JP4383894B2 - 股関節置換人工補装具に適用する生物学的再吸収性寛骨臼拘束体および物質ならびに股関節置換における安定性と機能を増強するための生体再吸収性物質 - Google Patents

Description

（関連出願の参照）
本件出願は、「股関節置換人工補装具に適用する生物学的吸収性寛骨臼拘束体および物質ならびに股関節置換における安定性と機能を増強するための生体吸収性物質（ＢＩＯＬＯＧＩＣＡＬＬＹ ＡＢＳＯＲＢＡＢＬＥ ＡＣＥＴＡＢＵＬＵＬＡＲ ＣＯＮＳＴＲＡＩＮＩＮＧ ＣＯＭＰＯＮＥＮＴＳ ＡＮＤ ＭＡＴＥＲＩＡＬＳＦＯＲ ＵＳＥ ＷＩＴＨ Ａ ＨＩＰ ＲＥＰＬＡＣＥＭＥＮＴ ＰＲＯＳＴＨＥＳＩＳ ＡＮＤ ＢＩＯＡＢＳＯＲＢＡＢＬＥ ＭＡＴＥＲＩＡＬＳ ＴＯＡＵＧＭＥＮＴ ＨＩＰ ＲＥＰＬＡＣＥＭＥＮＴ ＳＴＡＢＩＬＩＴＹ ＡＮＤ ＦＵＮＣＴＩＯＮ）」の名称で２００２年４月９日に出願された米国仮特許出願第６０／３７１，０５８号と、「股関節置換人工補装具に適用する生物学的吸収性寛骨臼拘束体および物質ならびに股関節置換における安定性と機能を増強するための生体吸収性物質（ＢＩＯＬＯＧＩＣＡＬＬＹ ＡＢＳＯＲＢＡＢＬＥ ＡＣＥＴＡＢＵＬＵＬＡＲ ＣＯＮＳＴＲＡＩＮＩＮＧ ＣＯＭＰＯＮＥＮＴＳ ＡＮＤ ＭＡＴＥＲＩＡＬＳ ＦＯＲ ＵＳＥ ＷＩＴＨ Ａ ＨＩＰ ＲＥＰＬＡＣＥＭＥＮＴ ＰＲＯＳＴＨＥＳＩＳ ＡＮＤ ＢＩＯＡＢＳＯＲＢＡＢＬＥ ＭＡＴＥＲＩＡＬＳ ＴＯ ＡＵＧＭＥＮＴ ＨＩＰ ＲＥＰＬＡＣＥＭＥＮＴ ＳＴＡＢＩＬＩＴＹ ＡＮＤ ＦＵＮＣＴＩＯＮ）」の名称で２００３年３月２０日に出願された通常の米国特許出願第１０／３９２，５５３号の利益を主張する。参考のために、上記両出願の開示は、本明細書中に援用される。

（背景）
（発明の分野）
本発明は、人体の関節に適用する拘束部材に関する。その関節の例として、股関節、肩関節、肘関節および足関節が挙げられる。更に詳しく述べれば、本発明の局面は、修復外科手術後または置換外科手術後の関節の安定性と機能を少なくとも一時的に増強するための生物学的寛骨臼拘束部材および生物学的再吸収性寛骨臼拘束部材に関する。

（発明の背景）
図１は従来の股関節置換人工補装具を説明したもので、その補装具は、患者の骨盤１２に接合させた寛骨臼陥凹／円胴１０と、患者の大腿部１６に接合させた大腿部材１４または大腿幹部を含み、寛骨臼陥凹／円胴１０と大腿部材１４が球継手型連結体１８で一体に連結されている。図２は、患者の骨盤１２に接合させた寛骨臼円胴１０の側面図を示す。その寛骨臼円胴は内部に着座した、ポリエチレン、金属またはセラミックで形成したインサート２０を含む。

従来の股関節置換人工補装具部材によく見られる厄介な問題として、大腿部材１４の球体２２が寛骨臼円胴１０から外れて位置ずれを起こすことがある。その問題を解消するために、従来技術は固定環などの拘束機構を利用しようと試みている。しかし、当該拘束機構には、股関節の運動範囲を永久に制限する傾向がみられる。更に、正常時と同等の関節瘢痕化を発現させる効果がないので、最適な長期間にわたる股関節の安定性や最適な運動範囲を達成することはできない。加えて、経時的に寛骨臼円胴１０の固定界面に伝達される応力が増大し、内部成長またはセメントの機械的破損を助長し、そして／または、寛骨臼円胴１０とポリエチレンインサート２０の相互間の固定機構の故障を助長し、その結果、寛骨臼の裏側が磨耗する。

（要旨）
本発明は、外科手術後に人工股関節の球体面が位置ずれを起こすような場合、位置ずれ抑制を手助けできる拘束装置に関する。本発明の局面の一部は、股関節人工補装具の寛骨臼陥凹と大腿部材の相互間に付着させる生物学的物質および／または生物学的再吸収性物質から形成した人工股関節移植片に対して、拘束機構を適用することに関する。更に、本発明の局面は、組織形成（瘢痕組織形成などの）の速度を高めるとともに、股関節置換全体に対する宿主側の安定性に要する時間を増やすために、生物学的物質および／または生物学的再吸収性物質を適用することに関する。更には、本発明の局面は、瘢痕組織形成の速度を高めるのと同時に、股関節置換完了後の股関節に対する宿主側の安定性を高めるために、生物学的性状および／または生物学的再吸収性のペースト物質またはグルー物質（単独での使用または上記の何れかの局面との併用）を適用することに関する。更には、本発明の局面は、上記生物学的物質と生物学的再吸収性物質の何れかの物質に対して、凝固剤、瘢痕剤、造骨予防薬（抗異所骨化）、非ステロイド抗炎症薬（ＮＳＡＩＤ）および／または抗生物質などの有用薬剤を含浸させることに関する。更には、本発明の局面は、生物学的性状および／または生物学的再吸収性の安定剤の適用に関する。その安定剤は、単独での使用または前述の他の何れかの局面と併用した場合、寛骨臼から大腿部材の頚部に懸架して固定し、輪ゴム様に作用して大腿部材を運動させることができると同時に、結局のところ、瘢痕化を導いて永久に安定性を与える。更には、本発明の局面は、拘束機構を寛骨臼陥凹／円胴に取り付けるために、生物学的再吸収性のネジまたは他種固定部材（単独での使用または上記の何れかの局面との併用）を適用することに関する。更には、本発明の局面は、生物学的再吸収性の網目材またはウェブ材の適用に関する。その網目材やウェブ材は、単独で使用するか、または、上記の何れかの局面と併用した場合、大腿部材を寛骨臼または寛骨臼陥凹／円胴部材に保持させる。

特定の実施態様では、術後に患者から望まれる範囲の運動を発揮するのに特に適合した幾何学構造を有する拘束環状体が活用される。その拘束環状体を活用したことによる付加的利点は、極端な運動時や変位時に大腿部材の頚部上が衝突する危険性、また、変位修復のための再手術の危険性を実質的に増加させないことである。代表的な実施態様の少なくとも一つでは、生物学的再吸収性物質を利用することで、そのような変位を一時的に抑制させている。その結果、医師は拘束装置の位置決めおよび／または回転することが可能になり、衝突が減るとともに、少なくとも１つの軸方向で望まれる有効運動範囲が大きくなる。この例の実施態様によると、生物学的再吸収性物質は、患者自身の体内で発生される組織のレベルに概ね釣り合って減生するので、股関節の安定性を補完して変位を抑制すると想定される。従って、患者からの人工拘束装置の要望が減少するのに伴い、人工拘束装置自体もまた減少することになる。

本発明の第１局面によれば、患者の骨盤に接合するのに適した寛骨臼陥凹組立体と、患者の大腿部に接合するのに適した大腿幹部であって、寛骨臼陥凹組立体の内部に収受された近位端部に、球継手型連結体を形成するための球部材を備えた大腿幹部とを含む股関節人工補装具に適用される人工補装具拘束装置であって、その拘束装置が中心開口部を有する環状体を具備し、大腿幹部が中心開口部を貫通するように、環状体が寛骨臼陥凹組立体の周縁へ装着させるのに適し、環状体が寛骨臼陥凹組立体と大腿幹部の相互間での球継手型連結体の保持を助けるように、中心開口部が大腿幹部の近位端部上の球部材よりも小さい直径を有し、環状体が生物学的物質、生物学的再吸収性物質、または、生物学的物質と生物学的再吸収性物質との複合体を含むことを特徴とする人工補装具拘束装置が提供される。

本発明の第２局面によれば、患者の骨盤に接合するのに適した寛骨臼陥凹組立体と、患者の大腿部に接合するのに適した寛骨臼陥凹組立体と、患者の大腿部に接合するのに適した大腿幹部であって、寛骨臼陥凹組立体の内部に収受された近位端部に、球継手型連結体を形成するための球部材を備えた大腿幹部と、中心開口部を有する拘束環状体とを含み、大腿幹部が中心開口部を貫通するように、拘束環状体が寛骨臼陥凹組立体の周縁に装着され、拘束環状体が寛骨臼陥凹組立体と大腿幹部の相互間での球継手型連結体の保持を助けるように、中心開口部が大腿幹部の近位端部上の球部材よりも小さい直径を有し、拘束環状体が生物学的物質、生物学的再吸収性物質、または、生物学的物質と生物学的再吸収性物質との複合体を含むことを特徴とする人口股関節補装具が提供される。

本発明の第３局面によれば、股関節に隣接して移植するための人工補装具拘束装置であって、その拘束装置が、大腿部材を延出させるための中心開口部を形成する弓状本体を具備し、弓状本体が、大腿部材の角運動範囲を増大させるために、弓状本体に半径方向に延びる少なくとも一つの凹部を有する遠位面を含み、かつ、大腿部材の大腿頭部が開口部を遠位方向に完全に通過させないように補助するために、寛骨臼人工補装具、寛骨臼骨および／または無名骨に装着するのに適した近位面を含むことを特徴とする人工補器官拘束装置が提供される。

本発明の第４局面によれば、人工大腿幹部材と、人口股関節組立体の人工寛骨臼部材とを少なくとも一時的に係合させた状態で保持する拘束装置であって、その拘束装置が生物学的物質、生物学的再吸収性物質、または、生物学的物質と生物学的再吸収性物質との複合体を含むことを特徴とする拘束装置が提供される。

本発明の第５局面によれば、股関節を少なくとも一時的に完全な状態で保持する移植自在拘束装置であって、その拘束装置が、生物学的物質、生物学的再吸収性物質、または、生物学的物質と生物学的再吸収性物質との複合体を含むことを特徴とする移植自在拘束装置が提供される。

本発明の第６局面によれば、股関節に隣接して移植するための拘束装置であって、その拘束装置が、少なくとも１種の生物学的再吸収性物質を含み、かつ、大腿部材を延出させるための開口部を有する板部材を具備し、板部材が、大腿部材の角運動範囲を増大させる様に適合した少なくとも一つの凹部を有する遠位面と、大腿部材の大腿頭部が開口部を遠位方向に完全に通過させないように補助するために、寛骨臼人工補装具、寛骨臼骨および／または無名骨に装着するのに適した近位面とを含むことを特徴とする拘束装置が提供される。

本発明の第７局面によれば、患者の骨盤に接合される寛骨臼陥凹組立体と、患者の大腿部に接合される大腿幹部とを含む人工股関節に対して、少なくとも一時的に安定性を付与する方法が提供され、大腿幹部は、寛骨臼陥凹組立体の内部に収受された近位端部に、球継手型連結体を形成するための球部材を備える。その方法は、人工股関節を安定化させるために、拘束装置を人工股関節に装着させる工程を包含し、その拘束装置が生物学的物質、生物学的再吸収性物質、または、生物学的物質と生物学的再吸収性物質との複合体を含む。

（発明の説明）
本明細書中に記載する代表的実施態様は、股関節置換手術に適用される拘束装置、物質、および技術に関連する。当然のことだが、本明細書中に開示の装置、物質、技術が他形式の移植片や整形外科手術にも有用であることは当業者には明かである。

図３〜５に示すように、本発明による第１の代表的実施態様は、寛骨臼円胴１０（図５を参照）の遠位端部上に装着するのに適合し、大腿部材１４の球体２２を寛骨臼円胴１０の内部に保持させる拘束環状体２４である。拘束環状体２４は生物学的物質および／または生物学的再吸収性物質を含み、その物質は、実の組織（瘢痕組織などの）が形成されるか、あるいは生物学的物質および／または生物学的再吸収性物質を交換するまで、あるいは宿主の正常な補完機構を介して安定性が達成されるまで、様々な時間帯で股関節に対して一時的に安定性を付与する。

代表的な一つの手法では、医師は、大腿部材１４の頚部周囲に拘束環状体２４を位置決めし、その後、大腿部材１４の頚部端部に球体２２を連結する。その結果、拘束環状体２４の開口部での横断面が球体２２の押出を収受せず、あるいは、大腿部材１４の頚部基部の押出しを収受しないので、拘束環状体２４の位置を球体２２と頚部基部の両者間で効率良く維持することができる。医師が球体２２を寛骨臼インサート２０に着座させた後、例えば、限定することなく、クリップ、スナップ、ねじ、縫合、リベットなどの再吸収性固定部材を使用することで、拘束環状体２４が寛骨臼円胴１０の遠位周縁２６上に装着される。同様にして、拘束環状体２４を寛骨臼骨または無名骨に、あるいは、寛骨臼インサート２０に装着させることが可能である。拘束環状体２４の作用により、術後に球体２２が寛骨臼円胴１０から変位するのを抑制できる。

この代表的実施態様による再吸収性拘束環状体２４は、拘束環状体２４の遠位端部に形成され、かつ、拘束環状体２４の前方／上部部分および後方／上部部分に半径方向に配置された角付き切欠領域２８（または切欠領域）を具備し、大腿部材１４の運動範囲を改善すると同時に、変位を抑制する。通常、上記切欠領域２８は前方に配置され、股関節が屈曲して内方向に回転した場合の後方での変位を軽減する。逆に、上記切欠領域２８は後方に配置され、股関節が外方向に回転して延出した場合の後方での衝突を抑制することにより、前方での変位を軽減することもできる。加えて、拘束環状体２４に一つまたはそれ以上の隆起部２９を形成し、安定性を一段と増大させるように配置することもできる。拘束環状体２４の内面を球体２２の輪郭に一層近似して規定し、近位端部から遠位端部まで概して大きい横断面を呈するようにしてもよい。言い換えれば、拘束環状体２４は、開口部で終結する略ドーム形状の内面を含み、その内面が拘束環状体２４の近位面からの距離に従って狭窄した直径を有するものである。

この代表的実施態様では、拘束環状体２４は比較的短時間に（すなわち、数週間または数か月間に）吸収され、かつ、長期間の股関節の安定性を付与し、好適には正常な運動範囲を付与するような組織（瘢痕組織などの）によって交換される。

拘束環状体２４に用いる生物学的物質の例として、限定されるものではないが、細胞外基質（ＥＣＭ）を挙げることができる。ＥＣＭの例を挙げると、限定されるものではないが、ブタ小腸粘膜下組織（ＳＩＳ）、異種小腸粘膜下組織（ｘＳＩＳ）、膀胱粘膜下組織（ＵＢＳ）、積層腸粘膜下組織、グルタルアルデヒド処理ウシ心膜（ＧＬＢＰ）である。上記の生物学的物質は層状品、鋳型形成品、成形品、編組品、穿孔品、多層品、接合品でもよく、さもなければ、拘束環状体２４に関連した所望の特性と寸法を実現できるように操作したものでもよい。

拘束環状体２４に用いる生物学的吸収性物質の例として、限定されるものではないが、ＭＯＮＯＣＲＹＬ（ポリグレカプロン２５）、ＰＤＳＩＩ（ポリジオキサノン）、外科用腸線縫合糸（ＳＧＳ）、腸線、被覆ＶＩＣＲＹＬ（ポリグラクチン９１０、ポリグラクチン９１０編組品）、ヒト自家移植腱物質、膠原線維、ＰＯＬＹＳＯＲＢ、ポリ−Ｌ−乳酸（ＰＬＬＡ）、ポリ乳酸（ＰＬＡ）、ポリラクチド（Ｐｌａ）、ラセミ状ポリラクチド（Ｄ，Ｌ−Ｐｌａ）、ポリ（Ｌ−ラクチド−コ−Ｄ，Ｌ−ラクチド）、７０／３０ポリ（Ｌ−ラクチド−コ−Ｄ，Ｌ−ラクチド）、ポリグリコリド（ＰＧａ）、ポリグリコール酸（ＰＧＡ）、ポリカプロラクトン（ＰＣＬ）、ポリジオキサン（ＰＤＳ）、ポリヒドロキシ酸、吸収性板状物質（参照文献：例えば、「整形外科（Ｏｒｔｈｏｐｅｄｉｃｓ）」， ２００２年１０月， Ｖｏｌ． ２５， Ｎｏ．１０／Ｓｕｐｐ．）を挙げることができる。上記の生物学的吸収性物質は層状品、鋳型形成品、成形品、編組品、穿孔品、多層品、植接品でもよく、さもなければ、拘束環状体２４に関連した所期の特性と寸法を実現できるように操作したものでもよい。例えば、ＭＯＮＯＣＲＹＬ（ポリグレカプロン２５）、ＰＤＳＩＩ（ポリジオキサノン）と吸収性板状物質はブロック成形品である一方、外科用腸線縫合糸（ＳＧＳ）、腸線、被覆ＶＩＣＲＹＬ（ポリグラクチン９１０）、ヒト自家移植腱物質、膠原線維、ＰＯＬＹＳＯＲＢ、ポリ−Ｌ−乳酸（ＰＬＬＡ）、ポリ乳酸（ＰＬＡ）、ポリグリコール酸とブタ小腸粘膜下組織（ＳＩＳ）は層状品や成形品である。拘束環状体２４を形成するに当り、前述の物質や技術を個別に使用し、あるいは、併用することは本発明の範囲と精神の範疇である。

生物学的再吸収性のネジ２６を構成する代表的な物質は、限定されるものではないが、ポリ−Ｌ−乳酸（ＰＬＬＡ）とコラーゲンである。当業者には明白なことだが、拘束環状体２４またはネジ２６に適用可能な多様な他種の生物学的物質および／または生物学的再吸収性物質が存在する。それらの全ての物質や、以下の記載から明かになる他の物質は本発明の範囲に含まれる。

更に、拘束環状体２４を構成する生物学的物質および／または生物学的再吸収性物質に、組織の発育を促進または補助したり、不必要な造骨（抗異所骨化）を防止したり、および／または、感染症を制圧することが可能な薬剤を「加える」（分配、被覆、含浸等）ことも本発明の範囲内に含まれる。例えば、代表的な薬剤は、限定されるものではないが、濃縮血小板（Ｄｅｐｕｙ Ｏｒｔｈａｐｅｄｉｃ製のＳＹＭＰＨＯＮＹ）およびゲンタマイシンが挙げられる。

図６は拘束環状体２４の別の代表的実施態様を示し、その環状体は、交互に設けたネジ穴３４のパターンと、角付き傾斜切欠領域２８のパターンと、隆起部２９のパターンとを有している。

図７に示す更に別の代表的実施態様では、生物学的性状および／または生物学的再吸収性の網目材またはウェブ材３０を使用することで、大腿部材１４の中間頚部領域を寛骨臼円胴１０または寛骨臼に保持させることができる。この実施態様で用いる生物学的性状と生物学的再吸収性の網目材またはウェブ材の物質の例として、限定はされないが、細胞外基質（ＥＣＭ）が挙げられる。ＥＣＭの例は、限定はされないが、ブタ小腸粘膜下組織（ＳＩＳ）、異種小腸粘膜下組織（ｘＳＩＳ）、膀胱粘膜下組織（ＵＢＳ）、積層腸粘膜下組織、グルタルアルデヒド処理ウシ心膜（ＧＬＢＰ）、ＶＩＣＲＹＬ（ポリグラクチン９１０）、コラーゲンと自然腸線である（参照文献：例えば、「ヒト組織工学（Ｔｉｓｓｕｅ Ｅｎｇｉｎｅｅｒｉｎｇ）」，２００１年２月， ｐｐ． ６３−７１；「ヒト組織工学（Ｔｉｓｓｕｅ Ｅｎｇｉｎｅｅｒｉｎｇ）」，２００１年６月， ｐｐ． ３２１−３４；「生物医学物質資源誌（Ｊ． Ｂｉｏｍｅｄ． Ｍａｔｅｒｉａｌ Ｒｅｓｏｕｒｃｅｓ）」，２０００年１１月， ｐｐ． ３６５−７３；「生物医学物質資源誌（Ｊ． Ｂｉｏｍｅｄ． Ｍａｔｅｒｉａｌ Ｒｅｓｏｕｒｃｅｓ）」，２００１年７月， ｐｐ． １０１−８；「関節展望（Ａｒｔｈｒｏｓｃｏｐｙ）」， ２００１年２月， ｐｐ．１５１−９；「内皮（Ｅｎｄｏｔｈｅｌｉｕｍ）」，２００１年， ｐｐ． １１−２４；「生体材料（Ｂｉｏｍａｔｅｒｉａｌｓ）」，２００１年１０月， ｐｐ． ２６５３−９；「外科研究誌（Ｊ． Ｓｕｒｇ． Ｒｅｓ． Ａｕｇ．）」１９９７年，ｐｐ． １７９−８６）。一例として、ブタ小腸粘膜下組織（ＳＩＳ）は、寛骨臼円胴１０と大腿部材１４の相互間で連結組織を内部成長させる足場として作用する。網目材３０は、大腿部および／または大腿部材１４（頚部と球体２２を含む）と拘束環状体２４、寛骨臼円胴１０、寛骨臼インサート２０または周辺骨の少なくとも一つとの間に取り付けてもよい。上記部材の何れかに対する網目材３０の取付けには、縫合、縫合アンカー、ネジ、リベットまたは他の効率的な固定機構または固定手法を用いて行うことができる。代表的な装着手法としては、大腿部材１４の頚部内に円周溝を設け、網目材３０を装着する大腿部材１４の頚部周辺に縫合線を引き寄せた状態で、網目材３０に組み込んだ縫合線を円周溝に配列させる。大腿部材の反対側で、網目材３０は縫合アンカーで寛骨臼円胴１０の寛骨臼インサート２０に装着され得る。網目材３０は単独で使用するか、もしくは、前述した拘束環状体２４と併用してもよい。この場合も、当業者には明かなことだが、網目材３０の構成に適用可能な多様な他種の生物学的物質および／または生物学的再吸収性物質が存在する。現時点までに説明した全ての物質や、以下の記載から明かになる他の物質も本発明の範囲に含まれる。

図８に示す別の代表的実施態様では、組織（瘢痕組織などの）への転換が迅速な生物学的再吸収性のペースト／グルー３２を用いる。ペースト／グルー３２は人工補装具の頚部と寛骨臼に隣接して施され、術後の股関節予防措置（靴紐を結ぶこと、靴下を穿くこと、または、足指の爪を手入れすることの禁止など）により患者に強いられる忍耐期間を短縮させることができる。一般に、その予防措置は患者に対して、９０°を超える股関節屈曲が必要なあらゆる動作を禁じている。本発明による生物学的再吸収性ペースト３２を構成する物質の例として、例えば、ブタ小腸粘膜下組織（ＳＩＳ）とＶＩＣＲＹＬ（ポリグラクチン９１０）を挙げることができるが、これらの両物質に限定されない。例えば、ＳＩＳを、関節形成終了間際に人工補装具の頚部領域に隣接してペースト状態で配置して使用した場合、組織の形成に刺激を与えて形成速度を一段と高めると同時に、患者が日常生活での正常な動作を取り戻すまでの期間を実質的に短くすることが可能である。医師が現在、セメントに抗生物質を含浸させているのと同様にして、ペースト３２に前述の抗生物質および／または凝固剤などの薬剤を添加することで、感染症の危険を低減させることも本発明の範囲内である。ペースト３２には、股関節に予防的抗生物質を直接供給する効果がある。

図９を参照すると、本発明の第４の代表的実施態様は、浮嚢３４を具備する拘束環状体２４’で構成されている。その浮嚢は自在に操作されて切欠領域と隆起部２９’とに到達し、球体２２が寛骨臼インサート２０から変位するのを抑制する。拘束は寛骨臼円胴と寛骨臼骨の少なくとも一つに、または、寛骨臼インサートに、リベットを含む、前述した各種の固定方式を介して固定される。浮嚢３４は、その中に注入される再吸収性流体を収容できるように形成される一方、その再吸収性流体は急速に固体状態に移行するとともに、一定の位置で膨張して一つまたはそれ以上の隆起部２９’を形成し、その他の位置では殆ど膨張せずに、または、全く膨張せずに一つまたはそれ以上の切欠領域２９’を収容する。加えて、医師は、液体状態から固体状態に移行する時間を利用し、弛緩の抑制や衝突の最少化のために浮嚢３４を特別に形成することができる。同様に、拘束環状体２４’に複数の浮嚢３４を装備させ、二つまたはそれ以上の隆起部２９’を形成してもよい。浮嚢３４を多孔質で、生物学的性状に、または、生物学的吸収性状に、あるいは、それらの複合体の性状に形成することは、本発明の範囲内である。その上、浮嚢３４および／またはその内容物に、１種またはそれ以上の薬剤を含めることで、組織形成を促して感染症を抑え、凝固を進めることも本発明の範囲内である。

前述した各実施態様に関連し、生物学的物質または生物学的再吸収性物質に、成長刺激因子を組み込むことは本発明の範囲の範疇である。その成長刺激因子は生物再吸収性ペーストまたは成形性足場に組み込まれ、大腿部材１４の変位を抑制する組織操作瘢痕体を創出するための三次元構造を形成することができる。上記成長刺激因子の例として、限定はされないが、増殖因子ベータ（ＧＦＢ−b）、塩基性繊維芽細胞増殖因子（ｂＦＧＦ）、繊維芽細胞増殖因子（ＦＧＦ）、上皮増殖因子（ＥＦＧ）、トランスホーミング増殖因子−β１（ＴＧＦ−b１）、血管内皮増殖因子（ＶＥＧＦ）、結合組織増殖因子（ＣＴＧＦ）、血小板由来増殖因子（ＰＤＧＦ）、直接細胞遺伝子導入、繊維芽仲介遺伝子導入、筋芽仲介遺伝子導入、ＴＧＢ−b細胞遺伝子ファミリー、アデノウイルス仲介遺伝子導入、組み換えアデノウイルス誘導腱癒着形成、ＢＭＰ−１２、骨形成蛋白質−２遺伝子導入、増殖分化因子−５（ＧＤＦ−５）、およびインスリン様増殖因子（ＩＦＧ）が挙げられる（参照文献：例えば、Ｋｏｓｋｉ ｅｔ ａｌ．，「ヒト組織工学靭帯組織−細胞、細胞間質、成長因子（“Ｔｉｓｓｕｅ−Ｅｎｇｉｎｅｅｒｅｄ Ｌｉｇａｍｅｎｔ−Ｃｅｌｌｓ， Ｍａｔｒｉｘ， ａｎｄ Ｇｒｏｗｔｈ Ｆａｃｔｏｒｓ”）」２０００年７月「整形外科調査によるヒト組織工学（Ｔｉｓｓｕｅ Ｅｎｇｉｎｅｅｒｉｎｇ ｉｎ Ｏｒｔｈｏｐｅｄｉｃ Ｓｕｒｖｅｙ）」，Ｖｏｌ． ３１， Ｎｏ．３）、（例えば、Ｂｏｙｅｒ，「成長因子使用による腱、靭帯組織の増強（“Ｕｓｉｎｇ Ｇｒｏｗｔｈ Ｆａｃｔｏｒｓ ｔｏ Ｅｎｈａｎｃｅ Ｔｅｎｄｏｎ ａｎｄ Ｌｉｇａｍｅｎｔ Ｒｅｐａｉｒ”）」「整形外科研究協会シンポジウム年次大会（Ｏｒｔｈｏｐａｅｄｉｃ Ｒｅｓｅａｒｃｈ Ｓｏｃｉｅｔｙ Ｓｙｍｐｏｓｉａ， ＡＡＯＳ Ａｎｎｕａｌ Ｍｅｅｔｉｎｇ）」，Ｎｅｗ Ｏｒｌｅａｎｓ， ２００３年２月）。当該成長因子について、何種かは繊維芽細胞増殖で見込まれる有糸分裂促進剤として提案されている。

前述の実施態様で開示した生物学的物質または生物学的再吸収性物質に、結合組織幹細胞および前駆細胞を組み込むことも本発明の範囲内に含まれる。その結合組織幹細胞と前駆細胞は生物再吸収性ペースト３２または成形性足場に組み込まれ、代表的な応用例では大腿部材１４の変位抑制を目指した操作組織を創出するための三次元構造を形成することができる。上記結合組織幹細胞と前駆細胞の例を挙げるならば、限定はされないが、繊維芽コロニー形成細胞、繊維性コロニー形成単位（ＣＦＵ−Ｆ）、骨髄間質性細胞、間葉幹細胞（ＭＳＣ）、血管周皮組織が挙げられる（参照文献：例えば、Ｍｅｓｃｈｌｅｒ ｅｔ ａｌ．，「結合組織前駆細胞：臨床応用への実用概念（“Ｃｏｎｎｅｃｔｉｖｅ Ｔｉｓｓｕｅ Ｐｒｏｇｅｎｉｔｏｒｓ： Ｐｒａｃｔｉｃａｌ Ｃｏｎｃｅｐｔｓ ｆｏｒ Ｃｌｉｎｉｃａｌ Ａｐｐｌｉｃａｔｉｏｎｓ”）」２００２年「臨床整形外科と関連研究（Ｃｌｉｎｉｃａｌ Ｏｒｔｈｏｐａｅｄｉｃｓ ａｎｄ Ｒｅｌａｔｅｄ Ｒｅｓｅａｒｃｈ）」，Ｎｏ． ３９５， ｐｐ． ６６−８０）。

前述の実施態様で開示した生物学的物質または生物学的再吸収性物質に、造血幹細胞や前駆細胞を組み込むことも本発明の範囲内に含まれる。その造血幹細胞と前駆細胞は生物吸収性ペーストまたは成形性足場に組み込まれ、代表的な応用例では術後の感染症を抑えるための循環血液および免疫系を構成する任意の細胞を与えることができる。

本明細書中に記載するように、限定しないが、重合体、金属、セラミック、樹脂、複合体などの生物学的非吸収性物質で構成した拘束環状体２４を提供することも本発明の範囲および趣旨内に含まれる。

生物学的非吸収性物質で構成した拘束環状体２４は、再吸収性の拘束環状体と同様に装着できるが、その装着に際しては、限定しないが、クリップ、スナップ、ネジ、縫着、グルー、リベットなどの非吸収性固定材が用いられる。当該非吸収性拘束環状体２４は、その環状体を中心にして軸方向に配置された一つまたはそれ以上の凹部を含む平坦な遠位面を有し、大腿部材１４の角運動範囲を大きくさせている。このように構成すると、大腿部材１４の軸方向の運動範囲は、大腿部材１４の頚部と拘束環状体２４の遠位面の相互間の接触表面積量を実質的に変更しなくても、３６０°の全円周で維持される。当該拘束環状体２４も、前述したような隆起部２９を具備する。

更に、生物学的物質、生物学的再吸収性物質および／または生物学的非吸収性物質で構成した拘束環状体２４を提供することも本発明の範囲と精神に含まれる。当該拘束環状体２４を適用すると、医師は手術前と手術中の切欠領域２８に近づけて切欠領域２８と隆起部２９を操作し、股関節手術に起因する患者の独特の身体力学に対して一層良好に順応できる。代表的な実施態様では、鍵穴を設け、その中に分断化した隆起部２９と切欠領域２８を進入させることで、隆起部２９と切欠領域２８の操作が可能である。同様に、代表的な隆起部２９は、生物学的物質、生物学的再吸収性物質および／または生物学的非吸収性物質を拘束環状体２４の遠位面上に、規定された増大の形態で装着することで自在に操作できる。拘束環状体２４、隆起部２９または網目材３０を前述の構成部材の何れかに固定する際に利用される生物学的性状、生物学的再吸収性性状および／または生物学的非吸収性状の固定材（クリップ、スナップ、ネジ、縫合線、鍵穴またはリベットなど）の寸法および位置について、医師にその操作を行わせることも本発明の範囲と精神に含まれる。

更に、非円形開口部を有する拘束環状体２４を提供することも本発明の範囲と精神に含まれる。同様に、非円形横断面を有する拘束環状体２４を提供することも本発明の範囲と精神に含まれる。

上記の説明と発明の概要に関連して、本明細書中に記載した装置と方法が本発明の代表的な実施態様を構成しているとはいえ、本明細書中に記載の発明がその精確な実施態様に限定されるものではなく、請求の範囲に記載した発明の範囲から逸脱しない範囲で変形を付加することが可能なことは当業者には明白なことである。加えて、本発明は請求の範囲に記載されていると理解すべきであり、かつ、本明細書中に述べた代表的実施態様を説明した際の限定または構成要素は、請求の範囲に明示的に指摘されていない場合、請求の範囲の意味に組み込まれることは意図とされていない。同様に、本発明が請求の範囲に記載され、かつ、本発明の固有の効果および／または未発見の効果がここに明示的に言及されていないにしろ、そのような効果が実在すると考えられるので、発明が請求の範囲の何れかに含まれていると見なすには、本明細書中に開示した発明の特定の効果または目的の何れか、または、その全てを満たす必要はないと理解すべきである。

図１は、従来技術の臼蓋窩人工補装具内に装備した従来技術の人工大腿補装具を示す斜視図である。 図２は、骨盤内に移植した従来技術の寛骨臼人工補装具を示す側面図である。 図３は、図４の３−３線からとった一部側面の横断図を示す。 図４は、本発明による第１の代表的実施態様を示す平面図である。 図５は、人工寛骨臼陥凹に装着させた本発明による第１の代表的実施態様を示す斜視図である。 図６は、本発明の第１実施態様に関連した多くの可能な代替構成の一例を示す平面図である。 図７は、人工寛骨臼陥凹と大腿部材に装着した本発明による第２の代表的実施態様を示す斜視図である。 図８は、人工寛骨臼陥凹と大腿部材に隣接して配置した本発明による第３の代表的実施態様を示す断面図である。 図９は、人工寛骨臼陥凹と大腿部材に隣接して配置した本発明の代表的な代替実施態様を示す横断面図である。

Claims (17)

1. 患者の骨盤に接合するのに適した寛骨臼陥凹組立体と、患者の大腿部に接合するのに適した大腿幹部であって、該寛骨臼陥凹組立体の内部に収受された近位端部に、球継手型連結体を形成するための球部材を備えた大腿幹部とを含む、股関節置換人工補装具に適用される人工補装具拘束装置であって、該拘束装置は、
   中心開口部を有する環状体を具備し、該大腿幹部が中心開口部を貫通するように、該環状体が該寛骨臼陥凹組立体の周縁へ装着されるのに適し、該環状体が該寛骨臼陥凹組立体と該大腿幹部の相互間での球継手型連結体の保持を助けるように、該中心開口部が該大腿幹部の近位端部上の球部材に比べて小さい直径を有し、
   該環状体の材料が、ブタ小腸粘膜下組織（ＳＩＳ）、異種小腸粘膜下組織（ｘＳＩＳ）、膀胱粘膜下組織（ＵＢＳ）、積層腸粘膜下組織、およびグルタルアルデヒド処理ウシ心膜（ＧＬＢＰ）のうちの少なくとも１種を含む、人工補装具拘束装置。
2. 前記環状体が、前記大腿幹部の角運動範囲を増大させるために、該環状体に半径方向に延びる少なくとも第一凹部を備えた遠位面を含む、請求項１に記載の人工補装具拘束装置。
3. 前記環状体を寛骨臼陥凹組立体に装着した場合、前記第一凹部が該環状体の前方／上部領域と後方／上部領域のうちの少なくとも一方に位置する、請求項第２項に記載の人工補装具拘束装置。
4. 前記環状体の遠位面が、少なくとも二つの方向で前記大腿幹部の角運動範囲を増大させるために、該環状体に半径方向に延びる少なくとも第二凹部を有する、請求項第３項に記載の人工補装具拘束装置。
5. 前記環状体を前記寛骨臼陥凹組立体に装着した場合、前記第一凹部が環状体の前方／上部領域に位置し、前記第二凹部が環状体の後方／上部領域に位置する、請求項第４項に記載の人工補装具拘束装置。
6. 前記開口部が略ドーム型の内面を含み、該内面が前記環状体の近位面からの距離に従って狭窄した直径を有する、請求項第５項に記載の人工補装具拘束装置。
7. 前記第一凹部の円周幅が、前記大腿幹部の頚部の直径よりも少なくとも僅かに大きい、請求項第２項に記載の人工器官拘束装置。
8. 前記環状体の遠位面が更に隆起部を含み、隆起部の半径方向において前記大腿幹部の角運動を減少させる、請求項第２項に記載の人工補装具拘束装置。
9. 前記拘束装置を前記寛骨臼陥凹組立体に装着した場合、前記隆起部が前記環状体の後方領域に位置する、請求項第８項に記載の人工補装具拘束装置。
10. 前記開口部が略ドーム型の内面を含み、該内面が前記環状体の近位面からの距離に従って狭窄した直径を有する、請求項第２項に記載の人工補装具拘束装置。
11. 人口股関節補装具であって、以下：
    患者の骨盤に接合するのに適した寛骨臼陥凹組立体と、
    患者の大腿部に接合するのに適し、該寛骨臼陥凹組立体の内部に収受された近位端部に、球継手型連結体を形成するための球部材を含む大腿幹部と、
    中心開口部を有する拘束環状体とを具備し、該大腿幹部が中心開口部を貫通するように、該拘束環状体が該寛骨臼陥凹組立体の周縁に装着され、該環状体が該寛骨臼陥凹組立体と該大腿幹部の相互間での球継手型連結体の保持を助けるように、該中心開口部が該大腿幹部の近位端部上の球部材に比べて小さい直径を有し、
    該拘束環状体が、生物学的物質、生物学的再吸収性物質、および、生物学的物質と生物学的再吸収性物質との複合体からなる群から選ばれた１種の環状体物質を含み、
    該拘束環状体が、該大腿幹部の角運動範囲を増大させるために、該環状体に半径方向に延びる少なくとも第一凹部を有する遠位面を備え、
    該環状体の材料が、ブタ小腸粘膜下組織（ＳＩＳ）、異種小腸粘膜下組織（ｘＳＩＳ）、膀胱粘膜下組織（ＵＢＳ）、積層腸粘膜下組織、およびグルタルアルデヒド処理ウシ心膜（ＧＬＢＰ）のうちの少なくとも１種を含む、
    人口股関節補装具。
12. 前記第一凹部が拘束環状体の前方／上部領域と後方／上部領域の少なくとも一方に位置する、請求項第１１項に記載の人工股関節補装具。
13. 前記拘束環状体の遠位面が、少なくとも二つの方向で前記大腿幹部の角運動範囲を増大させるために、該拘束環状体に半径方向に延びる少なくとも第二凹部を有する、請求項第１２項に記載の人工股関節補装具。
14. 前記第一凹部が前記拘束環状体の前方／上部領域に位置し、前記第二凹部が該拘束環状体の後方／上部領域に位置する、請求項第１３項に記載の人工股関節補装具。
15. 前記開口部が略ドーム型の内面を含み、該内面が拘束環状体の近位面からの距離に従って狭窄した直径を有する、請求項第１４項に記載の人工股関節補装具。
16. 人口股関節補装具であって、以下：
    患者の骨盤に接合するのに適した寛骨臼陥凹組立体と、
    患者の大腿部に接合するのに適し、該寛骨臼陥凹組立体の内部に収受された近位端部に、球継手型連結体を形成するための球部材を含む大腿幹部と、
    中心開口部を有する拘束環状体とを具備し、該大腿幹部が中心開口部を貫通するように、該拘束環状体が該寛骨臼陥凹組立体の周縁に装着され、該環状体が該寛骨臼陥凹組立体と該大腿幹部の相互間での球継手型連結体の保持を助けるように、該中心開口部が該大腿幹部の近位端部上の球部材に比べて小さい直径を有し、
    該拘束環状体が、生物学的物質、生物学的再吸収性物質、および、生物学的物質と生物学的再吸収性物質との複合体からなる群から選ばれた１種の環状体物質を含み、
    該拘束環状体の遠位面が更に隆起部を含み、該隆起部の半径方向において該大腿幹部の角運動を減少させ、
    該環状体の材料が、ブタ小腸粘膜下組織（ＳＩＳ）、異種小腸粘膜下組織（ｘＳＩＳ）、膀胱粘膜下組織（ＵＢＳ）、積層腸粘膜下組織、およびグルタルアルデヒド処理ウシ心膜（ＧＬＢＰ）のうちの少なくとも１種を含む、
    人口股関節補装具。
17. 前記隆起部が前記拘束環状体の後方領域に位置する、請求項第１６項に記載の人工股関節補装具。

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