JP4376732B2 - 搬送作業の補助装置と補助方法 - Google Patents
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Description
搬送作業の補助装置では、作業者が可動体に加えている力と、結果的に実現される搬送物の運動との間に、
M・(d2P/dt2)+D・(dP/dt)+K・P=Fh ・・(1)
の関係が成立していると、作業者は自然な操作力ないし手応え(以下、操作反力ということがある)を感じることができ、搬送作業の操作性が向上することが知られている。ここで、d2P/dt2は搬送物の加速度ベクトル、dP/dtは搬送物の速度ベクトル、Pは搬送物の位置ベクトルである。Mは搬送物の加速度に対する比例マトリクスであり、搬送物の質量に相当する。Dは搬送物の速度に対する比例マトリクスであり、搬送物に作用する粘性係数に相当する。Kは搬送物の位置に対する比例マトリクスであり、搬送物に作用するばね定数マトリクスに相当する。Fhは作業者が可動体に加える力のベクトルである。
上記の知見を利用する搬送作業補助装置が特許文献1に開示されている。特許文献1の装置は、作業者が可動体に加える操作力Fhと、結果的に実現される搬送物の運動(加速度ベクトル、速度ベクトル、位置ベクトルで記述される)との間に、上記(1)式が成立するようにアクチュエータの出力を調節する。さらに特許文献1は、重量物の搬送作業を複数の作業段階に大別し、重量物を細かに移動させる位置決め段階では、加速度に対する比例係数Mを小さくするとともに、速度に対する比例係数Dを大きくすることが有効であることを報告している。
しかしながら、例えば重量物を大きく移動させる段階と、重量物を細かく移動させて位置決めする段階を通して、上記(1)式を固定的なものとすると、自然な操作反力が得られず、極端な場合には人の僅かな手ぶれに対してアクチュエータが敏感に応答し、人の手ぶれを増幅してしまうこともある。
そこで、特許文献1の技術では、重量物を細かに移動させる位置決め段階では、加速度に対する比例係数Mを小さくするとともに、速度に対する比例係数Dを大きくする。
この技術は、搬送物の搬送作業が予め想定された複数の作業段階に大別できることに立脚しており、予め判明している搬送作業には極めて有効である。例えば量産工場で重量部品を部品棚から取り出して製品に組み付けるような搬送作業を補助するのには極めて有効である。しかしながら、搬送作業内容が予め判明していない場合に適用できるようにするためにはなおも改良の余地が残されている。
本発明は、作業者による様々な搬送作業(予め判明していない作業も含む)を補助しうる汎用性の高い技術を提供する。
その結果、(1)式には自然界に存在する摩擦力が加味されておらず、摩擦力が作用しないという不自然な環境で操作するときの操作感が再現されてしまうことにあることを認識した。例えば平面内の所定位置に搬送物を位置決めする場合、人は平面から搬送物に作用する摩擦力を考慮し、その摩擦力を利用しながら搬送物を定められた位置まで搬送して停止させる。(1)式の関係を満たすような運動を搬送物の運動に再現する方式では、自然界では作用する摩擦力が加味されず、その自然な操作を再現することができない。
実際の作業でも、摩擦力が作用しないことがある。自由空間内の所定位置に搬送物を搬送して位置決めする場合には、摩擦力が作用しない。体験すれば直ちに明らかになるが、人にとって摩擦力が働かない環境で位置決め操作をすることは困難である。この場合、摩擦力が作用する環境で作業している関係を再現できれば、その操作ははるかに自然で簡単なものとなる。
作業者による搬送作業を補助するための装置やロボットの研究では、摩擦力を排除する方向に向かって研究が進められており、摩擦力を利用しようとする研究は行われてこなかった。本発明者らは、従来は排除されてきた摩擦力に着目し、作業者の搬送作業を補助する技術に摩擦力を利用するための研究に取り組むことによって、本発明を完成するに至った。
摩擦力の一つの特徴は、粘性抵抗力と比較して、物体が低速で運動している場合でも、その大きさが比較的に大きいことにある。例えば、粘性抵抗力の大きさは物体の速度に比例することから、物体の速度がゼロに漸近していくと粘性抵抗力の大きさもゼロに漸近していく。一方、摩擦力の大きさは速度によって変化する場合もあるが、物体の速度がゼロに漸近しても摩擦力の大きさはゼロには漸近せずに、所定の大きさの摩擦力が物体には作用し続ける。
摩擦力の他の一つの特徴は、粘性抵抗力と比較して、物体が高速で運動している場合でも、その大きさが比較的に小さいことにある。例えば、物体の速度が増大していくと、粘性抵抗力は比例して増大していく。一方、摩擦力の大きさは速度によって変化する場合もあるが、物体の速度が増大しても摩擦力の大きさが比例して増大することはない。
摩擦力のまた別の特徴は、粘性抵抗力と異なり、物体が停止している時にも作用しうることにある。粘性抵抗力は物体が停止していると作用しない。一方、摩擦力は、停止している物体が移動しようとする時に、その位置を保持するように作用する。
この補助装置によると、搬送物の運動に摩擦力が作用する環境におかれた物体の運動が再現される。搬送作業の作業段階に応じた適切な操作反力が自動的に作業者に与えられることとなる。その結果、作業段階毎に制御則を変更する必要がなく、様々な搬送作業に採用することができる。作業者は自然な操作感を得ることができ、搬送作業を正しく行うことが可能となる。
一方、前記した仮想質量が搬送物の質量よりも大きな値に設定され、前記アクチュエータが、例えばブレーキ機構などを備え、作業者が加えている操作力よりも小さな力が可動体に加わる状態を実現するものであると、作業者は搬送物よりも重い物体を搬送するときの力で、搬送物を搬送することが可能なる。それにより、人の手ぶれ程度の力で動いてしまうような軽い搬送物を、作業者は正しく搬送して位置決めすることが可能となる。
アクチュエータの位置が、計算されたアクチュエータの目標位置に調節されることによって、摩擦力が作用する環境におかれたときの搬送物の運動を再現することができる。アクチュエータの位置の偏差に基づいて、アクチュエータの位置や出力を調節することで、アクチュエータの位置を計算された目標位置に調節することができる。
搬送物を搬送する際には、作業性や安全等を考慮して、搬送物の好ましい搬送範囲や搬送方向を定めることが好ましい。このとき作業者は、定められた搬送範囲や搬送方向を順守して、搬送物を搬送することが求められる。
この装置では、例えば搬送物が定められた搬送範囲の外側に位置している場合に、搬送物の運動に再現する摩擦力を増大するように調節することができる。それにより、作業者が搬送物を不適当な位置へ搬送した場合に、作業者は大きな抵抗感を感じることとなり、搬送範囲から大きく逸脱してしまうことがない。作業者は、搬送物の位置が正しくないことを知得することができ、搬送物の位置を修正することができる。このとき、摩擦力をより大きく増大させるようにすると、作業者は定められた搬送範囲の周囲にあたかも見えない壁が存在するような操作反力を感じることができる。作業者は、定められた搬送範囲を過度に意識することなく、定められた搬送範囲を順守することができる。
あるいは、搬送物が定められた搬送方向と異なる方向に移動している場合に、搬送物の運動に再現する摩擦力を増大するように調節することもできる。それにより、作業者が搬送物を不適当な方向へ搬送しようとした場合に、作業者は大きな抵抗感を感じることとなる。作業者は、搬送方向が正しくないことを知得することができ、搬送方向を修正することができる。このとき、摩擦力をより大きく増大させるようにすると、作業者はあたかも搬送方向に敷設された見えないレールが存在するような操作反力を感じることができる。作業者は、定められた搬送方向を過度に意識することなく、定められた搬送方向を順守することができる。
この補助装置では、作業者が可動体に所定の操作を行うと、その所定の操作に応じて搬送物の運動に再現される摩擦力の大きさが調節される。即ち、作業者は自身の意思によって搬送物の運動に再現される摩擦力の大きさを調節することできる。その所定の操作は搬送物の運動に関与しない操作であることから、その所定の操作によって搬送物が意図しない運動をするようなこともない。作業者は、可動体に搬送物を搬送するための操作と所定の操作とを同時に独立して行うことができることから、搬送物の位置決め作業をより自然な感覚によってより正しく行うことが可能となる。
この補助装置では、例えばコンベヤや回転テーブル上に載置されている搬送物に搬送力を加えた時に生じる運動を、搬送物の運動に実現することができる。
(形態1) 図1は、実施形態1の作業者による搬送作業の補助装置182の構成を示している。
補助装置182は、搬送物Wを支持する可動体150と、可動体150に作業者が加えている力Fhを検出するセンサ156と、可動体150を移動可能に支持する移動機構151と、移動機構151に組込まれているアクチュエータ152群と、摩擦力が作用する環境におかれたときの搬送物Wにセンサ156で検出した力Fhを加えた時に、搬送物Wに生じる運動を計算する運動計算機162と、運動計算機162で計算した運動を実現するアクチュエータ152群の目標位置のデータに基づいて、アクチュエータ152群を制御するドライバ164を備えている。
作業者Hが可動体150に力を加えると、その加えている力が、センサ156によって検出される。センサ156で検出した力Fhは、運動計算機162へ入力される。センサ156は、作業者Hが可動体150に加えている力の大きさと方向を併せて検出することができる。センサ156は大きさと方向を併せて記述する力ベクトルFhを出力する。
運動計算機162は、センサ156から入力した力Fhを用い、下記(2)式の運動方程式を満たす搬送物Wの運動を計算する。
M・(d2P/dt2)+f=Fh ・・(2);
ここで、Pは搬送物Wの位置ベクトルであり、d2P/dt2は搬送物Wの加速度ベクトルを示す。Mは搬送物Wの加速度に対する比例マトリクスであり、搬送物Wに擬制する仮想質量に相当する。fは搬送物Wの運動に再現する摩擦力ベクトルである。運動計算機162は、上式から搬送物Wの目標とする加速度(d2P/dt2)を計算することができる。運動計算機162は、さらに搬送物Wのその時点の速度を入力し、入力した速度に計算した加速度から計算される速度変化量を加算することによって、搬送物Wの目標とする速度を計算することもできる。また運動計算機162は、さらに搬送物Wのその時点の位置を入力し、入力した位置に計算した速度から計算される位置変化量を加算することによって、搬送物Wの目標とする位置を計算することもできる。センサ156で検出した力Fhから少なくとも加速度ベクトルを計算することによって、搬送物の目標となる運動を計算する。
上記(2)式の仮想質量マトリクスMは、作業者が予め設定し、補助装置182に教示しておくことができる。作業者Hは、搬送物Wの実際の質量とは無関係に、搬送しやすい質量を仮想質量Mとして設定することができる。例えば搬送物Wの重量が重すぎる場合は搬送物Wの質量よりも小さな値を設定し、搬送物Wの重量が軽すぎる場合は搬送物Wの質量よりも大きな値を設定し、搬送物Wの重量が適当である場合は搬送物Wの質量をそのまま設定することができる。
上記(2)式の摩擦力ベクトルfは、搬送物Wが現に行っている運動や、センサWで検出した力Fh等に基づいて、運動計算機162が計算する。このとき、摩擦力fの大きさは、作業者が予め設定して補助装置182に教示しておくことができる。
上記(2)式の運動方程式は、先に示した従来の装置で用いられる(1)式と同様に、搬送物Wの速度に対する比例マトリクスDや、搬送物Wの位置に対する比例マトリクスKを併せて設定することもできる。
運動計算機162は、上記の(2)式を解くことによって、摩擦力f(摩擦力fは搬送物Wの運動の状態に応じて変化する)が作用する環境におかれたときの質量Mの物体に、センサ156で検出した力Fhを加えた時に、質量Mの物体が生じる運動を計算する。運動計算機162で計算された搬送物Wの運動は、ドライバ164に入力される。
図2は、ドライバ164の一部の構成を示すブロック図である。アクチュエータ152は、ドライバ164の構成に含まれないが、図示の明瞭化を目的として図2に併せて示している。ドライバ164は、各アクチュエータ152に対して、アクチュエータ152の目標位置を計算する目標位置計算部172と、差分器174と、アクチュエータ152の作動量を調節する作動量調節部176と、アクチュエータ152の実際の位置を検出するエンコーダ166を備えている。
目標位置計算部172は、運動計算機162で計算された運動(例えば搬送物Wの目標とする位置P)を入力し、その運動を実現するアクチュエータ152の目標位置を計算して出力するものである。目標位置計算部172は、搬送物Wの位置Pと、その位置Pを実現するために必要なアクチュエータ152の位置との関係を記述するデータを記憶しており、搬送物Wの目標とする位置Pからアクチュエータ152の目標位置を計算する。
差分器174は、目標位置計算部172で計算されたアクチュエータ152の目標位置を入力し、またエンコーダ166からアクチュエータ152の実際の位置を入力し、アクチュエータ152の目標位置と実際位置の偏差を計算して出力するものである。
作動量調節部176は、差分器174で計算された偏差を入力し、その偏差に基づいてアクチュエータ152の作動量を調節するものである。作動量調節部176は、搬送物Wの変位量と、その変位量だけ搬送物Wを変位させるのに必要なアクチュエータ152の作動量との関係を記述するデータを記憶している。作動量調節部176は、入力した偏差に対応するアクチュエータ152の作動量を計算し、計算した作動量だけアクチュエータ152を動作させる。アクチュエータ152の位置は、目標位置計算部172で計算された位置となるように調節される。
ドライバ164がアクチュエータ152群の位置を目標位置に調節することによって、運動計算機162で計算された運動が搬送物Wの実際の運動に実現される。
この補助装置182は、作業者Hが可動体150に加えている力Fhを、摩擦力が作用する環境におかれたときの搬送物Wに加えた時に生じる運動を、搬送物Wの実際の運動に再現することができる。作業者Hが可動体150に力を加えて搬送物Wを搬送する時に、搬送物Wに摩擦力が作用するときの操作反力を作業者Hに与えることができる。
図3は、実施形態2の補助装置で採用するドライバ164bの一部の構成を示すブロック図である。ドライバ164bは、各アクチュエータ152に対して、目標位置計算部172と、差分器174と、アクチュエータ152の出力を調節する出力調節部176bと、エンコーダ166を備えている。
出力調節部176bは、差分器174で計算されたアクチュエータ152の位置の偏差を入力し、その偏差が減少するようにアクチュエータ152の出力を調節するものである。例えば入力した偏差が第1の方向への誤差を示している場合、出力調節部176bはアクチュエータ152の出力を、第1方向とは反対向きの第2の方向の向きに増大させる。出力調節部176bは、アクチュエータ152の出力を調節することによって、アクチュエータ152の位置を、目標位置計算部172で計算された目標位置となるように調節する。
ドライバ164bがアクチュエータ152群の位置を制御することによって、運動計算機162で計算された運動が搬送物Wの実際の運動に実現される。
搬送物Wや可動体150や移動機構151は、作業者Hが可動体150に加える力Fhと、アクチュエータ152群が出力する力の合力によって運動する。そのことから、アクチュエータ152群の出力を計算する際に、作業者Hが可動体150に加えている力Fhを考慮することが好ましい。ただし、搬送物Wや可動体150や移動機構151を動かすために必要な力が作業者Hにとって十分に大きいような場合では、アクチュエータ152群が出力する力に比して、作業者Hが可動体150に加えている力Fhは非常に小さいので、その力Fhを無視して計算することもできる。
実施形態2の補助装置は、作業者Hが可動体150に加えている力Fhを、摩擦力が作用する環境におかれたときの搬送物Wに加えた時に生じる運動を、搬送物Wの実際の運動に再現することができる。作業者Hが可動体150に力を加えて搬送物Wを搬送する時に、搬送物Wに摩擦力が作用しているときの操作反力を作業者に与えることができる。
図4は、ブレーキ型のアクチュエータ153を制御するドライバ164cの一部の構成を示すブロック図である。ドライバ164cは、各ブレーキ型のアクチュエータ153に対して、目標位置計算部172と、差分器174と、ブレーキ型のアクチュエータ153の出力(制動力)を調節する出力調節部176cと、エンコーダ166を備えている。
ブレーキ型のアクチュエータ153の位置とは、ブレーキ型のアクチュエータ153の制動力を与える側の部材と、制動力を受ける側の部材との相対的な位置を意味する。制動力を与える側の部材とは、移動機構151の本体側(地面等に固定されている側)に設けられている部材を意味し、制動力を受ける側の部材とは、移動機構151の末端側(可動体150側)に設けられている部材を意味する。
この補助装置は、搬送物Wや可動体150や移動機構151を動かすために必要な力が作業者Hにとって比較的に小さい場合に有効である。換言すれば、作業者Hが可動体に加えている力Fhの僅かな変化(例えば手ぶれ等)によって、搬送物Wの運動が大きく変化してしまうような搬送作業に有効である。
出力調節部176cは、差分器174で計算された偏差を入力し、その偏差が減少するようにアクチュエータ152の出力を調節するものである。例えば入力した偏差が第1の方向への誤差を示しているとともに、アクチュエータ152の位置が第1の方向へと変位している場合では、出力調節部176bはアクチュエータ152が出力する制動力を増大させる。入力した偏差が第1の方向への誤差を示しているとともに、アクチュエータ152の位置が第2の方向へと変位している場合では、出力調節部176bはアクチュエータ152が出力する制動力を減少させる。出力調節部176cは、アクチュエータ153が出力する制動力を調節することによって、アクチュエータ153の位置を、目標位置計算部172で計算された目標位置に調節する。
ドライバ164cがアクチュエータ153群の位置を制御することによって、運動計算機162で計算された運動が搬送物Wの実際の運動に実現される。
実施形態3の補助装置は、作業者Hが可動体150に加えている力Fhを、摩擦力が作用する環境におかれたときの搬送物Wに加えた時に生じる運動を、搬送物Wの実際の運動に再現することができる。作業者Hが可動体150に力を加えて搬送物Wを搬送する時に、搬送物Wに摩擦力が作用しているときの操作反力を作業者に与えることができる。
図5は、本実施例の作業者による重量物の搬送作業を補助する装置(以下、補助装置と略す)2の全体像を示している。図6は、補助装置2の電気構成を示している。
図5、図6に示す補助装置2は、自動車の製造現場において、自動車のインストルメントパネル(以下、インパネと略す)Wを、自動車のボディ(図示せず)内に組み付ける工程で利用されるものである。この工程では、インパネWを自動車ボディ内に搬送する作業と、所定の位置に位置決めする作業と、自動車ボディに固定する作業が行われる。作業者は、インパネWを補助装置2に固定し、補助装置2を介してインパネWを搬送して、位置決めする。補助装置2を用いることによって、作業者はインパネWよりも軽量な物体を搬送するときに要求される力でインパネWを搬送することができる。
補助装置2は、第3可動体30に固定された力覚センサ6と、力覚センサ6に設けられた作業者が把持するための把持部4を備えている。作業者は、補助装置2を介してインパネWを搬送する際に、把持部4を把持してインパネWを搬送する。即ち作業者は、把持部4を介して補助装置2の第3可動体30に搬送力(操作力)を加える。力覚センサ6は、作業者が把持部4に加えている操作力を検出するためのセンサであり、作業者の操作力をx方向、y方向、z方向、およびx軸周り方向、y軸周り方向、z軸周り方向の6方向の力に区別して検出することができる。
補助装置2は、図5には図示されないが、第1可動体10のx方向の位置を検出する第1位置センサ16と、第2可動体20のy方向の位置を検出する第2位置センサ26と、第3可動体30のz方向の位置を検出する第3位置センサ36を備えている。第1可動体の位置と第1アクチュエータの位置は対応することから、第1位置センサ16は第1アクチュエータ12の位置を検出するものともいえる。同様に、第2位置センサ26は第2アクチュエータ22の位置を検出するものともいえる。第3位置センサ36は第3アクチュエータ32の位置を検出するものともいえる。
図6によく示されるように、制御ユニット60は、第1アクチュエータ12を制御する第1ドライバ14と、第2アクチュエータ22を制御する第2ドライバ24と、第3アクチュエータ32を制御する第3ドライバ34を備えている。また、第1ドライバ14と第2ドライバ24と第3ドライバ34に指令を与える処理部62や、作業者が処理部62に指示を入力したり、制御パラメータを調整したり、処理部62から作業者に情報を表示するための操作パネル64等を備えている。
処理部62には、力覚センサ6が接続されており、力覚センサ6で検出した作業者が把持部4に加えた操作力が処理部62に入力される。
処理部62には、第1位置センサ16が接続されており、第1位置センサ16で検出した第1可動体10のx方向の位置が処理部62に入力される。処理部62には、第2位置センサ26が接続されており、第2位置センサ26で検出した第2可動体20のy方向の位置が処理部62に入力される。処理部62には、第3位置センサ36が接続されており、第3位置センサ36で検出した第3可動体30のz方向の位置が処理部62に入力される。処理部62は、入力した第1可動体10と第2可動体20と第3可動体30の位置から、把持部4の位置P:(x,y,z)を算出することができる。また処理部62は、把持部4の位置座標Pの経時変化から、把持部4の速度v:(dx/dt,dy/dt,dz/dt)や、把持部4の加速度a:(d2x/dt2,d2y/dt2,d2z/dt2)を算出することができる。
把持部4とインパネWは相対的に固定されているので、把持部4の位置P(x,y,z)、把持部4の速度v(dx/dt,dy/dt,dz/dt)、把持部4の加速度a(d2x/dt2,d2y/dt2,d2z/dt2)は、それぞれインパネWの位置、インパネWの速度、インパネWの加速度に対応する。
制御ユニット60の処理部62は、作業者が把持部4に加えた操作力や、把持部4の位置Pや、把持部4の速度vや、把持部4の加速度aを算出し、記憶している仮想質量Mや、仮想粘性係数Dや、仮想弾性係数Kや、擬似摩擦力値f等を用いて把持部4の目標位置を逐次算出し、各ドライバ14、24、34に教示する。把持部4の位置が教示された目標位置となるように、第1ドライバ14は第1アクチュエータ12を制御し、第2ドライバ24は第2アクチュエータ22を制御し、第3ドライバ34は第3アクチュエータ32を制御する。補助装置2は、作業者が把持部4に加えている力を補完するように動作し、把持部4と共にインパネWを変位させる。作業者は、あたかもインパネWよりも軽量な物体を搬送しているときの力で、インパネWを搬送することができる。
ステップS2では、第1位置センサ16と、第2位置センサ26と、第3位置センサ36の出力に基づいて、把持部4の位置(x,y,z)を算出する。以下、時刻tにおける把持部4の位置をP(t)と記述し、そのときの把持部4の座標(x,y,z)を、それぞれ(x(t),y(t),z(t))と記述する。
ステップS4では、把持部4の速度(dx/dt,dy/dt,dz/dt)を算出する。処理部62は、把持部4の経時的な位置変化から、即ち、今回の動作サイクルのステップS2で算出した把持部4の位置P(t)と、前回の動作サイクルで算出した把持部4の位置P(t−Δt)から、時刻tにおける把持部4の速度を算出する。以下、時刻tにおける把持部4の速度をv(t)と記述し、そのときの把持部4のx方向、y方向、z方向の速度を、それぞれvx(t)、vy(t)、vz(t)と記述する。
ステップS6では、力覚センサ6の出力に基づいて、作業者が把持部4に加えている操作力を算出する。処理部64は、作業者が把持部4に加えている操作力のなかで、少なくともx方向と、y方向と、z方向の成分を区別して算出する。以下、時刻tにおいて作業者が把持部4に加えている操作力をF(t)と記述し、そのx方向、y方向、z方向の成分を、それぞれFx(t)、Fy(t)、Fz(t)と記述する。
ac(t)=(F(t)−K・P(t))/M ;
となる。保存加速度ac(t)のx方向、y方向、z方向の成分を、それぞれacx(t)、acy(t)、acz(t)とすると、
acx(t)=(Fx(t)−Kx・x)/M
acy(t)=(Fy(t)−Ky・y)/M
acz(t)=(Fz(t)−Kz・z)/M
となる。保存加速度ac(t)は、操作力F(t)に起因して生じる加速度と、仮想弾性力K・P(t)に起因して生じる加速度の和となる。なお、本実施例の補助装置2では、仮想弾性係数Kをゼロに設定しているので、保存加速度ac(t)は、操作力F(t)に起因して生じる加速度に等しく、保存加速度ac(t)は操作力F(t)に比例する。
ステップS10では、保存加速度ac(t)を用いて、動作周期Δt後の把持部4の第1速度vc(t+Δt)を算出する。即ち、
vc(t+Δt)=v(t)+ac(t)・Δt ;
となる。第1速度vc(t+Δt)のx方向、y方向、z方向の成分を、それぞれvcx(t+Δt)、vcy(t+Δt)、vcz(t+Δt)とすると、
vcx(t+Δt)=vx(t)+acx(t)・Δt
vcy(t+Δt)=vy(t)+acy(t)・Δt
vcz(t+Δt)=vz(t)+acz(t)・Δt
となる。第1速度vc(t+Δt)は、算出した把持部4の速度v(t)に、操作力F(t)に起因して生じる加速度から計算される速度変化量や、仮想弾性力K・P(t)に起因して生じる加速度から計算される速度変化量が加味される。第1速度vc(t+Δt)は、速度v(t)で運動している質量Mの物体に、操作力F(t)を加えたときに、動作周期Δt後に実現される物体の速度と等しい。第1速度vc(t+Δt)は、摩擦力や粘性抵抗力を考慮しない速度である。
fx(t)=−f・vcx(t)/|vc(t)|
fy(t)=−f・vcy(t)/|vc(t)|
fz(t)=−f・vcz(t)/|vc(t)|
となる。なお、
|vc(t)|=((vcx(t))2+(vcy(t))2+(vcz(t))2)1/2
であり、
|f(t)|=((fx(t))2+(fy(t))2+(fz(t))2)1/2
=f
である。
一方、算出された第1速度vc(t)がゼロであれば、擬似摩擦力の大きさ|f(t)|をゼロとする。即ち、
fx(t)=fy(t)=fz(t)=0
である。ここで、第1速度vc(t)がゼロの場合に擬似摩擦力の大きさをゼロとすることは、補助装置2によって把持部4の運動に再現される静止摩擦力がゼロであることを意味しない。第1速度vc(t)は摩擦力が作用しないと仮定したときの速度であり、この段階の擬似摩擦力f(t)は、その第1速度vc(t)に対して仮に定めるものである。
ad(t)=(−D・v(t)+f(t))/M ;
となる。消散加速度ad(t)のx方向、y方向、z方向の成分を、それぞれadx(t)、ady(t)、adz(t)とすると、
adx(t)=(−D・vcx(t)+fx(t))/M
ady(t)=(−D・vcy(t)+fy(t))/M
adz(t)=(−D・vcz(t)+fz(t))/M
となる。消散加速度ad(t)は、粘性抵抗力に比例する成分と、擬似摩擦力f(t)に比例する成分の和となる。粘性係数Dがゼロに設定されていれば、消散加速度ad(t)は、擬似摩擦力f(t)に比例する。
ステップS16では、ステップS10で求めた第1速度vc(t+Δt)と、ステップS14で求めた消散加速度ad(t)を用いて、動作周期Δt後の把持部4の第2速度vd(t+Δt)を算出する。即ち、
vd(t+Δt)=vc(t+Δt)+ad(t)・Δt ;
となる。第2速度vd(t+Δt)のx方向、y方向、z方向の成分を、それぞれvdx(t+Δt)、vdy(t+Δt)、vdz(t+Δt)とすると、
vdx(t+Δt)=vcx(t+Δt)+adx(t)・Δt
vdy(t+Δt)=vcy(t+Δt)+ady(t)・Δt
vdz(t+Δt)=vcz(t+Δt)+adz(t)・Δt
となる。第2速度vd(t+Δt)は、速度v(t)で運動している質量Mの物体に操作力F(t)を加え、粘性抵抗力D・vc(t)と擬似摩擦力f(t)と等しい力が作用しているときに、動作周期Δt後に実現される物体の速度と等しい。このとき、例えば第1速度vc(t+Δt)が小さいと、第1速度vc(t+Δt)と第2速度vd(t+Δt)が、反対向きに算出されることがある。一般に、粘性抵抗力や摩擦力は物体の速度と反対向きに作用して物体の速度を減ずるが、物体の速度を反転させるような作用はない。本実施例では、以下に説明するステップS18とステップS20の処理によって、粘性抵抗力D・vc(t)や擬似摩擦力f(t)が速度を反転させてしまうような結果が導出されることを禁止する。
vcx(t+Δt)・vdx(t+Δt)<0(ゼロ) ;
vcy(t+Δt)・vdy(t+Δt)<0(ゼロ) ;
vcz(t+Δt)・vdz(t+Δt)<0(ゼロ) ;
であるか否かが判定される。ここでは、第1速度vc(t+Δt)と第2速度vd(t+Δt)が反対向きであることから、上記の3式はいずれかの1式が満たされるときに、他の2式も満たされる関係となっている。このステップでイエスの場合はステップS20へと進み、ノーの場合はステップS22へと進む。
ステップS20では、x,y,z方向のなかでステップS18の判定でイエスとなった方向について、ステップS16で求めた第2速度vd(t+Δt)をゼロと書き換える。例えばx方向について、vcx(t+Δt)・vdx(t+Δt)<0と判定されれば、第2速度vdx(t+Δt)=0(ゼロ)と書き換える。他のy,z方向についても同様に処理し、第2速度vd(t+Δt)をゼロとする。
ステップS22では、上述の処理で決定された第2速度vd(t+Δt)を、動作周期Δt後の把持部4の速度として、動作周期Δt後までに把持部4が変位すべき位置P(t+Δt)を算出する。例えば、
P(t+Δt)=P(t)+(v(t)+vd(t+Δt))・Δt/2 ;
と計算することができる。x、y、z座標毎に表すと、
Px(t+Δt)=Px(t)+(vx(t)+vdx(t+Δt))・Δt/2
Py(t+Δt)=Py(t)+(vy(t)+vdy(t+Δt))・Δt/2
Pz(t+Δt)=Pz(t)+(vz(t)+vdz(t+Δt))・Δt/2
となる。上記の式は、時刻tにおいて位置P(t)を速度v(t)で運動している物体が、時刻t+Δtにおいて第2速度vd(t)で運動しているとしたときに、その物体が存在しうる位置P(t+Δt)を計算する式の一例である。
ステップS24では、ステップS22で算出した把持部4の目標位置P(t+Δt)を、第1ドライバ14、第2ドライバ24、第3ドライバ34に教示する。詳しくは、目標位置P(t+Δt)のx座標Px(t+Δt)を第1ドライバ14に教示し、目標位置P(t+Δt)のy座標Py(t+Δt)を第2ドライバ24に教示し、目標位置P(t+Δt)のz座標Pz(t+Δt)を第3ドライバ34に教示する。
第1ドライバ14は、教示された把持部4の目標とする位置P(t+Δt)のx座標Px(t+Δt)から、それを実現するための第1アクチュエータ12の目標位置を計算する。そして第1アクチュエータ12の位置が、計算した目標位置となるように、第1アクチュエータ12の作動量や出力を調節する。同様に、第2ドライバ24は第2アクチュエータ22を制御し、第3ドライバ34は第3アクチュエータ32を制御する。
処理部62は、再びステップS2へ戻り、以上の演算処理を動作周期Δtによって繰り返し実行する。なお、ステップS2では、把持部4の現在位置を検出することにかえて、ステップS22で算出した把持部4の位置P(t+Δt)を用いてもよい。また、ステップS4では、把持部4の速度を算出することにかえて、ステップS16〜ステップS20で算出した第2速度vd(t+Δt)を用いてもよい。
本実施例では、第1速度を計算するまでの段階で、保存力である仮想弾性力が速度に与える影響を加味し、それから消散力である仮想粘性抵抗力や擬似摩擦力を利用して第2速度を計算する例を説明した。これに限らず、第1速度を計算するまでの段階では仮想弾性力が速度に与える影響を加味せず、第2速度を計算する段階で仮想弾性力を加味してもよい。あるいは、第1速度を計算するまでの段階で仮想弾性力や仮想粘性抵抗力が速度に与える影響を加味し、第2速度を計算する段階で擬似摩擦力のみを加味してもよい。
図9(a)〜(d)において、図中Aは、図7のステップS4で検出される把持部4の速度v(t)を示している。図中Bは、図7のステップS10で算出される第1速度vc(t+Δt)を示している。図中Cは、図7のステップS16で算出される第2速度vd(t+Δt)を示している。
図9(b)は、把持部4が移動している場合であって、速度v(t)や第1速度vc(t+Δt)が比較的小さい場合を示している。これは、例えば作業者が把持部4を細かに操作し、インパネWを位置決めしている状況に対応する。第1速度vc(t+Δt)と第2速度vd(t+Δt)が互いに反対向きであることから、ステップS16で算出した第2速度vd(t+Δt)は、ステップS20でゼロに修正される。把持部4は、操作力Fや動摩擦力fが作用している質量Mの物体が、静止摩擦力によって停止するような運動をし、把持部4を操作してインパネWを搬送する作業者には、インパネWに動摩擦力fや静止摩擦力が作用しているような操作反力が与えられる。
図9(d)は、把持部4が停止している場合であって、操作力Fが比較的大きい場合を示している。これは、例えば作業者が停止している把持部4を動かし始めて、インパネWの搬送を開始するような状況に対応する。操作力Fが大きいときは、第1速度vc(t+Δt)が大きいので、第2速度vd(t+Δt)が、第1速度vc(t+Δt)と同じ向きとなって求められる。把持部4は、最大静止摩擦力を超える力が加えられて動き始める質量Mの物体と同様に運動し、把持部4を操作してインパネWを搬送する作業者には、インパネWに最大静止摩擦力fを超えて操作力Fを加えたときのような操作反力が与えられる。
図9(c)(d)から明らかなように、停止している把持部4に、第1速度vc(t+Δt)と第2速度vd(t+Δt)が同じ向きに算出されるような操作力Fを加えると、停止している把持部4を動かすことができる。即ち、擬似摩擦力fを超える操作力Fを加えたときに、停止している操作子を動かすことができ、把持部4に再現される最大の静止摩擦力が、擬似摩擦力fと等しいことを意味する。補助装置2では、把持部4の運動に再現される最大静止摩擦力の大きさと、操作子の運動に再現される動摩擦力の大きさが等しくなる。
図11は、補助装置2のx,y方向の可動範囲100を示している。作業者は、補助装置2を利用して、インパネWを保管位置Sから組付位置Gまで搬送する。
まず作業者は、インパネWをインパネ支持体40に固定するために、インパネ支持体40を保管位置Sの近傍に移動する。このとき把持部4は、図11の範囲102内に位置する。把持部4が範囲102に位置するときは、設定した擬似摩擦力値fをそのまま使用することが好ましい。それにより、把持部4を様々な方向に操作する場合でも、作業者は操作する方向によらず安定した操作反力(手応え)を得ることができ、固定しようとするインパネWに対してインパネ支持体40を接近させる操作がしやすい。
インパネWをインパネ支持体40に固定した後、作業者はインパネWをx方向に大きく移動する。このとき把持部4は、図11の範囲104内をx方向に移動する。従って、把持部4が範囲104に位置するときは、算出した第1速度vc(t+Δt)の方向とx方向とのなす角が大きいほど、擬似摩擦力値fを増大するように修正することが好ましい。それにより、作業者が把持部4を操作したときに、x方向には移動しやすく、他の方向には移動しにくい操作感を作業者に与えることができる。作業者は、インパネWをあたかもx方向に沿ったレールに乗せて搬送しているような操作感を得えることができ、インパネWをx方向に向けて搬送しやすい。
インパネWの搬送方向を変えた後に、作業者はインパネWを組付位置Gに向けてy方向に大きく移動する。このとき把持部4は、図11の範囲108内をy方向に移動する。従って、把持部4が範囲108に位置するときは、算出した第1速度vc(t+Δt)の方向とy方向とのなす角が大きいほど、擬似摩擦力値fを増大するように修正することが好ましい。それにより、作業者が把持部4を操作したときに、y方向には移動しやすく、他の方向には移動しにくい操作感を作業者に与えることができる。作業者は、インパネWをあたかもy方向に沿ったレールに乗せて搬送しているような操作感を得ることができ、インパネWをy方向に向けて搬送しやすい。
インパネWを組付位置Gの近傍まで搬送した後に、作業者はインパネWを自動車ボディの組付位置Gへと位置決めする。このとき把持部4は、図11の範囲110内に位置する。把持部4が範囲110内に位置する場合、例えば作業者の操作によって擬似摩擦力値fを調節できるようにするのも有効である。例えば、力覚センサ6で検出されるz軸周り方向の力に比例して、擬似摩擦力値fが増大するようにするとよい。それにより、作業者は把持部4を捻るように操作することで、操作反力を調節することができるようになる。位置決め作業時の細かな操作をする時に、擬似摩擦力値fを高めるように操作すると、手ぶれを強く抑えることが可能となる。作業者は、自身の意思によってインパネWの運動に再現される摩擦力の大きさを増減調節することできる。把持部4を捻る方向に力を加える操作は、インパネWの搬送に関与しない操作である。作業者は、インパネWを変位させるための操作と、擬似摩擦力fを調節する操作を、同時に独立して行うことができる。
以上の搬送作業では、補助装置2の可動範囲100において、把持部4が図11の範囲112内に位置することがない。従って、把持部4が範囲112に位置するときは、例えば擬似摩擦力値fを大きく増大するように修正することが好ましい。このとき、把持部4の移動方向が範囲112の内部へさらに進もうとする方向であるときのみ、擬似摩擦力値fを修正してもよい。それにより、把持部4が範囲102〜110から外れた時に、作業者は強い操作反力を感じる。一方、把持部4を範囲102〜110へと復帰させる時は、適度な操作反力を作業者は感じる。作業者は範囲102〜110の周囲にあたかも壁が存在するような感覚を覚える。把持部4が範囲102〜110から大きく外れることを防止することができ、インパネWが想定外の位置へ搬送されることが防止される。
例えば第1速度vc(t)から速度vkだけ減算した速度を、修正第1速度vcc(t)とする。即ち、
vcc(t)=vc(t)−vk
である。そして、修正第1速度vcc(t)を用いて、ステップS12と同様に擬似摩擦力f(t)を決定する。この場合、擬似摩擦力f(t)は、第1速度vc(t)と速度vkとの相対速度によって、擬似摩擦力f(t)が決定される。搬送物が速度vkで運動していれば、擬似摩擦力f(t)はゼロに決定される。このように擬似摩擦力f(t)を定めることによって、インパネWが速度vkで移動している仮想物体に接しており、その仮想物体から擬似摩擦力fが作用しているときにインパネWに生じる運動を、インパネWの実際の運動に実現することができる。
例えば速度vkを一定の速度として定めると、仮想物体はベルトコンベヤ等に相当するようになる。この場合、作業者はインパネWがあたかもコンベヤ上に載置されているときのような操作反力を感じることとなる。
あるいは速度vkをインパネWの位置P:(x,y,z)によって変化させてもよい。例えば基準位置P0:(x0,y0,z0)を定め、基準位置P0に対する位置Pのxy方向の位置を、極座標(r,θ)に変換する。そして、速度vkの大きさをrに比例させ、速度vkの向きをθに基づいて決定する。このように決定する速度vkは、基準位置P0を中心に回転する渦を記述することとなり、仮想物体はターンテーブル等に相当するようになる。この場合、作業者はインパネWがあたかもターンテーブル上に載置されているときのような操作反力を感じることとなる。
上記では、本発明の技術を重量物を搬送する作業を補助する装置に適用した例を示したが、本発明の技術を軽量物を搬送する作業を補助する装置に適用することも有効である。
本発明の技術は、様々な物体を搬送する作業に広く適用可能である。例えば本発明の技術によって、手術用のメスを可動体に固定し、執刀者が可動体を介してメスを搬送することを可能とするメス搬送補助装置を提供することができる。
上記では、仮想弾性力を第1速度の計算に加味する場合を説明した。仮想弾性力を加味する場合、仮想弾性力は基準位置に対する変位量に比例し、基準位置を境として作用する方向が反転することから、第1、第2速度を算出する段階では仮想弾性力を加味しないで変位すべき位置を算出し、算出した変位すべき位置と現在の位置とが基準位置を跨いでいるのか否かを判断し、仮想弾性力を調節して加味するようにしてもよい。
本明細書または図面に説明した技術要素は、単独であるいは各種の組み合わせによって技術的有用性を発揮するものであり、出願時請求項記載の組み合わせに限定されるものではない。また、本明細書または図面に例示した技術は複数目的を同時に達成するものであり、そのうちの一つの目的を達成すること自体で技術的有用性を持つものである。
4・・把持部
6・・力覚センサ
8a、8b・・固定レール
10、20、30・・第1、第2、第3可動体
12、22、32・・第1、第2、第3アクチュエータ
14、24,34・・第1、第2、第3ドライバ
16、26、36・・第1、第2、第3位置センサ
60・・制御ユニット
62・・処理部
150・・可動体
151・・移動機構
152・・アクチュエータ
156・・センサ
162・・運動計算機
164、164b、164c・・ドライバ
166・・エンコーダ
172・・目標位置計算部
174・・加算器
176・・作動量調節部
176b、176c・・出力調節部
Claims (8)
- 搬送物を支持する可動体と、
その可動体に作業者が加えている操作力を検出する手段と、
その可動体の移動機構に組込まれているアクチュエータと、
搬送物の現時点の速度で運動する仮想質量の物体に、検出された操作力が加えられたときに、その仮想質量の物体に生じる第1速度を算出する第1速度算出手段と、
算出された第1速度がゼロでなければ、第1速度とは逆向きであって第1速度の大きさによらず一定の大きさを有する力を擬似摩擦力として決定し、第1速度がゼロであれば、擬似摩擦力をゼロに決定する擬似摩擦力決定手段と、
算出された第1速度で運動する仮想質量の物体に、決定された擬似摩擦力が加えられたときに、その仮想質量の物体に生じる第2速度を算出し、算出した第2速度が第1速度と反対向きであれば第2速度をゼロとする第2速度算出手段と、
搬送物の現時点の速度と算出された第2速度を用いて、搬送物の目標位置を算出する目標位置算出手段と、
算出された目標位置のデータに基づいて、アクチュエータを制御する手段と、
を備える搬送作業の補助装置。 - 前記仮想質量は、搬送物の質量よりも小さい値に設定されており、
前記アクチュエータは、作業者が加えている操作力よりも大きな力が可動体に加わる状態を実現するものであることを特徴とする請求項1の補助装置。 - 前記仮想質量は、搬送物の質量よりも大きい値に設定されており、
前記アクチュエータは、作業者が加えている操作力よりも小さな力が可動体に加わる状態を実現するものであることを特徴とする請求項1の補助装置。 - 前記アクチュエータ制御手段は、
前記目標位置算出手段で算出された搬送物の目標位置を実現するアクチュエータの目標位置を計算する手段と、
実際のアクチュエータの位置を検出する手段と、
アクチュエータの目標位置と実際位置の偏差を計算する手段と、
その偏差に基づいて、アクチュエータの位置または出力を調節する手段と、
を備えていることを特徴とする請求項1から3のいずれかの補助装置。 - 前記擬似摩擦力決定手段で決定される擬似摩擦力の大きさが、搬送物の位置および/または搬送方向に応じて増減調節されることを特徴とする請求項1から4のいずれかの補助装置。
- 作業者が可動体に加える操作であって、搬送作業に関与しない所定操作を検出する手段をさらに備え、
前記擬似摩擦力決定手段で決定される擬似摩擦力の大きさが、その所定操作の検出の前後で増減調節されることを特徴とする請求項1から5のいずれかの補助装置。 - 第1速度算出手段で算出された第1速度を、移動および/または回転する仮想物体に対する相対速度に修正する手段をさらに備え、
前記擬似摩擦力決定手段は、修正された第1速度を用いて前記擬似摩擦力を決定することを特徴とする請求項1から6のいずれかの補助装置。 - 搬送物を可動体によって支持する工程と、
その可動体に作業者が加えている操作力を検出する工程と、
搬送物の現時点の速度で運動する仮想質量の物体に、検出された操作力が加えられたときに、その仮想質量の物体に生じる第1速度を算出する第1速度算出工程と、
算出された第1速度がゼロでなければ、第1速度とは逆向きであって第1速度の大きさによらず一定の大きさを有する力を擬似摩擦力として決定し、第1速度がゼロであれば、擬似摩擦力をゼロに決定する擬似摩擦力決定工程と、
算出された第1速度で運動する仮想質量の物体に、決定された擬似摩擦力が加えられたときに、その仮想質量の物体に生じる第2速度を算出し、算出した第2速度が第1速度と反対向きであれば第2速度をゼロとする第2速度算出工程と、
搬送物の現時点の速度と算出された第2速度を用いて、搬送物の目標位置を算出する目標位置算出工程と、
算出された目標位置のデータに基づいて、前記可動体の移動機構に組込まれているアクチュエータを制御する工程と、
を備える搬送作業の補助方法。
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