と同じ、XはSO3Na、COONa、OSO3Na又はONaである)
で表されるポリオキシエチレン系アニオン界面活性剤が好ましい。
アニオン性界面活性剤の濃度は、用いる界面活性剤の種類によって適宜調整することができる。
また、カチオン性界面活性剤は、一般式
Figure 0004388779
(式中、Raは炭素数8〜20のアルキル、アルケニル又はアルキニル基、Rb、Rc及びRdは炭素数1〜8のアルキル、アルケニル又はアルキニル基、X-及びY-は陰イオン、mは7〜19の整数である)
で表されるカチオン性界面活性剤が好ましい。
炭素数8〜20のアルキルとしては、直鎖又は分岐のものが挙げられ、オクチル、デシル、ラウリル、ミリスチル、パルミチル、ステアリル、イコシル等が挙げられる。炭素数8〜20のアルケニル基としては、上記アルキル基の任意の位置に1以上の二重結合を有するもの、炭素数8〜20のアルキニル基としては、上記アルキル基の任意の位置に1以上の三重結合を有するものが挙げられる。炭素数1〜8のアルキルとしては、メチル、エチル、プロピル、ブチル、イソブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル等が挙げられる。炭素数1〜8のアルケニル基としては、上記アルキル基の任意の位置に1以上の二重結合を有するもの、炭素数1〜8のアルキニル基としては、上記アルキル基の任意の位置に1以上の三重結合を有するものが挙げられる。なかでも、Raとしては、オクチル、デシル、ラウリル、ミリスチル及びセチル基等が挙げられる。Rb〜Rdとしては、メチル、エチル、プロピル及びイソプルピル基等が好ましい。
陰イオンとしては、フッ素、塩素、臭素及びヨウ素イオン等のハロゲンイオン、CF3SO3 -、 BF4 -、ClO4 -等が挙げられる。
カチオン性界面活性剤は、具体的には、オクチルトリメチルアンモニウムブロマイド(OTAB)、デシルトリメチルアンモニウムブロマイド(DTAB)、ラウリルトリメチルアンモニウムクロライド(LTAC)、ミリスチルトリメチルアンモニウムブロマイド(MTAB)、セチルピリジニウムクロライド(CPC)等が挙げられる。
カチオン性界面活性剤濃度は、界面活性剤に含まれるRa〜Rdの総炭素数が増えるごとに、溶血力が強くなることを考慮して決定すべきである。過剰な界面活性剤濃度はマラリア原虫までも溶解するため好ましくない。本発明においては、処理時の検体を含む全液量に対して、例えば、MTAB(総炭素数17)では300〜3000mg/L、LTAC(総炭素数15)では300〜10000mg/L、DTAB(総炭素数13)では5000〜20000mg/L、OTAB(炭素数11)では21000〜40000mg/Lが好適である。なお、上記以外の界面活性剤、例えば、トリトンX−100(ポリエチレン−グリコール−モノ[p−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)フェニル]エーテル)、CHAPS(3−[(3−クロロアミドプロピル)ジメチルアンモニオ]プロパンスルホン酸)、CHAPSO(3−[(3−クロロアミドプロピル)ジメチルアンモニオ]−2−ヒドロキシプロパンスルホン酸)、BIGCHAP(N,N−ビス(3−D−グルコンアミドプロピル)クロラミド)、デオキシ−BIGCHAP(N,N−ビス(3−D−グルコンアミドプロピル)デオキシクロラミド)、シュクロースモノカプレート(sucrose monocaprate)、シュクロースモノコール酸エステル(sucrose monocholate)、n−オクチル−α−D−グルコピラノシド(n-octyl-α-D-glucopyranoside)、n−ヘプチル−α−D−チオグルコピラノシド(n-heptyl-α-D-thioglucopyranoside)、n−オクチル−α−D−チオグルコピラノシド(n-octyl-α-D-thioglucopyranoside)、n−ドデシル−α−D−マルトピラノシド(n-dodecyl-α-D-maltopyranoside)、n−ノニル−α−D−チオマルトピラノシド(n-nonyl-α-D-thiomaltopyranoside)等を用いてもよい。
第1の界面活性剤を含有する第1の溶血剤は、通常、界面活性剤のほかに、上述した緩衝剤やキレート剤等を含有する水又は有機溶媒等を含有していてもよい。ここで、有機溶媒とは、第1の界面活性剤と混ざり、血液試料中に含有される赤血球やマラリア原虫等に対して影響を及ぼさないものであればよく、後述するように、第1の溶血剤に核酸染色色素が含有される場合には、この色素を溶解し、安定に保持し得るものであることが好ましい。具体的には、メタノール、エタノール、エチレングリコール、ジメチルスルホキシド等の水溶性非水溶媒等が挙げられる。
第1の溶血剤での処理は、後のフローサイトメータでの測定によって十分な定量性と正確さが得られるように行うことが必要である。例えば、反応温度は20〜50℃程度、反応時間は5〜300秒程度が適当である。なお、この処理で溶血反応が完結している方が、一般に正確性が高いといえるが、得られる正確性が許容できる範囲であれば、必ずしも反応が完結していなくてもよい。
第2の溶血剤に含有される第2の界面活性剤は、第1の溶血剤による溶血処理後に残存している赤血球、特に網状赤血球をも十分に溶血するが、マラリア原虫に対しては、依然として測定に影響するダメージがほとんど与えられない程度に処理することができるものを選択して用いる。
第2の界面活性剤は、第1の界面活性剤の種類、試料の種類、状態等を考慮して、第1の界面活性剤として例示したものから適宜選択することができ、その濃度を調整して使用することができる。また、第2の界面活性剤は、第1の界面活性剤よりも溶血力の強い界面活性剤を選択することが好ましい。溶血剤の組成も、上述と同様に調整することができる。なお、界面活性剤は、第1の界面活性剤と異なる種類の界面活性剤を用いることが好ましく、特に、第1の界面活性剤として非イオン性界面活性剤を用いた場合には、第2の界面活性剤としてはカチオン性又はアニオン性の界面活性剤を用いることが好ましい。具体的には、処理時の検体を含む全液量に対して、第1の界面活性剤として、0.1〜20mg/Lのポリオキシエチレン(40)ノニルフェニルエーテルを用いた場合には、第2の界面活性剤として、300〜10000mg/Lのラウリルトリメチルアンモニウムクロライドを用いることが好ましい。
第2の溶血剤での処理は、第1の溶血剤での処理で例示したのと同様の条件下で行うことが適当である。
本発明の方法では、さらに、遊離したマラリア原虫を蛍光色素で染色して測定用試料を調製する。この染色は、第1の溶血剤での処理と同時に又はその後、第2の溶血剤での処理と同時に又はその後のいずれに行ってもよい。つまり、第1の溶血剤及び/又は第2の溶血剤に、界面活性剤とともに色素を含有させ、その溶血剤を用いて試料を処理して染色してもよいし、第1の溶血剤又は第2の溶血剤での処理を行った後に、処理された試料に色素を添加して染色を行ってもよい。特に、蛍光色素が水溶液中で不安定な場合には、上述した水溶性非水溶媒に溶解し、フローサイトメータに導入する直前に、処理された試料と混合してマラリア原虫を染色してもよい。
蛍光色素としては、核酸を染色できる蛍光色素であれば特に限定はされるものではない。例えば、アクリジンオレンジ(Acridine Orange)、チアゾールオレンジ(Thiazole Orange)、エチジウムブロマイド(Ethidium Bromide)、プロピジウムアイオダイド(Propidium Iodide)、オーラミンO(Auramine O)、ヘキスト(Hoechst)33258、ヘキスト33342、ローダミン(Rhodamine)123、DiOC1(3)等が挙げられる。なお、これらは、光源としてアルゴンレーザ(488nm)を使用する場合に使用できる蛍光色素である。
他の波長の光源、例えば、赤色レーザなどを使用する場合には、それに合わせて使用可能な色素を適宜選択すればよい。その色素としては、一般式
Figure 0004388779
(式中、R1 は水素原子又は低級アルキル基;R2 及びR3 は水素原子、低級アルキル基又は低級アルコキシ基;R4 は水素原子、アシル基又は低級アルキル基;R5 は水素原子、置換されていてもよい低級アルキル基;Zは硫黄原子、酸素原子又は低級アルキル基で置換された炭素原子;nは1又は2;X- はアニオンである)で表わされる色素が使用できる。
また、一般式
Figure 0004388779
(式中、R1は水素原子又はアルキル基;R2及びR3は水素原子、低級アルキル基又は低級アルコキシ基;R4は水素原子、アシル基、又はアルキル基;Zは硫黄、酸素、又は低級アルキル基で置換された炭素原子;nは0,1又は2であり;X-はアニオンである)で表わされる色素も使用できる。
さらに、アクリジンホモダイマー(Acridine homodimer)、アクチノマイシン(Actinomycin)D、7-アミノアクチノマイシンD (7-AAD)、 9-アミノ-6-クロロ-2-メトキシアクリジン(ACMA)、BOBO-1、BOBO-3、BO-PRO-1、BO-PRO-3、4',6-ジアミジノ-2-フェニルインドール(DAPI)、ジヒドロエチジウム(Dihydroethidium)、4',6-(ジイミダゾリン-2-イル)-2-フェニルインドール、
エチジウム・アクリジン・ヘテロダイマー(Ethidium-acridine heterodimer)、 エチジウムジアジド(Ethidium diazide)、エチジウム・ホモダイマー1(Ethidium homodimer-1)、エチジウム・ホモダイマー2、エチジウムモノアジド(Ethidium monoazide)、ヘキシジウムアイオダイド(Hexidium iodide)、ヒドロキシスチルバミジン(Hydroxystilbamidine)、メタンスルホネート(methanesulfonate)、 LDS 751、オイルグリーンssDNA定量試薬(OilGreen ssDNA quantitation reagent)、 ピコグリーンdsDNA定量試薬(PicoGreen dsDNA quantitation reagent)、PO-PO-1、PO-PO-3、PO-PRO-1、PO-PRO-3、SYTO 11生細胞核酸染料(SYTO 11 live-cell nucleic acid stain)、SYTO 12生細胞核酸染料、SYTO 13生細胞核酸染料、SYTO 14生細胞核酸染料、SYTO 15生細胞核酸染料、SYTO 16生細胞核酸染料、SYTO 20生細胞核酸染料、SYTO 21生細胞核酸染料、SYTO 22生細胞核酸染料、SYTO 23生細胞核酸染料、SYTO 24生細胞核酸染料、SYTO 25生細胞核酸染料、SYTO 17赤色蛍光核酸染料、SYTOX緑色核酸染料、TO-PRO-1、TO-PRO-3、TO-PRO-5、 TO-TO-1、TO-TO-3、YO-PRO-1、YO-PRO-3、YO-YO-1、YO-YO-3等も使用できる。これらは、Molecular Probes, Inc.より入手できる。
蛍光色素の量は使用する色素の種類によって異なるが、一般に、処理時の検体を含む全液量に対して、0.001〜10000ppm程度、好ましくは0.005〜1000ppm程度、より好ましくは0.01〜500ppm程度が挙げられる。
本発明における試料、第1の溶血剤及び/又は第2の溶血剤は、pHを一定に保つための緩衝剤を含有してもよい。緩衝剤はpHを一定に保つことにより、安定したマラリア原虫の染色結果を得るために使用される。通常数mMから100mM程度の濃度で使用される。緩衝剤の種類は通常使用されるものであれば限定されるものではなく、染色するのに好適なpHに応じて、例えば、カルボン酸類、リン酸、トリシンなどのグッドの緩衝剤、タウリンなどが挙げられる。好適なpHは、使用する色素によって異なるが、3〜11程度、好ましくは4〜9程度である。
また、浸透圧補償剤が添加されていてもよい。浸透圧はマラリア原虫の低張溶解を防止するために、処理時の検体を含む全液量に対して、通常150〜600mOsm/kg程度に調整されていることが好ましい。浸透圧補償剤は、特に制限されるものではなく、例えば、プロピオン酸等のアルカリ金属塩、グルコース、マンノース等の糖類が好適である。NaClのようなアルカリ金属ハロゲン化物やアルカリ土類金属ハロゲン化物も使用できる。さらに多価アニオンを使用することもできる。多価アニオンとしては、硫酸イオン、リン酸イオン、炭酸イオン及び多価カルボン酸イオンが特に好適であり、これらを供給し得る化合物としては、例えば、クエン酸、硫酸、リン酸、EDTAやこれらのアルカリ金属塩等が挙げられる。なお、緩衝剤で測定に適した浸透圧が維持できる場合には、緩衝剤を浸透圧補償剤としても使用することができる。
さらに、必要に応じて防腐剤を添加してもよい。防腐剤としては、例えば、2-ピリジルチオ-1-オキシドナトリウム、β−フェネチルアルコール等が挙げられる。
本発明の方法では、上記の後、マラリア原虫を弁別する。
染色されたマラリア原虫は、光学的情報に基づいて弁別することができる。光学的情報を得るために、例えば、フローサイトメータを利用することができる。フローサイトメータは、公知のフローサイトメータが使用可能である。光源は使用する色素に応じて選択することができる。
フローサイトメータでの弁別は、まず、(1)測定用試料をフローサイトメータに導入し、(2)シースフロー中を流れる細胞に励起光を照射し、細胞が発する光強度を測定し、(3)光強度の差異を用いて、マラリア原虫と他の細胞成分を弁別する。
ここで、細胞が発する光としては、散乱光及び/又は蛍光が挙げられる。散乱光としては、側方散乱光、前方散乱光、蛍光としては、側方蛍光、前方蛍光が挙げられる。
弁別は、例えば、散乱光強度と蛍光強度との差異を用いて行うことができる。具体的には、散乱光強度と蛍光強度とを用いて2次元分布図(スキャッタグラム)を作成し、スキャッタグラムにおいて、マラリア原虫を囲むようにゲーティング(領域設定)し、各ゲートの細胞数を計数することにより、弁別することができる。また、蛍光強度によりマラリア原虫と白血球とを弁別することができる。
これにより、マラリア原虫を赤血球のデブリスや白血球などの成分から弁別できるだけでなく、マラリア原虫の生活史を分類計数することができる。通常、3日熱マラリア、4日熱マラリア、卵型マラリアでは、インビトロの培養系及び患者の末梢血中で、全ての生活史が出現するが、熱帯熱マラリアでは、培養系で全ての生活史が出現するものの、末梢血中ではリングフォームとガメサイトしか出現しない。しかし、上記の方法では、これらのすべてのマラリア原虫の生活史の分類が可能である。つまり、散乱光強度と蛍光強度との違いにより、メロゾイト、リングフォーム、シゾント、ガメサイトを弁別することが可能である。この生活史の分類を用いることによりスキャッタグラムの出現パターンから、末梢血においてリングフォーム、ガメサイトしか出現しない熱帯熱マラリアと、全ての生活史が出現する他の3種のマラリアとの弁別が可能である。とくに、熱帯熱マラリアは発症後すみやかに治療を開始することが必要なことから、本発明の方法により迅速に測定でき、早期に診断をする上できわめて有用である。
また、弁別は、測定用試料中のマラリア原虫から、例えば、フローサイトメータで蛍光強度を検出し、所定範囲の蛍光強度を有するマラリア原虫の頻度分布に基づき、マラリア原虫の種類を判定するもの又はこの判定を含むものであってもよい。マラリア原虫の種類の判定は、所定範囲の蛍光強度を有するマラリア原虫の頻度分布における最頻値を求め、この最頻値を所定の基準値と比較し、比較結果に基づいて行うことができる。また、マラリア原虫の種類の判定は、熱帯熱マラリアであるか否か判定するものであってもよい。さらに、弁別は、所定範囲の蛍光強度を有するマラリア原虫をリングフォームとして分類する工程をさらに備えてもよい。
マラリア原虫の自動検出装置は、概略的に図6に示すことができる。分配手段は、吸引吐出ポンプ1、サンプリングバルブ2、試料吸引ピペット3からなる。試料調製手段は、反応チャンバ12を用いることができる。フローサイトメータは、フローセル13、前方散乱用検出器17、蛍光用検出器18および解析部19からなる。試薬供給手段は、第1溶血剤庫5、第2溶血剤庫6、染料庫7及び各々にチューブを介して接続される吸引吐出ポンプ9から11からなる。測定用試料導入手段は、陰圧ポンプ14を用いることができる。
具体的には、試験管4中の血液試料は試料吸引ピペット3から吸引吐出ポンプ1によりチューブを介してサンプリングバルブ2に導入され、所定量採取される。採取された血液試料はサンプリングバルブ2を経て反応チャンバ12に吸引吐出ポンプ9によりチューブを介して導入される。本発明でいうサンプリングバルブとは、セラミックス等の円形状板を3枚重ねたものをいう。サンプリングバルブは、2枚の固定素子の間に挟まれた可動素子からなり、可動素子には定量用通路が設けられている。試料は流入用通路−定量用通路−流出用通路と流れ、可動素子が回転することによって試料が定量される。また、固定素子には試薬流入用通路−定量用通路−試薬流出用通路と流れるように可動素子が回転する。次いで、定量された試料が試薬によって反応チャンバ12へ送出される。このようなサンプリングバルブは血液分析装置で使用されている。
反応チャンバ12には、第1溶血剤庫5から吸引吐出ポンプ9により所定量採取された第1の溶血剤がサンプリングバルブ2を経て血液試料とともにチューブを介して導入され、該チャンバ12中で血液試料と混合される。さらに、第2溶血剤庫6から吸引吐出ポンプ10により所定量採取された第2の溶血剤を該チャンバ12に導入して、第1の溶血剤で処理された血液試料と混合される。その後、染料庫7から吸引吐出ポンプ11により所定量採取された染色液を該チャンバ12に導入して、マラリア原虫等を染色する。
このようにして得られた試料を、陰圧ポンプ14などによりチューブを介して該チャンバ12からフローセル13に導入して、散乱光及び蛍光を測定する。測定後、前方散乱用検出器17および蛍光用検出器18で検出した散乱光および蛍光のデータを解析部19で解析し、マラリア原虫を弁別計数する。
本発明においては、さらに、マラリア原虫検出用の試薬キットが提供される。試薬キットには、第1の界面活性剤を含有する第1の溶血剤と、第2の界面活性剤を含有する第2の溶血剤と、マラリア原虫染色用蛍光色素とが含まれるが、これらは、任意に用時調製用試薬を含んでもよい2液構成であってもよいし、3液構成であってもよい。
例えば、少なくとも第1の溶血剤と第2の溶血剤とが別々にパッケージされ、蛍光色素が第1の溶血剤又は第2の溶血剤のいずれか又は双方に含有される2液構成としてもよいし、蛍光色素が用時調製用に固体状態で供給され、それに第1の溶血剤及び/又は第2の溶血剤を混合して溶解するような2液構成としてもよいし、あるいはマラリア原虫染色用蛍光色素が第1の溶血剤及び第2の溶血剤と別々にパッケージされてなる3液構成としてもよい。これらに含有される界面活性剤等の成分は、上述した測定を行うことができるように、所望の種類、濃度等で調製することができる。
以下に本発明のマラリア原虫の検出方法及びその試薬キットを具体的に説明する。
実施例1
以下の組成のマラリア原虫測定用試薬を調製した。
ポリオキシエチレン(40)ノニルフェニルエーテル4mgを120mMリン酸緩衝液(pH9)500mLに混合して第1の溶血剤を調製した。第1の溶血剤の浸透圧は307mOsm/kgであった。
ラウリルトリメチルアンモニウムクロライド500mgと、アクリジンオレンジ3mgとを、120mMリン酸緩衝液(pH9)500mLに混合して第2の溶血剤を調製した。第2の溶血剤の浸透圧は318mOsm/kgであった。
感染率(総赤血球数に対するマラリア原虫感染赤血球数の割合)0.2%の熱帯熱マラリア患者の末梢血2μLを、第1の溶血剤500μLと混合し、37℃で30秒間インキュベートした。次いで、得られた試料を、第2の溶血剤500μLと混合し、37℃で15秒間インキュベートして、マラリア原虫を染色した。
得られた試料を、波長488nmのアルゴンレーザを励起光源として具備したフローサイトメータに導入し、前方散乱光強度及び側方蛍光強度を測定した。
前方散乱光強度と側方蛍光強度とから得られたスキャッタグラムを図1に示す。図1中、A〜Cの長方形は、マラリア原虫(それぞれリングフォーム、トロポゾイト、シゾント)、Dは白血球の出現領域をゲーティングしたものである。また、破線楕円は網状赤血球の出現領域、実線円はデブリスの出現領域を示す。
図1によれば、網状赤血球の出現領域にプロットはなく、網状赤血球がほとんど出現していないことがわかる。
比較例1
特開平11−75892号公報における実施例1に記載された方法と同様に、1種の界面活性剤での1回の処理により、実際のマラリア感染患者の血液の測定を行った。
具体的には、アクリジンオレンジ3mg、トリシン10mM、LTAC1000mg、リン酸二水素ナトリウム120mM、精製水1Lを水酸化ナトリウムでpH9に調整して、マラリア原虫測定用試薬を調製した。この試薬1mLと、後述の試料1μLとをインキュベートした。なお、試料としては、感染率0.9%の熱帯熱マラリア患者の末梢血を用いた。
得られたスキャッタグラムを図2に示す。図2中、A〜Cはマラリア原虫(それぞれリングフォーム、トロポゾイト、シゾント)、Dは白血球の出現領域である。破線楕円の領域において、十分に溶血されなかった網状赤血球が多く出現した。
このように、十分溶血されなかった網状赤血球がマラリア原虫の出現領域に重なって出現すると、本来マラリア患者のものではない検体と測定した場合でもマラリア原虫を検出したものと誤認する恐れがある。
なお、溶血剤の溶血力を強め、網状赤血球を溶解させて網状赤血球の影響を低減させるために、界面活性剤の濃度を、例えばLTAC1000mg〜10gまで高め、その他の組成を変更せずに、測定に用いた。
その結果、界面活性剤の濃度を上げると網状赤血球の溶血は促進されるが、同時にマラリア原虫の溶解も進む。マラリア原虫の溶解によって、マラリア原虫からの散乱光強度及び蛍光強度が共に減少し、マラリア原虫がスキャッタグラム上で赤血球のデブリスと重なり、正確な測定ができなかった。
また、上記の界面活性剤に代えて、特に溶血力の強い非イオン性界面活性剤のうち、溶血に汎用されているポリオキシエチレン(40)ノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレン(100)ノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレン(10)ラウリルエーテルの3種の界面活性剤を用い、界面活性剤以外は特開平11−75892号の実施例1の組成と同じものを用いて同様の測定を行った。この際の各界面活性剤の濃度は、それぞれ0.2〜2.0mg/Lとした。
その結果、いずれの界面活性剤も、濃度が低い場合には、未溶血の網状赤血球がマラリア原虫の領域に重なって測定を妨害した。
濃度を上げていくにしたがって網状赤血球は溶解するが、原虫も溶解し始め、散乱光強度及び蛍光強度が共に減少し、赤血球のデブリスに重なるようになった。
比較例2
まず、顕微鏡検査により感染率を確認した多数のマラリア感染検体を、本発明の実施例1の方法(以下、「B法」と呼ぶ)にて測定し、感染率と、リングフォーム領域に出現したプロット数との相関図を作成した。その図を図3に示す。
図3の相関図の回帰直線から、感染率が0.1%の場合に対応するプロット数として113を得た。
次に、マラリアに感染していないことが顕微鏡検査により確認された患者の検体を、特開平11−75892号の実施例1に記載された方法(以下、「A法」と呼ぶ)及びB法でそれぞれ測定し、スキャッタグラムのリングフォーム領域におけるプロット数を比較した。
A法で137検体を測定したところ、リングフォーム領域に出現したプロット数が113以上となった検体の割合は52.5%であった。一方、B法で542検体を測定したところ、リングフォーム領域に出現したプロット数が113以上となった検体の割合は4.1%であった。
つまり感染率0.1%を検出感度とした場合、A法では、本来はマラリアに感染していない137検体のうち、52.5%の検体に対しては、マラリア感染検体であると誤認する恐れがあることになる。一方、B法では、マラリア感染検体であると誤認する恐れが生じた検体の割合は4.1%となり、測定精度が大幅に改善されていることがわかる。
比較例3
A法とB法それぞれで、感染率の異なる複数のマラリア患者の検体を測定し、各方法の測定感度を求めた。ここでマラリア原虫の検出の可否は以下のように判断した。
・検出の可否の判断方法:
検体を測定して作成したスキャッタグラム上では、マラリア原虫は所定の領域内に集団となりまとまって出現する。上記実施例1の方法でマラリア感染患者の末梢血検体を測定し、スキャッタグラムを作成した。そのスキャッタグラムを図4に示す。
図4において、縦軸は前方散乱光強度、横軸は側方蛍光強度を示す。前方散乱光、側方蛍光の各検出強度範囲を255分割して座標に目盛りを付している。
蛍光強度をパラメータとしたヒストグラムを作成すると、マラリア原虫の出現領域に対応する蛍光強度の範囲(座標の65から210)には、マラリア原虫の集団が現れて山状を呈する。
図5は、図4のスキャッタグラムに対応するヒストグラムであり、縦軸は頻度(%)、横軸は蛍光強度を示す。
スキャッタグラム中のリングフォームの集団に対応して、ヒストグラム中にも集団が出現していることがわかる。
検討を重ねた結果、ヒストグラム中に現れるマラリア原虫の集団は、ピーク高さの二分の一におけるこの集団の幅(以下、「半値幅」と呼ぶ)が30〜80の範囲内となることが見出された。
しかし、スキャッタグラム上でリングフォームの出現領域に網状赤血球が多く混在すると、ヒストグラムにおいてはリングフォームの集団出現位置に重なるように半値幅の大きな網状赤血球の集団が現れる。このような集団が出現した場合、それが網状赤血球のみによるものなのか、網状赤血球とリングフォーム両者によるものなのかは判別が困難である。そこで、半値幅が80を超える集団が出現している場合は、マラリアの検出は不可であるとした。また、ヒストグラムに現れるノイズはピーク高さが低い。それらをマラリア原虫の集団と区別するため、ピーク高さが全体頻度の0.4%を超える集団のみをマラリア原虫による集団であるとした。
以上のことから、
(1)半値幅が30〜80の範囲内の長さである、
(2)高さが全体頻度の0.4%を超える高さである、
という両条件を満たす集団の存在がマラリア原虫の検出領域(蛍光強度に関しては座標の65から210)中で確認された場合には、網状赤血球の影響がなく、マラリアの検出が可能であるとした。逆に、マラリア患者の検体を測定して上記の両条件を満たす集団を確認できない場合には、マラリアの検出が不可であると判断した。
・上記判断方法によりマラリア原虫検出の感度を求めた結果:
A法
全検体で測定可能な感染率:0.5%以上
全検体で測定不可の感染率:0.1%未満
(感染率0.1%以上0.5%未満の検体では、約38%の検体で測定可能であった。)
B法
全検体で測定可能な感染率:0.1%以上
全検体で測定不可の感染率:0.05%未満
(感染率0.05%以上0.1%未満の検体では約45%の検体で測定可能であった。)
このように、B法では、A法と比べてより低い感染率の患者の検体でもマラリアの検出が可能であった。
本発明のマラリア原虫の検出方法により測定された前方散乱光強度と側方蛍光強度とのスキャッタグラムである。 従来のマラリア原虫の検出方法により測定された前方散乱光強度と側方蛍光強度とのスキャッタグラムである。 本発明のマラリア原虫の検出方法の実施例1の方法により得られた感染率とリングフォーム領域に出現したプロット数との相関図である。 本発明のマラリア原虫の検出方法の実施例における方法によりマラリア感染患者の末梢血検体を測定したスキャッタグラムを示す。 図4のスキャッタグラムに対応するヒストグラムである。 本発明のマラリア原虫の検出装置の構成図である。
符号の説明
1、9、10、11 吸引吐出ポンプ
2 サンプリングバルブ
3 試料吸引ピペット
4 試験管
5 第1溶血剤庫
6 第2溶血剤庫
7 染料庫
12 反応チャンバ
13 フローセル
14 陰圧ポンプ
17 前方散乱用検出器
18 蛍光用検出器
19 解析部

Claims (6)

  1. 検体中の赤血球を溶血してマラリア原虫を遊離させ、遊離したマラリア原虫を蛍光色素で染色して測定用試料を調製し、該測定用試料から光学的情報を検出し、得られた光学的情報に基づいてマラリア原虫を弁別するマラリア原虫の検出方法であって、
    前記溶血を、処理時の検体を含む全液量に対して濃度が0.1〜20mg/Lとなる量のポリオキシエチレン(40)ノニルフェニルエーテルを含む第1の溶血剤で検体を処理し、
    処理された検体を、処理時の検体を含む全液量に対して濃度が300〜10000mg/Lとなる量のラウリルトリメチルアンモニウムクロライドを含む第2の溶血剤で処理することにより行うことを特徴とするマラリア原虫の検出方法。
  2. 処理時の検体を含む全液量に対して濃度が0.1〜20mg/Lとなる量のポリオキシエチレン(40)ノニルフェニルエーテルを含有する第1の溶血剤と、処理時の検体を含む全液量に対して濃度が300〜10000mg/Lとなる量のラウリルトリメチルアンモニウムクロライドを含有する第2の溶血剤と、蛍光色素とからなることを特徴とするマラリア原虫検出用の試薬キット。
  3. 蛍光色素が前記第1の溶血剤又は第2の溶血剤のいずれか又は双方に含有されるか、あるいは蛍光色素が前記第1の溶血剤及び第2の溶血剤と別個にパッケージされてなることを特徴とする請求項2に記載の試薬キット。
  4. 蛍光色素が、核酸を染色する蛍光色素である請求項又はに記載の試薬キット。
  5. 蛍光色素が、以下の群:
    Figure 0004388779
    (式中、R1 は水素原子又は低級アルキル基;R2 及びR3 は水素原子、低級アルキル基又は低級アルコキシ基;R4 は水素原子、アシル基又は低級アルキル基;R5 は水素原子、置換されていてもよい低級アルキル基;Zは硫黄原子、酸素原子又は低級アルキル基で置換された炭素原子;nは1又は2;X- はアニオンである)の化合物、
    Figure 0004388779
    (式中、R1は水素原子又はアルキル基;R2及びR3は水素原子、低級アルキル基又は低級アルコキシ基;R4は水素原子、アシル基、又はアルキル基;Zは硫黄、酸素、又は低級アルキル基で置換された炭素原子;nは0,1又は2であり;X-はアニオンである)の化合物、ならびに
    アクリジリンオレンジ、チアゾールオレンジ、エチジウムブロマイド、プロピジウムアイオダイド、オーラミンO、ヘキスト33258、ヘキスト33342、ローダミン123、DiOC1(3)の中から選択される請求項又はに記載の試薬キット。
  6. 第1の溶血剤および第2の溶血剤の浸透圧が、150〜600mOsm/kgである請求項又はに記載の試薬キット。
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