JP4387151B2 - β−1,3−グルカンを用いるカーボンナノチューブの可溶化方法 - Google Patents

β−1,3−グルカンを用いるカーボンナノチューブの可溶化方法 Download PDF

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Description

本発明は、カーボンナノチューブの各種用途開発において重要な、水性媒体中への可溶化方法を提供するものである。
近年、飯島澄男らによってフラーレン製造時の堆積物中に発見されたカーボンナノチューブは、フラーレンとともにナノテクノロジーの新素材として注目を集めている。
S.Iijima, Nature, 354, 56 (1991)
特に、直径1nm、長さμmオーダーの単層カーボンナノチューブ(SWNTs)はシンプルな構造と特異な物理化学的性質により、各種の新規分野への応用が期待されている。
S.Iijima, T.Ichihashi, Nature, 363, 603-605 (1993)
しかしながら、医療用途などへの応用を図るためには、水に対する溶解性の乏しさがネックとなる。そこで、水性溶媒への可溶化の方法が検討されている。最近、Starらは、多糖類の一種であるスターチ(デンプン)とヨウ素の錯体を用いることにより、SWNTsを水に溶解できることを報告している。これは、スターチに含まれているα-1,4-結合の化合物であるアミロースがヨウ素と錯体を形成し、その螺旋構造の内部にSWNTsが取り込まれることにより水への溶解・分散性を獲得することに基づくものと理解される。この際、ヨウ素はアミロースの螺旋構造の予備組織化に何らかの役割をはたしているものと推測される。また、ヨウ素と同様な役割を果たすものとしてnBuOH(n−ブタノール)も記述されている。
Alexander Star, David W.Steuerman,James R. Heath and J.Fraser Stoddart,Angew. Chem. Int. Ed., 41, No.14,2508-2512(2002)
ヨウ素のような副原料は用いずに、アミロースおよび同族のプルランならびにカルボキシメチルアミロースのような多糖類を用い、DMSOを副溶媒に使って、SWNTsを水へ溶解させる試みもKimらによってなされている。
Oh-Kil Kim, Jongtae Je, Jeffrey W. Baldwin,Steven Kooi, Pehr E.Pehrsson, and Leonard J. Buckley, J.Am.Chem.Soc., 125,4426-4427(2003)
また、最近、DNAを用いて水溶化する試みも奥園らによって報告されている。
奥園真吾、村上裕人、中嶋直俊、Polymer Preprints, Japan, 52,No.3, IIF17 (2003)
その他、強酸、フッ素化合物などの比較的特殊な物質を溶媒とする可溶化法も研究されている。
しかし、如上の手段においては、溶解度があまり高くないこと、良好な溶解性が得られる適用範囲が限られていること、あるいは危険性のある溶媒や特殊な物質を併用しなければならないことなどの問題をクリアーする必要がある。
本発明の目的は、安全な物質を用いて簡便且つ効果的に、カーボンナノチューブを水性媒体中に可溶化する方法を提供することにある。
本発明者らは、カーボンナノチューブを多糖類のβ−1,3−グルカンと複合体化することによって、安定的に水性媒体中へ可溶化させることのできることを見出した。
かくして、本発明は、カーボンナノチューブの水分散液と、非プロトン性極性溶媒に溶解させたβ−1,3−グルカンとを混合し、インキュベートすることにより、カーボンナノチューブをβ−1,3−グルカンと複合体化し、該複合体を水に溶解させることを特徴とするカーボンナノチューブを水性媒体中へ可溶化する方法を提供するものである。
本発明に従えば、生体に安全な多糖類を使ってカーボンナノチューブを水に可溶化できるため、広範な用途に向け、特に医療、バイオテクノジーの分野で、カーボンナノチューブを使った新規な技術の開発が期待される。
本発明においては、単独ではほとんど水に溶解することがないカーボンナノチューブに、多糖類の一種で、多くの水素結合サイトを有するβ−1,3−グルカンを巻きつかせ、表面を被覆することによって、水性媒体中に溶解・分散するように処理を行うものである。
よく知られているように、カーボンナノチューブには、単層カーボンナノチューブと多層カーボンナノチューブがあり、本発明の原理はいずれのタイプのカーボンナノチューブにも適用可能であるが、実用的な意義から、本発明の方法は、単層カーボンナノチューブ(本明細書ではSWNTsと略称していることがある)に好ましく適用される。以下の説明も主としてSWNTsに本発明を適用する場合に沿って行なっている。
なお、本発明に関連して用いている水性媒体という語は、一般に、水を50重量%以上含有する溶媒という意味で使用している。
β−1,3−グルカンは、天然の状態では3重螺旋構造をとっているが、強アルカリ性の溶液中やジメチルスルホキシド(DMSO)などの非プロトン性極性溶媒中では、1本鎖に解かれている。それを中性の水中に移すと、3重螺旋状態に戻ることが知られている。また、その際、1本鎖のDNAやRNAを共存させると、多糖2本と核酸1本が水素結合および疎水性相互作用の働きによって3重螺状の複合体となることが本発明者らによって見出されている。多糖単独で3重螺旋状に戻るか、または核酸やカーボンナノチューブのような他の物質と複合体化するかの選択は、接触混合の方法やDMSO水溶液の組成などの要因によっても影響を受ける。
櫻井、新海、J. Am. Chem. Soc., 122, 4520(2000) 木村、甲元、櫻井、新海、Chem. Lett.,1242(2000) PCT/JP00/07875 PCT/JP02/02228
一方、SWNTsは、その直径が約1−3ナノメートル、長さが数マイクロメートルに及ぶ高分子であり、単独では殆ど水に溶解しない。本発明者らは、研究を重ねた結果、SWNTsが、DMSOなどの非プロトン性溶媒で処理されたβ−1,3−グルカンと水中で接触すると、驚くべきことに上述のDNAやRNAのような核酸に似た挙動をし、β−1,3−グルカンと複合体化して水溶化することに注目し、本発明を完成したものである。
本発明で使用するβ-1,3-グルカンは、多糖の主鎖がβ1→3グルコシド結合により結合された多糖であり、側鎖に糖残基(グルコース残基)の存在する割合(側鎖の糖残基置換率)の異なる各種のものが知られている。側鎖がないカードランおよび側鎖の糖残基による置換率が数百分の1程度と小さいパーキマンとラミナランなど側鎖置換率が低いβ−1,3−グルカンは、水溶性に乏しく、使いづらいところがあるが、致命的なものではない。一方、シゾフィラン、スクレログルカンおよびレンチナンは側鎖の糖置換率が33−40%と比較的高く、水溶性で、一般に利用し易い。本発明において、SWNTsの可溶化剤として使用する場合も、側鎖の糖置換率が約30%以上の後者のものが好適である。
また、天然のβ−1,3−グルカンの一つであるシゾフィランは筋肉内注射製剤の臨床薬として実際に使用されており、婦人科癌に対する免疫増強法の筋肉内注射薬として20年以上の使用実績がある。さらに、免疫系の抗原提示細胞への親和性が知られており、生体内での安全性が確認されている。それらの特性は、SWNTsを水溶化して、例えば、バイオテクノロジーにおけるデバイスとしての応用などを考慮する場合には重要な特性であると考えられる。そして、溶液で所定の部位にSWNTsを送達した後に、使用した多糖を除く必要がある場合は、分解酵素処理などの方法で目的を達成することも可能である。
McIntire, T. M., Brant, D. A., J. Am. Chem.Soc., 120, 6909(1998) 清水、陳、荷見、増淵、Biotherapy, 4, 1390(1990) 長谷川、Oncology and Chemotherapy, 8, 225(1992)
SWNTsにうまく巻きつかせることを考慮すると、β−1,3−グルカンの分子量に関しては、ある程度の長さは必要であるが、2000程度以上であれば十分使用可能である。また、10万を超えるような、高分子であっても、格別、差し支えるということはないが、β−1,3−グルカンの種類によっては幾分水溶性が乏しくなるので実用上制限を受けることになる。β−1,3−グルカン(特にシゾフィラン)を用いる本発明のカーボンナノチューブ可溶化方法は、スターチやアミロースなどの多糖類を用いる既述のカーボンナノチューブ可溶化方法に比べて、良好な溶解性が得られる多糖の分子量の適用範囲がきわめて広いという利点を有する(後述の実施例参照)。
市販されているカーボンナノチューブは、通常、混酸処理、中和、水分散後の遠心沈降処理などの前処理により、長さのサイズ調整などを行っておくことが好ましい。但し、本発明の方法は、必ずしもこのような処理を行なわなくてもカーボンナノチューブを可溶化することができる。
本発明を実施するには、如上のカーボンナノチューブの水分散液と、非プロトン性極性溶媒に溶解させたβ−1,3−グルカンとを混合し、インキュベートすることにより、カーボンナノチューブをβ−1,3−グルカンと複合化する。非プロトン性極性溶媒の特に好ましい例は、ジメチルスルホキシドであるが、これに限定されるものではない。β−1,3−グルカンとカーボンナノチューブを複合体化し、水に溶解させる方法の詳細については、以下の実施例において説明するが、基本的にはKimらの非特許文献4に記載の方法を参考にしている。
β−1,3−グルカン(シゾフィラン)の調製 3重螺旋構造のシゾフィランを文献記載の定法に従って製造した。すなわち、ATCC(American Type Culture
Collection)から入手したSchizophyllum commune. Fries(ATCC 44200)を、最小培地を用いて7日間静置培養した後、細胞成分および不溶残渣を遠心分離して得られた上清を超音波処理して分子量45万(1本鎖あたり15万)の3重螺旋シゾフィランを得た。
Gregory G. Martin, Michael F. Richardson,Gordon C. Cannon and Charles L. McCormick, Am.Chem. Soc. Polymer Prepr. 38 (1), 253-254(1997) Kengo Tabata, WataruIto, Takemasa Kojima, ShozoKawabata and Akira Misaki, Carbohydrate Research, 89,121-135(1981)
低分子量カードランの調製 カードラン(分子量120万、Wako Pure Chemical Industries, Ltd., CAS登録番号9051-97-2)3.0gを乾燥DMF(ジメチルホルムアミド)50mlに加え、溶液を50℃に加熱し一晩かけて溶解させた。ここに、パラトルエンスルホン酸0.3gを加え加水分解反応を開始した。50℃にて加熱攪拌を行いながら、反応の進行をゲル浸透液体クロマトグラフィー(GPC)にて追跡し、目的の分子量にまで加水分解された時点で反応溶液15mlを分取した。この分取した反応溶液にメタノール200mlを加え、再沈殿操作により精製を行った。得られた白色繊維状沈殿物を乾燥させ、低分子量カードランを得た。GPCの条件は、送液システム:日本分光PU-1580、カラムオーブン:日本分光CO-2060、検出器:日本分光RI-2031、カラム:TOSOH
TSK-gelα-4000、移動層:DMF、流速:0.6ml/min、温度:40℃、および分子量の算出基準:プルラン標準物質(Pullulan Standard, SHOWA DENKO K.K.)であった。
カーボンナノチューブの前処理 Carbon Nanotechnologies Inc.(Texas,
USA)製の単層ナノチューブ(SWNTs)10mgに50mlの混酸(硝酸:硫酸=1:3(v/v))を加え、超音波(50kHz)を2〜3時間照射した。この液をろ過し、残さに10mM水酸化ナトリウム水溶液を加えて中和後、ろ液が中性になるまで蒸留水で十分に洗浄した。乾燥しきらないうちに残さを回収し、10mlの蒸留水に分散させた。この分散液を、20℃で1時間、遠心分離(13900回転/分)し、上澄み液を除いた。沈殿物に蒸留水10mlを加え再び遠心分離操作を行った。得られたナノチューブを、さらに水10mlに分散させ、今度は2780回転/分で10分間、遠心操作にかけて、分散しないナノチューブを沈殿物として取り除いた。その上層液をカーボンナノチューブの分散液として次の実験に用いた。なお、分散液中のナノチューブは、UV/visスペクトルにより約0.1mg/mlの濃度であること、また、顕微鏡観察により1−3μmの長さであることが認められた。
シゾフィランおよびカードランによるカーボンナノチューブの可溶化 実施例1で調製したシゾフィランを所定量の乾燥ジメチルスルホキシド(DMSO)に溶解させ、0.5g/dlの溶液を調製し、実験に用いた。実施例3で調製したカーボンナノチューブ水分散液250μl(カーボンナノチューブ約0.025mg)をサンプル瓶に測り取り、そこに、シゾフィランのDMSO溶液(0.5g/dl)を50μl(シゾフィラン約0.25mg)加え、素早く攪拌した(この溶液の溶媒組成は水:DMSO=84:16(v/v)、つまりVw=84%となる)。次に、5分間、超音波照射(50kHz)を行った後、50℃で3日間インキュベートさせた。溶液にはカーボンナノチューブの沈殿は全く認められず、均一溶液のままであることが確認できた。
次に、過剰に存在しているシゾフィランおよび複合体を形成しなかったナノチューブを除去するために、20℃で遠心分離(7000回転/分)を1時間行った(この操作ではカーボンナノチューブ/シゾフィラン複合体のみが沈殿し、シゾフィラン単体あるいはナノチューブは上澄みとして残る)。上澄みを除去しここに蒸留水500μlを加え、均一になるまで攪拌後、再度遠心分離操作を行った。この操作を3回繰り返し、過剰のシゾフィランを完全に除去、沈殿を蒸留水500μlに溶解させ、純粋なカーボンナノチューブ/シゾフィラン複合体水溶液を得ることができた(最終的な溶液の溶媒組成はほぼ水100%(Vw=100%)になっていると考えられる)。得られた溶液をマイカ上にキャストし、風乾後に得られた固体を原子間力顕微鏡(AFM)で観察した結果、シゾフィラン単体は全く観察されず、SWNTsに巻きついてその表面を覆っている状態が認められた。
得られたカーボンナノチューブ/シゾフィラン水溶液のUV/visスペクトル(紫外/可視スペクトル)を測定することによりカーボンナノチューブの可溶化率を算出した。可溶化率の算出はカーボンナノチューブ由来の500nmの吸光度を用い次の式に従った。
<式1>
可溶化率(%)=100×{(得られたカーボンナノチューブ/シゾフィラン水溶液の吸光度)×水溶液の量(ml)}÷{(最初のカーボンナノチューブ分散液の吸光度)×分散液の量(ml)}
Huang, W., et. al., Nano Lett., 2, 311(2002) Ausman, K. D., et.al., J. Phys. Chem. B, 104,8911(2000) Bahr, J. L., et. al., Chem. Commun., 2001, 193
シゾフィランとSWNTsの複合体を形成する際のDMSO溶液中の水の濃度を変えて行った可溶化率の値を表1に示した。その結果、DMSO溶液中のDMSOの濃度は10−20%付近において最も高い可溶化率を示すことが認められた。また、分子量の異なる2種類のシゾフィランおよび同じβ−1,3−グルカンに属する3種類の分子量のカードランを使用する、同様の可溶化実験の結果を表2に示した。その結果、検討した範囲では、分子量の影響はそれほど大きくなく、比較的安定した可溶化率を示した。その中でシゾフィランについては、分子量150,000のものが高い可溶化率を示したが、2,500のものでもさほど違わない値であった。一方、カードランについては、8,100のものが好成績を示し、分子量が大きくなると可溶化率が徐々に低下する傾向が見られた。
Figure 0004387151
Figure 0004387151
<比較例1>
β−1,3−グルカン以外の多糖であるアミロース、スターチ、プルランおよびデキストランを使用する可溶化実験を実施例4と同様の操作で行ない、結果を表3に示した。α−1,4−結合が主鎖のアミロースでは、分子量が15,000のものは比較的高い可溶化率を示したが、シゾフィランで高可溶化率が得られたものと同程度の分子量160,000のものでは全く可溶化しなかった。また、アミロースを含む多糖のスターチについても可溶化させることは出来なかった。さらに、アミロースと同族のプルランや、α−1,4−結合とα−1,3−結合の混合系であるデキストランについても、わずかしか可溶化しないことを確かめた。なお、本実験で使用した多糖類の試薬の由来は次のとおりである。アミロース(分子量160,000、Tokyo
Kasei Kogyo Co., Ltd.)、アミロース(分子量15,000、Tokyo Kasei Kogyo Co., Ltd.)、スターチ(バレイショ由来、WakoPure Chemical Industries, Ltd.) 、プルラン(分子量200,000、Tokyo
Kasei Kogyo Co., Ltd.)、デキストラン(分子量70,000、Tokyo Kasei Kogyo Co., Ltd.)。
Figure 0004387151
β−1,3−グルカンを用いる溶解性試験(直接混合法) カーボンナノチューブ(実施例3記載の単層ナノチューブであるが、混酸による前処理を施してないものをそのまま使用)約5mgを蒸留水1.0mlに分散させ、超音波照射(50 kHz)を30分間行った。ここにシゾフィランのDMSO溶液(0.5g/dl)を500μl加え、さらに超音波照射を1時間行った。この時点でカーボンナノチューブが溶液層に溶け込んできているのが確認できた。この溶液を50℃で3日間インキュベートした後、上澄みだけを遠心チューブに移し、まず不溶成分を除去するために、3000(回転/分)10分間の遠心操作を行った。この上澄みを分取し、7000(回転/分)1時間の遠心操作により、シゾフィラン/カーボンナノチューブ複合体のみを沈殿させ、上澄みを除去、さらに蒸留水1.0mlを加え、再溶解させた後、同様の遠心操作を行った。この操作を3回繰り返すことにより、複合体を形成していないシゾフィランを除去すると同時に、溶媒を水/DMSO混合溶媒から水に置換することができた。
得られた水溶液は、カーボンナノチューブが安定に均一分散していることが目視により確認できた。シゾフィランの代わりにカードランを用いた場合にもほぼ同程度の結果が得られた。シゾフィランおよびカードランを用いた場合の、分子量および最初の溶解時の水とDMSOの比率を変化させて測定した、試験後の溶媒中のカーボンナノチューブの濃度を表4に示した。
Figure 0004387151
本操作方式は、実施例4の方式に比べると、混酸処理しないカーボンナノチューブを使用したためにチューブ長が長いこと(数十μm程度と推測される)および溶質に対する溶媒の比率が小さいこと(約1/20)により、可溶化の条件としては厳しくなっているものと考えられるが(本実施例の方式を直接混合法と略称する)、β−1,3−グルカンを用いるほとんどの条件で、可溶化が起こっていることは確かめられた。また、分子量15万のシゾフィランを用いる場合が比較的高い溶解性を示し、中でも水:DMSO=50:50(v/v)のときに特異的に高い濃度を示す結果が得られた。
<比較例2>
β−1,3−グルカン以外の多糖を用いる溶解性試験(直接混合法) 実施例5と同様の操作をアミロース、スターチ、デキストランおよびプルランを用いて行った。しかしながら、本操作方式での試験結果では、これらのβ−1,3−グルカン以外の多糖を用いた場合には、分子量15,000のアミロースの場合でも、カーボンナノチューブが可溶化・分散する現象はほとんど認められなかった(表5参照)。
Figure 0004387151
カーボンナノチューブの溶解度測定 実施例1で調製したシゾフィランを所定量の乾燥ジメチルスルホキシド(DMSO)に溶解させ、0.5g/dlの溶液を調製し、実験に用いた。実施例3で調製したカーボンナノチューブ水分散液20ml(カーボンナノチューブ約2.0mg)をサンプル瓶に測り取り、そこに、シゾフィランのDMSO溶液(0.5g/dl)を5.0ml(シゾフィラン約25mg)加え、素早く攪拌した(この溶液の溶媒組成は水:DMSO=84:16(v/v)、つまりVw=84%となる)。次に、5分間、超音波照射(50kHz)を行った後、50℃で3日間インキュベートさせた。溶液にはカーボンナノチューブの沈殿は全く認められず、均一溶液のままであることが確認できた。
次に、過剰に存在しているシゾフィランおよび複合体を形成しなかったナノチューブを除去するために、20℃で遠心分離(7000回転/分)を1時間行った(この操作ではカーボンナノチューブ/シゾフィラン複合体のみが沈殿し、シゾフィラン単体あるいはナノチューブは上澄みとして残る)。上澄みを除去しここに蒸留水5.0mlを加え、均一になるまで攪拌後、再度遠心分離操作を行った。この操作を3回繰り返し、過剰のシゾフィランを完全に除去した。得られた黒色沈殿は、蒸留水100μlに溶解させ得ることが確認された。この溶液は数日間放置しても再沈殿することはなくSWNTsを安定に分散させていることが分かった。UV/visスペクトルにより溶液の濃度は2.5g/Lであり、シゾフィランは少なくともこの濃度にまでSWNTsを可溶化させる能力があると判断できた(さらに少量の水に溶解する可能性も考えられるが、分散性の判別が困難となる)。なお、溶解度は次の計算式により求めたものである(式の右辺中の数値28.6は、濃度1mg/mlの液の吸光度を示す)。
<式2>
溶解度(mg/ml)=(得られたカーボンナノチューブ/シゾフィラン水溶液の吸光度)×28.6
本発明は、カーボンナノチューブを水性媒体中に可溶化することにより、カーボンナノチューブの各種用途、特に医療およびバイオテクノロジー分野における新規な用途開発に資するものと期待される。

Claims (5)

  1. カーボンナノチューブの水分散液と、非プロトン性極性溶媒に溶解させたβ-1,3-グルカンとを混合し、インキュベートすることにより、カーボンナノチューブをβ-1,3-グルカンと複合体化し、該複合体を水に溶解させることを特徴とするカーボンナノチューブを水性媒体中へ可溶化する方法。
  2. 非プロトン性極性溶媒として、ジメチルスルホキシドを用いることを特徴とする請求項1の方法。
  3. 側鎖の糖置換率が30%以上のβ−1,3−グルカンを用いることを特徴とする請求項1の方法。
  4. β−1,3−グルカンが、シゾフィラン、スクレログルカンおよびレンチナンから選ばれたものであることを特徴とする請求項3の方法。
  5. β−1,3−グルカンが、シゾフィランであることを特徴とする請求項4の方法。
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