エラー挿入を試験手段とする試験装置に関連した先行技術文献としては次のようなものがある。
特開2001−044960号公報
特開2002−247143号公報
特許文献1は、時分割多重(TDM)伝送におけるビット列中の1ビットの論理反転によるエラービット挿入後、巡回冗長検査(CRC)演算を施しCRC結果として一時記憶する。しかるにこのCRC結果を、挿入に伴うエラービット発生率の指標手段として用いる。また8ビット単位でのエラーコード挿入を開示しない。
特許文献2は、時分割多重(TDM)伝送におけるPNパターンジェネレータが生成するビット列で、任意位置の1ビットを故意に反転させるエラー挿入回路を示す。
一般に、通信ネットワークを構成するレイヤ2スイッチやレイヤ3スイッチ、ルータなどのネットワーク伝送装置では、エラーフレームなどの異常フレームを受信した場合は、転送せずに直ちに破棄しなければならない。ネットワーク中の伝送装置は、異常フレームがネットワークを行き交うことで不用意に通信量を増大させたり、隣り合うネットワーク伝送装置の通信を妨げたりすることの無いことが要求される。
このようなネットワーク伝送装置の、受信異常フレームに対する破棄動作機能の確認や評価には、エラー挿入を行える専用の試験装置が必要である。一般にはネットワーク伝送装置の製造出荷段階やメンテナンス時などに、試験対象のネットワーク伝送装置(以下、DUTという)と試験装置とを対向させて接続し、DUTを受信フレームの全折り返し(ループバック)動作の状態下においてから、エラーが挿入された異常フレームを送信して試験を行う。
このため試験装置では、DUTへ供給する試験用信号にエラーの無い正常フレームと、意図的に挿入した異常フレームとしてのエラーフレームを混在させて送信する。このときDUTでは、試験信号のフレームを返送するときに内部で異常フレームを破棄する結果、帰還信号中には異常フレームが検出されないことを確認する。
図4はこのような測定系の例として、IEEE標準802.3のイーサネット(登録商標)対応のネットワーク伝送機器がDUTの場合の、異常フレーム廃棄動作試験を実施する構成例を示している。
図4の試験装置は、フレーム送信部とフレーム受信部とで構成され、以下のようにDUTの受信異常フレーム破棄機能の動作試験を行っている。すなわち試験装置のフレーム送信部が送信する試験信号Aには、正常フレームa1、a2に混じって意図的に挿入された、エラーerrを持った異常フレームa3が含まれている。DUTは、試験信号Aを折り返した帰還信号Bを送信している。帰還信号Bには正常フレームb1とb2のみが含まれ、DUTが受信した異常フレームa3は内部で破棄されたことを示している。試験装置内のフレーム受信部では、送信した正常フレーム数と受信した正常フレーム数の双方の数値が一致し、なおかつ異常フレーム受信が皆無であることを検証する。
図5は図4の測定系における、試験装置の内部構成例を示している。図5の試験装置では、異常フレームとしてエラー伝播コードを挿入したフレームを採用している。制御PC14からの操作により、制御インタフェース16を介して試験開始をCPU1に通知すると、CPU1はこれを受けてタイミング制御部2に測定開始命令17を発行する。
このとき、測定開始命令17と同時にエラー伝播コード挿入命令17Aを発行すれば該測定開始命令17に呼応して生成されるデータリンク層フレームにはエラー伝播コードが挿入される。図5では、測定開始命令17とエラー伝播コード挿入命令17Aとが同時に発行された状態を示している。
測定開始命令17の発行1回につき、対応して1つ以上の同一のデータリンク層フレームが生成される。また、その際にエラー伝播コード挿入命令17Aの出力を伴っている場合は、CPU1からは更に挿入位置情報22を同時に出力してエラー伝播コードを挿入するオクテット位置を提示している。CPU1は、エラー伝播コード挿入命令17Aを伴う測定開始信号17と、伴わない測定開始信号17のみとを適宜組み合わせて出力し、試験信号Aを形成する。
すなわちCPU1から連続発行されるエラー伝播コード挿入命令17Aの出現頻度が、エラー伝播コード挿入命令の有無の比率に相当するため、DUTに供する試験信号A中の正常フレームとエラー伝播コードが挿入された異常フレームとの構成比をリアルタイムに制御している。
CPU1から、測定開始命令17のみが発行されている場合、フレーム生成部3は指定されたデータリンク層フレームのヘッダ部データ部を生成し、フレームデータ19として出力する。次いでFCS演算部4は、入力されたフレームデータ19を対象に巡回冗長検査の一つであるFCS演算を施し、演算結果をフレームデータ19の末尾に付加してデータリンク層フレーム20として生成する。
次いで、データリンク層フレーム20はエラー伝播コード挿入部5へ入力される。しかし、タイミング制御部2ではエラー伝播コード挿入命令17Aを受信しないので、エラー伝播挿入命令21を発行しない。また、CPU1はエラー伝播コード挿入命令17Aを出力していないので、挿入位置情報22にも有効な値を出力していない。
従って、エラー伝播挿入命令21を受信しなかったエラー伝播部コード挿入部5では、挿入位置情報22は参照せず入力されるデータリンク層フレーム20に対しては、エラー伝播コード挿入は実行されない。エラー伝播コード挿入部5では、入力されたデータリンク層フレーム20の直前と直後に開始オクテットと終端オクテット等のヘッダやテイラを付加し、下位層へのエンカプセレーションの前段階処理のみを行う。
また合わせて制御ビットの付加も行い、結果を制御ビット信号23Aとして後段のレイヤ間インタフェース送信部6へと入力する。レイヤ間インタフェース送信部6では入力された、変換中フレーム23と制御ビット信号23Aとを用いてレイヤ間インタフェース用フレーム24へエンカプセレーションする。
物理信号変換部7ではレイヤ間インタフェース送信部6から受信した、レイヤ間インタフェース用フレーム24を物理信号25へと変換する。デジタル情報の物理信号25は、トランシーバ8によって伝送媒体に適合するアナログ情報の信号波形に変換される。この結果、正常フレームを含んだ試験信号AとしてDUTへと送信される。
測定開始命令17に加えエラー伝播コード挿入命令17Aが同時に発行された場合は、タイミング制御部2は、エラー伝播挿入命令21をエラー伝播コード挿入部5に対し出力する。また並行して上述した正常フレーム送信動作と同様にして、指示信号18を介してフレーム生成部3へフレーム生成指示を行う。
フレーム生成部3で生成されたフレームデータ19がFCS演算部4を経てFCS部を付加されたデータリンク層フレーム20として入力されると、エラー伝播コード挿入部5は、タイミング制御部2からエラー伝播挿入命令21を受けたので、予めCPU1経由で通知されている挿入位置情報22を参照して、データリンク層フレーム20に対してエラー伝播コードの挿入を実行する。
データリンク層フレーム20はエラー伝播コード挿入部5を通過すると、エラー伝播コードが挿入された変換中フレーム23としてレイヤ間インタフェース送信部6へ入力される。以下の処理は前述した正常フレーム送出動作と同様に、トランシーバ8を介して伝送媒体に適合したアナログの信号波形に変換され、今度は異常フレームを含んだ試験信号AとしてDUTへ送信される。
以上のタイミング制御部2、フレーム生成部3、FCS演算部4、エラー伝播コード挿入部5、レイヤ間インタフェース送信部6、物理信号変換部7、およびトランシーバ8とでフレーム送信部を構成している。
一方で、DUTが送信している帰還信号Bは、トランシーバ8によって伝送媒体に適合したアナログの信号波形からデジタルの物理信号26へ変換される。物理信号変換部7では物理信号26をレイヤ間インタフェース用フレーム27へと変換する。
レイヤ間インタフェース受信部9は、受信したレイヤ間インタフェース用フレーム27から、ヘッダ部とテイラ部に相当する開始オクテットと終端オクテットを除去することでデータリンク層フレーム28をデカプセレーションし、該データリンク層フレーム28をエラー伝播コード検出部11とFCS演算部10とにそれぞれ入力する。
エラー伝播コード検出部11では、データリンク層フレーム28に含まれているエラー伝播コードの有無を検出し、検出結果はエラー伝播コード検出信号29を介してフレーム判定部12へと通知される。FCS演算部10では、FCSエラーの有無を検出するためデータリンク層フレーム28についてFCS演算を施し受信されたFCS部と照合する。FCSエラー有無の照合結果は、FCSエラー検出信号30を介してフレーム判定部12へと通知する。
フレーム判定部12では、エラー伝播コード検出信号29またはFCSエラー検出信号30を受信すると、統計カウンタ部13に対してエラー伝播コード数UP信号31またはFCSエラー数UP信号32を出力する。また、エラー伝播コードもFCSエラーの何れもが検出されないデータリンク層フレーム28を受信した場合、正常フレーム数UP信号(図示しない)を統計カウンタ部13へ出力する。
このようにして統計カウンタ部13では、記帰還信号Bに含まれる受信データリンク層フレームについて、FCSエラーフレーム数、正常フレーム数、及びエラー伝播コード数をそれぞれ集計している。
CPU1は、統計カウンタ部13へカウント値読み出し信号33を入力すると、FCSエラーフレーム数、正常フレーム数、およびエラー伝播コード数のカウンタの現行の積算値を、統計カウント結果信号34を介して入手できる。
これらのカウンタの積算値は、CPU1により制御インタフェース16を介し制御PC14へ送られると、試験結果として制御PC14のディスプレイ画面など(図示しない)に表示される。
このようにして図5の試験装置は、試験成績について評価する手段としてFCSエラーフレーム数、正常フレーム数、およびエラー伝播コード数の積算値について集計を行っている。
これらのカウンタ群(図示しない)の統計情報から、DUTがエラー伝播コードの挿入が為されている異常フレーム受信に対し、どのように振舞うかを検証することができる。すなわち、故意にエラー伝播コードを挿入されたデータリンク層フレームが混入された試験信号AをDUTに入力させたとき、該DUTから折り返しされた帰還信号Bにはエラー伝播コードを含むフレーム検出が皆無であることを検証する。
試験装置では帰還信号Bの受信期間中、FCSエラーフレーム数カウンタのカウンタ値と、エラー伝播コード数カウンタのカウンタ値の双方を監視して、共にカウントUP動作が為されないことをもって試験成績良とする。
以上のトランシーバ8、物理信号変換部7、レイヤ間インタフェース受信部9、FCS演算部10、エラー伝播コード検出部11、フレーム判定部12、統計カウンタ部13とでフレーム受信部が構成されている。
図5のフレーム送信部内のエラー伝播コード挿入部5は、データリンク層の下位に当たるレイヤ間インタフェース用フレームに対しエラー伝播コードを挿入して送信している。
しかしながらエラー伝播コード挿入操作により、結果としてエラー挿入の意図が無い、上位層に相当するデータリンク層フレームのFCS部への影響が免れない。すなわち挿入される該エラー伝播コードのオクテット位置にある挿入前データが、エラー伝播コード値と一致する特異な例外を除き、確実に該データリンク層フレームのオリジナルFCS部データとの不一致を誘発する。
これは、図5の試験装置では、エラーを挿入していない正常なデータリンク層フレームをエンカプセレーションした後で、レイヤ間インタフェース用フレームにエラー伝播コードを挿入した為であって、該レイヤ間インタフェース用フレームにエンカプセレーションされている、正常なデータリンク層フレームのFCS部が巻き添えを受けた結果である。
レイヤ間インタフェース用フレーム24は、例えば10ギガビットのイーサネット(登録商標)のネットワーク機器においては、IEEE標準802.3ae規格体系に属する10ギガビット媒体非依存インタフェース(XGMII:10 Gigabit Media Independent Interface)の伝送形式に相当する。
このXGMIIは10ギガビットのイーサネット(登録商標)のネットワーク機器内部では、一般的にデータリンク層に相当するMAC(メディアアクセス制御:Media Access control)副層の処理LSIから、物理層に相当するPHY(物理)処理LSI間の、内部通信用の標準インタフェースとして用いられている。
XGMIIは物理層の伝送物理媒体に依存しない機器内部の共通インタフェース仕様であるため、XGMII対応の切り口を備えた各種の物理インタフェースユニットを別に用意すれば、該10ギガビットのイーサネット(登録商標)のネットワーク機器では、必要に応じて物理インタフェースユニット部分のみを交換できる。
このためXGMIIを介して接続する物理インタフェース部の交換により、容易に異なる物理インタフェース仕様をもつ10ギガビットのイーサネット(登録商標)に対応できる。
また、OSI参照モデル(開放型システム間相互接続モデル:Open System Interconnection reference model)ではデータリンク層の最下位(サブレイヤ)と接すると共に、更に下位に位置する物理層に対する相互接続箇所として作用する。この層間の相互接続箇所を、本発明ではレイヤ間インタフェースと呼称しており、データリンク層内の最下位で、前記レイヤ間インタフェースを終端している送受信部が、RS(Reconciliation Sublayer)層に相当する。
近年、10ギガビットのイーサネット(登録商標)に対応したネットワーク機器では、XGMIIを、物理層とデータリンク層の境界面として、多種物理層とのインタフェース仕様を構成する標準の切り口として、或いは各種の外部ユニットが接続可能な共通ポートとして、その信頼性と動作検証について着目し、XGMIIを終端するRS層のみを試験対象としたQoS(Quality of Service)評価や診断の需要が増している。
しかし、図5を参照して既に説明してきたように、従来のエラーフレーム廃棄機能の試験装置では、レイヤ間インタフェース用フレームに相当するXGMII信号のみを対象としたエラー付加を行うことが出来なかった。すなわちレイヤ間インタフェース信号に相当する、XGMII伝送フォーマット中にエラー伝播コードを挿入すれば、エラー挿入の意図が無いにも関わらずRS層より上位層の、対応するイーサネット(登録商標)フレームまたはMACフレームのFCS部にも影響が波及する。
このようなフレームを受信したDUTでは、結果として該フレームの廃棄動作が実行されたとしても、RS層でレイヤ間インタフェース用フレーム内でのエラー検出に成功したために廃棄動作をしたのか、それともレイヤ間インタフェース用フレーム内でのエラーが見逃され、上位層のデカプセレーションまで処理が進んだ段階で、復元したデータリンク層フレームのFCSエラー検出によって漸く該フレームの廃棄動作へ至ったのかについて見分けることが不可能であった。
すなわちネットワーク機器が内部に備えるレイヤ間インタフェース用フレーム処理部のみを対象にしたエラーに伴う廃棄機能を検証できる手段は存在しなかった。より具体的には、10ギガビットのイーサネット(登録商標)のネットワーク機器がDUTの場合に、該ネットワーク機器が一般に備えるレイヤ間インタフェースであるXGMIIを終端するRS層のみを試験対象にしたエラー伝播コード検出に基づく廃棄動作を検証できる手段は存在しなかった。
本発明が解決しようとする課題は、10ギガビットのイーサネット(登録商標)インタフェースのネットワーク機器のように、レイヤ間インタフェース用フレームに相当する標準インタフェース信号として、例えばXGMIIを内部に採用しているDUTを対象としたエラーフレーム廃棄機能の評価試験において、フレーム送信部において送信XGMIIにエラー伝播コードを挿入しても、DUTにおいてFCSエラーを誘発しない手段を提供することである。
上記の課題を達成するため、本発明の請求項1に記載の発明は、試験対象ネットワーク伝送装置(DUT)に試験用フレームを送信するフレーム送信部と、試験用フレームを受信した前記DUTから送信されるフレームを受信するフレーム受信部とを備えた試験装置において、前記フレーム送信部は、フレーム生成部とFCS演算部の間にエラーパターン挿入部を備える。
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、エラーパターン挿入部は、CPUからの挿入位置情報を第1の入力とし、タイミング制御部からのエラー伝播挿入命令を第2の入力として、フレーム生成部のフレームデータに基づいてエラーパターンとし、前記FCS演算部にエラーパターンを出力する。
請求項3の発明は、請求項1に記載の発明において、エラーパターン挿入部は、前記DUTにおいてフレームの変換が行われる場合、エラー伝播コードを含む2カラムのデータをエラー伝播コードに置換する。
請求項4の発明は、請求項3の発明において、前記エラー伝播コードに置換されるデータは、エラー伝播コードを含むカラムと、その前後の1カラムのフレームデータである。
請求項5に記載の発明は、請求項3または4に記載の発明において、前記DUTによるフレーム変換は、データを64B/66Bで符号化する。
請求項6に記載の発明は、請求項1乃至3に記載の発明において、前記エラー伝播コード挿入部は、フレームの任意の位置にエラー伝播コードを挿入する。
請求項7の発明は請求項1乃至3に記載の発明において、前記エラーパターンは任意の8ビットコードである。
請求項8の発明は、請求項7に記載の発明において、前記8ビットコードは、10ギガビット媒体非依存インタフェースの伝送形式に定める、エラー伝播コード値の"FEh"である。
本発明による試験装置によれば、以下の効果を得られる。
第一の効果として、DUTである10ギガビットのイーサネット(登録商標)インタフェース機器の、XGMII処理部のみが検出し得るエラーフレームを生成することができる。すなわち上位層のデータリンク層に属する例えばMAC副層でのFCSエラーを抑制しつつ、エラーが発生するプロトコルスタックをRS層のみに限定させた診断用フレームを提供できる。
このため、DUTのMAC副層と物理層間を接続するXGMII上でのエラー検出機能のみに絞り込んで診断が可能となり、例えばDUTの機能障害の箇所がMAC副層のデータリンク層以上に及ぶのか、或いはRS層/XGMIIに限定された障害なのかを即座に診断できる。
例えば、XGMII部からの着脱が可能なように設計された外部インタフェースユニットを備えた10ギガビットのイーサネット(登録商標)対応のネットワーク機器がDUTの場合は、物理媒体の変更等の理由で当該DUTのインタフェースユニットを交換した場合、試験対象範囲についてRS層より上位のデータリンク層以上は切り離して診断できる。このため交換した当該インタフェースユニットの良否判定が効率よく行える。
第二の効果として、データリンク層フレームのFCS演算結果に全く影響を及ぼすこと無しに、XGMIIを構成する4本のパラレルバス信号の各レーンの内、FCS部を除いた任意レーンの任意カラムにエラー伝播コードの挿入ができる。
すなわち、エラーを付加する対象範囲をDUTのプロトコルスタック上でRS層のみに限定し、更にエラー挿入する位置をXGMII上でオクテット単位に限定した異常フレームが提供できる。
従って、10ギガビットのイーサネット(登録商標)のネットワーク機器が内部に一般に備える、標準インタフェース部のXGMIIのみに限定したエラーフレーム廃棄機能の検証手段を提供することで、RS層のみを対象とするQoS評価や動作確認が効率良く行える。
また、DUTでエラー伝播コードの拡張が行われても、エラー伝播コードを含むカラムとその前後の1カラムのフレームデータをエラー伝播コードのパターンと同じに置換しているので、FCSは変わらず、DUTにてFCSエラーフレームとして破棄されることないため、例えば10ギガビットイーサネット(登録商標)のネットワーク機器が一般に備える、標準インタフェース部のXGMIIに限定した異常フレーム廃棄機能の検証手段を提供でき、RS層を対象としたQoS評価や動作確認が効果的に行える。
以下、本発明を図面によって詳細に説明する。図1は本発明に係るエラーフレーム廃棄機能の試験装置の一実施例の構成を示している。
図1の構成例において使用している符号で、前述した図5でも使用している同一符号は
、同一機能を備えた部分であるから詳細説明は省略する。
図1の試験装置では、図5に示した試験装置のフレーム送信部において新たにエラーパタ
ーン挿入部15を、フレーム生成部3とFCS演算部4の間に設けている。
エラーパターン挿入部15は、予めCPU1から出力されている挿入位置情報15Bとフレームデータ19とを入力とし、フレームデータ15Aを出力とする。出力されたフレームデータ15Aは、FCS演算部4へと入力される。
タイミング制御部2が測定開始命令17を受信した場合、指示信号18を出力してフレー
ム生成部3に対してデータリンク層フレームのヘッダ部データ部を生成し、フレームデータ19としてエラーパターン挿入部15へ出力する。
この場合、タイミング制御部2ではエラー伝播コード挿入命令17Aを受信していないので、エラー伝播コード挿入部5に対するエラー伝播挿入命令21と、エラーパターン挿入部15に対するエラー伝播挿入命令15Cを発行しない。さらに、エラー伝播コード挿入命令17Aを発行しない場合は、CPU1は挿入位置情報15Bにも有効な値を出力しない。
このためエラーパターン挿入部15では、入力されたフレームデータ19の内容には何も影響を与えず前期フレームデータ15Aとして出力する。FCS演算部4では、入力されたフレームデータ15Aを対象に巡回冗長検査の一つであるFCS演算を施し、演算結果をフレームデータ15Aの末尾に付加してデータリンク層フレーム20として完成させる。
データリンク層フレーム20はエラー伝播コード挿入部5へ入力される。CPU1は、挿入位置情報15Bと同様に、挿入位置情報22にも有効な値を出力していない。また、タイミング制御部2はエラー伝播コード挿入命令17Aを受信していないのでエラー伝播挿入命令21についても同様に発行しない。
従ってエラー伝播挿入命令21を受信しなかったエラー伝播コード挿入部5は、入力されるデータリンク層フレーム20の内容を変更すること無しに、変換中フレーム23として出力され、レイヤ間インタフェース送信部6へと入力される。以下は図5で前述した動作と同様に正常フレームを搬送する試験信号AとしてDUTへ送信される。
次に、タイミング制御部2が測定開始命令17に伴ってエラー伝播コード挿入命令17Aを合わせて受信した場合について説明する。この場合、タイミング制御部2は指示信号18を出力してフレームデータ19を生成させることと併せて、エラー伝播コード挿入部5に対するエラー伝播挿入命令21の発行と、エラーパターン挿入部15に対するエラー伝播挿入命令15Cの発行を行う。
このときタイミング制御部2は、フレームデータ19の先頭オクテットがエラーパターン挿入部15に到着するタイミングと同時で、なおかつ1オクテットデータの受信時間に亘り発行されるように、エラー伝播挿入命令15Cを発行する。
CPU1は、エラー伝播コード挿入命令17Aを出力した場合には挿入位置情報15Bと挿入位置情報22にそれぞれ有効値を出力している。
ここで挿入位置情報15Bの値は、データリンク層フレームのヘッダ部データ部であるフレームデータ19内での挿入位置を指示している。すなわち指示内容はフレームデータ19の先頭オクテット位置を基準として、エラーパターンを挿入する位置がフレームデータ19の先頭から何オクテット目なのかを表している。
図1の構成例では、制御PC14が備える表示手段によってフレームデータ19の構成オクテット列を表示し、同様に制御PC14が備える入力手段によって当該オクテット列の表示を参照してエラー伝播コードの挿入位置を設定できる。設定された挿入位置はフレームデータ19のオクテット内容と共に制御インタフェース16を介し測定開始命令17の発行に先立ってCPU1に伝えられており、フレームデータ19に対する挿入位置情報15Bとして使用されている。
エラーパターン挿入部15では、エラー伝播挿入命令15Cが入力された時点で受信中のフレームデータ19内のオクテット位置を0として、以降1オクテット受信する毎に加算してオクテット位置を判定している。同時にCPU1より与えられている、挿入位置情報15Bの値と比較参照し、一致するオクテット位置に達した時点でエラーパターンEを挿入する。
このとき挿入位置情報15Bは04Hであるので、先頭から5オクテット目に達した時点でエラーパターンEを挿入している。また、エラーパターンの値は通常、FEhとしている。
1つのデータリンク層フレームに2箇所以上のエラーパターンを挿入したい場合は、エラーパターン挿入部へ入力する挿入位置情報15Bを2本以上に増設してもよい。
このようにしてエラーパターン挿入部15を通過してエラー伝播相当コードEを挿入されたフレームデータ15A(図2には図示しない)は、FCS演算部4において前述したFCS演算を施された結果、データリンク層フレーム20として完成する。
このとき付加されたFCS部には、挿入されたエラーパターンEを含めた上でFCS演算が施されている。完成されたデータリンク層フレーム20は、後段のエラー伝播コード挿入部5へ入力される。
エラー伝播コード挿入部5では、入力されたデータリンク層フレーム20に対し、それぞれヘッダとテイラに相当する開始オクテットSと終端オクテットTとを前後に付加することで変換中フレーム23を生成する。
変換中フレーム23では、レイヤ間インタフェース用フレーム24へのエンカプセレーションの前処理を実行する。また、併せてデータリンク層フレーム20の各オクテットに対応する、制御ビット信号23Aを付加する機能を持つ。
タイミング制御部2では、データリンク層フレーム20の先頭オクテットがエラー伝播コード挿入部5へ到着するタイミングと同時となるように、前記エラー伝播コード挿入部5に対するエラー伝播挿入命令21を発行している。
また、エラー伝播コード挿入命令21の出力時間は、エラー伝播コード挿入部5がデータリンク層フレーム20の各1オクテット分データを受信処理する時間幅に合わせている。図2にデータリンク層フレーム20に対するエラー伝播挿入命令21の生成タイミング例を示している。即ちエラー伝播コード挿入部5から見て、データリンク層フレーム20の先頭オクテット到着に合わせてエラー伝播挿入命令21が受信されるように、タイミング制御部2が制御している。
一方、エラー伝播コード挿入部5では、データリンク層フレーム20の受信オクテットに制御ビット値として"0"を付加し、制御ビット信号23Aを生成している。
また、エラー伝播挿入命令21の入力があった場合は、その時点で受信しているデータリンク層フレーム20のオクテットを基準位置0として、以降1オクテット受信する毎に内部で加算処理している。これにより、エラー伝播コード挿入部がエラー伝播コード挿入を実行するオクテット位置の認識手段としている。
エラー伝播挿入命令21の受信以降は、データリンク層フレーム20のオクテット受信の毎に、CPU1より与えられている挿入位置情報22の値と比較し、一致しない場合には制御ビット信号23として前記制御コード値の"0"が付加される。
図2の例では挿入位置情報22の値を04Hとしているため、エラー伝播挿入命令21の入力があったオクテット位置から数えて、データリンク層フレーム20の5番目の受信位置のオクテットにおいて挿入位置情報22の値と一致する。このときエラー伝播コード挿入部5が付加する制御ビット値は"0"の代わりに"1"が付加される。
この結果、予め挿入済みのエラー挿入コードEのオクテット位置の制御コード値は"1"に設定され、正式なエラー伝播コードの条件が成立する。また、図2に示すように変換中フレーム23と同時に生成される制御コード値"0"または"1"は制御ビット信号23Aとして、変換中フレーム23と同時にレイヤ間インタフェース送信部6へ送信される。
このとき開始オクテットSと終端オクテットTの制御コード値もエラー伝播コードEと同様に"1"としている。
仮に、1つのフレーム内で2箇所以上にエラー伝播コードを挿入したい場合は、エラー伝播コード挿入部5へ入力する挿入位置情報22を2本以上に増設してもよい。
また、CPU1が提示している挿入位置情報22は前述した挿入位置情報15Bの内容に基づき生成している。すなわち挿入位置情報22は、フレームデータ15Aにおけるエラーパターン挿入済みの位置に対応した、データリンク層フレーム20もしくは変換中フレーム23上でのオクテット位置を表示している。
図1の構成例では前述したように、エラー伝播コード挿入位置をフレームデータ19に対し設定しているが、レイヤ間インタフェース用フレーム24の形式上でエラー伝播コード挿入位置を設定してもよい。この場合は、レイヤ間インタフェース用フレーム24にエンカプセレーションする前のフレームデータ19での対応挿入位置をCPU1によって換算して挿入位置情報15Bを決定する。
エラー伝播コード挿入部5を通過後、エラー伝播コードEを挿入された変換中フレーム23と制御ビット信号23Aは、レイヤ間インタフェース送信部6でレイヤ間インタフェース用フレーム24の形式へエンカプセレーションされ、後段の物理信号変換部7へと入力される。以下は前述した正常フレームと同様の処理を行い、結果として今度は異常フレームの試験信号Aとなって前記DUTへ送信される。
このようにして送信される異常フレームは、プロトコルスタック上で上位層に位置するデータリンク層フレームのFCS部に影響を及ぼすこと無く、従ってFCSエラー発生を誘発すること無しにエラー伝播コードEの挿入が為されている。
図1に示した本発明の実施例を、例えば10ギガビットのイーサネット(登録商標)のネット−ワーク伝送装置をDUTとして想定したエラー伝播コード廃棄機能の試験装置に適用する場合、図1のレイヤ間インタフェース送信部6はXGMII送信部でありRS層に相当する。
同様に、図1のレイヤ間インタフェース受信部9はXGMII受信部であり、RS層に相当する。また、図1の物理信号変換部7はXGMII/XAUI(10Gigabit Attachment Unit Interface)変換部の機能ブロックに、さらに図1のレイヤ間インタフェース用フレーム24は前記XGMIIにそれぞれ相当する。
図3に、前記変換中フレーム23および付加情報としての制御ビット信号23Aがエンカプセレーションされた結果としての、XGMIIの状態を示す。図3のXGMIIは、図1のレイヤ間インタフェース用フレーム24の送信内容に相当し、XGMII上の各データ部はそれぞれ記号Dに相当する。
ただし、図3のレイヤ間インタフェース用フレーム24にエンカプセレーションされている、図2に示すデータリンク層フレーム20と、このデータリンク層フレーム20に基づいて生成した図2、図3の変換中フレーム23は、本実施例の説明のみを目的とした、仮想上のデータリンク層フレームである。このため2バイトのFCS部を想定している。
図3の例では、データリンク層フレーム24のヘッダ部はD0からD5に相当し、D3の位置にエラー伝播コードEが挿入されていることを示している。また、エンカプセレーションされているデータリンク層フレーム24の末尾に相当するD13とD14はFCS部であり、Eを含めた正しいFCS演算値として格納されている。
従って、図3に表示のXGMIIのフレームを試験信号AとしてDUTに送信しても、該DUT内部においてFCSエラーを誘発すること無しに、RS層のみが検知し得る異常フレームとして作用させることができる。
図2、図3の変換中フレーム23及び、これの基である図2のデータリンク層フレーム20については、例えば4バイトのFCS部を有するイーサネット(登録商標)フレーム形式またはMACフレーム形式に対して適用しても全く同様である。
以上説明したように、本発明を実施したエラー伝播コード廃棄機能の試験装置によれば、10ギガビットのイーサネット(登録商標)インタフェースのネットワーク機器のように、レイヤ間インタフェース用フレームに相当する標準インタフェースとして、XGMIIを内部で採用しているDUTを対象としたエラーフレーム廃棄機能の評価試験において、エラーの付加対象をプロトコルスタックの別層に影響を与えることなくRS層のみに限定できる。
ここで、10ギガビットのイーサネット(登録商標)インタフェースのネットワーク機器には、64ビットの情報を66ビットに変換する64B/66B符号変換機能を物理層に備えるものがある。
前述のとおり、DUTは試験信号Aを折り返し、帰還信号Bを送信するものであり、意図的に混在された異常データを破棄する機能動作試験が行われるものであるが、64B/66B符号変換機能を備えるDUTの場合、意図的に挿入した異常データが、DUT内部で、他の正常データにも影響してしまう。以下に、各部におけるフレームの状態を参照して説明する。
図4はDUT内部でフレームデータがエラー伝播コードに置換される状態説明図であり、図4(ア)は、図1のデータ信号Aであり、エラー伝播コード挿入され、エンカプセレーションされたフレームである。レーン0のD09の位置に異常データ/e/ が挿入されている。
図4(イ)と図4(ウ)は図示を省略したDUT内部において、64B/66B符号変換が行われたフレームの状態図である。図4(イ)で、レーン0のD09の位置にのみ異常データ/e/ が挿入されたにも係わらず、64B/66B変換が行われた後には、D05〜D12のデータが異常データに書き変わっている。すなわち、挿入されたエラー伝播コードを含めた前8バイト境界のフレームが、エラー伝播コードに置換されている。
同様に、図4(ウ)で、レーン0のD09の位置にのみ異常データ/e/ が挿入されたにも係わらず、64B/66B変換が行われた後には、D09〜D16のデータが異常データに書き変わっている。すなわち、挿入されたエラー伝播コードを含めた後8バイト境界のフレームデータが、エラー伝播コードに置換されている。
このように、64B/66B変換されることにより、エラー伝播コードを含めた前後8バイト境界のフレームデータがエラー伝播コードに置換されてしまうと、試験装置の送信側で正常データとして求められたFCS値が、データの置換により異常値となり、DUT内でFCSエラーフレームとして破棄されてしまう。
このような状態では、DUTのエラー伝播フレーム破棄機能を正確に評価することはできない。これに対応するため、DUTが64B/66B変換を行う機能を有する場合、エラーパターン挿入部では、上記のようにエラー伝播コードの拡張が行われても、FCSエラーとならないフレームをあらかじめ作成して送信する。
この動作を図5及び図6を参照して説明する。図5は試験装置の送信部におけるフレームの状態図であり、図6はDUT内におけるフレームの状態図である。図4(ア)と同様に、レーン0のデータ09の位置に意図的に異常データ/e/ を挿入する場合、図5(ア)で、エラーパターン挿入部15によりエラーパターンが挿入され、FCS演算部4でFCS演算される前のフレームデータ15Aの状態はデータD09のカラムとその前後のカラムのフレームデータを、エラー伝播コード/e/ に置き換えている。
図5(イ)で、FCS演算部4でFCSが演算され、エラー伝播コード挿入部5に入力される前のフレームデータ20の状態は、演算されたFCSの値が入力されている。
図5(ウ)は、エラー伝播コード挿入部5でエラー伝播コードが挿入され、エンカプセレーション後のフレームの状態図であり、ctr10のデータD09に相当する位置の制御ビットを1としている。
このような状態で試験信号AがDUTに入力されると、DUT内で64B/66B変換された場合、図6(ア)に示すように、エラー伝播コードを含めた前8バイト境界のフレームデータがエラー伝播コードに置換されても、図6(イ))に示すように、エラー伝播コードを含めた後8バイト境界のフレームデータがエラー伝播コードに置換されても、FCS値は図5(イ)で演算されたFCS値と一致し、エラー伝播コードの拡張によるFCSエラーはなくなる。
以上のように、この発明を実施したエラー伝播コード廃棄機能の試験装置では、例えば10ギガビットイーサネット(登録商標)のネットワーク機器が一般に備える、標準インタフェース部のXGMIIに限定した異常フレーム廃棄機能の検証手段を提供でき、RS層を対象としたQoS評価や動作確認が効果的に行える。