JP4373039B2 - 表示装置用蛍光体塗着基板の製造方法 - Google Patents

表示装置用蛍光体塗着基板の製造方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、蛍光体塗着面に設けられた多数の塗着場所に複数種類の蛍光体が交互に塗着された表示装置用蛍光体塗着基板の製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
陰極電子線管(CRT)を利用した画像表示装置、電界電子放出素子(FED)を利用した平面型画像表示装置、表面伝導型電子放出素子(SCE)を利用した平面型画像表示装置などが知られている。これらの表示装置には、ガラス基板の一面すなわち電子が衝突させられる面にマトリックス状或いは千鳥状に設けられた多数の塗着場所に、複数種類の蛍光体が交互に且つ均一密度で塗着され、それら複数種類の蛍光体が電子線の照射により選択的に発光させられることにより、基板の他面側において所望の画像が表示されるようになっている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、上記の表示装置用蛍光体塗着基板は、たとえば、露光領域または非露光領域が形成される感光性レジストをマスク或いはリフトオフとして利用するフォト法を用いて複数種類の蛍光体ペーストが基板の一面に多数設けられた固着場所に交互に固着されることにより構成される。しかしながら、このようなフォト法を用いると、工場における設備工程が長く、大きな床面積を必要とするとともに、設備負担が大きくなり、しかも現像などのために多量に消費される水の処理設備が必要となる。また、固着パターン以外の部分に付着した蛍光体が除去される結果、蛍光体などの材料効率が低く、廃棄物処理にコストがかかるとともに製品コストが高くなるという問題もあった。
【0004】
これに対し、スクリーン印刷を用いて蛍光体を含むペーストを上記の表示装置用蛍光体塗着基板の一面に多数設けられた塗着場所に蛍光体ペーストの種類毎に交互に塗布することが考えられる。このようなスクリーン印刷法によれば、工場における設備工程が短くなるので、床面積が小さくなるとともに設備負担が軽減され、水処理の問題も解消される。また、基板の一面のうちの必要な場所にのみ蛍光体が塗布されるので、蛍光体などの材料効率が高くなり、廃棄物処理のコストや製品コストが低くなる。しかしながら、このような場合には、前回に印刷され且つ固着された蛍光体によって次の蛍光体印刷時の印刷スクリーンが順次持ち上げられて蛍光体のにじみやかすれが発生し易く、固着幅および厚みがばらつくので、にじみに起因する混色、厚みのばらつきやかすれに起因する輝度むら、かすれや固着幅のばらつきに起因する画素の欠けが発生するという欠点があった。たとえば3種類の蛍光体をそれぞれ含む3種類のペーストが、スクリーン印刷を用いて交互に塗布されることにより表示装置用蛍光体塗着基板が構成される場合は、第1の蛍光体ペーストが印刷乾燥された後に、すでに塗着されたその第1の蛍光体に隣接している領域に第2の蛍光体ペーストが印刷されるとき、印刷スクリーンのエマルジョンがその第1の蛍光体によって持ち上げられるので、その第2の蛍光体の印刷厚みが大きくなり且つ印刷幅が小さくなる。また、すでに塗着された第2の蛍光体に隣接している領域に第3の蛍光体ペーストが印刷されるとき、印刷スクリーンのエマルジョンがその第2の蛍光体によって持ち上げられるので、その第3の蛍光体の印刷厚みが大きくなり且つ印刷幅が小さくなる。
【0005】
本発明は、以上の事情を背景として為されたものであって、その目的とするところは、混色、輝度むら、画素欠けのない低コストな表示装置用蛍光体塗着基板の製造方法を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための第1の手段】
斯かる目的を達成するための第1発明の要旨とするところは、蛍光体塗着面に設けられた多数の塗着場所に複数種類の蛍光体が交互に塗着された表示装置用蛍光体塗着基板の製造方法であって、(a) 複数種類の蛍光体のうちの一つの種類が塗着される所定の塗着場所に、消失可能な樹脂ペーストをスクリーン印刷を用いて塗布する樹脂ペースト塗布工程と、(b) その塗着場所のうち前記樹脂ペーストが塗布されていない他の塗着場所に所定の蛍光体ペーストをスクリーン印刷を用いて塗布する蛍光体ペースト塗布工程と、(c) 前記樹脂ペーストが塗布されている所定の塗着場所においてその樹脂ペースト上に重ねて他の蛍光体ペーストをスクリーン印刷を用いて塗布する蛍光体ペースト塗布工程と、(d) 前記樹脂ペースト、所定の蛍光体ペースト、他の蛍光体ペーストが塗布された基板を焼成することにより、所定の蛍光体および他の蛍光体を該基板にそれぞれ固着させる焼成工程とを、含むことにある。
【0007】
【第1発明の効果】
このようにすれば、消失可能な樹脂ペーストが予め所定の塗着場所に塗布された後に、その樹脂ペーストが塗布されていない他の塗着場所に所定の蛍光体が塗布され、次いでその所定の塗着場所に塗布された樹脂ペーストの上に他の蛍光体が塗布されることから、所定の蛍光体の塗布パターンの外縁は樹脂ペーストによってその流れが止められ、他の蛍光体の塗布パターンの外縁は所定の蛍光体によってその流れが止められる。したがって、当初から樹脂ペーストが印刷された状態で蛍光体ペーストの印刷が行われるとき、乾燥された先の印刷ペーストの段差や溶剤吸収に起因した上記塗布パターンの外縁の流れ止め作用によって印刷ダレが抑制されるとともに外縁のアライメントマージンが得られて比較的低粘度のペーストを用いることができることから、前回に印刷され且つ固着された蛍光体によって次の蛍光体印刷時の印刷スクリーンが順次持ち上げられることがないので、蛍光体のにじみに起因する混色、蛍光体の厚みのばらつきやかすれに起因する輝度むら、蛍光体のかすれや固着幅のばらつきに起因する画素の欠けが好適に防止される。また、上記のように低粘度ペーストを用いることが可能となることにより、印刷厚みを薄く制御できるとともに、次回の印刷のピンホールや充填不足の原因となる突起がなくなるという効果も得られる。
【0008】
【課題を解決するための第2の手段】
また、前記目的を達成するための第2発明の要旨とするところは、蛍光体塗着面に設けられた多数の塗着場所に3種類の第1蛍光体、第2蛍光体、および第3蛍光体が所定順序で交互に塗着された表示装置用蛍光体塗着基板の製造方法であって、(a) 前記第1蛍光体が塗着される第1塗着場所に、消失可能な樹脂ペーストをスクリーン印刷を用いて塗布する樹脂ペースト塗布工程と、(b) 前記多数の塗着場所のうち前記第1塗着場所に隣接する第2塗着場所に前記第2蛍光体を含むペーストをスクリーン印刷を用いて塗布する第2蛍光体ペースト塗布工程と、(c) 前記多数の塗着場所のうち前記第2塗着場所に隣接する第3塗着場所に前記第3蛍光体を含むペーストをスクリーン印刷を用いて塗布する第3蛍光体ペースト塗布工程と、(d) 前記第1塗着場所において前記樹脂ペースト上に重ねて前記第1蛍光体を含むペーストをスクリーン印刷を用いて塗布する第1蛍光体ペースト塗布工程と、(e) 前記樹脂ペースト、第2蛍光体を含むペースト、第3蛍光体を含むペースト、第1蛍光体を含むペーストが塗布された基板を焼成することにより、第1蛍光体、第2蛍光体、および第3蛍光体を前記第1塗着場所、第2塗着場所、第3塗着場所にそれぞれ固着させる焼成工程とを、含むことにある。
【0009】
【第2発明の効果】
このようにすれば、消失可能な樹脂ペーストが予め第1塗着場所に塗布された後に、その樹脂ペーストが塗布されていない第2塗着場所に第2蛍光体ペーストが、第3塗着場所に第3蛍光体ペーストが順次塗布され、次いで上記第1塗着場所に塗布された樹脂ペーストの上に第1蛍光体が塗布されることから、第2蛍光体の塗布パターンの外縁は樹脂ペーストによってその流れが止められ、第3蛍光体の塗布パターンの外縁は樹脂ペーストおよび第2蛍光体によってその流れが止められ、樹脂ペーストの上に塗布される第1蛍光体の塗布パターンの外縁は第2蛍光体および第3蛍光体によってその流れが止められる。したがって、当初から樹脂ペーストが印刷された状態で第2蛍光体ペースト、第3蛍光体ペースト、第1蛍光体ペーストの印刷が行われるとき、乾燥された先の印刷ペーストの段差や溶剤吸収に起因した上記塗布パターンの外縁の流れ止め作用によって印刷ダレが抑制されるとともに外縁のアライメントマージンが得られて比較的低粘度のペーストを用いることができることから、前回に印刷され且つ固着された蛍光体の段差によって次の蛍光体印刷時の印刷スクリーンが順次持ち上げられることがないので、蛍光体のにじみに起因する混色、蛍光体の厚みのばらつきやかすれに起因する輝度むら、蛍光体のかすれや固着幅のばらつきに起因する画素の欠けが好適に防止される。また、上記のように低粘度ペーストを用いることが可能となることにより、印刷厚みを薄く制御できるとともに、次回の印刷のピンホールや充填不足の原因となる突起がなくなるという効果も得られる。
【0010】
【発明の他の態様】
ここで、前記第1発明および第2発明において、好適には、前記基板は透光性ガラス基板であり、その透光性ガラス基板の一面である前記蛍光体塗着面において、前記所定の塗着場所と他の塗着場所との間、或いは前記第1塗着場所と第2塗着場所と第3塗着場所との間には、遮光機能を備えた遮光層が設けられたものである。このようにすれば、蛍光体の発光にじみが防止されるとともに蛍光体の発光領域の大きさが均一となり、その蛍光体の発光色がくっきりと表示される。
【0011】
また、好適には、前記第2発明において、前記第1蛍光体、第2蛍光体、および第3蛍光体は、3原色に対応する発光波長をそれぞれ備えたものである。このようにすれば、本製造方法により製造された蛍光体塗着基板を用いた表示装置はカラー表示可能なものとなる。
【0012】
また、好適には、前記第1発明および第2発明において、前記樹脂ペーストは、エチルセルローズを主成分とする樹脂と、ブチルカルビトールアセテート或いはテルピネオールからなる溶剤との高粘性流体状の混合体である。このようにすれば、焼成工程において樹脂ペーストを構成する物質がすべて消失させられるので、その樹脂ペースト上に印刷された蛍光体が好適に基板に固着される。
【0013】
【発明の好適な実施の形態】
以下、本発明の一実施例を図面を参照して詳細に説明する。
【0014】
図1は、表示装置用蛍光体塗着基板10の要部を拡大して示す断面図である。図1において、表示装置用蛍光体塗着基板10は、たとえば350×450×1.8(mm)程度の大きさの矩形板状を成すソーダライムガラス製の基板12と、この基板12の表面すなわち電子が衝突させられる面においてマトリックス状或いは千鳥状に設けられた多数の塗着場所を区画するために固着された網状或いは格子状の遮光層14と、その遮光層14により区画された多数の塗着場所に、交互に且つ均一密度で塗着された複数種類たとえば3種類の蛍光体16、18、20とを備え、たとえば平面型画像表示装置に組み込まれたときにそれら複数種類の蛍光体16、18、20が陰極電子線管(CRT)、電界電子放出素子(FED)、或いは表面伝導型電子放出素子(SCE)からの電子線の照射により選択的に発光させられることによって、その発光光が基板12の他面側すなわち表示面側へ出力され、そこにおいて所望のカラー画像が表示されるようになっている。
【0015】
上記遮光層14は、たとえばブラックマトリックスと称される黒色層であり、カーボン粉末、或いは銀および酸化ルテニウムなどの金属粉末がたとえば低融点ガラス結合剤によって焼成により固着させられたものである。また、蛍光体16、18、20は、たとえば(Zn0.22, Cd0.78)S:Ag,Clなどの赤色の発光波長を有する蛍光体、たとえばZnO:Znなどの緑色の発光波長を有する蛍光体、たとえばZnS:Clなどの青色の発光波長を有するの発光波長を有する蛍光体であり、スクリーン印刷によって焼成によって固着させられたものであるが、蛍光体の印刷にじみ、蛍光体の印刷幅および印刷厚みのばらつき、蛍光体の印刷のかすれが無く、その蛍光体の印刷にじみに起因する混色、蛍光体の印刷厚みのばらつきや印刷のかすれに起因する輝度むら、蛍光体の印刷のかすれや印刷幅のばらつきに起因する画素の欠けが好適に防止されている。
【0016】
以上のように構成された表示装置用蛍光体塗着基板10は、たとえば図2に示すスクリーン印刷を用いて製造されたものであり、たとえば図3に示す工程図に従って製造される。図2において、製版30は、アルミニウム合金などの金属製の矩形の版枠32と、所定の張力が発生するようにその版枠32に固着されたスクリーン34と、酢酸ビニルエマルジョンに感光剤を加えたもの或いは感光性樹脂から構成されてそのスクリーン34に塗着されるとともに露光により所定の形状の貫通パターン35が形成されたレジスト(硬化エマルジョン)36とから構成されている。この製版30の下側にはそれと平行に所定の間隙を隔てて基板12が載置され、製版30のスクリーン34上に載置された印刷ペースト38がそのスクリーン34と平行な方向に駆動される弾性体製のスキージ40によって押しつけられることにより、基板12の一面には、上記レジスト36に形成された貫通パターンと同様のパターンで印刷ペースト38が印刷される。図2は、蛍光体ペーストを印刷する場合を示している。
【0017】
図3の遮光層形成工程P1では、基板12の表面すなわち電子が衝突させられる面において、カーボン粉末、或いは銀および酸化ルテニウムなどの金属粉末および低融点ガラス結合剤などがエチルセルローズなどの樹脂とブチルカルビトールアセテート或いはテルピネオールなどの溶剤とにより混合された高粘性流動状の遮光ペーストが網状或いは格子状パターンで印刷されることにより0.3乃至3μm程度の厚み且つ25μm程度の線幅の遮光層14が形成され、乾燥或いは乾燥および焼成によって固着される。上記カーボン粉末はたとえばCRTに好適に用いられ、上記銀および酸化ルテニウムはFEDに好適に用いられる。基板12の表面では、たとえば50μm程度の幅寸法で、上記網状或いは格子状の遮光層14によって、順次隣接する赤色蛍光体ペースト16pが塗着される第1塗着場所B1、緑色蛍光体ペースト18pが塗着される第2塗着場所B2、青色蛍光体ペースト20pが塗着される第3塗着場所B3が区画される。すなわち、第1塗着場所B1、第2塗着場所B2、第3塗着場所B3の間に遮光層14が固設される。
【0018】
次いで、樹脂ペースト塗布工程P2では、エチルセルローズなどの樹脂とブチルカルビトールアセテート或いはテルピネオールなどの溶剤とにより混合された高粘性流動状の樹脂ペースト42が、赤色蛍光体ペースト16pが印刷されるべき第1塗着場所B1にスクリーン印刷により10乃至20μm程度の乾燥厚みとなるように塗布されるとともに乾燥されることにより固着される。図4はこの状態を示している。次いで、第1蛍光体ペースト塗布工程P3では、緑色蛍光体18がエチルセルローズなどの樹脂とブチルカルビトールアセテート或いはテルピネオールなどの溶剤とにより混合された高粘性流動状の緑色蛍光体ペースト18pが、上記第1塗着場所B1に隣接する第2塗着場所B2にスクリーン印刷により塗布されるとともに乾燥されることにより固着される。図5はこの状態を示している。このとき、D2に示すように、緑色蛍光体ペースト18pの外縁のうちの第1塗着場所B1側のだれ(垂れ)が、上記予め第1塗着場所B1に印刷された樹脂ペースト42により阻止されてにじみが防止されている。
【0019】
続く第2蛍光体ペースト塗布工程P4では、青色蛍光体20がエチルセルローズなどの樹脂とブチルカルビトールアセテート或いはテルピネオールなどの溶剤とにより混合された高粘性流動状の緑色蛍光体ペースト20pが、上記第1塗着場所B1と上記第2塗着場所B2との間に位置してそれらに隣接する第3塗着場所B3にスクリーン印刷により10乃至20μm程度の乾燥厚みとなるように塗布されるとともに乾燥されることにより固着される。図6はこの状態を示している。このときも、D3に示すように、青色蛍光体ペースト20pの外縁のうちの第2塗着場所B2側のだれ(垂れ)および第1塗着場所B1側のだれ(垂れ)が、その第2塗着場所B2および第1塗着場所B1に予め印刷された緑色蛍光体ペースト18pおよび樹脂ペースト42によりそれぞれ阻止されてにじみが防止されている。
【0020】
次に、第3蛍光体ペースト塗布工程P5では、赤色蛍光体16がエチルセルローズなどの樹脂とブチルカルビトールアセテート或いはテルピネオールなどの溶剤とにより混合された高粘性流動状の赤色蛍光体ペースト16pが、前記第1塗着場所B1に予め固着されている樹脂ペースト42上にスクリーン印刷により10乃至20μm程度の乾燥厚みとなるように塗布されるとともに乾燥されることにより固着される。図7はこの状態を示している。このときも、赤色蛍光体ペースト16pの外縁のうち第3塗着場所B3側のだれおよび第2塗着場所B2側のだれが、その第3塗着場所B3および第2塗着場所B2に予め固着された青色蛍光体ペースト20pおよび緑色蛍光体ペースト18pによりそれぞれ阻止されてにじみが防止されている。
【0021】
そして、焼成工程P6において、上記基板12が焼成されることにより、図1に示す表示装置用蛍光体塗着基板10が得られる。この焼成では、樹脂ペースト42が完全に消失させられるとともに、赤色蛍光体ペースト16p、緑色蛍光体ペースト18p、および青色蛍光体ペースト20p中の樹脂および溶剤が消失させられる。焼成温度は基板12の変形を発生させない範囲でそのように設定されているのである。
【0022】
本実施例の表示装置用蛍光体塗着基板10においては、上述の工程を経て製造されるとき、消失可能な樹脂ペースト42が予め第1塗着場所B1に塗布された後に、その樹脂ペースト42が塗布されていない第2塗着場所B2に緑色蛍光体ペースト18pが、第3塗着場所B3に青色蛍光体ペースト20pが順次塗布され、次いで上記第1塗着場所B1に塗布された樹脂ペースト42の上に赤色蛍光体ペースト16pが塗布されることから、緑色蛍光体ペースト18pの塗布パターンの外縁は樹脂ペースト42によってその流れが止められ、青色蛍光体ペースト20pの塗布パターンの外縁は樹脂ペースト42および緑色蛍光体ペースト18pによってその流れが止められ、樹脂ペースト42の上に塗布される赤色蛍光体ペースト16pの塗布パターンの外縁は緑色蛍光体ペースト18pおよび青色蛍光体ペースト20pによってその流れが止められる。このため、当初から樹脂ペースト42が印刷された状態で緑色蛍光体ペースト18p、青色蛍光体ペースト20p、赤色蛍光体ペースト16pの印刷が順次行われるとき、乾燥された先の印刷ペーストの段差や溶剤吸収に起因した上記塗布パターンの外縁の流れ止め作用によって印刷ダレが抑制されるとともに外縁のアライメントマージンが得られて比較的低粘度のペーストを用いることができることから、前回に印刷され且つ固着された蛍光体の段差によって次の蛍光体印刷時の印刷スクリーン34が順次持ち上げられることがないので、蛍光体のにじみに起因する混色、蛍光体の厚みのばらつきやかすれに起因する輝度むら、蛍光体のかすれや固着幅のばらつきに起因する画素の欠けが好適に防止される。また、上記のように低粘度ペーストを用いることが可能となることにより、印刷厚みを薄く制御できるとともに、次回の印刷のピンホールや充填不足の原因となる突起がなるなるという効果も得られる。
【0023】
ちなみに、図8乃至図10は、従来の表示装置用蛍光体塗着基板の製造工程を説明する図であって、赤色蛍光体ペースト塗布工程、緑色蛍光体ペースト塗布工程、および青色蛍光体ペースト塗布工程により、赤色蛍光体ペースト16p、緑色蛍光体ペースト18p、青色蛍光体ペースト20pがそれぞれ順次塗布された状態を示す要部断面図である。このような従来の工程では、樹脂ペーストが予め塗布されておらず、赤色蛍光体ペースト16p、緑色蛍光体ペースト18p、青色蛍光体ペースト20pのだれを抑制することができないことに対処して粘度を高くしたペーストが用いられるので、1色目の赤色蛍光体ペースト16pの塗布時はよいかもしれないが、2色目の緑色蛍光体ペースト18pの塗布では1色目に形成された膜厚の段差によって、3色目の青色蛍光体ペースト20pの塗布では2色面に形成された膜厚の段差によってレジスト36と基板12との間に隙間が発生するので、適切な印刷ができず、表示画素の混色の原因となる印刷のにじみ、表示画素のピンホールおよびパターン欠けの原因となる印刷のかすれ、表示画素の色純度のむらや輝度むらの原因となる膜厚の不均一が発生することが避けられない場合があったのである。図8乃至図10は、にじみなどを防止するために比較的高い粘度のペーストが用いられた場合の各ペーストの厚みや幅寸法のばらつきも示している。1色目の赤色蛍光体ペースト16pの厚みをHR 、幅寸法をWR とし、2色目の緑色蛍光体ペースト18pの厚みをHG 、幅寸法をWG とし、3色目の青色蛍光体ペースト20pの厚みをHB 、幅寸法をWB とすると、HR <HG <HB 、WR >WG >WB となるばらつき傾向がある。
【0024】
また、本実施例によれば、基板12は透光性ガラス基板であり、その透光性ガラス基板の一(上)面である蛍光体塗着面において、所定の塗着場所と他の塗着場所との間、或いは前記第1塗着場所と第2塗着場所と第3塗着場所との間には、遮光機能を備えた遮光層14が設けられたものであることから、スクリーン印刷時の蛍光体の発光にじみが防止されるとともに蛍光体の発光領域の大きさが均一となり、その蛍光体の発光色がくっきりと表示される。
【0025】
また、本実施例によれば、赤色蛍光体(第1蛍光体)16、緑色蛍光体(第2蛍光体)18、および青色蛍光体(第3蛍光体)20は、赤色、緑色、青色に対応する発光波長をそれぞれ備えたものであることから、本実施例の製造方法により製造された表示装置用蛍光体塗着基板10を用いた表示装置はカラー表示可能なものとなる。
【0026】
また、本実施例によれば、樹脂ペースト42は、たとえばエチルセルローズを主成分とする樹脂と、ブチルカルビトールアセテート或いはテルピネオールからなる溶剤との高粘性流体状の混合体であって、焼成工程P6において樹脂ペースト42を構成する物質がすべて消失させられるので、その樹脂ペースト上に印刷された蛍光体が好適に基板に固着される。
【0027】
以上、本発明を図面を参照して詳細に説明したが、本発明は更に別の態様でも実施できる。
【0028】
例えば、実施例の基板12は、ソーダライムガラス製の基板だけでなく、耐熱ガラス、結晶化ガラスなどの透光性基板や、アルミナセラミックス、フォルステライト、ステアタイトなどの非透光性基板から構成されてもよい。いずれも焼成工程P6における厚膜焼成温度よりも高い軟化点を備えてその温度で変形しないものが用いられる。透光性基板である場合は、陰極電子線管(CRT)を利用した画像表示装置、電界電子放出素子(FED)を利用した平面型画像表示装置、表面伝導型電子放出素子(SCE)を利用した平面型画像表示装置などが知られている。また、非透光性基板である場合は、たとえば蛍光表示管のような電子源側から見る画像表示装置に用いられる。なお、基板12がアルミナ、フォルステライト、ステアタイトなどのセラミックス製の基板である場合は、蛍光体ペーストは、たとえば800度程度の焼成温度で焼成されるものであってもよい。
【0029】
また、前述の実施例では、3種類の赤色蛍光体(第1蛍光体)16、緑色蛍光体(第2蛍光体)18、および青色蛍光体(第3蛍光体)20が、基板12上にスクリーン印刷によって塗着される場合が説明されていたが、2種類或いは4種類以上の蛍光体が塗着される場合でも本発明が適用される。
【0030】
また、前述の実施例において、3種類の赤色蛍光体(第1蛍光体)16、緑色蛍光体(第2蛍光体)18、および青色蛍光体(第3蛍光体)20がそれぞれ塗着される第1塗着場所B1、第2塗着場所B2、第3塗着場所B3の間には、遮光層14が設けられていたが、必ずしも設けられていなくてもよい。また、この遮光層14には、網状、格子状だけでなく、ストライプ状などの種々のパターンで設けられ得る。この遮光層14は必ずしも厚膜導体でなくてもよく、必要に応じて導電性が備えられる。
【0031】
その他、一々例示はしないが、本発明は、その主旨を逸脱しない範囲で種々変更を加え得るものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施例の表示装置用蛍光体塗着基板の要部構成を説明する断面図である。
【図2】図1の実施例の表示装置用蛍光体塗着基板の製造に用いるスクリーン印刷の要部を説明する図である。
【図3】図1の実施例の表示装置用蛍光体塗着基板の製造工程を説明する図である。
【図4】図3の樹脂ペースト塗布工程により基板上に樹脂ペーストが塗布された状態を示す要部断面図である。
【図5】図3の第1蛍光体ペースト塗布工程により基板上に緑色蛍光体ペーストが塗布された状態を示す要部断面図である。
【図6】図3の第2蛍光体ペースト塗布工程により基板上に青色蛍光体ペーストが塗布された状態を示す要部断面図である。
【図7】図3の第3蛍光体ペースト塗布工程により基板上に赤色蛍光体ペーストが塗布された状態を示す要部断面図である。
【図8】従来の表示装置用蛍光体塗着基板の製造工程を説明する図であって、赤色蛍光体ペースト塗布工程により基板上に赤色蛍光体ペーストが塗布された状態を示す要部断面図である。
【図9】従来の表示装置用蛍光体塗着基板の製造工程を説明する図であって、緑色蛍光体ペースト塗布工程により基板上に緑色蛍光体ペーストが塗布された状態を示す要部断面図である。
【図10】従来の表示装置用蛍光体塗着基板の製造工程を説明する図であって、青色蛍光体ペースト塗布工程により基板上に青色蛍光体ペーストが塗布された状態を示す要部断面図である。
【符号の説明】
10:表示装置用蛍光体塗着基板
12:基板
14:遮光層
16:赤色蛍光体
16p:赤色蛍光体ペースト
18:緑色蛍光体
18p:緑色蛍光体ペースト
20:青色蛍光体
20p:青色蛍光体ペースト
42:樹脂ペースト
B1:第1塗着場所
B2:第2塗着場所
B3:第3塗着場所
P2:樹脂ペースト塗布工程
P3:第1蛍光体ペースト塗布工程
P4:第2蛍光体ペースト塗布工程
P5:第3蛍光体ペースト塗布工程
P6:焼成工程

Claims (5)

  1. 蛍光体塗着面に設けられた多数の塗着場所に複数種類の蛍光体が交互に塗着された表示装置用蛍光体塗着基板の製造方法であって、
    複数種類の蛍光体のうちの一つの種類が塗着される所定の塗着場所に、消失可能な樹脂ペーストをスクリーン印刷を用いて塗布する樹脂ペースト塗布工程と、
    該塗着場所のうち前記樹脂ペーストが塗布されていない他の塗着場所に所定の蛍光体ペーストをスクリーン印刷を用いて塗布する蛍光体ペースト塗布工程と、
    前記樹脂ペーストが塗布されている所定の塗着場所において該樹脂ペースト上に重ねて他の蛍光体ペーストをスクリーン印刷を用いて塗布する蛍光体ペースト塗布工程と、
    前記樹脂ペースト、所定の蛍光体ペースト、他の蛍光体ペーストが塗布された基板を焼成することにより、所定の蛍光体および他の蛍光体を該基板にそれぞれ固着させる焼成工程と
    を、含むことを特徴とする表示装置用蛍光体塗着基板の製造方法。
  2. 蛍光体塗着面に設けられた多数の塗着場所に3種類の第1蛍光体、第2蛍光体、および第3蛍光体が所定順序で交互に塗着された表示装置用蛍光体塗着基板の製造方法であって、
    前記第1蛍光体が塗着される第1塗着場所に、消失可能な樹脂ペーストをスクリーン印刷を用いて塗布する樹脂ペースト塗布工程と、
    前記多数の塗着場所のうち前記第1塗着場所に隣接する第2塗着場所に前記第2蛍光体を含むペーストをスクリーン印刷を用いて塗布する第2蛍光体ペースト塗布工程と、
    前記多数の塗着場所のうち前記第2塗着場所に隣接する第3塗着場所に前記第3蛍光体を含むペーストをスクリーン印刷を用いて塗布する第3蛍光体ペースト塗布工程と、
    前記第1塗着場所において前記樹脂ペースト上に重ねて前記第1蛍光体を含むペーストをスクリーン印刷を用いて塗布する第1蛍光体ペースト塗布工程と、
    前記樹脂ペースト、第2蛍光体を含むペースト、第3蛍光体を含むペースト、第1蛍光体を含むペーストが塗布された基板を焼成することにより、第1蛍光体、第2蛍光体、および第3蛍光体を前記第1塗着場所、第2塗着場所、第3塗着場所にそれぞれ固着させる焼成工程と
    を、含むことを特徴とする表示装置用蛍光体塗着基板の製造方法。
  3. 前記基板は透光性ガラス基板であり、該透光性ガラス基板の一面である前記蛍光体塗着面において、前記第1塗着場所、第2塗着場所、第3塗着場所の間には、遮光機能を備えた遮光層が設けられたものである請求項2の表示装置用蛍光体塗着基板の製造方法。
  4. 前記第1蛍光体、第2蛍光体、および第3蛍光体は、3原色に対応する発光波長をそれぞれ備えたものである請求項2または3の表示装置用蛍光体塗着基板の製造方法。
  5. 前記樹脂ペーストは、エチルセルローズを主成分とする樹脂と、ブチルカルビトールアセテート或いはテルピネオールからなる溶剤との高粘性流体状の混合体である請求項1または2の表示装置用蛍光体塗着基板の製造方法。
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