JP4373618B2 - 薬剤の回収方法および薬剤回収装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、防腐防蟻用の薬剤を含む木材から蒸発した前記薬剤を回収する薬剤の回収方法および薬剤回収装置に関するものである。
【0002】
【背景の技術】
従来、シロアリ、腐朽菌等による木材の生物被害を防止するために、防腐防蟻加工が行われている。この防腐防蟻加工の一例として、予め木材の表面に、例えば、のみ刃によって適当な間隔でのみ目を切り込んでおき、該のみ目から薬液を木材内部に浸透させる方法がある。この木材の表面に前記のみ目等の微小孔を切り込む加工がインサイジング加工と称されている。インサイジング加工を行った木材に薬液を浸透させる例として、特開2000−225607号公報に記載の技術が知られている。特開2000−225607号公報に記載の技術では、インサイジング加工を施した木材に薬液を噴射ノズルにより塗布する加工を行う例が記されている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
上記従来の技術には、次のような課題があった。
第1に、木材に薬剤をより多く浸透させるためには、十分な量の薬剤の塗布が必要であるが、塗布後、木材の表面を乾燥させるため、使用した薬剤の多くが蒸発してしまい、費用面での効率が悪い。
第2に、木材の表面を乾燥させる作業場では、薬剤が蒸発する為、空気の浄化が必要となるが、空気の浄化は難しく、手間とコストが必要である。
本発明は上記課題を鑑みてなされるものであり、防腐防蟻用の薬剤を含む木材から蒸発した薬剤を回収することができる薬剤の回収方法および薬剤回収装置を提供することを目的とする。
【0004】
【課題を解決するための手段】
上記課題に対し、請求項1の発明は、例えば、図1および図2に示すように、防腐防蟻用の薬剤を含む木材2から蒸発した前記薬剤を回収する薬剤回収方法であって、
密閉空間(例えば、保管室3)で木材2から蒸発した薬剤を、密閉空間外(例えば、回収部5)に導いて回収することを特徴としている。
【0005】
請求項1の発明の薬剤の回収方法によれば、密閉空間で木材2から蒸発した薬剤を、密閉空間外に導いて回収するので、防腐防蟻用の薬剤を含む木材2から蒸発した前記薬剤を回収することができる。また、前記木材2は密閉空間に保持し、蒸発した薬剤を密閉空間外に導いて回収するので、前記薬剤の蒸発の際に空気中に発生する化学物質等や臭いを外部に放出することが無く、前記木材2の乾燥時の周辺の環境を良好な状態に保つことができる。
【0006】
請求項2の発明は、請求項1記載の薬剤の回収方法において、
前記密閉空間(例えば、保管室3)で木材2から蒸発した薬剤を、密閉空間外(例えば、回収部5)に導いて回収する際に、前記密閉空間(例えば、保管室3)の温度を上昇させることを特徴としている。
【0007】
請求項2の発明によれば、前記密閉空間で木材2から蒸発した薬剤を、密閉空間外に導いて回収する際に、前記密閉空間の温度を上昇させるので、密閉空間内で前記薬剤の蒸発を促進できる。また、加熱することにより乾燥時間を大幅に短縮することができ、木材2の表面の乾燥処理を効率良く行うことができる。
【0008】
請求項3の発明は、請求項1または2記載の薬剤の回収方法において、
前記密閉空間(例えば、保管室3)で木材2から蒸発した薬剤を、密閉空間外(例えば、回収部5)に導いて回収する際に、密閉空間外(例えば、回収部5)に導かれた蒸発した薬剤を冷却することを特徴としている。
【0009】
請求項3の発明によれば、前記密閉空間で木材2から蒸発した薬剤を、密閉空間外に導いて回収する際に、密閉空間外に導かれた蒸発した薬剤を冷却するので、蒸発している薬剤を冷却して液化することができ、前記薬剤を容易に回収できる。
【0010】
請求項4の発明は、例えば、図2に示すように、防腐防蟻用の薬剤を含む木材2から蒸発した前記薬剤を回収する薬剤回収装置1であって、
前記薬剤を含む木材2を密閉状態で保管する保管室3と、
この保管室3の温度を上昇させる温度上昇手段(例えば、暖房装置4)と、
前記保管室外に設けられて、該保管室3で蒸発した薬剤を回収する回収部5と、
前記保管室3と回収部5とを連通する連通路6とを備えたことを特徴としている。
【0011】
請求項4の発明によれば、薬剤を含む木材2を密閉状態で保管する保管室3を備えているので、蒸発した薬剤を薬剤回収装置1の外部に放出することがない。これにより、蒸発した薬剤の回収率が高まるとともに、前記薬剤の蒸発の際に空気中に発生する化学物質等や臭いを外部に放出することが無く、木材2の乾燥時の周辺環境を良好な状態に保つことができる。また、温度上昇手段により保管室3の温度を上昇させるので、保管室3の内部で前記薬剤の蒸発を促進でき、かつ、木材2の表面の乾燥処理を効率よく行うことができる。さらに、前記保管室3で蒸発した薬剤を回収する回収部5と、前記保管室3と回収部5とを連通する連通路6とを備えているので、前記保管室5において蒸発した前記薬剤を、前記連通路6を通じて、回収部5に回収することができる。これにより、防腐防蟻用の薬剤を含む木材2から蒸発した前記薬剤が、外部に放出されることなく、回収することができる。したがって、前記木材2に吸収されずに蒸発した薬剤を、再利用することが可能となるうえに、短時間で乾燥処理が行えるので、少ない面積で作業が効率的にできる。また、木材2の加工場の作業環境を良好に保つことができる。
【0012】
請求項5の発明は、請求項4記載の薬剤回収装置1において、
前記連通路6は保管室3の天井面7に開口していることを特徴としている。
【0013】
請求項5の発明によれば、前記連通路6は保管室3の天井面7に開口しているので、蒸発して前記保管室3の中で上昇した薬剤を、容易に連通路6に導くことができる。これにより、蒸発した薬剤を効率的に前記保管室3の外へ導くことができる。
【0014】
請求項6の発明は、請求項4または5記載の薬剤回収装置1において、
前記連通路6の内部を冷却する冷却手段(例えば、冷却装置8)が設けられていることを特徴としている。
【0015】
請求項6の発明によれば、前記連通路6の内部を冷却する冷却手段が設けられているので、前記保管室3の内部で暖められて蒸発した薬剤を、連通路6の内部で冷却して液化を促進できる。
【0016】
【発明の実施の形態】
以下、図面を参照して本発明に係る薬剤の回収方法および薬剤回収装置について説明する。図2は、本実施の形態の例における薬剤回収装置1を示す斜視図である。図2において、符号3は保管室、符号4は暖房装置(温度上昇手段)、符号5は回収部、符号6は連通路、符号8は冷却装置(冷却手段)であり、これら、保管室3と、暖房装置(温度上昇手段)4と、回収部5と、連通路6と、冷却装置(冷却手段)8とにより薬剤回収装置1の主要部が構成されている。
【0017】
保管室3は、略直方体の建造物であり、木材2を十分に保管可能な容積を有している。この保管室3の床31には、壁面32,32に沿うように暖房装置(温度上昇手段)4,4が設置されている。また、図示しないが、前記木材2を搬出入するために十分な大きさの出入口を備えている。この出入口を閉めた状態で、保管室3の内部が密閉された状態になるように設計されている。
【0018】
回収部5は、略円筒状の容器であり、回収された薬剤を蓄えておくことができる。この回収部5には、回収した薬剤を取り出す取出口(図示せず)が設けられており、この取出口が閉じられている時は、回収部5の内部が密閉された状態となっている。
【0019】
前記保管室3と回収部5とは、連通路6によって接続されている。連通路6はパイプにより形成され、一方の端部が前記保管室3の天井面7と接合され、この天井面7に開口している。なお、天井面7には図示は省略するが、連通路6の開口部6aに蒸発した薬剤を収集するフードが設けられている。前記連通路6は、保管室3の天井面7と接合する部分から上方に延びた後、水平方向に曲折して回収部5側に延び、回収部5の上方にて、該回収部5向けて再度垂直方向に曲折して、この回収部5の上面5aに接合されている。また、前記連通路6は、前記回収部5上方で曲折する位置に連通路6の内部を冷却する冷却装置(冷却手段)8が設けられている。したがって、前記保管室3と回収部5とが密閉された状態では、前記薬剤回収装置1全体が密閉された状態となる。
【0020】
次に、本実施の形態の例における薬剤の回収方法について、住宅の床組に用いられる木材2に防腐防蟻用の薬剤を塗布した場合の、防腐防蟻用の薬剤の回収を例に、図1に示すフローチャートに基づき説明する。
【0021】
まず、ステップS1において、防腐防蟻用の薬剤を塗布した木材2を搬入する。前記木材2は、住宅建築の床組に用いられる角材であり、木材2の表面にのみ目等の微小孔を切り込むインサイジング加工が施された後、防腐防蟻用の薬剤が大量に塗布されたものである。前記木材2は、薬剤の塗布処理が行われた後、すぐに、薬剤回収装置1の保管室3に搬入される。搬入された木材2は、図2に示すように、載置台10,10に間隔をあけて載置され、該載置された木材2の上にさらに載置台10,10を積載してゆき、間隔を作りながら木材2を積み重ねている。このステップS1で、搬入された木材2は、ステップS2において、十分に乾燥するまでの間、前記保管室3に保管される。
【0022】
なお、木材2の保管時間は、例えば1週間程度である。保管室3に木材2を密閉状態で保持しておくことで、蒸発した薬剤が外部に放散しないので、保管室3内が蒸発した薬剤で飽和状態となり、これによって、薬剤が木材2に効果的に含浸していく。
【0023】
前記ステップS2において、保管された前記木材2は、薬剤が浸透した後、自然に乾燥してゆくが、さらに乾燥の効率を高め、薬剤を蒸発させるために、ステップS3において、前記保管室3を、暖房装置(温度上昇手段)4,4にて加温する。加温された前記保管室3の内部は温度が上昇し、前記木材2の表面に液体の状態で付着している薬剤が蒸発しはじめる。蒸発した薬剤は、前記保管室3の天井面7に設けられた開口部6aから連通路6の内部を、より温度の低い方へ伝わる。
【0024】
なお、ステップS3にて、保管室3を加温する際、過度な乾燥により、本来前記木材2に吸収されるべき薬剤まで蒸発しないように、保管室3の内部の環境は制御されている。
【0025】
連通路6の内部に導かれた前記蒸発した薬剤は、ステップS4において、冷却装置(冷却手段)8が設けられた位置において、冷却されて液化する。ステップS4において液化した前記薬剤は、連通路6の内部を伝わり、下方に連接された回収部5に下降し、ステップS5において、前記液化した薬剤を回収し、薬剤の回収方法を終了する。
【0026】
上記、薬剤の回収方法および薬剤回収装置1によれば、木材2に、より多く含浸させるために大量に塗布した薬剤のうち、蒸発する薬剤を回収することができ、該薬剤の再利用をはかることができる。また、薬剤回収装置1は全体が密閉されるので、前記蒸発した薬剤が薬剤回収装置1の外部に放出されることがなく、薬剤の回収率を高めることができるとともに、薬剤を含んだ木材2の乾燥時の周辺の環境を良好に保つことができる。
【0027】
また、前記連通路6を設け、保管室3を加温し、連通路6を冷却することによって、前記蒸発した薬剤を保管室3の外部の回収部5に導き、回収部5に回収することができる。
【0028】
なお、本実施の形態の例では、住宅の床組に用いられる木材に塗布された薬剤を回収する例を挙げたが、例えば、鉄道の枕木や、板材等であってもよく、木材の形状や用途を限定するものではない。
【0029】
また、薬剤が塗布された木材は、前記薬剤が十分に浸透するまでの間、前期保管室3に保管されることとしたが、これに限定するものではなく、例えば、薬剤を塗布した直後の木材を、浸透のために保管する室を別に設けてもよい。木材に薬剤を浸透させる作業は、薬剤の回収より時間を要する作業であるので、木材に薬剤を浸透させる室と、薬剤を回収する保管室とを別に設ければ、薬剤回収装置の稼動効率を向上させることができる。
【0030】
また、連通路6に冷却装置(冷却手段)8を設けた例を示したが、これに限定されるものではなく、冷却装置(冷却手段)8を備えないものであってもよい。さらに、連通路6に、前記蒸発した薬剤を導くファンを設けてもよく、その場合、効率よく前記薬剤が連通路6を移動する。
【0031】
【発明の効果】
請求項1の発明の薬剤の回収方法によれば、防腐防蟻用の薬剤を含む木材から蒸発した前記薬剤を回収することができる。また、前記木材は密閉空間に保持して密閉空間外に導いて回収するので、前記薬剤の蒸発の際に空気中に発生する化学物質等や臭いを外部に放出することが無く、木材の加工時の作業環境を良好な状態に保つことができる。
【0032】
請求項2の発明によれば、請求項1と同様の効果を得ることができるのはもちろんのこと、前記密閉空間の温度を上昇させて密閉空間外に導いて回収するので、密閉空間内で前記薬剤の蒸発を促進できる。また、木材の表面の乾燥処理を効率良く行うことができる。
【0033】
請求項3の発明によれば、請求項1または2と同様の効果を得ることができるのはもちろんのこと、前記密閉空間外に導かれた蒸発した薬剤を冷却するので、蒸発している薬剤を冷却して液化することができる。
【0034】
請求項4の発明によれば、前記保管室を備えているので、蒸発した薬剤を薬剤回収装置の外部に放出することがない。これにより、蒸発した薬剤の回収率が高まるとともに、前記薬剤の蒸発の際に空気中に発生する化学物質等や臭いを外部に放出することが無く、木材の加工時の作業環境を良好な状態に保つことができる。また、温度上昇手段により、保管室の内部における前記薬剤の蒸発を促進でき回収の効率を高めるとともに、木材の表面の乾燥処理を効率よく行うことができる。さらに、前記回収部と、前記連通路とを備えているので、前記保管室において蒸発した前記薬剤を、前記連通路を通じて回収部に回収することができる。これにより、防腐防蟻用の薬剤を含む木材から蒸発した前記薬剤が、外部に放出されることなく回収することができる。したがって、前記木材に吸収されずに蒸発した薬剤を、再利用することが可能となるうえに、木材の加工場の作業環境を良好に保つことができる。
【0035】
請求項5の発明によれば、請求項4と同様の効果を得ることができるのはもちろんのこと、保管室の天井面に開口している前記連通路により、蒸発して前記保管室の中で上昇した薬剤を、容易に連通路に導くことができ、蒸発した薬剤を効率的に前記保管室の外へ導くことができる。
【0036】
請求項6の発明によれば、請求項4または5と同様の効果を得ることができるのはもちろんのこと、前記冷却手段により、前記保管室の内部で暖められて蒸発した薬剤を、連通路の内部で冷却して液化を促進することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明にかかる薬剤の回収方法を説明するためのフローチャートである。
【図2】本発明における薬剤回収装置の実施の形態の例を示す斜視図である。
【符号の説明】
1 薬剤回収装置
2 木材
3 保管室
5 回収部
6 連通路
7 天井面

Claims (6)

  1. 防腐防蟻用の薬剤を含む木材から蒸発した前記薬剤を回収する薬剤回収方法であって、
    密閉空間で木材から蒸発した薬剤を、密閉空間外に導いて回収することを特徴とする薬剤の回収方法。
  2. 請求項1記載の薬剤の回収方法において、
    前記密閉空間で木材から蒸発した薬剤を、密閉空間外に導いて回収する際に、前記密閉空間の温度を上昇させることを特徴とする薬剤の回収方法。
  3. 請求項1または2記載の薬剤の回収方法において、
    前記密閉空間で木材から蒸発した薬剤を、密閉空間外に導いて回収する際に、密閉空間外に導かれた蒸発した薬剤を冷却することを特徴とする薬剤の回収方法。
  4. 防腐防蟻用の薬剤を含む木材から蒸発した前記薬剤を回収する薬剤回収装置であって、
    前記薬剤を含む木材を密閉状態で保管する保管室と、
    この保管室の温度を上昇させる温度上昇手段と、
    前記保管室外に設けられて、該保管室で蒸発した薬剤を回収する回収部と、
    前記保管室と回収部とを連通する連通路とを備えたことを特徴とする薬剤回収装置。
  5. 請求項4記載の薬剤回収装置において、
    前記連通路は保管室の天井面に開口していることを特徴とする薬剤回収装置。
  6. 請求項4または5記載の薬剤回収装置において、
    前記連通路の内部を冷却する冷却手段が設けられていることを特徴とする薬剤回収装置。
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