JP4369538B2 - 画像符号化方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は画像符号化方法に関し、特に、写真等の中間調画像と文字,線画等の2値画像から成る混在画像の符号化に適した画像符号化方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来から写真などの中間調画像の符号化方式としては,JPEG(Joint Photographic Coding Experts Group)に代表されるような離散コサイン変換(DCT: Discrete Cosine Transform)を用いた変換符号化が広く使われている。
【0003】
JPEG方式の符号化は、DCTなどの直交関数により画像の2次元配列を空間周波数成分の2次元配列に変換する。人物像や風景写真などの自然画像は画素間の隣接相関が高いので、低い空間周波数成分が多く、高い空間周波数成分は比較的少ない。また高い空間周波数成分は粗く近似しても画質劣化が目につきにくいことが知られ、低い空間周波数成分を細かく量子化し、高い周波数成分を粗く量子化することによってデータ量を削減できる。量子化された各周波数成分は画像情報に対応した確率分布に従うので、ハフマン符号や算術符号によって、情報を損なうことなく確率分布と符号シンボルで決まるエントピーに漸近したビット数に圧縮することができる。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、JPEG方式は、上述のとおりカラー写真画像等の中間調画像に対する符号化方式であり、文字画像のような2値画像に対する符号化に適しているとは必ずしもいえない。
【0005】
つまり、文字画像のような2値画像はエッジ部分による高い空間周波数成分が多い。JPEG方式の処理によると、空間周波数が高い成分が量子化によって失われるため、復元画像のエッジ周辺にもやもやしたノイズが現れる。このノイズは、ディスプレイの表示では気にならないが、2値のプリンタに記録する際に誤差拡散処理を行うと面積階調が保存されるため、エッジ周辺に黒画素が孤立点となって現れ、画質を劣化させる。つまり、JPEG方式では、写真,文字どちらの画像も周波数領域で量子化処理を行うため、逆変換後の画像から量子化誤差の影響を完全に排除することはできない。
【0006】
これを軽減する方法として、画像の局所局所の状況により、変化の激しい部分では細かな量子化を行うといった適応的量子化方式も考えられる。しかし、文字のようなエッジ部分が多い2値画像についても量子化誤差の影響を小さく抑えるためには、すべてのDCT変換係数に渡って、かなり細かい量子化が必要になり、すると、伝送するべき情報量(符号量)が増えて圧縮率が低下するという別の問題が生じる。
【0007】
したがって、混在画像の圧縮に際し、画質と圧縮率とを両立させることは困難である。
【0008】
本発明はこのような問題に鑑みてなされたもので、写真と文字の混在画像で文字部分の画質を損なうことなく、ページ全体の圧縮率も高く取れる新規な画像符号化方法を提供することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
請求項1記載の画像符号化方法の発明は、入力画像データを所定サイズのブロックを単位とし対象ブロックに含まれる画素の輝度分布を用いて像域判定し、この像域判定の結果、前記入力画像データが中間調領域と判定された場合にはその画像データに対して直交変換・量子化処理を施して第1の符号化シンボルを得、前記入力画像データが2値領域と判定された場合にはその画像データに対して2値化処理を施して第2の符号化シンボルを得、前記像域判定の結果を示す識別フラグと前記第1または第2の符号化シンボルとを順次、算術符号器に入力し、算術符号化を行う画像符号化方法であって、下記条件によって、そのブロックが2値画像のブロックであるか否かを判定するにした。
条件
以下の(1)〜(3)のいずれかを満たす場合に、2値画像のブロックであると判定する。
(1)1ブロックに含まれる64画素の中に、黒画素とみなす黒レベル値8以下の輝度をもつ画素および白画素とみなす白レベル値247以上の輝度をもつ画素が存在し、かつ、前記ブロックに含まれる画素の輝度ヒストグラムにおいて任意のレベルとその隣のレベルに属する画素数が共にゼロとなって輝度が連続する部分がない。
(2)1ブロックに含まれる64画素の中に、黒画素とみなす黒レベル値8以下の輝度をもつ画素が存在し、そのような画素の数が前記ブロック内の64画素に対して占める割合が60画素を超えている。
(3)1ブロックに含まれる64画素の中に、白画素とみなす白レベル値247以上の輝度をもつ画素が存在し、そのような画素の数が前記ブロック内の64画素に対して占める割合が60画素を超えている。
【0010】
ブロックを単位として、写真画像の画像データについてはJPEG同様の符号化が行われ、2値画像の画像データについては、2値画像の処理に適した方式であるJBIG(Joint Bi-level Image Coding Experts Group)同様の符号化が行われ、これによって、画質が向上し、圧縮率も高くとれる。また、算術符号化は、異なる種類の情報(シンボル)でもすべて2進小数点符号として統合化して符号化できるという多重化に適した性質をもち、ゆえに、符号化量の増大が防止される。
【0021】
請求項2記載の画像符号化方法の発明は、入力画像データを所定サイズのブロックを単位とし対象ブロック内における画像データの輝度の分布と、前記対象ブロックの周囲に位置するブロックの属性とに基づいて像域判定し、この像域判定の結果、前記入力画像データが中間調領域と判定された場合にはその画像データに対して直交変換・量子化処理を施して第1の符号化シンボルを得、前記入力画像データが2値領域と判定された場合にはその画像データに対して2値化処理を施して第2の符号化シンボルを得、前記像域判定の結果を示す識別フラグと前記第1または第2の符号化シンボルとを順次、算術符号器に入力し、算術符号化を行うことを特徴とする画像符号化方法であって、下記条件によって、そのブロックが2値画像のブロックであるか否かを判定するようにした。
条件
以下の条件1を満たす場合、あるいは条件2を満たす場合に2値画像のブロックであると判定する。
条件1
(1)注目するブロックに含まれる64画素の中に、黒画素とみなす黒レベル値8以下の輝度値をもつ画素および白画素とみなす白レベル値247以上の輝度をもつ画素が存在し、かつ、前記ブロックに含まれる画素の輝度ヒストグラムにおいて任意のレベルとその隣のレベルに属する画素数が共にゼロとなって輝度が連続する部分がない。
(2)注目するブロックに含まれる64画素の中に、黒画素とみなす黒レベル値8以下の輝度値をもつ画素が存在し、そのような画素の数が前記ブロック内の64画素に対して占める割合が60画素を超えている。
(3)注目するブロックに含まれる64画素の中に、白画素とみなす白レベル値247以上の輝度値をもつ画素が存在し、そのような画素の数が前記ブロック内の64画素に対して占める割合が60画素を超えている。
条件2
注目するブロックをB(j,k)とし、このブロックの周囲に位置する3つのブロックをB(j,k-1)、B(j-1,k-1)、B(j-1,k)とする場合に、前記周囲に位置する3つのブロックがすべて2値画像のブロックであって、かつ、以下の(4)または(5)のいずれかを満たす場合に、前記注目するブロックが2値画像のブロックであると判定する。
(4)1ブロックに含まれる64画素の中に、黒画素とみなす黒レベル値8以下の輝度値をもつ画素が存在し、かつ、そのような画素の輝度がそのブロック内で最も多くみられる輝度に一致し、かつ、前記ブロック内の画素の輝度値の最大値と最小値との差が32より大きく、かつ、前記ブロックに含まれる画素の輝度ヒストグラムにおいて任意のレベルとその隣のレベルに属する画素数が共にゼロとなって輝度が連続する部分がない。
(5)1ブロックに含まれる64画素の中に、白画素とみなす白レベル値247以上の輝度値をもつ画素が存在し、かつ、そのような画素の輝度がそのブロック内で最も多くみられる輝度に一致し、かつ、前記ブロック内の画素の輝度値の最大値と最小値との差が32より大きく、かつ、前記ブロックに含まれる画素の輝度ヒストグラムにおいて任意のレベルとその隣のレベルに属する画素数が共にゼロとなって輝度が連続する部分がない。
【0022】
これにより、さらに精度よく像域判定を行うことができ、誤判定の確率がさらに低減される。
【0037】
【発明の実施の形態】
(実施の形態1)
図1は実施の形態1にかかる画像符号化装置の構成の概要を示す図である。図1に示されるように、本実施の形態において符号化の対象となる画像1は、写真画像(中間調画像)2および文字画像(2値画像)3が混在した、静止画像である。
【0038】
画像符号化装置は、スキャナ4と、像域判定回路7と、変換処理回路5と、算術符号器8とを具備する。変換処理回路5は、2つの変換処理部6a,6bをもつ。変換処理部6aはDCT変換(離散コサイン変換)および量子化処理を行い、変換処理部6bは2値化処理を行う。すなわち、変換処理部6aは量子化を行う処理を実施し、変換処理6bは量子化を含まない処理を実施する。
【0039】
スキャナ40は混在画像の情報を電気信号(多階調の画像データ)として読みとる。像域判定回路70は、読みとった画像データA1について、所定サイズのブロックを単位として像域判定を行う。「像域判定」はそのブロックに属する画像データが中間調画像についてのデータであるか、あるいは2値画像についてのデータであるかを判定する処理、すなわち、その画像データが切り出された混在画像1上のブロックが中間調領域であるのか、あるいは2値画像の領域であるのかを判定する処理である。
【0040】
この像域判定は基本的には、ブロック内の画素の輝度の分布を見て判定する。但し、2値画像と判定した後も、水平方向のエッジが多いのか、垂直方向のエッジが多いのか等の判定により、さらに複数通りに分類することもある。また、一つのブロック内の画素のみならず、周囲のブロックの属性(中間調画像のブロックであるか、2値画像のブロックであるか)も考慮して注目するブロックの判定を行うと、より正確な判定を行える。この点については後述する。
【0041】
像域判定回路7による判定結果を示すフラグ(識別情報)A2は、変換処理回路5に送出される。変換処理回路5は、中間調画像のデータと判定された場合には変換処理部6aを用いてDCT変換・量子化処理を行い、2値画像のデータと判定された場合には変換処理部6bを用いて2値化処理を行う。「2値化処理」は所定の輝度しきい値(例えば256階調であればその中間の値)を用いて、多階調の画像データを「1」もしくは「0」に変換する処理である。
【0042】
JPEG方式で2値画像を符号化すると、量子化誤差による悪影響を避けられないので、本実施の形態では、2値画像については量子化を行うルートを回避し、2値化画像に適したJBIB方式同様の符号化を適用するものである。ブロック単位に写真画像(中間調画像)にはJPEG同様の方式が適用され,2値画像にはそれに適したJBIG同様の方式が適用されるため、画質が向上し、高い圧縮率も実現することができるようになる。
【0043】
算術符号器8は、像域判定回路7から出力される判定結果を示す識別情報(図1では符号A2がこれに相当する)のシンボルと、変換処理回路5から出力される変換値のシンボルとを順次、算術符号化する。
【0044】
本実施の形態において、算術符号化を採用するのは、算術符号化が、異なる種類の情報の多重化処理に適しているからである。すなわち、像域判定結果を示す識別フラグ(ブロック識別情報)は、量子化データ等とは異なる種類の情報である。このような種類の異なる情報を、算術符号以外のエントロピー符号化(例えば、ハフマン符号化)したとすると、情報量が増え、圧縮率が低下し、また、データの復元に要する処理も複雑となる。
【0045】
つまり、ブロックの識別情報は、ハフマン符号系列に現れない符号によって一意的に識別できなければならない。例えば、JPEGやJBIGでは制御符号は0xFF**と定義され、**の部分で0x00の設定を除いて、制御コードの意味を表すようになっている。この方式を採用すると制御コードで2バイト必要になり、その後にブロック識別情報が1バイト程度は必要になる。また、制御の都合上0xFF**は1ブロックの符号の間のバイト境界に位置した方が分離しやすいので、そのための付加ビットも必要になる。したがって、例えば、量子化テーブル情報を表すのに4バイト程度必要であり、識別情報が切り替わる毎にオーバヘッドが増加するという問題が生じる。また、前述したように付加ビットを付けるため制御が複雑になるという問題も生じる。
【0046】
これに対し、算術符号は1つのシンボルを符号化する度に、長さ「1」の数直線の2分割を繰り返し、分割された区間内の代表点を2進少数で表し小数点以下のコードを符号とするものであり、この符号化原理に起因して、算術符号は異なる情報源から出力されるシンボルを符号化すると同時に、異なる情報を多重化しやすいという性質をもっている。つまり、異なる種類の情報であっても、2進小数点符号に埋め込みながら統合して符号化ができ、多重化に特別な仕組みが必要ないという利点がある。
【0047】
したがって、本実施の形態では、算術符号を使ってブロック識別情報(フラグ情報)のシンボルと所定の変換処理後のシンボルとを算術符号系列の中に多重化し、適応化処理を容易に行えるようにしたものである。この多重化により、画像データの算術符号の先頭には、そのシンボルの属性を示す識別情報の算術符号が付加されることになる。復号化側では、この順番のとおりに算術復号化し、識別情報(フラグ)に応じて適宜、逆変換処理を行い、画像データを復元する。ブロックの復元シンボル数はどちらの場合もあらかじめ確定しているので、一意に復元することができる。
【0048】
(実施の形態2)
図2は実施の形態2にかかる画像符号化・復号化装置の構成の概要を示す図である。
【0049】
画像符号化装置10aは、2次元DCT回路11と、像域判定回路12と、2値化回路13と、量子化回路14と、セレクタ15と、統計モデル用メモリ16と、算術符号器20とを具備する。
【0050】
像域判定回路12は、像域判定の結果にしたがって2次元DCT回路11または2値化回路13のいずれかを有効化させる。また、その判定結果を示す識別フラグをセレクタ15に送出する。
【0051】
統計モデル用メモリ16には、DCT変換係数の算術符号化に使用する統計モデルに基づく統計データ17と、識別フラグを算術符号化するためのフラグ用モデルに基づく統計データ18と、2値画像データの算術符号化に用いられるマルコフモデルに基づく統計データ19とが格納されている。各統計データは、セレクタ15の選択情報に連動して適宜、選択されて算術符号器20に提供されるようになっている。符号は、有線伝送路L1を介して画像復号化装置10bに伝送される。
【0052】
画像復号化装置10bは、算術復号器21と、フラグ識別回路22と、中間調画像のデータについて逆DCT変換・逆量子化を行う中間調画像復元処理回路23と、中間調画像と2値画像の合成を行って混在画像を復元する画像合成回路24と、を有する。
【0053】
画像合成回路24の初段において、識別フラグに基づき、画像の属性に応じた特別な処理を施すことにより、JPEG方式,JBIG方式を個別に適用する効果と相まって、さらに、復元画像の画質を向上させることもできる。特別な処理としては、例えば、中間調画像データについての細かなノイズ除去のためのフィルタリング処理や、2値画像データについてのエッジ強調処理等があげられる。
【0054】
図3に、伝送される符号データのフォーマットの例が示される。図示されるように、DCT係数の算術符号40の前には中間調画像についてのデータであることを示す識別フラグ30が付加されている。同様に、2値画像データの算術符号60の前には、2値画像についてのデータであることを示す識別フラグ60が付加されている。
【0055】
次に、像域判定回路12における像域判定の手順の具体例について説明する。本実施の形態では、この像域判定の結果に応じて異なる処理を施すので、その前提として、正確な像域判定を行うことが極めて重要となる。
【0056】
像域判定は、8画素x8画素(合計で64画素)のブロック(これが符号化の対象となる)を単位として行われる。
【0057】
ここで、符号化対象ブロック(すなわち、像域判定の対象となるブロック)をB(j,k)とし、図示したようにその左、左上、真上のブロックを、それぞれB(j,k-1)、 B(j-1,k-1)、 B(j-1,k)とする(この様子は図15に示されている)。
【0058】
本実施の形態におけるブロックの像域判定は、基本的には、注目するブロックB(j,k)に含まれる画素の輝度(Pj,k)のヒストグラムを利用して行う。
【0059】
以下、次のように記号を定義して、具体的に説明する。
Lmin: 1ブロック内のPj,kの最小値
Lmax: 1ブロック内のPj,kの最大値
Lpeak: 1ブロック内で最も多いPj,kの値
Lmin_count: Lminに属する画素数
Lmax_count: Lmaxに属する画素数
nonZeroPair: ヒストグラムでノンゼロの画素値が隣接しているとき“1”にセットするフラグ
B(j,k): j行k列目のブロック
まず、1ブロック64画素の値Pj,kから上記のパラメータを設定する。このとき、Lmin,Lmax(Pj,kの最小値と最大値)は、理想的な2値画像であれば「0」と「255」である。ここでは、0は黒、255は白に相当するレベル値である。
【0060】
Lpeakはヒストグラムのピーク値で理想的な2値画像であれば「0」か「255」である。写真画像では、その中間の値である。
【0061】
nonZeroPairは、輝度ヒストグラムにおいて、任意のレベルLとその隣のレベルL+1に属する画素数が共にゼロでないときに“1”となるフラグである。これは輝度ヒストグラムに連続した階調成分があることを示し、中間調と判断する基準に使う。写真画像では隣接画素の変化が緩やかなので、画像ブロックが小領域であっても連続的なヒストグラムになる。それに対して、2値画像は白画素か黒画素であり、またエッジ部分が急峻なので、離散的なヒストグラムになる。nonZeroPairはこの特徴を反映するフラグである。
【0062】
したがって、レベルLに値をとる画素数がゼロでなければ、 次のレベルL+1をとる画素数を調べ、これがゼロでなければnonZeroPair=1とする。文字と写真など中間調の混在した画像をスキャナで読むと、シェーディング補正、エッジ強調処理後も文字のエッジ部分は多少なまっており中間調成分を含んでいる。しかし、この場合でもエッジ部分はかなり急峻に変化するので隣接する画素値は少ない。なまりが大きな文字画像は中間調として扱う。それに対してコンピュータで作成した2値画像は理想的な2値画像となる。理想的な2値画像を判定することは容易なので、ここではスキャナで入力した多少エッジのなまった2値画像を想定した。まず、次の条件で2値画像を判定する。
条件1 (Lmin <= Lb)&&(Lmax >= Lw)&&(nonZeroPair != 1)
||( (Lmin <= Lb)&&(Lmin_count > 60) )
||( (Lmax >= Lw)&&(Lmax_count > 60) )
ここで、記号&&,||はそれぞれ論理ANDと論理ORである。記号 != は等しくないことを表す。Lb、 Lwはそれぞれ黒レベル、白レベルとみなす基準値である。実施例ではLb=8、 Lw=247とした。この設定では、0〜255のうち8以下を黒とみなすことになる。
【0063】
条件1の第1項はLminがLb以下、及びLmaxがLw以上、及びヒストグラムに連続する部分がないことを示す。つまり、白および黒と見なされる画素があって、連続した輝度階調部分をもたないということである。これは文字領域で白画素,黒画素ともに存在するブロックを識別する。
【0064】
文字領域の中には全白、全黒に「近い」ブロックも多く存在する。つまり、灰色がわずかに含まれる領域もある。条件1の第2項(第3項)は、このようなブロックを識別する条件である。全白に近いブロックでは、文字輪郭のなだらかな階調成分が僅かに含まれる場合があるので、1ブロック64画素のうち60画素以上が白であれば2値ブロックと判断した。黒についても同様である。
【0065】
以上の条件1を満たせば、2値画像領域に属するブロックであると判定し、満たさなければ、中間調画像領域に属するブロックと判定する。
【0066】
実験した範囲内では、条件1によって2値と判定されたブロックはすべて文字領域内に含まれていた。そして、この条件で写真領域内部を誤判定することはなかった。
【0067】
基本的には、以上の条件1でかなり高精度の判定を行うことができる。但し、上記条件1はかなり厳しい判定基準であるため、この条件1を満足しないとして中間調領域に属すると判定されるブロックの中にも、実際は2値化領域のブロックが存在する。したがって、このような条件1では中間調領域と判断されてしまうようなブロックについても、2値化領域であると判定して誤判定を低減するのが望ましい。
【0068】
そこで、以下の条件2を追加する。条件2は、注目するブロック内の輝度分布のみならず、その周囲のブロックの属性も考慮して適応的に判定を行うものである。
【0069】
すなわち、条件1で中間調ブロックと判定された対象ブロックB(j,k)の周辺の3ブロックB(j,k-1),B(j-1,k-1),B(j-1,k)がすべて2値ブロックの時には、判定条件をゆるめるように、次の条件2を追加した。なお、上述のとおり、B(j,k-1)は対象ブロックの左、B(j-1,k-1)は左上、B(j-1,k)は真上のブロックを表す。ブロックの像域判定結果を逐次記憶すれば、これら3ブロックの属性は容易に判定できる。
条件2 B(j,k-1),B(j-1,k-1),B(j-1,k)が全て2値ブロックのとき、
ここで、記号 == は等しいことを表す。第1項は白の多いブロックに対する条件である。これと対称的に第2項は黒の多いブロックに対する条件である。
【0070】
つまり、条件2は、文字領域の中にあって、白か黒が「優勢なブロック」を識別するための条件であり、白または黒と認められる画素があり、その画素の輝度は最も多く現れる画素の輝度と一致し、そのブロックの最大輝度と最小輝度の差が所定値より大きく、かつ、連続した階調部分をもたないとき、2値画像領域のブロックであると判定する。
【0071】
上述の条件2における(Lmax - Lmin > 32)は、写真の輪郭が淡い階調を持った場合(写真領域が白に近いレベルである場合)に、これを含むブロックを2値ブロックと判定しないために加えた。
【0072】
以上説明したブロックの像域判定手順をまとめると、図4のようになる。
すなわち、上述の条件1を満足するか否かを判定し(ステップ200)、満足する場合には2値ブロックと判定し(ステップ240)、満足しない場合には、周囲の3つのブロックが全部2値ブロックであるか否かを判定する(ステップ210)。全部のブロックが2値ブロックでない場合には中間調ブロックと判定し(ステップ230)、全部のブロックが2値ブロックのときは、条件2を満足するかを判定し(ステップ220)、満足する場合には2値ブロックと判定し(ステップ240)、満足しない場合には、中間調ブロックと判定する(ステップ230)。
【0073】
文字と写真の混在画像数種類について実験した結果、条件1と条件2によって、文字領域の98%〜99%は2値ブロックと判定し、写真領域はその輪郭部も含めてすべて中間調ブロックと判定した。テストで使用した画像の文字領域はフィルタで少しぼかした。また、文字部分を0,255から成る理想的な2値画像とすると100%、2値ブロックと判別した。写真画像では、像域判定結果は100%、中間調と判定したので、どの方式も同一結果である。文字画像での優位性は明らかである。文字画像では100%、2値画像と判定している。また混在画像では、文字領域のうち、理想的2値画像と多少ぼかした部分ではブロックの99%を2値画像ブロックと判定した。写真部分とぼけ具合を大きくした文字部分では100%、中間調ブロックと判定した。
【0074】
(実施の形態3)
図5は本発明の実施の形態3にかかる画像符号化装置の具体的構成を示すブロック図である。基本的構成は図2に示されるものと同様である。
【0075】
図5の画像符号化装置は、ブロック化回路1010と、2次元DCT回路1020と、メモリ1030と、量子化器/演算器1040と、量子化テーブル1050と、シフトレジスタ1060と、統計モデル用メモリ1070と、適応型算術符号器1080と、選択器1090と、像域判定回路1110と、2値化回路1120と、メモリ1130と、コンテクスト生成器1140と、タイミング制御部1202とを具備している。
【0076】
入力画像データは、ブロック化回路1010により8x8画素配列にブロック化する。像域判定回路1110は、ブロック毎に対象ブロックが2値画像であるか、そうでないかを判定する。
【0077】
符号化手順としてはまず、ブロックの属性を示す像域判定フラグ1150を符号化する。その後に,2値画像でないと判断した場合は信号1160によって2次元DCT処理を起動し、JPEG同様の変換符号化を行う。DCT変換係数はメモリ1030に一時的に蓄積される。そして、図6のようなジグザグスキャン方式のアドレス指定によってデータが順次、読み出され、量子化器/演算器1040に供給される。上述のジグザグスキャンによるアドレス指定は、量子化器/演算器1040が行う。
【0078】
量子化器/演算器1040は、量子化テーブル1050に格納されているテーブル値を量子化参照値として用いて量子化を行い、続いて、データの丸め演算を行う。量子化テーブル値の一例が図8に示されている。
【0079】
一方、2値画像と判定した場合には、像域判定回路1110は、信号1170によって2値化処理回路1120を起動する。2値画像データはメモリ1130に一時的に蓄積される。そして、注目するブロックの内部を、図7に示すようにラスタスキャンしながら、データを読み出し、JBIGの規格である3ラインテンプレートを使って2値化データを算術符号化する。なお、コンテクスト生成器1140は、1つのブロック内の64画素について白データであるか黒データであるかという情報(統計情報)を統計モデル用メモリ1070に与える。
【0080】
以上の処理をブロック毎に繰り返すと、画像の局所的性質に応じてDCT変換と2値化を選択的に実施できる。
【0081】
続いて、量子化器/演算器1040の出力は、シフトレジスタ1060でパラレル/シリアル変換され、選択器1090の入力信号となる。パラレル/シリアル変換するのは、適応型算術符号器1080が2値の算術符号器であるため、これに適合するように入力形式を整えるためである。
【0082】
選択器1090の3つの入力のうちのいずれかが選ばれて適応型算術符号器1080の入力シンボルとなる。選択信号やタイミング信号は、タイミング制御部1202から出力される。
【0083】
算術符号化には入力シンボルに応じた統計モデルが必要である。統計モデル用メモリ1070には、DCT係数、2値画像用モデル、識別フラグ用の統計モデルがそれぞれ記憶されている。適応型算術符号器1080は、統計モデル用メモリ1070を参照し、必要に応じてその内容を書き換えながら符号化処理を実行し符号データを出力する。
【0084】
図9は適応型算術符号器の要部の構成を示す。
【0085】
算術符号化のためには確率推定のための統計データが必要である。統計モデル用メモリ1200は、ブロック識別フラグ用コンテクストテーブル(例えば1バイト)と、DCT後の変換係数のうちのDC成分用コンテクストテーブルD2と、AC成分用コンテクストテーブルD3と、2値画像符号化用コンテクストテーブルD4とを有する。
【0086】
各コンテクストテーブルの1バイトは、符号1210で示すように、MPS(優勢シンボル)値(1ビット)と確率推定器のインデックス(7ビット)とで構成される。
【0087】
確率推定器1220からは、劣性シンボル(LPS)の領域幅にあたるQe値が、算術符号器に出力される。算術符号器では、入力シンボルとMPS値、Qe値とから演算を行い、入力シンボル列の生起確率に対応する2進少数点座標を符号データとして出力する。本実施例の入力シンボルは、ブロック識別フラグ、DCTにより得られる変換係数のDC成分とAC成分、および2値化データである。
【0088】
図10は算術符号化の概念を説明するための図である。この図は、符号化シンボル系列「0100」の各ビットについて、参照画素を用いた優勢シンボルによる確率推定が4回連続してはずれた場合に、長さ「1」の数直線を各々の劣性シンボルが生起される確率で分割していった場合の代表点Cが対応する算術符号であることを表している。このように、数直線を分割していく処理の繰り返しによって符号の生成が行われ、異なる種類のシンボルも2進小数点として統合されて符号化される点で、算術符号は情報の多重化に適する。
【0089】
以上が図5の画像符号化装置の動作の概要である。次に、算術符号化の具体的動作について、識別フラグの符号化,中間調画像データの符号化,2値画像データの符号化の順に説明する。
【0090】
まず、識別フラグの符号化について説明する。
像域判定の結果、文字領域(2値領域)のブロックと判定された場合には「1」をフラグとして符号化し、文字領域(2値領域)でない場合(つまり、中間調領域の場合)には、「0」をフラグとして符号化する。
【0091】
ここで、「1」を符号化する手順が図11に示される。つまり、フラグ用統計モデルにおいて、「1」が優勢シンボルとなっていれば(ステップ2100)、MPS(優勢値)として符号化される(ステップ2110)。一方、「1」が優勢シンボルでない場合は、LPS(劣性値)として符号化される(ステップ2120)。算術符号は推定を誤ったペナルティとして符号を生成するので、符号は、主に、ステップ2120の場合に生成される。
【0092】
また、「0」を符号化する手順が図12に示される。つまり、フラグ用統計モデルにおいて、「0」が優勢シンボルとなっていれば(ステップ2200)、MPS(優勢値)として符号化される(ステップ2210)。一方、「0」が優勢シンボルでない場合は、LPS(劣性値)として符号化される(ステップ2220)。算術符号は推定を誤ったペナルティとして符号を生成するので、符号は、主に、ステップ2220の場合に生成される。
【0093】
なお、以上の説明では識別フラグにより示される情報が2つであったが、3つ以上の場合も同様にして算術符号化できる。例えば、中間調領域のデータについてj個の量子化テーブルが用意されていて、そのうちの一つを用いて量子化したような場合、どの量子化テーブルを使用したかという識別情報を算術符号化して送付したいという場合(適応化量子化の場合)がある。
【0094】
このような場合の、量子化テーブル識別情報の符号化手順の一例を図13に示す。ここでは量子化テーブル(またはスケーリングファクタ)はj種類あり、それにインデックスを付けて識別するものとする。
【0095】
量子化テーブルが切り替わることは、そのインデックスが変化することなので、その差分を計算してΔjとする(ステップ2300)。Δjがゼロかどうかを判定し(ステップ2310)、ゼロならば「0」を符号化する。この場合は、使用するスケーリングファクタ(量子化テーブル)には変化がないことを意味し、したがって、受信側では、今まで使用していたスケーリングファクタ(量子化テーブル)を使用すればよい。。
【0096】
一方、Δjがゼロでなければ、「1」をコード化し(ステップ2330)、次に、Δjの符号がプラスであるかマイナスであるかを判定して、同様に「0」もしくは「1」でで符号化する(ステップ2350,2360)。最後に、Δjの絶対値を符号化する(ステップ2370)。なお、Δjの絶対値を符号化するには、その2進数を桁毎に“0”であれば「0」を符号化し、“1”であれば「1」をで符号化すればよい。これらの処理に必要なコンテクストは、Δjがゼロの符号化用、正負の符号化用、それに絶対値の各桁用に用意すればよく、せいせい数バイトのメモリが必要なだけである。つまり、このような方法によれば、使用する量子化テーブル(スケーリングファクタ)が切り替わったときにのみ数ビット程度(logj程度)の符号が出力される。したがって、従来の方式よりも必要とされる構成が簡素化され、符号量少なくなって効率的に符号化できるという利点がある。
【0097】
次に、像域判定の結果、中間調画像のブロックと判定された場合の算術符号化の具体例について説明する。
【0098】
第jブロックのDC成分S0,0,jは直前ブロックのDC成分S0,0,(j-1)との差をとり、Δj= S0,0,(j-1) - S0,0,j がその直前の差分Δj-1の値によって、Δj-1がゼロか、±small,±largeの5つにクラス分けしている。 S0,0,(j-1)の初期値はゼロとする。各クラス毎にΔjがゼロかどうか、ゼロでなければプラスかマイナスかが符号化され、その後に絶対値が桁毎に符号化される。この算術符号化処理に必要とするコンテクスト数は各クラス4個必要で、計20個である。1つのコンテクストは1バイトで算術符号化に必要な統計量が表されるので,DC成分を符号化するための20バイトのコンテクストメモリが統計モデル用メモリ1070に含まれている。
【0099】
AC成分は量子化によってゼロになる成分が多いので、63個の成分のうち、ある成分以降がすべてゼロになる状態を1つのシンボルとしてEOB(End of Block)と定義する。符号化手順はまずEOBかどうか判定し,そうであればEOBを示すため「1」を符号化する。そうでなければ,そのことを示す「0」の符号化を行う。本実施例で採用している適応型算術符号器1080は2進算術符号器なので,符号化対象を2つのクラスに分離しながら符号化する。どちらのクラスであるかを、「0」もしくは「1」で符号化していく。その後、AC成分ごとに値がゼロか、ゼロでなければプラス/マイナスを符号化し、その後に絶対値を符号化する。AC成分インデックス(1〜63)毎に上記のEOB判定,ゼロ判定,正負の符号化,絶対値の符号化を繰り返す。コンテクストは成分インデックス毎にクラス分けする。DC成分より複雑で合計276個のコンテクストから成る。このコンテクストメモリも統計モデル用メモリ1070に含まれている。
【0100】
以上の中間調ブロックの算術符号化の手順をまとめると、図14のようになる。量子化テーブル情報等の各種の識別情報を符号化し(ステップ3000)、DC成分を符号化し(3010)、AC成分を符号化する(ステップ3020)。
【0101】
次に、2値画像ブロックの算術符号化について具体的に説明する。
【0102】
前述したように、像域判定回路1110で対象ブロックが2値画像と判定されると,信号1170によって2値化回路1120が起動され,画素Pj,kの値としきい値128を比較し2値化する。2値化した画像データはメモリ1130に記憶される。コンテクスト生成器1140は,符号化画素(符号化シンボル)周辺の参照画素10画素の値で1024個のクラス分けを行う。符号化シンボルは信号1180であり,選択器1090を通って算術符号器の入力シンボルとなる。
【0103】
図15に、ブロックの位置関係と2値データ符号化に必要となる参照画素の配置(テンプレート)を示す。符号化対象ブロックをB(j,k)とし,図示したようにその左,左上,真上のブロックを、それぞれB(j,k-1), B(j-1,k-1), B(j-1,k)とする。“?”を符号化シンボルとすると、その周囲の“X”が参照画素を表す。JBIGの3ラインテンプレートの参照画素配置を採用した。B(j,k)からはみ出した参照画素のうち、 B(j-1,k-1), B(j-1,k)に属するものは、画像を参照せずすべて“0”とした。中間調ブロックはDCT変換され,逆変換によって元の画像には戻らない。それを2値化しても符号器と復号器とで参照値が異なり、別のコンテクストになってしまうことがあるのでこのようにB(j,k)の周囲はすべて白画素とみなすようにした。このようにするのが最も簡単である。2値化後は、“0”で白を表すことにする。こうすることよって圧縮率は多少低下するが、メモリ容量を減らすことができる。
【0104】
但し、左のブロックB(j,k-1)が2値画像ブロックであれば、B(j,k-1)にかかる参照画素は実際の画素を参照し、B(j,k-1)が中間調ブロックの時には白画素とするのが望ましい。周辺参照画素を全部白とみなすのは最も簡単な方法であるが、上述の問題が生じないときは、なるべく実際の画像を参照し圧縮率を上げるようにするものである。同じようにして参照画素がB(j-1,k-1), B(j-1,k)にかかる場合も、ブロックが2値画像の場合には、実際の画素を参照するようにすれば圧縮率は改善できる。
【0105】
B(j,k-1)が中間調ブロックか2値であるかは、符号化しながら逐次、ブロック識別フラグを記憶していく。ここで、「ブロック毎に符号化していく」方法として、本実施の形態では、図16(a)に示すようなストライプという概念を導入し、各ストライプ毎に符号化を実施する方法を採用した。すなわち、本実施の形態では、処理ストライプと直前のストライプに属するブロックの識別フラグをメモリに記憶している。ここで、「ストライプ」とは、上述のとおり8ラインx1ライン画素数の配列のことである。
【0106】
図16(a)では、各ブロック4010〜4040に渡る1行分の帯がストライプ4050ということになる。図16(b)は、ストライプ毎の識別情報を記憶するためのラインメモリを示している。図示されるように、ラインメモリとして、少なくとも2ストライプ分のメモリ(4060,4070)を用意しておく。
【0107】
画素の符号化はブロックの左上画素から右に8画素符号化する。次にその下の8画素を同様に符号化する。これを繰り返し,64画素符号化して1ブロックの符号化が終了する。1画素の符号化演算はJBIGと同一である。
【0108】
図17に、1ストライプの符号化処理の手順を示す。
【0109】
ステップ5010はストライプ先頭の初期化処理である。DC差分の基準値(このフローではDCi-1)のクリア,その他の初期化を行う。ステップ5020では、画像メモリから画素を1ブロック読み込み、それと同時にヒストグラムに関する統計量を抽出する。その統計量からステップ5030で像域判定を行う。ステップ5040で判定結果をメモリに記憶する。ステップ5050で判定結果により分岐する。2値ブロックであればステップ5060で、それを示すフラグを「1」で符号化する。ステップ5070は1ブロックの画素の符号化である。ステップ5080は,次の中間調ブロックの符号化のためにDC差分の基準値(DCi-1)をクリアする。2値画像ブロックの次の中間調ブロックは,ストライプの第1ブロックと同じ初期条件とした。ステップ5090〜ステップ5110は中間調ブロックの符号化である。ステップ5120で1ストライプの終了判断をして,終わっていなければ以上のことを繰り返す。1ストライプの符号化が終了すると、ステップ5130で1ストライプ分のブロック識別フラグのメモリ値を更新する。これは、図16(b)の2本のラインメモリ間のデータの移し替えを意味する。以上で符号化が終了する。
【0110】
次に、本実施の形態の圧縮率について他方式との比較結果を含めて説明する。図18は圧縮性能の比較結果をまとめたものである。実験に使用したテスト画像は以下の3種類である。
文字画像:英文画像(CCITT#1)の文字の詰まった部分を,256X256画素切り出し、フィルタ処理をかけてエッジを多少ぼかしたものである。
写真画像:256X168画素サイズの人物彫刻写真である。
混在画像:256X168画素サイズの写真画像2枚を文字画像に合成した。全体のサイズは512X512画素である。文字領域は3つに分かれ,1つは理想的な2値画像(0,255から成る)であり、1つは上記の文字テスト画像と同じく多少ぼかした部分であり、もう一つはぼけの程度を前者より大きくしたものである。
【0111】
比較の対象となる符号化方式は3つある。
第1番目(図18の一番左に示される方式)は、DCT+量子化+算術符号化方式である。これはJPEGの拡張モードと同じ構成である。量子化テーブルは図8に示されるものを使用した。2つ目の方式(図18の中央に示される方式)は、適応型量子化(画像の局所局所の性質に応じてDCTの量子化参照値を変化させる方式)を採用したものである。中間調ブロックは図8の量子化テーブルを使い、2値画像ブロックに対してはこの量子化テーブルをscaling factor=3でスケーリングした。したがって,図3の1/3の設定値で量子化される。3つ目の方式(図18で一番右側に示される方式)が本実施の形態の方式である。
【0112】
図18をみると、混在画像に対して本実施の形態の方式は、適応量子化よりも3倍圧縮率が高いことがわかる。写真画像では,像域判定結果は100%,中間調と判定したので、どの方式も同一結果である。また、文字画像については、本実施の形態の方式の優位性は明らかである。文字画像では100%,2値画像と判定している。また混在画像では、文字領域のうち、理想的2値画像と多少ぼかした部分ではブロックの99%を2値画像ブロックと判定した。写真部分とぼけ具合を大きくした文字部分では100%,中間調ブロックと判定した。
【0113】
適応的量子化による復元画像は,scaling factor=3としても,文字周辺に僅かにモスキートノイズが現れた。誤差拡散処理すると、それが黒の孤立点となる。本実施例では復元画像の文字部分は理想的な2値画像となり、誤差拡散処理を通しても何の問題も見られなかった。すなわち、画質,圧縮率ともに適応化させることができた。
【0114】
(実施の形態4)
図19は、実施の形態4にかかるファクシミリ装置の構成を示す図である。
【0115】
ファクシミリ装置101は、ホストプロセッサ102と、MH/MR/MMR符号/復号化回路103と、解像度変換回路104と、QM(算術)符号/復号化回路105と、画像ラインメモリ106と、符号メモリ107と、モデムなどの通信インタフェース(電話回線113等を用いた有線伝送のためのインタフェースとして機能する)と、スキャナ等の画像入力装置111と、プリンタなどの画像記録/表示装置112と、を具備し、各ブロックは内部バス109,110を介して相互に情報の授受を行うことができる。
【0116】
前掲の実施の形態で説明した符号化,復号化を行う回路は、QM(算術)符号/復号化回路105に搭載されている。
【0117】
本発明にかかる符号化/復号化回路は、基本的にはJPEG,JBIGという信頼性の高い既存の方式を用いるので構成は比較的簡単であり、小型化や低コスト化が要求されるファクシミリ装置においても、十分に搭載可能である、したがって、普及型のファクシミリ装置の通信性能の向上に寄与する。
【0118】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明では2値画像であるか中間調画像であるかの判定を行い、それぞれに適した符号化を実行するため、写真と文字の混在画像の符号化において、写真領域はJPEG同様に効率よく圧縮され、一方、文字領域は画質も高く従来の数倍の圧縮率が実現されるという優れた効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の形態1にかかる画像符号化装置の構成を示すブロック図
【図2】本発明の実施の形態2にかかる画像符号化・復号化装置(画像通信装置)の構成を示すブロック図
【図3】伝送される符号のフォーマット例を示す図
【図4】像域判定処理の手順を示す図
【図5】本発明の実施の形態3にかかる画像符号化装置の構成を示すブロック図
【図6】 DCT変換係数を読み出す際のアドレス指定方式(ジグザグスキャン方式)を説明するための図
【図7】 2値画像のブロックについてのデータ読み出し方式(ラスタスキャン方式)を説明するための図
【図8】量子化テーブル値(量子化参照値)の値の一例を示す図
【図9】算術符号器の要部構成を示す図
【図10】算術符号の符号化原理を説明するための図
【図11】識別情報(フラグ)の算術符号化の一例の手順を示す図
【図12】識別情報(フラグ)の算術符号化の他の例の手順を示す図
【図13】識別情報(フラグ)の算術符号化の他の例の手順を示す図
【図14】中間調画像のブロックの符号化手順を示す図
【図15】2値画像のブロックの符号化に用いられる参照画素の配置を示す図
【図16】2値画像のブロックの符号化の具体例を説明するための図
【図17】2値画像のブロックの符号化の具体的手順を示す図
【図18】実施の形態2にかかる符号化方式の効果を他の方式と比較して示す図
【図19】本発明の実施の形態4にかかるファクシミリ装置の構成を示す図
【符号の説明】
1 混在画像
2 中間調画像領域
3 2値画像領域
4 スキャナ
5 変換処理回路
6a,6b 変換処理部
7 像域判定回路
8 算術符号器
Claims (2)
- 入力画像データを所定サイズのブロックを単位とし対象ブロックに含まれる画素の輝度分布を用いて像域判定し、この像域判定の結果、前記入力画像データが中間調領域と判定された場合にはその画像データに対して直交変換・量子化処理を施して第1の符号化シンボルを得、前記入力画像データが2値領域と判定された場合にはその画像データに対して2値化処理を施して第2の符号化シンボルを得、前記像域判定の結果を示す識別フラグと前記第1または第2の符号化シンボルとを順次、算術符号器に入力し、算術符号化を行う画像符号化方法であって、
下記条件によって、そのブロックが2値画像のブロックであるか否かを判定することを特徴とする画像符号化方法。
条件
以下の(1)〜(3)のいずれかを満たす場合に、2値画像のブロックであると判定する。
(1)1ブロックに含まれる64画素の中に、黒画素とみなす黒レベル値8以下の輝度をもつ画素および白画素とみなす白レベル値247以上の輝度をもつ画素が存在し、かつ、前記ブロックに含まれる画素の輝度ヒストグラムにおいて任意のレベルとその隣のレベルに属する画素数が共にゼロとなって輝度が連続する部分がない。
(2)1ブロックに含まれる64画素の中に、黒画素とみなす黒レベル値8以下の輝度をもつ画素が存在し、そのような画素の数が前記ブロック内の64画素に対して占める割合が60画素を超えている。
(3)1ブロックに含まれる64画素の中に、白画素とみなす白レベル値247以上の輝度をもつ画素が存在し、そのような画素の数が前記ブロック内の64画素に対して占める割合が60画素を超えている。 - 入力画像データを所定サイズのブロックを単位とし対象ブロック内における画像データの輝度の分布と、前記対象ブロックの周囲に位置するブロックの属性とに基づいて像域判定し、この像域判定の結果、前記入力画像データが中間調領域と判定された場合にはその画像データに対して直交変換・量子化処理を施して第1の符号化シンボルを得、前記入力画像データが2値領域と判定された場合にはその画像データに対して2値化処理を施して第2の符号化シンボルを得、前記像域判定の結果を示す識別フラグと前記第1または第2の符号化シンボルとを順次、算術符号器に入力し、算術符号化を行うことを特徴とする画像符号化方法であって、
下記条件によって、そのブロックが2値画像のブロックであるか否かを判定することを
特徴とする画像符号化方法。
条件
以下の条件1を満たす場合、あるいは条件2を満たす場合に2値画像のブロックであると判定する。
条件1
(1)注目するブロックに含まれる64画素の中に、黒画素とみなす黒レベル値8以下の輝度値をもつ画素および白画素とみなす白レベル値247以上の輝度をもつ画素が存在し、かつ、前記ブロックに含まれる画素の輝度ヒストグラムにおいて任意のレベルとその隣のレベルに属する画素数が共にゼロとなって輝度が連続する部分がない。
(2)注目するブロックに含まれる64画素の中に、黒画素とみなす黒レベル値8以下の輝度値をもつ画素が存在し、そのような画素の数が前記ブロック内の64画素に対して占める割合が60画素を超えている。
(3)注目するブロックに含まれる64画素の中に、白画素とみなす白レベル値247以上の輝度値をもつ画素が存在し、そのような画素の数が前記ブロック内の64画素に対して占める割合が60画素を超えている。
条件2
注目するブロックをB(j,k)とし、このブロックの周囲に位置する3つのブロックをB(j,k-1)、B(j-1,k-1)、B(j-1,k)とする場合に、前記周囲に位置する3つのブロックがすべて2値画像のブロックであって、かつ、以下の(4)または(5)のいずれかを満たす場合に、前記注目するブロックが2値画像のブロックであると判定する。
(4)1ブロックに含まれる64画素の中に、黒画素とみなす黒レベル値8以下の輝度値をもつ画素が存在し、かつ、そのような画素の輝度がそのブロック内で最も多くみられる輝度に一致し、かつ、前記ブロック内の画素の輝度値の最大値と最小値との差が32より大きく、かつ、前記ブロックに含まれる画素の輝度ヒストグラムにおいて任意のレベルとその隣のレベルに属する画素数が共にゼロとなって輝度が連続する部分がない。
(5)1ブロックに含まれる64画素の中に、白画素とみなす白レベル値247以上の輝度値をもつ画素が存在し、かつ、そのような画素の輝度がそのブロック内で最も多くみられる輝度に一致し、かつ、前記ブロック内の画素の輝度値の最大値と最小値との差が32より大きく、かつ、前記ブロックに含まれる画素の輝度ヒストグラムにおいて任意のレベルとその隣のレベルに属する画素数が共にゼロとなって輝度が連続する部分がない。
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