JP4373030B2 - 人工皮膚およびこれを用いた紫外線遮蔽効果の評価方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、人工皮膚及びこれを用いる紫外線遮蔽効果の評価方法に関する発明である。
【0002】
【従来の技術】
紫外線遮蔽剤は、今日、化粧品等の皮膚外用剤において広く用いられている。皮膚外用剤に紫外線遮蔽剤を配合する場合に、その皮膚における紫外線遮蔽効果を検証することが必要であることはいうまでもない。
【0003】
この検証に際して、ヒトの皮膚や動物の皮膚を実際に用いることが、より確実ではある。しかしながら、試験の安全性や動物愛護の精神を考慮すると、可能な限り、このような生体を用いた試験は行わない方がよい。
【0004】
このような見地から、ヒトの皮膚に近い人工皮膚を用いて紫外線遮蔽効果の評価を行う試みがなされている。
例えば、多孔性テープ(トランスポアTMサージカルテープ:3Mヘルスケア社製)を皮膚代替膜とした評価法(J.S.C.C.,40,127-133,1989,Diffy&Robson)や、樹脂を用いた皮膚レプリカを皮膚代替膜とした評価法(Int.J.Cos.Sci.,9,85-98,1987,Stockdale、特開平5−248944号公報)が挙げられる。しかしながら、前者の多孔性テープを用いた評価法は、紫外線遮蔽剤がテープ内部に浸透・収着し、紫外線遮蔽作用を過大に評価してしまう可能性が大きい。また、後者の樹脂を用いた皮膚レプリカの素材として用いられるシリコーン樹脂は、紫外線透過性に問題があり、同じくウレタン樹脂には、紫外線遮蔽剤の収着性に問題がある、とされている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明が解決すべき課題は、可能な限り、紫外線遮蔽剤に対して皮膚に近い性質を有する形態の人工皮膚を見出し、これを用いた紫外線遮蔽効果のin vitroの評価方法を見出すことにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、これまでの検討により、紫外線遮蔽剤を皮膚に塗布しても、紫外線遮蔽効果に影響を与える程の経皮吸収はされずに皮膚上に存在することを突き止めた。すなわち、表皮と同程度の紫外線の透過性を有し、かつ、紫外線遮蔽剤に対する収着が微小な素材を、皮膚表面の状態に擬似させることにより、皮膚上における紫外線遮蔽剤の状態を再現可能な人工皮膚を作出可能であることを見出した。そして、さらに検討を重ねることにより、本発明をなすに至った。
【0007】
本発明は、下記(1)〜(3)の特徴を有する紫外線遮蔽効果のin vitro評価用の人工皮膚(以下、本発明人工皮膚という)を提供する発明である。
(1)素材がナイロンからなる。
(2)厚さが100〜1000μm である。
(3)皮溝に模した溝が、片面の表面に設けられている。
また、本発明は、皮溝に模した溝が設けられた側に被検物を塗布した、本発明人工皮膚における紫外線の透過度合いを計測して、前記被検物の紫外線遮蔽能を評価する、紫外線遮蔽効果の評価方法(以下、本発明評価方法という)を提供する発明である。
【0008】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態について説明する。
A.本発明人工皮膚の内容
本発明人工皮膚の素材は、厚さ100〜1000μm のナイロンである。
【0009】
ここで、厚さを100〜1000μm としたのは、表皮の厚さが、ほぼこの範囲の厚さだからである。この範囲よりも、厚さが厚すぎても、薄すぎても、皮膚のモデルとしては適切さを欠くこととなる。この範囲の厚さの薄膜にしたナイロンを、本発明人工皮膚の素材として選択し得る。ナイロンは、厚さを100〜1000μmとした場合の、波長が450〜280nmの光に対する透過率が10%以上で、この波長範囲は、大部分の中波紫外線(UVB)と長波紫外線(UVA)の紫外線の波長範囲であり、この範囲における表皮の紫外線透過率が、概ね10%以上であることに基づいた条件である。このような条件を満足するナイロンとしては、6−ナイロン、66−ナイロン等のナイロン全般を挙げることが可能であり、当該ナイロン全般は、紫外線遮蔽剤を殆ど収着せず、被検物の紫外線遮蔽効果を過大に評価することを防ぐことが可能であり、好ましい。
【0010】
また、本発明人工皮膚の片面の表面に、皮溝に模した溝が設けられている。これは、表皮における皮溝構造を再現するために必要な条件である。「片面」としたのは、現実の表皮の皮溝も表面のみに存在するからである。
【0011】
この皮溝に模した溝は、実際の表皮における、皮溝の平均的な構造に模して、
以下の条件に従うことが好ましい。
(1)溝の短手方向における縦断面がV字型である。
(2)溝角度が、60〜150°である。
(3)溝の深さが、30〜100μm である。
(4)溝の幅が、50〜300μm である。
(5)溝頻度縦横方向(本明細書において、人工皮膚表面の縦方向および/または横方向の溝頻度を意味する)が、0.5〜2.0本/mmである。
(6)溝頻度斜め方向が、0.5〜2.0本/mmである。
【0012】
このような本発明人工皮膚の表面構造の形成方法は、特に限定されず、例えば、カッター等による切削、鋳型による成形等により、所望する表面構造を形成することができる。
【0013】
また、本発明人工皮膚の非皮溝部分(皮溝に模した溝が設けられた表面側で皮溝が設けられていない部分を意味する)に凹凸が設けられていることが、実際の表皮の表面構造を鑑みると好ましい。かかる凹凸構造を設けるための手段は、特に限定されるものではなく、例えば、薬品等による処理、やすり等による処理、ブラスト処理等を挙げることができるが、常に同一なものを供給することが容易であるという理由から、ブラスト処理を選択することが好ましい。
【0014】
本発明人工皮膚は、上述したような条件に従って、上記のナイロンの薄膜の片面上に、皮溝に模した溝構造や、非皮溝部分に凹凸が設けられることによって製造され得る。
【0015】
B.本発明評価方法について
本発明評価方法は、皮溝に模した溝が設けられた側に被検物を塗布した、本発明人工皮膚における紫外線の透過度合いを計測して、前記被検物の紫外線遮蔽能を評価する、紫外線遮蔽効果の評価方法であり、本発明人工皮膚の効果を最も的確に発揮させる方法である。
【0016】
すなわち、本発明人工皮膚は、紫外線遮蔽剤ないし紫外線に対して、実際の表皮における特性をモデルにしているため、紫外線遮蔽剤を含有する外用組成物の評価に対して用いることが適切である。
【0017】
本発明評価方法において、評価の対象となる紫外線遮蔽剤を含有する外用組成物は特に限定されず、紫外線吸収剤と紫外線遮断剤として一般的に分類される紫外線遮蔽剤を含有する外用組成物を広く用いることができる。
【0018】
すなわち、パラアミノ安息香酸 (以下 PABA と略す) 、PABAモノグリセリンエステル、N,N-ジプロポキシPABAエチルエステル、N,N-ジエトキシPABAエチルエステル、N,N-ジメチルPABAエチルエステル、N,N-ジメチルPABAブチルエステル、N,N-ジメチルPABAメチルエステル等のパラアミノ安息香酸系紫外線吸収剤、ホモメンチル-N- アセチルアントラニレート等のアントラニル酸系紫外線吸収剤、アミルサリシレート、メンチルサリシレート、ホモメンチルサリシレート、オクチルサリシレート、フェニルサリシレート、ベンジルサリシレート、p-イソプロパノールフェニルサリシレート等のサリチル酸系紫外線吸収剤、オクチルシンナメート、エチル-4- イソプロピルシンナメート、メチル-2,5- ジイソプロピルシンナメート、エチル-2,4- ジイソプロピルシンナメート、メチル-2,4- ジイソプロピルシンナメート、プロピル-p- メトキシシンナメート、イソプロピル-p- メトキシシンナメート、イソアミル-p- メトキシシンナメート、オクチルメトキシシンナメート(2- エチルヘキシル-4- メトキシシンナメート) 、2-エトキシエチル-p- メトキシシンナメート、シクロヘキシル-p- メトキシシンナメート、エチル- α- シアノ−β- フェニルシンナメート、2-エチルヘキシル- α- シアノ- β- フェニルシンナメート、グリセリルモノ-2- エチルヘキサノエート- ジパラメトキシシンナメート、3, 4, 5, -トリメトキシケイ皮酸3-メチル-4-[メチルビス(トリメチルシロキシ)シリル]ブチル等のケイ皮酸系紫外線吸収剤、2,4-ジヒドロキシベンゾフェノン、2,2'- ジヒドロキシ-4- メトキシベンゾフェノン、2,2'- ジヒドロキシ-4,4'-ジメトキシベンゾフェノン、2,2',4,4'-テトラヒドロキシベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4- メトキシベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4- メトキシ-4'-メチルベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4- メトキシベンゾフェノン-5- スルホン酸塩、4-フェニルベンゾフェノン、2-エチルヘキシル-4'-フェニル- ベンゾフェノン-2- カルボキシレート、2-ヒドロキシ-4-n- オクトキシベンゾフェノン、4-ヒドロキシ-3- カルボキシベンゾフェノン等のベンゾフェノン系紫外線吸収剤、3-(4- メチルベンジリデン)-d,1- カンファー、3-ベンジリデン-d,1- カンファー、ウロカニン酸、ウロカニン酸エチルエステル、2-フェニル-5- メチルベンゾキサゾール、2-(2- ヒドロキシ-5-t- オクチルフェニル) ベンゾトリアゾール、2-(2- ヒドロキシ-5- メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、ジベンザラジン、ジアニソイルメタン、4-t-ブチル-4'-メトキシジベンゾイルメタン、5-(3,3- ジメチル-2- ノルボルニリデン)-3-ペンタン-2- オン、2,4,6-トリス[4-(2-エチルヘキシルオキシカルボニル) アニリノ]1,3,5- トリアジン等の、一般的に紫外線吸収剤として分類されている紫外線遮蔽剤を含有する外用組成物を、本発明評価方法の被検物として例示することができる。
【0019】
また、二酸化チタン、酸化亜鉛等の金属酸化物に代表される、一般的に紫外線遮断剤として分類されている紫外線遮蔽剤を含有する外用組成物も、本発明評価方法の被検物として例示することができる。
【0020】
本発明評価方法では、皮溝に模した溝が設けられた側に被検物を塗布した、本発明人工皮膚における紫外線の透過度合いを前記被検物の紫外線遮蔽能に関連付けることが必要である。つまり、前記のように被検物を塗布した本発明人工皮膚における紫外線の透過度合いを計測することが必要になる。
【0021】
典型的には、紫外線波長領域(前記した)のうち、企図する範囲の波長領域の紫外線の透過スペクトルを検出することにより、所望する紫外線の透過度合いを計測することができる。かかる計測には、通常公知の手段、例えば、分光光度計(好ましくは積分球が設置されているもの)や、Xeアークソーラーシュミレーターを光源としたマルチ測光検出器等を用いることができる。
【0022】
これらの計測手段により計測された、紫外線透過スペクトルにより、被検物間の紫外線遮蔽性の比較を行ったり、あるいは、その結果に基づきSPFを算出して(例えば、特開平7−167781号公報に記載されたSPFの算出方法による)、紫外線の透過度合いを紫外線遮蔽能に関連付けることが可能である。
【0023】
本発明評価方法を用いることにより、実際の表皮を用いることなく、被検物の紫外線遮蔽効果を的確に評価することが可能となり、人体や動物に対する試験の頻度を著しく減ずることが可能となる。
【0024】
【実施例】
以下、本発明を実施例を用いてさらに具体的に説明するが、かかる実施例により、本発明の範囲が限定されるものではない。また、本実施例における配合量は、特に断わらない限り、配合対象に対する質量%である。
【0025】
A.人工皮膚の素材の検討
本発明人工皮膚に適した素材を選択するために、予備試験を行った。
透過法による素材の検討
本発明人工皮膚の素材の、「厚さ100〜1000μm の薄膜にした際の、波長が450〜280nmの光に対する透過率が10%以上である」という条件を満たす素材を検索するために、以下の薄膜の、紫外線領域における透過率を求めた。
【0026】
1)ポリカーボネイト(厚さ:180μm )
2)6−ナイロン(厚さ:500μm )
3)ポリプロピレン(厚さ:1000μm 、750μm )
4)ポリエチレン(厚さ:1000μm )
紫外線透過率の測定は、積分球を設置した分光光度計(U3410:日立製作所製)を用いて行った。
【0027】
その結果を、第1図〔横軸に照射光の波長(nm)、縦軸に透過率(%)をとったグラフである〕に示す。
この第1図に示す結果から、6−ナイロンとポリプロピレンは、「厚さ100〜1000μm の薄膜にした際の、波長が450〜280nmの光に対する透過率が10%以上である」という条件を満たし、紫外線の透過性という観点からは、本発明人工皮膚の素材として好ましいことが明らかになった。
【0028】
収着性の検討
本発明人工皮膚の素材の選択要素として、紫外線の透過性の他に、紫外線遮蔽剤の収着性が挙げられる。皮膚は、紫外線遮蔽剤をほとんど収着せず、人工皮膚の素材としても、かかる収着が認められない素材を選択することが好ましい。また、紫外線遮蔽剤が人工皮膚上に収着されると、紫外線遮蔽剤の紫外線遮蔽効果が過大に評価される傾向が強くなる。
【0029】
試験は、紫外線遮蔽剤(オクチルメトキシシンナメート):液状シリコーン油(デカメチルシクロペンタシロキサン):エステル油(テトラ2−エチルヘキサン酸ペンタエリスリット)=20:30:30(質量比)とした、紫外線遮蔽剤溶液を調製し、6−ナイロンとポリプロピレンの薄膜(共に厚さは500μm )を半日間漬け置きした後、溶液から取り出してエタノールで念入りに洗浄した。そして、それぞれの重合体の薄膜の、紫外線遮蔽剤処理の前後における紫外線透過率を、上記の積分球付き分光光度計で測定した。
【0030】
その結果を、第2図〔横軸に照射光の波長(nm)、縦軸に吸光度をとったグラフである〕に示す。
この第2図に示す結果から、ポリプロピレンは、特にUVB領域での吸光度が、上記の処理の前後で異なることが判明した(処理後の方が、吸光度が大きい)。これは、UVB吸収剤であるオクチルメトキシシンナメートが、上記の浸漬処理により、ポリプロピレン膜上に収着されて残存されていた故であることは明らかである。これに対して、6−ナイロンの薄膜では、全測定領域において、吸光度には殆ど差異は認められなかった。これは、6−ナイロン薄膜上には、オクチルメトキシシンナメートは、殆ど収着されなかったことを示している。
【0031】
この結果から、本発明人工皮膚の素材としては、ナイロン類、とりわけ6−ナイロンが好ましいことが明らかになった。
B.人工皮膚の製造
上記の試験の結果により、本発明人工皮膚の素材を6−ナイロンとして、厚さ500μm の薄膜の片面上に、ヒトの皮膚表面の形状(皮溝の深さ:50〜100μm 、皮溝の幅:100μm 前後、皮溝の頻度:1〜2本/mm)と、皮膚外用剤塗布時に皮溝が広がることを考慮し、以下((1)〜(7))の内容の溝構造を、カッターによる切削を行うことにより設けた。さらに、非皮溝部分の凹凸を、ブラスト処理(微小ガラスビーズを高速でぶつける処理のこと)により設けた。
【0032】
(1)溝の短手方向における縦断面がV字型である。
(2)溝角度が、105°である。
(3)溝の深さが、76μm である。
(4)溝の幅が、200μm である。
(5)溝頻度縦方向が、1本/mmである。
(6)溝頻度横方向が、0.5本/mmである。
(7)溝頻度斜め方向が、0.5本/mmである。
【0033】
このようにして、製造した本発明人工皮膚の形状を、第3図(1)に示した。また、比較品として、市販の多孔性テープ(トランスポアTMサージカルテープ:3Mヘルスケア社製)の形状を第3図(2)に示した。第3図(1)により、この本発明人工皮膚が、皮膚表面の形状に類似していることがよくわかる。これに対し、第3図(2)の多孔性テープは、余り似ているとはいえず、現実の皮膚との間の再現性に問題があることが予想される。また、多孔性テープのポア(小孔)により、紫外線遮蔽剤を含む被検物が漏出してしまうことや、接着剤層への紫外線遮蔽剤の浸透も予想され、これらの要素も、上記再現性における問題を大きくすることとなることが考えられる。
【0034】
C.本発明評価方法
(1)本発明人工皮膚として、上記Bにおいて記載した、第3図(1)に示されている人工皮膚を用い、比較品として、第3図(2)に示した多孔性テープ(トランスポアTMサージカルテープ:3Mヘルスケア社製)を用いて、本発明評価方法の有用性を評価した。
【0035】
紫外線遮蔽効果を検討する対象となる試料として、常法により、以下の処方のW/O型のサンスクリーン剤を用意した〔第1表のSPF以外の数字は、配合量(サンスクリーン剤に対する質量%)である〕。
【0036】
<サンスクリーン剤の処方>
配合成分 配合量(質量%)
精製水 38.5
1,3−ブタンジオール 5.0
スクワラン 残 量
グリセリンジイソステアレート 3.0
有機変性粘土鉱物 1.5
紫外線遮蔽剤(第1表A〜Fの内容) 第1表参照
(表内の数字(なお、適量の防腐剤と香料を添加した)
【0037】
【表1】
【0038】
これらのサンスクリーン剤を、試験対象となる人工皮膚の凹凸表面側に、2mg/cm2の割合で塗布し、上述したA(実施例の欄)の要領で、紫外線透過スペクトルを測定した。その結果を、in vitro SPF値として、公知のSPF計算方法〔特開平7−167781号公報の実施例1(前記公報の段落番号0024〜0037)〕に従って算出した。
【0039】
この結果と、現在一般的にSPF値の試験として行われている、人を用いた、in vivo SPF測定を行っている試験機関に依頼して測定したSPF値(第1表の最下行)とを比較して、本発明評価方法の有用性を検討した。
【0040】
その結果を第4図(横軸:一般的に算出されたSPF値、縦軸:本発明評価方法により算出されたSPF値)に示す。
本発明人工皮膚においては、縦軸のSPF値と横軸のSPF値は、ほぼ相関し、この人工皮膚を用いた本発明評価方法は、信頼性が高いことが証明された。これに対して、多孔性テープを用いた場合には、結果に大きなばらつきが認められ、信頼性ある評価基準としては用い難いことが判明した。
【0041】
(2)サンスクリーン剤を塗布した人工皮膚の紫外線遮蔽効果の経時的な検討次に、照射する紫外線の波長をUVB領域に固定して、サンスクリーン剤を塗布した人工皮膚の、紫外線に対する吸光度の経時的変化を検討して、人工皮膚が紫外線遮蔽剤を収着すること等による実質的な影響を検討した。
【0042】
紫外線遮蔽効果を検討する対象となる試料として、以下のW/O乳化型のサンスクリーン剤を用意した。
配合成分 配合量(質量%)
(A成分)
オクチルメトキシンナメート 2.0
デカメチルシクロペンタシロキサン 30.5
トリメチルシロキシケイ酸 2.5
ジメチルシリコン 5.0
POEメチルポリシロキサンコポリマー 1.0
ジメチルジステアリルアンモニウムヘクトライト 0.7
(B成分)
1,3−ブタンジオール 5.0
精製水 残 余
<製法>
A成分をホモミキサーで攪拌しながら、B成分を徐々に添加することによって、W/O型のサンスクリーン剤を調製した。
【0043】
このサンスクリーン剤を、試験対象となる人工皮膚〔第3図(1)に示されている人工皮膚と、第3図(2)に示した多孔性テープ〕の凹凸表面側に、2mg/cm2の割合で塗布し、経時的に310nmにおける吸光度を、上述のA(実施例の欄)の要領で測定した。
【0044】
その結果を、第5図〔横軸が塗布後の経過時間を示し、縦軸が310nmにおける吸光度を示すグラフである〕に示す。
これにより、本発明人工皮膚における、サンスクリーン剤の紫外線遮蔽効果が安定しているのに対し、多孔性テープは、経時的に紫外線遮蔽効果が増大していることがわかる。このサンスクリーン剤または紫外線遮蔽剤(オクチルメトキシシンナメート)自体は、そのままの状態で、経時的に紫外線遮蔽効果が増大することはあり得ないから、多孔性テープにおける紫外線遮蔽効果の増大は、サンスクリーン剤がテープ表面に収着した結果であると考えられる。よって、多孔性テープにおけるサンスクリーン剤または紫外線遮蔽剤の紫外線遮蔽効果は過大となっており、多孔性テープをin vitroの紫外線遮蔽効果の試験に用いることは、リスクが高いことが判明した。本発明人工皮膚は、このようなサンスクリーン剤または紫外線遮蔽剤の収着がほとんど認められず、in vitroの紫外線遮蔽効果の試験において非常に好ましいこと、すなわち、本発明評価方法の有用性が明らかとなった。
【0045】
【発明の効果】
本発明により、可能な限り、紫外線遮蔽剤に対して皮膚に近い性質を有する形態の人工皮膚と、これを用いた紫外線遮蔽効果のin vitroの評価方法が提供された。
【図面の簡単な説明】
【図1】透過法により、本発明人工皮膚に適した素材の検討を行った結果を示す図面である。
【図2】本発明人工皮膚に適した素材の検討を、サンスクリーン剤の収着性を基に行った結果を示す図面である。
【図3】本発明人工皮膚と代表的な比較品の形態を示した図面である。
【図4】本発明人工皮膚を用いて算出したSPF値が、in vivo で算出されるSPF値と相関することを示した図面である。
【図5】サンスクリーン剤を塗布した人工皮膚の紫外線防御効果を経時的に検討した結果を示した図面である。
Claims (5)
- 下記(1)〜(3)の特徴を有する、紫外線遮蔽効果のin vitro評価用の人工皮膚:
(1)素材はナイロンからなる。
(2)厚さが100〜1000μm である。
(3)皮溝に模した溝が、片面の表面に設けられている。 - 皮溝に模した溝が以下の特徴を有する、請求項1記載の人工皮膚:
(1)溝の短手方向における縦断面がV字型である。
(2)溝角度が、60〜150°である。
(3)溝の深さが、30〜100μm である。
(4)溝の幅が、50〜300μm である。
(5)溝頻度縦横方向が、0.5〜2.0本/mmである。
(6)溝頻度斜め方向が、0.5〜2.0本/mmである。 - 人工皮膚の皮溝に模した溝が設けられた表面側で皮溝が設けられていない部分に凹凸が設けられている、請求項1又は2記載の人工皮膚。
- 人工皮膚の皮溝に模した溝が設けられた表面側で皮溝が設けられていない部分の凹凸が、ブラスト処理により設けられた凹凸である、請求項3記載の人工皮膚。
- 皮溝に模した溝が設けられた側に被検物を塗布した、請求項1ないし4のいずれかの請求項記載の人工皮膚における紫外線の透過度合いを計測して、前記被検物の紫外線遮蔽能を評価する、紫外線遮蔽効果の評価方法。
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