以下、この発明の一実施の形態について図面を参照して説明する。
図1は、この発明の一実施の形態に係るスーパーセル閾値テンプレート(スーパーセル閾値配列)36が適用された製版システム10の基本的な構成を示している。
図1例の製版システム10は、基本的には、画像入力部14と画像処理部16と階調画像作成部としての網点画像データ作成部20と画像出力装置24とから構成される。この製版システム10は、画像入力部14により原稿画像12から読み取った画像をドットパターンにより形成される階調画像としての網点画像としてフイルムF上に形成するシステムである。
この場合、画像入力部14において、光源からの光が照射され副走査方向に移送される原稿画像12からの反射光または透過光が、リニアイメージセンサ等の光電変換素子に導かれて電気的に主走査され、その光電変換素子を通じて電気信号である画像信号(画素信号)に変換される。変換された画像信号は、A/D変換器により例えば、値0、1、…、255をとる8ビットのデジタル画像データ(単に画像データともいう。)DAに変換される。
なお、画像入力部14としては、このようなスキャナに限らず、DVD等の画像記録ディスク(画像記録媒体)、通信ネットワーク、デジタルスチルカメラ等、結果としてデジタル画像データを出力する媒体であればよい。
画像入力部14から出力された画像データDAに対して、画像処理部16により、必要に応じて色補正処理、シャープネス処理等が行われて画像データGが作成される。
この実施の形態において画像出力装置24の解像度、すなわち出力解像度は、例として、1200走査線/インチであるものとする。なお、この走査線/インチの表現は、スクリーン線数と紛らわしいので、以下、出力解像度は、1200dpi(dot/インチ)で表すものとする。ここで、dotは、上記のように1画素を意味する。
なお、画像出力装置24の解像度としては、900dpi〜5000dpi程度の値を選択することができる。
画像処理部16により所定の処理のなされた画像データGは、階調画像データ作成装置としての網点画像データ作成部20に供給される。なお、近年、網点画像データ作成部20に供給される画像データGとして、上記デジタルカメラ等、結果としてデジタル画像データを出力する媒体で画像処理がなされたものが直接供給される場合もある。
網点画像データ作成部20は、ソフトウエアを用いてコンピュータにより実現することが可能であるが、ハードウエアにより実現することもできる。また、ソフトウエアとハードウエアとを混在させて実現することもできる。
網点画像データ作成部20は、階調画像データ作成手段(網点画像データ作成手段)として機能する比較部32、アドレス計算部34、階調画像データ作成用閾値配列が複数記憶される記憶媒体としてのスーパーセル閾値テンプレート(閾値配列)36、および所望の閾値配列を選択する選択手段としての網属性入力部38から構成される。
網点画像データ作成部20に供給された画像データGは、比較部32の比較入力に供給される。また、画像データGからスーパーセル閾値テンプレート36上のx軸とy軸のアドレスを表すアドレスAD=AD(x,y)がアドレス計算部34により計算される。
スーパーセル閾値テンプレート36は、その指定されたアドレスADに格納されている閾値{この場合、値1、…255をとる8ビット(正確には、8ビットから1を引いた値であるが、便宜上、8ビットという。)の閾値データ}Tを読み出して比較部32の基準入力に供給する。
スーパーセル閾値テンプレート36としては、複数のスーパーセル閾値テンプレート中、網属性入力部38により指定された網属性(スクリーン線数、網角度および網形状)に対応するものが使用される。なお、この実施の形態において、例として、スクリーン線数(スクリーン周波数)は175線(lpi)であり、網角度は15°、網形状はスクエア形状に指定されているものとする。
なお、スクリーン線数は、85線、175線、300線等、50線〜600線の間の値に選択することができる。
スーパーセルは、複数の網点セル(単に、網点ともいう。)から構成されている。一般に、網点生成技術分野においては、出力解像度により定まる画素グリッド上にスーパーセルを設定し、設定したスーパーセルを網点セルに分割し、分割した網点セル内の各画素に対応して閾値を割り当てて網点閾値を生成するようにされており、各網点セルに閾値が割り当てられたスーパーセルをスーパーセル閾値テンプレート(閾値配列)という。
スーパーセルに関連して網点を生成する技術の参考文献としては、例えば、「書名:ポストスクリプト・スクリーニング、著者:ピーター・フィンク、発行元:株式会社エムディエヌコーポレーション、発行日:1994年8月11日、初版第1刷」を挙げることができる。
複数の網点セルから構成されるスーパーセルを考えることで、スクリーン線数と網角度をより細かく変化させることが可能になり、指定されたスクリーン線数と網角度に、より近い値を選択することができるという有利さがある。
画素グリッドとは、黒化単位である画素の集合体をいう。したがって、画素グリッドは、出力解像度で画素が縦横に整然と並んでいる状態をイメージすればよい。
比較部32では、画像データGと閾値データ(単に閾値ともいう。)Tについて、G≧T→1(オン、黒化)、G<T→0(オフ、白抜け、非黒化、白化)の大小比較演算を行い、その比較演算結果の値1または値0をとるドットパターンを示す階調画像データとしての網点画像データ(2値データ、2値画像データ、2値網点画像データ、またはデジタル網点データともいう。)Hを作成する。
作成された網点画像データH、すなわち階調画像データは、画像出力装置24を構成する露光記録部26に供給される。なお、網点画像データHにより、たとえば、図示していないディスプレイ上に表示される画像は、0または1以上の黒化画素からなるドットを有する網点セルの集合パターン(ドットパターンという。)により形成される階調画像となる。
露光記録部26では、この露光記録部26内に配された感光材料M上を、網点画像データHに応じてオンオフするレーザビーム(記録ビーム)により露光走査記録して、感光材料M上に潜像としての網点画像を形成する。網点画像の形成された感光材料Mは、自動現像機28により現像処理されて、顕像化された網点画像が形成されたフイルムFが作成される。このフイルムFが原版とされて刷版が作成され、作成された刷版が図示していない印刷機に装着され、装着された刷版に対してインキが付けられる。
刷版に付けられたインキが印画紙等の記録媒体であるシート上に転移されることで、シート上に画像が形成された所望の印刷物を得ることができる。
なお、この発明は、原版としてのフイルムFを出力する画像出力装置24ではなく、網点画像データHにより刷版PPを直接出力することの可能な画像出力装置であるCTP(computer to plate)出力機24aにも適用することができる。CTP出力機24a内では、感光材料Mがレーザビーム(記録ビーム)により走査記録されることで、直接、刷版PPが得られる。
また、画像出力装置としては、いわゆるレーザ光を用いた走査露光装置に限らず、面露光方式やインクジェット方式でフイルム、刷版あるいは印刷物を描画する装置にも適用することができる。
さらには、CTC(computer to cylinder)印刷機24bに網点画像データHを供給するように構成すれば、このCTC印刷機24bでは網点画像データHに基づき、シリンダに巻き付けられた感光材料Mが走査記録されて得られた刷版にインキが付けられ、刷版に付けられたインキが記録媒体であるシートに転移されることで、シート上に画像形成された所望の印刷物PMを直接得ることができる。
なお、図1例中の網点画像データ作成部20を構成するスーパーセル閾値テンプレート36の閾値配列は、CDROM、CDR等のパッケージメディアであって持ち運ぶことの可能な記憶媒体49に記録して可搬することが可能である。
この網点画像データ作成部20は、ハードウエアあるいはコンピュータ上でソフトウエアによって実行される場合がある。この場合、スーパーセル閾値テンプレート36(閾値配列)は、ハードディスク等の記憶媒体に記憶されているものを用いる。
以上が、この発明の一実施の形態の閾値配列が適用された製版システム10の基本的な構成についての説明である。
次に、この発明の一実施の形態に係る画像の画素配置修正方法および画像作成用閾値配列決定方法を実施する、網点画像データ配置位置修正装置兼用階調画像作成用閾値配列作成装置について説明する。
図2は、記憶手段であるRAM(ランダムアクセスメモリ)やハードディスク等の記憶媒体により構成され、それぞれ複数の1、2、…、255の閾値Tが割り当てられて作成されるスーパーセル閾値テンプレート(閾値配列)36の作成装置(階調画像作成用閾値配列作成装置)18の構成例を示している。なお、ここで階調画像とは、2値画像{黒化画素と白化(非黒化)画素とからなる階調画像}あるいは4値画像(例えば、4段階の濃度0、1、2、3で示される階調で構成される階調画像)等の多値画像を意味している。
この図2例の階調画像作成用閾値配列作成装置18において、図1に示した製版システム10の構成要素と対応するものには、同一の符号を付けてその詳細な説明を省略する。
階調画像作成用閾値配列作成装置18は、線数、角度、出力解像度、網形状等の入力パラメータを設定するパラメータ入力部37と、設定された入力パラメータに応じて実質線数角度を選択する実質線数角度選択部39と、選択された実質線数角度に応じて黒化候補画素あるいは白化候補画素を選択する候補画素選択部41とを有している。なお、候補画素選択部41は、スーパーセル閾値テンプレート36の閾値を決定する際に、階調の高い方の次階調の閾値を決定する場合には、黒化候補画素を選択する機能を有する黒化候補画素選択部として機能するが、階調の低い方の次階調の閾値を決定する場合には、白化候補画素を選択する白化候補画素選択部として機能する。
また、階調画像作成用閾値配列作成装置18は、候補画素選択部41により選択された候補画素の選択に応じて、既に決定している閾値配列で作成される画像パターンを発生させるように、閾値サイズ分で大きさが一定の画像データGを発生する画像データ発生部30と、発生された画像データGに基づいてアドレスADを計算して作成途中(作成途上)スーパーセル閾値テンプレート36Mに供給するアドレス計算部34と、最初は閾値Tが全てゼロ値とされ実質的に閾値Tが何も配置されていない状態から順次決定された閾値が記憶(保存)される作成途中スーパーセル閾値テンプレート36Mと、作成途中までの閾値(既決定の閾値)Tと画像データGとから値0または値1をとる網点画像データHを作成する比較部32と、網点画像データHに基づき画像出力装置24から出力される濃度画像(濃淡画像ともいう。)に対応する濃度画像データHd(「0」と「1」とからなる2値データ)を作成する濃度シミュレーション部33とを有している。
なお、濃度シミュレーション部33の入出力端には、画素配置修正前の網点画像データHを格納して出力するとともに、画素配置修正後の網点画像データHおよび濃度画像データHdを格納する画像データ格納部31が接続されている。網点画像データHは、候補画素選択部41、画素決定部80および強度算出部78でも参照される。
さらに、階調画像作成用閾値配列作成装置18は、網点画像データHあるいは濃度画像データHdから低周波成分データ(低周波ノイズ成分、低周波ノイズデータ、低周波成分)Lを抽出する低周波成分抽出部45と、候補画素選択部41により選択された候補画素の位置の特定周波数成分の強度を算出するとともに、算出した特定周波数成分の強度に基づき次の画素位置を閾値の配置位置と決定する画素決定処理部46を有している。
ここで、低周波成分抽出部45は、周波数変換手段としての高速フーリエ変換器(FFT)40、低域通過フィルタ(LPF)42、周波数逆変換手段としての高速逆フーリエ変換器(IFFT)44とから構成される。なお、周波数変換手段としては、高速フーリエ変換器40にかぎらず、ウェブレット変換手段を使用することができ、ウェブレット変換手段を使用したときには、周波数逆変換手段としてウェブレット逆変換手段を使用する。
また、低周波成分抽出部45は、周波数変換手段を持つことなく実空間上でのフィルタリング(コンボリューション演算)によって低周波成分を抽出することも可能である。コンボリューション演算のマスクサイズや画像データサイズにも依存するが、計算を実行するにあたっては、周波数変換手段を用いた方が、コンボリューション演算より演算時間を短くすることができる場合が多い。
比較部32により作成された網点画像データHあるいは画像データ格納部31から出力された網点画像データHは、濃度シミュレーション部33を通じてあるいは直接にフーリエ変換手段である高速フーリエ変換器40に供給される。濃度シミュレーション部33を通じて供給するか、あるいは直接供給するかは、図示していない選択手段により選択することができる。
この網点画像データHは、位置空間(実空間)上の画像データである。ここで、位置空間上のデータとは、xy平面上で定義される座標上のデータであることをいう。この位置空間上の網点画像データHが、高速フーリエ変換器40により、周波数空間上の情報信号であるデータD1に変換され、遮断周波数が網点の基本周波数成分(スクリーン線数成分)に設定された低域通過フィルタ42に供給される。ここで、周波数空間上のデータとは、xy軸を周波数軸として、その周波数平面上で定義される座標上のデータであることをいう。
低域通過フィルタ42は、周波数空間上のデータD1から網点の基本周波数成分(スクリーン線数成分)より低い周波数の低周波成分を含むデータD2を抽出して、高速逆フーリエ変換器44に供給する。
高速逆フーリエ変換器44は、周波数空間上で抽出された低周波成分を含むデータD2を、位置空間上の画像データである低周波成分データLに変換して画素決定処理部46に供給する。
画素決定処理部46は、低周波成分データLを周波数分析し、さらに複数の特定周波数成分データBに分解して抽出する特定周波数成分分解部70と、抽出された特定周波数成分データBの各候補画素位置での強度を算出する強度算出部78と、算出された強度に基づき黒化候補画素あるいは白化候補画素中、それぞれ黒化画素および白化画素を決定する画素決定部80とを備える。ここで、特定周波数成分分解部70は、高速フーリエ変換器72(上述の高速フーリエ変換器40と同様の機能を有する。)、並べ替え部74、および高速逆フーリエ変換器76(上述の高速逆フーリエ変換器44と同様の機能を有する。)とから構成される。
画素決定処理部46では、特定周波数成分分解部70から出力される特定周波数成分データBあるいは低周波成分データLのどちらからでも候補画素を決定することができる。特定周波数成分データBあるいは低周波成分データLのどちらを用いるかは、図示していない選択手段により選択することができる。
低周波成分データLまたは特定周波数成分データBに基づき画素決定処理部46により決定された閾値配列は、作成途中スーパーセル閾値テンプレート36Mに記憶され、1〜255までの全ての閾値配列が決定されたとき、その作成途中スーパーセル閾値テンプレート36Mは、閾値配列が全て決定されているスーパーセル閾値テンプレート36とされて記憶媒体49に記録され、この記憶媒体49から図1の製版システム10におけるスーパーセル閾値テンプレート36にコピーされ、製版システム10での使用に供される。
このように、画素決定処理部46は、黒化画素から白化画素への置換画素あるいは白化画素から黒化画素への置換画素を決定する。
次に、階調画像作成用閾値配列作成装置18に係る網点画像データの画素配置修正手順について、図3のフロー図を参照して説明する。
まず、ステップS1では、画素配置を修正してモアレの発生を抑制しようとするある階調の網点画像データHが、画素データ格納部31から読み出され、候補画素選択部41に供給される。
図4は、1以上の黒化画素からなるドット47を有する網点セル50の集合パターンにより形成されるある階調の網点画像データ(網点画像)Hを示している。この網点画像データHは、1個のスーパーセルを示しており、上述したように、複数の網点セル(網点)50から構成されている。なお、50という符号を付けている網点セル50中のドット47を構成する黒化画素数は、13個であることが分かる。50という符号を付けていない他の網点セル50中のドット47を構成する黒化画素数が、12個であるものもある。
この網点画像データHは、ある階調GRに対応する網%が約23%、スクリーン線数175線(lpi)=6.89線/mm、網角度15度、出力解像度1200(dpi)=47ドット/mm(画素/mm){1画素の大きさは約21μm角}の属性を有する平網(一定割合の網点が並んでいる均一濃度のドットパターン)となっており、さらに網形状として四角形(スクエア)の形状を有している。網形状としては、四角形以外に円形あるいはその他の幾何形状が存在する。なお、1網点セル内の画素数は、47{=(1200/175)2}個である。
この図4例の網点画像データHは、実質的に平網(一定割合の網点が並んでいる均一濃度のドットパターン)となっている。
この図4から網点画像データHは、xy平面上で定義される座標上のデータ、すなわち位置空間上のデータ(z軸のデータと考えることができる。)が、値0(非黒化、白化)または値1(黒化)をとるデータであることが理解される。
次に、ステップS2では、候補画素選択部41により、図4に示したある階調GRの網点画像データHを構成する各ドット47の輪郭を形成する最外郭の黒化画素の周辺の白化画素の内、1つ以上の白化画素をある階調GRの次階調GR(GR←GR+1)での黒化候補画素に選択する。
図5は、ステップS2の黒化候補画素の選択処理により図4に示す網点画像データHから算出された黒化候補画素データJによるスーパーセル中の黒化候補画素の配置を示している。
黒化候補画素は、網点画像データHの網点特性(線数、角度、形状)を満たすように選択され、上述したように、図4の網点画像データHにおいて、既に黒化されている画素の周囲の画素から複数個選択されている。なお、黒化候補画素の数を大きくすれば、画素配置修正(黒化画素を白化画素にし、白化画素を黒化画素にすること。)の自由度が大きくなるが、自由度を大きくすれば、網の形状が、この例ではスクエアからくずれていく。
次に、ステップS3では、濃度シミュレーション部33により網点画像データHにより得られる濃度画像に対応する濃度画像データHdをシミュレーションにより求める。ここで、濃度画像とは、網点画像データHが入力された場合の画像出力装置24から出力される、たとえばフイルムF上に形成される濃淡画像をいい、その濃淡画像を表すデータを濃度画像データHdという。
図6において、左側の図は、網点画像データHを、1画素をスクエア形状として仮想的に表現した図である。画像出力装置24から実際に出力されるときには、1画素がスクエア形状であることは希であり、一般に、円形状あるいは楕円形状として粗く近似することができる。このようにドットが太ることをドットゲインと呼ぶこともある。濃度画像データHdは、図6の右側の斜線部の面積を求めた濃度を予想したデータである。
実際に画像出力装置24からテストパターンを出力し、元の網点画像データHの1画素がテストパターンの濃淡画像上でどのように出力されるのかを測定することで、たとえば図6の濃度画像データHdにおける円形状の半径を求めることができる。その半径を用いて、実際の濃度像に近い濃度画像データHdでの面積率を網点画像データHから計算することができる。
図6では、1画素、3画素、4画素からなる各網点画像データHが、それぞれシミュレーション後の1画素、3画素、4画素からなる濃度画像データHdに変換される太り具合の例を示している。この図6例では、1画素がそれぞれ円形状に近似されて、濃度が予測される例を示している。このように、濃度画像データHdは、網点画像データHの太りを各画素で予測したコンボリューション(合成積分)画像と見ることもできる。
濃度画像データHdは、特開平11−112814号公報にも示しているような方法で求めることができる。すなわち、画像出力装置24で使用されるビーム形状から露光量を積算計算し、感光材料のガンマ特性から濃度像を予測することができる。
計算により濃度像を予測することを詳しく説明すると、まず、フイルムF上等の記録媒体上に1画素を形成するためのレーザビームBPのコンピュータ計算用のシミュレーション形状を決めておく。シミュレーション形状の例を図7Bに略円錐状のレーザビームBPとして示す。レーザビームBPは、ガウス分布に近い形状を有しており、振幅値の最大値1/e2で規定されるビーム径で略表現できる形状である。
次に、このレーザビームBPと網点画像データH{図7A(図4の図面を再掲)参照}とのコンボリューション演算(網点画像データH*BP:*はコンボリューションの演算を示している。)を行い、各画素毎の露光量を算出する。
次いで、算出した各画素毎の露光量を、フイルムF等の感光材料における露光特性90(図7C参照)、いわゆるガンマ特性により、各画素の濃度に変換する。このようにして求めた各画素の濃度から、濃度シミュレーション画像としての図7Dに示す濃度画像データHdを得ることができる。
図7Dに示す濃度画像データHdは、図7Aに示すスクエア形状の画素から構成される網点画像データHが、画像出力装置24から出力されるときの濃度を予想した結果を表したものである。
次に、ステップS4では、この濃度画像データHdから低周波成分抽出部45により低周波成分データLを抽出する。なお、低周波成分データLの抽出は、網点画像データHから抽出することもできるが、網点画像データHから抽出するよりも、画像出力装置24での濃度シミュレーション処理を行った濃度画像データHdから抽出した方がモアレ成分を除去するためのより効果的な低周波成分データLを抽出することができる。そのため、この実施の形態では、濃度画像データHdから低周波成分データLを抽出することを例として説明する。
このステップS4では、まず、実空間上のデータである濃度画像データHdを、二次元の高速フーリエ変換器40により高速フーリエ変換して、周波数空間上の情報信号であるデータD1に変換する。
次に、このデータD1に対して、網点の基本周波数成分(スクリーン線数)の遮断周波数を有する低域通過フィルタ42を作用させ、低周波成分を含むデータD2を抽出する。
実際上、モアレ縞は人間が知覚するものであるから、高速フーリエ変換器40により濃度画像データHdを高速フーリエ変換した後のデータD1中、高周波成分を低域通過フィルタ42により除去する際に、図8に示す人間の視覚特性65により重み付けした後、低域通過フィルタ42をかけて低周波成分を抽出するようにしている。たとえば一例として図8に示すように、人間の視覚特性65は、周波数0.8(c/mm)近傍で最大感度を有する特性である。
次いで、高速逆フーリエ変換器44は、低域通過フィルタ42により抽出された低周波成分データD2を逆フーリエ変換して、図7Fに示す、位置空間(実空間)上の低周波成分データLを得る。この低周波成分データLからモアレが発生していることが理解される。なお、図7F中、色の濃い部分は、色の薄い部分に比較して、信号強度が強い部分である。
この低周波成分データLは、低周波成分抽出部45から画素決定処理部46に供給される。
次に、ステップS5では、画素決定処理部46を構成する特定周波数成分分解部70中の高速フーリエ変換器72により、低周波成分データLをさらに特定周波数成分(基本周波数成分)に分解する。
図9は、低周波成分データLを空間周波数の特定周波数成分f1(強度Pa),f2(強度Pb),f3(強度Pc),f4(強度Pd),f5(強度Pe),…に分解した状態を1次元的に示している(実際には、2次元の空間である。)。
次に、ステップS6では、並べ替え部74により、各周波数成分の強度を比較し、大きい順(強い順あるいは強度順)に並べる。図9の例では、f2(Pb)→f4(Pd)→f3(Pc)→f1(Pa)→f5(Pe)の順に並べ替える。
次いで、ステップS7では、特定周波数成分(基本周波数成分)を、強度の強い順に、実空間上の周波数成分に高速逆フーリエ変換器76を用いて変換する。
次いで、ステップS8では、強度算出部78により各黒化候補画素位置で、抽出された周波数成分の強度を算出する。
さらに、ステップS9では、画素決定部80において、抽出された周波数成分を強める位置にある黒化候補画素を候補から除外する。換言すれば、抽出された周波数成分の強度の弱い黒化候補画素を残す。
さらにまた、ステップS10では、残された黒化候補画素の数、すなわち白化画素を黒化画素に変換する画素の数が所定個(ここでは、スーパーセルの1階調当たりの黒化画素数であって、後述するNdot個)であるかどうかを判定し、このステップS10の判定が成立するまで、ステップS7〜S9の処理を繰り返す。
ステップS7〜S10の過程が成立するまでの手順について、図面を参照して、より具体的に説明する。
図10A(図7Fを再掲)に示す低周波成分データLの場合、図10B(図5を再掲)に示すように候補画素データJが決定されている。
ステップS7の処理により、特定周波数成分f2(強度Pb)として分解された最も周波数成分強度の強い実空間上の周波数成分データL1を図11Aに示す。
図11Bは、ステップS8、S9の黒化候補画素除外処理により残された周波数成分の強度の弱い黒化候補画素データJ1を示している。黒化候補画素データJ1は、図10Bに示す黒化候補画素データJと図11Aに示す周波数成分データL1とを重ねてみたとき(対応する位置にある画素の強度を比較したとき)、黒化候補画素データJから強度成分の強い部分(図11A中、黒い部分)に対応する黒化候補画素が除外されて残されたデータである。換言すれば、強度成分の弱い部分(図11A中、白い部分)に対応する部分の黒化候補画素が残されたデータである。
なお、特定周波数成分(基本周波数成分)f2に対応する周波数成分データL1では、たとえば、図11Aの左下側から左上側に向かって、略3周期の明暗が現れており、この明暗の信号Aは、A=a・sin (2πf2・r)+b(aは振幅、πは円周率、rは時間、bはオフセット値)と表すことができる。ここで、信号Aの最大値は(a+b)(図11A中、黒い帯状の部分の中央線上の値)、最小値は(−a+b)(図11A中、白い帯上の部分の中央線上の値)となる。特定周波数成分の強度が強いとは、強度がオフセット値bより大きい値であることをいい、弱いとは、強度がオフセット値b未満の値であることをいう。したがって、周波数成分が弱い画素(図11B上では、ドットで示している。)が黒化されると元の特定周波数成分(基本周波数成分)が弱まると考えることができる。図10A〜図14Aの各図は、特定周波数成分(基本周波数成分)の最大値を黒、最小値を白として表示した模式図である。
ここで、残された候補画素データJ1の候補画素数が、所定個ではない場合には(ステップS10の判定が否定的である場合には)、再度、ステップS7の処理により、特定周波数成分f4(強度Pd)が変換された2番目に周波数成分強度の強い実空間上の周波数成分データL2(図12A)を用いてさらに黒化候補画素を絞る。
図12Bは、ステップS8、S9の黒化候補画素除外の2度目の処理により残された周波数成分の強度の弱い黒化候補画素データJ2を示している。
黒化候補画素データJ2は、図11Bに示す黒化候補画素データJ1と図12Aに示す周波数成分データL2とを重ねてみたとき、非黒化部分(図12A中、白い部分)に対応する部分の黒化候補画素が残されたデータである。
以下同様にして得られた、3番目、4番目に周波数成分強度の強い実空間上の周波数成分データL3、L4をそれぞれ図13A、図14Aに示す。図13B、図14Bは、これらに対応する、ステップS8、S9の黒化候補画素除外処理により残された周波数成分の強度の弱い黒化候補画素データJ3、J4をそれぞれ示している。
このようにして残された所定個(スーパーセルの1階調当たりの黒化画素数)の黒化候補画素の位置が、この次階調GR(GR←GR+1)での黒化画素の配置位置として決定される。
次に、ステップS10までの処理により次階調GR(GR←GR+1)分の黒化画素が付けられた次階調の網点画像データH(このデータは、一旦、画像データ格納部31に格納される。)を、元のある階調GRの網点画像データHに戻すために、ステップS11では、白化候補画素を選択する。
図15は、白化候補画素データKを示している。この白化候補画素データKは、ステップS10の処理が成立して決定された黒化画素が付けられたある階調GRの次階調GR(GR←GR+1)の網点画像データHを構成する各ドットの輪郭を形成する黒化画素を白化候補画素としている。
次に、ステップS12では、ステップS10で決定した次階調GRの網点画像データHについて、ステップS3と同様な濃度シミュレーション処理を行い濃度画像データHdを作成する。
さらに、ステップS13では、ステップS4と同様に、この濃度画像データHdから低周波成分抽出部45により低周波成分データLを抽出する。すなわち、人間の視覚特性65で重み付けを行って、網点の基本周波数成分以下の低周波成分データLを抽出する。
次に、ステップS14では、ステップS5と同様に、低周波成分データLをさらに、特定周波数成分分解部70により特定周波数成分データ(基本周波数成分データ)Bに分解する。
次に、ステップS15では、ステップS6と同様に、分解された特定周波数成分データを強度順に並べ替える。
次に、ステップS16では、ステップS7と同様に、抽出された周波数成分を実空間上の周波数成分に、強度の強い順に高速逆フーリエ変換器76により変換する。
次いで、ステップS17では、ステップS8と同様に、強度算出部78により各白化候補画素位置で、抽出された周波数成分の強度を算出する。
さらに、ステップS18では、ステップS9と同様に、画素決定部80において、抽出された周波数成分を弱める位置にある白化候補画素を候補から除外する。換言すれば、抽出された周波数成分の強度の強い白化候補画素を残す。
さらにまた、ステップS19では、残された白化候補画素の数、すなわち黒化画素を白化画素に変換する画素の数が所定個(スーパーセル1階調あたりの黒化画素数)であるかどうかを判定し、このステップS19の判定が成立するまで、ステップS16〜S18の処理を繰り返す。
このようにして残された所定個(スーパーセルの1階調当たりの黒化画素数)の白化候補画素の位置が、現階調GRでの白化画素の配置位置として決定される。
これにより、モアレの発生の抑制された現階調GRでの画素配置修正後の網点画像データH(H←H’)を得ることができる。
なお、ステップS1〜S19の処理は、ステップS20での所定の収束条件を満足するまで行うことが可能である。
所定の収束条件とは、たとえば、ステップS6およびステップS15で選定される低周波成分強度の最大値を記憶しておき、ステップS1〜S19の処理により低周波成分強度の最大値が減少している間は処理を継続し、減少しなくなった時点で処理を終了する条件とすることができる。また、他の収束条件として、予め、ステップS6およびステップS15で選定される低周波成分強度の許容値を設定しておき、計算によって得られた低周波成分強度の最大値が前記許容値以下となった時点で処理を終了する条件とすることもできる。
図16は、現階調GRでの画素配置修正後の網点画像データH(H←H’)を示している。図4は、現階調GRでの画素配置修正前の網点画像データHである。図16の網点画像データH(H←H’)において、網点セル50内のドットパターン47が、図4に示した網点画像データHのドットパターン47と変わっていることがわかる。
画素配置修正後の網点画像データH(H←H’)を濃度シミュレーション部33により濃度画像データHd(Hd←Hd’)に変換し、該濃度画像データHd(Hd←Hd’)から低周波成分抽出部45により抽出した低周波成分データL(L←L’)を図17に示す。
画素配置修正後の網点画像データH(H←H’)に基づく、図17に示す低周波成分データL(L←L’)には、図10Aの低周波成分データLで視認可能なモアレ成分(単版モアレ成分)が、視認不可能となっていることが理解される。
以上のように図3のフロー図を参照して説明した、階調画像作成用閾値配列作成装置18に係る網点画像データHの画素配置修正手順によれば、1以上の黒化画素からなるドットを有する網点セルの集合パターンにより形成されるある階調の網点画像データH中の黒化画素の配置を修正する際に、低周波成分抽出部45および画素決定処理部46により、網点画像データHからスクリーン周波数成分以下の低周波成分を抽出した後、さらに周波数分析し、周波数分析結果の各画素の強度と前記網点画像データHを構成する対応する各画素の強度とを比較し、分析結果の周波数成分が強調されないように、黒化画素位置を修正するという新規な手順により、網点画像データH中の低周波ノイズ成分であるモアレ成分を低減することができる。
なお、黒化画素位置の修正候補は、上述した例では、次階調の網点画像データを対象としているが、現階調の網点画像データを対象とすることも可能である。
すなわち、1以上の黒化画素からなるドットを有する網点セルの集合パターンにより形成されるある階調の網点画像データH中の黒化画素の配置を修正する方法において、上記ステップS2の処理は、ある階調の網点画像データHを構成する各ドットの輪郭を形成する黒化画素の内、1つ以上の黒化画素を白化候補画素に選択する処理とする。
また、ステップS8の処理は、分解された周波数成分で表現される強度変調された画像における前記白化候補画素位置の強度を求める処理とする。
さらに、ステップS9の処理は、前記白化候補画素の位置の強度の強い前記白化候補画素を白化画素に決定する処理とする。
さらに、ステップS11の処理は、決定された白化画素で修正された前記ある階調の網点画像データを構成する各ドットの輪郭を形成する黒化画素の周辺の白化画素の内、1つ以上の白化画素を前記ある階調での黒化候補画素に選択する処理とする。
さらに、ステップS17の処理は、分解された周波数成分で表現される強度変調された画像データにおける前記白化候補画素位置の強度を求める処理とする。
さらに、ステップS18の処理は、前記白化候補画素位置の強度の強い前記白化候補画素を前記ある階調での黒化画素に決定する処理とする。
このようにして現階調GRの網点画像データHを対象として画素位置を修正することができる。
次に、上記のようにして、ある階調GR(以下、符号GRは繁雑となるので、理解の容易化のため省略する。)での黒化画素の配置が修正されてモアレ発生が低減された最適なドット配置となっている網点画像データH、あるいは予め準備されたある階調での適当な網点画像データHに基づき、全階調での閾値配列36を求める処理について図18、図19のフロー図を参照して説明する。図18、図19のフロー図において、結合子(1)、(2)がそれぞれ接続されている。
図18、図19の手順により求めた閾値配列36によれば、単版モアレを全階調で回避可能な閾値配列を得ることができる。
そこで、まず、ステップS31では、ある階調での網点画像データHから、パラメータ入力部37により入力パラメータを設定する。ここで、入力パラメータは、たとえば、スクリーン線数175線(lpi)=6.89線/mm、網角度15度、出力解像度1200(dpi)=47ドット/mm(画素/mm){1画素の大きさは約21μm角}および網形状四角形(スクエア)とする。網形状としては、四角形以外に円形あるいはその他の幾何形状とすることができる。
次いで、実質線数角度選択部39において、ステップS32、S33、S34では、それぞれ、閾値配列であるスーパーセル(スーパーセル閾値テンプレート36)の画素数が選択され、さらに網点画像の配列(大きさ、個数、角度)が選択され、1階調あたりの画素数Ndotが選択される。
図20は、設定された入力パラメータにより形成された網点(網点セル)50の列からなる1個のスーパーセルSSを示している。
ここで、スーパーセルSSの1階調あたりの画素数Ndotは、次の(1)式により決定される。
Ndot=スーパーセルの画素数/階調数 …(1)
このことは、たとえば必要な階調数が256階調のときに、作成途中スーパーセル閾値テンプレート36Mに配置すべき閾値T、換言すれば、スーパーセル閾値テンプレート36中に配置されている閾値T=1、閾値T=2、…閾値T=255が、それぞれNdot個あることを意味している。
この実施の形態においては、256階調が必要な例に対して1〜255の閾値を決めていく方式について説明する。これ以外に、閾値としては、スーパーセル内の総画素数をNallとして、1〜Nallの閾値を計算しておき、それを1階調当たりの画素数Ndotで割ることで、1〜255の閾値を得るようにしてもよい。1〜Nallの閾値を計算しておいた場合には、必要な階調数が変更となった場合でも、除数である1階調当たりの画素数Ndotを変更することで柔軟に対応することができる。
既に示した図16は、ある階調で与えられているドット47のパターンにより形成される網点画像データH(H←H’)を示している。この網点画像データH(H←H’)は、複数の網点50から構成されている。
ステップS34Aにおいて。前記ある階調より階調の高い方の次階調の同値1つ以上の閾値Thの初期値をTh=Tfix+1とおく。
そこで、ステップS35では、前記ある階調より階調の高い方の次階調の同値1つ以上の閾値Thの配置位置を決定する際、前記ある階調での閾値Tfixに係るドットパターンに基づき、前記階調の高い方の次階調の同値1つ以上の閾値Tfix+1の配置位置の候補位置を1箇所以上選択する。
ここで、スーパーセル閾値テンプレート36における1つの階調を構成する閾値の数をNdot個とする。
階調の高い方の次階調の同値1つ以上の閾値Tfix+1の配置位置を選択する場合、ステップS35において、網の形状を損なわないようにする。ここで、候補位置は、次に黒化する候補の画素位置に対応するので、黒化候補画素という。
この黒化候補画素の数をmとするとき、m=Ndot+α、たとえば、Ndot×2個に選択する。余裕度αを大きくすれば、閾値配列の自由度が増加するが網の黒化形状が、この例ではスクエアからくずれていく。なお、黒化候補画素は、現在黒化されている画素の周囲画素の中からステップS31で設定した網点特性(線数、角度、形状)を満たすように選択することが好ましく、網点の周期性を維持するには、少なくとも現在黒化されている画素の周囲画素を算出する必要がある。
図21は、ステップS35の処理である、黒化候補画素の選択手順例の詳細を示している。
すなわち、ステップS35−1では、各画素のうち未だ黒化されていない未処理画素を選択する。次にステップS35−2では、ステップS35−1で抽出した各未処理画素について、以下に説明するように距離値を求める。
図22に模式的に示すように、たとえば、大きさを±1で規格化した各網点50の中心Oから未処理画素までの距離値、換言すれば、未だ閾値が配置されていない画素位置までの距離値を所望の形状であるスクエアに合致した次の(2)式の距離関数D(x,y)により求める。
D(x,y)=1−(|x|+|y|) …(2)
この模式的に描いた図22において、中心Oを含む四角形51の内側までの閾値配列が決まっていた場合に、次に、四角形52の辺の付近の未処理画素までの距離値を距離関数D(x,y)により求めることになる。
なお、距離関数D(x,y)は、黒化部分が円形で太る網点形状である場合には、次の(3)式で表されるものを用いればよい。
D(x,y)=1−(x2+y2) …(3)
距離関数D(x,y)は、いわゆるスポット関数に対応し、所望の網形状に応じてさまざまな関数とすることができる。
次いで、ステップS35−3では、未処理画素の各距離関数D(x,y)の値を小さい方から順に並べ替える。
次いで、ステップS35−4においては、ステップS35−3で求めた距離関数D(x,y)の値の小さい方から順に、未処理画素としての黒化候補画素数がm(m=Ndot+α)個に等しくなるまで選択する。
黒化候補画素数をm個選択できれば、候補画素選択部41は、選択された黒化候補画素数mの各画素位置を画素決定処理部46に転送通知する。黒化候補画素は、図10Bに示したような候補画素データJと同様なデータで表される。
次に、ステップS36の処理において、作成途中スーパーセル閾値テンプレート36Mにより階調画像である網点画像データHを比較部32により作成する。
ある階調でのドットパターンが与えられているとき、作成途中スーパーセル閾値テンプレート36Mは、ドットパターン(黒化されている部分)に対応する部分の閾値を全てある階調での閾値T(T=Tfix)とする。以下に説明する手順により、ある階調より高い方の次階調の閾値Th(Th=Tfix+1)の配置位置が決定した場合、作成途中スーパーセル閾値テンプレート36Mは、ある階調の閾値Tfixと次階調の閾値Tfix+1とから構成されることになる。
網点画像データHを作成する画像データGの値は、G=Tとされる。すなわち、次階調の閾値T(最初は、T=Tfix+1)の配置位置を決定する場合に、既に決まっている閾値T(この場合、T=Tfix)の閾値配列を表す網点画像データHを作成するときには、画像データ発生部30から画像データGの値として、一定値G=Tfixがスーパーセル閾値サイズ分比較部32へ供給される。そのため、たとえば次階調の閾値T(T=Tfix+2)の配置位置を決定する場合には、一定値G=Tfix+1がスーパーセル閾値サイズ分比較部32へ供給される。
結局、図16は、画像データGがG=Tであるとき、作成途中スーパーセル閾値テンプレート36Mを用いて比較部32により作成された1個のスーパーセルSSによる網点画像データHにより表される網点画像を示していることになる。
この図16例の網点画像データHは、平網(略一定網%をもつ網点が並んでいる均一濃度を再現したドットパターン)となっている。ここで、網点の基本周波数は、実際のスクリーン線数に等しい。
ここで、候補画素データJは、たとえば、図10Bで示したものと同様に選択される。黒化候補画素は、ステップS31で設定した網点特性(線数、角度、形状)を満たすように選択され、図16の網点画像データH(H←H’)で既に黒化されている画素の周囲の画素から選択される。
次に、ステップS37では、上述したステップS3の処理と同様に、網点画像データHにより得られる濃度画像に対応する、図7Dに示したような濃度画像データHdをシミュレーションにより求める。
次に、ステップS38では、上述したステップS4の処理と同様に、低周波成分抽出部45により、この濃度画像データHdから低周波成分データLを抽出する。
この低周波成分データLは、低周波成分抽出部45から画素決定処理部46に供給される。
次に、ステップS39では、上述したステップS5の処理と同様に、画素決定処理部46を構成する特定周波数成分抽出部70中の高速フーリエ変換器72により、低周波成分データLをさらにスーパーセル閾値テンプレート36に基づき作成された濃度画像データHdで生じる可能性のある特定周波数成分(基本周波数成分)に分解する(図12A参照)。
次に、ステップS40では、上述したステップS6の処理と同様に、並べ替え部74により、各周波数成分の強度を比較し大きい順に並べる。
次いで、ステップS41では、ステップS7の処理と同様に、抽出された周波数成分を実空間上の周波数成分に、強度の強い順に高速逆フーリエ変換器76により変換する。
次いで、ステップS42では、ステップS8の処理と同様に、強度算出部78により各候補画素位置で、抽出された周波数成分の強度を算出する。
さらに、ステップS43では、ステップS9の処理と同様に、画素決定部80において、抽出された周波数成分を強める位置にある黒化候補画素を候補から除外する。換言すれば、抽出された周波数成分の強度の弱い黒化候補画素を残す。
次に、ステップS44では、ステップS10と同様に、残された黒化候補画素数が、1階調当たりの画素数Ndotに等しい数になっているかどうかを確認し、残された黒化候補画素数が1階調当たりの画素数NdotになるまでステップS41〜S43までの過程を繰り返し、候補を絞っていく。
このようにして残された1階調当たりの画素数Ndotの数の黒化候補画素の位置が、この次階調での閾値の配置位置として決定される。
すなわち、ステップS44の判断が成立したとき、換言すれば、1階調当たりの画素数Ndotの全ての黒化画素に対応する閾値が決定したとき、ステップS45において、画素決定処理部46は、閾値Tが最大値である閾値T=255までの全ての閾値配列が決定したかどうかを確認し、閾値配列が決定していない場合には、次階調の閾値ThをTh=Th+1として、ステップS35からステップS45の処理を繰り返して閾値T=255までの全ての閾値配列を決定して、階調の高い方の閾値配列決定処理を終了する。
このような順序により閾値配列を決定することで、最終的に残った黒化候補画素は、元のドットパターンが有する周波数成分を強めることのない画素を次の黒化画素として選択することができる。最大振幅をもつ基本周波数のみに着目して、周波数成分を弱めることを考慮すると、黒化候補画素のうち、最大振幅を持つ特定周波数成分(基本周波数成分)の最小値の位置を次の黒化候補画素位置として選択することになる。このとき、2番目に大きな振幅を持つ特定周波数成分(基本周波数成分)を強めてしまう場合があるが、先に説明したアルゴリズムを用いれば、比較的強度の強い基本周波数成分のいずれも強めない、すなわち弱める最適な位置に次の黒化画素を配置することができる。
なお、ある階調において、画素数Ndotの数の閾値の配置位置を決定する際、網形状が好ましい形状、この場合、できるだけスクエア形状になるように、一度に1個ずつあるいは複数個ずつ決定して、図18、図19のフローチャート中、点線で示す経路を含む、ステップS36、S37、S38、S39、S40、S41、S42、S43、S44の処理を繰り返すようにすることもできる。
また、1あるいはNdotの数の画素の閾値を選択したいと考えていても、実際に図18、図19のアルゴリズムの処理を実施した場合、ステップS43の処理後には、実際にほしい画素数より画素数が多く残ってしまったり、候補画素数が目的数より小さくなる場合がある。画素数が多い場合にはステップS44で他の条件の大小の順に候補画素数を選ぶことで所望の個数の候補画素数を得ることができる。このとき、他の条件とは、たとえば、各画素における分解した周波数成分の強度値の和の小さい順あるいは、形状を示す距離値Dの順等を用いる。候補画素がなくなる場合には、ステップS43の処理の1つ前に戻って候補画素が多い状態とし上記を実行すれば所望の個数の候補画素を得ることができる。
次に、同様にして、ステップS34B、S55〜S66の処理により、階調の低い方の次階調の閾値Tlの配置位置を決定する場合には、ある階調の閾値Tfixに対応する網点画像データHのドットパターンで白化されている画素は、閾値Tを便宜的に、たとえば255(常に白化される画素)としてしまい、白化候補画素として選択されないようにしてTfix−1以下の閾値Tの配置位置を順次決定する。なお、ステップS34Bは、初期値の閾値Tl=Tfix−1の設定を示し、ステップS66は、閾値Tの低い方の次階調の閾値Tl(Tl=Tl−1)への閾値Tlの更新処理を示している。
ここで、ステップS55においては、ステップS35と同様に網の形状を損なわないように、低い方の次階調の同値複数の閾値Tlの配置位置の候補位置を複数箇所選択する。ここで、候補位置は、次に白化する候補の画素位置に対応するので、白化候補画素という。
なお、次階調の閾値ThとTlの配置位置を決定する際、図18、図19に示したように、高い方の閾値Thの配置位置を全て決めた後、独立に低い方の閾値Tlの配置位置を決定するようにしてもよく、次階調の閾値ThとTlを同時に1階調ずつ決定するようにしてもよい。
このようにして、全ての閾値配列が決定した作成途中スーパーセル閾値テンプレート36Mは、スーパーセル閾値テンプレート36とされ、そのスーパーセル閾値テンプレート36のデータが記憶媒体49に記録され、この記憶媒体49から図1に示した製版システム10中のスーパーセル閾値テンプレート36にコピーされる。
以下、同様にして、ステップS31において新たなパラメータ(線数、角度、出力解像度、網形状等)を設定することにより、このパラメータに対応したスーパーセル閾値テンプレート36の閾値配列を略自動的に決定することができる。
通常、カラーの印刷を行う際には、C(シアン)、M(マゼンタ)、Y(黄)、K(黒)4色分の版を作成することが必要になるため、上述したアルゴリズムにより4つの異なる角度{通常、0度(たとえばY版)、15度(たとえばC版)、45度(たとえばM版)、75度(たとえばK版)}をもつ4版分のスーパーセル閾値テンプレート36の閾値配列を作成する。
なお、上述した実施の形態においては、2値の網点画像データHを対象としているが、この発明は網点画像データHに限らず、出力値が「0,1,2,3」の値をとる4値、8値等の多値網点画像データにも適用することができる。
上記の手順により作成したスーパーセル閾値テンプレート36を設定した図1例の製版システム10によれば、従来、単版モアレのために作成が困難であった、たとえば、解像度が1200dpiで、スクリーン線数が175lpiの出力条件、一般的には、出力解像度(dpi)/線数(lpi)の値が10以下の出力条件の場合であっても、モアレの発生のほとんどない画像が形成された記録媒体であるフイルムF等を作成することができるという利点が得られる。
上述した実施の形態においては、閾値配列を用いる階調画像再現方法における閾値の配置位置の決定方法ということで説明しているが、この発明は、各階調において、どのようなドット配置が最適な配置であるのかを順次決定するものであり、当業者であれば、容易に推測できるように、この技術で決定される各階調のドット配置を、濃淡画像の1画素をZ×Zドットのサブマトリックスに対応させ、各画素の濃度をサブマトリックス内の黒化ドットの面積率で再現する濃度パターン法等の他の階調再現技術にも適用可能であることはいうまでもない。
このように、この発明は、各階調において、どのようなドット配置が最適かを順次決定するものである。上述の実施の形態においては、網点の大きさで濃淡を表現するいわゆるAMスクリーンによる網点(略均一の大きさのドットが直交して略等間隔に並んでいる。)を例として説明しているが、図2中、候補画素選択部41において選択する候補画素の条件によっては、網点以外のドット配置方式による階調再現方法、たとえば、同一サイズのドットを不規則に配置し、該ドットの密度で濃淡を表現するFMスクリーンにおいても、閾値配列に関連して発生する低周波成分の低減に適用できる等、この発明の要旨を逸脱することなく、種々の構成を採りうることはもちろんである。
なお、FMスクリーンの場合には、低域通過フィルタ42は、人間の視覚特性65のみのフィルタとすることにより、網点周期でのスクリーン線数に対応する低域通過フィルタによるフィルタリングは不要である。
[発明の効果]
以上説明したように、この発明によれば、1以上の黒化画素からなるドットの集合パターンにより形成されるある階調の画像低周波成分を抽出した後、さらに周波数分析して黒化画素位置を修正するようにしているので、画像中のモアレ等の低周波ノイズ成分を低減することができる。
また、この発明によれば、予め与えられているドットパターンに基づき、周期的な模様やモアレ等の低周波成分の発生のきわめて少ない閾値配列を決定することができる。