JP4388617B2 - 容量結合型プラズマ発生装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、容量結合型プラズマ発生装置に関し、更に詳しくは、平行平板型のカソード電極とアノード電極を備え、両電極の間に高周波電力を供給することにより、両電極の空間(反応ガス又は気相中)にプラズマを生成し、反応ガスの解離を行い、薄膜の推積やエッチングを可能にする容量結合型プラズマ発生装置の特に電極構造に関する。
【0002】
【従来の技術及び発明が解決しようとする課題】
容量結合型プラズマ発生装置は、その構造の簡便性と取り扱いの容易さから、半導体装置等の薄膜形成及びエッチング等の用途に用いられてきた。近年、基板の大面積化が進み、プラズマも広い面積にわたり均一に生成する必要性が生じてきた。容量結合型プラズマ発生装置の1つであるプラズマCVD装置においては、高密度および低シースポテンシャルを実現するために励起周波数の高周波化が進められている。これは大面積化をさらに難しくする。なぜならば、電極全体の共鳴周波数が励起交流周波数に近づくと、交流電源から見たインピーダンスが急激に変化し、電極への交流の印加が難しくなるからである。さらに、電極が波長のサイズに近くなることによって電極内に定在波が生じ、電界の分布をつくるので、電極内の電界分布が不均一になることも理由の1つである。
【0003】
励起交流の高周波化に伴って、これらの問題が生じることがわかり、いくつかの試みがなされてきた。例えば特開平10ー32171号公報では、電極とチャンバーの間に意図的にコイルを加えることにより、共振周波数を、使いたい周波数域から移動させ高周波交流の印加を可能にしている。
【0004】
また、ユー.ステファンとジェイ.クスケ(U. Stephan and J. Kuske:Proc. 26th IEEE Photovoltaic Specialist Conf., Anaheim, 1997 to be published. )によれば、平板電極を分割してそれぞれを導波管と考え、導波管の一方の端に給電点を設けるとともに、もう一方を個々の導波管の特性インピーダンスで終端させている。これによって反射波成分を排除し、進行波成分のみを存在させることにより、定在波の発生を抑えている。
しかし、これらの方式ではいずれも電極外部に多くの電気回路を必要とし、チャンバー内における電極の自由な配置を妨げていた。
【0005】
本発明が解決しようとする課題は、容量結合型プラズマ発生装置において、励起交流周波数を高周波化したときの共鳴周波数近傍でのインピーダンスの急激な変化および電界分布の不均一性を緩和し、高周波の導入を容易にすることである。更に言えば、それを電極以外の複雑な電気回路なしに実現することである。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明は、反応ガスの導入を受けるチェンバーと、このチェンバー中に配設された平行平板型の一対の電極と、これらの電極に高周波電力を供給し、それによって反応ガス中に高周波プラズマを発生させる高周波電力供給部とを備え、
一対の電極の少なくとも一方の電極自体、一対の電極の間、またはこれらの組み合わせに、共鳴周波数近傍におけるインピーダンスの急激な変化を緩和可能な抵抗要素を有し、該抵抗要素の抵抗値Rが、一対の電極間の静電容量Cおよび高周波電力供給側から見た電極およびチャンバーの共鳴角周波数ωCとして、
0.01<1/(ωCCR)<100
を満たす値であることを特徴とする容量結合型プラズマ発生装置を提供する。
【0007】
すなわち、本発明は、電極自体又は一対の電極の間に、共鳴周波数近傍におけるインピーダンスの急激な変化を緩和可能な抵抗要素を有しているので、複雑な電気回路を用いることなく、より高い高周波の供給を可能にし、それによって広い面積にわたって均一にプラズマを生成することができる。
【0008】
本発明において使用される電極は、平行平板型の一対の電極、つまりカソード電極(陽極)とアノード電極(陽極)とからなり、これらの電極に高周波電力供給部から高周波電力が供給される。具体的には、カソード電極が高周波電力供給源に接続され、アノード電極が(チャンバーを介して)接地される。
【0009】
本発明においては、これらの電極自体又は電極の間に共鳴周波数近傍におけるインピーダンスの急激な変化を緩和可能な抵抗要素を有する。具体的には、一対の電極の少なくとも一方の電極自体、一対の電極の間、又はこれらの組み合わせに上述の抵抗要素を有する。
【0010】
本発明において、抵抗要素について「共鳴周波数近傍におけるインピーダンスの急激な変化を緩和可能な」とは、電極全体の共鳴周波数が励起交流周波数に近づくと、交流電源から見たインピーダンスが急激に変化するが(電極への交流の印加が難しくなる)、その際にそのインピーダンスの急激な変化を押さえることができることを意味する。そして抵抗要素を電極自体に有するとは、電極として機能させるために必要な導体成分に抵抗成分を分布させることを意味する。
【0011】
そして電極自体に抵抗成分を分布させた場合の電極材としては、本来の電極としての導体成分の炭素・鉄族系合金と、絶縁物基材の磁気ガラス粉体とを混合し焼き固めたカーボンコンポジット、又は導体成分の銀パラジウムと、絶縁物基材の磁器ガラス粉体とを混合し焼き固めたサーメットが挙げられる。導体成分(炭素・鉄族系合金、銀パラジウム)と絶縁物基材の混合割合を変化させることにより任意の抵抗率が得られる。
【0012】
次に、抵抗要素を、一対の電極の間に有する場合としては、集中定数抵抗(素子)、つまり所定の抵抗値を持つように予め小さく作られた部品、いわゆる抵抗体又は抵抗器(例えばニクロム系巻線型抵抗)が挙げられる。
【0013】
本発明に係る容量結合型プラズマ発生装置は、上述のような電極に、より高い周波数の高周波電力を供給することができるので、基板の広い面積にわたり均一に薄膜形成又はエッチングするのに利用でき、容量結合型プラズマCVD装置又はエッチング装置として使用できる。
【0014】
【発明の実施の形態】
本発明は、上述のとおり、電極の電流経路に、共鳴周波数近傍におけるインピーダンスの急激な変化を緩和させることができる抵抗成分を有しているが、これは次のような基礎的物理原理に基づいている。
【0015】
まず一般的な共振回路において損失のないとき、共振回路のインピーダンスは、周波数に対して先鋭化した特性をもつことが分かっている。逆に損失がある場合、インピーダンスの周波数に対する依存性は鈍くなる。
定量的に言えば、一般的に共振回路における損失量の指標は、Q値を用いて表される。Q値の定義を以下に示す。
Q=2π・(共振状態において1周期に共振回路に蓄えられるエネルギ−)
/(1周期に損失となるエネルギー) (1)
コイル1、コンデンサー2および抵抗3を用いた電気的共振モデルを図1および図2に示す。
Cはコンデンサー2の静電容量、Lはコイル1のインダクタンス、Rは抵抗3の抵抗値である。fCを共振周波数としたときのωC=2πfCの関係を用いると、Q値は以下のような式で与えられる。
Q=(ωCL)/R=1/(ωCCR) (2)
損失を小さくしたとき抵抗値Rは減少するのでQ値はそれに反比例して増加することがわかる。
【0016】
次に、共振回路の周波数特性について考える。
△fを共振特性曲線の半値幅としたとき、共振回路の周波数分解能の指標はfC/△fで表される。この値が大きいほど共振特性は先鋭化する。初等的な解析によってfC/△fはQ値と比例関係にあることが知られている。
すなわち、
fC/△f∝Qo (3)
【0017】
式2、3より、共振回路に挿入された抵抗値Rを減少させればQ値はそれに反比例して増加し、周波数分解能もまた抵抗値Rに反比例して増加することがわかる。
具体的な様子を図1、2に示す。図1は損失がない場合の共振回路図(a)とインピーダンスの周波数特性のグラフ(b)を表しており(Q値∝)、図2は損失として抵抗3を共振回路に入れたとき(Q値有限値)の共振回路図(a)と周波数特性のグラフ(b)を示している。
以上で述べたように抵抗3の挿入された回路における周波数特性は抵抗なしのそれに比べて緩和されることがわかる。
【0018】
要するに、本発明はこの応用である。すなわち、チャンバーおよび電極の全体を電気的共振回路として見たとき、これに意図的に抵抗を挿入することによってQ値を低下させ、共鳴周波数近傍におけるインピーダンスの急激な変化を緩和させるものである。
【0019】
抵抗の特性的な値(電気抵抗値)Rが、電極間の静電容量C及び給電部から見た電極及びチャンバーの共鳴角周波数ωCに対し、Q値(=1/(ωCCR))が0.01以下になるように設定した場合、挿入する抵抗が大きくなり、抵抗による損失が大きく、電極間へ印加される高周波が低減してしまう。
一方、Q値が100以上になるようにRを設定した場合、インピーダンスの周波数特性の緩和が小さく、共鳴周波数近傍でのインピーダンスの急激な変化や電界分布の不均一性を緩和する効果が小さくなる。
従って、抵抗の特性的な値Rが、電極間の静電容量C及び給電部から見た電極及びチャンバーの共鳴角周波数ωCに対し、
0.01<1/(ωCCR)<100 (4)
を満たす範囲に抵抗率を設定することにより、Q値を共振回路の周波数特性に有効に影響を及ぼしうるような範囲に設定することができる。
【0020】
以下、図に示す実施の形態に基づいて本発明を具体的に説明する。なお、これによって本発明が限定されるものではない。
〔実施の形態1〕
図3は、本発明の1つの実施の形態の電極4とチャンバー5の構成を示す概略構成説明図であり、(a)は横断面を、(b)は縦断面を示している。
さて、この構成において、電極(プラズマ電極)4は、カソード電極に相当するもので(以下、単に電極と称する)、導体ではなく抵抗要素としての抵抗成分を有する抵抗体(例えば、導体成分の炭素・鉄族系合金と絶縁物基材の磁気ガラス粉体とを混合し焼き固めたカーボンコンポジション)が用いられている。高周波電力発生源(高周波電力供給部、図示省略)から給電部6を通じて高周波電力(交流)が供給され、電極4と基板トレイ(アノード電極)7間に、容量結合プラズマが励起される。なお、8はアースシールド、9は絶縁体である。チャンバー5には反応ガス(例えば、基板にa−Si;H薄膜などを堆積させる場合は、材料ガスとしてのシランが挙げられ、プラズマドライエッチングさせる場合は、反応ガスとしてSF6 のエッチングガスが挙げられる)が導入されている。
本実施の形態では、電極4の抵抗率ρは次のようにして決定された。
【0021】
すなわち、電極4に導体を用いたときの給電部6におけるインピーダンスの計測結果により、200〜240MHzに共振周波数fCが存在することが分かっている。
一方、電極4、基板トレイ7間およびアースシールド8間の静電容量のオーダーは幾何学的配置から容易に見積もられ、5pF程度と考えられる。集中定数回路の仮定を導入し、単純に考えた場合、式2の関係をもとに、Q値を2程度になるように抵抗値Rを設定することができる。この時必要な抵抗値Rは100Ω程度になる。本例では、電極板は厚み1cm、直径は10cmの円盤状であり給電点は中心に位置しているので、電流が径方向に流れると仮定して電極に必要な抵抗率ρは180Ωcm程度と見積もられる。
このように、Q値が2という目標値をつくり、測定された共振周波数fCと幾何学的な配置から、電極4に必要な抵抗率ρを概算することができる。
【0022】
図4は、このようなチャンバー5および電極4を用いたとき、電極中央部に生じる交流電界振幅の周波数特性を示すグラフである。比較として電極が導体(例えばアルミニウム合金製円板)であったときの電界の周波数特性も同様に示されている。
ここで両者を比較すると、まず抵抗体を電極4に用いた場合、導体を用いた場合に比べて電界最大値(f=200MHz)はおよそ1/5に、電界最小値(f=240MHz)は5倍になっている。すなわち、抵抗体を電極4に用いることにより共鳴周波数近傍での電界の急激な応答が緩和されていることがわかる。
【0023】
電極に導体を用いたとき、電極中央部の電界が最小の周波数、すなわちf=240MHz(図4参照)において、電界の面内分布は不均一になることが分かっている。電極4が抵抗体であったときの交流電界振幅の面内分布を示したのが図5である。比較として電極が導体であったときの分布も示されている。交流電界振幅の面内分布は電極を抵抗体にすることにより4倍程度緩和されていることがわかる。
【0024】
以上のように、容量結合型プラズマ電極が形成する共振回路において意図的に損失項を導入することによってQ値を制御し、共振の周波数特性および面内分布をより緩和させる方向に制御できることが示された。
【0025】
〔実施の形態2〕
実施の形態1は抵抗を分布定数的に配置した場合の例であった。この実施の形態2では集中定数的な抵抗としてニクロム系巻線型抵抗(体)を回路内に挿入する。共振回路のコイルに直接に抵抗を挿入するということは、コンデンサーに対し並列に抵抗を挿入することと等価であり、電気回路として同じ状態が実現できる。この実施の形態2はこのような動機に基づいたものである。
図6は実施の形態2を示す、図3の(b)相当図である。図6に示すように、電極給電部6から他方のプラズマ電極(アノード電極)である基板トレイ7に対して集中定数的抵抗(素子)としての抵抗10を接続する。
ここで、電極(導体電極)11はカソード電極としての導体(アルミニウム合金製円板)である。この抵抗10の抵抗値Rは、電極間の静電容量CとQ値の目標値を用いて式2により決定される。実施の形態1と同じ大きさの電極およびチャンバーを用いたとき、Q値を2程度になるように抵抗値Rを設定することができる。共振周波数fCは200〜240MHzにあり静電容量Cは5pF程度であることはわかっているので、式2より必要な抵抗値Rは100Ω程度になる。このように付加された損失成分によってチャンバーおよび電極の共振特性は緩和される。
【0026】
【発明の効果】
本発明によれば、平行平板型の電極を有する容量結合型プラズマ発生装置において、電極の電流経路に抵抗要素を有することにより、共鳴周波数近傍におけるインピーダンスの急激な変化を緩和させ、それによって複雑な電気回路を用いることなく、より高い高周波の供給を可能にし、それによって広い面積にわたって均一にプラズマを生成することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の原理説明のための図である。コイルとコンデンサーによる電気的共振モデルを示している。損失がない場合(Q値∝)の、共振回路図(a)とそのインピーダンスの周波数特性のグラフ(b)である。
【図2】本発明の原理説明のための図である。コイルとコンデンサーによる電気的共振モデルを示している。抵抗を挿入し、損失がある場合(Q値有限値)の、共振回路図(a)とそのインピーダンスの周波数特性のグラフ(b)である。
【図3】本発明の実施の形態1におけるチャンバーの形状と電極の配置を示す概略説明図であり、(a)は横断面を、(b)は縦断面を示す。
【図4】実施の形態1において、電極中央部に生じる交流電界振幅の周波数特性を示すグラフである。比較として電極が導体であったときの電界の周波数特性も示されている。
【図5】実施の形態1におけるf=240MHzでの交流電界振幅の面内分布を示すグラフである。電極が導体であったときと抵抗体であったときの2者に対して示されている。
【図6】実施の形態2を示す図3の(b)相当図である。電極給電部から他方のプラズマ電極である基板トレイに対して集中定数的に接続された抵抗が存在する。
【符号の説明】
1. コイル
2. コンデンサー
3. 抵抗
4. 電極(カソード電極)
5. チャンバー
6. 給電部
7. 基板トレイ(アノード電極)
8. アースシールド
9. 絶縁体
10.抵抗(集中定数抵抗)
11.電極
Claims (5)
- 反応ガスの導入を受けるチェンバーと、このチェンバー中に配設された平行平板型の一対の電極と、これらの電極に高周波電力を供給し、それによって反応ガス中に高周波プラズマを発生させる高周波電力供給部とを備え、
一対の電極の少なくとも一方の電極自体、一対の電極の間、またはこれらの組み合わせに、共鳴周波数近傍におけるインピーダンスの急激な変化を緩和可能な抵抗要素を有し、該抵抗要素の抵抗値Rが、一対の電極間の静電容量Cおよび高周波電力供給側から見た電極およびチャンバーの共鳴角周波数ωCとして、
0.01<1/(ωCCR)<100
を満たす値であることを特徴とする容量結合型プラズマ発生装置。 - 抵抗要素が、一対の電極の少なくとも一方の電極自体に分布する抵抗成分である請求項1のプラズマ発生装置。
- 一対の電極が、高周波電力供給源に接続されたカソード電極と、チェンバーもしくはアースシールドを介して接地されたアノード電極とからなり、
抵抗要素が、カソード電極とアノード電極との間に接続された集中定数抵抗素子である請求項1のプラズマ発生装置。 - 高周波プラズマが、プラズマCVDに利用される請求項1のプラズマ発生装置。
- 高周波プラズマが、プラズマエッチングに利用される請求項1のプラズマ発生装置。
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