JP4372391B2 - 放射線照射処理システム - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
この発明は、X線あるいは電子線等の放射線を汚水、食品あるいは高分子材料等の被照射物に照射して殺菌、滅菌処理あるいは改質処理等する放射線照射処理システムに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
図11は、従来の放射線照射処理システムの模式図である。図11において、放射線照射処理システム100は、例えば食品等の被照射物101を移送するコンベア102と、このコンベア102に移送される被照射物101に電子線を照射する電子線照射装置103とを備えている。電子線照射装置103は、電子を加速して電子線を供給する加速器104と、この電子線をスキャンするために偏向するスキャン用電磁石105と、このスキャン用電磁石105の下流側に設けられたスキャンホーン106とを有し、コンベア102の上方でスキャンホーン106の電子線出口をコンベア102に向けて配置されている。この電子線照射装置103は、被照射物101がコンベア102に乗せられて移送されているときには、常に電子線をスキャンホーン106からコンベア102に照射しており、この電子線の照射経路をコンベア102に移送された被照射物101が横切ることにより、被照射物101に電子線が照射されるようになっている。電子線は、スキャンされるので、一定の幅を持って照射される。従って、ある程度の幅を持った被照射物101であっても、コンベア102で1回移送されるだけで、被照射物101の電子線照射装置103側の面全体に電子線が照射される。
【0003】
この電子線は、例えば食品が段ボールケースに収納されている場合でも、そのビームエネルギーを調整すれば段ボールを通過して内部の食品にまで達する。従って、内部の食品は、段ボールケースに梱包された状態であっても外部から電子線が照射されることにより殺菌される。
【0004】
電子線は、物体内部に進入するにしたがってそのビームエネルギーが物体に吸収されていくので、電子線が物体内部に進むほど減速して殺菌効果がなくなる。このことから、被照射物101は、電子線が照射される面側では確実に殺菌されているが、その反対側の部分では電子線が被照射物101に吸収されて到達しないので殺菌されていない可能性がある。このような事態は避けるべきなので、電子線に確実に被照射物101を通過できる程度のビームエネルギーを与え、この電子線が電子線照射装置103から照射されるようにして、被照射物101の照射面から反対側の部分にも電子線が確実に到達して殺菌できるようにしている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、いくら電子線のビームエネルギーを大きくしても被照射物101に進入した電子線はそのビームエネルギーが被照射物101に吸収されていくことには変わらないので、被照射物101の電子線が照射される側の部分とその反対側の部分とでは電子線のビームエネルギーが異なる。このことから、殺菌効果にムラができ、均一な殺菌ができないという問題点があった。
【0006】
また、電子線は、被照射物101を透過する程度のビームエネルギーを有している場合には、被照射物101を通過してしまった後の電子線が有しているビームエネルギーは被照射物101の殺菌には寄与せず、無駄になってしまう。その上、ある被照射物101が電子線の照射位置を横切った後に、次の被照射物101がこの照射位置を横切るまでの間は、電子線は殺菌する必要のないコンベア102を照射しており、このコンベア102を照射している電子線のビームエネルギーがすべて無駄になっている。従って、エネルギの無駄が多く、電子線のビームエネルギーを効率的に殺菌に利用できないという問題点があった。また、このような問題点は、放射線を照射して殺菌処理する場合だけでなく、例えば医療品等の滅菌処理あるいは高分子材料等の改質処理を行う場合においても存在していた。
【0007】
そこでこの発明は、上記のような問題点を解決することを課題とするもので、放射線を被照射物をムラなく均等に照射するとともに、放射線照射の無駄を抑制して放射線のビームエネルギーを被照射物に効率的に吸収させる放射線照射処理システムを得ることを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
この発明に係る放射線照射処理システムは、放射線を所定の方向に照射する放射線照射部と、前記放射線が透過可能な被照射物に前記放射線が照射されるように前記被照射物を移送する移送手段とを備えた放射線照射処理システムであって、前記移送手段は、前記被照射物を連続的に前記放射線の照射領域内に送り込み、引き続き前記照射領域内で前記所定の方向に沿って前記被照射物が存在するように前記被照射物を連続的に移送し、前記所定の方向に照射する放射線を横切る形で前記照射領域内から送り出すものであり、前記放射線照射部は、前記被照射物が送り出される方向に沿った前記放射線の線量分布が前記被照射物の送出先に近づくに従って次第に大きくなるように前記放射線の照射を制御するものである。
【0009】
また、この発明に係る放射線照射処理システムは、放射線を所定の方向に照射する放射線照射部と、前記放射線が透過可能な液体である被照射物に前記放射線が照射されるように前記被照射物を移送する移送手段とを備えた放射線照射処理システムであって、前記移送手段は、前記放射線の照射領域内に前記被照射物を連続的に送り込み、引き続き前記照射領域内で前記所定の方向に沿って前記被照射物が存在するように前記被照射物を連続的に移送し、前記照射領域内から前記被照射物を連続的に送り出すようになっており、前記移送手段は、移送動力を発生するポンプと、前記放射線が照射される開口部を有するとともに前記照射経路に沿って設けられ、前記ポンプによって移送された前記被照射物を前記開口部に導く管路とを有し、前記管路内を移送された前記被照射物が前記開口部から流れ落ちるようになっており、前記開口部の上部近傍には、前記上部を流れる前記被照射物の速度を大きくする被照射物加速手段が設けられている。
【0016】
また、前記被照射物加速手段は、前記被照射物にガスで吹き付けて前記開口部の前記上部から流れ落ちる前記被照射物の速度を大きくする噴射部である。
【0018】
【発明の実施の形態】
以下にこの発明の実施の形態について説明するが、従来例のものと同一又は同等部材、部位は、同一符号を付して説明する。
実施の形態1.
図1は、この発明の実施の形態1に係る放射線照射処理システムの構成を示す模式的な側面図であり、図2は、図1の上面図である。なお、図1には、後述する電子線のエネルギー吸収量の変化を管路を流れる汚水への進入深さに対応させて示したグラフもあわせて示している。図1及び図2において、放射線照射処理システム1は、放射線である電子線を所定の方向に照射する放射線照射部2と、この放射線が照射される被照射物である例えば汚水3を移送する移送手段4とを備えている。放射線照射部2は、電子を加速する加速器5と、この加速器5で加速された電子線をスキャンするために電子線を偏向するスキャン用電磁石6と、このスキャン用電磁石6の下流側に配置され、偏向された電子線を外部に導くスキャンホーン7とを有している。移送手段4は、汚水3の移送動力を発生するポンプ8と、放射線照射部2から出る電子線が照射される開口部9を有し、ポンプ8によって移送される汚水3をこの開口部9に導く管路10とを有している。
【0019】
スキャン用電磁石6は、電子線を偏向する角度を時間的に変化させることにより電子線が管路10の開口部9に到達する位置をスキャンさせるようになっている。図3は、放射線照射部2側から視た開口部9及びこの開口部9で電子線到達位置がスキャンされる軌跡を示す模式図である。図3に示すように、電子線が開口部9に到達する位置の軌跡13は開口部9全体を複数回往復してスキャンする方式、即ちラスタスキャン方式でスキャンした軌跡になっている。このことから、開口部9全体に電子線が到達するようになっている。
【0020】
また、図2に示すように、電子線の照射領域は、放射線照射部2から離れるにしたがって広がるようになっており、この照射領域の広がりに合わせて開口部9付近の管路10が形成されている。また、管路10は、図1に示すように、放射線照射部2から射出された電子線の照射方向に沿って設けられた案内部分11を有している。従って、この案内部分11では汚水3が電子線の照射方向に沿って移送されるようになっている。汚水3は、管路10内をこの案内部分11を通して放射線照射部2側の開口部9に向かってポンプ8によって移送され、開口部9から流れ落ちるようになっている。この汚水3は、開口部9全体を満たして流れ落ちるようになっている。従って、放射線照射部2から射出される電子線は、開口部9から流れ落ちる汚水3に到達してその内部に汚水3の進行方向とほぼ逆向きに進入するようになっている。また、流れ落ちた汚水3は、電子線の照射領域から外れるようになっている。さらに、この案内部分11の長さは、電子線が汚水3に進入して殺菌をすることができなくなる程度まで進む距離よりも長くなっている。従って、開口部9から進入した電子線は案内部分11内においてビームエネルギーを吸収され、電子線が汚水3が移送されている案内部分11を通過してしまうことはない。
【0021】
ポンプ8は、管路10に接続されて汚水3に移送動力を与えるものである。このポンプ8は、放射線照射部2からの電子線が影響を及ぼさない程度に放射線照射部2から離れた位置に設けられている。
【0022】
このように構成された放射線照射処理システム1は、以下のように動作して汚水3を殺菌処理する。即ち、ポンプ8によって管路10内を移送される汚水3は開口部9に向かって案内部分11を移動する。一方、放射線照射部2からは開口部9に向かって電子線が照射される。この電子線は、スキャン用電磁石6によって開口部9に到達する位置がラスタスキャン方式によりスキャンされて開口部9全体に照射される。案内部分11を通ってきた汚水3は、この開口部9全体から流れ落ちる。開口部9から流れ出る汚水3に照射された電子線は、この汚水3の内部にビームエネルギーを吸収されつつ進入していく。
【0023】
図1において示した、電子線が水中に進入したときに水中で吸収される電子線のエネルギー吸収量とその進入深さとの関係を示すグラフから分かるように、水中での電子線のエネルギー吸収量は、その電子線が水中に進入する深さによって異なっている。逆にいえば、ある進入深さではエネルギー吸収量はその進入深さに対応した量となっている。電子線は、案内部分11を移動する汚水3中に開口部9から図1のグラフに示すようなエネルギー吸収量分布で進入している。汚水3は、ポンプ8から連続的に供給され、この電子線が汚水3中を進入する方向に沿って開口部9に向かって移動している。このことから、汚水3は、電子線のすべての進入深さを移動することになり、それぞれの電子線の進入深さでそれに対応する量のエネルギーを吸収しながら移動する。従って、連続的に汚水3が案内部分11を開口部9に向かって移動すると、ほとんどすべての汚水3が電子線のすべての進入深さを移動することになり、結果的に汚水3が開口部9に到達したときには、ほとんどすべての汚水3が同一量のエネルギーを吸収している状態となる。即ち、ほぼすべての汚水3は、開口部9に到達したときには電子線によって均等に殺菌処理されている状態となる。
【0024】
開口部9に到達した汚水3は、殺菌処理された状態となって、重力により開口部9から流れ落ちる。この流れ落ちた処理済みの汚水3は、電子線の照射領域から外れ、汚水3の殺菌処理が完了する。
【0025】
従って、この放射線照射処理システム1は、開口部9から延出した案内部分11が開口部9に照射される電子線の照射方向に沿って配置されているので、汚水3が連続的に電子線の照射方向に沿って移動し、電子線が汚水3中に進入する深さをすべて移動することから、案内部分11を移動する汚水3はほとんどすべて同一量のエネルギーを電子線から吸収し、ほぼ均等に殺菌処理される。
【0026】
また、案内部分11の長さは、電子線が内部を流れる汚水3に進入して殺菌をすることができなくなる程度まで進む距離よりも長くなっているので、電子線が汚水3を通過してしまうことはほとんどなく、電子線のエネルギーを無駄なく汚水3の殺菌処理に用いることができる。
【0027】
なお、この実施の形態においては、被照射物は液体の汚水3であるが、これに限定されることはなく、例えばミルク、挽肉、ジャガイモ、排煙、粉体である香辛料、穀物あるいは排煙、又は粒体であるお茶葉あるいはコーン等、連続的に移送することができて、かつ、この連続的に移送される個々の被照射物の1つ以上を放射線照射部2から照射される電子線が透過できるものであれば、上記のような効果を奏するので構わない。この場合、移送手段4は、それぞれの被照射物を移送するための手段であれば特に限定する必要はなく、例えばブロワ等により配管あるいはダクトに被照射物を送る等の手段によって、被照射物を移送すればよい。
【0028】
また、この実施の形態においては、汚水3が放射線照射部2に向かって移動するようになっているが、逆に汚水3が電子線照射方向に沿って離れていくようになっていても構わない。このような構成としても、すべての汚水3が全ての電子線の進入深さを移動することから、汚水3は均等に殺菌処理される。また、電子線のビームエネルギーがほとんど無くなる進入深さまで案内部分11を設けておけば、効率的に電子線のビームエネルギーを汚水3の殺菌処理に用いることができる。
【0029】
また、この実施の形態においては、案内部分11が水平方向に延びているが、当然のことながらこれに限定する必要はなく、案内部分11が傾斜して開口部9から汚水3が流れ落ちる角度が変化していても、案内部分11が電子線の照射方向に沿って延び、汚水3が開口部9から流れ落ちることによって電子線の照射領域から外れるようになっていれば、構わない。
【0030】
また、この実施の形態においては、汚水3が案内部分11を通って開口部9からそのまま流れ落ちるようになっているが、開口部9に汚水3の流路が曲折するように管路を設けても構わない。図4は、開口部9に管路が設けられた放射線照射処理システム1を示す模式的な側面図であるが、開口部9に案内部分11の軸線とほぼ直角に軸線を配置して管路12が設けられている。この管路12は、管路10の開口部9に接続されており、内部が案内部分11と連通している。また、この管路12の開口部9と放射線照射部2との間の壁部、即ち放射線照射部2から電子線が照射される壁部は、電子線が容易に通過できる材質、例えば樹脂等でできており、電子線が大きくそのビームエネルギーを失わないで開口部9に到達するようになっている。このような構成であれは、汚水3は鉛直下向きだけでなく、所望の箇所に殺菌処理した汚水3を移送することができる。また、放射線照射部2に汚水3が飛び散って、放射線照射部2を故障させることもない。
【0031】
実施の形態2.
図5は、この発明の実施の形態2に係る放射線照射処理システムの構成を示す模式的な側面図である。図5において、放射線照射処理システム1は、開口部9と放射線照射部2との間に横切って配置された遮蔽体である遮蔽板20を備えている。この遮蔽板20は、電子線等の放射線が容易に透過できる材質、例えば樹脂等で作製されている。また、この遮蔽板20は、開口部9から流れ出た汚水3が放射線照射部2に向けて飛び散る場合、この飛び散る汚水3を遮るものである。
他の構成は実施の形態1と同様である。
【0032】
従って、開口部9と放射線照射部2との間に配置された遮蔽板20が開口部9から流れ出た汚水3の飛び散りを遮るので、この汚水3が放射線照射部2にかかることを抑制して放射線照射部2の故障率を低下させることができる。
【0033】
また、被照射物が粉体あるいは粒体である場合には、この被照射物が開口部9から放射線照射部2に直接飛び出して、同様に放射線照射部2を故障させることを抑制する。
【0034】
なお、この遮蔽板20は、平板に限定する必要はなく、被照射物の飛び散りを抑制できれば、湾曲あるいは波打った形状等、どのような形状であっても構わない。
また、遮蔽板20は、網目状、即ちメッシュになっていても構わない。このようにすれば、さらに電子線は小さなエネルギー損失で容易に遮蔽板20を通過することができる。
【0035】
また、この放射線照射処理システム1における汚水3は、開口部9のどの位置に到達したかによって、開口部9から流れ落ちる際に電子線に照射される時間が異なる。即ち、開口部9の上部9aに到達した汚水3は、電子線が照射されている領域を横切って流れ落ちるので、開口部9の下部9bに到達した汚水3よりも電子線に照射される時間がその分だけ長くなる。電子線が照射される時間が異なると、殺菌効果にも差が生じ、上部9aから流れ落ちた汚水3のほうが下部9bから流れ落ちた汚水3よりも殺菌効果が大きくなるというように、汚水3の殺菌処理が不均等となる可能性がある。
【0036】
このようなことから、図6に示すように、できるだけ上部9aに到達した汚水3が電子線に照射される時間を短縮するために、開口部9の上部9a近傍に空気等であるガスを噴射する被照射物加速手段であるガスジェット噴射装置等の噴射部22が設けられてもよい。この噴射部22は、ガスを下方に向けて開口部9の上部9aから流れ出す汚水3に吹き付けて、この汚水3の流れ落ちる速度を大きくするものである。このようにすれば、上部9aから流れ出た汚水3は、この噴射部22が吹き付けるガスの圧力により流れ落ちる速度が大きくなり、電子線に照射される時間が短縮されるので、上部9aから流れ出た汚水3が電子線に照射される時間と下部9bから流れ出た汚水3が電子線に照射される時間との差が小さくなり、汚水3全体の殺菌処理の不均等が緩和される。
また、このように噴射部22が吹き付けるガスの圧力によって、上部9aから流れ落ちる汚水3が下方に押し付けられるので、汚水3の飛び散りが抑制される。従って、遮蔽板20が設けられていなくても、噴射部22が設けられることによって汚水3が放射線照射部2に飛び散ることを抑制することもできる。
【0037】
なお、被照射物加速手段は、噴射部22に限定されることはなく、上部9aを流れる汚水3の速度を大きくすればよいので、例えば上部9a近傍の案内部分11の内壁に設けられた回転ホイールであってもよい。この回転ホイールは、汚水3の流れ方向に駆動モータの駆動力で高速回転するようになっている。この回転ホイールが高速で回転することにより、案内部分11の上部9a近傍を流れる汚水3の速度が大きくなり、流れ落ちる速度が大きくなる。
【0038】
また、上記のように、開口部9の上部9aから流れ出た汚水3が下部9bから流れ出た汚水3よりも電子線に照射される時間が少し長いことから、図3における電子線の到達位置のスキャン軌跡を上部9aと下部9bとで異ならせて、上部9a及び下部9bの電子線の照射量に差をつけてもよい。即ち、開口部9の上部9aから下部9bに向かってこのスキャン軌跡の往復を徐々に密にするようにして、電子線の線量分布が上部9aから下部9bにかけて次第に大きくなるようにしてもよい。このようにすれば、上部9aから流れ出る汚水3は、下部9bから流れ出る汚水3よりも同一時間に照射される電子線の線量としては少ないが、照射される時間がその分長くなっているので、結果的に汚水3に吸収される電子線のエネルギーは全体的に均等に近づく。
【0039】
実施の形態3.
図7は、この発明の実施の形態3に係る放射線照射処理システムの構成を示す模式的な側面図である。図7において、放射線照射処理システム1は、被照射物である例えば立脚物のビール瓶30を移送する移送手段であるコンベア31を備えている。ビール瓶30は、コンベア31に乗せられて移動している。また、ビール瓶30は、電子線の照射方向に沿って連続的に配列されており、電子線が1つのビール瓶30を通過してその後ろのビール瓶30にも照射されるようになっている。コンベア31は、段差コンベアになっており、放射線照射部2に向かってビール瓶30を移送した後、段差によりビール瓶30を電子線の照射領域から外して移送するようになっている。
他の構成は実施の形態1と同様である。
【0040】
このような構成であるので、実施の形態1と同様の効果を奏するとともに、被照射物が固体物である立脚物のビール瓶30であっても同様に、ほぼ均等に電子線を照射でき、しかも無駄なく効率的に電子線のエネルギーを殺菌処理に用いることができる。
【0041】
なお、移送手段は、落下の衝撃で被照射物が壊れにくいものである場合には、コンベア31が段差コンベアである必要はなく、上下段の2つのコンベアから構成されて、被照射物を上段コンベアから下段コンベアに落下させて被照射物を照射領域から外すようにしても構わない。また、移送手段は、コンベア31に限定される必要はなく、例えば被照射物を吊して移送するものであっても構わない。
【0042】
また、被照射物は、ビール瓶30に限定されることはなく、医薬ビン、半導体ウエハあるいは郵便はがき等、電子線が透過できるものであればどのようなものでも構わない。
【0043】
なお、上記各実施の形態において、移送手段は、放射線照射部2からの電子線の照射方向に完全に一致させて複数の被照射物を連続的に移送する必要はない。即ち、複数の被照射物の移送経路が電子線の照射方向と多少ずれていても、電子線の照射領域内で被照射物が連続的に移送されていれば、ある被照射物を透過した電子線がその後ろの被照射物に照射されることから、その照射が許容される範囲内で複数の被照射物が連続的に移送されるようになっていても構わない。実施の形態3を例にとると、図8に示すように、移送手段は、複数の被照射物であるビール瓶30をUターンさせて連続的に移送するようになっており、この湾曲しているUターン部分32に放射線照射部2から電子線を照射する場合に、ビール瓶30の移送経路が湾曲していても、ビール瓶30が電子線の照射領域内でほぼ照射方向に連続的に並んで移送されていれば、この照射方向に完全に一致させて移送されなくても、同様の効果を奏する。
【0044】
また、上記各実施の形態において、電子線が、ある被照射物を透過した後に到達する次の被照射物は、この透過した被照射物に連続して続いて移送される被照射物に限定する必要はない。即ち、電子線の照射方向に沿って複数の被照射物が存在していれば、その複数の被照射物が連続して続いて移送されているものであっても別の被照射物であってもどちらでも複数の被照射物が全体として電子線の照射方向に沿って移送されていれば、当然のことながら上記効果を奏するのである。実施の形態3を例にとると、図9に示すように、移送手段は、電子線の照射方向を複数回横切るようにジグザグに複数の被照射物であるビール瓶30を連続的に移送し、結果としてビール瓶30を電子線の照射方向に沿って移送するようになっていてもよい。このようにすることで、ほとんど全ての被照射物が電子線からほぼ同一量のエネルギーを吸収でき、かつ、電子線のビームエネルギーも効率的に殺菌処理に利用できる。さらに、被照射物が例えば連続形成されたフィルムである場合にも、図10に示すように、複数の方向変換軸35及び巻き取りロール36によって電子線の照射方向を複数回横切るようにジグザグにフィルム37を移送すれば、同様の理由により同様の効果を奏する。この被照射物は、フィルムに限定されず、シート、ロープあるいはガーゼ等、連続して形成されたものであればよい。
【0045】
また、上記各実施の形態においては、放射線照射部2から照射される放射線は電子線であるが、これに限定する必要はなく、例えばX線、中性子線、紫外線、γ線あるいはレーザー光等、ある程度の透過性を有し、殺菌効果あるいは滅菌効果のあるものであれば構わない。
【0046】
また、上記各実施の形態において、被照射物は、殺菌処理あるいは滅菌処理のために放射線が照射されるようになっているが、このためだけに限定する必要はなく、例えば被照射物が高分子材料であるポリマーでこの分子の重合結合を切るため等、被照射物の材質の分子構造を変化させて改質するために放射線が照射されるようになっていても構わない。この場合、放射線は、被照射物にエネルギーを与えてその材質を変化させるものであればよく、上記と同様の放射線、即ち例えば電子線、X線、中性子線、紫外線、γ線あるいはレーザー光等が適用できる。
【0047】
【発明の効果】
以上の説明から明らかなように、この発明に係る放射線照射処理システムは、放射線を所定の方向に照射する放射線照射部と、前記放射線が透過可能な被照射物に前記放射線が照射されるように前記被照射物を移送する移送手段とを備えた放射線照射処理システムであって、前記移送手段は、前記被照射物を連続的に前記放射線の照射領域内に送り込み、引き続き前記照射領域内で前記所定の方向に沿って前記被照射物が存在するように前記被照射物を連続的に移送し、前記所定の方向に照射する放射線を横切る形で前記照射領域内から送り出すものであり、前記放射線照射部は、前記被照射物が送り出される方向に沿った前記放射線の線量分布が前記被照射物の送出先に近づくに従って次第に大きくなるように前記放射線の照射を制御するものであるので、すべての前記被照射物が前記放射線のエネルギ吸収量が変化する前記照射経路上を移動し、前記被照射物のほとんどすべてが従来に比べて均等に前記放射線にエネルギーを吸収することができる。また、前記照射経路上を前記被照射物が連続的に前記放射線のエネルギーを吸収しながら移動して、後から移動してくる前記被照射物にも前記放射線のエネルギーが吸収されることから、前記放射線のエネルギーを効率的に前記被照射物の殺菌等に用いることができる。さらに、前記被照射物の送出先から遠い前記照射領域内の部分から送り出される前記被照射物が吸収する前記放射線のエネルギと、前記被照射物の送出先に近い前記照射領域内の部分から送り出される前記被照射物が救出する前記放射線のエネルギとの間の差が小さくなり、均等に前記被照射物を殺菌処理等することができる。
【0048】
また、この発明に係る放射線照射処理システムは、放射線を所定の方向に照射する放射線照射部と、前記放射線が透過可能な液体である被照射物に前記放射線が照射されるように前記被照射物を移送する移送手段とを備えた放射線照射処理システムであって、前記移送手段は、前記放射線の照射領域内に前記被照射物を連続的に送り込み、引き続き前記照射領域内で前記所定の方向に沿って前記被照射物が存在するように前記被照射物を連続的に移送し、前記照射領域内から前記被照射物を連続的に送り出すようになっており、前記移送手段は、移送動力を発生するポンプと、前記放射線が照射される開口部を有するとともに前記照射経路に沿って設けられ、前記ポンプによって移送された前記被照射物を前記開口部に導く管路とを有し、前記管路内を移送された前記被照射物が前記開口部から流れ落ちるようになっており、前記開口部の上部近傍には、前記上部を流れる前記被照射物の速度を大きくする被照射物加速手段が設けられているので、移送が容易で、前記被照射物間の隙間がないことから、前記放射線のエネルギをほとんど全て吸収することができ、効率的に殺菌処理等をすることができる。また、容易に、前記被照射物に前記放射線を照射でき、前記被照射物を前記照射経路から送り出すことができる。さらに、前記被照射物の送出先から遠い前記照射領域内の部分から送り出される前記被照射物が前記放射線に照射される時間を、前記被照射物の送出先に近い前記照射領域内の部分から送り出される前記被照射物が前記放射線に照射される時間に近づけることができ、さらに均等に前記被照射物を殺菌処理等することができる。
【0055】
また、前記被照射物加速手段は、前記被照射物にガスで吹き付けて前記開口部の前記上部から流れ落ちる前記被照射物の速度を大きくする噴射部であるので、前記上部から流れ出る前記被照射物が前記放射線に照射される時間を前記下部から流れ出る前記被照射物が前記放射線に照射される時間に近づけることができ、さらに均等に前記被照射物を殺菌処理等することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 この発明の実施の形態1に係る放射線照射処理システムの構成を示す模式的な側面図である。
【図2】 図1の上面図である。
【図3】 放射線照射部側から視た開口部及びこの開口部で電子線到達位置がスキャンされる軌跡を示す模式図である。
【図4】 開口部に管路が設けられた放射線照射処理システムを示す模式的な側面図である。
【図5】 この発明の実施の形態2に係る放射線照射処理システムの構成を示す模式的な側面図である。
【図6】 図5の開口部の上部近傍に噴射部が設けられている放射線照射処理システムを示す模式的な側面図である。
【図7】 この発明の実施の形態3に係る放射線照射処理システムの構成を示す模式的な側面図である。
【図8】 この発明の実施の形態3に係る放射線照射処理システムの移送手段の移送経路をU字形にした模式図である。
【図9】 この発明の実施の形態3に係る放射線照射処理システムの移送手段の移送経路をジグザグにした模式図である。
【図10】 図9の被照射物をフィルムとした模式図である。
【図11】 従来の放射線照射処理システムの模式図である。
【符号の説明】
1 放射線照射処理システム、2 放射線照射部、3 汚水(被照射物)、4移送手段、8 ポンプ、9 開口部、10 管路、20 遮蔽板(遮蔽体)、22 噴射部(被照射物加速手段)、30 ビール瓶(被照射物)。
Claims (4)
- 放射線を所定の方向に照射する放射線照射部と、
前記放射線が透過可能な被照射物に前記放射線が照射されるように前記被照射物を移送する移送手段とを備えた放射線照射処理システムであって、
前記移送手段は、前記被照射物を連続的に前記放射線の照射領域内に送り込み、引き続き前記照射領域内で前記所定の方向に沿って前記被照射物が存在するように前記被照射物を連続的に移送し、前記所定の方向に照射する放射線を横切る形で前記照射領域内から送り出すものであり、
前記放射線照射部は、前記被照射物が送り出される方向に沿った前記放射線の線量分布が前記被照射物の送出先に近づくに従って次第に大きくなるように前記放射線の照射を制御するものであることを特徴とする放射線照射処理システム。 - 放射線を所定の方向に照射する放射線照射部と、
前記放射線が透過可能な液体である被照射物に前記放射線が照射されるように前記被照射物を移送する移送手段とを備えた放射線照射処理システムであって、
前記移送手段は、前記放射線の照射領域内に前記被照射物を連続的に送り込み、引き続き前記照射領域内で前記所定の方向に沿って前記被照射物が存在するように前記被照射物を連続的に移送し、前記照射領域内から前記被照射物を連続的に送り出すようになっており、
前記移送手段は、移送動力を発生するポンプと、前記放射線が照射される開口部を有するとともに前記照射経路に沿って設けられ、前記ポンプによって移送された前記被照射物を前記開口部に導く管路とを有し、
前記管路内を移送された前記被照射物が前記開口部から流れ落ちるようになっており、
前記開口部の上部近傍には、前記上部を流れる前記被照射物の速度を大きくする被照射物加速手段が設けられていることを特徴とする放射線照射処理システム。 - 前記被照射物は、液体であり、
前記移送手段は、移送動力を発生するポンプと、前記放射線が照射される開口部を有するとともに前記照射経路に沿って設けられ、前記ポンプによって移送された前記被照射物を前記開口部に導く管路とを有し、
前記管路内を移送された前記被照射物が前記開口部から流れ落ちるようになっており、
前記開口部の上部近傍には、前記上部を流れる前記被照射物の速度を大きくする被照射物加速手段が設けられていることを特徴とする請求項1に記載の放射線照射処理システム。 - 前記被照射物加速手段は、前記被照射物にガスで吹き付けて前記開口部の前記上部から流れ落ちる前記被照射物の速度を大きくする噴射部であることを特徴とする請求項2又は請求項3に記載の放射線照射処理システム。
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