JP4372459B2 - キャップ - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
この発明は、主に飲料用等の容器として使用されるボトルの口金部に被着されるキャップに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
このようなボトルとしては、例えば、純AlやAl合金製の金属材料により形成されたボトル缶や、ガラス等により形成されたボトル(瓶)がある。
一般に、前者のボトルとしてのボトル缶は、アルミニウムやアルミニウム合金製の金属材料板を絞り加工(Drawing)と、次いで行われるしごき加工(Ironing)とによって成形される、一般にDI缶と呼ばれている缶の上部に、口金部が形成されて製造されている。このボトル缶に内容物を充填した後、ボトル缶の口金部にキャップが被着され、キャップ付ボトル缶とされる。
【0003】
この種のボトル缶の口金部は、図10(a)に示すように、雄ねじ部1とカール部2とかぶら部4とを備えている。一方、キャップ3は、図10(b)に示すように、天面部3aとこの天面部3aの周縁から略垂下した側面部3bとを備え、この側面部3bは、ボトル缶の雄ねじ部1に倣って押圧成形される雌ねじ部5と、この雌ねじ部5の下方に形成された破断部8と、この破断部8の下部に形成されたピルファープルーフ部9とを備えている。この構成において、以下、破断部8より天面部3a側の部分をキャップ本体部という。
【0004】
キャップ3の外径Aは、一般に、28mm,33mm,38mmの三つの規格があり、ボトル缶1の口金部の外径Bは、キャップ3の外径Aよりも小さく形成されている。
【0005】
そして、このように構成されたキャップ3は、ボトル缶の口金部に次のようにして被着され、キャップ付ボトル缶とされる。
すなわち、図10(c)に示すように、キャップ3の雌ねじ部5が口金部の雄ねじ部1に螺合されるとともに、キャップ3の天面部3aの内面に配設されたライナー(図示せず)とカール部2とが密接することでボトル缶の開口部を密封し、さらに、キャップ3のピルファープルーフ部9が、かぶら部4の下方を巻き込むように折り曲げられ、キャップ付ボトル缶とされる。この際、例えば、38mmの外径からなるキャップ3がボトル缶の雄ねじ部1に螺合される場合、ねじとして有効に機能する部分の巻数である有効ねじ巻数は、1.5〜1.7巻程度に形成される。
【0006】
キャップ3の破断部8は、キャップ本体部とピルファープルーフ部9とを連結するブリッジ8bと、周方向に連続して設けられた複数の切り込みであるスコア8aとを備えている。このキャップ3は、キャップ付ボトル缶の開栓時にボトル缶に対して回転されると、ボトル缶の口金部に形成された雄ねじ部1のリードに従いキャップ3が上方に移動される一方で、ピルファープルーフ部9がボトル缶の口金部のかぶら部4に係止されているので、ブリッジ8aが破断されるようになっている。このようにして、キャップ3が破断部8を境にして分離され、この破断部8より上方の部分,すなわちキャップ本体部がボトル缶から離脱され、ピルファープルーフ部9がボトル缶の口金部に残され、キャップ付ボトル缶は開栓されるようになっている。
【0007】
ところで、この種のキャップ付ボトル缶の内容物が天然果汁を含む果汁飲料である場合には、キャップ3を一旦開栓し、この内容物を大気と接触させた後に、これらを室温以上の温度下に長時間置くと、この内容物が発酵することになる。この際、キャップ3をボトル缶にリキャップした状態においては、缶内圧が上昇し、さらに前記内容物の発酵が進行すると、これに伴い、缶内圧は上昇し続けることになる。
【0008】
このような缶内圧の上昇により、キャップ天面部3aの内面には、キャップ付ボトル缶の軸線方向上方へ向かう力が作用し、これにより、キャップ3の雌ねじ部5は、前記軸線方向上方かつボトル缶口金部の雄ねじ部1の傾斜方向に沿って移動することになる。すなわち、キャップ3は、側面部3bが拡径するように変形し、さらに、缶内圧値が所定値以上となった場合には、キャップ3の雌ねじ部5が、口金部の雄ねじ部1のねじ山を乗越えることになり、キャップ3がボトル缶の口金部から外れるという問題があった。
【0009】
このような問題を解決するための手段として、缶内圧が過剰に上昇すると、この内圧を開放させる開放路がキャップに形成される構成が数多く開示されている。例えば、下記特許文献1には、ライナーに切欠きを形成しておき、缶内圧が過剰に上昇すると、このライナーが少なくとも部分的に変形して前記切欠きを通る内圧開放路が形成され、この開放路を介して缶内圧を開放する構成が開示されている。
しかしながら、この従来のキャップにおいては、缶内圧が所定値を超過したときに初めて、前記開放路が形成され缶内圧が開放される構成とすることが困難であるという問題があった。すなわち、缶内圧が前記所定値になる前に前記開放路が形成されたり、逆に、前記所定値になっても前記開放路が形成されない場合があった。
【0010】
また、下記特許文献2には、キャップ側面部の上端部近傍に、周方向に沿って、瓶内圧が破瓶圧に達する前に強化ブリッジを残し破断する線状の弱化部が形成され、この弱化部は、スコアとブリッジとを備え、これらが周方向に渡って交互に配設された構成のキャップが開示されている。
しかしながら、この従来のキャップにおいては、キャップと瓶口部との密封性を確保するために、キャップ天面部の周縁部を絞り成形する際に、前記弱化部のスコアが潰される場合があり、このため、瓶内圧が所定値を超過したときに初めて、この弱化部が破断される構成を高精度に実現することが困難であるという問題があった。
【0011】
【特許文献1】
特公平04−40268号公報
【特許文献2】
実公平07−25318号公報
【0012】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、このような事情を考慮してなされたもので、ボトル内圧が異常に上昇した際、キャップがボトルの口金部から外れることを確実に抑制することができるとともに、開放する内圧値を高精度に設定することができるキャップを提供することを目的とする。
【0013】
【課題を解決するための手段】
前記課題を解決して、このような目的を達成するために、本発明は以下の手段を提案している。
請求項1に係る発明は、天面部と該天面部の周縁から略垂下してなる側面部とを備え、ボトルの口金部に被着されるキャップであって、前記側面部に、その周方向に延在して上面壁と下面壁を備えるとともに、その延在方向中央部に、前記上面壁と前記下面壁とを架橋するブリッジを備えたブリッジ付ベンドホールが少なくとも一つ形成され、前記ブリッジ付ベントホールは、前記側面部の周長の4%以上15%以下の長さで形成され、前記ブリッジの前記上面壁及び前記下面壁における幅が、前記ブリッジ付ベントホールの延在方向長さの2%以上8%以下とされていることを特徴とする。
【0014】
この発明に係るキャップによれば、前記側面部に、前記ベントホールが前記長さで形成されているので、ボトル口金部にキャップが被着された構成において、ボトル内圧が上昇した場合には、次のような作用を奏することになる。
すなわち、キャップ天面部の表面において、前記ベントホールが形成されている周縁部からキャップの軸芯に向かった領域が、この天面部表面における他部より先行して膨出することになる。換言すれば、キャップに膨出容易部を具備させることができる。
従って、ボトル内圧が所定値を超過した際、まず、キャップ天面部における前記膨出容易部が前記軸線方向上方へ膨出して前記ベントホールが上方へ開くことになる。そして、この部分におけるシール面圧が低下することにより、ボトル内圧が開放され易くなり、この面圧低下部分と前記ベントホールを介してボトル内圧が外部へ開放されることになる、または、前記膨出容易部におけるシール部材としてのライナーとボトル口金部の上端部との間に間隙が生ずることにより、この間隙と前記ベントホールを介してボトル内圧が外部へ開放されることになる。すなわち、ボトル内圧が所定値を超過すると、前記膨出容易部におけるシール面圧を、前記他部におけるシール面圧より確実に低下させることができ、または、前記膨出容易部におけるライナーとボトル口金部の上端部との間に間隙を生じさせることができ、これにより、ボトル内圧が所定値を超過したときに初めて、ボトル内圧を開放できる構成を確実に実現することができる。
【0015】
ここで、前記キャップは、形成された後にホッパー内に投入され、このホッパーから逐次的に取出されて、梱包される工程を経ることになるが、この場合、次のような不具合が発生することが想定される。
すなわち、前記ベントホールは前記長さで形成されているので、キャップ側面部の外表面における前記ベントホールの開口周縁部は他部より強度が低下しており、さらに、ホッパー内に投入されたキャップは取出されるまでの間に、キャップ同士が互いに衝突し合うことになるため、前記開口周縁部に凹み、または、前記開口部に潰れが生じ易く、前記ベントホールの開口部が大形となる、または、缶内圧が開放され始める内圧値を高精度にすることが困難になることが想定される。さらに、このキャップをボトル口金部に被着する際には、このボトルの内容物の密封性を確保するため、キャップをボトル口金部に被せた状態で、キャップ天面部の周縁部を径方向内方かつ軸線方向下方に押圧することにより、この周縁部に段差部を形成するが、この際に、前記開口周縁部がさらに大形となったり、前記開口部がさらに潰れたりすることが想定される。前記開口部が大形となったキャップにおいては、美観に優れず、また、キャップ開栓時に指が引っ掛かる場合も考えられ、さらに、衛生上も好ましくない。
【0016】
しかしながら、前記ベントホールは、このベントホールを画成する上面壁と下面壁とを架橋するブリッジを備えているので、キャップ同士が前記ホッパー内で衝突する際や、前記段差部を形成する際において、前記ブリッジは、前記凹みや前記潰れの発生に対して抗する補強部としての作用を有することになり、従って、前記凹みや前記潰れの発生を最小限に抑制することができる。
以上により、ボトル内圧が所定値を超過したときに初めて、ボトル内圧を開放することができるとともに、このような構成においても、前記不具合を発生させることなく良好かつ確実にキャップを形成することができるようになる。
【0017】
請求項2に係る発明は、請求項1記載のキャップにおいて、前記ブリッジは、前記上面壁及び前記下面壁から各々、前記上面壁と前記下面壁との間の略中央部に向かうに従い漸次幅狭になるように直線状に延在して形成されていることを特徴とする。
【0018】
この発明に係るキャップによれば、前記開口周縁部に凹みや、前記開口部の潰れが発生することを最小限に抑制することができるとともに、このような構成においても、ボトル内圧が所定値を超過した際、前記膨出容易部を、キャップ天面部における他部より先行させて確実に膨出変形させることができるようになる。すなわち、前記ベントホールにブリッジを形成したことにより、前記凹みや前記潰れの発生を最小限に抑制することができる反面、前記膨出容易部を膨出変形させるのに要するボトル内圧値が増大し、この膨出容易部をキャップ天面部表面における他部より先行させて膨出変形させ難くなることが想定される。
【0019】
しかしながら、このキャップにおいては、ブリッジが前述のように形成されているので、ボトル内圧の上昇によりキャップ天面部を膨出変形させようとする力が作用した際、ブリッジの上面壁と下面壁との間の略中央部が、応力集中部になるとともに、この部分におけるブリッジの幅が最も狭くなる。従って、キャップ天面部に、これを前記膨出変形させようとする力が作用すると、ブリッジのうち、前記略中央部における部分が他部より先立って確実に破断することになり、すなわち、このブリッジに、前記膨出変形させようとする力によって容易に破断する、いわば破断容易部を具備させることができる。
これにより、前記凹みや前記潰れ発生を最小限に抑制することができるとともに、このような構成においても、前記膨出容易部を膨出変形させるのに要するボトル内圧値の上昇を最小限に抑制することができる。
【0020】
請求項3に係る発明は、請求項1または2に記載のキャップにおいて、重量%でFe:0.05%以上0.35%以下、Mn:0.01%以上0.10%以下、Mg:1.5%以上2.1%以下を含有し、Crを0.10%以下に規制し、残部がAl及び不可避添加物からなる組成を有するアルミニウム合金の圧延材により形成されていることを特徴とする。
【0021】
請求項4に係る発明は、請求項3記載のキャップにおいて、前記圧延材は、溶製してスラブに鋳造した後、これに熱間圧延と第1冷間圧延とをこの順に施し、その後、300℃以上590℃以下の温度下で第1中間焼鈍を施し、そして、第2冷間圧延を施した後、300℃以上590℃以下の温度下で第2中間焼鈍を施し、その後、最終冷間圧延率を50%より大きく80%以下として第2冷間圧延を施した後、これに160℃以上260°以下の温度下で最終調質焼鈍を施すことにより形成された構成であることを特徴とする。
【0022】
これらの発明に係るキャップによれば、5000系のAl材において、低い耳率を維持しつつ、引張強度の向上を図ることができる。従って、このキャップが被着されたボトルの内圧が過剰に上昇した場合においても、この内圧により、キャップがボトルから外れることを抑制することができるようになり、ボトル内圧が所定値を超過した際、まず、前記ブリッジを破断させることができるとともに、前記膨出容易部を膨出させることができる。これにより、ボトル内圧が所定値を超過したときに初めて、ボトル内圧を開放できる構成を確実に実現することができる。
【0023】
請求項5に係る発明は、請求項1または2に記載のキャップにおいて、重量%でSi:0.01%以上0.60%以下、Fe:0.1%以上0.7%以下、Cu:0.01%以上0.50%以下、Mn:0.3%以上1.3%以下、Mg:0.1%以上1.4%以下を含有し、残部がAl及び不可避添加物からなる組成を有するアルミニウム合金の圧延材により形成されていることを特徴とする。
【0024】
請求項6に係る発明は、請求項5記載のキャップにおいて、前記圧延材は、溶製してスラブに鋳造した後、これに熱間圧延と第1冷間圧延とをこの順に施し、その後、300℃以上590℃以下の温度下で第1中間焼鈍を施し、そして、第2冷間圧延を施した後、300℃以上590℃以下の温度下で第2中間焼鈍を施し、その後、最終冷間圧延率を30%より大きく80%以下として第2冷間圧延を施した後、これに150℃以上250°以下の温度下で最終調質焼鈍を施すことにより形成された構成であることを特徴とする。
【0025】
これらの発明に係るキャップによれば、3000系のAl材において、低い耳率を維持しつつ、引張強度の向上を図ることができる。従って、このキャップが被着されたボトルの内圧が過剰に上昇した場合においても、この内圧により、キャップがボトルから外れることを抑制することができるようになり、ボトル内圧が所定値を超過した際、まず、前記ブリッジを破断させることができるとともに、前記膨出容易部を膨出させることができる。これにより、ボトル内圧が所定値を超過したときに初めて、ボトル内圧を開放できる構成を確実に実現することができる。
【0026】
請求項7に係る発明は、請求項3から6のいずれかに記載のキャップにおいて、前記圧延材は、引張強度が210MPa以上300MPa以下とされていることを特徴とする。
【0027】
この発明に係るキャップによれば、前記圧延材は引張強度が210MPa以上300MPa以下とされているので、キャップにボトル口金部への必要十分な嵌合強度を確実に具備させることができる。これにより、ボトル内圧の上昇により、キャップがボトル口金部から外れることを確実に抑制することができる。
従って、ボトル内圧が上昇して所定値を超過した際、この内圧により、キャップはボトル口金部から外れず、まず、キャップ天面部の略全体が前記軸線方向上方へ膨出するとともに、前記ブリッジが破断し、これにより、キャップ天面部における前記膨出容易部が、この天面部における他部より大きく膨出して前記ベントホールが上方へ開くことになる。そして、この部分におけるシール面圧が低下することにより、ボトル内圧が開放され易くなり、この面圧低下部分と前記ベントホールを介してボトル内圧が外部へ開放される、または、前記膨出容易部におけるシール部材としてのライナーとボトル口金部の上端部との間に間隙が生ずることになる。
さらに、前記圧延材の引張強度を高めたことにより、前記ベントホールが上方へ開く際の変形態様がキャップ毎にばらつくことも有効に抑制される。
以上により、ボトル内圧が前記所定値を超過したときに初めて、ボトル内圧が開放され始める構成を容易かつ高精度に実現することができる。
【0028】
【発明の実施の形態】
以下、本発明に係るキャップの一実施形態を、図1から図9を参照しながら説明する。
【0029】
キャップ10は、図1に示すように、Al合金等からなる圧延材により形成され、天面部11とこの天面部11の周縁から略垂下した側面部12とから概略構成されている。
このキャップ10は、5000系のAl材または3000系のAl材により形成されている。
キャップ10の素材が5000系のAl材である場合には、重量%でFe:0.05%以上0.35%以下、Mn:0.01%以上0.10%以下、Mg:1.5%以上2.1%以下を含有し、Crを0.10%以下に規制し、残部がAl及び不可避添加物からなる組成を有している。
また、キャップ10の素材が3000系のAl材である場合には、重量%でSi:0.01%以上0.60%以下、Fe:0.1%以上0.7%以下、Cu:0.01%以上0.50%以下、Mn:0.3%以上1.3%以下、Mg:0.1%以上1.4%以下を含有し、残部がAl及び不可避添加物からなる組成を有している。
【0030】
これらの組成を有する素材としての圧延材は、引張強度が210MPa以上300MPa以下とされている。また、この圧延材は、JIS規格Z2244に規定された微小ビッカース硬さ試験方法により試験力0.98Nで測定した場合の硬さHv0.1が、68以上94以下とされ、0.2%耐力は、190MPa以上265MPa以下とされている。また、キャップ10は、板厚を0.22〜0.30mmとし、外径を28〜38mmとして形成されている。
【0031】
ここで、このような圧延材を形成することができる実施例について説明する。
まず、圧延材を5000系のAl材としたときの実施例について説明する。
前述した組成において、具体的には表1に示す組成のAl材を溶製し、スラブに鋳造した後、熱間圧延で板厚を6mmとし、次に、冷間圧延で板厚を2.5mmとした後、これを連続焼鈍炉で450℃の温度下で一回目の中間焼鈍を行った。ここで、中間焼鈍とは、バッチ式の焼鈍の場合、300℃以上450℃以下の温度下で1時間以上10時間以下焼鈍処理することをいい、急速加熱方式による焼鈍の場合、400℃以上590℃以下の温度下で1秒以上60秒以下焼鈍処理することをいう。
【0032】
そして、前記一回目の中間焼鈍を経た後に、再度冷間圧延を行い板厚を例えば0.6mmとした後、これを前記連続焼鈍炉で前述と同様にして二回目の中間焼鈍を行い、その後、これを最終板厚0.25mmまで冷間圧延した。そして、この板厚0.25mmの板材に表1に示す温度下で最終調質焼鈍を施し、前記圧延材を形成した。ここで、最終調質焼鈍とは、圧延材を5000系のAl材とした場合においては、160℃以上260℃以下,好ましくは200℃以上230℃以下で焼鈍処理することをいい、バッチ式の焼鈍の場合では1時間以上10時間以下、急速加熱方式の場合では1秒以上60秒以下で焼鈍処理することをいう。以上により形成された圧延材を以下、「高強度材(5000系Al材)」という。
【0033】
次に、以上により形成された高強度材(5000系Al材)の、引張強度,伸び率,及び耳率を測定した。ここで、耳率とは、円筒状に絞ったカップの周縁部に山部および谷部(これらの凹凸を耳と呼ぶ)が生じた際の、カップ高さに対する耳高さの割合のことをいい、カップの耳率は、山部の平均高さをh1、谷部の平均高さをh2、カップの平均高さをh3とした場合、(h1−h2)/h3×100により算出されるものである。これらの結果を表1に示す。この表において、最終冷間圧延率とは、前述した工程において、二回目の中間焼鈍を経た後に、冷間圧延により、この板厚を最終板厚0.25mmにする際における板厚の変化率のことをいう。例えば、板厚0.6mmから最終板厚0.25mmとすると、最終冷間圧延率は58%となる。なお、この最終冷間圧延率は、圧延材が5000系のAl材である場合、50%より大きく80%以下にすると、低い耳率を維持しながら、引張強度の向上を図ることができる。
【0034】
【表1】
【0035】
この結果から、圧延材の引張強度は210MPa以上300MPa以下であり、より詳細には、215MPa以上266MPa以下であり、また、伸び率は3.0%以上となっており、耳率は3.5%以下となっていることが確認できた。
【0036】
次に、圧延材を3000系のAl材としたときの実施例について説明する。
前述した組成において、具体的には表2に示す組成のAl材を溶製し、スラブに鋳造した後、熱間圧延で板厚を6mmとし、次に、冷間圧延で板厚を2.5mmとした後、これを連続焼鈍炉で460℃の温度下で一回目の中間焼鈍を行った。そして、再度冷間圧延を行い板厚を0.50mmとした後、これを前記連続焼鈍炉で前述と同様にして二回目の中間焼鈍を行い、その後、これを最終板厚0.25mmまで冷間圧延した。
【0037】
そして、この板厚0.25mmの板材に表2に示す温度下で最終調質焼鈍を施し、前記圧延材を形成した。ここで、最終調質焼鈍とは、圧延材を3000系のAl材とした場合においては、150℃以上250℃以下,好ましくは190℃以上230℃以下で焼鈍することをいい、バッチ式の焼鈍の場合では1時間以上10時間以下、急速加熱方式の場合では1秒以上60秒以下で焼鈍処理することをいう。なお、最終冷間圧延率は、圧延材が3000系のAl材である場合、30%より大きく80%以下にすると、低い耳率を維持しながら、引張強度の向上を図ることができる。
以上により形成された圧延材を以下、「高強度材(3000系Al材)」という。
【0038】
次に、以上により形成された高強度材(3000系Al材)の、引張強度,伸び率,及び耳率を測定した。これらの結果を表2に示す。
【0039】
【表2】
【0040】
この結果から、圧延材の引張強度は210MPa以上300MPa以下であり、より詳細には、216MPa以上260MPa以下であり、また、伸び率は3.0%以上となっており、耳率は3.5%以下となっていることが確認できた。
【0041】
以上の圧延材により形成されたキャップ10は、図1(a)に示すように、キャップ側面部12に、上端部に全周に亘って複数の凹凸形状が形成されたナール13と、このナール13の下端に連続し当該ナール13より小径に形成されたグルーブ14と、このグルーブ14の下端に連続し当該グルーブ14より大径に形成されたネジ部形成予定部15と、このネジ部形成予定部15の下端に連続し当該ネジ部形成予定部15より大径に形成されたビード16と、このビード16の上下方向略中央部に周方向に所定の間隙を有し複数形成され当該側面部12を貫通するスコア−17と、ビード16の下端に連続し下方に向かうに従い漸次拡径したピルファープルーフ部18とを備えている。そして、天面部11の内面にライナー19が配設されている。
【0042】
ここで、キャップ側面部12のナール13は、周方向に所定の間隙を有し複数形成された小形の凹部13aと、周方向に延在して形成された1つの大形の凹部13bとを備え、これら小形の凹部13a同士の間、及び大形の凹部13bと小形の凹部13aとの間に、凸部13cが配設された構成となっている。そして、このナール13の上部に、図1,図2に示すように、この側面部12を貫通し、周方向に所定の間隙を有し複数形成された第1のベントホール20と、周方向に延在して形成された第2のベントホール21とが形成されている。
第1のベントホール20は、周方向に形成された短い切込み形状であって、ナール13の小形の凹部13aの上部に幅1〜2mm程度で形成されている。
【0043】
第2のベントホール21は、キャップ10の外表面周長、例えばナール13を構成する各凸部13cにおける径方向外方に最も突出した部分同士を軸芯O回りに順次結んだ長さ(以下、単に「周長」という)の4%以上15%以下、より好ましくは6%以上10%以下で、ナール13の大形の凹部13bの上部に形成されている。本実施形態においては、キャップ10の外表面周長が約119mmで、第2のベントホール21の長さが10mmとされている。
【0044】
ここで、第2のベントホール21は、図1(b)に示すように、この延在方向中央部に、このベントホール21を画成する上面壁21aと下面壁21bとを架橋するブリッジ23を備えている。このブリッジ23は、上面壁21a及び下面壁21bから各々、これら上面壁21aと下面壁21bとの間の略中央部に向かうに従い漸次幅狭になるように直線状に延在して形成されている。すなわち、ブリッジ23は、上面壁21aと下面壁21bとの間の略中央部において、このブリッジ23をこの幅方向に切り込むような角部23aを有し、この部分がブリッジ23のうち最も幅が狭くなっている。
【0045】
具体的には、ブリッジ23の上面壁21a及び下面壁21bにおける幅Bは、第2のベントホール21の長さの2%以上8%以下で形成され、ブリッジ23の角部23aの頂点同士の間の距離、すなわち図1(b)に示す幅Cは、第2のベントホール21の長さの0.5%以上6%以下で形成されている。
【0046】
このブリッジ23は、キャップ天面部11にこの上方から下方に向かって作用する力により、キャップ側面部12における第2のベントホール21の開口部が潰れることを最小限に抑制し、また、キャップ側面部12にこの外方から径方向内方に向かって作用する力により、キャップ側面部12における前記開口部の周縁部が凹み、この開口部が大形となることを最小限に抑制するようになっている。
【0047】
以上のように構成されたキャップ10がボトル缶の口金部に被着されたキャップ付ボトル缶において、この缶内圧が上昇し天面部11を上方へ膨出させようとする力が作用すると、ブリッジ23の前記略中央部は角部23aとされているので、この略中央部が応力集中部となり、さらに、この略中央部における幅が最も狭くなっているので、ブリッジ23のうち前記略中央部が他部より先立って確実に破断されるようになっている。すなわち、ブリッジ23は破断容易部を備えた構成となっている。
【0048】
さらに、ブリッジ23は、第2のベントホール21の長さに対して前記範囲の幅で形成されているので、第2のベントホール21がブリッジ23を備えているにも拘わらず、図2に示す、天面部11の表面において、第2のベントホール21が形成されている周縁部から軸芯Oに向かった領域(以下、「膨出容易部11b」という)における前記力に抗する耐力は、この領域を除く他部における前記耐力と比べ小さくなる。これにより、缶内圧が上昇すると、天面部11の表面において、膨出容易部11bは、この膨出容易部11bを除く他部より先行して膨出することになる。
【0049】
ここで、キャップ天面部11の内面に配設されたライナー19は、図2に示すように、その周縁部に、キャップ側面部12の周方向における第2のベントホール21の形成位置と対応して、その周縁に開口する平面視矩形状の切欠き部19aが形成されている。すなわち、切欠き部19aは、第2のベントホール21の延在方向における略中央部に向かって開口するように、ライナー19の周縁部に形成されている。これにより、キャップ付ボトル缶において、この缶内圧が上昇して所定値を超過すると、キャップ10の膨出容易部11bが膨出変形して第2のベントホール21が上方へ開き、この部分におけるライナー19とボトル缶上端部との間の面圧が低下すると、この面圧低下部分のうち、まず、切欠き部19aの形成位置からボトル缶内圧が開放され始めるようになっている。
【0050】
次に、キャップ10が被着されるボトル缶1について、図3,図4に従い説明する。
ボトル缶50は、大径の胴部51と、この胴部51の上端から上方に向かうに従い漸次縮径して形成されたテーパ部52と、このテーパ部52の上端から上方に延在して形成された小径の口金部53とを備えている。口金部53は、その下端部に径方向に膨出して形成されたかぶら部54と、このかぶら部54の上方かつ当該口金部53の軸方向略中央部に形成された雄ねじ部55と、口金部53の上端縁を径方向外方へ折り曲げて形成されたカール部56とを備えている。なお、このカール部56は、スロット加工されることで潰され、これにより若干のアールを有する突出部が形成される。
【0051】
この実施形態では、ボトル缶50の口金部53に形成された雄ねじ部55の有効ねじ巻数は2.2巻とされている。ここで、有効ねじ巻数とは、図4に示す有効ねじ部Xの巻数のことをいう。
図4は、雄ねじ部55の上面図を簡略的に示した説明図であり、この図において、Y,Zが不完全ねじ部、Wが完全ねじ部で、Oがキャップ付ボトル缶の軸芯である。雄ねじ部55は、山部55aと谷部55bとから形成されており、口金部53の上端側に始まり側の不完全ねじ部Yが形成され、口金部53の基端側に終わり側の不完全ねじ部Zが形成されている。不完全ねじ部Yと不完全ねじ部Zとの間の完全ねじ部Wは、山部55aと谷部55bがそれぞれ規定の外径で形成されている。不完全ねじ部Yは、その端点Y1から完全ねじ部Wの始点W1まで徐々にねじ山が拡径されており、不完全ねじ部Zは、完全ねじ部Wの終点W2からその端点Z2まで徐々にねじ谷が拡径されている。
【0052】
有効ねじ部Xは、不完全ねじ部Yの中間の有効ねじ始点X1から、完全ねじ部Wすべてを含み、不完全ねじ部Zの中間の有効ねじ終点X2までのねじ部である。有効ねじ始点X1は、図4に示す雄ねじ部55の上面視における、端点Y1と軸芯Oと始点W1で作られる不完全ねじ部Yの狭角∠αの2等分線L1と不完全ねじ部Yとの交点であり、有効ねじ終点X2は、終点W2と軸芯Oと端点Z2で作られる不完全ねじ部Zの狭角∠βの2等分線L2と不完全ねじ部Zの交点である。この有効ねじ部Xにおける、山部55aの頂部と谷部55bの底部との距離、すなわちねじ山高さは、従来より高い0.61mm以上0.78mm以下、より好ましくは0.66mm以上0.78mm以下で形成されている。
【0053】
このように形成された雄ねじ部55は最大外径が28〜38mmとされ、口金部53は肉厚が0.25〜0.4mmとされている。また、雄ねじ部55は、1インチ当たり7山以上8山以下のネジピッチで、有効ねじ巻数が2.2巻とされ口金部53に形成されている。
【0054】
このように構成されたボトル缶50は、次のようにして口金部53にキャップ10が被着され、キャップ付ボトル缶が形成される。
まず、ボトル缶50に内容物等を充填した後、図5に示すように、このボトル缶口金部53にキャップ10を被せる。この際、キャップ10のピルファープルーフ部18は下方へ向かうに従い漸次拡径しているので、口金部53に容易かつ確実に被せられることになる。
【0055】
その後、図6に示すように、筒状のプレッシャーブロック71と、このプレッシャーブロック71の中央に軸方向に移動可能に設けられたプレッシャーブロックインサート72と、ROローラ73、PPローラ74とを備えたキャッピング装置7を用い、ボトル缶50の口金部53に被せられたキャップ10の天面部11をプレッシャーブロックインサート72が缶底方向に押圧する。この際、プレッシャーブロック71が天面部11の周縁部を缶底方向に押圧しながら所望の深さ及び径方向に絞り加工することで、キャップ10の周縁部に段差部11aを形成する。これにより、カール部56の前記突出部がライナー19に食い込んで高い密封性が得られることになる。
【0056】
この段差部11aを形成するのと略同時に、ROローラ73が口金部53の雄ねじ部55に沿って回転することにより、キャップ10のネジ部形成予定部15に、巻数が2.0巻より多く2.5巻より少ない(本実施形態においては、2.2巻)雌ねじ部22を形成するとともに、PPローラ74がかぶら部54の下部に沿って転動することでピルファープルーフ部18が巻締められ、これによってキャップ10が図7に示すように口金部53に被着され、キャップ付ボトル缶101が形成される。
【0057】
ここで、キャップ10は、口金部53の雄ねじ部55に、図4に示す、ねじとして有効に機能する有効ねじ始点X1と有効ねじ終点X2との間に、有効ねじ巻数が2.2巻で被着されている。この有効ねじ巻数を2.0巻より多く2.5巻より少ない構成とすることにより、キャップ10をボトル缶50にリキャップした後、これを再度開栓する際、これを容易に開栓することができるようになるとともに、キャップ10とボトル缶口金部53との良好な嵌合強度を実現することができる。
【0058】
また、有効ねじ巻数を前記範囲に設定することにより、キャップ付ボトル缶101の、この軸線を含む縦断面視において、ボトル缶50の雄ねじ部55とキャップ10の雌ねじ部22とが噛合った個所を、周方向における全ての部分において軸線方向に2箇所以上配設することができる(図7参照)。
【0059】
また、ボトル缶口金部53の雄ねじ部55における前記ねじ山高さは、前述したように従来より高く形成されているが、キャップ10は、前記圧延材により形成されているので、雌ねじ部22を、雄ねじ部55の前記ねじ山高さに適合させるような深さ(0.58mm以上0.75mm以下)で形成しても、ねじ成形荷重を過度に上昇させることがない上に、キャップ側面部12に破れを生じさせることなく良好に形成することができる。従って、キャップ10とボトル缶50との嵌合強度を、従来のキャップ付ボトル缶における嵌合強度より高くすることができる。
【0060】
そして、このように形成されたキャップ付ボトル缶101においては、キャップ10にナール13が形成されているので、キャップ開栓時に、このキャップ10と把持する手との間の摩擦抵抗を増大させることができ、手を滑らせることなく容易にキャップ10を開栓することができる。また、この際、スコア−17同士を繋ぐ第1のブリッジ17aが切断されることになるので、スコア−17及び第1のブリッジ17aの形成位置を介して上部がボトル缶50の口金部53から取外され、下部が口金部53に残存することになる。
【0061】
なお、第1,第2のベントホール20,21は、キャップ10が口金部53に被着されたキャップ付ボトル缶101において、図8に示すように、ライナー19及び段差部11aより下方に位置している。
【0062】
次に、以上のように構成されたキャップ付ボトル缶101において、キャップ10を一旦開栓し、これをリキャップした後、この缶内圧が上昇し内圧が開放されるときの作用について説明する。
【0063】
まず、缶内圧が上昇する前は、図8の2点鎖線に示すように、カール部56上端部とライナー19とは密着状態にあり、缶の内容物の密封性が保たれている。そして、缶内圧が上昇し、例えば0.6MPaを超過すると、キャップ10はボトル缶口金部53から外れず、まず、キャップ天面部11の略全体が軸線方向上方へ膨出するとともに、ブリッジ23が前記破断容易部で破断する。その後、キャップ天面部11における膨出容易部11bが、この天面部11における他部より大きく膨出して第2のベントホール21が上方へ開くことになる。そして、この部分におけるライナー19とボトル缶口金部53の上端部との間の面圧が低下し、この面圧低下部分からボトル缶内圧が開放され易くなる。
【0064】
ここで、この面圧低下部分に位置するライナー19には、その周縁部に、切欠き部19aが形成されているので、ボトル内圧(ヘッドスペースのガス)は、まず、この面圧低下部分のうち、切欠き部19aの形成位置から開放され始めることになる。そして、このように開放された前記ガスは、ボトル缶50とキャップ10との間に形成されている空間100内に流入する。
【0065】
ここで、ライナー19に形成された切欠き部19aは、図2に示すように、第2のベントホール21の延在方向における略中央部に向かって開口しているので、空間100内に流入した前記ガスは、その流入と略同時に、大部分が第2のベントホール21に至り、このベントホール21を介して即座に外部へ流出し、これにより、ボトル缶内圧が外部へ開放されることになる。
【0066】
ここで、キャップ10の雌ねじ部22は、前述したように、ボトル缶50に前記ねじ山高さで形成された雄ねじ部55に適切な螺合深さで螺着され、かつ、キャップ10は、前記圧延材により形成され、かつ、ボトル缶50の雄ねじ部55の有効ねじ巻数が2.2巻とされ、かつ、キャップ10の第2のベントホール21は前記長さに設定され、また、ブリッジ23は前記破断容易部を備えるとともに、第2のベントホール21の長さに対して前記範囲の幅で形成されているので、前記面圧低下部分が生ずるまでキャップ10の膨出容易部11bを上方へ膨出させる缶内圧、及び、ブリッジ23を破断させる缶内圧は、図9に示すキャップ10の雌ねじ部22の底部22aをボトル缶50の雄ねじ部55の山部55cを乗越えさせ、このキャップ10を軸線方向上方へ位置ずれさせるのに要する缶内圧より小さくなる。
従って、缶内圧が例えば0.6MPaを超過した際、キャップ10が前記位置ずれするのに先立って、まず、ブリッジ23が破断するとともに、膨出容易部11bが上方へ膨出して第2のベントホール21が上方へ開き、前記面圧低下部分が生ずることになる。
【0067】
さらに、圧延材30の引張強度を高めたことにより、第2のベントホール21が上方へ開く際の変形態様がキャップ10毎にばらつくことも有効に抑制することができる。さらにまた、圧延材30に前記硬さを具備させたことにより、第2のベントホール21の前記変形態様のばらつきをより確実に抑制することができる。
以上により、ボトル缶内圧が例えば0.6MPaを超過したときに初めて、ボトル缶内圧が開放され始める構成を容易かつ高精度に実現することができる。
【0068】
以上説明したように、本実施形態によるキャップによれば、キャップ10は、側面部12に、第2のベントホール21を備えているので、ボトル缶内圧が上昇すると、キャップ天面部11の表面のうち、膨出容易部11bが、他部より先行して膨出することになる。
従って、ボトル缶内圧が所定値を超過した際、まず、キャップ天面部11における膨出容易部11bがキャップ付ボトル缶101の軸線方向上方へ膨出して第2のベントホール21が上方へ開くことになる。そして、この部分におけるシール面圧が低下することにより、ボトル缶内圧が開放され易くなる、または、膨出容易部11bにおけるライナー19とボトル缶口金部53との間に間隙が生ずることにより、この間隙と第2のベントホール21を介してボトル缶内圧が外部へ開放されることになる。すなわち、ボトル缶内圧が所定値を超過すると、膨出容易部11bにおけるシール面圧を、他部におけるシール面圧より確実に低下させることができ、または、膨出容易部11bにおけるライナー19とボトル缶口金部53の上端部との間に間隙を生じさせることができ、これにより、ボトル缶内圧が所定値を超過したときに初めて、ボトル缶内圧を開放できる構成を確実に実現することができる。
【0069】
また、キャップ10を形成する圧延材30が前記組成を有し、かつ、引張強度が、210MPa以上300MPa以下とされているので、キャップ10にボトル缶口金部53への必要十分な嵌合強度を確実に具備させることができる。これにより、ボトル缶内圧の上昇により、キャップ10がボトル缶口金部53から外れることを確実に抑制することができる。さらに、圧延材30は、JIS規格Z2244に規定された微小ビッカース硬さ試験方法により試験力0.98Nで測定した場合の硬さHv0.1が、68以上94以下とされているので、このキャップ10に前記嵌合強度をより確実に具備させることができる。
【0070】
従って、ボトル缶内圧が上昇して所定値を超過した際、この内圧により、キャップ10をボトル缶口金部53から外れさせず、まず、キャップ天面部11における膨出容易部11bを、キャップ付ボトル缶101の軸線方向上方へ膨出させ、第2のベントホール21を上方へ開かせることができる。これにより、ボトル缶内圧が所定値を超過したときに初めて、ボトル缶内圧を開放できる構成をより確実に実現することができる。
さらに、圧延材30の引張強度を高めたことにより、第2のベントホール21が上方へ開く際の変形態様がキャップ10毎にばらつくことも有効に抑制することができる。
さらにまた、圧延材30に前記硬さを具備させたことにより、第2のベントホール21の前記変形態様のばらつきをより確実に抑制することができる。
以上により、ボトル缶内圧が前記所定値を超過したときに初めて、ボトル缶内圧が開放され始める構成を容易かつ高精度に実現することができる。
【0071】
ところで、キャップ10は、形成された後にこれを梱包する際、図示しないホッパー内に投入され、このホッパーから逐次的に取出されて、梱包される工程を経ることになるが、この場合、次のような不具合が発生することが想定される。すなわち、第2のベントホール21は前記長さで形成されているので、キャップ側面部12の外表面における第2のベントホール21の開口周縁部は他部より強度が低下しており、さらに、ホッパーに投入されたキャップ10は取出されるまでの間に、キャップ10同士が互いに衝突し合うことになるため、前記開口周縁部に凹み、または、前記開口部に潰れが発生し易く、第2のベントホール21の開口部が大形となる、または、缶内圧が開放され始める内圧値を高精度にすることが困難になることが想定される。さらに、このキャップ10をボトル缶口金部53に被せた状態で、キャップ天面部11の周縁部を径方向内方かつ軸線方向下方に押圧し、この周縁部に段差部11aを形成する際に、第2のベントホール21の前記開口部はさらに大形となったり、前記開口部はさらに潰れたりすることが想定される。前記開口部が大形となったキャップ10は、美観に優れず、また、キャップ10開栓時に指が引っ掛かる場合も考えられ、さらに、衛生上も好ましくない。
【0072】
しかしながら、本実施形態によるキャップ10は、第2のベントホール21が、このベントホール21を画成する上面壁21aと下面壁21bとを架橋するブリッジ23を備えているので、キャップ10同士が前記ホッパー内で衝突する際や、段差部11aを形成する際、このブリッジ23は、前記凹みや前記潰れの発生に対して抗する補強部としての作用を有することになり、従って、前記凹みや前記潰れの発生を最小限に抑制することができる。
以上により、ボトル缶内圧が所定値を超過したときに初めて、ボトル缶内圧を開放することができるとともに、このような構成においても、前記不具合を発生させることなく良好かつ確実にキャップ10を形成することができる。
【0073】
ここで、さらに、第2のベントホール21にブリッジ23を形成したことにより、前記凹みや前記潰れの発生を最小限に抑制することができる反面、ライナー19とボトル缶口金部53の上端部との間に前記面圧低下部分が生ずるまで膨出容易部11bを膨出変形させるのに要する缶内圧値が増大し、この膨出容易部11bをキャップ天面部11の表面における他部より先行させて膨出変形させ難くなることが想定される。
【0074】
しかしながら、本実施形態のキャップ10においては、ブリッジ23が前記破断容易部を有しているので、キャップ天面部11に、これを膨出変形させようとする力が作用した際、ブリッジ23のうち、前記破断容易部を他部より先立って確実に破断することができる。これにより、前記凹みや前記潰れ発生を最小限に抑制することができるとともに、このような構成においても、前述のように膨出容易部11bを膨出変形させるのに要する缶内圧値の上昇を最小限に抑制することができる。
【0075】
また、ライナー19の周縁部には、切欠き部19aが形成されているので、ボトル内圧が外部へ開放され始める部分を、前記面圧低下部分のうち、この切欠き部19aの形成位置とすることができる。ここで、この切欠き部19aは、第2のベントホール21の延在方向における略中央部に向かって開口するようにライナー19の周縁部に形成されているので、切欠き部19aの形成位置から開放されたボトル内圧は、その大部分が第2のベントホール21を介して即座に外部へ流出されることになる。従って、ボトル内圧が例えば0.6MPaを超過した際、即座に、ボトル内圧が外部へ開放される構成を実現することができ、ボトル内圧が外部へ開放され始める内圧値の設定をさらに高精度に行うことができるようになる。
【0076】
さらに、有効ねじの巻数が前記範囲に設定されているので、キャップ付ボトル缶101の、この軸線を含む縦断面視において、ボトル缶50の雄ねじ部55とキャップ10の雌ねじ部22とが噛合った個所を、周方向における全ての部分において軸線方向に2箇所以上配設することができる。これにより、キャップ10のボトル缶口金部53への嵌合強度の向上を確実に図ることができる。
さらに、有効ねじ巻数を2.5巻より少なくしているので、前述のように嵌合強度を向上させた構成においても、キャップ10の良好な開栓性は維持することができる。
【0077】
なお、本発明は前記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
例えば、キャップ10に第2のベントホール21を1つ形成した構成を示したが、複数個であってもよい。
また、ボトル缶口金部53にキャップ10を被着したキャップ付ボトル缶101を示したが、この構成に限らず、ガラス等により形成されたボトルにキャップが被着されたキャップ付ボトルであってもよい。この場合、前記ねじ山高さを1.0mm以上に形成するとよい。
さらに、ライナー19の周縁部に切欠き部19aを形成した構成を示したが、これに限らず、ライナー19の周縁及び下方に開口する溝部を形成してもよい。さらにまた、ブリッジ23は角部23aを有さないものでもよい。この場合、ブリッジ23の幅Bは、第2のベントホール21の長さの2%以上8%以下で形成される。
【0078】
【発明の効果】
以上の説明から明らかなように、本発明に係るキャップによれば、キャップ天面部に膨出容易部を具備させることができるとともに、前記ベントホールは、ブリッジを備えているので、形成されたキャップを梱包する際のホッパー内での移送時に、キャップ同士が衝突し合い、キャップ側面部の外表面における前記ベントホールの開口周縁部に凹みや、前記ベントホールの開口部に潰れが発生することを最小限に抑制することができる。
また、キャップを前記引張強度を具備する圧延材により形成したことにより、このキャップに、キャップ付ボトルの軸線方向上方への位置ズレ発生を確実に抑制することができるボトル口金部への嵌合強度を具備させることができる。
以上により、ボトル内圧が所定値を超過したときに初めて、ボトル内圧を開放できる構成を、前記凹みや前記潰れを生じさせることなく確実に実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の一実施形態として示したキャップの側面図、及び一部拡大側面図である。
【図2】 本発明の一実施形態として示したキャップにおいて、図1のX−X線矢視断面図である。
【図3】 本発明の一実施形態として示したボトル缶の側面図である。
【図4】 図3に示すボトル缶を上面から見た簡略図及び有効ねじ部を示す説明図である。
【図5】 ボトル缶の口金部にキャップを被着するキャッピング装置及びボトル缶の概略図である。
【図6】 ボトル缶の口金部にキャップを被着する際の、キャッピング装置の各構成要素と、キャップとの位置関係を示す概略図である。
【図7】 本発明の一実施形態として示したキャップ付ボトル缶の概略構成図を示したものである。
【図8】 本発明の一実施形態として示したキャップ付ボトル缶において、ベントホールの形成位置を示す概略図である。
【図9】 図8に示すキャップ付ボトル缶におけるボトル缶及びキャップの拡大部分断面図である。
【図10】 本発明に係る従来例において、ボトル缶、キャップ、及びキャップ付ボトル缶の概略図である。
【符号の説明】
10 キャップ
11 天面部
12 側面部
13a 小形の凹部(第1の凹部)
19 ライナー
19a 切欠き部
20 第1のベントホール
21 第2のベントホール(ブリッジ付ベントホール)
23 ブリッジ
50 ボトル缶(ボトル)
53 口金部
101 キャップ付ボトル缶
O キャップ及びキャップ付ボトル缶の軸芯
Claims (7)
- 天面部と該天面部の周縁から略垂下してなる側面部とを備え、ボトルの口金部に被着されるキャップであって、
前記側面部に、その周方向に延在して上面壁と下面壁を備えるとともに、その延在方向中央部に、前記上面壁と前記下面壁とを架橋するブリッジを備えたブリッジ付ベンドホールが少なくとも一つ形成され、
前記ブリッジ付ベントホールは、前記側面部の周長の4%以上15%以下の長さで形成され、
前記ブリッジの前記上面壁及び前記下面壁における幅が、前記ブリッジ付ベントホールの延在方向長さの2%以上8%以下とされていることを特徴とするキャップ。 - 請求項1記載のキャップにおいて、
前記ブリッジは、前記上面壁及び前記下面壁から各々、前記上面壁と前記下面壁との間の略中央部に向かうに従い漸次幅狭になるように直線状に延在して形成されていることを特徴とするキャップ。 - 請求項1または2に記載のキャップにおいて、
重量%でFe:0.05%以上0.35%以下、Mn:0.01%以上0.10%以下、Mg:1.5%以上2.1%以下を含有し、Crを0.10%以下に規制し、残部がAl及び不可避添加物からなる組成を有するアルミニウム合金の圧延材により形成されていることを特徴とするキャップ。 - 請求項3記載のキャップにおいて、
前記圧延材は、溶製してスラブに鋳造した後、これに熱間圧延と第1冷間圧延とをこの順に施し、その後、300℃以上590℃以下の温度下で第1中間焼鈍を施し、そして、第2冷間圧延を施した後、300℃以上590℃以下の温度下で第2中間焼鈍を施し、その後、最終冷間圧延率を50%より大きく80%以下として第2冷間圧延を施した後、これに160℃以上260°以下の温度下で最終調質焼鈍を施すことにより形成された構成であることを特徴とするキャップ。 - 請求項1または2に記載のキャップにおいて、
重量%でSi:0.01%以上0.60%以下、Fe:0.1%以上0.7%以下、Cu:0.01%以上0.50%以下、Mn:0.3%以上1.3%以下、Mg:0.1%以上1.4%以下を含有し、残部がAl及び不可避添加物からなる組成を有するアルミニウム合金の圧延材により形成されていることを特徴とするキャップ。 - 請求項5記載のキャップにおいて、
前記圧延材は、溶製してスラブに鋳造した後、これに熱間圧延と第1冷間圧延とをこの順に施し、その後、300℃以上590℃以下の温度下で第1中間焼鈍を施し、そして、第2冷間圧延を施した後、300℃以上590℃以下の温度下で第2中間焼鈍を施し、その後、最終冷間圧延率を30%より大きく80%以下として第2冷間圧延を施した後、これに150℃以上250°以下の温度下で最終調質焼鈍を施すことにより形成された構成であることを特徴とするキャップ。 - 請求項3から6のいずれかに記載のキャップにおいて、
前記圧延材は、引張強度が210MPa以上300MPa以下とされていることを特徴とするキャップ。
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